特許第6396750号(P6396750)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6396750
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】火災感知器又は火災警報器
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20180913BHJP
   G08B 17/103 20060101ALI20180913BHJP
   G08B 17/06 20060101ALI20180913BHJP
   G01N 21/59 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   G08B17/00 C
   G08B17/103 A
   G08B17/06 A
   G01N21/59 H
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-206069(P2014-206069)
(22)【出願日】2014年10月7日
(65)【公開番号】特開2016-76086(P2016-76086A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2017年3月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100188547
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴野 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】加藤 健一
(72)【発明者】
【氏名】森田 英聖
【審査官】 塩澤 如正
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−257107(JP,A)
【文献】 特開2009−146233(JP,A)
【文献】 特開昭58−078290(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3010025(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3131462(JP,U)
【文献】 特開2006−018621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 1/00 − 9/20
G08B 17/00 − 21/24
G01N 21/00 − 21/01
G01N 21/17 − 21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災に起因する現象を光学的に検出する検出手段を備え、該検出手段の検出結果に基づいて火災を感知する火災感知部と、
発光手段と該発光手段を発光させる発光駆動手段とを備えた光警報部と、
を具備する火災感知器又は火災警報器において、
前記火災感知部は、前記現象の検出を行う検出期間と、前記現象の検出を行わない非検出期間とを有し、
火災発生時に、前記非検出期間に前記発光手段を間欠的にフラッシュ発光させると共に、前記検出期間には前記フラッシュ発光をさせないように前記発光駆動手段を制御する制御手段を備える火災感知器又は火災警報器。
【請求項2】
前記検出手段は、火災に起因する煙、炎、熱、ガスの少なくとも何れか1つ以上を検出する、
請求項1の火災感知器又は火災警報器。
【請求項3】
前記発光手段は、外周部にリング状に配置される、
請求項1又は2の火災感知器又は火災警報器。
【請求項4】
前記発光手段は、回転するように順次発光する、
請求項3の火災感知器又は火災警報器。
【請求項5】
前記発光手段は、天板に1以上配置される、
請求項1又は2の火災感知器又は火災警報器。
【請求項6】
前記発光手段は、真横方向への放射を抑制するように調整された配光である、
請求項1乃至5の何れか1項の火災感知器又は火災警報器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災発生時に間欠的なフラッシュ発光によって警報を発する、自動火災報知設備の火災感知器や住宅用の火災警報器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動火災報知設備は、所定の音量を発する音響装置を所定の間隔で配設して火災発生を警報し、火災発生を知らせると共に避難を促すものであった。また、住宅用の火災警報器も所定の音量を発して火災発生を警報し、火災発生を知らせると共に避難を促すものであった。
【0003】
しかしながら、非常事態発生時に避難するべき人に聴覚障害があるような場合、光等の聴覚以外の感覚に働きかけて非常事態を知らせる警報装置の普及が望まれている。そして、強烈な閃光を発するストロボ(登録商標)に代表されるエレクトロニック・フラッシュや、大光量のLEDランプ、等を光源に用い、間欠的にフラッシュ発光する警報装置が知られている(特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−161679号公報
【特許文献2】特開2011−198194号公報
【特許文献3】特開2014−63207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のフラッシュ発光する警報装置は、平常時は消灯し、火災時に間欠的にフラッシュ発光する光警報装置である。そのような光警報装置は、火災による煙中を通して視認できるだけの強い光を発生する必要がある(参考文献:1970年消防研究所報告「煙中の視程について(I)」、1971年日本火災学会論文集「煙中の見通し距離について」、等、神忠久の一連の研究論文)。そのため、発光素子には、強烈な閃光を発するストロボ(登録商標)に代表されるエレクトロニック・フラッシュや、大光量のLEDランプ等を用いる。要求される光量の強さは設置場所の広さにより異なり、広い設置場所では、より強い光量で発光素子をフラッシュ発光させる必要がある。しかし、このような強い光は、光学的検出手段を備えた火災感知器を、例えば、光電式の煙感知器を誤作動させる虞がある。
【0006】
図8は、特許文献3の光警報装置を有した警報システムのように、自動火災報知設備の火災感知器と光警報装置を別に設けた、従来の火災警報システムの例である。この例では、火災感知器として光電式スポット型感知器を用いている。光電式スポット型感知器103(以下、煙感知器103と称する)が火災(煙)を感知すると火災感知信号が受信機102に送られ、受信機102で火災と判断をすると火災警報信号を送出し、光警報装置101のブザー101bにより警報音を鳴動させると共に、発光手段101aにより間欠的にフラッシュ発光させる。この火災警報システムでは、発光手段101aの近くに煙感知器103があると、フラッシュ発光の強い光にさらされることになる。煙感知器103は、内部の暗室に検出発光素子と検出受光素子を、光軸をずらして配置しており、暗室に煙が入った際に検出発光素子からの光が煙で散乱し、その散乱した光を検出受光素子で検出することにより煙の存在を検出する。すなわち、光学的に火災に起因する現象を検出する検出手段を有し、その検出結果に基づいて火災を感知している。この煙感知器103は、ラビリンス構造により外部から煙が暗室に入るようにしながら暗室に外部の光が入らないようにしているが、光警報装置のフラッシュ発光のような強い光は減衰しながらもラビリンスを抜けて暗室内に入射し、検出受光素子で検出されて誤作動する虞がある。
【0007】
このように外部からの強い光の影響を受ける虞がある火災感知器は、光電式スポット型感知器に限らない。火災に起因する現象(煙、熱、放射、ガス、等)を光学的に検出する検出手段の検出結果に基づいて火災を感知する火災感知部で、外部からの強い光の影響を受ける虞がある火災感知器であれば、本発明の適用対象となる。例えば、光電式分離型感知器や、炎からの放射(例えば、紫外線や赤外線)を検出する炎感知器も本発明の適用対象となる。
【0008】
そして、火災発生時に、フラッシュ発光する光警報装置からの強い光が火災を感知していない火災感知器に入射して誤作動すると、実際に火災が発生している場所を正しく把握することができなくなる。また、受信機を操作して自動火災報知設備を復旧する際に、光警報装置の復旧(フラッシュ発光の停止)に時間がかかり、火災感知器の復旧よりも遅れるようなことがあると、火災感知器が光警報装置のフラッシュ発光によって再び誤作動してしまい、警報を停止できなくなる虞もある。
【0009】
一方、火災感知器は一般に警戒区域の天井下面等の高い位置に配設されるが、このような火災感知器に光警報装置を一体化すると、障害物の影響を受け難いことからフラッシュ発光を視認し易く、また、火災感知器と光警報装置の電路を共用化することによって、省線化および電路工事の省力化が期待できる。さらに、火災感知器と光警報装置とを一体化することにより、両者の動作を整合させることが可能となる。すなわち、火災に起因する煙や炎からの放射といった物理現象の検出を行うタイミングと、フラッシュ発光のタイミングとが重ならないように制御し、フラッシュ発光による火災感知器の誤作動を防止することができる。これは、火災感知手段と警報手段とを一体化して単独で動作できる住宅用の火災警報器を、光警報装置と一体化した場合も同様である。本発明は、上記技術的思想に基づいて成されたものであり、光警報装置と一体化しながらもフラッシュ発光によって誤作動することがない火災感知器又は火災警報器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明は、火災に起因する現象光学的に検出する検出手段を備え、該検出手段の検出結果に基づいて火災を感知する火災感知部と、発光手段と該発光手段を発光させる発光駆動手段とを備えた光警報部と、を具備する火災感知器又は火災警報器において、前記火災感知部は、前記現象の検出を行う検出期間と、前記現象の検出を行わない非検出期間とを有し、火災発生時に、前記非検出期間に前記発光手段を間欠的にフラッシュ発光させると共に、前記検出期間には前記フラッシュ発光をさせないように前記発光駆動手段を制御する制御手段を備える火災感知器又は火災警報器である。
【0011】
(2)また、本発明は、前記(1)において、前記検出手段は、火災に起因する煙、炎、熱、ガスの少なくとも何れか1つ以上を検出する、火災感知器又は火災警報器である。
【0012】
(3)また、本発明は、前記(1)又は(2)において、前記発光手段は、外周部にリング状に配置される、火災感知器又は火災警報器である。
【0013】
(4)また、本発明は、前記(3)において、前記発光手段は、回転するように順次発光する、請求項3の火災感知器又は火災警報器である。
【0014】
(5)また、本発明は、前記(1)又は(2)において、前記発光手段は、天板に1以上配置される、火災感知器又は火災警報器である。
【0015】
(6)また、本発明は、前記(1)乃至(5)何れかにおいて、前記発光手段は、真横方向への放射を抑制するように調整された配光である火災感知器又は火災警報器である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1に記載の構成によると、天井下面等の高い位置に配設される火災感知器又は火災警報器に光警報部を備えることによって、障害物の影響を受け難いことからフラッシュ発光を視認し易く、また、火災感知部と光警報部の電路を共用化することによって、省線化および電路工事の省力化が期待できる。さらに、火災感知器等と光警報装置とを一体化したことにより、両者の動作を整合させることが可能となる。すなわち、火災に起因する煙や炎からの放射といった物理現象の検出を行わない非検出期間にフラッシュ発光し、上記物理現象の検出を行う検出期間にフラッシュ発光させないことにより、検出期間にフラッシュ発光のタイミングが重ならないように制御し、光警報部のフラッシュ発光が、火災に起因する現象を光学的に検出する検出手段に入ることによる火災感知器等の誤作動を防止することができる。
【0017】
また、本発明の請求項2に記載の構成によると、具体的に、煙、炎、熱、ガスの何れか1つ以上を検出する検出手段を備えた火災感知器又は火災警報器で、誤作動を防止するという効果を奏する。
【0018】
また、本発明の請求項3に記載の構成によると、発光手段が火災感知器又は火災警報器の外周部にリング状に配置されるため、火災感知器又は火災警報器が設置された状態でフラッシュ発光を全方位から視認しやすいという効果を奏する。
【0019】
また、本発明の請求項4に記載の構成によると、火災感知器又は火災警報器の外周部にリング状に配置された発光手段が順次点灯して回転するようにフラッシュ発光するため、さらに視認しやすく、また、順次点灯であるために瞬間消費電流を低く抑えることができるという効果を奏する。
【0020】
また、本発明の請求項5に記載の構成によると、発光手段が火災感知器又は火災警報器の天板に配置されているためにフラッシュ発光を視認しやすい。また、一度にフラッシュ発光するので、順次発光のように発光期間が長くならずに、周囲に対する発光を一度で済ませることができる。ひいては、1回のフラッシュ発光が終了してから次の発光までの間隔を長くとることができる。その間隔には火災の検出期間等が設定されるので、フラッシュ発光のタイミングが検出期間と重ならないように制御することが容易となる。
【0021】
また、本発明の請求項6に記載の構成によると、天井下面に配設される火災感知器等は他の火災感知器等から真横方向に位置することになるため、発光手段が真横方向への放射を抑制するように調整された配光とすることにより、他の火災感知器等からのフラッシュ発光があたりにくいという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施例1に係る煙感知器1の外観図。
図2】本発明の実施例1に係る煙感知器1の装置構成を表す図。
図3】本発明の実施例1に係る煙感知器1を設けた自動火災報知設備のシステムを表す図。
図4】本発明の実施例1に係る煙の検出期間と高輝度白色LED2の発光タイミングを説明するための図。
図5】本発明の実施例1に係る煙感知器1の変形例の外観図。
図6】本発明の実施例2に係る煙感知器1を天井設置状態で下方から見た図。
図7】本発明の実施例3に係る炎感知器10を天井設置状態で下方から見た図。
図8】煙感知器103と光警報装置101を別に設けた従来の火災警報システム。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、実施例により本発明を実施する形態を説明する。
【実施例1】
【0024】
まず、図1に基づいて、本発明の実施例1に係る火災感知器の構成を説明する。1は自動火災報知設備を構成する本発明の実施例1に係る火災感知器としての光電式スポット型感知器であり(以下、煙感知器1と称する)、図1は実施例1に係る煙感知器1の外観図である。図1(a)は天井下面へ設置した状態で煙感知器1を側方から見た図であり、(b)は下方から見た図である。2は高輝度白色LED、3は感知器ヘッド、4は煙流入窓、5は天板、6はフィン、7は確認灯、8は感知器ヘッド3を取り付けるベースを示す。天板5はフィン6により感知器ヘッド3に連結している。確認灯7は火災感知した火災感知器を目視で識別できるように点灯する表示灯である。複数の高輝度白色LED2が、感知器ヘッド3の下面外周部にリング状に配列され、火災警報の際にフラッシュ発光する。高輝度白色LED2は、傾斜した感知器ヘッド3の下面から頭頂部が突出した状態でリング状に配列されており、設置状態で全方位から視認しやすくなっている。天板5の上部にはラビリンス(図示せず)に囲まれた暗室(図示せず)があり、暗室内の散乱光を検出して煙流入窓4から入った煙を感知する。煙流入窓4の内側には防虫網(図示せず)がラビリンスとの間に設けられ、虫や埃等の異物の侵入を防止する。
【0025】
次に、図2により煙感知器1の装置構成を、図3により煙感知器1を設けた自動火災報知設備のシステムを説明する。図2の11は制御手段、12は検出発光素子、13は検出受光素子、14は発光駆動手段、15は増幅器、16はA/Dコンバータ、17は順次発光回路、18は送受信手段である。検出発光素子12と検出受光素子13は、ラビリンスで囲まれた暗室内に設置されている。本実施例の検出発光素子12はLEDである。制御手段11は、機能的構成として、火災感知に関する制御と情報処理を行う検出制御部111と、光警報に関する制御を行う光警報制御部112を有する。検出発光素子12、検出受光素子13、発光駆動手段14、増幅器15、A/Dコンバータ16、検出制御部111は、火災に起因する現象である煙を検出する検出手段であり、火災感知部を構成し、複数の高輝度白色LED2、順次発光回路17、光警報制御部112は、光で警報するための光警報部を構成している。また、図3の19は受信機である。
【0026】
火災感知部では一定時間ごとに煙の検出を行う検出期間になると、検出制御部111が発光駆動手段14を制御して検出発光素子12を発光させる。検出発光素子12と検出受光素子13は、互いの光軸がずれるように配置されており、平常時は検出発光素子12の光が検出受光素子13に直接入らないようになっている。火災により煙が発生し、煙流入窓4から暗室に煙が流入すると、検出期間に発光する検出発光素子12の光は煙によって散乱して、その散乱光を検出受光素子13が検出する。検出受光素子13の受光出力は増幅器15で増幅された後にA/Dコンバータ16でデジタル化されて検出制御部111に入力し、このように光学的に煙を検出する検出手段の検出結果に基づいて火災が感知される。
そして、火災を感知した煙感知器1は、送受信手段18を介して火災感知信号を受信機19に送信する。この火災感知信号を受信した受信機19が火災と判断すると、受信機19は高輝度白色LED2のフラッシュ発光を開始させるための火災警報信号を煙感知器1に送信する。各煙感知器1では、送受信手段18を介して制御手段11が受信機19からの火災警報信号を受信する。
火災警報信号を受信すると、光警報部では制御手段11の光警報制御部112が発光信号を順次発光回路17に出力し、順次発光回路17は図1の複数の高輝度白色LED2が順次フラッシュ発光させる。これにより、高輝度白色LED2が回転するようにフラッシュ発光して全方位から視認され、聴覚障害者等に対して警報を視覚的に報知することができる。
【0027】
次に、火災警報の際のフラッシュ発光による煙感知器1の誤作動とその防止について説明する。図1の煙感知器1では高輝度白色LED2が煙流入窓4の近傍にあり、高輝度白色LED2からの強い光が煙流入窓4に入射し、減衰しながらも内側のラビリンスを抜けて暗室にノイズ光として入り込む虞がある。検出受光素子13が受光する煙による散乱光は微弱であることから、このようなノイズ光が僅かであっても検出受光素子13で受光されてしまうと煙感知器1は誤作動を起こす虞がある。そこで、検出期間以外は煙の検出を行わない非検出期間とし、非検出期間では検出受光素子13が受光出力しても受け付けないようにしておく。このようにしておくことにより、検出期間以外、すなわち非検出期間に暗室に光が入射するようなことがあっても誤作動させないようにすることができる。そして、制御手段11の光警報制御部112は、検出制御部111からの検出期間の情報に基づいて、高輝度白色LED2の発光タイミングが煙の検出期間と重ならないように順次発光回路17を制御し、高輝度白色LED2の光で煙感知器1が誤作動しないようにする。
【0028】
図4は、煙の検出期間と高輝度白色LED2の発光タイミングを説明するための図である。横軸は時間を示し、図中、左方から右方へと時間が流れるように記載されている。Sは火災に起因する現象である煙の検出を行う検出期間、NSは検出を行わない非検出期間、Tは検出期間Sの周期、Fsは高輝度白色LED2が順次発光する順次発光期間、Aは火災状態を表し、図4(a)は煙の検出期間Sのタイミング、(b)はフラッシュ発光する高輝度白色LED2の順次発光回路17による順次発光のタイミング、(c)は火災状態Aのタイミングを示す。図4(a)に示すように、検出期間Sおよび非検出期間NSは一定の期間であり、期間Tごとに繰り返す。火災感知部では、検出受光素子13に光が入ったとき、図4(a)における検出期間Sでは火災感知するが、非検出期間NSでは火災感知しない。具体的には、例えば、非検出期間NSでは検出受光素子13の受光に基づく信号を検出制御部111が受け付けない。また、検出受光素子13からの信号が非検出期間NSに検出されることがないように、増幅器15、A/Dコンバータ16の出力を遮断したり、増幅器15、A/Dコンバータ16への電源供給を停止したりしてもよい。また、非検出期間NSでは、A/Dコンバータ16の出力情報を検出制御部111に取り込む際に光非検出の値に書き換えたり、その出力情報を一度、検出制御部111に取り込んで記憶した後に光非検出の値に書き換えたりするようにしてもよい。
【0029】
図4(a)に示すように、火災感知部では周期Tの一定時間ごとに検出期間Sを設けて、検出制御部111の制御により検出発光素子12の発光と検出受光素子13による受光を繰り返している。そして、隣り合う2つの検出期間Sの間に位置する非検出期間NSでは火災感知を行わない。煙感知器1は検出期間Sに煙を検出して火災を感知すると受信機19に火災感知信号を送信する。受信機19は火災と判断すると火災状態Aの期間に火災警報信号を送出する。この火災警報信号は、接点信号であってもよいし、シリアル通信や無線通信等によるデータ通信であってもよく、自動火災報知設備1の形態に応じて適宜決定される。
図4(c)に示す火災状態Aで煙感知器1は受信機19からの火災警報信号を受信するが、光警報部ではすぐにはフラッシュ発光を開始しない。光警報制御部112は、火災感知部における検出期間Sの情報に基づいて、図4(a),(b)に示すように次の検出期間Sが終了してからさらに遅延時間d後に順次発光回路17を作動させて順次発光期間Fsを開始し、その次の検出期間Sの前に終了させる。すなわち、フラッシュ発光は非検出期間NSに行われる。その後も、非検出期間NSごとに順次発光期間Fsを設けてフラッシュ発光する。このようにして、煙感知器1内で煙の検出期間Sに、高輝度白色LED2の順次発光が重ならないように光警報制御部112が順次発光回路17を制御し、フラッシュ発光による煙感知器1の誤作動を防止する。
【0030】
したがって、フラッシュ発光を自機の火災感知部で感知してしまう誤作動がない。そうすると、火災感知していない煙感知器1の確認灯が点灯するようなこともない。また、煙感知器1が上記のように誤作動しないため、火災の発生場所を把握できなくなることがない。さらに、防災センタ要員らが復旧操作した後、自動火災報知設備が復旧動作している際に、フラッシュ発光の停止が火災感知部の復旧より遅れたとしても、火災感知部が誤作動して復旧できなくなることはない。また、複数の高輝度白色LED2を順次発光させるので、これらを同時発光させた場合よりも、発光時のピーク電力を抑制することができる。さらに、施設内の全ての煙感知器1や、少なくとも、階層や区画ごとの系統分け、連続するアドレス、等で規定される隣接する煙感知器1について、フラッシュ発光又は検出期間Sを同期させるように制御したり、隣接する他の煙感知器1にフラッシュ発光が直接入射しないように高輝度白色LED2の真横方向の放射を抑制するように配光特性を調整したりして、他の煙感知器1が誤作動しないようにしてもよい。このように構成することにより、火災発生時に煙感知器1が一斉にフラッシュ発光した際に、煙を感知していない煙感知器1の誤作動を防止することができる。ひいては、火災の発生場所が把握できなくなることもない。
【0031】
実施例1では、図4(b)に示すように、高輝度白色LED2が1つの順次発光期間Fsに30回順次発光し、高輝度白色LED2を8個備えた図1の煙感知器1ではフラッシュ発光が4周弱回転する。なお、順次発光はこのようなものに限らず、例えば、順次発光期間に高輝度白色LED2を複数回回転させることなく、1回転だけ順次発光させるようにしてもよい。また、隣接する高輝度白色LED2の発光を1つ以上とばして、五芒星や六芒星等を描くように、全体として回転するように発光させてもよいし、回転するような順序でなくてもよい。
【0032】
図4に示した例では、周期Tの検出期間Sごとに1回の順次発光期間Fsを設けているが、順次発光期間Fsがある周期Tの次の周期Tは休止期間として、検出期間Sの周期T2回ごとに1回の順次発光期間Fsを設けるようにしても良い。このようにフラッシュ発光の休止期間を設けることにより火災感知部よりも大きな電力を消費する光警報部の電力消費を低減することができる。またこのように発光間隔を延ばすことにより、その間をフラッシュ発光させるための充電期間にあてて、瞬時消費電力を増加させないようにしてもよい。そして、このように瞬時消費電力を増加させないようにして、複数又は全ての高輝度白色LED2を同時に発光させるようにしてもよい。
【0033】
フラッシュ発光に休止期間を設ける具体的な例としては、例えば検出期間Sの周期Tが3秒である場合、0.2秒の検出期間Sと2.8秒の非検出期間NSを設け、非検出期間NSでは、0.5秒の遅延時間dの後に光警報部を2秒間順次発光させるようにする。順次発光の休止後、0.3秒で次の検出期間Sとなる。それから次の1周期Tである3秒の間は順次発光させない。そして、その次の検出期間Sが終了してからさらに遅延時間dである0.5秒後に順次発光を開始し、2秒後に休止する。なお、順次発光期間Fsは、検出期間Sの周期Tの2回ごとに設けるものとは限らず、3回以上ごとに設けるようにしてもよい。
【0034】
次に、実施例1に係る煙感知器1の変形例の外観を図5に示す。高輝度白色LED2の配置は、図5のように感知器ヘッド3の外周部である側面に高輝度白色LED2をリング状に配列したものとしてもよい。図1と同様に図5(a)は天井下面に設置した状態で側方から見た図であり、(b)は下方から見た図である。この高輝度白色LED2は感知器ヘッド3の外側へは膨出していない。そして、高輝度白色LED2の位置が自機の煙流入窓4に光が直接あたらない構造であるため、高輝度白色LED2のフラッシュ発光による自機の誤作動を防止することができる。また、隣接する他の煙感知器1の誤作動も防止することができる。すなわち、施設内の全ての煙感知器1や、少なくとも、階層や区画ごとの系統分け、連続するアドレス、等で規定される隣接する煙感知器1について、フラッシュ発光のタイミング又は検出期間Sを同期させるように制御したり、隣接する他の煙感知器1にフラッシュ発光が直接入射しないように高輝度白色LED2の真横方向の放射を抑制するように配光特性を調整したりすることにより、隣接する他の煙感知器1の誤作動を防止できる。
【0035】
また、図5において、高輝度白色LED2をベース8の側面に設け、煙感知器1が火災警報信号を受信すると、高輝度白色LED2へ電力と発光信号とを供給してフラッシュ発光による警報を開始するようにしても良い。この構成でも、上記の図5の煙感知器1と同様に、誤作動を防止できる構造となる。さらに、高輝度白色LED2をベース8の側面に設ける構成にすると、高輝度白色LED2等を設けた光警報用ベースと、設けない通常ベースの2種類を用意することにより、感知器ヘッド3を共通化してコストを削減することができる。
【0036】
ところで、煙感知器1には、自機が火災を感知したことを表示する確認灯7が設けられるが、この確認灯7を廃し、その機能を光警報部の発光手段である高輝度白色LED2に持たせるようにしてもよい。光警報部としての発光であるか、確認灯としての発光であるかは、発光態様を変えることによって判別することができる。発光態様としては、例えば、発光周期を異なるものとしたり、発光輝度や発光色を変えるようにしたりすることができる。発光色を変えるには、高輝度白色LED2に代えて、2色以上の高輝度LEDを用いるようにすればよい。
なお、火災を感知した煙感知器1が、受信機19から火災警報信号を受信したときの光警報部の発光手段の発光態様は、火災を警報するための間欠的なフラッシュ発光であると共に、確認灯としての発光であることが認識できるような発光態様であればよい。したがって、上記のように火災感知していない火災感知器と異なる発光周期としてもよいし、間欠的なフラッシュ発光を行っていない期間に、フラッシュ発光と明確に区別できる程度の低い輝度で点灯させたり、異なる色で点灯させたりするようにしてもよい。
【実施例2】
【0037】
図6は、本発明の実施例2に係る煙感知器1を天井下面へ設置した状態で下方から見た図である。図1と同じ構成は同じ符号で表わし、その説明を省略する。実施例2では、実施例1の煙感知器1と異なり、光警報部の発光手段として、1つ又は複数の高輝度白色LEDを一つの基板上に配置した高輝度白色LEDランプ9を用いる。高輝度白色LEDランプ9は天板5に設けられているが、どの方向からも視認することができるように天板5より突出するように設けるとよい。あるいは、直下から側方近傍までの範囲に配光できるようにレンズやプリズムを用いるようにしてもよい。高輝度白色LEDランプ9は複数設けてもよく、天板に1以上配置される。実施例1では、複数の高輝度白色LED2を順次発光したために、周囲に対して発光を行うまでに一定の時間を要したが、実施例2では高輝度白色LEDランプ9は一度にフラッシュ発光するので、周囲に対する発光を一度で済ませることができる。ひいては、1回のフラッシュ発光が終了してから次の発光までの間隔を長くとることができ、その間を次のフラッシュ発光を行うための電力を蓄える充電期間にあてて瞬時消費電力を抑えることもでき、遅延時間dにあててマージンをとることもできる。図6の実施例では高輝度白色LEDランプ9は天板5に設けられているため、フラッシュ光が煙流入窓に入射せず、自機のフラッシュ発光による誤作動が起こらない。
【実施例3】
【0038】
図7は、本発明の実施例3に係る炎感知器10を天井下面に設置した状態で下方から見た図である。炎感知器10の中央には、炎からの放射(例えば、赤外線や紫外線)を検出する炎検出部である受光素子20を有する。炎感知器10は実施例1と同様の光警報部を有し、高輝度白色LED2は感知器カバー21の下面の外周近くへリング状に配列して、火災警報の際に強い光で発光する。受光素子20は感知器カバー21の下面から奥まった位置にあるため、高輝度白色LED2の光は直接には受光素子20に入ることはなく、自機のフラッシュ発光による誤作動が起こらない。また、高輝度白色LED2は、外側に傾斜した感知器カバー21の下面から少し盛り上がった形状であり、リング状にも配列されており、設置状態で全方位から視認しやすいものである。
【0039】
実施例3の炎感知器10は、炎からの放射を受光素子20で検出して火災を感知するが、他の炎感知器10等の高輝度白色LED2から発した強いフラッシュ光が受光素子20にあたると誤作動の虞がある。そこで、実施例1,2と同様に高輝度白色LED2のフラッシュ発光を炎の非検出期間NSに行うと共に、少なくとも隣接する炎感知器10等の検出期間Sと順次発光期間Fsを同期させることにより誤作動を防止することができる。すなわち、実施例1と同様に、炎感知器10では検出期間Sに、光警報部の順次発光を行わないようにする。
【0040】
実施例3の炎感知器10における検出期間Sおよび非検出期間NSとフラッシュ発光のタイミングは図4と同様であるが、炎感知器10では、実施例1の煙感知器1よりも長い検出期間Sに炎からの放射の検出を行い、それ以外の期間は炎からの放射の検出を行わない非検出期間NSとする。炎感知器10は、炎からの放射をパッシブに検出するものであるので、実施例1における検出発光素子12および発光駆動手段14に相当する構成はない。その他は、実施例1と同様であるので説明を省略する。
【0041】
上記実施例の火災感知器としての煙感知器1や炎感知器10は、これに限定されるものではなく、火災に起因する現象を光学的に検出する検出手段の検出結果に基づいて火災を感知する火災感知部を有する火災感知器に適用できるものであり、その検出手段は、火災に起因する熱、煙、放射、ガスの少なくとも一つ以上を検出するものであれば本発明を適用する対象となり得る。火災感知器は、熱検出部を備えた熱感知器(例えば、定温式スポット型感知器、差動式スポット型感知器、差動式分布型感知器)、減光式の煙検出部を備えた光電式分離型感知器、ガス検出部を備えたガス漏れ火災検知器、等でもよい。また、これらの検出部を複数備えた複合式の火災感知器であってもよい。さらに、高輝度白色LED2は、これに限定されるものではなく、フラッシュ発光をするものであればよく、キセノン管等の他の発光手段でもよい。
【0042】
上記実施例の火災感知器としての煙感知器1や炎感知器10では、図3のように受信機19と煙感知器1や炎感知器10とを直接接続しているが、これに限るものではなく、受信機19と煙感知器1や炎感知器10との間に中継装置を介在させるようにしてもよい。例えば、受信機19からの火災警報信号を受信する警報信号受信手段と、煙感知器1や炎感知器10の光警報部を駆動するための電力を供給する電源装置として設けられ、停電時でも所定時間の動作を可能とする二次電池から成る予備電源を備えた電源装置と、煙感知器1や炎感知器10の光警報部を動作させる信号を出力する信号出力手段と、上記警報信号受信手段が受信した火災警報信号に基づいて上記信号出力手段を介して煙感知器1や炎感知器10の光警報部を動作させる制御手段と、を有する中継装置を設けてもよい。また、この中継装置から煙感知器1や炎感知器10へ電源を供給する電源線に、煙感知器1や炎感知器10の光警報部を動作させる信号を重畳させるようにしてもよい。このように、煙感知器1や炎感知器10のための中継装置を設けることにより、複数の煙感知器1や炎感知器10における光警報部が動作するときに消費する大きな電力を、電力供給に限界がある受信機19ではなく、煙感知器1や炎感知器10の光警報部のために設けた専用の上記中継装置から供給することができる。
【0043】
また、上記実施例の火災感知器としての煙感知器1や炎感知器10では、受信機19と煙感知器1や炎感知器10とを通信線を介して接続しているが、無線通信を介して通信するものであってもよい。さらに、受信機19と煙感知器1や炎感知器10との間に無線中継装置を介在させるようにしてもよい。例えば、受信機19からの火災警報信号を有線又は無線で受信する警報信号受信手段と、煙感知器1や炎感知器10を動作させる無線信号を出力する通信手段と、上記警報信号受信手段が受信した火災警報信号に基づいて上記通信手段を介して煙感知器1や炎感知器10を動作させる制御手段と、を有する無線中継装置を設けてもよい。このとき、煙感知器1や炎感知器10は、送受信手段18を上記無線中継装置の通信手段と無線通信するための通信手段とし、図示しない電池電源を備えるようにする。このように、煙感知器1や炎感知器10を無線式とし、煙感知器1や炎感知器10等の火災感知手段と受信機19とから成る自動火災報知設備とを無線中継器により無線接続することにより、煙感知器1や炎感知器10の設置が容易となる。例えば、既設の建築物に新たに煙感知器1や炎感知器10を配設するとき、新たに電路工事を行わずにリニューアル工事することができるという効果を奏する。また、建築物の改築、改装、間仕切り変更等による煙感知器1や炎感知器10の設置場所変更は、電路による制約がないので大幅に自由度が高まるという効果を奏する。
【0044】
上記実施例の火災感知器としての煙感知器1や炎感知器10等は、火災感知時に受信機19へ火災感知信号を送り、この火災感知信号を受信して火災と判断した受信機19が火災警報信号を煙感知器1や炎感知器10等に出力する自動火災報知設備の火災感知器として説明した。しかしながら、本発明は自動火災報知設備の火災感知器のみに限定して適用されるものではなく、火災感知部と、警報ブザーや音声メッセージ発生手段といった音響警報手段とを備え、受信機と共に用いずに単独動作可能な、住宅用の火災警報器にも適用することができる。また、1台の住宅用の火災警報器が火災を感知した際に、無線通信によって他の1台又は複数台の火災警報器を連動して動作させ、火災警報してもよい。このとき、従来の音響による警報に加えて、上記実施例に示した光警報部を連動して動作させるようにすることができる。さらに光警報部のフラッシュ発光を同期させることもできる。また、上述した無線式の火災感知器や住宅用の火災警報器の電源として、電池電源を用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 煙感知器、2 高輝度白色LED、3 感知器ヘッド、4 煙流入窓、5 天板、6 フィン、7 確認灯、8 ベース、9 高輝度白色LEDランプ、10 炎感知器、11 制御手段、111 検出制御部、112 光警報制御部、12 検出発光素子、13 検出受光素子、14 発光駆動手段、15 増幅器、16 A/Dコンバータ、17 順次発光回路、18 送受信手段、19 受信機、20 受光素子、21 感知器カバー、101 光警報装置、101a 発光手段、101b ブザー、102 受信機、103 煙感知器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8