特許第6396767号(P6396767)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オリンパス株式会社の特許一覧

特許6396767光学素子の加工装置、砥石部材および光学素子の加工方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6396767
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】光学素子の加工装置、砥石部材および光学素子の加工方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 13/04 20060101AFI20180913BHJP
   B24B 13/00 20060101ALI20180913BHJP
   B24D 5/14 20060101ALI20180913BHJP
   B24D 5/02 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   B24B13/04 Z
   B24B13/00 E
   B24D5/14
   B24D5/02 Z
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-231376(P2014-231376)
(22)【出願日】2014年11月14日
(65)【公開番号】特開2016-93866(P2016-93866A)
(43)【公開日】2016年5月26日
【審査請求日】2017年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 惇
【審査官】 小川 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−195261(JP,A)
【文献】 特開平02−284874(JP,A)
【文献】 特開2010−184340(JP,A)
【文献】 特開平06−335853(JP,A)
【文献】 特開2007−144922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 13/04
B24B 13/00
B24D 5/00
B24D 5/02
B24D 5/14
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転自在の光学素子ホルダに保持された光学素子材料を研削加工する光学素子の加工装置であって、
第1の砥粒粒度を有する円筒形の第1の砥石と、前記第1の砥粒粒度よりも大きい第2の砥粒粒度を有し、前記第1の砥石の径と異なる径の円筒形を成す第2の砥石と、高さ方向の一端側が開口した中空円柱状の土台と、を備えた砥石部材と、
前記砥石部材を回転可能に支持する砥石ホルダと、
前記光学素子材料に球面または非球面を創成する場合には前記第1の砥石が前記光学素子材料の頂部周辺に当接するように前記砥石ホルダを移動させ、前記光学素子材料の外径を所定の径まで研削する外径加工を行う場合には前記第2の砥石が前記光学素子材料の側面に当接するように前記砥石ホルダを移動させる砥石ホルダ移動部と、
を備え
前記第1の砥石は、前記土台の外側面に設けられ、
前記第2の砥石は、前記土台の中空部に面する内側面に設けられたことを特徴とする光学素子の加工装置。
【請求項2】
回転自在の光学素子ホルダに保持された光学素子材料を研削加工する光学素子の加工装置であって、
第1の砥粒粒度を有する円筒形の第1の砥石と、前記第1の砥粒粒度よりも大きい第2の砥粒粒度を有し、前記第1の砥石の径と異なる径の円筒形を成す第2の砥石と、円柱に、該円柱の中心軸と同じ中心軸の円筒状の溝が形成された土台と、前記第1の砥粒粒度よりも大きい第3の砥粒粒度を有し、前記第1の砥石の径および前記第2の砥石の径と異なる径の円筒形を成す第3の砥石と、を備えた砥石部材と、
前記砥石部材を回転可能に支持する砥石ホルダと、
前記光学素子材料に球面または非球面を創成する場合には前記第1の砥石が前記光学素子材料の頂部周辺に当接するように前記砥石ホルダを移動させ、前記光学素子材料の外径を所定の径まで研削する外径加工を行う場合には前記第2の砥石が前記光学素子材料の側面に当接するように前記砥石ホルダを移動させる砥石ホルダ移動部と、
を備え、
前記第1の砥石は、前記土台の外側面に設けられ、
前記第2の砥石は、前記溝の側面のうちの径が大きい側に設けられ、
前記第3の砥石は、前記溝の側面のうちの径が小さい側に設けられたことを特徴とする学素子の加工装置。
【請求項3】
前記第3の砥粒粒度は、前記第2の砥粒粒度よりも大きいことを特徴とする請求項に記載の光学素子の加工装置。
【請求項4】
前記第3の砥粒粒度は、前記第2の砥粒粒度よりも小さいことを特徴とする請求項に記載の光学素子の加工装置。
【請求項5】
前記第3の砥粒粒度は、前記第2の砥粒粒度と等しいことを特徴とする請求項に記載の光学素子の加工装置。
【請求項6】
研削加工対象物に当接して研削加工する砥石部材であって、
第1の砥粒粒度を有する円筒形の第1の砥石と、
前記第1の砥粒粒度よりも大きい第2の砥粒粒度を有し、前記第1の砥石の径と異なる径の円筒形を成す第2の砥石と、
円柱に、該円柱の中心軸と同じ中心軸の円筒状の溝が形成された土台と、
前記第1の砥粒粒度よりも大きい第3の砥粒粒度を有し、前記第1の砥石の径および前記第2の砥石の径と異なる径の円筒形を成す第3の砥石と、
え、
前記第1の砥石は、前記土台の外側面に設けられ、
前記第2の砥石は、前記溝の側面のうちの径が大きい側に設けられ、
前記第3の砥石は、前記溝の側面のうちの径が小さい側に設けられたことを特徴とする砥石部材。
【請求項7】
前記第3の砥粒粒度は、前記第2の砥粒粒度よりも大きいことを特徴とする請求項に記載の砥石部材。
【請求項8】
前記第3の砥粒粒度は、前記第2の砥粒粒度よりも小さいことを特徴とする請求項に記載の砥石部材。
【請求項9】
前記第3の砥粒粒度は、前記第2の砥粒粒度と等しいことを特徴とする請求項に記載の砥石部材。
【請求項10】
回転自在の光学素子ホルダに保持された光学素子材料の表面に当接して前記光学素子材料を研削加工するための砥石部材であって、第1の砥粒粒度を有する円筒形の第1の砥石と、前記第1の砥粒粒度よりも大きい第2の砥粒粒度を有し、前記第1の砥石の径と異なる径の円筒形を成す第2の砥石と、高さ方向の一端側が開口した中空円柱状の土台と、を備え、前記第1の砥石は、前記土台の外側面に設けられ、前記第2の砥石は、前記土台の中空部に面する内側面に設けられた砥石部材を有する加工装置が行う光学素子の加工方法であって、
前記砥石部材の前記第1の砥石を前記光学素子材料の頂部周辺に当接させ、前記光学素子材料および前記砥石部材を回転させて前記光学素子材料に球面または非球面を創成する球面または非球面加工工程と、
前記砥石部材の前記第2の砥石を前記光学素子材料の側面に当接させ、前記光学素子材料および前記砥石部材を回転させて前記光学素子材料の外径を所定の径まで研削する外径加工工程と、
を含み、前記球面または非球面加工工程と前記外径加工工程とを任意の順序で行うことを特徴とする光学素子の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子の加工装置、砥石部材および光学素子の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズを研削する加工装置では、円柱形の光学ガラス材料等の光学素子の被加工物(ワーク)の加工対象面に砥石の先端を当接させた状態でワークと砥石とを回転させることによって、球面加工および非球面加工を行っている。従来、各種光学装置の小型化のために微小径のレンズが必要となり、ワークの外径の微小化、ワークに生成する球面の曲率半径の微小化が要求されている。ワークの外径の微小化やワークに生成する球面の曲率半径の微小化に対応させて砥石の外径も小さくしていくと、球面加工中に砥石に撓みが生じてしまい、所望の球面形状を得ることができない。そこで、円盤形状に成形された砥石を使用し、砥石の側面をワークに当接させながら砥石を回転させることによってワークを研削する加工装置が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
図11は、従来技術にかかる加工装置の要部断面とその動作を説明するための模式図である。図11(1)に示すように、加工装置101の要部は、ワークホルダユニット110と、砥石ユニット120とによって構成される。ワークホルダユニット110は、ワーク102を保持するワークホルダ111、ワークホルダ111が先端に取り付けられた回転スピンドル112、ワークホルダ111を移動させるワークホルダ移動機構113を備える。砥石ユニット120は、軸部121aと円盤状の土台121bと、土台121bの外側面全面に設けられた砥石121cとを有する砥石部材121、砥石部材121の軸部121aを保持する砥石スピンドル122、砥石スピンドル122の移動機構(不図示)を有する。
【0004】
加工装置101を用いて、ワーク102に球面または非球面を創成する場合、まず、ワークホルダ移動機構113が矢印Yaのように回転スピンドル112を回転軸B1と平行に移動させて、回転軸B1と砥石軸B3とが平行となる位置関係でワーク102の頂部と砥石121cとを当接させる。その状態で、回転スピンドル112と砥石スピンドル122とがワーク102と砥石部材121とを矢印Yb,Ycのようにそれぞれの回転軸B1,B2を中心に回転させることによって、所望の厚さまでワーク102の頂部を研削する。続いて、砥石スピンドル122の移動機構が矢印Ydのようにワーク102と砥石121cとの当接面を中心に砥石スピンドル122を旋回させることによって、ワーク102に球面または非球面を創成する。球面または非球面創成後、回転スピンドル112と砥石スピンドル122との回転が停止され、矢印Yeのように、砥石スピンドル122の移動によって、ワーク102と砥石121cとが離される。次に、ワーク102の外径を所望の外径に加工する外径加工を行う。外径加工では、図11(2)に示すように、ワークホルダ移動機構113が矢印Yfのようにワーク102の位置調整を行い、砥石スピンドル122の移動機構が砥石スピンドル122を旋回させ、さらに、矢印Ygのように移動させて、砥石121cとワーク102の側面とを当接させる。その状態で、ワーク102および砥石部材121を、接触位置で、矢印Yh,Yiのようにそれぞれの回転軸B1,B2を中心に逆向きに回転させることによってワーク102外径を所望の径に研削加工する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−150324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、加工装置101では、球面または非球面加工ほど厳密性を求められていない外径加工においても、球面または非球面加工用の砥粒粒度の小さい砥石121cをそのまま用いて研削しているため、外径加工に時間がかかり、光学素子の加工時間の短縮化が難しかった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、光学素子の加工時間を短縮化できる光学素子の加工装置、砥石部材および光学素子の加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる光学素子の加工装置は、回転自在の光学素子ホルダに保持された光学素子材料を研削加工する光学素子の加工装置であって、第1の砥粒粒度を有する円筒形の第1の砥石と、前記第1の砥粒粒度よりも大きい第2の砥粒粒度を有し、前記第1の砥石の径と異なる径の円筒形を成す第2の砥石と、を備えた砥石部材と、前記砥石部材を回転可能に支持する砥石ホルダと、前記光学素子材料に球面または非球面を創成する場合には前記第1の砥石が前記光学素子材料の頂部周辺に当接するように前記砥石ホルダを移動させ、前記光学素子材料の外径を所定の径まで研削する外径加工を行う場合には前記第2の砥石が前記光学素子材料の側面に当接するように前記砥石ホルダを移動させる砥石ホルダ移動部と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる光学素子の加工装置は、前記砥石部材は、高さ方向の一端側が開口した中空円柱状の土台をさらに備え、前記第1の砥石は、前記土台の外側面に設けられ、前記第2の砥石は、前記土台の中空部に面する内側面に設けられることを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる光学素子の加工装置は、前記砥石部材は、円柱に、該円柱の中心軸と同じ中心軸の円筒状の溝が形成された土台と、前記第1の砥粒粒度よりも大きい第3の砥粒粒度を有し、前記第1の砥石の径および前記第2の砥石の径と異なる径の円筒形を成す第3の砥石と、をさらに備え、前記第1の砥石は、前記土台の外側面に設けられ、前記第2の砥石は、前記溝の側面のうちの径が大きい側に設けられ、前記第3の砥石は、前記溝の側面のうちの径が小さい側に設けられることを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる光学素子の加工装置は、前記第3の砥粒粒度は、前記第2の砥粒粒度よりも大きいことを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる光学素子の加工装置は、前記第3の砥粒粒度は、前記第2の砥粒粒度よりも小さいことを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかる光学素子の加工装置は、前記第3の砥粒粒度は、前記第2の砥粒粒度と等しいことを特徴とする。
【0014】
また、本発明にかかる砥石部材は、研削加工対象物に当接して研削加工する砥石部材であって、第1の砥粒粒度を有する円筒形の第1の砥石と、前記第1の砥粒粒度よりも大きい第2の砥粒粒度を有し、前記第1の砥石の径と異なる径の円筒形を成す第2の砥石と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
また、本発明にかかる砥石部材は、高さ方向の一端側が開口した中空円柱状の土台をさらに備え、前記第1の砥石は、前記土台の外側面に設けられ、前記第2の砥石は、前記土台の中空部に面する内側面に設けられることを特徴とする。
【0016】
また、本発明にかかる砥石部材は、円柱に、該円柱の中心軸と同じ中心軸の円筒状の溝が形成された土台と、前記第1の砥粒粒度よりも大きい第3の砥粒粒度を有し、前記第1の砥石の径および前記第2の砥石の径と異なる径の円筒形を成す第3の砥石と、をさらに備え、前記第1の砥石は、前記土台の外側面に設けられ、前記第2の砥石は、前記溝の側面のうちの径が大きい側に設けられ、前記第3の砥石は、前記溝の側面のうちの径が小さい側に設けられることを特徴とする。
【0017】
また、本発明にかかる砥石部材は、前記第3の砥粒粒度は、前記第2の砥粒粒度よりも大きいことを特徴とする。
【0018】
また、本発明にかかる砥石部材は、前記第3の砥粒粒度は、前記第2の砥粒粒度よりも小さいことを特徴とする。
【0019】
また、本発明にかかる砥石部材は、前記第3の砥粒粒度は、前記第2の砥粒粒度と等しいことを特徴とする。
【0020】
また、本発明にかかる光学素子の加工方法は、回転自在の光学素子ホルダに保持された光学素子材料の表面に当接して前記光学素子材料を研削加工するための砥石部材であって、第1の砥粒粒度を有する円筒形の第1の砥石と、前記第1の砥粒粒度よりも大きい第2の砥粒粒度を有し、前記第1の砥石の径と異なる径の円筒形を成す第2の砥石と、を備えた砥石部材を有する加工装置が行う光学素子の加工方法であって、前記砥石部材の前記第1の砥石を前記光学素子材料の頂部周辺に当接させ、前記光学素子材料および前記砥石部材を回転させて前記光学素子材料に球面または非球面を創成する球面または非球面加工工程と、前記砥石部材の前記第2の砥石を前記光学素子材料の側面に当接させ、前記光学素子材料および前記砥石部材を回転させて前記光学素子材料の外径を所定の径まで研削する外径加工工程と、を含み、前記球面または非球面加工工程と前記外径加工工程とを任意の順序で行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、光学素子の加工装置における砥石部材が、第1の砥粒粒度を有する円筒形の第1の砥石と、第1の砥粒粒度よりも大きい第2の砥粒粒度を有し、第1の砥石の径と異なる径の円筒形を成す第2の砥石と、を備えるため、加工対象の加工精度に応じて、第1の砥石と、第1の砥石部よりも大きい砥粒粒度を有する第2の砥石とを使い分けることができ、光学素子材料を部位に応じた適切な精度で加工しながら、光学素子の加工時間の短縮化も図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、実施の形態にかかる光学素子の全体構成を模式的に示す図である。
図2図2は、図1に示すワークホルダの要部構成を説明するための図である。
図3図3は、図1に示す砥石部材を、回転軸A2を通る平面で切断した断面図である。
図4-1】図4−1は、図1に示す加工装置における光学素子の加工方法を説明する図である。
図4-2】図4−2は、図1に示す加工装置における光学素子の加工方法を説明する図である。
図4-3】図4−3は、図1に示す加工装置における光学素子の加工方法を説明する図である。
図4-4】図4−4は、図1に示す加工装置における光学素子の加工方法を説明する図である。
図4-5】図4−5は、図1に示す加工装置における光学素子の加工方法を説明する図である。
図4-6】図4−6は、図1に示す加工装置における光学素子の加工方法を説明する図である。
図5図5は、本実施の形態の変形例1にかかる砥石部材の縦断面図である。
図6図6は、本実施の形態の変形例2にかかる砥石部材の縦断面図である。
図7図7は、本実施の形態の変形例2にかかる他の砥石部材の縦断面図である。
図8図8は、本実施の形態の変形例3にかかる砥石部材の縦断面図である。
図9図9は、実施の形態の変形例3にかかる加工装置における光学素子の加工方法を説明する図である。
図10図10は、実施の形態の変形例3にかかる他の砥石部材の縦断面図である。
図11図11は、従来技術にかかる加工装置の要部断面とその動作を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下の説明では、本発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」という)として、光学素子を研削する砥石部材を有する光学素子の加工装置について説明する。また、この実施の形態により、この発明が限定されるものではない。さらに、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。さらにまた、図面は、模式的なものであり、各部材の厚みと幅との関係、各部材の比率等は、現実と異なることに留意する必要がある。また、図面の相互間においても、互いの寸法や比率が異なる部分が含まれている。
【0024】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態にかかる光学素子の加工装置の全体構成を模式的に示す図である。図1に示すように、本実施の形態にかかる光学素子の加工装置1は、ワークホルダユニット10、砥石ユニット20、および、制御装置30を有する。
【0025】
ワークホルダユニット10は、円柱形の光学ガラス材料等の光学素子の被加工物(ワーク)2を保持するワークホルダ11、ワークホルダ11が先端に取り付けられるとともに回転軸A1で矢印Y1のように回転する回転スピンドル12、回転スピンドル12を矢印Y2のように回転軸A1と平行に移動させることでワークホルダ11を移動させるワークホルダ移動機構13、並びに、回転スピンドル12およびワークホルダ移動機構13を駆動するワークホルダユニット駆動部14を備える。
【0026】
砥石ユニット20は、円柱状の土台211と土台211の底面中心に接続する軸部212とを有する砥石部材21、軸部212を支持し砥石部材21を回転軸A2で矢印Y3のように回転させる砥石スピンドル22、砥石スピンドル22を矢印Y4のように回転軸A2の直交方向に移動させる移動ステージ23、上部に移動ステージ23が固定されワーク2と砥石部材21との当接位置近傍を中心として矢印Y5のように旋回する旋回ステージ24、並びに、砥石スピンドル22と移動ステージ23と旋回ステージ24とを駆動する砥石ユニット駆動部25を有する。軸A3は、砥石軸であり、回転軸A2と直交する軸のうち後述する円筒形の第2の砥石211bの高さの半分の位置を通る面上にある軸である。
【0027】
制御装置30は、ワークホルダユニット駆動部14および砥石ユニット駆動部25のそれぞれが接続されており、各駆動部が駆動するステージの位置、ステージの移動速度、並びに、スピンドルの回転速度の設定を行い、各駆動部の動作を制御する。
【0028】
図2は、ワークホルダ11の要部構成を説明するための図である。図2に示すように、
加工前のワーク2は円柱形であり、ワークホルダ11は、加工前のワーク2よりも径が小さい円柱形を成す。ワーク2の非加工面は、接着剤11aによってワークホルダ11の先端側底面11bに接着されている。ワークホルダ11の基端側底面は、回転スピンドル12の固定台12a先端に取り付けられている。加工装置1においては、矢印Y6の方向から、後述する砥石部材21の第1の砥石211aをワーク2の頂部および頂部周辺に当接させて、ワーク2に所定の曲率半径の球面または非球面を創成する球面または非球面加工工程と、矢印Y7の方向から、後述する砥石部材21の第2の砥石211bをワーク2の側面に当接させてワーク2の外径を所定の径まで研削する外径加工工程とを行うことによって、レンズ等の光学素子2aが完成する。
【0029】
図3は、砥石部材21を、回転軸A2を通る平面で切断した断面図である。図3に示すように、砥石部材21を構成する土台211は、軸部212が接続している側とは逆側に開口213が生成されており、高さ方向の一端側が開口した中空円柱状を成す。この土台211の外側面Paには、土台211の外径と等しい内径を有する円筒形の第1の砥石211aが設けられている。土台211の中空部に面する内側面Pbには、土台211の内径と等しい外径を有する円筒形の第2の砥石211bが設けられている。第1の砥石211aの砥粒粒度(第1の砥粒粒度)と第2の砥石211bの砥粒粒度(第2の砥粒粒度)とは異なり、第2の砥粒粒度は第1の砥粒粒度よりも大きい。
【0030】
加工装置1では、第1の砥石211aを用いてワーク2に対する球面または非球面加工を行い、第2の砥石211bを用いてワーク2の外径加工を行う。図4−1〜図4−6は、加工装置1における光学素子の加工方法を説明する図であり、加工装置1の要部を回転軸A1,A2を通る平面で切断した断面図である。
【0031】
まず、ワーク2に対する球面または非球面加工工程について説明する。図4−1に示すように、まず、制御装置30は、ワークホルダ移動機構13、移動ステージ23および旋回ステージ24(不図示)を駆動することによって、球面加工または非球面加工工程において用いる第1の砥石211aと、ワーク2の頂部とが対向するように位置決めする。制御装置30は、回転軸A1と砥石軸A3とが同一直線上に位置するようにワーク2と第1の砥石211aとを位置決めする。
【0032】
続いて、図4−2に示すように、制御装置30は、ワークホルダ移動機構13を駆動し、矢印Y11のように回転軸A1と平行に回転スピンドル12を移動させて、ワーク2の頂部と砥石211aとを当接させる。この状態で、回転スピンドル12および砥石スピンドル22が、制御装置30の制御のもと、それぞれの回転軸A1,A2を中心に矢印Y12、Y13のように逆向きに回転することによって、所望の厚さまでワーク2の頂部が研削される。続いて、図4−3に示すように、制御装置30の制御のもと、旋回ステージ24(不図示)が、矢印Y14のようにワーク2と砥石211aとの当接面を中心に砥石スピンドル22を旋回させることによって、ワーク2に球面または非球面を創成する。
【0033】
次に、ワーク2の外径を所望の外径に加工する外径加工について説明する。制御装置30は、回転スピンドル12および砥石スピンドル22の回転を停止し、図4−4に示すように、ワークホルダ移動機構13を回転軸A1に沿って矢印Y15のように後方に移動させてワーク2と第1の砥石211aとを分離する。そして、制御装置30は、回転軸A1と回転軸A2とが平行となるように矢印Y16のように旋回ステージ24(不図示)を旋回させるとともに、矢印Y17のように移動ステージ23を砥石軸A3に沿って移動させることによって、ワーク2の頂部と砥石部材21の土台211の開口213とを対向させる。制御装置30は、図4−5に示すように、ワークホルダ移動機構13に回転スピンドル12を矢印Y18のように回転軸A1と平行に移動させるとともに、移動ステージ23を矢印Y19のように砥石軸A3と平行に下方に移動させて、外径加工工程において用いる第2の砥石211bと、ワーク2の側面とを当接させる。図4−6のように、この状態で、回転スピンドル12および砥石スピンドル22が、制御装置30の制御のもと、それぞれの回転軸A1,A2を中心に逆向きに回転することによって、ワーク2の外径を所望の径に研削し、光学素子2aを形成する。
【0034】
このように、本実施の形態にかかる光学素子の加工装置1は、第1の砥粒粒度を有する円筒形の第1の砥石211aと、第1の砥粒粒度よりも大きい第2の砥粒粒度を有し、第1の砥石211aの径と異なる径の円筒形を成す第2の砥石211bと、を備えた砥石部材21を有する。このため、本実施の形態によれば、加工対象の光学素子に求められる加工精度に応じて、第1の砥石211aと、第1の砥石211aよりも大きい砥粒粒度を有する第2の砥石211bとを使い分けることができ、光学素子材料を部位に応じた適切な精度で加工しながら、同じ砥粒粒度の砥石で球面および外径のいずれも加工していた場合と比較して光学素子の加工時間の短縮化も図ることができる。
【0035】
本実施の形態では、上述したように、砥粒粒度の大きさが1種類の砥石で球面又は非球面の創生及び外径研削を行う従来の加工と異なり、砥粒粒度を有する第1の砥石211aを用いて球面又は非球面を創成し、第1の砥粒粒度より大きい第2の砥粒粒度を有する第2の砥石211bを用いて外径研削を行う。例えば、本実施の形態の一例として、第1の砥石211aの砥粒の大きさ(メッシュ#800)に対して、第2の砥石211bの砥粒の大きさをメッシュ#400としてレンズの外径加工を行った結果について説明する。また、比較のため、砥粒の大きさ(メッシュ#800)が1種類の砥石でレンズの外径加工を行う従来の加工装置における外径加工の結果についても示す。
【0036】
表1は、外径切り込み量の一例を示す表である。表2は、従来の外径加工、または、本実施の形態の外径加工における外径切込速度または外径加工時間の比較の一例を示す図である。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
表1の外径切込量1〜3については、表2の切込速度1〜3がそれぞれ対応する。外径加工時の切込量を表1のように設定した場合、従来と比較して砥粒粒度が大きい第2の砥石211bを用いた本実施の形態における外径加工では、外径切込速度を、いずれの切込量についても、表2のように従来外径加工の切込速度よりも速くすることができ、この結果、同研削量における外径加工時間を従来よりも大幅に短縮することが可能となる。したがって、本実施の形態によれば、同じ砥粒粒度の砥石で球面および外径のいずれも加工していた従来と比較し、光学素子の加工時間を短縮化することができる。
【0040】
(実施の形態の変形例1)
図5は、本実施の形態の変形例1にかかる砥石部材の縦断面図である。本実施の形態では、図5に示す砥石部材21Aのように、第1の砥石211aを、土台211の開口213側の底面Pcに設けてもよい。
【0041】
(実施の形態の変形例2)
図6は、本実施の形態の変形例2にかかる砥石部材の縦断面図である。本実施の形態では、図6に示すように、径が異なる円柱を重ねた形状の土台211Bを有する砥石部材21Bを用いてもよい。土台211Bは、径が大きい円柱上に径が小さい円柱が、それぞれの中心軸が同軸となるように重なった形状を有する。砥石部材21Bは、土台211Bにおいて、径の大きい円柱の外側面Pdに、該円柱の外径と内径が等しい円筒形の第1の砥石211aが設けられ、径の小さい円柱の外側面Peに、該円柱の外径と内径が等しい円筒形の第2の砥石211bが設けられる。また、図7は、本実施の形態の変形例2にかかる他の砥石部材の縦断面図である。図7の砥石部材21Cに示すように、第2の砥石211bを、土台211Bの径の小さい円柱を囲むように、径の大きい円柱の上面Pfに設けてもよい。
【0042】
(実施の形態の変形例3)
図8は、本実施の形態の変形例3にかかる砥石部材の縦断面図である。図8に示すように、本実施の形態の変形例3にかかる砥石部材21Dは、土台211Dが、円柱に、軸部212が接続している側とは逆側に、円筒形の溝213Dが形成された形状を成す。円柱の中心軸と、溝213Dの中心軸は同じである。
【0043】
土台211Dの外側面Pgには、土台211Dの外径と等しい内径を有する円筒形の第1の砥石211aが設けられている。土台211Dにおける溝213Dの側面のうち径が大きい側の側面Phには、溝213Dの外径と等しい外径を有する円筒形の第2の砥石211bが設けられている。溝213Dの側面のうち径が小さい側の側面Piには、溝213Dの内径と等しい内径を有する円筒形を成す第3の砥石211cが設けられる。第3の砥石211cは、第1の砥石211aにおける第1の砥粒粒度よりも大きく、第2の砥石211bにおける第2の砥粒粒度よりも大きい第3の砥粒粒度を有する。本変形例3においては、第2の砥石211bおよび第3の砥石211cを用いて、ワーク2の外径加工を行う。
【0044】
図9は、実施の形態の変形例3にかかる砥石部材21Dを有する加工装置における光学素子の加工方法を説明する図であり、加工装置の要部を回転軸A1,A2を通る平面で切断した断面図である。図9に示すように、外径加工工程において、制御装置30(不図示)は、砥石スピンドル22を回転軸A1との直交方向(矢印Y21参照)および回転軸A2との平行方向に移動させて第3の砥石211cとワーク2の側面とを当接させ、回転スピンドル12および砥石スピンドル22を回転軸A1,A2を中心に逆向きに回転させることによって、ワーク2の外径を所望の径に研削するワーク2の外径粗加工を行う。その後、制御装置30は、砥石スピンドル22を回転軸A1との直交方向に移動させて、第3の砥粒粒度よりも小さい第2の砥石211bとワーク2の側面とを当接させ、回転スピンドル12および砥石スピンドル22を逆向きに回転させることによって、ワーク2の外径仕上げ加工を行い、光学素子2aを形成する。
【0045】
このように、外径加工用の第2の砥石211bおよび第3の砥石211cを使い分けることによって、光学素子2aの外径寸法の加工精度を高めることができるとともに、光学素子2aの外側面の割れや欠けなども仕上げ加工でなくすことができる。
【0046】
もちろん、第3の砥粒粒度が第2の砥粒粒度よりも小さくてもよい。この場合には、第2の砥石211bでワーク2の外径粗加工を行い、第3の砥石211cでワーク2の外径仕上げ加工を行えばよい。また、第3の砥粒粒度が第2の砥粒粒度と等しくてもよい。この場合には、第3の砥石211cは、第2の砥石211bの予備として適用でき、第2の砥石211bが使用できなくなった場合でも、第3の砥石211cを外径加工用に使用でき、砥石部材21Dを新しいものに交換しなくてもよくなる。
【0047】
図10は、実施の形態の変形例3にかかる他の砥石部材の縦断面図である。図10の砥石部材21Eでは、土台211Eは、砥石部材21Bの土台211Bに比して、中心軸が他の円柱の中心軸と同軸になるように、さらに小さい径の円柱を上に重ねた形状を有し、最も径の小さい円柱の外側面Pjに、該円柱の外径と内径が等しい円筒形の第3の砥石211cが設けられる。この場合も、砥石部材21Dと同様に、第3の砥石211cの第3の砥粒粒度を、第2の砥石211bの砥粒粒度に対し変えることによって、外径加工用の第2の砥石211bおよび第3の砥石211cを外径粗加工用および外径仕上げ加工用に使い分けることができる。また、第3の砥粒粒度を第2の砥粒粒度と等しくすることによって、第3の砥石211cを、第2の砥石211bの予備とすることもできる。
【符号の説明】
【0048】
1,101 加工装置
2,102 ワーク
10,110 ワークホルダユニット
11,111 ワークホルダ
12,112 回転スピンドル
12a 固定台
13,113 ワークホルダ移動機構
14 ワークホルダユニット駆動部
20,120 砥石ユニット
21,21A〜21E,121 砥石部材
22,122 砥石スピンドル
23 移動ステージ
24 旋回ステージ
25 砥石ユニット駆動部
30 制御装置
121a,212 軸部
121b,211,211B,211D,211E 土台
121c 砥石
211a 第1の砥石
211b 第2の砥石
211c 第3の砥石
図1
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図4-4】
図4-5】
図4-6】
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11