(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記補正手段は、前記各電流センサの設置位置に関する情報を保持し、前記情報に基づいて、前記第1の電路が前記第2の電路に近接するか否かを判断することを特徴とする請求項1に記載の電流測定装置。
前記情報は、前記各電流センサの並び順を示す番号であり、前記第1の電路の電流を測定する第1の電流センサが、前記第2の電路の電流を測定する第2の電流センサに隣接する場合に、前記第1の電路が前記第2の電路に近接するものと判断することを特徴とする請求項2に記載の電流測定装置。
前記情報は、前記各電流センサ間の距離を示す数値であり、前記第1の電路の電流を測定する第1の電流センサと、前記第2の電路の電流を測定する第2の電流センサとの間の距離が、第3の閾値よりも小さい場合に、前記第1の電路が前記第2の電路に近接するものと判断することを特徴とする請求項2に記載の電流測定装置。
前記補正後の電流値に基づいて、前記各電路における消費電力を算出する電力算出手段を更に備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電流測定装置。
【背景技術】
【0002】
近年、クランプ式電流センサを使って、分電盤内の複数の分岐電線経路(以下、「分岐電路」という。また、「電線経路」を「電路」という。)の交流電力測定を行う電力測定装置が使用されることがある。電力測定装置では、分岐電路毎の消費電力を高精度で測定することが求められる。
【0003】
分電盤内の分岐電路毎の消費電力を高精度で測定する技術の一例が、特許文献1に開示されている。
【0004】
特許文献1の分電盤は、個々の分岐電路に流れる電流を検出する電流センサを含む電流センサユニットと、分岐電路毎の消費電力を計算する通信計測ユニットとを含む。電流センサユニットは、工場出荷前に計測された、各分岐電路に流された基準電流に対する、電流センサによる検出電流の比を補正値として記憶する。通信計測ユニットは、電流センサユニットに予め記憶された補正値に基づいて、分岐電路毎の計測値を補正し、補正値に基づいて分岐電路毎の消費電力を計算する。
【0005】
上記動作の結果、特許文献1の分電盤は、電流センサユニットを交換する場合に、交換後に電流センサ毎に誤差調整をすることなく、高精度で消費電力を計測する。
【0006】
分電盤内の分岐電路毎の消費電力を高精度で測定する技術の別の一例が、特許文献2に開示されている。
【0007】
特許文献2の分電盤は、センサ部と測定部とを含む。センサ部は、外部電力の供給を受ける主幹路の電圧及び電流と、主幹路に供給された電力を分岐して出力する分岐電路毎の電流とを検出する。測定部は、まず、主幹路の電圧及び電流の検出結果に基づいて、主幹路から分岐電路に供給される総電力量を算出する。次に、測定部は、各分岐電路に流れる電流の検出結果に基づいて、複数の分岐路に流れる総電流量に対する分岐電路毎の電流の割合を示す電流分配率を算出する。続いて、測定部は、総電力量と電流分配率とに基づいて、分岐電路毎の電力量を算出する。
【0008】
上記動作の結果、特許文献2の分電盤は、主幹路の電圧と電流の位相差を考慮した総電力量を算出する。すなわち、分電盤が算出する総電力量は、力率を1に固定して定格電圧を用いて算出される電力量に比べて、誤差が小さい。従って、特許文献2の分電盤は、主幹路から分岐した分岐電路毎の電力量を高精度で計測する。
【0009】
さて、一般に、電力測定装置において、分電盤内に複数の分岐電路が平行して配線されている場合に、大きな電流が流れている分岐電路があると、隣接する別の分岐電路に磁界の影響により漏れ電流が発生する。
【0010】
電力測定装置では、隣接する別の分岐電路からの磁界の影響を取り除いて、分岐電路毎の消費電力を高精度で測定することが望ましい。
【0011】
外部磁場による影響を受けにくい電流センサ技術の一例が特許文献3に開示されている。
【0012】
特許文献3の電流センサは、電流バーが貫通する集磁コアと、集磁コアに巻回された電流検出コイルと、集磁コアの近傍に設置された補償コイルとを有する。補償コイルは、外部磁場により電流検出コイルに発生する誤差電圧を相殺する。
【0013】
上記動作の結果、特許文献3の電流センサは、外部磁場による影響を受けにくく、正確に電流を計測する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、すべての図面において、同等の構成要素には同じ符号を付し、適宜説明を省略する。
(第1の実施形態)
本実施形態における構成について説明する。
【0024】
図1は、本発明の第1の実施形態における電流測定装置100の構成の一例を示すブロック図である。電流測定装置100は、電流センサ201、電流センサ202に接続される。
【0025】
電流センサ201、電流センサ202は、それぞれ、電路301(電路A)、電路302(電路B)に流れる電流を検出する。電流センサ201、電流センサ202は、例えば、クランプ式交流電流センサである。電流センサ201、電流センサ202は、外部磁場により発生する誤差電圧を相殺するための補償コイル等を有する必要はない。
【0026】
電流測定装置100は、測定電流保持手段102と、誘導電流補正手段101とを含む。
【0027】
測定電流保持手段102は、電流センサ201、電流センサ202により測定された電路毎の電流値を保持する。
【0028】
なお、以下では、「近接」する電路に、磁場により無視できない大きさの微小電流を発生させる可能性がある大きさの電流を「大電流」という。電路間の「近接」とは、ある電路に流れる大電流で発生する電磁誘導によって別の電路に生じる電流の値が、その別の電路にとって無視できない誤差になるほど近い距離であることを意味する。ある電流が大電流であるか否かは、電流の大きさが「大電流閾値」以上であるか否かにより判別される。
【0029】
また、以下では、特定の電路の測定電流が、近接する電路を流れる大電流による磁場の影響により、無視できない大きさの誤差を発生させられる可能性がある大きさの電流を「小電流」という。ある電流が小電流であるか否かは、電流の大きさが「小電流閾値」以下であるか否かにより判別される。
【0030】
誘導電流補正手段101は、大電流閾値及び小電流閾値、並びに各電路間の「近接関係」を予め保持する。各電路間の「近接関係」とは、任意の2つの電路が互いに近接するか否かを示す情報である。誘導電流補正手段101は、大電流閾値、小電流閾値、及び近接関係に基づいて、電流センサにより測定された電路毎の電流値において、小電流であって、且つ近接する電路を流れる大電流による磁場の影響により、無視できない大きさの誤差を発生させられた電流値を補正する。具体的には、誘導電流補正手段101は、小電流であって、且つ近接する電路を大電流が流れる電路の電流値をゼロに補正する。
【0031】
次に、本実施形態における動作について説明する。
【0032】
図2は、本発明の第1の実施形態における電流測定装置100の動作を示すフローチャートである。なお、
図2は、1つの電流センサにより検出された1つの電流値を処理する際の、電流測定装置100の動作を示す。また、
図2に示すフローチャート及び以下の説明は一例であり、適宜求める処理に応じて、処理順等を入れ替えたり、処理を戻したり、又は処理を繰り返したりしてもよい。
【0033】
電流測定装置100の誘導電流補正手段101は、特定の電路について、電流センサにより測定され、測定電流保持手段102により保持された電流値が小電流閾値以下であるか否かを判定する(ステップS101)。測定電流保持手段102により保持された電流値が小電流閾値以下でなければ(ステップS101:No)、誘導電流補正手段101は、処理を終了する。測定電流保持手段102により保持された電流値が小電流閾値以下であれば(ステップS101:Yes)、誘導電流補正手段101は、ステップS102の処理へ進む。
【0034】
電流測定装置100の誘導電流補正手段101は、特定の電路について、電流センサにより測定され、測定電流保持手段102により保持された電流値が大電流閾値以上である、近接する別の電路が存在するか否かを判定する(ステップS102)。別の電路が存在しなければ(ステップS102:No)、誘導電流補正手段101は、処理を終了する。別の電路が存在すれば(ステップS102:Yes)、誘導電流補正手段101は、特定の電路について、電流センサにより測定された電流値をゼロに補正する(ステップS103)。
【0035】
次に、本発明の第1の実施形態の処理の具体例について説明する。
【0036】
図3は、本発明の第1の実施形態における電流測定装置100の動作条件の具体例を説明するための図である。電流測定装置100は、4本の電路の電流を測定する。具体的には、電流センサ201、電流センサ202、電流センサ203、電流センサ204は、それぞれ、電路301(電路A)、電路302(電路B)、電路303(電路C)、電路304(電路D)に流れる電流を検出する。
【0037】
図4は、本発明の第1の実施形態における電流測定装置100の動作の具体例を説明するための図である。
図4(a)は、電流測定装置100の誘導電流補正手段101が保持する、電路A、電路B、電路C、電路D間の近接関係を示す。
図4(a)では、電路は電路A、電路B、電路C、電路Dの順で並び、隣接する電路同士が互いに近接する。
図4(b)は、電流測定装置100の誘導電流補正手段101が保持する、大電流閾値及び小電流閾値を示す。
図4(b)では、大電流閾値は“10A”であり、小電流閾値は“0.5A”である。小電流閾値は、例えば、各電路に接続された負荷の待機電流と動作時の電流との中間の電流値である。待機電流と動作時の電流の値は、負荷の仕様、又は実験等に基づいて決定される。大電流閾値は、例えば、電路間が特定の平均距離だけ離れている場合に、一方の電路の電流が他方の電路の小電流に所定の割合の誘導電流を発生させる、一方の電路の電流値として決定される。誘導電流の大きさは、電路の仕様、又は実験等に基づいて決定される。
図4(c)は、電流測定装置100の測定電流保持手段102が保持する、電路毎の測定電流を示す。
図4(c)では、電路Aの測定電流は“0.2A”、電路Bの測定電流は“20A”、電路Cの測定電流は“1A”、電路Dの測定電流は“0.1A”である。
図4(d)は、電流測定装置100の誘導電流補正手段101により補正された、電路毎の電流値を示す。
【0038】
まず、電路Aについて説明する。電流測定装置100の誘導電流補正手段101は、電路Aの測定電流が“0.2A”であり、小電流閾値“0.5A”以下であるので(ステップS101:Yes)、ステップS102の処理へ進む。誘導電流補正手段101は、電路Aについて、電流値が大電流閾値“10A”以上の近接する電路Bが存在するので(ステップS102:Yes)、電流センサにより測定された電流値をゼロに補正する(ステップS103)。
【0039】
次に、電路Bについて説明する。電流測定装置100の誘導電流補正手段101は、電路Bの測定電流が“20A”であり、小電流閾値“0.5A”以下でないので(ステップS101:No)、処理を終了する。
【0040】
次に、電路Cについて説明する。電流測定装置100の誘導電流補正手段101は、電路Cの測定電流が“1A”であり、小電流閾値“0.5A”以下でないので(ステップS101:No)、処理を終了する。
【0041】
続いて、電路Dについて説明する。電流測定装置100の誘導電流補正手段101は、電路Dの測定電流が“0.1A”であり、小電流閾値“0.5A”以下であるので(ステップS101:Yes)、ステップS102の処理へ進む。誘導電流補正手段101は、電路Dについて、電流値が大電流閾値“10A”以上の近接する電路が存在しないので(ステップS102:No)、処理を終了する。
【0042】
上記の動作の結果、電路毎の電流値は
図4(d)に示されるように補正される。すなわち、電路Aの電流値が“0.2A”から“0A”に補正され、電路B、電路C、及び電路Dの電流値は補正されない。
【0043】
以上説明したように、本実施形態の電流測定装置100は、近接する電路を流れる電流の影響が大きい小電流であって、且つ近接する電路を大電流が流れるために、近接する電路を流れる電流の影響が大きい電路の電流値をゼロに補正する。一方、電流測定装置100は、近接する電路を流れる電流の影響が小さい、小電流より大きい電流が流れる電路の電流値を補正しない。また、電流測定装置100は、近接する電路を大電流が流れない電路については、近接する電路からの電磁誘導の影響が小さいので、電路を流れる電流の大きさによらず、電流値を補正しない。従って、電流測定装置100では、通常の電流センサを用いて測定した微小電流において、近接する電路に流れる大電流による電磁誘導の影響を受けた微小電流についてだけ正しく補正することができる。
(第2の実施形態)
次に、上述した第1の実施形態において、各電路に流れる電流の補正値を外部のモニタ装置に表示する、本発明の第2の実施形態について説明する。以下の説明において、第1の実施形態と同等の構成要素には同じ符号を付し、適宜説明を省略する。
【0044】
本実施形態における構成について説明する。
【0045】
図5は、本発明の第2の実施形態における電流測定装置110の構成の一例を示すブロック図である。電流測定装置110は、分電盤300内に設置される交流電流センサ308、309、310等、及びモニタ装置400に接続される。
【0046】
モニタ装置400は、電流測定装置110と特定小電力無線等により通信を行うことにより、電流測定装置110が測定した電流のデータを画面に表示する。利用者は、モニタ装置400を介して、分電盤300から電力を供給される負荷311、312、313等の消費電流を確認することができる。
【0047】
分電盤300は、主幹交流電路に接続される主幹ブレーカ304、及び主幹ブレーカ304に接続される分岐ブレーカ305、306、307等を含む。電路“L1”、電路“L2”は100ボルトの交流が供給される電路を、電路“N”は中性線を示す。分岐ブレーカ305、306、307等は、それぞれ分岐電路317、318、319等を介して、負荷311、312、313等に接続される。
【0048】
電流測定装置110に接続される交流電流センサ308、309、310等は、それぞれ、分岐電路317、318、319等に流れる電流を検出する。交流電流センサ308、309、310等は、検出した電流を、電圧信号として出力する。交流電流センサ308、309、310等は、例えば、クランプ式交流電流センサである。交流電流センサ308、309、310等は、外部磁場により発生する誤差電圧を相殺するための補償コイル等を有する必要はない。
【0049】
電流測定装置110は、AD(Analog to Digital)変換手段115と、メモリ116と、CPU(Central_Processing_Unit)114とを含む。
【0050】
AD変換手段115は、交流電流センサ308、309、310等により出力された電圧信号を入力し、アナログ値からデジタル値に変換して出力する。
【0051】
メモリ116は、デジタル値に変換された測定電流に関するデータ等を格納する。
【0052】
CPU114は、電流測定装置110における処理の制御を行う。なお、CPU114は、AD変換手段115と、メモリ116とを含んでもよい。
【0053】
図6は本発明の第2の実施形態における電流測定装置110のデータ構成の一例を示すブロック図である。メモリ116は、分岐電路毎の、電流の測定データ、電流の補正データ、「大電流フラグ」、及び「小電流フラグ」の情報を格納するための領域であるデータエリア120を含む。「大電流フラグ」は、特定の電路の測定電流が、大電流であるか否かを示す情報である。「小電流フラグ」は、特定の電路の測定電流が、小電流であるか否かを示す情報である。メモリ116は、大電流閾値、及び小電流閾値の情報を格納するための領域であるパラメータエリア121を含む。
【0054】
例えば、交流電流センサ308、309、310等はクランプ式交流電流センサであり、負荷312において電力が消費される場合について説明する。
【0055】
主幹交流電路から供給される電流は、主幹ブレーカ304を介して、分岐ブレーカ306、分岐電路318へ流れる。
【0056】
分岐電路318に発生した磁界は、交流電流センサ309の内部コアに巻かれた二次巻線に出力電流(二次電流)を発生させる。二次電流は、負荷抵抗に流されることにより電圧信号に変換される。その結果、交流電流センサ309は、分岐電路318に流れる電流を示す電圧信号を電流測定装置110に出力する。
【0057】
AD変換手段115は、入力された電圧信号を、アナログ値からデジタル値に変換し、メモリ116のデータエリア120の測定データBに格納する。
【0058】
一方、分岐電路318に発生した磁界は、隣接する交流電流センサ308と交流電流センサ310の二次巻線にも微小な二次電流を発生させる。微小な二次電流は、負荷抵抗に流されることにより電圧信号に変換される。その結果、交流電流センサ308と交流電流センサ310は、分岐電路318に流れる電流に起因する誤差を示す電圧信号を電流測定装置110に出力する。
【0059】
AD変換手段115は、入力された電圧信号を、アナログ値からデジタル値に変換し、メモリ116のデータエリア120の「測定データA」と「測定データC」に格納する。
【0060】
この場合、「測定データA」、「測定データC」は、それぞれ、分岐電路317、分岐電路319に流れた電流値ではなく、隣接する分岐電路318からの電磁誘導により発生させられた電流値である。つまり、「測定データA」、「測定データC」に格納された電流値は、それぞれ、負荷311、負荷313が電力を消費していないにもかかわらず発生した誤った電流値である。
【0061】
次に、本実施形態における動作について説明する。
【0062】
図7は、本発明の第2の実施形態における電流測定装置110の動作を示すフローチャートである。なお、
図7は、1つの交流電流センサにより検出された1つの電流値を処理する際の、電流測定装置110の動作を示す。また、
図7に示すフローチャート及び以下の説明は一例であり、適宜求める処理に応じて、処理順等を入れ替えたり、処理を戻したり、又は処理を繰り返したりしてもよい。
【0063】
なお、処理に先立って、処理対象として選択された分岐電路の大電流フラグの値は、予め消去されるものとする。
【0064】
また、以下の処理では、測定データの値が大きい分岐電路から順に処理が行われるものとする。なお、電流の測定間隔が電流変化の時定数に比べて十分に小さい場合には、ある分岐電路に関する処理を実行する際に、他の分岐電路に関する大電流フラグの値として、他の分岐電路の最新の大電流フラグの値が用いられてもよい。この場合には、分岐電路の処理順序は、限定されない。
【0065】
電流測定装置110のAD変換手段115は、特定の分岐電路について、交流電流センサにより測定された電流値をアナログ値からデジタル値に変換して、データエリア120の「測定データ」及び「補正データ」に格納する(ステップS201)。
【0066】
電流測定装置110のCPU114は、特定の分岐電路について、メモリ116により保持される「測定データ」が大電流閾値より大きいか否かを判定する(ステップS202)。「測定データ」が大電流閾値より大きくなければ(ステップS202:No)、CPU114は、ステップS204の処理へ進む。「測定データ」が大電流閾値より大きければ(ステップS202:Yes)、CPU114は、特定の分岐電路について、大電流フラグに大電流を示す値を書き込み(ステップS203)、ステップS208の処理へ進む。
【0067】
電流測定装置110のCPU114は、特定の分岐電路について、メモリ116により保持される「測定データ」が、小電流閾値より小さいか否かを判定する(ステップS204)。「測定データ」が小電流閾値より小さくないならば(ステップS204:No)、CPU114は、ステップS208の処理へ進む。「測定データ」が小電流閾値より小さいならば(ステップS204:Yes)、CPU114は、ステップS206の処理へ進む。
【0068】
電流測定装置110のCPU114は、特定の分岐電路について、隣接する分岐電路に大電流フラグが設定されているか否かを判定する(ステップS206)。隣接する分岐電路に大電流フラグが設定されていないならば(ステップS206:No)、CPU114は、ステップS208の処理へ進む。隣接する分岐電路に大電流フラグが設定されているならば(ステップS206:Yes)、CPU114は、特定の分岐電路について、メモリ116の「補正データ」により保持された電流値をゼロに補正し(ステップS207)、ステップS208の処理へ進む。
【0069】
電流測定装置110のCPU114は、特定の分岐電路について、「補正データ」をモニタ装置400に表示させる(ステップS208)。
【0070】
次に、本発明の第2の実施形態の処理の具体例について説明する。
【0071】
電流測定装置110は、電流センサ308、309、310により検出された電流値を、それぞれ、メモリ116のデータエリア120内の「測定データA」、「測定データB」、「測定データC」に格納する(ステップS201)。電流測定装置110は、電流センサ308、309、310により検出された電流データを、それぞれ、メモリ116のデータエリア120内の「補正データA」、「補正データB」、「補正データC」に格納する(ステップS201)。
【0072】
なお、以下では、パラメータエリア121の「小電流閾値」に“50mA”が設定され、「大電流閾値」に“10A”が予め設定されるものとする。
【0073】
さて、分岐電路317の「測定データA」が“40mA”、分岐電路318の「測定データB」が“15A”、分岐電路319の「電流データC」が“60mA”であるものとする。このとき、「補正データ」には、対応する分岐電路の「測定データ」と同じ値が設定される。
【0074】
CPU114は、分岐電路318の「測定データ」は“15A”であり、「大電流閾値」“10A”よりも大きいので(ステップS202:Yes)、「大電流フラグB」に大電流であることを表す値を格納し(ステップS203)、ステップS208の処理へ進む。CPU114は、「補正データB」の値“15A”をモニタ装置400に表示させる(ステップS208)。
【0075】
CPU114は、分岐電路319の「測定データ」は“60mA”であり、「大電流閾値」“10A”よりも小さいので(ステップS202:No)、ステップS204の処理へ進む。CPU114は、分岐電路319の「測定データ」は“60mA”であり、「小電流閾値」“50mA”よりも大きいので(ステップS204:No)、ステップS208の処理へ進む。CPU114は、「補正データC」の値“60mA”をモニタ装置400に表示させる(ステップS208)。
【0076】
CPU114は、分岐電路317の「測定データ」は“40mA”であり、「大電流閾値」“10A”よりも小さいので(ステップS202:No)、ステップS204の処理へ進む。CPU114は、分岐電路317の「測定データ」は“40mA”であり、「小電流閾値」“50mA”よりも小さいので(ステップS204:Yes)、ステップS206の処理へ進む。CPU114は、隣接する分岐電路318の「大電流フラグB」をチェックする(ステップS206)。CPU114は、「大電流フラグB」に大電流であることを表す値が格納されているので(ステップS206:Yes)、分岐電路317の「補正データA」にゼロを書き込み(ステップS207)、ステップS208の処理へ進む。CPU114は、「補正データA」の値“0A”をモニタ装置400に表示させる(ステップS208)。
【0077】
以上説明したように、本実施形態の電流測定装置110では、適切な「大電流閾値」及び適切な「小電流閾値」を設定することにより、大電流の電流値の適切な範囲、及び小電流の電流値の適切な範囲を調整可能である。そのため、電流測定装置110は、測定した微小電流において、近接する電路に流れる大電流による電磁誘導の影響を受けた微小電流を補正できる。また、電流測定装置110では、外部磁場により発生する誤差電圧を相殺するための補償コイル等を有する特別な電流センサは、必ずしも必要ではない。従って、電流測定装置110は、通常の電流センサを用いて測定した微小電流において、近接する電路に流れる大電流による電磁誘導の影響を受けた微小電流を補正することができる。
【0078】
また、本実施形態の電流測定装置110は、外部のモニタ装置400に測定した消費電流を表示させるので、利用者は容易に電流測定値をモニタすることができる。
【0079】
なお、上述の説明では、電流測定装置110が電路毎の消費電流を測定する場合について説明したが、本実施形態の電流測定装置が測定する対象は、消費電流には限定されない。本実施形態の電流測定装置が測定する対象は、消費電力であってもよい。例えば、本実施形態の電流測定装置は、各電路の消費電流に、各電路に供給される電圧を乗算することにより、消費電力を算出してもよい。
(第3の実施形態)
次に、上述した第2の実施形態において、交流電流センサの設置位置を可変にした、本発明の第3の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、第2の実施形態との差分についてのみ説明し、第2の実施形態と同等の構成要素には同じ符号を付し、適宜説明を省略する。
【0080】
本実施形態における構成について、説明する。
【0081】
本実施形態の電流測定装置130の構成は、第2の実施形態の電流測定装置110の構成と同じであるが、電流測定装置130のデータ構成が第2の実施形態と異なる。
【0082】
図8は、本発明の第3の実施形態における電流測定装置130のデータ構成の一例を示すブロック図である。メモリ116のデータエリア122は、本発明の第2の実施形態におけるデータエリア120の構成に加えて、交流電流センサが取り付けられる「設置位置」の情報、及び右隣の交流電流センサとの「隣接距離」を格納するための領域を含む。また、メモリ116のパラメータエリア123は、本発明の第2の実施形態におけるパラメータエリア121の構成に加えて、隣接する電路による磁界の影響を受ける最大距離を表す「隣接距離閾値」を格納するための領域を更に含む。
【0083】
次に、本実施形態における動作について説明する。
【0084】
図9は、本発明の第3の実施形態における分電盤300の構成を説明するための図である。設置位置323、324、325等は、分電盤300における交流電流センサ設置可能位置を示す。例えば、当初は、交流電流センサ308は設置位置323に設置され、交流電流センサ309は設置位置324に設置され、交流電流センサ310は設置位置325に設置されるが、その後、変更される可能性がある。交流電流センサの設置位置の変更に対応可能にするために、データエリア122に交流電流センサの「設置位置」を格納する領域が追加された。
【0085】
データエリア122に「設置位置」が追加されるため、電流測定装置130は、
図7のステップS206の処理において、交流電流センサの設置位置が入れ替わった場合でも、2つの分岐電路が隣接するか否かを判断できる。例えば、各設置位置308、309、310等に、分電盤300内において、左から連番を割り当て、「設置位置」の値が隣接する数値である場合には、交流電流センサが隣接すると判断することが可能である。
【0086】
また、データエリア122に「隣接距離」が追加され、パラメータエリア123に「隣接距離閾値」が追加される。そのため、電流測定装置130は、「隣接距離閾値」よりも「隣接距離」が長いときには2つの電路は互いに磁界の影響を受けず、「隣接距離閾値」よりも「隣接距離」が短いときには2つの電路は互いに磁界の影響を受けることを判断できる。つまり、電流測定装置130は、
図7のステップS206の処理において、「隣接距離」から隣接する電路間の距離を求め、「隣接距離閾値」と比較することにより、電路間の距離が一定でない場合であっても、電路間の磁界の影響の有無を判断できる。電流測定装置130は、例えば、「隣接距離」に基づいて、交流電流センサ間の隣接距離を取得し、隣接距離が「隣接距離閾値」よりも短い場合に、磁界の影響を受けると判断し、ステップS207の処理へ進む。一方、電流測定装置130は、隣接距離が「隣接距離閾値」よりも長い場合に、磁界の影響を受けないと判断し、ステップS208の処理へ進む。
【0087】
以上説明したように、本実施形態の電流測定装置130は、交流電流センサの設置位置の情報を保持する。従って、本実施形態の電流測定装置130には、本発明の第2の実施形態の効果に加えて、交流電流センサの設置位置が変更される場合にも使用できるという効果がある。
【0088】
また、本実施形態の電流測定装置130は、交流電流センサ間の隣接距離と、磁気による影響が及ぶ最大距離を示す隣接距離閾値の情報を保持する。従って、本実施形態の電流測定装置130には、本発明の第2の実施形態の効果に加えて、交流電流センサの設置間隔が一定ではない場合にも使用できるという効果がある。
【0089】
なお、上述した各実施形態における電流測定装置は、専用の装置によって実現してもよいが、コンピュータ(情報処理装置)によっても実現可能である。この場合、係るコンピュータは、メモリ(不図示)に格納されたソフトウェア・プログラムをCPU(不図示)に読み出し、読み出したソフトウェア・プログラムをCPUにおいて実行することにより、実行結果を、例えば、ユーザ・インタフェースに出力する。上述した各実施形態及び変形例の場合、係るソフトウェア・プログラムには、上述したところの、
図1に示した電流測定装置100の各手段、
図5に示した電流測定装置110の各手段の機能を実現可能な記述がなされていればよい。但し、電流測定装置100の測定電流保持手段102、並びに電流測定装置110のAD変換手段115、及びメモリ116は、適宜ハードウェアを含むことも想定される。そして、このような場合、係るソフトウェア・プログラム(コンピュータ・プログラム)は、本発明を構成すると捉えることができる。更に、係るソフトウェア・プログラムを格納した、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体も、本発明を構成すると捉えることができる。
【0090】
以上、本発明を、上述した各実施形態およびその変形例によって例示的に説明した。しかしながら、本発明の技術的範囲は、上述した各実施形態およびその変形例に記載した範囲には限定されない。当業者には、係る実施形態に対して多様な変更又は改良を加えることが可能であることは明らかである。そのような場合、係る変更又は改良を加えた新たな実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれ得る。そしてこのことは、特許請求の範囲に記載した事項から明らかである。