(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ドラムは、前記周方向に隣接する2つの前記円弧片を連結する連結部と、前記周方向に隣接する2つの前記円弧片を連結しない非連結部とを含むことを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の製造方法では、下記のような問題が生じ得る。
【0007】
例えば、平ベルトの場合、脱型工程において、スリーブをドラムの外周面に押し付けながらドラムを軸方向に引き抜くと、スリーブの表面が傷付いたり、ドラムの外周面に施されたコーティング(離型剤等)がスリーブに転写してスリーブの表面特性が変化したりし得る。また、スリーブとドラムの外周面との間にエアを吹き込みながらドラムを軸方向に引き抜く場合、エアの圧力や量が適正条件から外れると、スリーブの膨れや引き裂きが生じ得る。
【0008】
Vベルトの場合、特許文献1に記載の方法では、脱型工程において、ボルト・ナットによる固定を解除してリング金型をばらす作業が必要であり、多大な労力と時間がかかってしまう。
【0009】
Vリブドベルトの場合、平ベルトと同様の脱型工程を行うと、平ベルトについて上記した問題と同様の問題(即ち、スリーブの表面の傷付き、コーティングのスリーブへの転写等)が生じ得る。
【0010】
特許文献2に記載の方法では、第2スリーブを第1スリーブと一体化させるときに心線を伸ばす構成であるため、心線の整列状態を良好に保持し難く、さらに、心線の材料に高弾性率のものを用い難い等、心線の材料に制約が生じ得る。また、特許文献2に記載の方法において、第1スリーブと第2スリーブとの間隙を小さくして、第2スリーブを第1スリーブと一体化させるときの心線の伸び量を抑えることも考えられる。しかし、第1スリーブに外型からの浮き上がりが生じている場合に、上記間隙が小さいと、第2スリーブを形成するとき第2スリーブが第1スリーブに接触し、スリーブ間の擦れや捲れが生じ得る。上記間隙はベルト周長が短くなるほど小さくなるため、ベルト周長が短くなるほど上記の問題は顕著化する。したがって、特許文献2に記載の方法では、ベルト周長にも制約が生じ得る。
【0011】
研削によらずにリブを形成する方法として、特許文献2に記載の方法以外に、外周面にリブを形成するためのリブ溝を有する内型と、拡縮可能な外型とを用い、圧縮層、心線及び伸長層を含むスリーブを、圧縮層が内型の外周面側となるように、内型に形成し、リブ形成と共に加硫を行う方法も考えられる。しかしこの方法では、圧縮層に心線を配置した状態でリブ形成を行うため、リブ形成の際の圧縮層の変形に伴って心線に緩みが生じ、心線の整列状態を良好に保持することが困難である。さらに、内型の外周面に周方向に沿ったリブ溝が形成されているため、脱型工程において、内型を軸方向に引き抜くことができない。
【0012】
本発明の目的は、製造される伝動ベルトの品質確保と脱型工程の容易化とを共に実現することができる、伝動ベルトの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の観点によると、伝動ベルトの製造方法において、前記伝動ベルトとなるゴム層を含む環状のスリーブを形成する、スリーブ形成工程と、前記スリーブ形成工程の後、円筒状のドラムの外周面に前記スリーブを装着した状態で加硫する、加硫工程と、前記加硫工程の後、前記ドラムから前記スリーブを取り出す、脱型工程と、を備え、前記ドラムは、前記ドラムの周方向に沿って配置されると共に互いに組み合わされることで円筒状を形成する3以上の円弧片を含み、
前記加硫工程は、前記ドラムの内側に前記ドラムの内周面を支持するコアを配置した状態で行い、前記脱型工程は、
前記コアを前記ドラムの内側から取り出した後、前記3以上の円弧片のうちの少なくとも1つの円弧片を前記ドラムの径方向内側に移動させることで、前記スリーブが前記ドラムの前記外周面に接触した状態から前記スリーブが前記ドラムの前記外周面に接触しない状態として、前記スリーブを前記ドラムに対して前記ドラムの軸方向に相対移動させることにより行うことを特徴とする、伝動ベルトの製造方法が提供される。
【0014】
本発明によれば、3以上の円弧片を含むドラムを採用し、脱型工程において、当該ドラムの3以上の円弧片のうちの少なくとも1つの円弧片をドラムの径方向内側に移動させ、スリーブをドラムの外周面に接触しない状態としてスリーブを取り出す。これにより、製造される伝動ベルトの品質確保と脱型工程の容易化とを共に実現することができる。
【0015】
また、本発明によれば、ドラムの内側
にコアを配置した状態で
加硫工程を行い
、コア
をドラムの内側から取り出した後
、3以上の円弧片のうちの少なくとも1つの円弧片
をドラムの径方向内側に移動させて
脱型工程を行
う。この場合、コアによりドラムの円筒状の形態を適切に維持することができる。また、ドラムにかかる外圧をコアが受けることで、ドラムの厚みを小さくすることができる。
【0016】
前記ドラムは、前記周方向に隣接する2つの前記円弧片を連結する連結部と、前記周方向に隣接する2つの前記円弧片を連結しない非連結部とを含んでよい。この場合、円弧片を、連結部を支点として移動させ、折り畳むことができる。したがって、脱型工程のより一層の容易化を実現することができる。
【0017】
前記3以上の円弧片における前記周方向の長さが全て同じではなくてよい。この場合、円弧片における周方向の長さが全て同じ場合に比べ、円弧片をコンパクトに折り畳むことができる。
【0018】
前記円弧片が3つであってよい。この場合、ドラムの部品点数を低減できると共に、脱型工程のより一層の容易化を実現することができる(例えば、円弧片が4以上の場合、脱型工程において3以上の円弧片を移動させる必要が生じ得るが、円弧片が3つの場合、脱型工程において2つの円弧片を移動させるだけでよく、作業が簡素化する)。
【0019】
前記伝動ベルトは、一方の面に複数のリブを有するものであり、前記ゴム層は、前記一方の面を構成すると共に前記複数のリブが形成される圧縮層を含み、前記スリーブは、前記伝動ベルトの長手方向に延在する心線をさらに含み、前記ドラムの前記外周面は、前記複数のリブに対応する複数の溝を有し、前記スリーブ形成工程は、前記圧縮層に前記複数のリブを形成する、リブ形成工程と、前記リブ形成工程の後、前記複数のリブがそれぞれ前記複数の溝に収容されるように前記圧縮層を前記ドラムの前記外周面に装着した状態で、前記圧縮層における前記ドラムの前記外周面と対向する面と反対側の面に前記心線を配置する、心線配置工程と、を含んでよい。この場合、特許文献2に記載の方法のように第2スリーブを第1スリーブと一体化させるときに心線を伸ばす構成ではなく、また、圧縮層に心線を配置した状態でリブ形成を行う構成でもないため、心線の整列状態を良好に保持することができ、かつ、心線の材料やベルト周長等に制約が生じない。また、研削によらずにリブ形成を行う構成であるため、材料のロスを抑制することができる。
【0020】
前記リブ形成工程は、前記圧縮層を前記ドラムの前記外周面に押圧することにより行ってよい。この場合、リブ形成工程と加硫工程とにおいて工具を共通化したことで、リブ形成用の工具を別途用意する必要がなく、製造コストを低減することができる。
【0021】
前記心線がアラミド繊維から構成されてよい。アラミド繊維は、高強度、高弾性率(伸び難い)等の特性を有しており、心線をアラミド繊維で構成することで、伝動ベルトの薄型化、曲げ剛性の低減化等を実現することができ、伝動ベルトを高負荷のシステムに適用することができる。また、アラミド繊維は高弾性率で伸び難いが、本発明は、特許文献2に記載の方法のように第2スリーブを第1スリーブと一体化させるときに心線を伸ばす構成ではないため、心線の材料としてアラミド繊維を好適に用いることができる。
【0022】
前記伝動ベルトは、前記一方の面において前記複数のリブを被覆する編布からなる被覆層を有し、前記リブ形成工程は、前記複数のリブを形成するためのリブ形成部材と前記圧縮層との間に前記被覆層を介在させた状態で、前記圧縮層を前記リブ形成部材に押圧することにより行ってよい。この場合、被覆層により、通気性が良くなり空気の残留を抑制できるので、エア抜き効果が向上する(真空引きを不要にすることもできる)。また、ベルトの表面特性(摩擦係数等)の安定化を実現することができる。
【0023】
前記複数のリブは、前記伝動ベルトの長手方向にそれぞれ延在し、前記複数の溝は、前記ドラムの前記周方向にそれぞれ延在してよい。複数の溝がドラムの周方向にそれぞれ延在している場合、スリーブがドラムの外周面に接触した状態ではドラムを軸方向に引き抜くことができない。本発明では、3以上の円弧片を含むドラムを採用し、脱型工程において、当該ドラムの3以上の円弧片のうちの少なくとも1つの円弧片をドラムの径方向内側に移動させ、スリーブをドラムの外周面に接触しない状態としてスリーブを取り出すことにより、複数の溝がドラムの周方向にそれぞれ延在している場合でも、製造される伝動ベルトの品質確保と脱型工程の容易化とを共に実現することができる。
【0024】
本発明に係る製造方法において、前記伝動ベルトは、前記伝動ベルトの長手方向と直交する断面が台形のVベルトであり、前記ドラムの前記外周面は、複数の前記Vベルトに対応する複数のV状溝を有し、前記加硫工程は、前記複数のV状溝に複数の前記Vベルトとなる前記スリーブをそれぞれ収容して行い、前記脱型工程は、前記ドラムから前記複数のスリーブを一度に取り出してよい。当該構成において、「スリーブ」は、「1本のVベルトの前駆体」をいう。当該構成によれば、特許文献1に記載の方法のような複数のリング金型を積み重ねる工程や複数のリング金型をボルト・ナットで固定する工程が不要であり、また、複数のスリーブの脱型を一度に行うことができることから、製造工程全般における作業効率がよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、3以上の円弧片を含むドラムを採用し、脱型工程において、当該ドラムの3以上の円弧片のうちの少なくとも1つの円弧片をドラムの径方向内側に移動させ、スリーブをドラムの外周面に接触しない状態としてスリーブを取り出すことにより、製造される伝動ベルトの品質確保と脱型工程の容易化とを共に実現することができる。
また、本発明によれば、ドラムの内側にコアを配置した状態で加硫工程を行い、コアをドラムの内側から取り出した後、3以上の円弧片のうちの少なくとも1つの円弧片をドラムの径方向内側に移動させて脱型工程を行う。この場合、コアによりドラムの円筒状の形態を適切に維持することができる。また、ドラムにかかる外圧をコアが受けることで、ドラムの厚みを小さくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0028】
本発明の第1実施形態に係る製造方法は、一方の面にベルト長手方向にそれぞれ延在する複数のリブを有するVリブドベルトを製造する方法であって、
図1に示すように、リブ形成工程S1a及び心線配置工程S1bを含むスリーブ形成工程S1と、加硫工程S2と、脱型工程S3とを含む。
【0029】
本実施形態に係る製造方法では、
図2及び
図3に示すドラム10及びコア20が用いられる。
【0030】
ドラム10は、円筒状であり、複数の溝10vが形成された外周面10aと、溝のない平滑な内周面10bとを有する。複数の溝10vは、Vリブドベルトの複数のリブに対応するものであり、それぞれV状であってドラム10の周方向(以下、単に「周方向」という場合がある。)に延在し、かつ、ドラム10の軸方向(以下、単に「軸方向」という場合がある。)に略等間隔で配列している。
【0031】
ドラム10は、周方向に沿って配置されると共に互いに組み合わされることで円筒状を形成する3つの円弧片11a〜11cを含む。円弧片11a〜11cにおける周方向の長さLa〜Lcは全て同じではなく、本実施形態ではLa:Lb:Lc=10:7:7である。
【0032】
ドラム10は、周方向に隣接する2つの円弧片(具体的には、円弧片11aと円弧片11b、及び、円弧片11aと円弧片11cのそれぞれ)を連結する2つの連結部12と、周方向に隣接する2つの円弧片(具体的には、円弧片11bと円弧片11c)を連結しない1つの非連結部13とを含む。
【0033】
各連結部12は、
図3に示すようなヒンジ構造であり、周方向に隣接する2つの円弧片のそれぞれに固定された固定部材12a1,12a2と、固定部材12a1,12a2同士を回動可能に連結するピン12bとを含む。ピン12bは、周方向に隣接する2つの円弧片の回動軸として機能し、ドラム10の軸方向に延在している。固定部材12a1,12a2及びピン12bは、それぞれ、ドラム10の軸方向に関して対応する円弧片の全長に亘って延在している。
【0034】
非連結部13は、
図2(a)に示すように、周方向に隣接する2つの円弧片(具体的には、円弧片11bと円弧片11c)の互いに対向する周方向の端部によって構成されている。各端部は、周方向と直交する面に対して交差した端面を有する。当該端面同士は、接合されておらず、ドラム10に外圧がかかった状態で接触するように構成されている。
【0035】
コア20は、ドラム10と同様の円筒状であると共に、ドラム10よりも一回り小さく、ドラム10の内側に配置される。コア20の外周面に、ドラム10の内周面10bが支持される。コア20は、ドラム10の円筒形態を保持する機能、耐圧機能、加硫時の熱源として内圧(蒸気圧)を蓄える機能等を有する。
【0036】
例えば、ドラム10は、炭素鋼(S45C、S55C等)や炭素工具鋼(SK系統)を機械加工して形成されたものである。コア20は、一般構造用圧延鋼材(SS400等)や炭素鋼(S45C、S55C等)を機械加工して形成されたものである。ドラム10及びコア20の外周面は、ハードクロムメッキ等で保護されてよい。
【0037】
次いで、
図4及び
図5を参照し、各工程S1〜S3について説明する。
【0038】
リブ形成工程S1aでは、先ず、
図4(a)に示すように、ドラム10の内側にコア20を配置した状態で、ドラム10の外周面10aに被覆層1bと圧縮層1a1とを被覆層1bが内側になるように巻き付け、さらに圧縮層1a1の外周面に離型紙2を配置する。そして、被覆層1b、圧縮層1a1及び離型紙2が巻き付けられたドラム10を可撓性の円筒ジャケット60内に配置する。その後、ドラム10、コア20及びジャケット60を上蓋40と底板50とで軸方向に挟み、且つ、コア20と底板50との間にパッキン51を挟んだ状態で、コア20と底板50との空間を真空引きにより負圧にする。そして、当該負圧を保持しつつ、ジャケット60の外側から外圧(蒸気圧)をかける。これにより、ドラム10と圧縮層1a1との間に被覆層1bを介在させた状態で、圧縮層1a1をドラム10の外周面10aに押圧し、
図4(b)に示すように圧縮層1a1に複数のリブ1vを形成する。その後、
図4(c)に示すように、上蓋40を取り外してからジャケット60を取り外し、離型紙2を圧縮層1a1から剥離する。
【0039】
この段階において、圧縮層1a1は未加硫の状態である。即ち、リブ形成工程S1aでは、加硫が行われないように、圧力、温度、時間等を制御する。例えば、負圧を−0.06MPa以下、外圧(蒸気圧)を0.5〜0.95MPaとし、当該圧力を2分程度維持して、圧縮層1a1に伝達される温度を100℃未満とする。また、コア20の内部には内圧(蒸気圧)をかけない。
【0040】
圧縮層1a1は、スリーブ1(
図5参照)を構成するゴム層1aのうちの1層であり、ミラブルウレタンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、天然ゴム等から構成されてよい。被覆層1bは、編布からなり、例えば、ポリエステル系複合糸とセルロース系天然紡績糸(例えば綿糸)とで編成されたものであってよい。離型紙2は、例えば、紙等からなる基材の両面にシリコーン離型剤をコーティングしたものであってよい。
【0041】
リブ形成工程S1aの後に行われる心線配置工程S1bでは、
図4(c)の状態(即ち、ドラム10の内側にドラム10の内周面10bを支持するコア20を配置し、且つ、複数のリブ1vがそれぞれ複数の溝10vに収容されるように圧縮層1a1をドラム10の外周面10aに装着した状態)で、
図5(b)に示すように、圧縮層1a1におけるドラム10の外周面10aと対向する面と反対側の面に、ドラム10の周方向(即ち、ベルト長手方向)に延在するように心線1cを配置し、さらに心線1cを挟んで圧縮層1a1の外側に伸長層1a2を巻き付ける。そして、これらを圧着して、環状のスリーブ1を形成する。
【0042】
心線1cは、アラミド繊維から構成されている。伸長層1a2は、スリーブ1(
図5参照)を構成するゴム層1aのうちの1層であり、圧縮層1a1と同様、ミラブルウレタンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、天然ゴム等から構成されてよく、さらに繊維補強が施されてよい。
【0043】
スリーブ形成工程S1の後に行われる加硫工程S2では、
図5(a),(b)に示すように、ドラム10の内側にドラム10の内周面10bを支持するコア20を配置し、且つ、ドラム10の外周面10aにスリーブ1を装着した状態で、ドラム10をジャケット60内に配置し、リブ形成工程S1aと同様の真空引き及び外圧(蒸気圧)付与を行うと共に、コア20の内部に内圧(蒸気圧)をかける。これにより、スリーブ1を加硫する。
【0044】
加硫工程S2の後に行われる脱型工程S3では、先ず、上蓋40を取り外してからジャケット60を取り外し、コア20が内側に配置され且つスリーブ1が外周面10aに装着された状態で、適宜の冷却手段によりドラム10を冷却する。その後、コア20を適宜の引上げ手段により軸方向(上方)に引き上げてドラム10の内側から取り出す。さらにその後、円弧片11b,11cをドラム10の径方向内側に移動させ、スリーブ1がドラム10の外周面10aに接触した状態(
図5(a),(b)参照)からスリーブ1がドラム10の外周面10aに接触しない状態(
図5(c)参照)とする。このとき、ドラム10は軸方向から見て楕円形になっている。この状態で、スリーブ1をドラム10に対して軸方向に相対移動させる(例えば、上記の引上げ手段と同様の手段により、ドラム10を軸方向(上方)に引き上げる)ことにより、ドラム10からスリーブ1を取り出す。
【0045】
脱型工程S3の後、ベルト幅に合わせたスリーブ1の輪切りを行うことで、Vリブドベルトが完成する。
【0046】
以上に述べたように、本実施形態によれば、3つの円弧片11a〜11cを含むドラム10を採用し、脱型工程S3において、当該ドラム10の円弧片11a〜11cのうちの少なくとも1つの円弧片(本実施形態では、2つの円弧片11b,11c)をドラム10の径方向内側に移動させ、スリーブ1をドラム10の外周面10aに接触しない状態としてスリーブ1を取り出す(
図5(c)参照)。これにより、製造される伝動ベルトの品質確保と脱型工程S3の容易化とを共に実現することができる。
【0047】
加硫工程S2は、ドラム10の内側にドラム10の内周面10bを支持するコア20を配置した状態で行い(
図5(a),(b)参照)、脱型工程S3は、コア20をドラム10の内側から取り出した後、円弧片11b,11cをドラム10の径方向内側に移動させて行う(
図5(c)参照)。この場合、コア20によりドラム10の円筒状の形態を適切に維持することができる。また、ドラム10にかかる外圧をコア20が受けることで、ドラム10の厚みを小さくすることができる。
【0048】
ドラム10は連結部12と非連結部13とを含む。この場合、円弧片11a〜11cを、連結部12を支点として移動させ、折り畳むことができる(
図5(c)参照)。したがって、脱型工程S3のより一層の容易化を実現することができる。
【0049】
円弧片11a〜11cにおける周方向の長さが全て同じではない(
図5(c)参照)。この場合、円弧片11a〜11cにおける周方向の長さが全て同じ場合に比べ、円弧片11a〜11cをコンパクトに折り畳むことができる。
【0050】
円弧片11a〜11cが3つである(
図5(c)参照)。この場合、ドラム10の部品点数を低減できると共に、脱型工程S3のより一層の容易化を実現することができる(例えば、円弧片が4以上の場合、脱型工程S3において3以上の円弧片を移動させる必要が生じ得るが、円弧片が3つの場合、脱型工程S3において2つの円弧片を移動させるだけでよく、作業が簡素化する)。
【0051】
ドラム10の外周面10aは、Vリブドベルトの複数のリブに対応する複数の溝10vを有する(
図2(b),(c)参照)。スリーブ形成工程S1は、圧縮層1a1に複数のリブ1vを形成するリブ形成工程S1a(
図4参照)と、リブ形成工程S1aの後、複数のリブ1vがそれぞれ複数の溝10vに収容されるように圧縮層1a1をドラム10の外周面10aに装着した状態で、圧縮層1a1におけるドラム10の外周面10aと対向する面と反対側の面に心線1c(
図5(b)参照)を配置する心線配置工程S1bとを含む。この場合、特許文献2に記載の方法のように第2スリーブを第1スリーブと一体化させるときに心線を伸ばす構成ではなく、また、圧縮層に心線を配置した状態でリブ形成を行う構成でもないため、心線の整列状態を良好に保持することができ、かつ、心線の材料やベルト周長等に制約が生じない。また、研削によらずにリブ形成を行う構成であるため、材料のロスを抑制することができる。
【0052】
リブ形成工程S1aは、圧縮層1a1をドラム10の外周面10aに押圧することにより行う(
図4参照)。この場合、リブ形成工程S1aと加硫工程S2とにおいて工具(ドラム10)を共通化したことで、リブ形成用の工具を別途用意する必要がなく、製造コストを低減することができる。
【0053】
心線1cがアラミド繊維から構成されている。アラミド繊維は、高強度、高弾性率(伸び難い)等の特性を有しており、心線1cをアラミド繊維で構成することで、伝動ベルトの薄型化、曲げ剛性の低減化等を実現することができ、伝動ベルトを高負荷のシステムに適用することができる。また、アラミド繊維は高弾性率で伸び難いが、本実施形態は、特許文献2に記載の方法のように第2スリーブを第1スリーブと一体化させるときに心線を伸ばす構成ではないため、心線1cの材料としてアラミド繊維を好適に用いることができる。
【0054】
リブ形成工程S1aは、複数のリブ1vを形成するためのリブ形成部材(本実施形態ではドラム10)と圧縮層1a1との間に被覆層1bを介在させた状態で、圧縮層1a1をリブ形成部材に押圧することにより行う(
図4参照)。この場合、被覆層1bにより、通気性が良くなり空気の残留を抑制できるので、エア抜き効果が向上する(真空引きを不要にすることもできる)。また、ベルトの表面特性(摩擦係数等)の安定化を実現することができる。
【0055】
複数の溝10vは、ドラム10の周方向にそれぞれ延在している(
図2(b)参照)。この場合、スリーブ1がドラム10の外周面10aに接触した状態ではドラム10を軸方向に引き抜くことができないが、本実施形態では、3つの円弧片11a〜11cを含むドラム10を採用し、脱型工程S3において、当該ドラム10の円弧片11a〜11cのうちの少なくとも1つの円弧片(本実施形態では、2つの円弧片11b,11c)をドラム10の径方向内側に移動させ、スリーブ1をドラム10の外周面10aに接触しない状態としてスリーブ1を取り出す(
図5(c)参照)。これにより、複数の溝10vがドラム10の周方向にそれぞれ延在している場合でも、製造される伝動ベルトの品質確保と脱型工程S3の容易化とを共に実現することができる。
【0056】
続いて、
図6を参照し、本発明の第2実施形態に係る製造方法について説明する。第2実施形態は、リブ形成工程S1aが第1実施形態と異なり、リブ形成工程S1a以外は第1実施形態と同様である。
【0057】
第2実施形態では、リブ形成工程S1aにおいて、
図4(a),(b)に示す可撓性の円筒ジャケット60の代わりに、
図6(a)に示す可撓性ジャケット270及び加熱用ジャケット280を含む円筒ジャケット260を用いる。加熱用ジャケット280は、可撓性ジャケット270の外側に配置される。可撓性ジャケット270は、上端が加熱用ジャケット280に固定され、下端が底板50に固定される。
【0058】
第2実施形態のリブ形成工程S1aでは、先ず、
図6(a)に示すように、第1実施形態と同様に、ドラム10の内側にコア20を配置した状態で、ドラム10の外周面10aに被覆層1bと圧縮層1a1とを被覆層1bが内側になるように巻き付け、さらに圧縮層1a1の外周面に離型紙2を配置する。そして、被覆層1b、圧縮層1a1及び離型紙2が巻き付けられたドラム10を可撓性ジャケット270内に配置する。その後、ドラム10、コア20を上蓋40と底板50とで軸方向に挟み、且つ、コア20と底板50との間にパッキン51を挟む。そして、可撓性ジャケット270の外側に加熱用ジャケット280を配置し、可撓性ジャケット270を真空引きにより吸引して加熱用ジャケット280と接触させた状態で(
図6(a)の点線参照)、内部に蒸気Xを供給することで加熱用ジャケット280を加熱し、加熱用ジャケット280の熱を可撓性ジャケット270に伝達する。その後、コア20と底板50との空間を真空引きにより負圧にする。そして、当該負圧を保持し、且つ、加熱用ジャケット280を蒸気Xにより加熱しつつ、加熱用ジャケット280を通過して供給される空気Yにより外圧(空気圧)をかける。これにより、ドラム10と圧縮層1a1との間に被覆層1bを介在させた状態で、圧縮層1a1をドラム10の外周面10aに押圧し、
図6(b)に示すように圧縮層1a1に複数のリブ1vを形成する。
【0059】
なお、第2実施形態では、リブ形成工程S1aにおいて、外圧(空気圧)をかける前に加熱用ジャケット280と可撓性ジャケット270とを接触させることで可撓性ジャケット270に熱が蓄積され、さらに、外圧(空気圧)をかけたときに加熱用ジャケット280を通過する際に加熱された空気の熱が可撓性ジャケット270に伝達される。そして、可撓性ジャケット270と圧縮層1a1とが離型紙2を介在しつつ接触することで、可撓性ジャケット270の熱が圧縮層1a1に伝達される。
【0060】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様、この段階において、圧縮層1a1は未加硫の状態である。即ち、リブ形成工程S1aでは、加硫が行われないように、圧力、温度、時間等を制御する。第2実施形態では、例えば、負圧を−0.06MPa以下、蒸気Xの圧力を0.4〜0.9MPaとし、空気Yによる外圧(空気圧)を1MPaとし、当該圧力を2分程度維持して、圧縮層1a1に伝達される温度を100℃未満とする。また、コア20の内部には内圧(蒸気圧)をかけない。
【0061】
第2実施形態では、複数のリブ1vを形成した後、可撓性ジャケット270を真空引きにより吸引して加熱用ジャケット280と接触させた状態で(
図6(a)の点線参照)、上蓋40を取り外し、離型紙2を圧縮層1a1から剥離する(
図6(c)参照:円筒ジャケット260は図示略)。
【0062】
続いて、
図7を参照し、本発明の第3実施形態に係る製造方法について説明する。第3実施形態は、コアの構成が第2実施形態と異なり、それ以外は第2実施形態と同様である。
【0063】
第3実施形態は、周長が比較的短い伝動ベルトの製造に適した構成であり、第3実施形態のコア320は、第2実施形態のコア20よりも小径である。そのため、コア320の内部には内圧(蒸気圧)用の空間が設けられていない。また、パッキン51が設けられておらず、そのためコアと底板50との空間の真空引きも行われない。
【0064】
第3実施形態のリブ形成工程S1aは、コアと底板50との空間を真空引きにより負圧にする作業を行わない点を除き、第2実施形態と同様である。
【0065】
続いて、
図8を参照し、本発明の第4実施形態に係る製造方法について説明する。第4実施形態は、リブ形成工程S1aが第1実施形態と異なり、それ以外は第1実施形態と同様である。
【0066】
第4実施形態では、リブ形成工程S1aにおいて、加硫工程S2で用いられる工具(ドラム10及びコア20)を用いずに、別の工具(プレス工具410)を用いる。プレス工具410は、
図8(a)〜(c)に示すように、上面に複数の溝10vが形成された下板420と、平板状の上板430とを含む。
【0067】
第4実施形態のリブ形成工程S1aでは、先ず、
図8(a),(b)に示すように、圧縮層1a1と被覆層1bとの間のベルト長手方向両端に相当する部分にそれぞれ離型フィルム3を介在させた状態で、下板420の上面に被覆層1bが下側になるように被覆層1b及び圧縮層1a1を配置し、さらに圧縮層1a1の上面に離型紙2を配置する。離型フィルム3は、例えば、ポリオレフィン系やポリエステル系の材料から構成されてよい。そして、離型紙2の上側に上板430を配置し、工具410を加熱しつつ、
図8(c)に示すように上側から圧力をかけてプレスを行うことで、圧縮層1a1に複数のリブ1vを形成する。
【0068】
なお、第4実施形態では、リブ形成工程S1aで用いられるプレス工具410を加硫工程S3では用いないため、プレス工具410の下板420に形成される溝10vの形状を完成品としての伝動ベルトのリブ1vの形状と一致させる必要はない。したがって、例えば、
図8(b),(c)に示すように、隣接する2つの溝10vの間の凸部先端10pに丸みを持たせず、凸部先端10pを尖らせてもよい。これにより、圧縮層1a1に対してリブ1vを容易に形成することができる。
【0069】
第4実施形態においても、第1実施形態と同様、この段階において、圧縮層1a1は未加硫の状態である。即ち、リブ形成工程S1aでは、加硫が行われないように、圧力、温度、時間等を制御する。例えば、工具410の温度を80〜100℃、加圧力を1〜2MPa、プレス時間を10〜30秒程度として、圧縮層1a1に伝達される温度を100℃未満とする。
【0070】
第4実施形態では、リブ形成工程S1aの後、心線配置工程S1bの前に、圧縮層1a1と被覆層1bとを含むスリーブ前駆体の長手方向両端を切断し、その後、内側にコア20が配置されたドラム10の外周面10aに被覆層1bが内側になるようにスリーブ前駆体を巻き付け、長手方向両端を圧着してスリーブ前駆体を環状に形成するという工程を行う。切断の際は、製品品質確保の点から、
図8(d)に示すように、圧縮層1a1の端部と被覆層1bの端部との位置をずらすことが好ましい。
【0071】
続いて、
図9を参照し、本発明の第5実施形態に係る製造方法について説明する。第5実施形態に係る製造方法は、ベルト長手方向と直交する断面が台形のVベルト(例えば、ラップドタイプ、ローエッジ(プレン)タイプ)の製造方法である。
【0072】
第
5実施形態では、スリーブ形成工程S1において、第1実施形態のようなリブ形成工程S1a及び心線配置工程S1bを行わず、Vベルトとなる環状のスリーブ1を複数形成する。即ち、本実施形態において、「スリーブ」は、「1本のVベルトの前駆体」をいう。各スリーブ1は、
図9に示すように、ベルト長手方向と直交する断面が台形になるように切削等の加工が行われた圧縮層1a1と、ベルト長手方向に延在する心線1cと、圧縮層1a1とで心線1cを挟む伸長層1a2と、被覆層1b(ラップドタイプの場合、スリーブ1の全面を覆う。)とを含む。
【0073】
第
5実施形態では、スリーブ形成工程S1の後、加硫工程S2で、
図9に示すように、ドラム10の内側にドラム10の内周面10bを支持するコア20を配置した状態で、ドラム10の外周面10aに形成された複数のV状溝10vに、S1で形成した複数のVベルトとなるスリーブ1をそれぞれ収容し、第1実施形態と同様のジャケット60を用いて、複数のスリーブ1を一度に加硫する。
【0074】
そして、第
5実施形態では、加硫工程S2の後、脱型工程S3で、第1実施形態と同様にドラム10の冷却、コア20の取出し、円弧片11b,11cの移動等を行い、ドラム10から複数のスリーブ1を一度に取り出す。
【0075】
第
5実施形態によれば、特許文献1に記載の方法のような複数のリング金型を積み重ねる工程や複数のリング金型をボルト・ナットで固定する工程が不要であり、また、複数のスリーブ1の脱型を一度に行うことができることから、製造工程全般における作業効率がよい。
【実施例】
【0076】
本発明者は、
図10(a)に示すように、特許文献2の製造方法に係る比較例1〜4と、第1実施形態の製造方法に係る実施例1〜3とを行い、加硫後のスリーブにおけるリブの外観、及び、加硫後のスリーブにおける心線の配列状態を確認した。
【0077】
比較例1〜4及び実施例1〜3のスリーブは、それぞれ、
図5(b)に示すスリーブ1と同様の構成であり、圧縮層1a1(厚み2.0mm)及び伸長層1a2(厚み0.8mm)を含むゴム層1aと、編布からなる被覆層1b(厚み0.8mm)と、心線1c(アラミド心線の場合は直径0.7mm、ポリエステル心線の場合は直径1.0mm)とを有し、加硫前の段階で全厚4.3mm・幅400mm、加硫後の段階で全厚4.1mm・幅400mmであり、加硫後のベルト周長POCは
図10(a)のとおりである。
【0078】
伸長層1a2用のゴム、圧縮層1a1用のゴム、及び、被覆層1bの接着処理用ゴムは、それぞれ比較例1〜4及び実施例1〜3において同じ組成であり、材料及び配合比率は
図10(b)のとおりである。伸
長層1a2及び圧縮層1a1については、
図10(b)に示す配合のゴムをバンバリーミキサ等の公知の方法を用いてゴム練りを行い、この練りゴムをカレンダーロールに通して所定厚みとした。被覆層1bについては、
図10(b)に示す配合の接着処理用ゴムを有機溶媒に溶かしてゴム糊とし、当該ゴム糊に被覆層1bの編布を浸漬処理した。
【0079】
被覆層1bを構成する編布は、比較例1〜4及び実施例1〜3において同じであり、ベルト表面(摩擦伝動面)側にセルロース系天然紡績糸(綿糸)を用い、圧縮層1a1側に嵩高加工したポリエステル系複合糸(PTT/PETコンジュゲート糸:ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)とポリエチレンテレフタレート(PET)をコンジュゲートした複合糸)を用いたものである。また、セルロース系複合糸の編成比率を60質量%とし、親水化処理剤(親水性柔軟剤)として非イオン界面活性剤であるポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤を含有・付着させて編布組織を多層とし、嵩高性を3.2cm
3/gとした。
【0080】
心線1cについて、比較例1,2及び実施例1では、1100dtex/1×3構成(総計3300dtex)、諸撚り(上撚り係数3.0、下撚り係数3.0)、引張応力100N時の伸度2.0%、引張応力140N時の伸度3.3%の、ポリエステル心線を用いた。比較例3,4及び実施例2,3では、1670dtex/1×2構成、ラング撚り(上撚り係数4.5、下撚り係数1.0)、引張応力100N時の伸度0.9%、引張応力140N時の伸度1.2%の、パラ系アラミド心線を用いた。また、比較例1〜4及び実施例1〜3共に、心線1cについて、ゴムとの接着性を高めるため、水溶性エポキシ化合物を添加したレゾルシン−ホルマリン−ラテックス液(RFL液)に浸漬処理した。その後、比較例3,4及び実施例2,3の心線1cについては、さらに、EPDMを含むゴム組成物を有機溶媒(トルエン)に溶解しポリメリックイソシアネートを添加した処理液でコーティング処理を行った。
【0081】
先ず、心線1cとしてポリエステル心線をそれぞれ用いた比較例1,2と実施例1とについて考察する。比較例1,2は、特許文献2の製造方法(圧縮層を含む第1スリーブと心線や伸長層を含む第2スリーブとを一体化させる際に心線を伸ばす構成)によるものであり、第1スリーブと第2スリーブとの間隙を1.0mm確保できた比較例1(ベルト周長500mm)では、加硫後のスリーブにおけるリブの外観及び心線の配列状態共に問題がなかったが、上記間隙が1.0mm未満となった比較例2(ベルト周長450mm)では、加硫後のスリーブにおいて、リブの表面(被覆層)に部分的に皺が生じ、また、心線の配列状態にも部分的な乱れが生じた。したがって、特許文献2の製造方法では、ポリエステル心線を採用した場合、伝動ベルトの品質確保の点から上記間隙を1.0mm以上確保する(即ち、ベルト周長を500mm以上とする)必要があることがわかった。一方、実施例1は、ベルト周長が450mmであるが、加硫後のスリーブにおけるリブの外観及び心線の配列状態共に問題がなかった。
【0082】
次に、心線1cとしてアラミド心線をそれぞれ用いた比較例3,4と実施例2,3とについて考察する。比較例3,4は、特許文献2の製造方法(圧縮層を含む第1スリーブと心線や伸長層を含む第2スリーブとを一体化させる際に心線を伸ばす構成)によるものであり、アラミド心線の場合、伸び難い特性を有するため、上撚り係数を増加させて伸び易くしても、第1スリーブと第2スリーブとの間隙をある程度確保する必要があり、比較例3(ベルト周長1100mm)では、加硫後のスリーブにおけるリブの外観及び心線の配列状態共に問題がなかったが、比較例4(ベルト周長1000mm)では、加硫後のスリーブにおいて、リブの表面(被覆層)に部分的に皺が生じ、また、心線の配列状態にも部分的な乱れが生じた。したがって、特許文献2の製造方法では、アラミド心線を採用した場合、伝動ベルトの品質確保の点からベルト周長を1100mm以上とする必要があることがわかった。一方、実施例2,3は、ベルト周長がそれぞれ1000mm,450mmであるが、加硫後のスリーブにおけるリブの外観及び心線の配列状態共に問題がなかった。
【0083】
つまり、本発明によれば、心線1cとしてポリエステル心線及びアラミド心線のいずれを採用した場合でも、特許文献2の製造方法では品質確保の点から製造し難いベルト周長が比較的短いベルトを好適に製造することができる(換言すると、特許文献2の製造方法に比べ、ベルト周長の制約が生じ難い)ことがわかった。
【0084】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0085】
・ドラムに含まれる円弧片の数は、3つに限定されず、4以上であってもよい。
・3以上の円弧片における周方向の長さは、特に限定されない。例えば、上述の実施形態と同様にドラム10が3つの円弧片11a〜11cを含む場合に、円弧片11a〜11cにおける周方向の長さLa〜Lcは、La:Lb:Lc=1:1:1(
図11(a)参照)であってもよいし、La:Lb:Lc=9:6:9(
図11(b)参照)であってもよい。また、ドラム10が4つの円弧片11a〜11dを含む場合に、円弧片11a〜11dにおける周方向の長さLa〜Ldは、La:Lb:Lc:Ld=7:7:5:5(
図11(c)参照)であってもよい。
・ドラムは、周方向に隣接する2つの円弧片を連結する連結部を含まなくてもよい。この場合でも、脱型工程において、3以上の円弧片のうちの少なくとも1つの円弧片をドラムの径方向内側に移動させることで、スリーブがドラムの外周面に接触した状態からスリーブがドラムの外周面に接触しない状態として、スリーブをドラムに対してドラムの軸方向に相対移動させることにより、ドラムからスリーブを取り出せばよい。
・ドラムの内側にコアを配置せずに、スリーブ形成工
程を行ってもよい。
・コグ又はノッチ付きの伝動ベルトの場合、コグ又はノッチを形成する工程を、加硫工程の後、打ち抜き加工により行ってよい。
・リブやコグの高さが低い場合、加硫工程において、加硫と共にリブやコグを形成してもよい。
・ドラムの外周面に形成された複数の溝が、ドラムの軸方向にそれぞれ延在してもよい。この場合、Vベルトのコグ又はノッチや、かみ合い伝動(歯付き)ベルトの歯部を形成することができる。
・ドラムの外周面に溝がなくてもよい。この場合、リブ、コグ、歯部等に対応する凹凸のないスリーブが形成され、必要に応じて脱型工程の後に切削や打ち抜き加工で凹凸を形成してよい。
・伝動ベルトの各構成要素(ゴム層、心線、被覆層等)に、他の要素との接着性を高めるための処理(接着層のコーティング)を行ってよい。
・ゴム層は、1又は複数の層で構成されてよい。
・スリーブは、ゴム層を含む限りは、その他の構成要素(心線、被覆層等)を含まなくてもよい。