(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記防漏カフが、裏面シートと前記吸収体との間の位置であって且つ該吸収体の側縁の位置又は該側縁よりも幅方向の内方寄りの位置を基端部として起立するようになっている請求項1又は2に記載の吸収性物品。
前記張り出し部位の幅方向への張り出し幅をEとし、前記防漏カフの基端部と自由端部との間の距離をDとし、前記吸収体の厚みをTとしたとき、T<E<D−Tの関係が成立するようにした請求項1ないし3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。本発明の一実施形態であるパンツ型使い捨ておむつ1(以下、おむつ1ともいう)は、
図1及び
図2に示すとおり、着用者の腹側に配される矩形状の腹側シート部材2Aと、着用者の背側に配される矩形状の背側シート部材2Bと、腹側シート部材2A及び背側シート部材2Bに架け渡して固定された吸収性本体3とを具備している。そして、腹側シート部材2Aの及び背側シート部材2Bそれぞれの上端縁2Ae,2Beの位置、及び下端縁2Af,2Bfの位置を一致させて、腹側シート部材2Aの両側縁部2a,2aと背側シート部材2Bの両側縁部2b,2bとが接合されて、一対のサイドシール部4,4が形成されている。
【0012】
おむつ1は、
図1及び
図2に示すとおり、着用時に、着用者の腹側に配される腹側部Aと、着用者の背側に配される背側部Bと、腹側部Aと背側部Bとの間に位置し、着用者の股間部に配される股下部Cを有している。おむつ1の長手方向(物品長手方向)は、腹側部Aから股下部Cを経て背側部Bにわたる方向又はその逆方向(
図2中X方向)であり、おむつ1の幅方向(物品幅方向)は、着用者の胴回り方向に沿う方向であり、物品長手方向と交差する方向(
図2中Y方向)である。
【0013】
腹側シート部材2Aは、おむつ1の展開且つ伸長状態(
図2参照)において、幅方向Yに沿って長い横長の長方形状をなしている。背側シート部材2Bも、同様に、おむつ1の展開且つ伸長状態(
図2参照)において、横長の長方形状をなしている。腹側シート部材2Aと背側シート部材2Bは、
図2に示すとおり、長手方向Xの長さが、幅方向Yにおいて均一である。
【0014】
そして、腹側シート部材2Aの側縁部2aと、背側シート部材2Bの側縁部2bとが上述した一対のサイドシール部4,4において接合されて、筒状の胴回り部が形成されている。この接合には、例えばヒートシール、高周波シール、超音波シール、接着剤等の公知の接合手段が用いられる。また、この接合によって、サイドシール部4,4とともに、ウエスト開口部5及び一対のレッグ開口部6,6が形成される。
【0015】
おむつ1の吸収性本体3は、
図2及び
図3に示すとおり、液透過性の表面シート31、液不透過性又は撥水性の裏面シート32、及び両シート31、32間に介在配置された液保持性の吸収体33を有しており、長手方向Xに長い長方形状に形成されている。表面シート31は、吸収体33の肌当接面側に配置されている。裏面シート32は、吸収体33の非肌当接面側に配置されている。吸収体33は、パルプ繊維等の繊維の集合体(不織布であってもよい)からなる吸収性コア33a又はこれに吸水性ポリマーの粒子を保持させてなる吸収性コア33aと、該吸収性コア33aを被覆するコアラップシート33bからなる。吸収体33も、長手方向Xに長い長方形状に形成されている。裏面シート32、及び吸収体33の吸収性コア33aやコアラップシート33bとしては、それぞれ、この種の吸収性物品に従来用いられているものと同様のものを用いることができる。なお図示していないが、股下部Cにおける吸収性本体3の外側には、裏面シート32に重ねて、不織布やフィルム等の外装シートを配することもできる。
【0016】
おむつ1の幅方向Yの両側部の位置には、長手方向Xに延びる一対の防漏カフ34,34が配置されている。防漏カフ34は、液抵抗性ないし撥水性で且つ通気性の素材から構成されている。各防漏カフ34は、それぞれ長手方向に延びる基端部34a及び自由端部34bを有している。自由端部34bの近傍には、防漏カフ弾性部材35が伸長状態で配されている。おむつ1の着用中には、防漏カフ弾性部材35が収縮することにより防漏カフ34が着用者の身体に向けて起立し、吸収性本体3から幅方向外方への液の流出が阻止される。
【0017】
図3に示すとおり、防漏カフ34は、裏面シート32と吸収体33との間の位置に基端部34aを有している。詳細には、防漏カフ34を構成するシートのうち、基端部34a寄りの部位が、裏面シート32と吸収体33との間に挟まれた状態で、これらが接着剤38によって接合固定されている。また防漏カフ34は、吸収体33の側縁の位置又は該側縁よりも幅方向の内方寄りの位置に基端部34aを有している。その結果、吸収体33と、防漏カフ34との間には空間39が形成可能になっている。この空間39は、排泄物、例えば尿等の一時的な収容が可能になっている。
【0018】
防漏カフ34は、吸収性本体3の長手方向Xの全域にわたって配置されている。そして防漏カフ34は、
図4に示すとおり、その長手方向Xに沿う両端部域341が内向きに倒伏された状態で表面シート31に接合されている。内向きに倒伏した防漏カフ34は、該防漏カフ34と対向する表面シート31と接着剤40によって接合されている。そして、防漏カフ34は、両端部域341間において表面シート31と非接合状態になっている。防漏カフ34のうち、この非接合状態になっている部位の自由端部34bには少なくとも上述した弾性部材35が配されている。これらの構造によって、防漏カフ34は、着用者の身体に向けた起立性向を有するものとなる。「内向きに倒伏」とは、吸収性本体3の幅方向Yの中央部側に向けて倒伏することを言う。
【0019】
図3に示すとおり、吸収性本体3は、防漏カフ34よりも幅方向Yの外方の位置であって且つ吸収体33の長手方向Xの両側縁それぞれの外方の位置に、長手方向Xに延びるレッグカフ36,36を有している。レッグカフ36の自由端には、長手方向Xに延びる弾性部材37,37が伸長状態で取り付けられている。レッグカフ37は、おむつ1の着用状態において、着用者の脚周りにフィットするようになっている。レッグカフ36は、裏面シート32のうち、吸収体33の各側縁から幅方向Yの外方に延出した部位によって形成されている。レッグカフ36は裏面シート32と一体をなしている。
【0020】
吸収性本体3は、長手方向Xの一端側(背側シート部材2Bと重なっている部分)が、背側シート部材2Bの幅方向Yの中央領域に接着剤(図示せず)を介して固定されている。また、吸収性本体3は、長手方向Xの他端側(腹側シート部材2Aと重なっている部分)が、腹側シート部材2Aの幅方向Yの中央領域に接着剤(図示せず)を介して固定されている。
【0021】
おむつ1における腹側シート部材2A及び背側シート部材2Bはいずれも、
図2に示すとおり、おむつの外面をなす外側シート22と、外側シート22の内面側に配された内側シート23と、両シート22,23間に配された複数本の糸状の弾性部材24とを備えている。弾性部材24は、幅方向Yに沿って延びている。それによって、腹側シート部材2A及び背側シート部材2Bは、幅方向Yに沿って伸縮性を発現している。
【0022】
図5には、おむつ1における表面シート31の要部拡大図が示されている。表面シート31は、一方向に延びる筋状の凸条部41及び凹条部42が幅方向に交互に配された凹凸構造の上層不織布43を有している。凸条部41及び凹条部42が延びる「一方向」は、おむつ1の長手方向Xと同方向である。また、表面シート31は、上層不織布43に隣接し且つ吸収体側に位置する下層不織布44を有している。上層不織布43は、凹条部42において、隣接する下層不織布44と接合部45において接合されており、凸条部41は上層不織布43と下層不織布44との間で中空構造を有している。
【0023】
上層不織布43は、その表裏両面の断面形状がともに厚み方向(Z方向)の上方に向かって凸状をなす複数の凸条部41と、隣り合う凸条部41,41どうしの間に位置する凹条部42とを有している。凹条部42は、表裏両面の断面形状がともに不織布43の厚み方向(Z方向)の下方に向かって凸状をなしている。そして、複数の凸条部41は、それぞれ長手方向Xに連続して延びており、複数の凹条部42も、上層不織布43の長手方向Xに連続して延びる溝状をなしている。凸条部41及び凹条部42は、互いに平行であり、幅方向Yに交互に配されている。
【0024】
凸条部41の高さH(
図5参照)は、本実施形態のおむつ1によって奏される後述の有利な効果が確実に奏されるようにするために、0.3mm以上であることが好ましく、0.5mm以上であることが更に好ましく、また5mm以下であることが好ましく、2mm以下であることが更に好ましい。具体的には、凸条部41の高さHは、0.3mm以上5mm以下であることが好ましく、0.5mm以上2mm以下であることが更に好ましい。凸条部41の高さHは、以下のようにして測定する。フェザー剃刀(品番FAS−10、フェザー安全剃刀(株)製)を用い、表面シート31を厚み方向Zに沿って、凸条部41が最も高くなる点を通るように切断する。表面シート31の断面をキーエンス製デジタルマイクロスコープVHX−900により約20倍程度で拡大することで、高さHを測定する。測定は3箇所行い、相加平均してその凸状部41の高さHとする。
【0025】
凸条部41及び凹条部42からなる表面シート31の凹凸構造は、おむつ1の幅方向Yに位置する部位である、後述の張り出し部位50に少なくとも形成されていることが好ましい。また、この凹凸構造は、おむつ1の長手方向Xにおける中央域に少なくとも形成されていることも好ましい。更に凹凸構造は、吸収体33の長手方向Xの全域にわたって張り出し部位50に形成されていることが好ましい。特に該凹凸構造は、おむつ1の長手方向X及び幅方向Yの全域に形成されていることが好ましい。
【0026】
上層不織布43及び下層不織布44は、例えばエアスルー不織布、スパンボンド不織布、スパンレース不織布、メルトブローン不織布、レジンボンド不織布、ヒートロール不織布、ニードルパンチ不織布などの種々の不織布から構成することができる。これらの不織布の任意の2種以上の積層体、例えばスパンボンド−メルトブローン(SM)不織布や、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド(SMS)不織布などを用いることもできる。
【0027】
図3に戻ると、表面シート31は、その平面視において吸収体33と重なる領域において、該吸収体33の肌当接面と接合されている。両者の接合には、表面シート31から吸収体33への液の移行を阻害しないような方法が用いられる。そのような接合方法としては例えば、
図3に示すとおり接着剤20の間欠塗工などの方法が挙げられる。両者の接合領域は、表面シート31と吸収体33とが重なっている領域のうち、少なくとも幅方向Yの全域にわたることが好ましく、幅方向Yの全域及び長手方向Xの全域にわたることが更に好ましい。
【0028】
図3に示すとおり、表面シート31は、吸収体33の両側縁を越えて幅方向に張り出している一対の張り出し部位50を有している。張り出し部位50は、おむつ1の平面視において長手方向Xに沿って延びる略矩形の領域である。なお以下の説明においては、張り出し部位50との対比において、表面シート31のうち、吸収体33の両側縁間に位置する部位を「中央部位51」という。張り出し部位50は、少なくとも、おむつ1の股下部Cに設けられており、好ましくは股下部Cに加えて腹側部A及び背側部Bの双方にも設けられている。張り出し部位50の長手方向Xに沿う長さは、吸収体33の長手方向Xに沿う長さと同じであるか、又はそれよりも長いか若しくはそれよりも短い。
【0029】
張り出し部位50は、吸収体33と非接合状態になっている。この場合、張り出し部位50は、その全域が吸収体33と非接合状態になっていてもよく、あるいはその一部が吸収体33と非接合状態になっていてもよい。該防漏カフ34の柔軟性、特に該防漏カフ34の長手方向Xの柔軟性が阻害されにくいという観点から、張り出し部位50はその全域が吸収体33と非接合状態になっていることが好ましい。これに加えて、張り出し部位50は、吸収体33以外の部材とも非接合状態になっていることが好ましい。つまり張り出し部位50は、おむつ1を構成するどのような部材に対しても非接合状態になっていることが好ましい。このことにより、着用時に着用者の動きに防漏カフ34が追従する動きを妨げにくくなる。
【0030】
張り出し部位50は、中央部位51と同様に、着用者の身体に向けて突出した複数の凸部と該凸部間に位置する凹部とで構成される凹凸構造を有している。詳細には、中央部位51と同様に、
図5に示すとおりの凸条部41及び凹条部42が、張り出し部位50における肌当接面側に形成されている。凸条部41及び凹条部42は長手方向Xに沿って延びており、幅方向に交互に配されている。それによって張り出し部位50は、その肌当接面側に畝溝構造を有している。張り出し部位50に形成されている凸条部及び凹条部は、該張り出し部位50の長手方向Xに沿う全域にわたって形成されている。特に、畝溝構造からなる凹凸構造は、吸収体33の長手方向Xの全域にわたって張り出し部50に形成されていることが好ましい。
【0031】
張り出し部位50に形成されている凸条部及び凹条部は、中央部位51に形成されている凸条部及び凹条部42と同じ形状をしており、且つ同じ寸法をしている。張り出し部位50は、中央部位51からの延長部分として形成されており、両部位は一体に連なっている。
【0032】
張り出し部位50は、その肌当接面側が凹凸構造となっていることと対照的に、非肌当接面側は平坦になっている。中央部位51においても、非肌当接面側は平坦になっている。
【0033】
図5に示す張り出し部位50を含む表面シート31は、互いに噛み合う一対の歯溝ロールに不織布原反を通して凹凸加工を施し、凹凸加工された不織布原反を、別の不織布原反と接合することで製造することができる。前記の歯溝ロールとしては、ロールの軸方向に沿って延びる凸部と凹部とが、ロールの回転方向に沿って交互に配置されたものを用いることができる。
【0034】
図3に示すとおり、各張り出し部位50は、着用者の身体側に向けて折り返されている。そして、折り返された状態の張り出し部50は、起立した状態の防漏カフ34に沿うように、該防漏カフ34の内面に非接合状態で当接している。張り出し部位50は、その非肌当接面側が、防漏カフ34の内面に当接している。張り出し部位50の非肌当接面は上述のとおり平坦面になっているので、張り出し部位50は、防漏カフ34の内面とほぼ隙間なく密接している。
【0035】
以上の構成を有するおむつ1によれば、防漏カフ34の基端部34a付近の内面が張り出し部位50によって覆われているので、排泄物、特に軟便が防漏カフ34と吸収体33とによって画成される空間39内に意図せず入り込んでしまうことが効果的に防止され、それによって、該空間39を画成する部材である防漏カフ34を通じての排泄物のしみ出しが効果的に防止される。また表面シート31の上を伝って流れ出た排泄物が、着用者の身体側に向けて折り返された状態の張り出し部位50にまで到達すると、該張り出し部位50によって排泄物中の水分、例えば軟便中の水分が、該張り出し部位50によって濾しとられる。この場合、該張り出し部位50や表面シート31と、吸収体33の側部とが接合されていないため、水分は吸収体33の側部から吸収体33中へ吸収される。水分が濾しとられた軟便等の排泄物は、粘度が上昇することに起因して表面シート31上で移動しづらくなり、それによって横漏れが確実に防止される。特に、張り出し部位50の肌当接面側に凹凸構造が形成されていることが起因して、該肌当接面側での表面積が増加し、それによって排泄物からの水分の濾過性が向上する。更に、張り出し部位50が、着用者の身体側に向けて折り返されて、起立した前記防漏カフに沿うように該防漏カフ34の内面に非接合状態で当接していることに起因して、着用者の動きなどによって防漏カフ34の起立状態が変化する場合であっても、張り出し部位50は防漏カフ34の内面との当接位置がずれるだけであり、適切に防漏カフ34の内面に当接することができるので、空間39の形状が維持されやすい。その結果、排泄物のしみ出しが効果的に抑制される。
【0036】
しかも、張り出し部位50は、防漏カフ34の内面と非接合状態になっているので、該防漏カフ34の柔軟性、特に該防漏カフ34の長手方向Xの柔軟性が阻害されにくいという利点もある。その上、張り出し部位50が凹凸構造を有していることで、該張り出し部位が平坦な構造である場合に比べて剛性が高くなり、そのことに起因して、おむつ1の装着状態において張り出し部位50によれが発生しづらくなる。
【0037】
更に、表面シート31の中央部位51及び張り出し部位50のいずれもが、おむつ1の長手方向Xに沿って延びる畝溝構造を有しているので、排泄物が該畝溝構造に案内されて、おむつ1の長手方向Xの端部側に向けて拡散されやすくなる。そのことによって、おむつ1の横漏れや、防漏カフ34を通じての排泄物のしみ出しが効果的に防止される。
【0038】
また、
図4に示すとおり、防漏カフ34の長手方向Xの両端部域341は、内向きに倒伏されて表面シート31と接合されているので、張り出し部位50に沿って該端部域341に流れてきた排泄物は、該端部域341において流れる方向が幅方向Yの内方に変化する。これによっても、横漏れが効果的に防止される。防漏カフ34の両端部域341が内向きに倒伏されていることは、該防漏カフ34の内面と張り出し部位50の非肌当接面との密着性の向上に寄与し、ひいては張り出し部位50が防漏カフ34に沿いやすくなることに寄与する。同様の効果は、防漏カフ34が、吸収体33の側縁の位置又は該側縁よりも幅方向Yの内方寄りの位置を基端部34aとして起立するようになっていることによって、一層顕著なものとなる。
【0039】
更に、上述のとおり、張り出し部位50の非肌当接面は平坦面になっているので、該非肌当接面と防漏カフ34の内面との摩擦力を小さくすることができる。そのことに起因して、防漏カフ34が着用者の身体に向けて起立したときに、張り出し部位50が、防漏カフ34の起立に追従して着用者の身体側に折り返されやすくなる。
【0040】
図6には、
図3に示すおむつ1の幅方向Yに沿う厚み方向断面の要部拡大図が示されている。同図に示すとおり、張り出し部位50の幅方向Yへの張り出し幅をEと定義する。また、防漏カフ34の基端部34aと自由端部34bとの間の距離、すなわち防漏カフ34の高さをDと定義し、吸収体33の厚みをTと定義する。このとき、これら三者の間にはT<E<D−Tの関係が成立することが好ましい。このように各寸法を調整することで、防漏カフ34が起立したときに、張り出し部位50の非肌当接面が、防漏カフ34の内面に沿うように首尾よく折り返されるようになる。このことを、
図7(a)及び(b)を参照しながら説明する。
【0041】
図7(a)は、寸法E、D及びTの間に上述の関係が成立するおむつ1の製造途中での状態を示す幅方向断面図である。同図に示す状態は、防漏カフ34の両端部域(図示せず)を表面シート31側に向けて倒伏・固定させる前の状態を示している。この状態においては、防漏カフ34は、幅方向Yの外方寄りに自由端部34bを有する平坦な状態になって、レッグカフ36上に位置している。また、表面シート31の張り出し部位50は、吸収体33の側縁から幅方向Yの外方に延出して、防漏カフ34上に該防漏カフ34と非接合状態で位置している。
【0042】
図7(a)に示す状態から製造工程が進行して、防漏カフ34の両端部域(図示せず)を表面シート31側に向けて倒伏・固定させる工程が完了すると、
図7(b)に示すとおり防漏カフ34には着用者の身体に向けて起立性向が付与されて、レッグカフ36から離間して起立する。防漏カフ34の起立に起因して、該防漏カフ34上に位置していた張り出し部位50は、該防漏カフ34の起立に追従して着用者の身体側に向けて首尾よく折り返される。
【0043】
これに対して、
図8(a)に示すとおり、張り出し部位50の幅方向Yへの張り出し幅Eが、吸収体33の厚みTと同じかそれよりも小さい場合には、防漏カフ34に起立性向が付与されて、該防漏カフ34が着用者の身体に向けて起立した場合であっても、その起立に張り出し部位50が追従しにくくなり、
図8(b)に示すとおり、張り出し部位50は、吸収体33の側部において垂下した状態となり、起立した防漏カフ34と、吸収体33の側部との間に位置しやすくなってしまう。
【0044】
また張り出し部位50の幅方向Yへの張り出し幅Eが、防漏カフ34の高さDから吸収体33の厚みTを差し引いた値と同じか、又はそれよりも大きい場合には、防漏カフ34が起立したときに、それに追従して張り出し部位50も着用者の身体側に向けて折り返されるものの、張り出し幅Eが長くなりすぎることに起因して、張り出し部位50の自重でよれが生じやすくなる。
【0045】
図9(a)及び
図9(b)には、張り出し部位50の別の実施形態が示されている。これらの図に示す張り出し部位50は、互いに積層された上層不織布61及び下層不織布62を有している。上層不織布61と下層不織布62とは直接に接しており、両不織布61,62間に他の層は介在していない。上層不織布61は、第1面61a及びそれに対向する第2面61bを有する。下層不織布62は、第1面62a及びそれに対向する第2面62bを有する。上層不織布61と下層不織布62とは、上層不織布第2面61bと、下層不織布第1面62aとが対向するように積層されている。上層不織布第1面61aは、張り出し部位50における肌当接面をなしている。一方、下層不織布第2面62bは、張り出し部位50における非肌当接面をなしている。
【0046】
上層不織布61と下層不織布62とは部分的に熱融着によって接合されており、それにより多数の接合部63が形成されている。上層不織布61は、複数の接合部63に囲まれた非接合部において下層不織布62から離れる方向に突出して、凸部64を多数形成している。隣り合う凸部64の間は凹部65となっている。凹部65の底部は接合部63を含んでいる。これによって、張り出し部位50の肌当接面をなす上層不織布第1面61a側には、凸部64及び凹部65からなる凹凸構造が形成されている。一方、張り出し部位50の非肌当接面をなす下層不織布第2面62b側は平坦な状態になっている。
【0047】
凸部64は中空構造のものである。詳細には、凸部64はその内部に、上層不織布61の第2面61bと下層不織布62の第1面62aとで画成される中空の空間が形成されている。一方、凹部65においては、上層不織布61と下層不織布62とが密接しており両層間に空間は実質的に存在していない。
【0048】
凸部64は千鳥格子状に配列されている。凹部65も千鳥格子状に配列されている。各凸部64の形状及び寸法は略同一になっている。各凹部65についても同様である。張り出し部位50の上層不織布61側からの平面視において、凸部64は略円形をしている。凸部64は1つの頂部64aを、平面視して略円形の該凸部64の略中央部に有している。このように、本実施形態においては、凸部64は張り出し部位50の肌当接面側において散点状に分散配置されている。
【0049】
図9(b)に示すとおり、凸部64の頂部64aを通る厚み方向Zの断面を見たときに、凸部64を構成する上層不織布61の第1面61a及び第2面61bのいずれもが、下層不織布62側から上層不織布61側へ向けて突出した凸の曲線を描いている。この凸の曲線の形状は、頂部64aを通る厚み方向Zの任意の断面において同じ形状となっている。このように、凸部64は略半球殻の形状をしている。
【0050】
凸部64の高さは、
図5に示す張り出し部位50における凸条部41の高さHと同様とすることができる。凸部64の高さの定義及び高さの測定方法も、
図5と同様とすることができる。
【0051】
本実施形態の張り出し部位50は、例えば特開2004−174234号公報に記載の方法(特に段落〔0021〕〜〔0025〕に記載の方法)に準じて製造することができる。
【0052】
以上の構成は、表面シート31における張り出し部位50に関するものであったが、同様の構成を表面シート31における中央部位51に適用してもよい。あるいは、中央部位51は
図5に示す構成とし、張り出し部位50のみを
図9(a)及び
図9(b)に示す構成としてもよい。
【0053】
以上の構成を有する張り出し部位50を有するおむつ1においても、先に述べた実施形態のおむつと同様の効果が奏される。
【0054】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば
図3等に示す張り出し部位50においては、凸条部43の内部には空間があり、該凸条部43は中空の構造となっていたが、これに代えて、凸条部43の内部を繊維で満たした中実の構造となしてもよい。
図9(a)及び(b)に示す実施形態の凸部64に関しても同様であり、該凸部64を中空構造とすることに代えて、内部が繊維で満たされた中実構造となしてもよい。
【0055】
また前記の各実施形態における張り出し部位50は、2枚の不織布を積層して形成されていたが、これに代えて、凹凸構造を有する上層不織布のみを1枚用いて張り出し部50を構成してもよい。この場合には、張り出し部位50における肌当接面及び非肌当接面のいずれもが凹凸構造を有することになる。
【0056】
また前記の各実施形態においては、張り出し部位50だけでなく、表面シート31における中央部位51の肌当接面側にも凹凸構造が形成されていたが、該中央部位51には凹凸構造を形成せず、平坦な状態となしてもよい。
【0057】
前記の各実施形態は、本発明をパンツ型使い捨ておむつに適用した例であるが、本発明はこれ以外の吸収性物品、例えば展開型の使い捨ておむつや、ショーツ型の生理用ナプキンにも同様に適用できる。