特許第6396793号(P6396793)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6396793-スイッチング電源回路 図000002
  • 特許6396793-スイッチング電源回路 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6396793
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】スイッチング電源回路
(51)【国際特許分類】
   H05B 37/02 20060101AFI20180913BHJP
【FI】
   H05B37/02 J
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-263876(P2014-263876)
(22)【出願日】2014年12月26日
(65)【公開番号】特開2016-126825(P2016-126825A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2017年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平岡 尚悟
【審査官】 安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−030461(JP,A)
【文献】 特開2011−258431(JP,A)
【文献】 特開2012−209233(JP,A)
【文献】 特開2012−178292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光体に供給される駆動電流を生成するスイッチング電源回路であって、
交流電源に接続される位相制御式調光器と、
前記位相制御式調光器の出力電圧を整流する整流器と、
前記位相制御式調光器を安定動作させるための保持電流を流す動作安定化回路と、
前記整流器の出力端子に導通接続された入力端子、及び、前記入力端子に印加された電圧波形に応じた大きさの前記駆動電流を設定する電流設定端子を有する駆動電流制御部と、
前記交流電源がオンしてから前記位相制御式調光器が安定動作するまでの期間は前記入力端子へ電圧が印加されないように前記入力端子への電圧印加を遅らせて前記電流設定端子による前記駆動電流の設定開始を遅延させる遅延回路とを備え
前記遅延回路は、
前記駆動電流制御部の前記入力端子に接続された第1端子、接地電位に保持された第2端子、及び、前記第1端子と前記第2端子との間の導通を制御するための第3端子を有する第1スイッチング素子と、
一端に前記駆動電流制御部から出力される第1基準電位が印加され、他端が前記第1スイッチング素子の前記第3端子に接続された容量素子と、
一端が前記容量素子の前記他端及び前記第1スイッチング素子の前記第3端子に接続され、他端が前記第1基準電位よりも低い第2基準電位に保持された第1抵抗素子とを有し、
前記容量素子の静電容量及び前記第1抵抗素子の抵抗値は、前記容量素子の充電が、前記位相制御式調光器が安定動作を開始した以後に終了するように選択されており、
前記第1抵抗素子の抵抗値は、前記容量素子の充電中における前記第1スイッチング素子の前記第3端子の電位が前記第1スイッチング素子の閾値電圧よりも高くなるように設定されていることを特徴とするスイッチング電源回路。
【請求項2】
前記容量素子に蓄えられた電荷を放電させる放電回路をさらに備えることを特徴とする請求項に記載のスイッチング電源回路。
【請求項3】
前記交流電源のオンオフに連動して電位が変化する電位変化端子をさらに備えており、
前記放電回路が、
前記容量素子の前記一端に接続された第1端子、前記容量素子の前記他端に接続された第2端子、及び、前記電位変化端子に導通接続された、前記第1端子と前記第2端子との間の導通を制御するための第3端子を有する第2スイッチング素子を含んでいることを特徴とする請求項に記載のスイッチング電源回路。
【請求項4】
前記電位変化端子と前記第2スイッチング素子の前記第3端子との間に配置された第2抵抗素子と、
前記第2抵抗素子と直列に接続された第3抵抗素子とをさらに備えており、
前記第2スイッチング素子の前記第3端子が、前記第2抵抗素子と前記第3抵抗素子との間に導通接続されており、
前記駆動電流制御部は、前記電位変化端子の電位が第3基準電位以下になると、前記駆動電流の出力を停止することを特徴とする請求項に記載のスイッチング電源回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング電源回路に関し、特に発光ダイオード(LED)などの発光体を駆動するために用いられるスイッチング電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、交流電源に接続される位相制御式調光器であるトライアック調光器と、整流器であるダイオードブリッジと、LED(Light Emitting Diode)ドライバICとを用いた発光体駆動回路が開示されている。整流器は、トライアック調光器における導通角に応じて大きさが変化する電圧を出力する。また、ドライバICは、位相角検出端子(VHV端子)を有している。そして、ドライバICは、トライアック調光器からダイオードブリッジを介して位相角検出端子に印加された電圧波形をモニタし、電圧波形に応じた大きさの出力電流(ILED)を駆動電流として出力する機能を有している。このようにLEDドライバICを用いることによって、既存のトライアック調光器を流用してLED照明機器の調光制御を行うことが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−30461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トライアック調光器は、交流電源がオンとなってから安定動作するまで、導通角によって定められる本来の電圧よりも低い電圧を発生させるという特性がある。そのため、この低い電圧波形が位相角検出端子に印加されると、ドライバICからは当初は小さな出力電流が出力され、その後、トライアック調光器が安定動作を始めてから所望の大きさの出力電流が出力されることになる。つまり、LEDに供給される駆動電流が段階的に立ち上がり、LEDの明るさが2段階に変化するように点灯してしまう。このような現象は、LEDのちらつきであると使用者に認識されるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、交流電源オン時における発光体のちらつき発生を防止することができる、位相制御式調光器を用いたスイッチング電源回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のスイッチング電源回路は、発光体に供給される駆動電流を生成するスイッチング電源回路であって、交流電源に接続される位相制御式調光器と、前記位相制御式調光器の出力電圧を整流する整流器と、前記位相制御式調光器を安定動作させるための保持電流を流す動作安定化回路と、前記整流器の出力端子に導通接続された入力端子、及び、前記入力端子に印加された電圧波形に応じた大きさの前記駆動電流を設定する電流設定端子を有する駆動電流制御部と、前記交流電源がオンしてから前記位相制御式調光器が安定動作するまでの期間は前記入力端子へ電圧が印加されないように前記入力端子への電圧印加を遅らせて前記電流設定端子による前記駆動電流の設定開始を遅延させる遅延回路とを備え、前記遅延回路は、前記駆動電流制御部の前記入力端子に接続された第1端子、接地電位に保持された第2端子、及び、前記第1端子と前記第2端子との間の導通を制御するための第3端子を有する第1スイッチング素子と、一端に前記駆動電流制御部から出力される第1基準電位が印加され、他端が前記第1スイッチング素子の前記第3端子に接続された容量素子と、一端が前記容量素子の前記他端及び前記第1スイッチング素子の前記第3端子に接続され、他端が前記第1基準電位よりも低い第2基準電位に保持された第1抵抗素子とを有し、前記容量素子の静電容量及び前記第1抵抗素子の抵抗値は、前記容量素子の充電が、前記位相制御式調光器が安定動作を開始した以後に終了するように選択されており、前記第1抵抗素子の抵抗値は、前記容量素子の充電中における前記第1スイッチング素子の前記第3端子の電位が前記第1スイッチング素子の閾値電圧よりも高くなるように設定されている。
【0007】
これにより、交流電源のオン後に容量素子の充電が完了するまでは第1抵抗素子の一端の電位が上昇するので、第1スイッチング素子の第1端子と第2端子との間を導通状態とすることができ、当該導通期間には駆動電流制御部の入力端子に接地電位が印加される。したがって、位相制御式調光器が安定動作するまでの低電圧期間が終了する以後に容量素子の充電が完了するように容量素子の静電容量及び第1抵抗素子の抵抗値を選択することにより、位相制御式調光器が安定動作するまでの低電圧期間には、整流器の出力電圧が駆動電流制御部の入力端子に印加されることが無くなる。したがって、交流電源オン時に発光体の明るさが2段階で変化せず、発光体のちらつき発生を防止することができる。
【0010】
また、本発明のスイッチング電源回路は、前記容量素子に蓄えられた電荷を放電させる放電回路をさらに備えることが好ましい。
【0011】
これによって、容量素子に蓄えられた電荷を速やかに放電させることができる。
【0012】
また、本発明のスイッチング電源回路は、前記交流電源のオンオフに連動して電位が変化する電位変化端子をさらに備えており、前記放電回路が、前記容量素子の前記一端に接続された第1端子、前記容量素子の前記他端に接続された第2端子、及び、前記電位変化端子に導通接続された、前記第1端子と前記第2端子との間の導通を制御するための第3端子を有する第2スイッチング素子を含んでいることが好ましい。
【0013】
これにより、交流電源がオフになると電位変化端子の電位変化に伴って第2スイッチング素子の第3端子の電位が変化するので、第2スイッチング素子の第1端子と第2端子との間を導通状態とすることができる。そのため、当該導通状態となることで容量素子に蓄えられた電荷が確実に放電される。したがって、容量素子に蓄えられた電荷が交流電源がオフとなってから速やかに放電されることが担保されるので、交流電源がオフとなってから比較的短時間のうちに再度オンとされた場合であっても、位相制御式調光器が安定動作するまでの低電圧期間に、整流器の出力電圧が駆動電流制御部の入力端子に印加されることが無い。
【0014】
さらに、本発明のスイッチング電源回路は、前記電位変化端子と前記第2スイッチング素子の前記第3端子との間に配置された第2抵抗素子と、前記第2抵抗素子と直列に接続された第3抵抗素子とをさらに備えており、前記第2スイッチング素子の前記第3端子が、前記第2抵抗素子と前記第3抵抗素子との間に導通接続されており、前記駆動電流制御部は、前記電位変化端子の電位が第3基準電位以下になると、前記出力端子からの前記駆動電流の出力を停止することが好ましい。
【0015】
これにより、第2抵抗素子と第3抵抗素子との抵抗値に応じた分圧比によって第2スイッチング素子の第1端子と第2端子との間が導通状態となるタイミングを調整することができる。したがって、容量素子の放電タイミングを、交流電源がオフになって駆動電流制御部が駆動電流の出力を停止した直後とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
位相制御式調光器が安定動作するまでの低電圧期間には、整流器の出力電圧が駆動電流制御部の入力端子に印加されることが無くなる。したがって、交流電源オン時に発光体の明るさが2段階で変化せず、発光体のちらつき発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係るスイッチング電源回路の回路図である。
図2図1に示したスイッチング電源回路の動作シーケンスを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態に係るスイッチング電源回路について、図1及び図2を参照して説明する。図1に示すように、本実施形態に係るスイッチング電源回路1は、LEDモジュール2を駆動するものであって、交流電源(例えば90〜220Vの商用交流電源)3に接続された位相制御式調光器であるトライアック調光器11と、トライアック調光器11の出力電圧を整流する整流器であるダイオードブリッジDB1とを含んでいる。LEDモジュール2は、直列又は並列に接続された複数のLED素子を含んでいる。
【0019】
図2に、交流電源3の電源電圧Vacの波形を示す。交流信号である電源電圧Vacは、図2に示すスケールにおいて非常に短い周期で変動している。電源電圧Vacと同じ周波数を有する交流信号であるトライアック調光器11は、電源電圧Vacがオンとなった時刻t1から時刻t2までの期間(V1発生期間)においては安定動作していない。そのため、V1発生期間において、トライアック調光器11の出力波形Vinは、比較的小さい高さV1を有する。そして時刻t2にトライアック調光器11が安定動作を開始し、それ以後、出力波形Vinは、導通角によって定められる本来の大きさを有する電圧波形となる。
【0020】
本実施形態に係るスイッチング電源回路1は、ドライバIC12と、動作安定化回路13と、電源供給回路14と、スイッチング回路15と、遅延回路16と、放電回路17とをさらに含んでいる。
【0021】
ドライバIC12は、14個のピン(端子)を有している。1番ピンは電源端子(Vcc)、2番ピンはトライアック調光器11を安定動作させるための電流を流すタイミングを決める端子、3番ピンはトライアック調光器11を安定動作させるための電流を流す端子、4番ピンは回路に流れる電流を監視し3番ピンの動作をオンオフさせる端子、5番ピンはドライバIC12の接地端子(GND)、6番ピンはトライアック調光器11からダイオードブリッジDB1の高圧側出力端子(+)を介して出力電圧が印加される位相角検出端子(VHV)、7番ピンは調光動作(LEDの明るさ変化)を滑らかにする端子である。
【0022】
位相角検出端子に印加される電圧の大きさは、ダイオードブリッジDB1の高圧側出力端子(+)と低圧側出力端子(−)との間に直列接続された抵抗素子R3と抵抗素子R4との分圧比によって定められる。図2において電圧Vxは、抵抗素子R3と抵抗素子R4との間の位置における電圧を示している。電圧Vxは、トライアック調光器11の出力波形Vinと同期して出力値が変化する直流電圧である。低圧側出力端子(−)の電位は接地電位である。
【0023】
また、8番ピンは非絶縁/絶縁の回路方式を切り替えるための端子、11番ピンは6番ピンに印加された電圧波形に応じてドライバIC12内部の検出電圧を変化させ、当該検出電圧に応じた大きさの出力電流(ILED)を設定する端子、12番ピンはスイッチング回路15に含まれるスイッチング用FETQ3(後述する)を駆動する端子、13番ピンはチョークコイルの電流を監視する端子、14番ピンは例えば3.3Vである第1基準電位を供給する基準電圧端子(Vdd)である。なお、本実施形態においてドライバIC12が駆動電流制御部に相当する。
【0024】
動作安定化回路13は、電界効果型トランジスタ(FET)Q1と2つの抵抗R1、R2によって構成されている。動作安定化回路13は、ダイオードブリッジDB1の高圧側出力端子(+)と低圧側出力端子(−)との間に接続されている。ドライバIC12の3番ピンで検知したFETQ1及び2つの抵抗R1、R2を流れる電流が20mA以上であれば、ドライバIC12の2番ピン(FETQ1のゲート端子)はLOWとなり、20mA未満であればドライバIC12の2番ピンはHIとなる。この動作により、トライアック調光器11を安定動作させるための保持電流を常に流すことが可能となる。なお、2つの抵抗R1、R2の値は、トライアック調光器11が安定動作するような値となっている。
【0025】
電源供給回路14は、FETQ2と、2つの抵抗R5、R6と、ツェナーダイオードD2とによって構成されている。交流電源3がオンされて電源供給回路14への入力電圧がツェナーダイオードD2の降伏電圧以上になると、FETQ2がオンする。したがって、FETQ2のゲート−ソース間の電圧降下を無視できるものとすると、FETQ2のソース端子にツェナーダイオードD2の降伏電圧とほぼ同等の電圧が発生する。このソース端子の電圧はツェナーダイオードD2によってクランプされるため、常に一定の安定電圧(例えば13.5V)をドライバIC12の1番ピン(Vcc)に印加することができる。つまり、FETQ2のソース端子は、交流電源3のオンオフに連動して電位が変化する電位変化端子である。なお、ドライバIC12は、交流電源3がオフとなってFETQ2のソース端子及びドライバIC12の1番ピンの電位が例えば6.5Vであるオフスレッシュ電位(第3基準電位)以下になると、駆動電流の出力を停止する。
【0026】
スイッチング回路15は、FETQ3を含む。FETQ3のゲート端子は、ドライバIC12の12番ピンに接続されている。FETQ3のソース端子は、ドライバIC12の11番ピンに接続されている。FETQ3のドレイン端子は、LEDモジュール2に接続されている。FETQ3は、ドライバIC12の12番ピンから供給された信号に基づいたスイッチング周波数でオンオフを繰り返すことによって、一定の出力電圧及び出力電流を出力する。
【0027】
遅延回路16は、スイッチング素子(第1スイッチング素子)であるNPN型トランジスタQ5と、コンデンサC4(本発明の「容量素子」に相当)と、抵抗素子R17(本発明の「第1抵抗素子」に相当)とによって構成されている。トランジスタQ5のコレクタ端子は、ドライバIC12の6番ピンに接続されている。トランジスタQ5のエミッタ端子は、ダイオードブリッジDB1の低圧側出力端子(−)に接続されている。トランジスタQ5のベース端子は、コレクタ端子とエミッタ端子との間の導通を制御するための端子である。コンデンサC4の一端は、ドライバIC12の14番ピン、すなわち基準電圧端子(Vdd)に接続されることで、第1基準電位が印加されている。コンデンサC4の他端は、トランジスタQ5のベース端子に接続されている。抵抗素子R17の一端は、コンデンサC4の他端、及び、トランジスタQ5のベース端子に接続されている。抵抗素子R17の他端は、本実施形態において接地電位である第2基準電位に保持されている。具体的には、抵抗素子R17の他端は、ダイオードブリッジDB1の低圧側出力端子(−)に接続されている。
【0028】
放電回路17は、コンデンサC4に蓄えられた電荷を放電させるものであって、スイッチング素子(第2スイッチング素子)であるPNP型トランジスタQ4と、ダイオードD4と、抵抗素子R8(本発明の「第2抵抗素子」に相当)、抵抗素子R9((本発明の「第3抵抗素子」に相当)とによって構成されている。トランジスタQ4のエミッタ端子は、コンデンサC4の一端に接続されている。トランジスタQ4のコレクタ端子は、コンデンサC4の他端に接続されている。トランジスタQ4のベース端子は、コレクタ端子とエミッタ端子との間の導通を制御するための端子であって、ダイオードD4のアノード端子に接続されている。抵抗素子R8の一端は、FETQ2のソース端子に接続されている。抵抗素子R9は、抵抗素子R8と直列接続されるように、その一端が抵抗素子R8の他端に接続されている。抵抗素子R9の他端は、ダイオードブリッジDB1の低圧側出力端子(−)に接続されている。ダイオードD4のカソード端子は、抵抗素子R8と抵抗素子R9との間に接続されている。すなわち、トランジスタQ4のベース端子は、ダイオードD4及び抵抗素子R8を介してFETQ2のソース端子に接続されている。
【0029】
次に、本実施形態に係るスイッチング電源回路1の基本動作について説明する。ここでは、まず、遅延回路16及び放電回路17がない、従来と同等のスイッチング電源回路の動作について説明する。時刻t1に交流電源3がオンされると、FETQ2がオンになって、ドライバIC12の電源端子(Vcc)の電位が上昇する。また、ドライバIC12の6番ピン(VHV)には、時刻t1からV1に相当する小さな電圧が入力される。そして、電源端子(Vcc)がオンスレッシュ電圧(13.5V)以上になると、ドライバIC12が動作を開始し、基準電圧端子(Vdd)の電位が上昇する。ドライバIC12は基準電圧端子(Vdd)が2.8V以上になる時刻、すなわち時刻t1から所定時間T経過した時刻txにスイッチング動作を開始して、11番ピンにより設定された出力電流(ILED)が駆動電流としてLEDモジュール2に流れる。これによって、コンデンサC2が充電され、LEDモジュール2が比較的小さな輝度で点灯する。そして、時刻t2にV1発生期間が終了すると仮定すると、ドライバIC12の6番ピンには、時刻t2から正常な大きさの電圧が入力される。そして、時刻t2から所定時間T経過した時刻tyに、LEDモジュール2がより大きな輝度で点灯する。つまり、LEDモジュール2の明るさが2段階で変化することになる。LEDモジュール2の点灯後にトライアック調光器11が操作されると、6番ピンに入力される電圧波形が変化する。その結果、11番ピンから出力される出力電流(ILED)の大きさが変化し、これに伴ってLEDモジュール2の発光強度が変化する。
【0030】
これに対して、本実施形態に係るスイッチング電源回路1は、遅延回路16及び放電回路17を有しているために、以下のように動作する。時刻t1に交流電源3がオンされ、ドライバIC12が動作を開始し、基準電圧端子(Vdd)の電位が上昇する。そして、基準電圧端子(Vdd)からは、第1基準電位を有する直流電圧が出力される。その結果、コンデンサC4は、コンデンサC4の静電容量と抵抗素子R17の抵抗値とによって定まる時定数に基づいて充電される。抵抗素子R17の抵抗値は、当該充電中におけるトランジスタQ5のベース端子の電位がトランジスタQ5の閾値電圧よりも高くなるように設定されている。したがって、当該充電中には、トランジスタQ5がオンしてコレクタ端子とエミッタ端子との間が導通する。その結果、ドライバIC12の位相角検出端子(VHV)は、時刻t1から接地電位に保持される。
【0031】
本実施形態において、コンデンサC4の静電容量と抵抗素子R17の抵抗値は、コンデンサC4の充電が、トライアック調光器11が安定動作するまでのV1発生期間が終了した以後に終了するように選択されている。具体的には、図2に示すように、V1発生期間の終了時刻である時刻t2から少し時間が経過した時刻t3に、コンデンサC4の充電が終了する。コンデンサC4の充電が終了すると、トランジスタQ5のベース端子の電位がトランジスタQ5の閾値電圧よりも低くなるためにトランジスタQ5がオフとなって、ドライバIC12の位相角検出端子(VHV)には、抵抗素子R3と抵抗素子R4との分圧比によって定められた所定電位が印加される。そして、ドライバIC12の11番ピンは、時刻t3から所定時間T経過した時刻t4から、位相角検出端子に印加された電圧波形に応じた大きさの出力電流(ILED)を駆動電流として設定する。これによって、コンデンサC2が充電され、LEDモジュール2が大きな輝度で点灯する。時刻t4までは出力電流(ILED)は出力されない。このように、本実施形態では、トライアック調光器11が安定動作していないV1発生期間には、ダイオードブリッジDB1の出力電圧がドライバIC12の位相角検出端子(VHV)に印加されることが無くなる。その結果、交流電源3のオン時にLEDモジュール2の明るさが2段階で変化せず、LEDモジュール2のちらつき発生を防止することができる。
【0032】
LEDモジュール2が発光を開始した後に交流電源3をオフにすると、FETQ2がオフになる。すると、FETQ2のソース端子及びドライバIC12の1番ピンの電位が低下してオフスレッシュ電位(第3基準電位)以下になり、上述したように、ドライバIC12は、駆動電流の出力を停止する。また、FETQ2のソース端子の電位が低下することで、トランジスタQ4のベース−エミッタ間の電圧が閾値電圧である0.7Vを超える。その結果、トランジスタQ4がオンし、コンデンサC4に蓄えられた電荷が放電される。このように本実施形態では、放電回路17を具備していることによって、コンデンサC4に蓄えられた電荷が交流電源3がオフとなってから速やかに放電されることが担保される。したがって、交流電源3がオフとなってから比較的短時間のうちに再度オンとされた場合であっても、トライアック調光器11が安定動作するまでの低電圧期間に、ダイオードブリッジDB1の出力電圧が6番ピンに印加されることが無い。
【0033】
また、トランジスタQ4がオンとなるタイミングは、2つの抵抗素子R8及びR9の抵抗値の分圧比によって決定される。したがって、この分圧比を変更することで、トランジスタQ4がオンとなるタイミングを調整することができる。そのため、本実施形態では、コンデンサC4の放電タイミングを、交流電源3がオフになってドライバIC12が駆動電流の出力を停止した直後とすることができる。
【0034】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更を上述の実施の形態に施すことが可能である。例えば、トライアック調光器以外の位相制御式調光器を用いてもよいし、ダイオードブリッジ以外の整流器を用いてもよい。スイッチング素子として、トランジスタ以外を用いることも可能である。また、第1スイッチング素子であるトランジスタQ5のエミッタ端子は、ダイオードブリッジの低圧側出力端子(−)以外で接地電位に保持されてもよい。
【0035】
さらに、コンデンサC4の第1端子は、ドライバIC12以外の端子に接続されることによって第1基準電位が印加されてもよい。第1抵抗素子R17の他端は、第1基準電位よりも低い電位に保持されていれば、接地電位以外に保持されていてもよい。第1抵抗素子R17の他端は、トランジスタQ5の閾値電圧よりも低く、コンデンサC4が充電されることで第1抵抗素子R17の一端が、トランジスタQ5の閾値電圧よりも高くなる電位に保持されていることが好ましい。また、放電回路として、上述した実施形態に例示したもの以外の構成を有する回路を用いてもよい。また、電位変化端子は、交流電源のオンオフに連動して電位が変化する端子であれば、FETQ2のソース端子以外であってもよい。さらに、LEDモジュール以外の発光体を用いてもよい。また、上述した実施形態では、ドライバIC12が駆動電流制御部を構成していたが、ドライバICを用いずに駆動電流制御部を構成してもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 スイッチング電源回路
2 LEDモジュール
3 交流電源
12 ドライバIC
13 動作安定化回路
14 電源供給回路
15 スイッチング回路
16 遅延回路
17 放電回路
図1
図2