特許第6396811号(P6396811)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6396811通信履歴から使用路線を推定する装置、プログラム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6396811
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】通信履歴から使用路線を推定する装置、プログラム及び方法
(51)【国際特許分類】
   H04M 11/00 20060101AFI20180913BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20180913BHJP
【FI】
   H04M11/00 301
   G06Q50/10
【請求項の数】12
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2015-7897(P2015-7897)
(22)【出願日】2015年1月19日
(65)【公開番号】特開2016-134731(P2016-134731A)
(43)【公開日】2016年7月25日
【審査請求日】2017年8月31日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、総務省、「G空間プラットフォームにおけるリアルタイム情報の利活用技術に関する研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】599108264
【氏名又は名称】株式会社KDDI総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100135068
【弁理士】
【氏名又は名称】早原 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100141313
【弁理士】
【氏名又は名称】辰巳 富彦
(72)【発明者】
【氏名】石塚 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】小林 直
(72)【発明者】
【氏名】村松 茂樹
【審査官】 加内 慎也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−119798(JP,A)
【文献】 特開2014−191681(JP,A)
【文献】 特開2002−300632(JP,A)
【文献】 特開平10−232992(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0156708(US,A1)
【文献】 特開2013−148486(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04M 11/00
G06Q 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動端末を所持したユーザの使用した路線を推定する装置であって、
移動端末毎に、通信に係る日時刻と、通信に係る基地局と、当該基地局の位置又は当該位置に基づいて導出される当該移動端末に係る位置を示す通信位置情報とを対応付けた複数の通信レコードを含む通信履歴を蓄積した通信履歴蓄積部と、
路線毎に、当該路線を代表する複数の地点に係る複数の路線位置情報を対応付けた路線情報を保存する路線情報保存部と、
少なくとも、対応する通信レコードを決定する対象である路線における複数の路線位置情報に係る位置と、当該移動端末の通信履歴において連続した通信レコードである連続通信レコード群に含まれる連続した通信位置情報に係る位置との距離の代表値に基づいて、当該路線を使用したユーザに係るものと推定される連続通信レコード群を決定する路線判定手段と、
基地局配列を決定する対象である路線について決定された複数の連続通信レコード群に含まれる基地局であって、当該路線上の位置に関係付けられる基地局を、当該基地局を含む当該群中の通信レコードに含まれる通信位置情報に係る複数の位置又は当該位置の代表位置と、当該路線上の位置との距離に係る関係に基づいて抽出し、抽出された当該基地局の集合から当該路線の基地局配列を生成する基地局配列生成手段と、
路線を推定する対象である通信履歴に含まれる連続通信レコード群に含まれる複数の基地局の列と、決定された当該路線の基地局配列との類似する度合いに基づいて、当該通信履歴に係る移動端末を所持したユーザによって使用されたと推定される路線を決定する路線マイニング手段と
を有することを特徴とする路線推定装置。
【請求項2】
少なくとも、移動判定対象である通信レコードに含まれる通信位置情報に係る位置と、次の通信レコードに含まれる通信位置情報に係る位置との距離が所定閾値以上であるか否かに基づいて、当該通信レコードに対し移動であると判定する移動判定手段を更に有し、
前記路線判定手段は、当該連続通信レコード群として、当該通信履歴において連続しており移動判定のなされた通信レコード群を採用する
ことを特徴とする請求項1に記載の路線推定装置。
【請求項3】
前記路線判定手段は、基地局配列を決定する対象である当該路線における複数の路線位置情報に係る位置と、群を構成する通信レコードに含まれる連続した通信位置情報に係る位置との距離の代表値が最も小さくなるような連続通信レコード群であって、少なくとも、レコードに含まれる通信位置情報に係る位置と、当該位置に最も近い路線位置情報に係る位置との距離が所定距離閾値以内となる通信レコードの割合が、所定割合閾値以上となるような連続通信レコード群を、当該路線に係る連続通信レコード群に決定することを特徴とする請求項1又は2に記載の路線推定装置。
【請求項4】
前記路線判定手段は、基地局配列を決定する対象である当該路線における複数の路線位置情報に係る位置と、群を構成する通信レコードに含まれる連続した通信位置情報に係る位置との距離の代表値が最も小さくなるような連続通信レコード群であって、少なくとも、隣り合う通信レコードとの日時刻における時間間隔が所定時間閾値未満となるような通信レコードが、所定数閾値以上の数だけ含まれるような連続通信レコード群を、当該路線に係る連続通信レコード群に決定することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の路線推定装置。
【請求項5】
前記路線判定手段は、基地局配列を決定する対象である当該路線における複数の路線位置情報に係る位置と、群を構成する通信レコードに含まれる連続した通信位置情報に係る位置との距離の代表値が最も小さくなるような連続通信レコード群であって、少なくとも、隣り合う通信レコードでの日時刻における時間間隔と通信位置情報に係る位置における距離とから算出される速度の代表値が所定速度閾値以上となるような連続通信レコード群を、当該路線に係る連続通信レコード群に決定することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の路線推定装置。
【請求項6】
前記基地局配列生成手段は、基地局配列を決定する対象である路線について決定された複数の連続通信レコード群に含まれる基地局毎に、当該基地局を含む当該群中の通信レコードに含まれる通信位置情報に係る複数の位置の代表位置を決定して、基地局毎に決定された当該代表位置の各々について、当該代表位置周辺の位置の集合としての基地局領域を決定し、当該路線の路線情報から算出される経路によって順次横切られる基地局領域に係る基地局の集合を、当該路線の基地局配列に決定することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の路線推定装置。
【請求項7】
前記基地局配列生成手段は、基地局毎に決定された当該代表位置の各々について、当該代表位置を母点とするボロノイ(Voronoi)領域を、基地局領域に決定することを特徴とする請求項6に記載の路線推定装置。
【請求項8】
前記基地局配列生成手段は、基地局配列を決定する対象である路線を代表する複数の地点毎に、当該路線について決定された複数の連続通信レコード群に含まれる通信レコードであって、当該地点を含む所定位置範囲内の位置に係る通信位置情報を含む通信レコードに含まれる基地局を抽出し、抽出された当該基地局の集合から当該路線の基地局配列を生成することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の路線推定装置。
【請求項9】
前記路線マイニング手段は、路線毎に、ニードルマン・ウンシュ(Needleman-Wunsch)アルゴリズムを用いて、路線を推定する対象である通信履歴に含まれる連続通信レコード群に含まれる複数の基地局の列と、決定された当該路線の基地局配列との類似度を算出し、最も類似度の高い基地局配列に係る路線を、当該通信履歴に係る移動端末を所持したユーザによって使用されたと推定される路線に決定することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の路線推定装置。
【請求項10】
広域無線通信網に接続された請求項1から9のいずれか1項に記載の路線推定装置である通信設備装置であって、前記通信履歴蓄積部に通信履歴を蓄積させるために、
基地局識別子と、基地局の位置又は当該位置に基づいて導出される当該移動端末に係る位置を示す位置情報とを対応付けて記憶する基地局位置情報管理手段と、
移動端末を配下に接続する基地局から、移動端末毎に通信に係る日時刻と当該基地局の基地局識別子とを対応付けた通信レコードを収集する通信レコード収集手段と、
前記基地局位置情報管理手段を用いて、当該通信レコードについて、移動端末毎に基地局識別子に対応する位置情報を更に対応付ける位置情報履歴生成手段と
を更に有することを特徴とする通信設備装置。
【請求項11】
移動端末を所持したユーザの使用した路線を推定する装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムであって、
前記装置は、
移動端末毎に、通信に係る日時刻と、通信に係る基地局と、当該基地局の位置又は当該位置に基づいて導出される当該移動端末に係る位置を示す通信位置情報とを対応付けた複数の通信レコードを含む通信履歴を蓄積した通信履歴蓄積部と、
路線毎に、当該路線を代表する複数の地点に係る複数の路線位置情報を対応付けた路線情報を保存する路線情報保存部と
を有し、又は前記通信履歴蓄積部から当該通信履歴を取得し、前記路線情報保存部から当該路線情報を取得し、
前記プログラムは、
少なくとも、対応する通信レコードを決定する対象である路線における複数の路線位置情報に係る位置と、当該移動端末の通信履歴において連続した通信レコードである連続通信レコード群に含まれる連続した通信位置情報に係る位置との距離の代表値に基づいて、当該路線を使用したユーザに係るものと推定される連続通信レコード群を決定する路線判定手段と、
基地局配列を決定する対象である路線について決定された複数の連続通信レコード群に含まれる基地局であって、当該路線上の位置に関係付けられる基地局を、当該基地局を含む当該群中の通信レコードに含まれる通信位置情報に係る複数の位置又は当該位置の代表位置と、当該路線上の位置との距離に係る関係に基づいて抽出し、抽出された当該基地局の集合から当該路線の基地局配列を生成する基地局配列生成手段と、
路線を推定する対象である通信履歴に含まれる連続通信レコード群に含まれる複数の基地局の列と、決定された当該路線の基地局配列との類似する度合いに基づいて、当該通信履歴に係る移動端末を所持したユーザによって使用されたと推定される路線を決定する路線マイニング手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする路線推定プログラム。
【請求項12】
移動端末を所持したユーザの使用した路線を推定する装置を用いて、当該路線を推定する方法であって、
前記装置は、
移動端末毎に、通信に係る日時刻と、通信に係る基地局と、当該基地局の位置又は当該位置に基づいて導出される当該移動端末に係る位置を示す通信位置情報とを対応付けた複数の通信レコードを含む通信履歴を蓄積した通信履歴蓄積部と、
路線毎に、当該路線を代表する複数の地点に係る複数の路線位置情報を対応付けた路線情報を保存する路線情報保存部と
を有し、又は前記通信履歴蓄積部から当該通信履歴を取得し、前記路線情報保存部から当該路線情報を取得し、
前記方法は、
少なくとも、対応する通信レコードを決定する対象である路線における複数の路線位置情報に係る位置と、当該移動端末の通信履歴において連続した通信レコードである連続通信レコード群に含まれる連続した通信位置情報に係る位置との距離の代表値に基づいて、当該路線を使用したユーザに係るものと推定される連続通信レコード群を決定する第1のステップと、
基地局配列を決定する対象である路線について決定された複数の連続通信レコード群に含まれる基地局であって、当該路線上の位置に関係付けられる基地局を、当該基地局を含む当該群中の通信レコードに含まれる通信位置情報に係る複数の位置又は当該位置の代表位置と、当該路線上の位置との距離に係る関係に基づいて抽出し、抽出された当該基地局の集合から当該路線の基地局配列を生成する第2のステップと、
路線を推定する対象である通信履歴に含まれる連続通信レコード群に含まれる複数の基地局の列と、決定された当該路線の基地局配列との類似する度合いに基づいて、当該通信履歴に係る移動端末を所持したユーザによって使用されたと推定される路線を決定する第3のステップと
を有することを特徴とする路線推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動端末を所持したユーザの移動経路に係る情報を取得する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通信事業者は、スマートフォンやタブレット型コンピュータに代表される通信可能な携帯移動端末の通信履歴を保存するシステムを備えている。また、現在、この通信履歴に記載された移動端末と通信先の基地局との間の無線情報に基づいて、この移動端末を所持したユーザの位置や、さらにはユーザの利用した移動手段を推定する技術が存在する。
【0003】
例えば、特許文献1には、通信事業者側が、移動端末のGPS(Global Positioning System)等の測位機能に頼ることなく、空間的粒度が粗く且つ時間間隔が一定ではないが通信設備装置によって取得可能である基地局位置情報を用いて、有意な位置を推定する技術が開示されている。
【0004】
また、非特許文献1には、乗車中と推定される時間における通信先基地局の遷移の情報を端末から収集し、収集した基地局の配列を使用路線における正解基地局配列として利用することによって、ユーザの移動手段を推定する技術が開示されている。ここで、乗車中の時間は、チケット販売機や改札機が乗車時及び下車時に発するビープ音と、加速度センサ等の端末センサ情報とを独自の端末アプリから収集し、バスや電車等の移動手段への乗車時刻及び下車時刻を決定することによって推定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−85095号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Pengfei Zhou、Yuanqing Zheng及びMo Li、「How Long to Wait? Predicting Bus Arrival Time With Mobile Phone Based Participatory Sensing」、Mobile Computing, IEEE Transactions、Vol.13、Issue 6、pp.1228-1241、2013
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び非特許文献1に記載されたような従来技術では、通信事業者側で取得可能な通信履歴に係る情報だけを用いて、ユーザによって使用された鉄道や道路等の路線を推定することは困難である。
【0008】
例えば、特許文献1に記載された技術は、基地局によって計測された多数の位置情報をクラスタリングした後に滞留状態を判定している。その結果、滞在地の位置の精度を、使用路線を決定するまでに高めることが容易ではないといった問題を抱えている。
【0009】
また、非特許文献1に記載された技術は、ユーザの移動手段を推定するために、ビープ音や移動加速度を検出するための端末内蔵のセンサから得られた情報を必要とする。しかしながら、センサ情報の取得のために、移動端末において各種のセンサ機能及びそのためのアプリケーションを常時又は定期的に起動させねばならず、移動端末の電池電力の消耗が早まってしまう問題が生じる。さらに、移動手段の推定に基づくサービスを実施する場合、センサ情報を含むパケットが多数の移動端末から送出されてしまい、通信の輻輳を招く恐れも生じ得る。
【0010】
そこで、本発明は、通信事業者側で取得可能な通信履歴に係る情報に基づいて、移動端末を所持したユーザの使用した路線を推定することができる装置、プログラム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、移動端末を所持したユーザの使用した路線を推定する装置であって、
移動端末毎に、通信に係る日時刻と、通信に係る基地局と、当該基地局の位置又は当該位置に基づいて導出される当該移動端末に係る位置を示す通信位置情報とを対応付けた複数の通信レコードを含む通信履歴を蓄積した通信履歴蓄積部と、
路線毎に、当該路線を代表する複数の地点に係る複数の路線位置情報を対応付けた路線情報を保存する路線情報保存部と、
少なくとも、対応する通信レコードを決定する対象である路線における複数の路線位置情報に係る位置と、当該移動端末の通信履歴において連続した通信レコードである連続通信レコード群に含まれる連続した通信位置情報に係る位置との距離の代表値に基づいて、当該路線を使用したユーザに係るものと推定される連続通信レコード群を決定する路線判定手段と、
基地局配列を決定する対象である路線について決定された複数の連続通信レコード群に含まれる基地局であって、当該路線上の位置に関係付けられる基地局を、当該基地局を含む当該群中の通信レコードに含まれる通信位置情報に係る複数の位置又は当該位置の代表位置と、当該路線上の位置との距離に係る関係に基づいて抽出し、抽出された当該基地局の集合から当該路線の基地局配列を生成する基地局配列生成手段と、
路線を推定する対象である通信履歴に含まれる連続通信レコード群に含まれる複数の基地局の列と、決定された当該路線の基地局配列との類似する度合いに基づいて、当該通信履歴に係る移動端末を所持したユーザによって使用されたと推定される路線を決定する路線マイニング手段と
を有する路線推定装置が提供される。
【0012】
この本発明による路線推定装置の一実施形態として、本装置は、少なくとも、移動判定対象である通信レコードに含まれる通信位置情報に係る位置と、次の通信レコードに含まれる通信位置情報に係る位置との距離が所定閾値以上であるか否かに基づいて、当該通信レコードに対し移動であると判定する移動判定手段を更に有し、
路線判定手段は、当該連続通信レコード群として、当該通信履歴において連続しており移動判定のなされた通信レコード群を採用することも好ましい。
【0013】
また、本発明による路線推定装置の路線判定手段は、基地局配列を決定する対象である当該路線における複数の路線位置情報に係る位置と、群を構成する通信レコードに含まれる連続した通信位置情報に係る位置との距離の代表値が最も小さくなるような連続通信レコード群であって、少なくとも、レコードに含まれる通信位置情報に係る位置と、当該位置に最も近い路線位置情報に係る位置との距離が所定距離閾値以内となる通信レコードの割合が、所定割合閾値以上となるような連続通信レコード群を、当該路線に係る連続通信レコード群に決定することも好ましい。
【0014】
さらに、本発明による路線推定装置の路線判定手段は、基地局配列を決定する対象である当該路線における複数の路線位置情報に係る位置と、群を構成する通信レコードに含まれる連続した通信位置情報に係る位置との距離の代表値が最も小さくなるような連続通信レコード群であって、少なくとも、隣り合う通信レコードとの日時刻における時間間隔が所定時間閾値未満となるような通信レコードが、所定数閾値以上の数だけ含まれるような連続通信レコード群を、当該路線に係る連続通信レコード群に決定することも好ましい。
【0015】
さらにまた、本発明による路線推定装置の路線判定手段は、基地局配列を決定する対象である当該路線における複数の路線位置情報に係る位置と、群を構成する通信レコードに含まれる連続した通信位置情報に係る位置との距離の代表値が最も小さくなるような連続通信レコード群であって、少なくとも、隣り合う通信レコードでの日時刻における時間間隔と通信位置情報に係る位置における距離とから算出される速度の代表値が所定速度閾値以上となるような連続通信レコード群を、当該路線に係る連続通信レコード群に決定することも好ましい。
【0016】
また、本発明による路線推定装置の基地局配列生成手段は、基地局配列を決定する対象である路線について決定された複数の連続通信レコード群に含まれる基地局毎に、当該基地局を含む当該群中の通信レコードに含まれる通信位置情報に係る複数の位置の代表位置を決定して、基地局毎に決定された当該代表位置の各々について、当該代表位置周辺の位置の集合としての基地局領域を決定し、当該路線の路線情報から算出される経路によって順次横切られる基地局領域に係る基地局の集合を、当該路線の基地局配列に決定することも好ましい。
【0017】
ここで、上記の基地局配列生成手段に係る実施形態において、基地局配列生成手段は、基地局毎に決定された当該代表位置の各々について、当該代表位置を母点とするボロノイ(Voronoi)領域を、基地局領域に決定することも好ましい。
【0018】
さらに、基地局配列生成手段に係る他の実施形態として、基地局配列生成手段は、基地局配列を決定する対象である路線を代表する複数の地点毎に、当該路線について決定された複数の連続通信レコード群に含まれる通信レコードであって、当該地点を含む所定位置範囲内の位置に係る通信位置情報を含む通信レコードに含まれる基地局を抽出し、抽出された当該基地局の集合から当該路線の基地局配列を生成することも好ましい。
【0019】
また、本発明による路線推定装置の路線マイニング手段は、路線毎に、ニードルマン・ウンシュ(Needleman-Wunsch)アルゴリズムを用いて、路線を推定する対象である通信履歴に含まれる連続通信レコード群に含まれる複数の基地局の列と、決定された当該路線の基地局配列との類似度を算出し、最も類似度の高い基地局配列に係る路線を、当該通信履歴に係る移動端末を所持したユーザによって使用されたと推定される路線に決定することも好ましい。
【0020】
本発明によれば、また、以上に述べた路線推定装置である、広域無線通信網に接続された通信設備装置であって、通信履歴蓄積部に通信履歴を蓄積させるために、
基地局識別子と、基地局の位置又は当該位置に基づいて導出される当該移動端末に係る位置を示す位置情報とを対応付けて記憶する基地局位置情報管理手段と、
移動端末を配下に接続する基地局から、移動端末毎に通信に係る日時刻と当該基地局の基地局識別子とを対応付けた通信レコードを収集する通信レコード収集手段と、
基地局位置情報管理手段を用いて、当該通信レコードについて、移動端末毎に基地局識別子に対応する位置情報を更に対応付ける位置情報履歴生成手段と
を更に有する通信設備装置が提供される。
【0021】
本発明によれば、さらに、移動端末を所持したユーザの使用した路線を推定する装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムであって、
上記装置は、
移動端末毎に、通信に係る日時刻と、通信に係る基地局と、当該基地局の位置又は当該位置に基づいて導出される当該移動端末に係る位置を示す通信位置情報とを対応付けた複数の通信レコードを含む通信履歴を蓄積した通信履歴蓄積部と、
路線毎に、当該路線を代表する複数の地点に係る複数の路線位置情報を対応付けた路線情報を保存する路線情報保存部と
を有し、又は通信履歴蓄積部から当該通信履歴を取得し、路線情報保存部から当該路線情報を取得し、
本プログラムは、
少なくとも、対応する通信レコードを決定する対象である路線における複数の路線位置情報に係る位置と、当該移動端末の通信履歴において連続した通信レコードである連続通信レコード群に含まれる連続した通信位置情報に係る位置との距離の代表値に基づいて、当該路線を使用したユーザに係るものと推定される連続通信レコード群を決定する路線判定手段と、
基地局配列を決定する対象である路線について決定された複数の連続通信レコード群に含まれる基地局であって、当該路線上の位置に関係付けられる基地局を、当該基地局を含む当該群中の通信レコードに含まれる通信位置情報に係る複数の位置又は当該位置の代表位置と、当該路線上の位置との距離に係る関係に基づいて抽出し、抽出された当該基地局の集合から当該路線の基地局配列を生成する基地局配列生成手段と、
路線を推定する対象である通信履歴に含まれる連続通信レコード群に含まれる複数の基地局の列と、決定された当該路線の基地局配列との類似する度合いに基づいて、当該通信履歴に係る移動端末を所持したユーザによって使用されたと推定される路線を決定する路線マイニング手段と
してコンピュータを機能させる路線推定プログラムが提供される。
【0022】
本発明によれば、さらにまた、移動端末を所持したユーザの使用した路線を推定する装置を用いて、当該路線を推定する方法であって、
上記装置は、
移動端末毎に、通信に係る日時刻と、通信に係る基地局と、当該基地局の位置又は当該位置に基づいて導出される当該移動端末に係る位置を示す通信位置情報とを対応付けた複数の通信レコードを含む通信履歴を蓄積した通信履歴蓄積部と、
路線毎に、当該路線を代表する複数の地点に係る複数の路線位置情報を対応付けた路線情報を保存する路線情報保存部と
を有し、又は通信履歴蓄積部から当該通信履歴を取得し、路線情報保存部から当該路線情報を取得し、
本方法は、
少なくとも、対応する通信レコードを決定する対象である路線における複数の路線位置情報に係る位置と、当該移動端末の通信履歴において連続した通信レコードである連続通信レコード群に含まれる連続した通信位置情報に係る位置との距離の代表値に基づいて、当該路線を使用したユーザに係るものと推定される連続通信レコード群を決定する第1のステップと、
基地局配列を決定する対象である路線について決定された複数の連続通信レコード群に含まれる基地局であって、当該路線上の位置に関係付けられる基地局を、当該基地局を含む当該群中の通信レコードに含まれる通信位置情報に係る複数の位置又は当該位置の代表位置と、当該路線上の位置との距離に係る関係に基づいて抽出し、抽出された当該基地局の集合から当該路線の基地局配列を生成する第2のステップと、
路線を推定する対象である通信履歴に含まれる連続通信レコード群に含まれる複数の基地局の列と、決定された当該路線の基地局配列との類似する度合いに基づいて、当該通信履歴に係る移動端末を所持したユーザによって使用されたと推定される路線を決定する第3のステップと
を有する路線推定方法が提供される。
【発明の効果】
【0023】
本発明の路線推定装置、プログラム及び方法によれば、通信事業者側で取得可能な通信履歴に係る情報に基づいて、移動端末を所持したユーザの使用した路線を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】移動端末を所持したユーザによる路線使用の例を概略的に示す模式図である。
図2】本発明による路線推定装置の一実施形態における機能構成を示す機能ブロック図である。
図3】基地局位置情報管理部で管理される基地局情報ファイルの一実施例を示すテーブルである。
図4】通信レコード収集部で管理される測位情報マージ通信履歴の一実施例を示すテーブルである。
図5】位置情報履歴生成部で生成される基地局情報マージ通信履歴の一実施例を示すテーブルである。
図6】路線情報保存部に格納された路線情報の一実施例を説明するためのテーブルである。
図7】路線情報保存部に格納された路線情報の一実施例を説明するためのテーブルである。
図8】路線情報保存部に格納された路線情報の一実施例を説明するためのテーブルである。
図9】設定ファイル管理部で管理される設定ファイルの一実施例を示すテーブルである。
図10】移動判定部での移動判定の一実施例を示すテーブルである。
図11】路線判定部における路線判定処理の一実施形態を示すフローチャートである。
図12】路線判定部における路線判定処理の一実施例を説明するためのテーブルである。
図13】路線判定部における路線判定処理の一実施例を説明するためのテーブルである。
図14】路線判定部における路線判定処理の一実施例を説明するためのテーブルである。
図15】路線判定部における路線判定処理の一実施例を説明するための模式図である。
図16】基地局配列生成部における基地局配列生成処理の一実施例を説明するための模式図である。
図17】基地局配列生成部における基地局配列生成処理の他の実施例を説明するための模式図である。
図18】路線マイニング部における使用路線推定処理の一実施例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0026】
図1は、移動端末を所持したユーザによる路線使用の例を概略的に示す模式図である。
【0027】
図1によれば、携帯電話機、スマートフォン、タブレット型コンピュータ又はウェアラブル端末等の移動端末2を所持したユーザが、自宅から勤務先の社屋まで移動する間に、種々の路線を使用している。具体的には、バス路線(道路)A、鉄道路線A、鉄道路線B及び徒歩路線(道路)Bが順次使用されている。
【0028】
尚、本発明において推定される使用路線の種別は、以上に挙げられたものに限定されず、例えばモノレールやロープウェイ等、路線使用中も移動端末2が基地局3との間で通信可能となるような移動手段の路線ならば様々なものが該当する。さらに、徒歩のみならず自転車や自動車によって利用される道路も当該路線に含まれる。特に、鉄道や、高速道路、幹線道路といった、経路が中長距離に及び、且つ移動手段の平均速度も相当の大きさが確保されるような路線を推定対象とすることも好ましい。
【0029】
本実施形態において、移動端末2は、どの位置にあってもいずれかの基地局の配下にあり、当該基地局と無線での通信を行い続けている。ここで、移動端末2が例えば円滑なハンドオーバを目的として一時に複数の基地局と交信し、そのうち例えば最も信号強度の高い基地局と通信を行ってもよい。
【0030】
また、基地局3は、広域無線通信網(携帯電話網)に接続されており、自身の配下にある移動端末2毎に、通信した際の日時刻(例えば通信を開始又は終了した日時刻)を含む情報を取得する。このような情報の取得は、通話、メールの送受信や、ウェブ(Web)ページの閲覧、さらには、移動端末2にインストールされたアプリケーションとサーバとの間の通信や、アプリケーション若しくはコンテンツのダウンロードやアップロード等の際に実施される。尚、広域無線通信網は、事業者通信網であって、LTE(Long Term Evolution)、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)又は3G(3rd Generation)等の無線系アクセスネットワークとすることができる。
【0031】
また、図示されていないが、これら多数の基地局3と通信接続されていてこれらの局を統合する通信設備装置1が設置されている。通信設備装置1は、基地局3と通信を行う移動端末2毎に、通信した際の日時刻の情報と、通信対象となった基地局の情報とを含む通信レコードを常時収集することができる。この通信レコードを時系列でまとめたものが通信履歴となる。
【0032】
一般に、通信履歴は、空間的粒度が粗く且つ時間間隔が一定でない基地局3の位置情報を含む。ここで、「空間的粒度が粗く」とは、位置情報の間の実空間での(地理的な)距離が比較的長いことを意味する。また、「時間間隔が一定でない」とは、位置情報に対応付けられた日時刻情報の間の時間間隔が通信タイミングに依存してばらついていることを意味する。
【0033】
本発明による路線推定装置としての通信設備装置1は、移動端末2を所持したユーザの使用した路線を推定することができる。具体的には、通信設備装置1は、予め、移動端末2毎に、
(a)通信に係る日時刻と、
(b)通信に係る基地局3の基地局識別子と、
(c)通信に係る基地局3の位置、又は当該位置に基づいて導出される移動端末2に係る位置を示す「通信位置情報」と
を対応付けた複数の通信レコードを含む通信履歴を蓄積する。また、
(d)使用される可能性があるとして予め挙げられた路線毎に、当該路線を代表する複数の地点に係る複数の「路線位置情報」を対応付けた路線情報
を保存する。
【0034】
通信設備装置1は、次いで、
(ア)少なくとも、対応する通信レコードを決定する対象である路線における複数の「路線位置情報」に係る位置と、当該移動端末2の通信履歴において連続した通信レコードである連続通信レコード群に含まれる連続した「通信位置情報」に係る位置との距離の代表値に基づいて、当該路線を使用したユーザに係るものと推定される「連続通信レコード群」を決定する。
【0035】
この「連続通信レコード群」は、1つの路線に対応するものであると判定された通信レコードの集合であり、路線毎に決定され、次に述べるように対象路線の基地局配列を生成するのに使用される。例えば、対象路線を使用した移動端末ユーザが多数存在する場合、多数の「連続通信レコード群」が取得される。
【0036】
次に、通信設備装置1は、
(イ)基地局配列を決定する対象である路線について決定された複数の「連続通信レコード群」に含まれる基地局3であって、当該路線上の位置に関係付けられる基地局3を、当該基地局3を含む当該群中の通信レコードに含まれる「通信位置情報」に係る複数の位置又は当該位置の代表位置と、当該路線上の位置との距離に係る関係に基づいて抽出し、抽出された基地局3の集合から当該路線の「基地局配列」を生成する。
【0037】
この「基地局配列」は、対象路線を使用したユーザの移動端末2が通信したと推定される基地局3を、移動の経過に沿って配列したものである。「基地局配列」は、使用される可能性があるとして予め挙げられた路線毎に、当該路線に特有の配列として決定され、次に述べる使用路線の推定に利用される。
【0038】
通信設備装置1は、さらに、
(ウ)路線を推定する対象である通信履歴に含まれる「連続通信レコード群」に含まれる複数の基地局3の列と、決定された当該路線の「基地局配列」との類似する度合いに基づいて、当該通信履歴に係る移動端末2を所持したユーザによって使用されたと推定される路線を決定する。
【0039】
以上説明したように、通信設備装置1は、上記(イ)に示した如く、通信履歴に係る情報と「路線位置情報」とから、端末でのGPS情報やセンサ情報等を必要とせずに、路線毎に基地局遷移モデルである「基地局配列」を生成することができる。このように路線の基地局遷移モデルが生成可能となったのは、対象路線に対応する「連続通信レコード群」を、上記(ア)のように適切に決定する工夫による。
【0040】
この生成した「基地局配列」を利用することによって、通信事業者側で取得可能な通信履歴に係る情報に基づいて、移動端末2を所持したユーザの使用した路線を推定することが可能となる。
【0041】
また、通信設備装置1においては、例えば1つの路線を使用した移動端末ユーザが多数存在する場合、これらのユーザの通信履歴から多数の「連続通信レコード群」を抽出することができるので、モデルとしての信頼性のより高い「基地局配列」を生成することが可能となる。その結果、より高い推定精度をもって使用路線を推定することができるのである。
【0042】
図2は、本発明による路線推定装置の一実施形態における機能構成を示す機能ブロック図である。
【0043】
図2に示した通信設備装置1は、本発明による路線推定装置の一実施形態であり、広域無線通信網(携帯電話網)に接続されて設置され、基地局3から通信履歴を適宜収集することができる。尚、本発明による路線推定装置は、外部から取得した通信履歴を用いて移動端末2を所持したユーザの使用した路線を推定することが可能なコンピュータとすることも可能である。この場合、広域無線通信網(携帯電話網)に接続されていなくてもよい。
【0044】
図2によれば、通信設備装置(路線推定装置)1は、通信インタフェース部101と、通信履歴蓄積部102と、路線情報保存部103と、プロセッサ・メモリとを有する。ここで、プロセッサ・メモリは、装置1の主機能部であるコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって、路線推定機能を実現させる。
【0045】
さらに、プロセッサ・メモリは、機能構成部として、移動判定部111と、路線判定部112と、基地局配列生成部113と、路線マイニング部114と、設定ファイル管理部115と、アプリケーション処理部131とを有する。尚、図2における各機能構成部を矢印で接続した処理の流れは、本発明による路線推定方法の一実施形態としても理解される。
【0046】
さらにまた、通信設備装置1は、通信履歴蓄積部102に通信履歴を蓄積させるために、基地局位置情報管理部121と、通信レコード収集部122と、位置情報履歴生成部123とを更に有する。
【0047】
[基地局位置情報管理部]
基地局位置情報管理部121(図2)は、基地局識別子と、「通信位置情報」とを対応付けた基地局情報ファイルを記憶し管理する。ここで、「通信位置情報」は、基地局に係る位置情報であって、
(a)基地局3の設置位置を示す基地局位置情報
としてもよく、
(b)基地局3の設置位置に基づいて導出される、移動端末2の所在位置の測位結果を示す位置情報
とすることも好ましい。
【0048】
ここで、上記の位置情報(b)は、例えば、基地局3の設置位置と、基地局3からの電波信号の放射方位(電波放射角)と、基地局3及び移動端末2の間でのRSSI(Received Signal Strength Indication)又はRTD(Round Trip Delay time)とから導出可能である。また、3つの基地局3を使用した3点測位によって上記位置情報(b)を決定してもよい。尚、基地局識別子として、0001,0002等の識別番号の他に、端末のアドレスや電話番号を用いることもできる。
【0049】
図3は、基地局位置情報管理部121で管理される基地局情報ファイルの一実施例を示すテーブルである。
【0050】
図3によれば、基地局情報ファイルでは、基地局識別子毎に、基地局位置情報としての基地局の緯度及び経度が対応付けられている。図3において、例えば、基地局0001(基地局識別子が0001である基地局)は、緯度が35.70179度であって経度が139.6209度の位置に設置されていることが理解される。尚、このような基地局位置情報は、基地局位置情報管理部121内に予め保持されたものであってもよいし、通信インタフェース部101を介して各基地局3から適宜、例えばデータ送信時に取得するものであってもよい。さらに、基地局情報ファイルの変更態様として、緯度、経度以外の基地局情報として、基地局毎に、電波が放射されている角度範囲及び電波放射角が対応付けられていることも好ましい。
【0051】
[通信レコード収集部]
通信レコード収集部122(図2)は、移動端末を配下に接続する基地局3から、移動端末2毎に、通信に係る日時刻(時刻情報)と、通信に係る基地局3の基地局識別子とを対応付けた通信レコード(通信ログ)を収集する。ここで、通信レコードを日時刻について時系列順に並べたものが通信履歴となる。尚、通信に係る日時刻は、通信の接続開始日時刻としてもよく、通信の切断日時刻としてもよい。また、通信に係る日時刻として、通信の接続開始日時刻と、当該通信の切断日時刻とを共に通信レコードに含めてもよい。さらに、通信レコードの変更態様として、端末識別子毎に、通信に係る基地局からの電波信号強度(RSSI)や往復遅延時間(RTD)等の無線情報が更に対応付けられていることも好ましい。
【0052】
ここで、通信レコード収集部122は、さらに、収集した通信レコード毎に、基地局3の位置情報と当該レコードの無線情報とに基づいて測位された移動端末2の所在位置を対応付けた測位情報マージ通信履歴を生成し管理する。
【0053】
図4は、通信レコード収集部122で管理される測位情報マージ通信履歴の一実施例を示すテーブルである。図4に示した測位情報マージ通信履歴では、各通信レコードにおいて、移動端末2の端末識別子毎に、日時刻(時刻情報)及び基地局識別子が対応付けられ、さらに、基地局3の位置情報と無線情報とに基づいて測位された移動端末2の所在位置(緯度及び経度)が対応付けられている。
通信レコード(端末識別子,日時刻,基地局識別子,緯度,経度)
【0054】
図4の測位情報マージ通信履歴は、移動端末ABC(端末識別子がABCである移動端末)についての履歴となっている。図4の通信レコードNo.1によれば、移動端末ABCは、2014年7月31日20時11分00秒に基地局0001と通信し、その際の移動端末ABCの位置は、緯度が35.70503度であって経度が139.6198度であったことが分かる。
【0055】
[位置情報履歴生成部]
位置情報履歴生成部123(図2)は、基地局位置情報管理部121で管理された基地局情報ファイルを用い、通信レコード収集部122で管理された測位情報マージ通信履歴において、通信レコード毎に基地局識別子に対応する基地局に係る位置情報(基地局位置情報)を更に対応付け、基地局情報マージ通信履歴を生成する。生成された基地局情報マージ通信履歴は、通信履歴蓄積部102へ出力される。
【0056】
図5は、位置情報履歴生成部123で生成される基地局情報マージ通信履歴の一実施例を示すテーブルである。
【0057】
図5によれば、基地局情報マージ通信履歴は、図4に示した測位情報マージ通信履歴に、基地局識別子を対応付ける形で図3に示した基地局情報ファイルを足し合わせたものとなっている。図5の基地局情報マージ通信履歴によれば、移動端末ABCは、2014年7月31日20時11分00秒に緯度35.70179度及び経度139.6209度の位置にある基地局0001と通信し、その際の移動端末ABCの位置は、緯度が35.70503度であって経度が139.6198度であったことが分かる。
【0058】
[通信履歴蓄積部]
通信履歴蓄積部102(図2)は、位置情報履歴生成部123から出力された基地局情報マージ通信履歴を蓄積する。即ち、移動端末2毎に、通信に係る日時刻と、基地局識別子と、通信位置情報(通信に係る基地局の位置情報、及び当該位置情報及び無線情報に基づいて導出される移動端末2に係る位置)とを対応付けた複数の通信レコードを含む基地局情報マージ通信履歴を蓄積する。尚、本実施形態では、通信履歴蓄積部102は、後に説明するように、推定された路線の情報を含む路線推定情報も保存することができる。
【0059】
[路線情報保存部]
路線情報保存部103は、使用される可能性のある路線毎に、当該路線を代表する複数の地点に係る複数の路線位置情報を対応付けた路線情報を保存し管理する。
【0060】
図6図7及び図8は、路線情報保存部103に格納された路線情報の一実施例を説明するためのテーブルである。
【0061】
図6に示したテーブルには、路線情報の大項目として、路線名と当該路線における移動手段の種別とが対応付けて記載されている。例えば、路線名「中央線」には、その種別として「電車」が対応付けられている。さらに、図7及び図8に示したテーブルには、1つの路線名の路線に対し、上記の種別とともに、小項目として当該路線を代表する複数の地点の位置情報(緯度及び経度)を記載している。この路線の位置情報は、対応する位置を繋ぐことによって路線形状を構成するものである。
【0062】
[設定ファイル管理部]
設定ファイル管理部115(図2)は、以後適宜説明する移動判定及び路線判定の各ステップで利用される設定値を、設定ファイルとして保存し管理する。設定ファイルは、通信インタフェース部101を介して外部から受信されてもよく、または、図示していない装置1の入力部を介して入力されてもよい。
【0063】
図9は、設定ファイル管理部115で管理される設定ファイルの一実施例を示すテーブルである。
【0064】
図9によれば、設定ファイルには、
<設定値A> 路線判定部112による処理回数の上限閾値、
<設定値B> 移動判定部111で移動と判定された隣り合う通信レコード間の日時刻における時間間隔の上限閾値、
<設定値C> 連続通信レコード群に含まれる通信レコード数の下限閾値、
<設定値D> 通信レコードから算出される速度の代表値(例えば平均値)の下限閾値、
<設定値E> 通信レコードに含まれる通信位置情報に係る位置と、当該位置に最も近い路線位置情報に係る位置との距離の上限閾値、
<設定値F> 連続通信レコード群における設定値Eの距離の条件を満たす通信レコードの割合の下限閾値、及び
<設定値G> 連続通信レコード群における通信レコード間の距離の総和の下限閾値
についての具体的な値が設定されている。これらの設定値は、後に詳細に説明するように、移動判定部111及び路線判定部112で使用される。
【0065】
尚、設定ファイル管理部115(図2)では、上記の設定値A〜G以外として、次に説明する移動判定部111で使用する
<設定値H> 隣り合う通信レコードに含まれる通信位置情報に係る位置間の距離の上限閾値、及び
<設定値I> 隣り合う通信レコードに含まれる日時刻間の時間間隔の上限閾値
についての具体的な値を設定していることも好ましい。
【0066】
[移動判定部]
移動判定部111(図2)は、少なくとも、移動判定対象である通信レコードに含まれる通信位置情報に係る位置と、次の通信レコードに含まれる通信位置情報に係る位置との距離が所定閾値以上であるか否かに基づいて、この通信レコードに対し移動であると判定する。ここで、移動判定対象の通信レコードと次の通信レコードとの通信位置情報に係る位置間の距離だけでなく、両者の日時刻における時間間隔が所定閾値未満であれば滞在であり、所定閾値以上であれば移動であると判定することも好ましい。いずれにしても、移動と判定された通信レコードには移動フラグが付与される。
【0067】
図10は、移動判定部111での移動判定の一実施例を示すテーブルである。
【0068】
図10には、判定に用いる距離の閾値及び日時刻の閾値を、それぞれ設定ファイル管理部115で設定された設定値H(100m)及び設定値I(3分)として移動判定を行った結果が示されている。具体的には、通信レコード毎に、移動判定の結果を移動フラグの有無(1又は0)を対応付けて記載している。
【0069】
図10によれば、No.4の通信レコードからNo.16の通信レコードまでが移動フラグを付与されており、移動端末ABCは、2014年7月31日の20時14分50秒から20時22分03秒までの間、移動であると判定されたことが分かる。
【0070】
尚、変更態様として、移動判定対象の通信レコードの直前及び直後の通信レコードに含まれる通信位置情報に係る位置が、移動判定対象の通信レコードに含まれる通信位置情報に係る位置を中心とした所定距離範囲に含まれない場合、移動判定対象の通信レコードに係る移動端末2のユーザの状態を移動であると判定し、含まれる場合、当該ユーザの状態を滞在であると判定することも好ましい。
【0071】
[路線判定部]
路線判定部112(図2)は、少なくとも、対応する通信レコードを決定する対象である路線における複数の路線位置情報に係る位置と、移動端末2の通信履歴において連続した通信レコードである連続通信レコード群に含まれる連続した通信位置情報に係る位置との距離の代表値、例えば平均値に基づいて、この路線を使用したユーザに係るものと推定される連続通信レコード群を決定する。
【0072】
この際、路線判定部112は、路線と比較する連続通信レコード群として、通信履歴において連続しており且つ移動判定のなされた通信レコード群を採用することも好ましい。実際、路線を使用中のユーザは、基本的に移動状態にあると推定されるので、この路線に関連する通信レコード群には、移動フラグを付与されたものを採用することが合理的である。
【0073】
具体的に、路線判定部112は、この後に基地局配列を決定する対象である路線を使用したユーザに係る連続通信レコード群として、
(A)当該路線における複数の路線位置情報に係る位置と、群を構成する通信レコードに含まれる連続した通信位置情報に係る位置との距離の代表値、例えば中央値が最も小さくなるような連続通信レコード群であって、且つ
(B)少なくとも、レコードに含まれる通信位置情報に係る位置と、当該位置に最も近い路線位置情報に係る位置との距離が「設定値E」以内となる通信レコードの割合が、「設定値F」以上となるような連続通信レコード群
を採用することも好ましい。
【0074】
ここで、上記条件(A)を満たす連続通信レコード群は、当該路線に最も類似するものと捉えることもでき、最小距離問題の解法等から連続通信レコード群と最も類似する路線を算出することもできる。
【0075】
また、上記条件(A)に加えて、
(C)少なくとも、隣り合う通信レコードとの日時刻における時間間隔が「設定値B」未満となるような通信レコードが、「設定値C」以上の数だけ含まれるような連続通信レコード群
を採用することも好ましい。
【0076】
さらに、上記条件(A)に加えて、
(D)少なくとも、隣り合う通信レコードでの日時刻における時間間隔と通信位置情報に係る位置における距離とから算出される速度の代表値、例えば平均速度が「設定値D」以上となるような連続通信レコード群
を採用することも好ましい。
【0077】
さらにまた、上記条件(A)と上記条件(B)、(C)及び(D)のうちの少なくとも2つとを満たす連続通信レコード群を採用することも好ましい。
【0078】
図11は、路線判定部112における路線判定処理の一実施形態を示すフローチャートである。
【0079】
図11に示したフローでは、端末(ユーザ)毎の1つの連続通信レコード群について、以下の6つの判定条件を記載順に用いて順次処理しており、これらの条件のいずれかを満たさない通信レコード群の通信レコードに判定外フラグを付与している。
<条件0> 路線判定部112による処理回数が「設定値A」未満である。
<条件1> 上記条件(C)と同じ。
<条件2> 上記条件(D)と同じ。
<条件3> 上記条件(A)と同じ。
<条件4> 上記条件(B)と同じ。
<条件5> 連続通信レコード群における通信レコード間の距離の総和が「設定値G」以上である。
【0080】
(S101)上記「条件0」が満たされるか否かを判定する。ここで、偽の判定、即ち満たされないとの判定を行った場合、規定の路線判定処理は完了したとして、今回の処理を終了する。
【0081】
(S102)一方、ステップS101で真の判定、即ち満たされるとの判定を行った場合、移動フラグの付与された連続通信レコード群を抽出する。
(S103)抽出した連続通信レコード群が上記「条件1」を満たすか否かを判定する。
(S111)ステップS103で偽の判定、即ち満たされないとの判定を行った場合、この判定対象の通信レコード群に含まれる通信レコードに判定外フラグを付与する。
【0082】
(S104)一方、ステップS103で真の判定、即ち満たされるとの判定を行った場合、抽出した連続通信レコード群における通信レコード間の平均速度を算出する。
(S105)平均速度の算出された連続通信レコード群が上記「条件2」を満たすか否かを判定する。ここで、偽の判定、即ち満たされないとの判定を行った場合、ステップS111に移行し、この判定対象の通信レコード群に含まれる通信レコードに判定外フラグを付与する。
【0083】
(S106)一方、ステップS105で真の判定、即ち満たされるとの判定を行った場合、判定対象の路線の路線情報を読み込む。
(S107)読み込まれた路線情報の下で上記「条件3」を満たす連続通信レコード群を抽出する。
【0084】
(S108)抽出された連続通信レコード群が上記「条件4」を満たすか否かを判定する。ここで、偽の判定、即ち満たされないとの判定を行った場合、ステップS111に移行し、この判定対象の通信レコード群に含まれる通信レコードに判定外フラグを付与する。
(S109)一方、ステップS108で真の判定、即ち満たされるとの判定を行った場合、抽出した連続通信レコード群が上記「条件5」を満たすか否かを判定する。ここで、偽の判定、即ち満たされないとの判定を行った場合、ステップS111に移行し、この判定対象の通信レコード群に含まれる通信レコードに判定外フラグを付与する。
【0085】
以上のフローによって1回分の路線判定処理が終了する。ここで、この処理の結果、判定外フラグの付与されていない通信レコード群は、関連する路線が特定されたものであり、後に説明する基地局配列生成部113における基地局配列生成処理に使用される。
【0086】
図12図13図14及び図15は、路線判定部112における路線判定処理の一実施例を説明するためのテーブル及び模式図である。
【0087】
本実施例の路線判定処理は、図9に示した設定ファイルの設定値を使用した路線判定処理が1000回実施された後の1001回目の処理であり、設定値Aの10000よりも小さい番目の処理であるので、上記「条件0」を満たし、当該処理を実施する。
【0088】
次いで、図10に示した移動判定後の通信履歴において、移動フラグを付与された通信レコード群を抽出すると、抽出されたレコード数は13レコードであって設定値Cの8以上であり、通信レコード間の日時刻の差も設定値Bの60分未満なので、この通信レコード群は、上記「条件1」を満たす。
【0089】
ここで、図12のテーブルでは、処理対象の通信レコード群に含まれる通信レコード毎に、通信に係る日時刻(時刻情報)と、端末位置に係る緯度及び経度と、次の通信レコードに含まれる端末位置との間の距離と、端末の移動速度とが対応付けて記録されている。ここで、次の通信レコードに含まれる端末位置との間の距離は、両通信レコードの端末位置に係る緯度及び経度の示す位置間の距離として算出される。また、端末の移動速度は、算出された距離を、両通信レコードの通信に係る日時刻の時間間隔で割り算することによって算出される。
【0090】
図12に示された通信レコードNo.6によれば、移動端末ABCは、2014年7月31日の20時16分00秒の時点で時速55km/hで移動していたことが分かる。ここで,移動判定のなされた通信レコードNo.4から通信レコードNo.16までの平均速度を算出すると、時速約37km/hとなり、設定値Dの30km/hよりも大きいので、上記「条件2」を満たすことが分かる。
【0091】
さらに、図13のテーブルでは、処理対象の通信レコード群に含まれる通信レコード毎に、
(a)処理対象の路線を代表する複数の地点に係る路線位置(緯度及び経度)のうちで、当該通信レコードに含まれた緯度及び経度で示される端末位置に最も近い路線位置(緯度及び経度)と、
(b)当該端末位置と、最も近い当該路線位置との距離(誤差距離)と
が対応付けて記録されている。因みに、図13のテーブルでは、処理対象の路線として中央線及び西武新宿線が項目に現れているが、その他多数の路線についてのデータも記録されている。
【0092】
図13に示された通信レコードNo.6によれば、移動端末ABCの2014年7月31日の20時16分00秒の時点での位置は、中央線上の最も近い地点(緯度35.70455度及び経度139.6275度)との距離が22.24232mとなる位置である。一方、西武新宿線上の最も近い地点(緯度35.72305及び経度139.6312度)との距離が2060.897mとなる位置であることが分かる。このように算出された通信レコードNo.4〜No.16における路線毎の誤差距離についてその中央値を算出すると、図14に示したような結果となる。図14によれば、連続通信レコード群No.4〜No.16にとって、誤差距離の最も小さい路線は中央線であるので、最も類似する路線は中央線であると決定される。また、連続通信レコード群No.4〜No.16は上記「条件3」を満たすことも分かる。
【0093】
ここで、図13によれば、最も類似する路線である中央線の路線位置との距離が設定値Eの150m以内である通信レコードは、当該通信レコード群中の13レコードのうち11レコードであって、全体の約85%に及ぶ。この約85%の通信レコードが中央線から150mの近傍領域に入っている様子を模式図で示したのが図15である。この割合は設定値Fの60%以上であることから、上記「条件4」が満たされることが分かる。
【0094】
さらに、図13によれば、連続通信レコード群No.4〜No.16における通信レコード間の距離の総和は、約4.7kmであり、設定値Gの3000m以上である。その結果、上記「条件5」も満たされることが分かる。
【0095】
以上説明したように、本実施例の路線判定処理では、連続通信レコード群No.4〜No.16は、中央線を使用した(中央線を走る電車に乗った)ユーザに係るものと推定される連続通信レコード群に決定される。
【0096】
[基地局配列生成部]
基地局配列生成部113(図2)は、基地局配列を決定する対象である路線について決定された複数の連続通信レコード群に含まれる基地局3であって、当該路線上の位置に関係付けられる基地局3を、当該基地局3を含む当該群中の通信レコードに含まれる通信位置情報に係る複数の位置又は当該位置の代表位置と、当該路線上の位置との距離に係る関係に基づいて抽出し、抽出された基地局3の集合から当該路線の基地局配列を生成する。
【0097】
特に、具体的な一実施形態として、基地局配列生成部113は、基地局配列を決定する対象である路線について決定された複数の連続通信レコード群に含まれる基地局3毎に、当該基地局3を含むこれらの群中の通信レコードに含まれる通信位置情報に係る複数の端末位置の代表位置、例えば重心を決定して、基地局3毎に決定された当該代表位置(重心)の各々について、代表位置(重心)周辺の位置の集合としての基地局領域を決定し、対象路線の路線情報から算出される経路によって順次横切られる基地局領域に係る基地局3の集合を、対象路線の基地局配列に決定することも好ましい。
【0098】
この実施形態では、基地局3毎に決定された重心の各々について、当該重心を母点とするボロノイ(Voronoi)領域を、基地局領域に決定することができる。具体的には、基地局3毎に決定された重心の集合Pを、
(1) P={p1, p2,・・・, pn}
とし、点aと点bとの距離を関数値とする距離関数d(a, b)を用いた次式
(2) V(pi)={p|d(p, pi)<d(p, pj), j≠i}
で定義されるボロノイ領域V(pi)を、基地局領域とすることができる。
【0099】
また、配列決定対象の路線における路線情報から算出される経路は、当該路線を代表する複数の地点に係る複数の路線位置を繋いだ線分(路線)とすることができる。
【0100】
図16は、基地局配列生成部113における基地局配列生成処理の一実施例を説明するための模式図である。
【0101】
図16(A)によれば、路線判定部112によって、多数の移動端末2の通信履歴から、移動フラグを付与され且つ判定外フラグを付与されずに路線αに関連するものであると判定された連続通信レコード群が多数抽出されている。以下、これらの抽出された連続通信レコード群を用いて路線αについての基地局配列が生成される。
【0102】
図16(B)によれば、抽出された多数の路線αに関連する連続通信レコード群に含まれる基地局0001〜0007の各々について、当該基地局を含むこれらの群中の通信レコードに含まれる複数の測位された端末位置が丸印で示されている。さらに、図16(C)によれば、基地局毎に、当該基地局に係る複数の端末位置の重心が算出され、これらの重心0001〜0007は四角印で示されている。また、算出された重心0001〜0007に基づいて、重心毎にボロノイ領域が決定されている。
【0103】
ここで、破線で示された路線αが順次横切る又は通過するボロノイ領域は、重心(基地局)について、0002,0003,0004,0005,0006となっている。これにより、路線αの基地局配列A1は、当該基地局識別子の配列として、
(3) A1={0002, 0003, 0004, 0005, 0006}
に決定されることが理解される。
【0104】
また、以上に説明したものとは異なる他の実施形態として、基地局配列生成部113(図2)は、基地局配列を決定する対象である路線を代表する複数の地点毎に、当該路線について決定された複数の連続通信レコード群に含まれる通信レコードであって、当該地点を含む所定位置範囲内の位置に係る通信位置情報を含む通信レコードに含まれる基地局3を抽出し、抽出された基地局3の集合から対象路線の基地局配列を生成することも好ましい。この実施形態では、図16に示した上記の実施形態と比べて、基地局の支配領域を一意に決めずに、基地局の支配範囲に幅を持たせた形となっている。
【0105】
図17は、基地局配列生成部113における基地局配列生成処理の他の実施例を説明するための模式図である。
【0106】
最初に、図17(A)に示すように、多数の路線αに関連する連続通信レコード群が抽出されている。次いで、図17(B)によれば、配列決定対象の路線α上に複数の地点が予め設定され、これらの地点毎に、抽出された連続通信レコード群に含まれる通信レコードであって、当該地点を中心とした所定半径dBの円範囲内の位置に係る通信位置情報を含む通信レコードに含まれる基地局が抽出されている。例えば、地点P1αで抽出された基地局は、基地局D,E及びGであり、地点P2αで抽出された基地局は、基地局F及びGであり、地点P3αで抽出された基地局は、基地局Fである。
【0107】
ここで、1つの地点を含む所定位置範囲(円範囲)に含まれる通信レコードに係る基地局のうち、その数(累積度)の最も多いものをこの地点を代表する基地局とする。これによると、地点P1α、P2α及びP3αを代表する基地局は、それぞれD、F及びFとなっている。その結果、路線αの基地局配列A2は、各地点を代表する基地局の識別子を、各地点の路線上での順序に従って並べることによって、
(4) A2={・・・, D, F, F}
に決定されることが理解される。
【0108】
[路線マイニング部]
路線マイニング部114(図2)は、路線を推定する対象である通信履歴に含まれる連続通信レコード群に含まれる複数の基地局3の列と、決定された当該路線の基地局配列との類似する度合い(類似度)に基づいて、対象通信履歴に係る移動端末2を所持したユーザによって使用されたと推定される路線を決定する。
【0109】
路線マイニング部114は、具体的に、路線毎に、ニードルマン・ウンシュ(Needleman-Wunsch)アルゴリズムを用いて、
(a)路線推定対象であるユーザの通信履歴に含まれており移動と判定された連続通信レコード群に含まれる複数の基地局3の時系列としての配列と、
(b)決定された当該路線の基地局配列と
の類似度(一致率)を算出し、最も類似度の高い(尤度の最も高い)基地局配列に係る路線を、当該ユーザの使用路線に決定することも好ましい。
【0110】
図18は、路線マイニング部114における使用路線推定処理の一実施例を説明するための模式図である。
【0111】
最初に、図18(A)に示すように、
(a)路線推定対象のユーザの通信履歴から抽出した基地局の識別子における時系列での配列U={Ui}を{0002, 0003, 0008, 0007, 0005, 0006}とし、
(b)比較対象の路線αの基地局配列A={αli}を{0002, 0003, 0004, 0005, 0006}として、
ニードルマン・ウンシュアルゴリズムを用いて両配列間の大局的類似性を求めるために、各配列の要素を列及び行に並べたマトリックスを形成する。
【0112】
ここで、図18(B)に示すように、このマトリックスの要素として付与されるスコアをF(i, j)として、次式
(5) F(0, j)=−jd,F(i, 0)=−id
F(i, j)=max(F1, F2, F3)
F1=F(i−1, j−1)+S(xi, yj)
F2=F(i−1, j)−d
F3=F(i, j−1)−d
が成り立つF(i, j)を算出する。ここで、dは比較される両配列のギャップペナルティであり、本実施例では−2に設定される。また、S(xi, yj)は、本実施例ではxi及びyjの2値が一致している場合に+2の値をとり、不一致の場合に−1の値をとるものとして規定される。
【0113】
次いで、同じく図18(B)に示すように、動的計画法によってF(i, j)が最大値となる経路をトレースバックして導出し、上記(a)及び(b)の両配列における類似度算出経路とする。ここで、類似度は、この経路上のF(i, j)の総和とすることができる。本実施例では、路線αの類似度Rは、
(6) R=F(1, 1)+F(2, 2)+F(3, 3)+F(3, 4)+F(4, 4)+F(5, 5)
=2+4+3+1+3+5
=18
と算出される。
【0114】
さらに、比較対象の各路線に対し、以上に説明した手法で類似度Rを算出し、最も類似度の高い路線を、ユーザによる使用路線であると推定する。また、推定された使用路線をもって路線情報保存部103に問い合わせれば、この使用路線の路線名や移動手段種別も決定することができる。
【0115】
尚、路線マイニング部114で決定された使用路線の推定情報は、通信履歴蓄積部102に蓄積され、適宜、通信インタフェース部101を介して外部に出力されてもよい。また、この使用路線推定情報は、アプリケーション処理部131(図2)に出力されて、ユーザ(移動端末2)毎のサービスの生成のために使用されることも好ましい。
【0116】
以上、詳細に説明したように、本発明による装置、プログラム及び方法によれば、通信事業者側で取得可能な通信履歴を用いて、路線毎に基地局遷移モデルである基地局配列を自動的に生成することが可能となる。また、この生成した基地局配列を利用することによって、端末でのGPS情報やセンサ情報等を必要とせずに、移動端末を所持したユーザの使用した路線を推定することができる。
【0117】
ここで、例えば1つの路線を使用した移動端末ユーザが多数存在する場合、これらのユーザの通信履歴から多数の連続通信レコード群を抽出することができるので、信頼性のより高い基地局配列を生成可能となる。その結果、より高い推定精度をもって使用路線を推定することができるのである。
【0118】
また、一般に、通信事業者側が取得可能な通信履歴に含まれる通信位置情報は、空間的粒度が粗く且つ時間間隔が一定ではない。それにもかかわらず、本発明によれば、そのような通信位置情報を用い、一方で移動端末の測位機能に頼ることなく、移動端末を所持したユーザの使用した路線を推定することができる。即ち、移動端末での測位のための処理負荷を回避しつつ、ユーザの使用した路線を推定するための情報を通信事業者側のみで取得することができるのである。
【0119】
ここで、ユーザの使用した路線を推定することによって提供されるサービスとして、例えば、移動端末を所持したユーザに対し、日頃使用している鉄道路線沿線に設置された商業施設に応じた販売・クーポン情報等を配信するパーソナライズド情報提供サービスが挙げられる。また、鉄道やバス等の運行ダイヤの設計において、路線の使用される時間帯や使用路線区間に基づいて、どの時間帯及びどの運行区間にどれだけの数の便を設定することが適切であるのかを判断することも可能となる。
【0120】
以上に述べた本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲内での種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。以上に述べた説明はあくまで例示であって、何ら制約を意図するものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物によってのみ制約される。
【符号の説明】
【0121】
1 通信設備装置(路線推定装置)
101 通信インタフェース部
102 通信履歴蓄積部
103 路線情報保存部
111 移動判定部
112 路線判定部
113 基地局配列生成部
114 路線マイニング部
115 設定ファイル管理部
121 基地局位置情報管理部
122 通信レコード収集部
123 位置情報履歴生成部
131 アプリケーション処理部
2 移動端末
3 基地局
図1
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