特許第6396856号(P6396856)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6396856
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】建設車両用タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20180913BHJP
   B60C 11/11 20060101ALI20180913BHJP
   B60C 9/18 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   B60C11/03 300B
   B60C11/03 C
   B60C11/03 200A
   B60C11/11 A
   B60C11/03 300C
   B60C9/18 E
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-121876(P2015-121876)
(22)【出願日】2015年6月17日
(65)【公開番号】特開2017-7394(P2017-7394A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2017年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 朋生
【審査官】 増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−220719(JP,A)
【文献】 特開2013−220713(JP,A)
【文献】 特開平10−203119(JP,A)
【文献】 特開2014−144763(JP,A)
【文献】 特開平04−126612(JP,A)
【文献】 特開2015−013587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/03
B60C 9/18
B60C 11/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を備えた建設車両用タイヤであって、
前記トレッド部は、タイヤ周方向に延びる周方向溝と、前記トレッド部の端部であるトレッド端およびタイヤ幅方向に沿って延びる幅方向溝の少なくとも一方と、によって複数に区画されており、
タイヤ赤道線の少なくとも片側では、
前記周方向溝と、
前記周方向溝に開口してタイヤ幅方向内側へ延び出してタイヤ赤道線にまで到達する内側幅方向溝と、
前記内側幅方向溝よりも広幅で、前記内側幅方向溝に対向する位置で前記周方向溝に開口してタイヤ幅方向外側へ延び出す外側幅方向溝と、がタイヤ周方向に配列され、
前記内側幅方向溝は、
前記周方向溝からタイヤ幅方向内側へタイヤ幅方向に沿って直線状に延びる幅方向直線溝と、
前記幅方向直線溝とでタイヤ周方向一方側に対して凸状の陸部部分を形成する溝屈曲部が形成されるように、前記幅方向直線溝に連続してタイヤ幅方向かつタイヤ周方向他方側に延びてタイヤ赤道線にまで到達する湾曲溝と、を有しており、
前記湾曲溝のタイヤ幅方向に対する傾斜角度がタイヤ赤道線側に行くほど小さくなっており、
タイヤ周方向に隣り合う前記外側幅方向溝間には、前記外側幅方向溝よりも細幅で、前記周方向溝に開口してタイヤ幅方向外側へ延び出す第2外側幅方向溝が配置されていることを特徴とする建設車両用タイヤ。
【請求項2】
前記トレッド部よりもタイヤ径方向内側に配置されているベルト層にはハイアングルベルトが配置され、
トレッド面視で、ハイアングルベルト端を幅方向中心にしてトレッド幅の1/8以内のタイヤ幅方向範囲に前記溝屈曲部が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の建設車両用タイヤ。
【請求項3】
前記タイヤ周方向一方側がタイヤ正転方向側であることを特徴とする請求項1または2に記載の建設車両用タイヤ。
【請求項4】
前記第2外側幅方向溝は、タイヤ周方向他方側に折れ曲がるクランク状の折れ曲がり部を有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の建設車両用タイヤ。
【請求項5】
タイヤ周方向に隣り合う前記内側幅方向溝間には、前記内側幅方向溝と同形状で、前記周方向溝に開口してタイヤ赤道線にまで到達する第2内側幅方向溝が配置され、
前記第2外側幅方向溝の前記周方向溝への開口位置は、前記第2内側幅方向溝の前記周方向溝への開口位置よりもタイヤ周方向へずらした位置にされていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の建設車両用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレッド部を備えた建設車両用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トレッド部において、2枚の保護ベルトからなる保護ベルト層、2枚の主交錯ベルトからなる主交錯ベルト層、及び、2枚の小交錯ベルトからなる小交錯ベルト層を有する重荷重用のタイヤが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
かかるタイヤでは、主交錯ベルト層は、小交錯ベルト層のタイヤ径方向外側に配置されており、保護ベルト層は、主交錯ベルト層のタイヤ径方向外側に配置されている。
【0004】
小交錯ベルト層を構成するコードとタイヤ周方向とがなす角度は、例えば4〜10°であり、主交錯ベルト層を構成するコードとタイヤ周方向とがなす角度は、例えば18〜35°であり、保護交錯ベルト層を構成するコードとタイヤ周方向とがなす角度は、例えば22〜33°である。
【0005】
したがって、かかるタイヤのトレッド部において、タイヤ赤道線近傍の領域(センター領域)では、タイヤ幅方向の端部近傍の領域(ショルダー領域)と比べて、各ベルト層を構成するコードとタイヤ周方向Uとのなす角度が小さい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2013/157544
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のタイヤにおいて、ベルト層を構成するコードとタイヤ周方向とがなす角度が大きい領域では、ベルト張力が小さくなるため、かかる領域は、タイヤ周方向に大きく収縮する。
【0008】
その結果、かかるタイヤが回転すると、タイヤ周方向におけるタイヤ幅方向端部近傍の領域は、タイヤ周方向に大きく収縮するため、タイヤ周方向におけるタイヤ赤道線近傍の領域の長さは、タイヤ周方向におけるタイヤ幅方向の端部近傍の領域の長さよりも長くなる。
【0009】
したがって、かかるタイヤが回転すると、タイヤ赤道線近傍の領域では、タイヤ回転方向の力(ドライビング力)が発生し、タイヤ幅方向の端部近傍の領域では、タイヤ回転方向の反対方向の力(ブレーキング力)が発生するため、両領域の境界付近で剪断力が発生する。
【0010】
さらに、かかるタイヤに対して、内圧が加えられた後、荷重が加えられた場合には、タイヤ赤道線近傍の領域とタイヤ幅方向の端部近傍の領域との間で、タイヤ径方向における変形の度合いが異なるため、両者の境界付近で剪断力が発生する。
【0011】
特に、かかるタイヤが、操舵軸に装着された際には、舵角によるタイヤ幅方向の力が加えられ、かかるタイヤが制動力が働く軸に装着された際には、制動力が加えられることで、より一層、剪断力が大きくなる。
【0012】
特に、かかる現象は、タイヤ幅方向における陸部の長さがタイヤ幅方向におけるトレッド部の長さの30%以上となるように構成されている重荷重用のタイヤにおいて顕著になる。
【0013】
また、これらのことは、重荷重用のタイヤのうち、特に建設車両用タイヤで顕著になっている。
【0014】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、タイヤ回転時にタイヤ幅方向の端部近傍で発生するブレーキング力を抑えることで耐偏摩耗性を向上させた建設車両用タイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した課題を解決するため、本発明の第1の特徴に係る建設車両用タイヤは、トレッド部を備えた建設車両用タイヤであって、前記陸部は、タイヤ周方向に延びる周方向溝と、前記トレッド部の端部であるトレッド端およびタイヤ幅方向に沿って延びる幅方向溝の少なくとも一方と、によって複数に区画されており、タイヤ赤道線の少なくとも片側では、前記周方向溝と、前記周方向溝に開口してタイヤ幅方向内側へ延び出してタイヤ赤道線にまで到達する内側幅方向溝と、前記内側幅方向溝よりも広幅で、前記内側幅方向溝に対向する位置で前記周方向溝に開口してタイヤ幅方向外側へ延び出す外側幅方向溝と、がタイヤ周方向に配列され、前記内側幅方向溝は、前記周方向溝からタイヤ幅方向内側へタイヤ幅方向に沿って直線状に延びる幅方向直線溝と、前記幅方向直線溝とでタイヤ周方向一方側に対して凸状の陸部部分を形成する溝屈曲部が形成されるように、前記幅方向直線溝に連続してタイヤ幅方向かつタイヤ周方向他方側に延びてタイヤ赤道線にまで到達する湾曲溝と、を有しており、前記湾曲溝のタイヤ幅方向に対する傾斜角度がタイヤ赤道線側に行くほど小さくなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、タイヤ回転時にタイヤ幅方向の端部近傍で発生するブレーキング力を抑えることで耐偏摩耗性を向上させた建設車両用タイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る建設車両用タイヤで、タイヤ径方向に沿ったタイヤ幅方向断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る建設車両用タイヤのベルト構成を説明する説明図である。
図3】本発明の一実施形態に係る建設車両用タイヤでトレッドパターンを説明する平面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る建設車両用タイヤのトレッド部に形成された内側幅方向溝の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の実施の形態を説明する。以下の説明では、同一または類似の部分には、同一又は類似の符号を付し、その詳細な説明を適宜省略している。また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための例示であり、この発明の実施の形態は、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態(以下、本実施形態という)に係る建設車両用タイヤのタイヤ径方向に沿ったタイヤ幅方向断面図である。図2は、本実施形態に係る建設車両用タイヤのベルト構成を説明する説明図である。図3は、本実施形態に係る建設車両用タイヤでトレッドパターンを説明する平面図である。なお、図3では、描画の関係上、紙面上側および紙面下側を破断線ではなく直線で区切って描画している。図4は、本実施形態に係る建設車両用タイヤのトレッド部に形成された内側幅方向溝の断面図である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係る建設車両用タイヤ1は、複数のベルト層を具備している。具体的には、本実施形態に係る建設車両用タイヤ1は、図1及び図2に示すように、トレッド部10において、2枚の保護ベルト11A/11Bからなる保護ベルト層11、2枚の主交錯ベルト12A/12Bからなる主交錯ベルト層12、及び、2枚の小交錯ベルト13A/13Bからなる小交錯ベルト層13を具備する。
【0021】
図1及び図2に示すように、かかる建設車両用タイヤ1では、主交錯ベルト層12は、小交錯ベルト層13のタイヤ径方向外側に配置されており、保護ベルト層11は、主交錯ベルト層12のタイヤ径方向外側に配置されている。
【0022】
本実施形態では、小交錯ベルト層13を構成するコードCとタイヤ周方向Uとがなす角度β(図2参照)は4〜10°の範囲であり、従って、小交錯ベルト層13はハイアングルベルトで構成されている。主交錯ベルト層12を構成するコードとタイヤ周方向Uとがなす角度は18〜35°の範囲である。保護交錯ベルト層11を構成するコードとタイヤ周方向Uとがなす角度は22〜33°の範囲である。
【0023】
また、本実施形態に係る建設車両用タイヤ1は、図3に示すように、トレッド部10において、タイヤ周方向Uに延びる周方向溝14若しくはトレッド部10のタイヤ幅方向Wの端部であるトレッド端TE(トレッド端の定義は後述を参照)と、タイヤ幅方向Wに延びる幅方向溝16と、によって区画化された複数のブロック列を具備している。ここで、周方向溝14は、タイヤ赤道線CL上においてタイヤ周方向に沿って延びる周方向溝14aと、センター陸部18aとセカンド陸部18bとの間に位置する周方向溝14bと、セカンド陸部18bとショルダー陸部18cとの間に位置する周方向溝14cとで構成される。
【0024】
また、本実施形態に係る建設車両用タイヤ1では、タイヤ幅方向Wにおける幅方向溝16の長さW2が、タイヤ幅方向Wにおけるトレッド部10の長さW1(すなわちトレッド幅)の30%以上となるように構成されている。
【0025】
また、タイヤ赤道線CLの少なくとも片側のトレッド部10では、幅方向溝16は、周方向溝14cに開口してタイヤ幅方向内側へ延び出して、セカンド陸部18b、センター陸部18aを横断してタイヤ赤道線CLにまで到達する内側幅方向溝16iと、内側幅方向溝16iよりも広幅で、内側幅方向溝16iにタイヤ幅方向に対向する位置で周方向溝14cに開口しタイヤ幅方向外側へ延び出してショルダー陸部18cを横断してトレッド端TEを横断する外側幅方向溝16e(ラグ溝)と、で構成されており、この幅方向溝16がタイヤ周方向Uに配列されている。
【0026】
内側幅方向溝16iは、周方向溝14cからタイヤ幅方向内側へタイヤ幅方向Wに沿って直線状に延びる幅方向直線溝16isと、幅方向直線溝16isとでタイヤ周方向一方側Rに対して凸状の陸部部分を形成する溝屈曲部BDが形成されるように、幅方向直線溝16isに連続してタイヤ幅方向Wかつタイヤ周方向他方側(タイヤ幅方向一方側Rと反対方向)に延びてタイヤ赤道線CLにまで到達する湾曲溝16irと、を有している。そして、湾曲溝16irのタイヤ幅方向Wに対する傾斜角度θがタイヤ赤道線CL側に行くほど小さくなっている。
【0027】
この結果、内側幅方向溝16iは、タイヤ赤道線CLからハイアングルベルト端HE(ベルト層を構成するコードとタイヤ周方向とがなす角度が10°以下のベルトの端のことであり、本実施形態では小交錯ベルト層13のベルト端となる)にかけてタイヤ幅方向一方側Rへの回転時(後述のタイヤ正転時)にはタイヤ幅方向外側ほど先に接地するように、タイヤ幅方向Wに対して傾斜している。
【0028】
また、外側幅方向溝16eの周方向溝14c側の端部もタイヤ幅方向Wに平行な直線状となって周方向溝14cに開口しており、内側幅方向溝16iと外側幅方向溝16eとは、タイヤ周方向一方側Rの溝壁位置が揃うように周方向溝14cに開口している。
【0029】
また、ショルダー陸部18cには、外側幅方向溝16eからタイヤ周方向に所定間隔で離れた位置に第2外側幅方向溝26が形成されている。第2外側幅方向溝26の溝幅は、外側幅方向溝16eよりも狭幅である。
【0030】
第2外側幅方向溝26は、周方向溝14cに開口し、タイヤ幅方向外側へタイヤ幅方向Wに沿って延びている。そして、タイヤ周方向他方側へクランク状に曲がる折れ曲がり部28を有する。更にタイヤ幅方向Wに沿って延び、ショルダー陸部18c内で終端している。ここで、本明細書でクランク状に曲がるとは、急峻に曲がるもののみではなく、緩やかに曲がるものも含む概念である。
【0031】
また、タイヤ周方向Uに隣り合う内側幅方向溝16i間には、内側幅方向溝16iと同形状で、周方向溝14cに開口してタイヤ赤道線CLにまで到達する第2内側幅方向溝17iが配置されている。第2外側幅方向溝26の周方向溝14cへの開口位置は、第2内側幅方向溝17iの周方向溝14cへの開口位置よりもタイヤ周方向他方側へずらした位置にされている。
【0032】
また、本実施形態では、このタイヤ周方向一方側Rをタイヤ正転方向JR側としている。この結果、溝屈曲部BDはタイヤ正転方向JR側に湾曲凸状に張り出している。
【0033】
また、トレッド部10よりもタイヤ径方向内側に配置されているベルト層Bにはハイアングルベルト(タイヤ周方向に対するコードの角度が10°以下であるベルト)として、上述した、2枚の小交錯ベルト13A/13Bからなる小交錯ベルト層13が配置されている。
【0034】
そして、トレッド面視(トレッド部10の平面視)で、ハイアングルベルト端HEを幅方向中心にしてトレッド幅W1の1/8以内(より好ましくは1/16以内)のタイヤ幅方向範囲Sに溝屈曲部BDが配置されている。
【0035】
ここで、トレッド幅とは、JATMA YEAR BOOKに定められた「トレッド幅」のことである。また、上述のトレッド端とは、タイヤを正規リムに組付けて、正規内圧を充填し、正規荷重を適用した状態において、タイヤ表面が地面と接触する面(トレッド踏面)のタイヤ幅方向最外位置をいう。なお、「正規リム」とは、タイヤのサイズに応じて下記の規格に規定された標準リムをいい、「正規内圧」とは、下記の規格に記載されている、適用サイズにおける単輪の最大負荷能力に対応する空気圧をいい、「正規荷重」とは、下記の規格の適用サイズにおける単輪の最大荷重(最大負荷能力)をいうものとする。そして規格とは、タイヤが生産または使用される地域に有効な産業規格であって、たとえば、日本では「日本自動車タイヤ協会」の“JATMA YEAR BOOK”であり、アメリカ合衆国では“THE TIRE AND RIM ASSOCIATION INC.”の“YEAR BOOK”であり、欧州では、“The European Tyre and Rim Technical Organisation”の“STANDARD MANUAL”である。
【0036】
そして本実施形態では、タイヤ幅方向Wに対して湾曲溝16irのなす角度θの最大値が20〜80°の範囲とされている。なお、本実施形態では、角度θの最大値は溝屈曲部BDでの角度となる。
【0037】
また、本実施形態は建設車両用タイヤ1の実施形態であり、タイヤ周方向Uに隣り合う内側幅方向溝16i、17iの距離L(図3参照)と、内側幅方向溝16iの溝深さd(タイヤ径方向に沿った深さ。図4参照)とが、以下の関係式を満たしている。
【0038】
d/L > 1/10
なお、摩耗性に着目する場合には、周方向溝14の幅(タイヤ幅方向Wの長さ)は、力が加わった際に陸部同士が支え合うため、10mm以下がよい。
【0039】
一方、放熱性に着目する場合には、周方向溝14の幅(タイヤ幅方向Wの長さ)は、10mmよりも大きい方がよい。
【0040】
また、放熱性の観点で、内側幅方向溝16iの溝幅は、最も細い部分であっても5mm以上にされていることが好ましく、内側幅方向溝16iの深さは、トレッド表面とベルト層Bとの間隔の1/3以上であることが好ましい。
【0041】
さらに、本実施形態に係る建設車両用タイヤ1では、幅方向溝16iの周方向ピッチは、50mm以上となるように構成されていてもよい。
【0042】
(作用、効果)
以下、本実施形態の作用、効果を説明する。
【0043】
本実施形態の建設車両用タイヤ1では、内側幅方向溝16iは、周方向溝14cからタイヤ幅方向内側へタイヤ幅方向Wに沿って直線状に延びる幅方向直線溝16isと、幅方向直線溝16isとでタイヤ周方向一方側Rに対して凸状の陸部部分を形成する溝屈曲部BDが形成されるように、幅方向直線溝16isに連続してタイヤ幅方向Wかつタイヤ周方向他方側(タイヤ幅方向一方側Rと反対方向)に延びてタイヤ赤道線CLにまで到達する湾曲溝16irと、を有している。そして、湾曲溝16irのタイヤ幅方向Wに対する傾斜角度θがタイヤ赤道線CL側に行くほど小さくなっている。
【0044】
これにより、タイヤを回転させると、タイヤゴムの非圧縮性によりタイヤゴムがタイヤ回転方向に流動し、パターンの頂点部付近、すなわち、湾曲溝16irと周方向溝14aや周方向溝14bとによって区画された陸部部分や、溝屈曲部BDで区画された陸部部分の頂点部付近において周方向ドライビングの力が発生して、タイヤ構造が原因で発生するブレーキング力を打ち消す力として作用する。従って、偏摩耗が抑制されるので、耐偏摩耗性が向上した建設車両用タイヤ1とすることができる。
【0045】
また、幅方向溝16を本実施形態のような曲線を有する形状にすることで、幅方向溝16をタイヤ周方向Uに対して傾けたい部位だけ傾ける構成にし易くなり、タイヤ幅方向剛性を確保し易くすることができる。
【0046】
また、本実施形態では、トレッド部10よりもタイヤ径方向内側に配置されているベルト層Bにはハイアングルベルトである小交錯ベルト層13が配置され、トレッド面視で、ハイアングルベルト端HEを幅方向中心にしてトレッド幅W1の1/8以内のタイヤ幅方向範囲に溝屈曲部BDが配置されている。従って、上述の周方向ドライビング力を更に効果的に発生させることができる。なお、図3では、溝屈曲部BDのタイヤ幅方向位置がハイアングルベルト端HEよりも若干タイヤ幅方向外側に配置された例で描いており、1/4点での偏摩耗抑制に顕著な効果が奏される例である。
【0047】
また、本実施形態では、上記のタイヤ周方向一方側Rをタイヤ正転方向JR側としている。従って、タイヤ正転時に効果的に周方向ドライビング力を発生させることができる。
【0048】
また、内側幅方向溝16iは、タイヤ赤道線CLからハイアングルベルト端HEにかけてタイヤ正転時にはタイヤ幅方向外側ほど先に接地するように、タイヤ幅方向に対して傾斜している。これにより、上述の周方向ドライビング力を更に効果的に大きくすることができる。
【0049】
また、タイヤ幅方向Wに対して湾曲溝16irのなす傾斜角度θの最大値が20〜80°の範囲である。これにより、上述の周方向ドライビング力を効果的に大きくすることができる。
【符号の説明】
【0050】
1…建設車両用タイヤ、10…トレッド部、13…小交錯ベルト層(ハイアングルベルト)、14…周方向溝、14a…周方向溝、14b…周方向溝、14c…周方向溝、16…幅方向溝、16e…外側幅方向溝、16i…内側幅方向溝、16is…幅方向直線溝、16ir…湾曲溝、17i…第2内側幅方向溝、26…第2外側幅方向溝、28…折れ曲がり部、B…ベルト層、BD…溝屈曲部、CL…タイヤ赤道線、CP…溝屈曲部、HE…ハイアングルベルト端、JR…タイヤ正転方向、TE…トレッド端、R…タイヤ周方向一方側、U…タイヤ周方向、W…タイヤ幅方向、W1…トレッド幅、θ…傾斜角度。
図1
図2
図3
図4