【文献】
BAN H et al., Efficient generation of transgene-free human induced pluripotent stem cells (iPSCs) by temperature-sensitive Sendai virus vectors, PNAS [online], Vol.108, p.14234-14239 and Supporting Information, 2011.08.23, Retrieved on 2017.04.17, <URL: http://www.pnas.org/content/108/34/14234.abstract>
【文献】
ANGEL M et al., Innate Immune Suppression Enables Frequent Transfection with RNA Encoding Reprogramming Proteins, PLoS ONE [online], Vol.5, e11756, 2010.07.23, Retrieved on 2017.04.17, <URL: http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0011756>
【文献】
J. Virol., 2000, Vol.74, p.9802-9807
【文献】
J. Virol., 2005, Vol.79, p.7597-7608
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アルファウイルス由来の複数の非構造的レプリカーゼドメイン、ならびに、体細胞で発現されたときに多能性幹細胞の生成を誘導するためのリプログラミング因子(RF)をコードする、少なくとも4つの異種ポリヌクレオチド配列を含んでなる、RNAレプリコン、ここで前記RNAレプリコンは、5'から3'に向かって、(前記アルファウイルス由来の複数の非構造的レプリカーゼドメイン)-(プロモーター)-(RF1)-(自己切断型ペプチド)-(RF2)-(自己切断型ペプチド)-(RF3)-(IRES)-(RF4)-(IRESもしくは任意のプロモーター)-(任意選択可能なマーカー)-(アルファウイルス3’UTRおよびポリAテール)-(任意に選択可能なマーカー)-プロモーターを含んでなり;上記のRF1-4は、多能性細胞への体細胞の脱分化を誘導するリプログラミング因子(RF)をコードする異種ポリヌクレオチド配列であって;上記のRF1-4は、Oct-3、Oct-4、Klf、Sox-2、c-Myc、n-Myc、L-Myc、Nanog、およびGlis1からなる群から選択されるRFをコードするポリヌクレオチドである、RNAレプリコン。
RNAレプリコンが、東部ウマ脳炎ウイルス(EEE)、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE)、エバーグレーズ(Everglades)ウイルス、ムカンボ(Mucambo)ウイルス、ピクスナ(Pixuna)ウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス(WEE)、シンドビス(Sindbis)ウイルス、セムリキ森林(Semliki Forest)ウイルス、ミデルブルグ(Middelburg)ウイルス、チクングニア(Chikungunya)ウイルス、オニョンニョン(O'nyong-nyong)ウイルス、ロスリバー(Ross River)ウイルス、バーマフォレスト(Barmah Forest)ウイルス、ゲタ(Getah)ウイルス、サギヤマ(Sagiyama)ウイルス、ベバル(Bebaru)ウイルス、マヤロ(Mayaro)ウイルス、ウナ(Una)ウイルス、アウラ(Aura)ウイルス、ワタロア(Whataroa)ウイルス、ババンキ(Babanki)ウイルス、Kyzylagachウイルス、ハイランドJ(Highlands J)ウイルス、フォートモーガン(Fort Morgan)ウイルス、ヌドゥム(Ndumu)ウイルス、およびバギークリーク(Buggy Creek)ウイルスからなる群から選択されるアルファウイルスから得られる配列を含む、請求項1に記載のRNAレプリコン。
KLFポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、配列番号8の配列に対して少なくとも95%の同一性を有するKLFポリペプチドをコードする、請求項1に記載のRNAレプリコン。
KLFポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、配列番号7に記載の配列を含んでなり、かつ、該配列中のチミジン残基はウラシル残基で置き換えられている、請求項1に記載のRNAレプリコン。
SOX-2ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、配列番号6の配列に対して少なくとも95%の同一性を有するSOX-2ポリペプチドをコードする、請求項1に記載のRNAレプリコン。
SOX-2ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、配列番号5に記載の配列を含んでなり、かつ、該配列中のチミジン残基はウラシル残基で置き換えられている、請求項1に記載のRNAレプリコン。
OCT-4ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、配列番号4の配列に対して少なくとも95%の同一性を有するOCT-4ポリペプチドをコードする、請求項1に記載のRNAレプリコン。
OCT-4ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、配列番号3に記載の配列を含んでなり、かつ、該配列中のチミジン残基はウラシル残基で置き換えられている、請求項1に記載のRNAレプリコン。
c-MYCポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、配列番号10の配列に対して少なくとも95%の同一性を有するc-MYCポリペプチドをコードする、請求項1に記載のRNAレプリコン。
c-MYCポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、配列番号9に記載の配列を含んでなり、かつ、該配列中のチミジン残基はウラシル残基で置き換えられている、請求項1に記載のRNAレプリコン。
GLIS1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、配列番号34の配列に対して少なくとも95%の同一性を有するGLIS1ポリペプチドをコードする、請求項1に記載のRNAレプリコン。
GLIS1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、配列番号33に記載の配列を含んでなり、かつ、該配列中のチミジン残基はウラシル残基で置き換えられている、請求項1に記載のRNAレプリコン。
NANOGポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、配列番号2の配列に対して少なくとも95%の同一性を有するNANOGポリペプチドをコードする、請求項1に記載のRNAレプリコン。
NANOGポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、配列番号1に記載の配列を含んでなり、かつ、該配列中のチミジン残基はウラシル残基で置き換えられている、請求項1に記載のRNAレプリコン。
RNAレプリコンが、配列番号29、30、31、または32の、1位から7561位までに対して95%同一の配列を含んでなり、かつ、該配列中のチミジン残基はウラシル残基で置き換えられている、請求項1または21に記載のRNAレプリコン。
RNAレプリコンが、配列番号29、30、31、および32からなる群から選択される配列に対して、100%同一である配列を含んでなり、かつ、該配列中のチミジン残基はウラシル残基で置き換えられている、請求項22に記載のRNAレプリコン。
幹細胞を作製する生体外での方法であって、請求項1〜23のいずれか1つに記載のRNAレプリコンで体細胞を生体外で形質転換すること、前記RNAレプリコンの発現を促進する条件下で体細胞を生体外で培養すること、ならびに幹細胞を単離することを含む、前記生体外での方法。
B18Rを添加された培地が、B18R mRNAの初代ヒト線維芽細胞へのトランスフェクションによって作製されるものである、請求項25に記載の生体外での方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
詳細な説明
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される単数形"a"、"an"、および"the"は、文脈から明らかにそうでないと指定されない限り、複数の指示対象を含んでいる。したがって、たとえば、「細胞(単数)」への言及は、複数のそうした細胞を含んでおり、「薬剤(単数)」に対する言及は、当業者に知られている1つもしくは複数の薬剤への言及を含んでいるが、他も同様である。
【0019】
また、"or"の使用は、特に明記しない限り"and/or"を意味する。同様に、「含んでなる」および「含む」(“comprise,” “comprises,” “comprising” “include,” “includes,” および“including”)は、いずれを用いても変わりはなく、限定するものではない。
【0020】
さらに当然のことながら、さまざまな実施形態に関する説明が「含んでなる」("comprising")という用語を使用する場合、当業者は、ある特定の例では実施形態がその代わりに「基本的に〜からなる」("consisting essentially of")または「〜からなる」("consisting of")と言う語を用いて記述できることを理解するであろう。
【0021】
本明細書に記載された方法および材料と類似または同等のものを、記載の方法および組成物の実行に際して使用することができるが、典型例となる方法、装置、および材料を本明細書に記載する。
【0022】
特に明記しない限り、本明細書で使用されるすべての技術および科学用語は、本明細書の属する分野の当業者に共通して理解される同一の意味を有する。したがって、本出願の全体にわたって使用される以下の用語は、以下の意味を有するものとする。
【0023】
人工多能性幹細胞(iPS細胞)は、分子的および機能的レベルではES細胞と実質的に同一であるが、その治療的可能性を医学的応用へと転換するには決定的に重大なハードルがある。問題の1つは、iPS細胞の初期化および増殖のための現行のプロトコールが、見込まれる臨床目的にふさわしくない動物由来材料を含んでいるため、hiPS細胞を作製して増殖させることができる完全に明確化された方法を開発する必要があることである。
【0024】
人工多能性幹細胞(iPS)は、京都大学、日本、の山中伸弥のチームによって記述されている。山中は、胚性幹細胞において特に活性のある遺伝子を特定し、レトロウイルスを用いて、それらの遺伝子から選んだものをマウス線維芽細胞にトランスフェクトした。最終的に、多能性幹細胞の生成に必須の4つの鍵となる多能性遺伝子が特定された;Oct-3/4、SOX2、c-Myc、およびKlf4。細胞は、Fbx15
+細胞の抗生物質選択によって単離された。同グループは、ハーバード、MIT、およびカリフォルニア大学ロサンゼルス校の、他の2つの独立した研究グループと並んで研究論文を発表したが、その研究は、マウス線維芽細胞のiPSへの初期化(リプログラミング)に成功し、生存可能なキメラを生み出すことにも成功したことを示した。
【0025】
4つの初期化因子(RF;脱分化因子とも呼ばれる)のレトロウイルス発現によるヒトiPS細胞の作製は、患者に特異的な個別の幹細胞に基づく再生医学治療の可能性を切り開いた。しかしながら、潜在RF遺伝子、特にc-MYC、の活性化の可能性と結びついた、レトロウイルスの挿入変異の可能性は、再生医学治療に使用するための組込みDNAに基づくアプローチをほとんど除外する。エピソームベクター、アデノウイルス、組み込まれて除去されるpiggyBacトランスポゾン、またはloxPが導入されたレンチウイルスを使用する、他のDNAに基づくiPSアプローチ開発されている;しかしながら、これらのアプローチは、iPS細胞細胞生成効率が低いことが難点であり、あるいは挿入されたDNA配列タグを残すゲノム切り出し法が必要となる。センダイウイルスまたはmRNAトランスフェクションを使用する、RNAに基づくiPS細胞アプローチは、DNAによるアプローチに付随する組込みの可能性という問題を回避するので、臨床応用に向けて、本質的に、より安全な方法である。センダイウイルスはかなり効率のよいiPSアプローチを提供するが、iPS細胞クローンでの持続的なセンダイウイルス複製に伴う問題のため、ウイルスのないiPS細胞を分離するために、陰性選択ステップ、続いて単個細胞レベルからの数回の再クローニングステップが必要となり、そうしたプロセスは結果として必要以上のiPS細胞の分裂および継代につながる。もっと有望な、DNAによらないアプローチの一つとして、16日間にわたって毎日4つの別個のRF mRNA(+GFP mRNA)をトランスフェクトすることが挙げられる。残念なことに、この方法は依然として問題がある。たとえば、KLF4およびc-MYCレトロウイルスを、対応するトランスフェクトされたmRNAと置き換える実験が行われ、その結果は有効であった;しかしながら、OCT4およびSOX2レトロウイルスは、トランスフェクトされたmRNAと置き換えることができなかった。問題は、一貫性のない細胞間閾値発現レベルの経時的変動と相まって、RF mRNAの急速な分解から生じるように思われるが、それはリプログラミング時に15日以上の間、毎日同じ細胞に独立した4つのmRNAをトランスフェクトしようとする試みから生じる。その結果として、ヒトiPS細胞を作製する、簡便で再現性の高い、DNAによらないアプローチの必要性は依然として大きい。
【0026】
本明細書は、体細胞(たとえば線維芽細胞)からiPS細胞を作製するための方法および組成物を提供する。この組成物および方法は、アルファウイルス由来レプリコンの使用を含むものである。レプリコンは、複製のために必要な、アルファウイルスの非構造タンパク質をコードするRNA配列、ならびに体細胞の幹細胞表現型への分化を誘導する、アルファウイルスとは異なる種の、1、2、3、4、または5つ以上の前記コード配列を含んでなる。
【0027】
本明細書で使用される「アルファウイルス」という用語は、当技術分野におけるその通常の意味を有するものであって、ベネズエラウマ脳炎(VEE)ウイルス、東部ウマ脳炎(EEE)ウイルス、エバーグレーズ(Everglades)ウイルス(EVE)、ムカンボ(Mucambo)ウイルス(MUC)、ピクスナ(Pixuna)ウイルス(PIX)、および西部ウマ脳炎ウイルスなどのさまざまな種を含んでいるが、これらはすべてアルファウイルスのVEE/EEE群の構成員である。他のアルファウイルスには、たとえばセムリキ森林(Semliki Forest)ウイルス(SFV)、シンドビス(Sindbis)ウイルス、ロスリバー(Ross River)ウイルス、チクングニア(Chikungunya)ウイルス、S.A. AR86、バーマフォレスト(Barmah Forest)ウイルス、ミデルブルグ(Middelburg)ウイルス、オニョンニョン(O'nyong-nyong)ウイルス、ゲタ(Getah)ウイルス、サギヤマ(Sagiyama)ウイルス、ベバル(Bebaru)ウイルス、マヤロ(Mayaro)ウイルス、ウナ(Una)ウイルス、アウラ(Aura)ウイルス、ワタロア(Whataroa)ウイルス、ババンキ(Babanki)ウイルス、Kyzylagachウイルス、ハイランドJ(Highlands J)ウイルス、フォートモーガン(Fort Morgan)ウイルス、ヌドゥム(Ndumu)ウイルス、およびバギークリーク(Buggy Creek)ウイルスがある。
【0028】
「アルファウイルスRNAレプリコン」、「アルファウイルスレプリコンRNA」、「アルファウイルスRNAベクターレプリコン」、および「ベクターレプリコンRNA」という用語は、非構造タンパク質遺伝子を発現するRNA分子を表すために区別せずに使用されるが、このRNA分子は自らの複製(増幅)を指示することができ、少なくとも5'および3'アルファウイルス複製認識配列、アルファウイルス非構造タンパク質のコード配列、およびポリアデニル化領域を含んでなるものである。このRNA分子はさらに、異種RNA配列の発現(転写および翻訳を意味する)を指示するための1つもしくは複数のエレメント(たとえば、IRES配列、コアもしくはミニプロモーターなど)を含んでいてもよい。本明細書のアルファウイルスレプリコンは、ある実施形態では、5'および3'アルファウイルス複製認識配列、アルファウイルス非構造タンパク質のコード配列、ポリアデニル化領域、ならびにSOX-2、c-Myc、OCT-3/4、Klf、Glis1、およびNanogからなる群から選択される1つもしくは複数のコード配列を含んでいてもよい。
【0029】
「ポリヌクレオチド」、「核酸」、または「組換え核酸」という用語は、デオキシリボ核酸(DNA)、ならびに、適切な場合には(特にレプリコンに関しては)リボ核酸(RNA)などの、ポリヌクレオチドを表す。
【0030】
遺伝子もしくはポリヌクレオチドに関する「発現」という用語は、遺伝子もしくはポリヌクレオチドの転写、ならびに、適切な場合には、mRNA転写物のタンパク質もしくはポリペプチドへの翻訳を意味する。したがって、文脈から明らかなように、タンパク質もしくはポリペプチドの発現は、オープンリーディングフレームの転写および/または翻訳の結果生じる。
【0031】
当業者は、遺伝暗号の縮重により、ヌクレオチド配列の異なるさまざまなコドンを、所与のアミノ酸をコード化するために使用できることを認識しているであろう。本明細書に記載の、ポリペプチドをコードする特定のポリヌクレオチドもしくは遺伝子配列は、本明細書の実施形態を説明するためにのみ言及されるのであって、本明細書は、本明細書の方法で利用される酵素のポリペプチドおよびタンパク質の同一アミノ酸配列を含んでなるポリペプチドをコードする、任意の配列のポリヌクレオチドを包含する。同様に、ポリペプチドは通常、望ましい活性の損失または重大な損失がなければ、そのアミノ酸配列中の1つもしくは複数のアミノ酸置換、欠失、および挿入を許容することができる。本明細書は、別のアミノ酸配列を有するそうしたポリペプチドを含んでおり、本明細書に示すRNAおよびDNA配列でコードされるアミノ酸配列は、ただ本明細書の実施形態を説明するにすぎない。
【0032】
本明細書は、本明細書の他の部分でより詳細に説明するように、1つもしくは複数のポリペプチドをコードする、組換えDNA発現ベクター、RNAレプリコン、またはプラスミドの形をとるポリヌクレオチドを提供する。
【0033】
本明細書のポリヌクレオチドは、標準的なPCR増幅法および以下の実施例の項に記載の手順にしたがって、鋳型としてcDNA、mRNA、またはその代わりにゲノムDNAを使用し、さらに適当なオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、増幅することができる。そのようにして増幅された核酸は、適当なベクターにクローニングし、配列分析によって特徴付けることができる。さらに、ヌクレオチド配列に対応するオリゴヌクレオチドを標準的な合成技術で、たとえば自動DNA合成装置を用いて、調製することができる。
【0034】
ある実施形態において、本明細書のレプリコンは、およそ1位からおよそ7561位まで、配列番号29、30、31、または32と、90%、95%、98%、99%、または100%同一である配列(この配列の"T"を"U"で置き換えることができる)、続いて、Oct-3/4、Sox-2、Klf4、c-Myc、Nanog、およびGlis1からなる群から選択される1つもしくは複数のRFを含む。2つ以上のRFが存在する場合、コード配列は、配列内リボソーム進入部位(IRES)、またはSP1などの小型の(たとえば、コア)プロモーターで隔てられていてもよい。RFの順序は本明細書にとってさほど重要でない;したがって順序は、Klf4、Oct-3/4、Sox-2、c-Mycであってもよいが、Sox-2、Klf4、Oct-3/4、c-Myc、またはOct4、Klf4、Sox2、c-Mycとすることも可能であり、あるいは任意に順序を変更したRFとすることができる。レプリコンはさらに、選択可能なマーカー(たとえば、抗生物質耐性マーカー)を含んでいてもよい。他の実施形態において、RFのコード配列は、T2Aおよび/またはE2Aなどの自己切断型ペプチドで隔てられていてもよい。別の実施形態において、レプリコンは、5'から3'に向かって、(VEE RNAレプリカーゼ)-(26Sプロモーター)-(RF
1)-(自己切断型ペプチド)-(RF
2)-(自己切断型ペプチド)-(RF
3)-(IRESもしくはコアプロモーター)-(RF
4)-(IRESもしくは任意選択のプロモーター)-(任意選択可能なマーカー)-(VEE 3’UTRおよびポリAテール)を含んでなる;上記のRF
1-4は、体細胞の多能性細胞への脱分化を誘導する因子であって、上記のRF
2-3が任意であるか、RF
3-4が任意であるか、またはRF
4が任意である;上記のRF
1-4は、Oct-4、Klf4、Sox-2、c-Myc、Nanog、およびGlis1からなる群から選択される。ある実施形態において、前述のレプリコンはRNA分子である。他の実施形態において、レプリコンは、VEEに由来し、病原性を減じる変異を含んでいる。ある実施形態において、VEEは、1つの点変異(nsP2P
773からSへの変異)を有する、TC-83株(ワクチン株)に基づくRNAレプリコンであって、この変異はレプリコンの細胞毒性作用を低下させた。
【0035】
前記実施形態のいずれにおいても、RFは、バリアントおよび縮重ポリヌクレオチド配列を含む。たとえば、RFには、OCT-4ポリペプチド、KLF4ポリペプチド、SOX-2ポリペプチド、c-MYCポリペプチド、NANOGポリペプチド、またはGLIS1のホモログおよびバリアントを含めることができる。たとえば、本明細書に記載のレプリコンの実施形態のいずれにおいても有用なNANOGのRFコード配列は、(i) 配列番号2のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;(ii) 配列番号1に対して少なくとも95%の同一性を有するポリヌクレオチドであって、NANOG活性を有するポリペプチドをコードする前記ポリヌクレオチド;(iii) 配列番号1に記載の配列を有するポリヌクレオチド;または(iv) 1から10個の保存的アミノ酸置換を含有し、そのポリペプチドがNANOG活性を有する、配列番号2のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むことができるが、前記核酸配列はいずれも、"T"を”U"で置き換えることができる。たとえば、本明細書に記載のレプリコンの実施形態のいずれにおいても有用なOct-4のRFコード配列は、(i) 配列番号4のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;(ii) 配列番号3に対して少なくとも95%の同一性を有するポリヌクレオチドであって、Oct-4活性を有するポリペプチドをコードする前記ポリヌクレオチド;(iii) 配列番号3に記載の配列を有するポリヌクレオチド;または(iv) 1から10個の保存的アミノ酸置換を含有し、そのポリペプチドがOct-4活性を有する、配列番号4のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むことができるが、前記核酸配列はいずれも、"T"を”U"で置き換えることができる。たとえば、本明細書に記載のレプリコンの実施形態のいずれにおいても有用なSox-2のRFコード配列は、(i) 配列番号6のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;(ii) 配列番号5に対して少なくとも95%の同一性を有するポリヌクレオチドであって、Sox-2活性を有するポリペプチドをコードする前記ポリヌクレオチド;(iii) 配列番号5に記載の配列を有するポリヌクレオチド;または(iv) 1から10個の保存的アミノ酸置換を含有し、そのポリペプチドがSox-2活性を有する、配列番号6のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むことができるが、前記核酸配列はいずれも、"T"を”U"で置き換えることができる。たとえば、本明細書に記載のレプリコンの実施形態のいずれにおいても有用なKLF4のRFコード配列は、(i) 配列番号8のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;(ii) 配列番号7に対して少なくとも95%の同一性を有するポリヌクレオチドであって、KLF4活性を有するポリペプチドをコードする前記ポリヌクレオチド;(iii) 配列番号7に記載の配列を有するポリヌクレオチド;または(iv) 1から10個の保存的アミノ酸置換を含有し、そのポリペプチドがKLF4活性を有する、配列番号8のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むことができるが、前記核酸配列はいずれも、"T"を”U"で置き換えることができる。たとえば、本明細書に記載のレプリコンの実施形態のいずれにおいても有用なc-MYCのRFコード配列は、(i) 配列番号10のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;(ii) 配列番号9に対して少なくとも95%の同一性を有するポリヌクレオチドであって、c-MYC活性を有するポリペプチドをコードする前記ポリヌクレオチド;(iii) 配列番号9に記載の配列を有するポリヌクレオチド;または(iv) 1から10個の保存的アミノ酸置換を含有し、そのポリペプチドがc-MYC活性を有する、配列番号10のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むことができるが、前記核酸配列はいずれも、"T"を”U"で置き換えることができる。たとえば、本明細書に記載のレプリコンの実施形態のいずれにおいても有用なGLIS1のRFコード配列は、(i) 配列番号34のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;(ii) 配列番号33に対して少なくとも95%の同一性を有するポリヌクレオチドであって、GLIS1活性を有するポリペプチドをコードする前記ポリヌクレオチド;(iii) 配列番号33に記載の配列を有するポリヌクレオチド;または(iv) 1から10個の保存的アミノ酸置換を含有し、そのポリペプチドがGLIS1活性を有する、配列番号34のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むことができるが、前記核酸配列はいずれも、"T"を”U"で置き換えることができる。
【0036】
NANOGは、胚性幹細胞(ESC)において発現される遺伝子であって、多能性の維持に関与する。NANOGはSOX2とともに機能すると考えられる。NANOGをコードするポリヌクレオチドおよびポリペプチドはそれぞれ、配列番号1および2に記載される。さらに、配列番号1はDNA配列を含んでいるが、当然のことながら、"T"は"U"で置き換えることができる。ヒトNANOGタンパク質(たとえば、受入番号NP_079141を参照されたい。これは参考として本明細書に組み入れられる)は、細胞の核成分に局在する、ホメオドメインモチーフを有する305アミノ酸タンパク質である。マウスNANOGと同様に、ヒトNANOGのN末端はSer、ThrおよびPro残基を多く含み、C末端はTrpリピートを含んでいる。ヒトNANOGのホメオドメインは、およそ残基95からおよそ残基155に及ぶ。ヒトNANOGのホモログが知られている。
【0037】
「Octポリペプチド」は、天然に存在するオクタマー転写因子ファミリーメンバーのいずれか、もしくはもっとも近縁の天然に存在するファミリーメンバーと比べて同様の(少なくとも50%、80%、または90%活性の範囲内の)転写因子活性を維持しているそのバリアント、または天然に存在するファミリーメンバーの少なくともDNA結合ドメインを含有するポリペプチドを表すが、さらに転写活性化ドメインを含んでいてもよい。Octポリペプチドの例としては、Oct-1、Oct-2、Oct-3/4、Oct-6、Oct-7、Oct-8、Oct-9、およびOct-11がある。たとえば、Oct3/4(本明細書では"Oct4"と称する)は、Pit-1、Oct-1、Oct-2、およびuric-86の間で保存された150アミノ酸配列である、POUドメインを含有する。Ryan, A. K. & Rosenfeld, M. G. Genes Dev. 11, 1207-1225 (1997)を参照されたい。ある実施形態において、バリアントは、上記のポリペプチドまたはGenbank受入番号NP002692.2 (ヒトOct4) もしくはNP038661.1 (マウスOct4)といった天然に存在するOctポリペプチドファミリーメンバーと比較して、配列全域で、少なくとも85%、90%、もしくは95%のアミノ酸配列同一性を有する。Octポリペプチド(たとえばOct3/4)は、ヒト、マウス、ラット、ウシ、ブタ、または他の動物由来とすることができる。一般に、操作される細胞の種と同じ種のタンパク質が使用されることになる。Oct-4(オクタマー4)は、POUファミリーのホメオドメイン転写因子であって、多数の遺伝子の発現を制御する(たとえば、J. Biol. Chem., Vol. 282, Issue 29, 21551-21560, July 20, 2007を参照されたいが、これは参考として本明細書に組み入れられる)。Oct4をコードするポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、それぞれ配列番号3および4に記載される。さらに、配列番号3はDNA配列を含んでいるが、当然のことながら、"T"は"U"で置き換えることができる。ヒトOct-4のホモログは次の受入番号NP_038661.1およびNM_013633.1 (ハツカネズミ(Mus musculus))、NP_001009178およびNM_001009178 (ドブネズミ(Rattus norvegicus))、ならびにNP_571187およびNM_131112 (ゼブラフィッシュ(Danio rerio))に記載のとおり知られており、これらは参考として本明細書に組み入れられる。
【0038】
SRY(性決定領域Y)-box2は、SOX2としても知られるが、未分化胚性幹細胞の自己複製、およびFgf4のトランス活性化、ならびにDNAベンディングの調節に関与する転写因子である(たとえば、Scaffidi et al. J. Biol. Chem., Vol. 276, Issue 50, 47296-47302, December 14, 2001を参照されたいが、これは参考として本明細書に組み入れられる)。「Soxポリペプチド」は、高移動度グループ(HMG)ドメインが存在するという特徴を有する、任意の天然に存在するSRY関連HMG-box(Sox)転写因子メンバー、もしくはもっとも近縁の天然に存在するファミリーメンバーと比べて同様の(少なくとも50%、80%、または90%活性の範囲内の)転写因子活性を維持しているそのバリアント、または天然に存在するファミリーメンバーの少なくともDNA結合ドメインを含有するポリペプチドを表すが、さらに転写活性化ドメインを含んでいてもよい。たとえば、Dang, D. T., et al., Int. J. Biochem. Cell Biol. 32:1103-1121 (2000)を参照されたい。Soxポリペプチドの例としては、Sox1、Sox-2、Sox3、Sox4、Sox5、Sox6、Sox7、Sox8、Sox9、Sox10、Sox11、Sox12、Sox13、Sox14、Sox15、Sox17、Sox18、Sox-21、およびSox30がある。Sox1は、Sox2と同様の効率でiPS細胞を生じることが判明しており、遺伝子Sox3、Sox15、およびSox18もまたiPS細胞を生成することが判明しているが、ただし効率はSox2よりいくぶん劣る。Nakagawa, et al., Nature Biotechnology 26:101-106 (2007)を参照されたい。ある実施形態において、バリアントは、上記のポリペプチドまたはGenbank受入番号CAA83435 (ヒトSox2)といった天然に存在するSoxポリペプチドファミリーメンバーと比較して、配列全域で、少なくとも85%、90%、もしくは95%のアミノ酸配列同一性を有する。Soxポリペプチド(たとえばSox1、Sox-2、Sox3、Sox4、Sox15、もしくはSox18)は、ヒト、マウス、ラット、ウシ、ブタ、または他の動物由来とすることができる。一般に、操作される細胞の種と同じ種のタンパク質が使用されることになる。Sox2をコードするポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、それぞれ配列番号5および6に記載される。さらに、配列番号5はDNA配列を含んでいるが、当然のことながら、"T"は"U"で置き換えることができる。ヒトSox2のホモログが知られている。
【0039】
Kruppel様因子4は、KLF4としても知られるが、幹細胞維持および増殖に関与する。「Klfポリペプチド」は、ショウジョウバエ胚パターン制御因子Kruppelと同様のアミノ酸配列を含有するジンクフィンガータンパク質である、任意の天然に存在するKruppel様因子(Klf)ファミリーメンバー、もしくはもっとも近縁の天然に存在するファミリーメンバーと比べて同様の(少なくとも50%、80%、または90%活性の範囲内の)転写因子活性を維持している、天然に存在するメンバーのバリアント、または天然に存在するファミリーメンバーの少なくともDNA結合ドメインを含有するポリペプチドを表すが、さらに転写活性化ドメインを含んでいてもよい。Dang, D. T., Pevsner, J. & Yang, V. W., Cell Biol. 32,1103-1121 (2000)を参照されたい。Klfファミリーメンバーの例としては、Klf1、Klf2、Klf3、Klf-4、Klf5、Klf6、Klf7、Klf8、Klf9、Klf10、Klf11、Klf12、Klf13、Klf14、Klf15、Klf16、およびKlf17がある。Klf2およびKlf-4は、マウスにおいてiPS細胞を生成することができる因子であると判明し、関連する遺伝子Klf1およびKlf5も同様であったが、ただし効率は低かった。Nakagawa, et al., Nature Biotechnology 26:101-106 (2007)を参照されたい。ある実施形態において、バリアントは、上記のポリペプチドまたはGenbank受入番号CAX16088 (マウスKlf4)もしくはCAX14962 (ヒトKlf4)といった天然に存在するKlfポリペプチドファミリーメンバーと比較して、配列全域で、少なくとも85%、90%、もしくは95%のアミノ酸配列同一性を有する。Klfポリペプチド(たとえばKlf1、Klf4、およびKlf5)は、ヒト、マウス、ラット、ウシ、ブタ、または他の動物由来とすることができる。一般に、操作される細胞の種と同じ種のタンパク質が使用されることになる。Klfポリペプチドが本明細書に記載される限りにおいて、それをエストロゲン関連受容体β(Essrb)ポリペプチドと置き換えることができる。したがって、本明細書に記載のそれぞれのKlfポリペプチド実施形態について、Klf4ポリペプチドの代わりにEssrbを使用する、対応する実施形態が等しく記載されているものとする。Klf4をコードするポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、それぞれ配列番号7および8に記載される。さらに、配列番号7はDNA配列を含んでいるが、当然のことながら、"T"は"U"で置き換えることができる。ヒトKlf4のホモログが知られており、NP_034767、NM_010637 (ハツカネズミ(Mus musculus))が挙げられるが、これらは参考として本明細書に組み入れられる。
【0040】
細胞遺伝子のMYCファミリーは、細胞の増殖、分化、およびアポトーシスの制御において機能する3つの遺伝子である、c-myc、N-myc、およびL-mycからなる(Henriksson and Luscher 1996; Facchini and Penn 1998)。「Mycポリペプチド」は、任意の天然に存在するMycファミリーメンバー(たとえば、Adhikary, S. & Eilers, M. Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 6:635-645 (2005)を参照されたい)、もしくはもっとも近縁の天然に存在するファミリーメンバーと比べて同様の(少なくとも50%、80%、または90%活性の範囲内の)転写因子活性を維持しているそのバリアント、または天然に存在するファミリーメンバーの少なくともDNA結合ドメインを含有するポリペプチドを表すが、さらに転写活性化ドメインを含んでいてもよい。Mycポリペプチドの例としては、c-Myc、N-Myc、およびL-Mycが挙げられる。ある実施形態において、バリアントは、上記のポリペプチドまたはGenbank受入番号CAA25015 (ヒトMyc)に挙げられるような、天然に存在するKlfポリペプチドファミリーメンバーと比較して、配列全域で、少なくとも85%、90%、もしくは95%のアミノ酸配列同一性を有する。Mycポリペプチド(たとえばc-Myc)は、ヒト、マウス、ラット、ウシ、ブタ、または他の動物由来とすることができる。一般に、操作される細胞の種と同じ種のタンパク質が使用されることになる。mycファミリー遺伝子は共通の構造活性および生物活性を有するが、N-MycはMYCファミリーの一員であり、塩基性ヘリックス-ループ-ヘリックス(bHLH)ドメインを有するタンパク質をコードする。c-mycおよびN-mycのゲノム構造は、同様に構築されており、3つのエクソンからなる。第1のエクソンの大半、および第3のエクソンの3'部分は、転写制御配列または転写後制御配列を保有する非翻訳領域を含有する。N-mycタンパク質は核内に存在し、DNAに結合するために、もう1つのbHLHタンパク質とともに二量体を形成している。c-Mycをコードするポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、それぞれ配列番号9および10に記載される。さらに、配列番号9はDNA配列を含んでいるが、当然のことながら、"T"は"U"で置き換えることができる。Mycファミリータンパク質のホモログおよびバリアントは当技術分野で知られている。
【0041】
Glis1(Glisファミリージンクフィンガー1)は、染色体1p32.3に見られる遺伝子座と同じ名称のkruppel様タンパク質をコードする遺伝子である。この遺伝子は、未受精卵および1細胞期の胚において高度に発現されており、それを用いて、体細胞の人工多能性幹細胞へのダイレクトリプログラミングを促進することができる。Glis1を、体細胞の人工多能性幹細胞への初期化に使用される4つの因子の1つとして使用することができる。使用する他の3つの転写因子は、Oct3/4、Sox2、およびKlf4である。ヒトGlis1(NM_147193)は、配列番号33および34(それぞれcDNAおよびポリペプチド)に記載される。
【0042】
ヒトoct4(pour5f1)、sox2、klf4、c-myc(n-mycもしくはL-myc)、Glis1、およびnanog、それらのバリアントおよびホモログをコードするcDNAは、当技術分野で既知の技術を用いて、クローニングして発現させることができる。本明細書に記載の配列を用いて、1つもしくは複数の脱分化因子をコードするポリヌクレオチドを、当該細胞型での発現に適したベクターにクローニングすることができる。
【0043】
RF「活性」(たとえば、RFバリアント活性)は、当技術分で知られている他のRFと組み合わせて発現されたときに、体細胞を脱分化させる能力を表す。たとえば、Oct-4バリアントは、そのOct-4バリアントを体細胞においてklf4、Sox-2、およびc-mycと同時に発現させ、体細胞が脱分化したかどうかを判定することによって、Oct-4活性を測定することができる。細胞が脱分化したならば、このOct-4バリアントはOct-4活性を有するといえる。
【0044】
もう1つの実施形態において、レプリコンは、配列番号29、30、31、または32に記載の配列を含んでなる。さらに別の実施形態において、レプリコンは、配列番号29、30、31、または32と約90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%同一な配列であって、そのレプリコンを体細胞にトランスフェクトすると、体細胞が幹細胞となるように"誘導"されるような前記配列を含む。それに加えて、配列番号29、30、31、または32のいずれにおいても、"T"は"U"で置き換えられる。
【0045】
ある実施形態において、配列番号29は、本明細書のレプリコンを与える。別の実施形態において、配列番号29の配列は、"T"が"U"で置き換えられている。レプリコンは、ヌクレオチド1からおよそヌクレオチド7561までのVEE RNAレプリコン、ヌクレオチド7592から8671までのヒトOct-4配列、ヌクレオチド8678-8731のT2A自己切断型ペプチドをコードする配列、8738-10147のヒトKlf4配列、ヌクレオチド10154-10213の自己切断型E2Aペプチドのコード配列、10223-11176のヒトSox-2配列、11195-11805の配列内リボソーム進入部位、11818-13140のヒトc-Myc配列、13165-13776の配列内リボソーム進入部位、13777-14376のピューロマイシン耐性遺伝子、14383-14510のVEE 3’UTRおよびポリAテール、14679-15539のアンピシリン耐性遺伝子、ならびに16320-16337のSP6プロモーターを含んでなる。
【0046】
ある実施形態において、配列番号30は、本明細書のレプリコンを与える。別の実施形態において、配列番号30の配列は、"T"が"U"で置き換えられている。レプリコンは、ヌクレオチド1からおよそヌクレオチド7561までのVEE RNAレプリコン、ヌクレオチド7592から8671までのヒトOct-4配列、ヌクレオチド8678-8731のT2A自己切断型ペプチドのコード配列、8738-10147のヒトKlf4配列、ヌクレオチド10154-10213の自己切断型E2Aペプチドのコード配列、10223-11176のヒトSox-2配列、11195-11805の配列内リボソーム進入部位、11818-13140のヒトc-Myc配列、13165-13776の配列内リボソーム進入部位、13777-14376のピューロマイシン耐性遺伝子、14383-14510のVEE 3’UTRおよびポリAテール、14679-15539のアンピシリン耐性遺伝子、ならびに16319-16336のT7プロモーターを含んでなる。
【0047】
ある実施形態において、配列番号31は、本明細書のレプリコンを与える。別の実施形態において、配列番号31の配列は、"T"が"U"で置き換えられている。レプリコンは、ヌクレオチド1からおよそヌクレオチド7561までのVEE RNAレプリコン、ヌクレオチド7592から8671までのヒトOct-4配列、ヌクレオチド8678-8731のT2A自己切断型ペプチドのコード配列、8738-10147のヒトKlf4配列、ヌクレオチド10154-10213の自己切断型E2Aペプチドのコード配列、10223-11176のヒトSox-2配列、11195-11805の配列内リボソーム進入部位、11818-13680のヒトGlis1配列、13689-14300の配列内リボソーム進入部位、14301-14900のピューロマイシン耐性遺伝子、14907-15034のVEE 3’UTRおよびポリAテール、15203-16063のアンピシリン耐性遺伝子、ならびに16844-16861のSP6プロモーターを含んでなる。
【0048】
ある実施形態において、配列番号32は、本明細書のレプリコンを与える。別の実施形態において、配列番号32の配列は、"T"が"U"で置き換えられている。レプリコンは、ヌクレオチド1からおよそヌクレオチド7561までのVEE RNAレプリコン、ヌクレオチド7592から8671までのヒトOct-4配列、ヌクレオチド8678-8731のT2A自己切断型ペプチドのコード配列、8738-10147のヒトKlf4配列、ヌクレオチド10154-10213の自己切断型E2Aペプチドのコード配列、10223-11176のヒトSox-2配列、11195-11805の配列内リボソーム進入部位、11818-13680のヒトGlis1配列、13689-14300の配列内リボソーム進入部位、14301-14900のピューロマイシン耐性遺伝子、14907-15034のVEE 3’UTRおよびポリAテール、15203-16063のアンピシリン耐性遺伝子、ならびに16843-16860のT7プロモーターを含んでなる。
【0049】
別の実施形態において、2つ以上のアルファウイルスレプリコンを使用してもよいが、このレプリコンはそれぞれ、体細胞が幹細胞となるように誘導する因子の1つもしくは複数のコード配列を含んでなるものであって、この2つ以上のアルファウイルスレプリコンの組み合わせは、幹細胞への脱分化を誘導するために必要なすべてのRFのコード配列をすべて含んでいる。
【0050】
より具体的な実施形態において、アルファウイルスレプリコンは、OCT-3/4、SOX-2、KLF、c-MYC、GLIS1、および/またはNANOGを発現するためのコード配列を含んでいる。特定の実施形態において、アルファウイルスレプリコンは、OCT-3/4、KLF4、SOX-2、GLIS1、およびc-MYCのコード配列を含有する。
【0051】
レプリコンはまた、アルファウイルス構造タンパク質を発現するように操作することもできる。米国特許第7,045,335号、7,078,218号、7,425,337号、および7,442,381号は、こうしたアルファウイルスRNAレプリコンの数多くの構築物を記載するが、それらは5'および3'アルファウイルス複製認識配列、アルファウイルス非構造タンパク質のコード配列、およびポリアデニル化領域からなる構築物であって、そのような構築物は、参考として本明細書に組み入れられる。アルファウイルスRNAレプリコンの特定の実施形態は、1つもしくは複数の弱毒化変異を含んでいてもよいが、弱毒化変異とは、1つもしくは複数のヌクレオチドの欠失、付加、もしくは置換であり、適当な野生型アルファウイルスと比較して変異を有する生きたウイルスで病原性の減少をもたらす、再構成もしくはキメラ構築を含む変異である。
【0052】
「アルファウイルス構造タンパク質(単数形/複数形)」という用語は、アルファーウイルスによってコード化される、1つの構造タンパク質、または複数の構造タンパク質の組み合わせを表す。これらは、ウイルスによってポリプロテインとして生成され、一般に文献ではC-E3-E2-6k-E1のように表される。E3および6Kは、2つの糖タンパク質E2およびE1の膜移行/輸送シグナルとして機能する。したがって、E1という用語の使用は本明細書では、E1、E3-E1、6k-E1、もしくはE3-6k-E1を表し、E2という用語の使用は本明細書では、E2、E3-E2、6k-E2、もしくはE3-6k-E2を指す可能性がある。弱毒化変異は、任意の1つもしくは複数のアルファウイルス構造タンパク質に導入することができる。
【0053】
さらに上記のように、本明細書で与えられる微生物および方法は、代謝産物を生成するために有用な酵素のホモログを包含する。第1のファミリーもしくは種の、もとの酵素または酵素に対して使用される「ホモログ」という用語は、機能分析、構造解析、またはゲノム解析によって、第1のファミリーもしくは種のもとの酵素または遺伝子に相当する、第2のファミリーもしくは種の酵素または遺伝子であると判定された、第2のファミリーもしくは種の、別個の酵素または遺伝子を指す。ほとんどの場合、ホモログは、機能的、構造的、または遺伝的類似性を有するものである。遺伝子プローブおよびPCRによって酵素または遺伝子のホモログを容易にクローニングすることができる方法はすでに知られている。ホモログとしてクローニングされた配列の同一性は、機能分析を用いて、および/または遺伝子のゲノムマッピングによって確認することができる。
【0054】
あるタンパク質をコードする核酸配列が、第2のタンパク質をコードする核酸配列と同様の配列を有するならば、そのタンパク質は、第2のタンパク質に対して「相同性」を有する、もしくは「相同である」。あるいはまた、2つのタンパク質が「同様の」アミノ酸配列を有するならば、一方のタンパク質は他方のタンパク質に対して相同性を有する。(したがって、「相同タンパク質」という用語は、2つのタンパク質が同様のアミノ酸配列を有することを意味すると定義される)。
【0055】
本明細書で使用される場合、2つのタンパク質(またはタンパク質の領域)は、アミノ酸配列が少なくとも約30%、40%、50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するならば、実質的に相同である。2つのアミノ酸の、または2つの核酸配列の相同性パーセントを決定するために、配列は、最適な比較を目的としてアラインされる(たとえば、最適なアラインメントのために、第1および第2のアミノ酸もしくは核酸配列の一方、または両方に、ギャップを導入することが可能であり、比較のために非相同配列を無視することができる)。ある実施形態において、比較目的でアラインされる基準配列の長さは、その基準配列の長さの少なくとも30%、典型的には少なくとも40%、より典型的には少なくとも50%、さらに典型的には少なくとも60%、そしてさらにもっと典型的には少なくとも70%、80%、90%、100%である。次に、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置にあるアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1の配列中の、ある位置が、第2の配列中の相当する位置と同じアミノ酸残基もしくはヌクレオチドで占められているならば、これらの分子はその位置で同一である(ここで使用されるアミノ酸もしくは核酸「同一性」は、アミノ酸もしくは核酸「相同性」と同等である)。2つの配列間の同一性パーセントは、これらの配列で共有される同一の位置の数の関数であって、2つの配列の最適なアラインメントのために導入する必要のある、ギャップの数、および各ギャップの長さが考慮される。
【0056】
「相同である」がタンパク質もしくはペプチドに関して使用される場合、同一でない残基位置は、保存的アミノ酸置換によって異なっていることが多いことが認識されている。「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が、同様の化学的性質(たとえば、電荷または疎水性)を示す側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基で置き換えられるような置換である。概して、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能的性質を実質的に変化させないものである。2つ以上のアミノ酸配列が、保存的置換により互いに異なっている場合、配列同一性パーセント、または相同性の度合いは、置換の保存的性質を補正するために、上方に調整される可能性がある。この調整を行う方法は当業者によく知られている(たとえば、Pearson et al., 1994を参照されたい。これによって参考として本明細書に組み入れられる)。
【0057】
「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、同様の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられている置換である。同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野で定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖を有するアミノ酸(たとえば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(たとえば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷極性側鎖を有するアミノ酸(たとえば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(たとえば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐側鎖を有するアミノ酸(たとえば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖を有するアミノ酸(たとえば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)がある。次の6群はそれぞれ、相互に保存的置換となるアミノ酸を含んでいる:1) セリン(S)、スレオニン(T); 2) アスパラギン酸(D)、グルタミン酸 (E); 3) アスパラギン(N)、グルタミン(Q); 4) アルギニン(R)、リジン(K); 5) イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、アラニン(A)、バリン(V)、ならびに6) フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。
【0058】
ポリペプチドの配列相同性は、配列同一性パーセントと称されることもあるが、典型的には、配列解析ソフトウェアを用いて評価される。たとえば、Genetics Computer Group (GCG)配列解析ソフトウェアパッケージ、University of Wisconsin Biotechnology Center, 910 University Avenue, Madison, Wis. 53705を参照されたい。タンパク質解析ソフトウェアは、相同性の基準を用いて類似配列をマッチさせ、保存的アミノ酸置換を含めて、さまざまな置換、欠失、および他の改変に帰属される。たとえば、GCGは、デフォルトパラメーターとともに使用して、異なる生物種由来の相同ポリペプチドのような密接に関連するポリペプチド間の、または野生型タンパク質とその変異型タンパク質との間の、配列相同性または配列同一性を決定することができる、"Gap"および"Bestfit"などのプログラムを含んでいる。たとえば、GCG Version 6.1を参照されたい。
【0059】
さまざまな生物由来の多数の配列を含むデータベースと分子配列を比較するときに使用される典型的なアルゴリズムは、コンピュータープログラムBLAST(Altschul, 1990; Gish, 1993; Madden, 1996; Altschul, 1997; Zhang, 1997)、特にblastpまたはtblastn(Altschul, 1997)である。BLASTのための典型的なパラメーターは次のとおり:Expectation value: 10 (デフォルト); Filter: seg (デフォルト); Cost to open a gap: 11 (デフォルト); Cost to extend a gap: 1 (デフォルト); Max. alignments: 100 (デフォルト); Word size: 11 (デフォルト); No. of descriptions: 100 (デフォルト); Penalty Matrix: BLOWSUM62。
【0060】
多数のさまざまな生物由来の配列を含むデータベースを検索する場合、アミノ酸配列を比較することが通常である。アミノ酸配列によるデータベース検索は、当技術分野で知られているblastp以外のアルゴリズムで評価することができる。たとえば、ポリペプチド配列は、GCG Version 6.1の中にあるプログラム、FASTAを用いて比較することができる。FASTAは、クエリ配列と検索配列の間で、最適オーバーラップの領域のアラインメントおよび配列同一性パーセントを与える(Pearson, 1990、これにより参考として本明細書に組み入れられる)。たとえば、アミノ酸配列間の配列同一性パーセントは、FASTAをGCG Version 6.1で規定されるとおり、そのデフォルトパラメーターで使用して決定することが可能であり、これにより参考として本明細書に組み入れられる。
【0061】
本明細書に記載のように、本明細書の組成物および方法は、体細胞を脱分化して幹細胞を形成させる(たとえば、幹細胞の形成を誘導する)能力をもたらす。幹細胞は、他の細胞型へと分化する能力を有する細胞であって、こうした細胞型は、特有の特殊化した機能を有する細胞(たとえば、組織特異的細胞、実質細胞、およびそれらの前駆細胞)を含む。さまざまな種類の幹細胞があるが、それらは、求められる細胞/組織型へと分化する能力で特徴付けられる。たとえば、「前駆細胞」は、多分化能(multipotent)または多能性(pluripotent)を有する可能性がある。前駆細胞は、種々の最終分化した細胞型を生じさせることができる細胞であり、しかも、さまざまな前駆細胞を生じさせる能力を有する細胞である。「多能性の」または「多能性」という用語は、適当な条件下で、三胚葉(内胚葉、中胚葉、および外胚葉)のすべてに由来する細胞系列に関連した特徴を、一団として示す細胞型に分化しうる、子孫細胞を生じさせる能力を有する細胞を表す。多能性幹細胞は、出生前、出生後、もしくは成体の動物の、あらゆる胚由来組織に寄与することができる。8-12週齢SCIDマウスにおいてテラトーマを形成する能力といった、標準的な、当技術分野で受け入れられているテストを用いて、細胞集団の多能性を立証することができる;しかしながら、さまざまな多能性幹細胞の特徴を識別することによって、多能性細胞を検出することもできる。「多能性幹細胞の特徴」は、多能性幹細胞を他の細胞から区別する、細胞の特徴を意味する。適当な条件下で、三胚葉(内胚葉、中胚葉、および外胚葉)のすべてに由来する細胞系列に関連した特徴を、一団として示す細胞型に分化することができる、子孫を生じさせる能力が、多能性幹細胞の特徴である。一定の組み合わせの分子マーカーの発現もしくは非発現も、多能性幹細胞の特徴となる。たとえば、ヒト多能性幹細胞は、以下の非限定的リスト:SSEA-3、SSEA-4、TRA-1-60、TRA-1-81、TRA-2-49/6E、ALP, Sox2、E-cadherin、UTF-1、Oct4、Rex1、およびNanogから、少なくとも一部のマーカーを発現し、ある実施形態ではすべてのマーカーを発現する。多能性幹細胞に関連する細胞形態も、多能性幹細胞の特徴となる。比較すると、多分化能幹細胞は、多能性幹細胞と比べて、細胞のサブセットに分化させる能力を有する。たとえば、多分化能幹細胞は、三胚葉のうち1つもしくは2つに分化することができる。本明細書で使用される「非多能性細胞」は、多能性細胞でない哺乳動物細胞を表す。そうした細胞の例には、分化した細胞、ならびに多分化能細胞がある。分化した細胞の例としては、骨髄、骨格筋、脂肪組織および末梢血から選択される組織由来の細胞があるがそれらに限定されない。典型的な細胞型には、線維芽細胞、肝細胞、筋芽細胞、神経細胞、骨芽細胞、破骨細胞、およびT細胞があるが、それらに限定されない。
【0062】
多能性幹細胞よりずっと原始的な(すなわち、特定の分化運命を委ねられていない)もう1つの細胞の種類が、いわゆる「分化全能性」幹細胞(たとえば、受精卵母細胞、発生の2細胞期および4細胞期の胚細胞)であって、これは、特定の種のいかなる細胞型にも分化しうる能力を有する。たとえば、1つの分化全能性幹細胞は、特定の種(たとえばヒト)に見いだされる無数の細胞型をいずれも生じさせることができるだけでなく、完全な動物を生じさせることができる。
【0063】
多能性幹細胞は、すべての三胚葉由来組織および生殖細胞系列を生じさせる能力を維持しながら自己複製する細胞型である。ヒト胚盤胞由来の多能性ヒト胚性幹(hES)細胞は、パーキンソン病、心筋梗塞、脊髄損傷、および糖尿病などの疾患および障害を治療する、細胞に基づいた治療のための有望な起源ではあるが、その臨床的可能性は、それらの免疫原性および倫理的な問題によって阻まれている。
【0064】
「前駆(precursor)細胞」、「前駆(progenitor)細胞」、および「幹細胞」は、当技術分野および本明細書では区別せずに使用され、多能性の、または分化系列の決定されていない前駆細胞を意味するが、こうした細胞は、その細胞株を再生するために、または線維芽細胞もしくは分化系列の決定された前駆細胞へと分化してゆく前駆細胞およびその子孫を生成するために、無限に有糸分裂する可能性を有しており、それは自己複製能力を有し、かつ実質細胞型へと分化する能力を有する。多能性幹細胞とは異なり、分化系列の決定された前駆細胞は一般に、表現型が互いに異なる多数の細胞型を生じさせる能力はないと考えられている。その代わり、そうした細胞は1つかおそらくは2つの、分化系列の決定された細胞型を生じさせる。
【0065】
本明細書は、異所性mRNA発現系(たとえばレプリコン系)を用いて、最終分化したヒト細胞(たとえば、ヒト皮膚線維芽細胞)を、脱分化するよう誘導することができることを示す。本明細書は、さまざまな脱分化(初期化因子(RF)とも称される)コード配列の使用を検討するが、それはたとえば、KLF4、OCT4、SOX2、c-MYCもしくはn-MYC (L-Myc)、GLIS1、NANOG、またはそれらの組み合わせ(たとえば、KLF4、OCT4、SOX2、c-MYCもしくはn-MYC (L-Myc)、およびオプションとしてNANOG)をコードするポリヌクレオチドを含む。脱分化は、細胞をin vivoまたはin vitroで、1つもしくは複数の自己複製RNAベクターと接触させることによって達成することができるが、このベクターは、宿主細胞ゲノムに対して異所性であり続け、脱分化を誘導する因子をコードするものである。さまざまな実施形態において、本明細書の異所性自己複製RNAベクターは、自己複製RNAベクターで形質転換された宿主細胞をB18R存在下で培養することによって制御することができる。脱分化を促進するための方法は、傷害もしくは疾病によって損傷された哺乳動物細胞および組織の再生を促進する方法をもたらす。本明細書はまた、人工幹細胞を濃縮する方法、ならびにそのようにして濃縮された幹細胞を含む集団も提供する。
【0066】
患者特有の多能性幹細胞の作製は、変性疾患を治療する臨床用途への幹細胞の導入実現を劇的に速める可能性がある。本明細書は、患者から提供を受けやすい皮膚線維芽細胞などの間質細胞を利用して、ヒト人工多能性幹(hiPSまたはiPS)細胞を、一連の脱分化因子の異所性発現によって作製する方法を提供するが、この脱分化因子は、(i) KLF4、OCT4、SOX2、c-MYCもしくはn-MYC(L-Myc)、NANOG、またはそれらの任意の組み合わせ; (ii) KLF4、OCT4、SOX2、およびGLIS1; ならびに(iii) KLF4、OCT4、SOX2、およびNANOGをコードするRNAを含む。作製された細胞株は、生理学的および形態学的に、ヒト胚の内部細胞塊から作製されたヒト胚性幹細胞(HESC)と区別できない。hiPS細胞は、2つの樹立されたHESC株とほぼ同一の遺伝子発現プロファイルを共有する。
【0067】
「脱分化」という用語は、当業者によく知られている。一般に脱分化は、たとえば、脱分化した表現型を誘導することによって、分化系列の決定された細胞を幹細胞の状態に戻すことを意味する。たとえば、本明細書でさらに説明されるように、KLF4、OCT4、SOX2、c-MYCもしくはn-MYCもしくはL-MYC、GLIS1および/またはNanogは、分化系列が決定され有糸分裂が阻害されている細胞において、脱分化および有糸分裂の誘導を引き起こすことができる。
【0068】
ある実施形態において、本明細書は、本明細書のレプリコンで形質転換されたヒト体細胞を含んでなる細胞培養物を提供する。ある実施形態において、体細胞は線維芽細胞である。別の実施形態において、体細胞はケラチノサイトである。また別の実施形態において、レプリコンは、おおよそ1位からおおよそ7561位まで、配列番号29、30、31、または32に対して90%、95%、98%、99%、または100% 同一である配列を含んでなり(その配列の"T"は”U"で置き換えることができる)、続いて、Oct-3/4、Sox-2、Klf4、c-Myc、Nanog、およびGlis1からなる群から選択される1つもしくは複数のRF、さらにVEE 3'UTRおよびポリAテールが続く。2つ以上のRFが存在する場合、コード配列は、配列内リボソーム進入部位(IRES)、またはSP1などの小型の(たとえば、コア)プロモーターで隔てられていてもよい。RFの順序は本明細書にとってさほど重要でない;したがって順序は、Klf4、Oct-3/4、Sox-2、c-Mycであってもよいが、Sox-2、Klf4、Oct-3/4、c-Myc、またはOct4、Klf4、Sox2、c-Mycとすることも可能であり、あるいは任意に順序を変更したRFであってもよい。ある実施形態において、レプリコンは、配列番号29、30、31、または32に記載の配列と少なくとも約95%、98%、99%、または100% 同一である配列を含んでなる。さらに別の実施形態において、細胞は、B18Rを含有する馴化培地中で培養され、および/またはB18Rをコードするポリヌクレオチドで同時形質転換される。
【0069】
本明細書はまた、体細胞から幹細胞を作製する方法を提供するが、その方法は、体細胞を本明細書に記載のRNAレプリコンで形質転換すること、ならびにその体細胞を、レプリコン中のコード配列の発現を促進する条件下で培養すること、ならびにその細胞を、幹細胞になるまで脱分化させるのに十分な期間、培養することを含むものである。ある実施形態において、細胞は少なくとも5、10、15、20回、またはそれより多く継代される。別の実施形態において、細胞は少なくとも10、20、30日、またはそれより長く培養される。また別の実施形態において、細胞は、B18Rを含む馴化培地で培養されるか、またはB18Rをコードするポリヌクレオチドで同時形質転換される。
【0070】
本明細書はまた、本明細書に記載の方法で得られる人工幹細胞培養物を提供する。ある実施形態において、その幹細胞は、細胞のゲノムDNA中に異種RF因子を一つも含有していない。別の実施形態において、幹細胞はレトロウイルスDNAまたはRNAをまったく含有していない(たとえば、レトロウイルスDNAもしくはRNAを含まない幹細胞)。
【0071】
ある実施形態において、明細書は、単離された人工幹細胞を、単個または集団として、提供する。「単離された」または「精製された」という用語は、本明細書の幹細胞に言及する場合、細胞系列専用に特化することに関わるマーカーを保有する細胞を実質的に含まない細胞を意味する。個別の実施形態において、ヒト人工多能性幹細胞は、そのような夾雑細胞型を少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95% または99% 含まない。別の実施形態において、単離された幹細胞は、可溶性の天然に存在する分子を実質的に含まない。下記でさらに十分に検討されるように、実質的に精製された本明細書の幹細胞は、たとえば、培養源からの抽出(たとえば、密度勾配遠心分離法および/またはフローサイトメトリーによる)によって得ることができる。純度は、任意の適当な方法で測定することができる。本明細書の幹細胞は、本明細書で検討されるように、たとえばフローサイトメトリー(FACS分析など)により99%-100%精製することができる。このような精製されたiPS細胞は、レトロウイルスDNAもしくはRNAをまったく欠いている。
【0072】
ある実施形態において、本明細書は、濃縮された人工幹細胞集団を提供する。「濃縮された人工幹細胞集団」は、本明細書の人工幹細胞が他の細胞型から部分的に分離されている集団であって、その結果得られた細胞集団は、元の細胞集団より高い濃度の人工幹細胞を有する。濃縮された人工幹細胞集団は、元の集団が分離前に有していた人工幹細胞より約10倍、100倍、500倍、1,000倍、2,000倍、3,000倍、4,000倍、5,000倍、6,000倍、7,000倍、8,000倍、9,000倍、10,000倍またはそれより高い濃度の人工幹細胞を有する可能性がある。本明細書の人工幹細胞はたとえば、少なくとも5%、10%、15%、20%、35%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%もしくはそれ以上の濃縮された幹細胞集団を構成することができる。濃縮された人工幹細胞集団は、たとえば、分化した細胞と関連するマーカーを示す細胞もしくは他の望ましくない細胞型を除いて選択すること、および/または、本明細書のヒト人工多能性幹細胞と関連するマーカー(たとえばTRA-1-81および/またはTRA-1-60)を示す細胞を求めて選択すること、および/または、単離された幹細胞を限定培養系で再生させることによって得ることができる。あるいはまた、マーカーの発現に関して濃縮することに加えて、マーカー発現の欠落も濃縮のために使用することができる。このように濃縮されたiPS細胞は、RFで細胞を形質転換するために通常使用される、レトルウイルスRNAもしくはDNAをまったく含まないこととなる。
【0073】
もう1つの実施形態において、本明細書は人工幹細胞の細胞株を提供する。本明細書で使用される「細胞株」は、長期間、好ましくは無期限に、再生増殖することができる、本明細書の幹細胞またはその子孫細胞の培養物を意味するが、その用語はたとえば、培養され、凍結保存され、凍結保存後再培養された細胞を含む。本明細書で使用される「培養物」は、培地中で増殖し、必要に応じて継代された、人工幹細胞の集団を意味する。幹細胞培養物は、初代培養物(継代されていない培養物)とすることができるが、2代もしくはその後の培養物(1回または2回以上継代された細胞集団)であってもよい。
【0074】
ある実施形態において、本明細書は、脱分化して幹細胞となった細胞(すなわち人工幹細胞)を提供するが、この細胞は、自己複製能力、ならびに中胚葉、内胚葉および表皮に分化する能力を含めた特徴を有しており、この脱分化した細胞は、複製型RNAレプリコンを用いて1つもしくは複数のRFを宿主細胞ゲノムに対して異所性に発現させることによって、作製することができる。ある実施形態において、レプリコンベクターは、アルファウイルス(たとえば、ベネズエラウマ脳炎ウイルス)に由来する。
【0075】
本明細書のヒト人工多能性幹細胞の治療上の使用は、がん、腫瘍、外傷、ウイルス感染症、糖尿病などに起因する、疾患および障害を含めてさまざまな病的状態を治療するために、ヒト人工多能性幹細胞、幹細胞集団、またはそれらの子孫を個体に移植することを含んでいる。幹細胞もしくは幹細胞集団は(遺伝的に改変された幹細胞を含めて)、そうした幹細胞もしくは後代を必要とする被験体、または遺伝的に改変された細胞によりコードされ、あるいは産生される、KLF4、OCT4、SOX2、c-MYCもしくはn-MYCもしくはL-MYC、NANOG、GLIS1、またはそれらの任意の組み合わせの、タンパク質もしくは分子を必要とする被験体にに導入される。たとえば、ある実施形態において、ヒト人工多能性幹細胞は、被験体の幹細胞もしくは他の細胞を死滅、減少、または損傷させる化学療法を受けたがん患者に投与することができるが、その場合、人工幹細胞が損傷した細胞もしくは死んだ細胞に置き換わる。別の実施形態において、ヒト人工多能性幹細胞は、(脱分化因子のほかに)少なくとも1つの追加の治療的因子でトランスフェクトもしくは形質転換することができる。たとえば、本明細書のヒト人工多能性幹細胞が本明細書の方法により単離されて得られたら、その幹細胞を、治療的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドで形質転換することができる。このような方法および組成物は、望ましいポリペプチドを作製するための幹細胞バイオリアクターを提供することができるが、遺伝子デリバリーまたは遺伝子治療のために使用することもできる。この実施形態において、iPS細胞は、単離され、治療的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドで形質転換されて、その後被験体に移植もしくは投与することができるが、望ましい細胞型に分化させてから被験体に移植して送達してもよい。そのような条件下で、ポリヌクレオチドは、ポリペプチド産物のデリバリーのために被験体の内部で発現される。
【0076】
ヒト細胞が、レシピエント被験体に対して異種(非自己/同種異系)の起源に由来する場合、典型的には同時に免疫抑制治療が施され、たとえば、免疫抑制剤シクロスポリンまたはFK506が投与される。しかしながら、本明細書のヒト人工多能性幹細胞が未成熟な状態であるため、そうした免疫抑制治療は必要でない可能性がある。したがって、ある実施形態において、本明細書のヒト人工多能性幹細胞は、免疫調節(たとえば免疫抑制)療法なしで、レシピエントに投与することができる。あるいはまた、細胞を膜内にカプセル化することが可能であって、この膜は、液体の交換は可能にするが、細胞間の接触は阻止する。マイクロカプセル化された細胞の移植は、当技術分野でたとえば、Balladur et al., 1995, Surgery 117:189-94, 1995;およびDixit et al., 1992, Cell Transplantation 1:275-79において知られている。
【0077】
細胞は、抹消血液中に直接注入してもよいが、全身の他の部位、たとえば望ましい組織の中に、または腹膜中のマイクロキャリアビーズ上に沈着させてもよい。たとえば、10
2から10
9個の細胞を1回の手順で移植することが可能であって、追加の移植は必要に応じて実施することができる。
【0078】
ヒト人工多能性幹細胞の分化。または分化系列の決定された(有糸分裂を阻害された)細胞の脱分化は、ex vivoで誘導されることがありうるが、あるいはまた、in vivoで組織との接触によって(たとえば、線維芽細胞もしくは細胞マトリックス成分との接触によって)誘導されることもある。場合によっては、分化誘導薬または脱分化薬(たとえば、KLF4、OCT4、SOX2、c-MYCもしくはn-MYCもしくはL-MYC、NANOG、GLIS1、またはそれらの任意の組み合わせ、またはそれらのアゴニスト)を被験体に、同時に、または後から投与してもよい。
【0079】
膵島β細胞の移植が糖尿病患者に対する治療をもたらすことはすでに実証されている(Shapiro et al., 2000)。本明細書のヒト人工多能性幹細胞は、糖尿病を防ぐため、または治療するために、膵島細胞の代わりの起源を提供する。たとえば、本明細書の本明細書の人工多能性幹細胞を作製し、単離して、膵臓細胞型に分化させてから、被験体に投与することができる。あるいはまた、人工多能性幹細胞を被験体の膵臓に投与して、in vivoで膵島細胞に分化させることもできる。したがって、こうした細胞は、糖尿病の発症を防止し、または治療するための移植に有用である。
【0080】
本明細書は、本明細書に記載のin vitroの方法が、脱分化または再分化させた細胞の自家移植に使用できることを企図する(たとえば、細胞は同一個体から採取され、同一個体に戻される)。本明細書はさらに、本明細書に記載のin vitroの方法が非自家移植に使用できることを企図する。ある実施形態において、移植は遺伝的に関係のあるドナーとレシピエントの間で行われる。別の実施形態において、移植は遺伝的に無関係のドナーとレシピエントの間で行われる。前記のいずれの実施形態においても、本明細書は、脱分化させた細胞が培養で増殖可能であり、後で回収して使用するために保存することができることを企図する。同様に、本明細書は、再分化させた細胞が培養で増殖可能であり、後で回収して使用するために保存することができることを企図する。
【0081】
本明細書の組成物および方法は、分化した(分化系列の決定された)細胞を被験体から取り出し、培養下で脱分化させた後その個体に再導入するか、または培養中のまま操作して特定の分化経路に沿って再分化させる手順に応用することができる(たとえば、膵臓細胞、神経細胞、肝細胞、皮膚細胞、心血管細胞、胃腸細胞など)。次に、この再分化した細胞を個体に導入することができる。たとえば、分化した線維芽細胞を取り出し、(たとえば、KLF4、OCT4、SOX2、c-MYCもしくはn-MYCもしくはL-MYC、GLIS1、NANOG、またはそれらの任意の組み合わせを含有する本明細書のレプリコンの、異所性発現によって)脱分化させて、分裂増殖させたのち、(たとえば、KLF4、OCT4、SOX2、c-MYCもしくはn-MYCもしくはL-MYC、NANOG、GLIS1アンタゴニスト、もしくはそれらの任意の組み合わせ、または分化系列の決定された経路に沿ってhESCの分化を引き起こすことが知られている因子・要因(物理的刺激を含む)を用いて)再分化させることができる。ある実施形態において、その方法は、負傷または罹患した被験体から分化した細胞を取り出すことを含む。負傷した被験体から採取した細胞から脱分化させた細胞を、後に、その負傷もしくは罹患した被験体に戻して、損傷もしくは変性疾患を治療することができる。脱分化させた細胞は、損傷部位に再導入することができるが、損傷から離れた部位に再導入することもできる。同様に、細胞を負傷した被験体から採取し、in vitroで脱分化させて、in vitroで再分化させ、被験体に戻す移植をして、損傷もしくは変性疾患を治療することができる。
【0082】
本明細書のヒト人工多能性幹細胞は、哺乳類被験体から得られるサンプルから、単離することができる。被験体は、ヒトを含めて、任意の哺乳類(たとえば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ネコ、ウマ、霊長類)とすることができる。細胞サンプルは、たとえば、骨髄、胎児組織(胎児肝組織)、末梢血、臍帯血、膵臓などを含めて、多数のさまざまな起源のいずれからも得ることができる。
【0083】
もう1つの実施形態において、本明細書は、幹細胞集団、またはその子孫、ならびに幹細胞と子孫細胞の両方を含む混合集団を樹立および/または維持する方法、ならびにそのようにして作製された細胞の集団を提供する。本明細書のヒト人工多能性幹細胞と同様に、細胞の培養、または幹細胞の混合培養が樹立されると、その細胞集団は、組織形成の有無にかかわらず、細胞増殖をもたらす条件下で細胞密度が規定するように、新鮮培地への継代によってin vitroで分裂増殖する。このような培養法は、たとえば、細胞を、分化を誘導する特定の増殖因子(たとえば、IGF、EGF、FGF、VEGF、および/または他の増殖因子)を欠いた培地中で、KLF4、OCT4、SOX2、c-MYCまたはn-MYCまたはL-MYC、NANOG、GLIS1、またはそれらの任意の組み合わせの、刺激物質(たとえば、アゴニスト)の存在下で、KLF4、OCT4、SOX2、c-MYCまたはn-MYCまたはL-MYC、NANOG、GLIS1、またはそれらの任意の組み合わせ、あるいは前記の任意の組み合わせの存在下で、継代することを含む。線維芽細胞もしくは線維芽細胞様細胞を含む培養物、ならびに幹細胞および線維芽細胞を含む混合培養物は、十分な細胞密度に到達したら新鮮培地に写すことができる。典型的な接触阻害-アポトーシスを示さない幹細胞型もあり、密度が最大になると静止状態になる。したがって、適当な継代法を用いて、接触阻害および静止状態を減らすことができる。したがって、ある実施形態において、たとえば、新鮮培地を入れた新しい培養容器に細胞の一部を移す。こうした取り出し、または移入は、任意の培養容器内で行うことができる。
【0084】
本明細書のヒト人工多能性幹細胞が、上記のように、培養下で樹立されたならば、細胞「バンク」でそれを維持もしくは保存することができるが、このバンクは、通常の植え継ぎを必要とする細胞のin vitro連続培養物、または凍結保存された細胞を含んでいる。
【0085】
本明細書の幹細胞、または他の細胞の凍結保存は、Doyle et al., (eds.), 1995, Cell & Tissue Culture: Laboratory Procedures, John Wiley & Sons, Chichesterに記載のような、既知の方法にしたがって実施することができる。制限するものではないが、例として、細胞は、たとえば、約4-10 x 10
6 細胞/mlの密度で、5-10%グリセロールあり、またはなしで、15-20% ウシ胎仔血清(FBS) および10% ジメチルスルホキシド (DMSO)を追加して含む培地といった、「凍結用培地」中に懸濁することができるが。細胞をガラス製もしくはプラスチック製バイアル中に分注し、それを次に密封して、プログラム制御できるフリーザーまたはパッシブフリーザーの冷凍室に移す。最適な凍結速度は、実験的に決定することができる。たとえば、融解熱により-1℃/分の温度変化をもたらす凍結プログラムを用いることができる。細胞を容れたバイアルが-80℃に到達したら、そのバイアルを液体窒素保存区域に移す。凍結保存された細胞は数年にわたって保存することができるが、ただし少なくとも5年ごとに生存率の維持を確認すべきである。
【0086】
本明細書の凍結保存細胞がセルバンクの構成要素となっているが、幹細胞を含有する幹細胞培養物を生成するために、必要に応じて、その一部を融解して取り出した後、使用することができる。融解は通常、たとえばバイアルを液体窒素から37℃の水浴に移すことによって、急速に行われるべきである。融解したバイアル内容物は、ただちに滅菌条件下で、適当な培地を容れた培養容器に移し換えられるべきである。培地中の細胞は、初期密度が約1-3x10
5細胞/mlとなるよう調整されることが望ましい。培養したら、細胞は毎日、細胞増殖を検出するために、たとえば倒立顕微鏡で検査して、適当な密度に到達したらただちに継代培養することができる。
【0087】
本明細書のヒト人工多能性幹細胞を、必要に応じて細胞バンクから引き出して、新たな幹細胞の生成のために使用することができるが、それは、in vitro で、たとえば下記のような3次元組織培養として使用されるか、またはin vivoで、たとえば、新たな線維芽細胞もしくは組織が必要とされる部位への細胞の直接投与によって使用される。本明細書に記載されるとおり、本明細書のヒト人工多能性幹細胞を使用して、その細胞が被験体自身の血液もしくは他の組織から分離されている、その元の被験体用の新しい組織を作り出すことができる(すなわち自家細胞)。あるいはまた、本明細書の細胞を、広範なドナー細胞として使用して、任意の被験体用の新たな組織を作製してもよい(すなわち異種細胞)。
【0088】
いったん樹立されたら、幹細胞の培養物を用いて、新たな組織を生成する能力を有する子孫細胞および/または線維芽細胞を作製することができる。線維芽細胞または他の細胞型への幹細胞の分化と、それに続くそうした細胞からの組織の作製は、特定の外来の増殖因子によって、または幹細胞培養の培養条件(たとえば密度)の変更によって引き起こすことができる。細胞は多能性であるので、放射線照射を受けた被験体および/または化学療法を受けた被験体を再構成するために;または、特定の細胞系列のための細胞の供給源として、細胞の成熟、増殖、ならびに1つもしくは複数の選択された細胞系列への分化を提供することによって、そうした細胞を使用することができる。分化誘導のために使用することができる要因の例としては、エリスロポエチン;コロニー刺激因子、たとえばGM-CSF、G-CSFもしくはM-CSF;インターロイキン、たとえばIL-1、-2、-3、-4、-5、-6、-7、-8など;白血病抑制因子(LIF);造血幹細胞因子 (Stl);または同様の因子;特定の細胞系列に決定づけられるようになるよう幹細胞を誘導することができる、組織の決定された細胞もしくは他の分化系列の決定された細胞型との共培養、が挙げられる。
【0089】
別の実施形態において、ヒト人工多能性幹細胞は一般に、線維芽細胞、他の間質細胞、または実質細胞への分化を成功および/または向上させるため、および/または移植前後の代謝回転のために、特定のタイプの増殖因子の遺伝子を発現するよう操作される。
【0090】
本明細書の細胞を使用して、疾病もしくは外傷に起因する組織の修復もしくは交換を必要とする被験体を治療することができる。治療は、現在当技術分野で知られている、または将来開発されるべき任意の方法にしたがって、新たな組織を生成するために本明細書の細胞の使用、ならびにそうして作製された組織の使用を必要とする可能性がある。たとえば、本明細書の誘導された細胞(例として、KLF4、OCT4、SOX2、c-MYCもしくはn-MYCもしくはL-MYC、NANOG、Glis1、またはそれらの任意の組み合わせを発現する、異所性発現ベクターを含有する細胞)は、in vivoで新たな組織を生成するように、組織損傷部位に移植、植え込み、または別の方法で直接投与することができる。ある実施形態において、投与は、遺伝子改変幹細胞の投与を含む。
【0091】
ある実施形態において、本明細書の細胞を含有する製剤は、新たな組織の形成が求められる部位に直接注入するために調製される。制限するものではないが、例として、本明細書の細胞は、注射用のハイドロゲル溶液中に懸濁することができる。あるいはまた、細胞含有ハイドロゲル溶液を、たとえば、移植前に細胞を分散させたマトリックスを形成するように、型に入れて、硬化させてもよい。マトリックスが硬化したら、移植に先立って細胞が分裂増殖するように、細胞組成物を培養することができる。ハイドロゲルは、3次元開放格子構造を構築するように共有結合、イオン結合、または水素結合によって架橋された有機ポリマー(天然または合成)であって、その格子構造は水分子を捕捉してゲルを形成する。ハイドロゲルを形成するために使用することができる材料の例として、アルギン酸およびその塩などの多糖類、ポリホスファジン、およびポリアクリル酸塩があるが、これらはイオン結合で架橋されており、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレングリコールブロックコポリマーは、それぞれ温度またはpHで架橋されている。ハイドロゲル材料の合成法、ならびにこのようなハイドロゲルの調製法は当技術分野で知られている。
【0092】
このような細胞製剤は、1つもしくは複数の他の成分を追加して含有してもよく、これには、選ばれた細胞外マトリックス成分、たとえば当技術分野で既知の1つもしくは複数のタイプのコラーゲン、および/または増殖因子および薬剤が含まれる。細胞製剤に有効に組み入れることができる増殖因子は、当技術分野で知られている1つもしくは複数の組織増殖因子が挙げられ、たとえばTGF-βファミリーの任意のメンバー、IGF-Iおよび-II、成長ホルモン、BMP-13のようなBMP、などであるがそれに限定されない。あるいはまた、本明細書の細胞は、BMP-13もしくはTGF-βなどの増殖因子を発現して生成するように遺伝子操作することができる。同様に製剤に含めることができる他の成分には、たとえば、適当なpHおよび等張性をもたらすバッファー、滑沢剤、細胞を投与部位またはその近傍に保持する粘性物質(たとえば、アルギン酸塩、寒天、および植物ゴム)、および投与部位で望ましい効果をもたらすことができる他の細胞型(たとえば、組織の形成またはその物理化学的特性の強化もしくは改善、細胞の生存能力へのサポート、または炎症もしくは拒絶の抑制)がある。細胞がその部位から離れないように、適当な創傷被覆材で細胞を覆うことができる。こうした創傷被覆材は、当業者に知られている。
【0093】
あるいはまた、本明細書のヒト人工多能性幹細胞を、3次元フレームワークもしくはスキャフォールド上にシードし、その細胞が分化、成長して、マトリックスを満たすことを可能にするよう培養することができるが、ただちにin vivoで移植してもよく、そこで、シードされた細胞はフレームワークの表面上で増殖し、被験体の細胞と相まってin vivoで代替組織を形成することになる。このようなフレームワークは、任意の1つもしくは複数の増殖因子、薬剤、追加の細胞型、または形成を刺激するか、あるいは本明細書の実行を強化もしくは改善する他の成分と組み合わせて、移植することができる。
【0094】
さらに別の実施形態において、本明細書のヒト人工多能性幹細胞を、「バイオリアクター」の形で3次元培養系とともに使用して、この細胞およびその結果として生じる組織を、天然組織が通常経験する環境条件下で培養することによって、天然のヒト組織のきわめて重要な生化学的、物理的および構造的性質を有する組織構築物を作製することができる。バイオリアクターには数多くのデザインがある。典型的には、培養条件は、in vivoで遭遇することになるような生理的ストレスを、細胞含有構築物にかけることを含む。
【0095】
本明細書のヒト多能性幹細胞、その子孫、および組織は、さまざまな応用に使用することができる。これには、分化、未分化、または脱分化のいずれかの形の細胞の移植もしくは植え込みが含まれるがそれに限定されない。このような細胞および組織は、疾病もしくは外傷のために損なわれた組織、または正常に発生することができなかった組織を修復、代替、または増強するのに役立つ。
【0096】
本明細書にしたがって作製されたヒト人工多能性幹細胞および組織を使用して、損傷または破壊された組織を修復または代替し、あるいは既存の組織を増強することができる。
【0097】
それに加えて、本明細書の細胞もしくは組織を使用して、たとえば、化合物、アレルゲン、増殖/制御因子、医薬品、などの幹細胞に対する有効性および/または細胞毒性をin vitroで検査すること;幹細胞の生物学的活性の変化(たとえば、KLF4、OCT4、SOX2、c-MYCもしくはn-MYCもしくはL-MYC、NANOG、Glis1またはそれらの任意の組み合わせの発現もしくは活性、増殖能力、接着の変化)を測定することによって特定の疾病のメカニズムを解明すること;薬剤および/または増殖因子が幹細胞の生物学的活性(たとえば、KLF4、OCT4、SOX2、c-MYCもしくはn-MYCもしくはL-MYC、NANOG、Glis1またはそれらの任意の組み合わせの発現もしくは活性)を調節するために機能するメカニズムを検討すること;遺伝子治療、遺伝子導入、またはタンパク質の送達のために患者においてがんを診断してモニターすること;ならびに生物活性産物を作製することができる。
【0098】
ヒト人工多能性幹細胞はまた、幹細胞の分化および成熟に関わる因子の単離および評価に使用することができる。したがって、ヒト人工多能性幹細胞を、馴化培地などの培地の活性を測定するためのアッセイに使用して、液体中の細胞増殖活性、特定の細胞系列に特化することへの関与、などを評価ことができる。さまざまな系が利用できるが、さまざまな生理的ストレスに基づいたヒト人工多能性幹細胞の誘導分化に向けてデザインすることができる。
【0099】
本明細書のヒト人工多能性幹細胞、その子孫、およびそれに由来する組織をin vitroで使用して、医薬品、増殖/制御因子、抗炎症剤などの有効性および細胞毒性について、さまざまな物質をスクリーニングすることができる。この目的を達成するために、本明細書の細胞または組織培養物を、in vitroで維持して、テストすべき物質に暴露することができる。細胞毒性物質の活性は、培養下の幹細胞もしくはその子孫を損傷または死滅させるその能力で評価することができる。これは染色法によって容易に評価することができる。増殖/制御因子の効果は、たとえば、総細胞数および分画細胞計数によって、in vitroで生きた細胞の数を分析することにより評価することができる。これは、型に特異的な細胞性抗原を限定する抗体を用いた免疫細胞化学的方法の使用を含めて、標準的な細胞学的および/または組織学的方法によって達成することができる。本明細書の細胞に及ぼすさまざまな薬剤の影響は、懸濁培養または3次元系のいずれかで評価することができる。ある態様において、被験物質の、本明細書のヒト人工多能性幹細胞に及ぼす影響を分析することができる。
【0100】
当該の遺伝子産物を発現する幹細胞、またはin vitroでそれから作製される組織を、そうしなければその遺伝子産物が不足する被験体に移植することができる。たとえば、さまざまなタイプの血管疾患もしくは血管障害の症状を予防または改善することができる産物を発現する遺伝子、または炎症性疾患を予防または促進する遺伝子が特に興味深い。ある実施形態において、本明細書の細胞は、抗炎症性遺伝子産物を発現するように遺伝子操作されるが、この産物は炎症反応に起因する、移植の失敗、またはさらなる組織の変性変化のリスクを減らす役割を果たすものである。たとえば、本明細書の幹細胞は、1つもしくは複数の抗炎症性遺伝子産物を発現するように遺伝子操作することができるが、この産物にはたとえば、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、TNF、IL-1、IL-2、もしくは他の炎症性サイトカインを中和する抗体のイディオタイプに対応する、ペプチドもしくはポリペプチドが含まれる。IL-1は、プロテオグリカン、ならびにII、IX、およびXI型コラーゲンの合成を低下させることが判明している(Tyler et al., 1985, Biochem. J. 227:69-878; Tyler et al., 1988, Coll. Relat. Res. 82:393-405; Goldring et al., 1988, J. Clin. Invest. 82:2026-2037;ならびにLefebvre et al., 1990, Biophys. Acta. 1052:366-72)。TNFもプロテオグリカンおよびII型コラーゲンの合成を阻害するが、ただしそれはIL-1より大幅に弱いものである(Yaron, I., et al., 1989, Arthritis Rheum. 32:173-80; Ikebe, T., et al., 1988, J. Immunol. 140:827-31; and Saklatvala, J., 1986, Nature 322:547-49)。また、たとえば、本明細書の細胞を操作して、宿主による移植片の拒絶を抑える補体制御タンパク質をコードする遺伝子を発現させることができる。たとえば、McCurry et al., 1995, Nature Medicine 1:423-27を参照されたい。別の実施形態において、ヒト人工多能性幹細胞を操作して、血管新生因子を発現するか、またはその発現を引き起こす、遺伝子もしくはポリヌクレオチド配列を組み入れることができる。
【0101】
本明細書の人工幹細胞は、ヒト多能性幹細胞表現型に関連する1つもしくは複数のマーカーを発現し、または分化した細胞(たとえば、自己複製能力、再生能力、または分化能力の低下した細胞)および/またはニューロン起始細胞に関連する1つもしくは複数のマーカーを欠いており、あるいはその両方である。ある分子は、それが望ましい細胞型の十分高い割合の細胞で見いだされ、望ましくない細胞型の十分低い割合の細胞で見いだされるならば、望ましい細胞型の「マーカー」である。マーカーを有する細胞集団の細胞のための選抜によって、望ましい細胞型と望ましくない細胞型の両方を含む細胞集団から、望ましい細胞型の望ましい精製レベルを達成することができる。マーカーは、望ましい細胞型のうち、たとえば、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、もしくはそれ以上で呈示され、望ましくない細胞型のうち50%未満、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、1%もしくはそれ以下で呈示される可能性がある。
【0102】
上記のように、本明細書の人工幹細胞、または分化した人工幹細胞は、分子によって特異的に認識される特定のマーカーの有無によって特徴付けられる。したがって、ある態様において、本明細書は、本明細書の人工幹細胞を標識する方法を提供する。ある実施形態において、ヒト人工多能性幹細胞は、本明細書の人工幹細胞と関連するマーカーを特異的に認識する分子(たとえば抗体)で標識される。別の実施形態において、マーカー(たとえばTRA-1-81)と特異的に結合する分子がそのマーカーと結合するのを可能にする条件下で、細胞集団をその分子と接触させるが、この細胞集団は、前記マーカーを有する少なくとも1つの幹細胞を含む。別の実施形態において、マーカーと特異的に結合する分子がそのマーカーと結合するのを可能にする条件下で、細胞集団をその分子と接触させるが、この細胞集団は、マーカーのない幹細胞、およびマーカーを有する非幹細胞を含む。使用される分子は、たとえば、抗体、抗体誘導体、またはリガンドとすることができる。分子は、必要に応じて、追加の部分、たとえば、検出可能な部分(たとえば、蛍光標識もしくは発色標識)、または標識された細胞の単離に役立つ部分(たとえば、他の分子もしくは磁性粒子が結合する部分)を含んでいてもよい。
【0103】
ある実施形態において、形質転換された体細胞の集団は、腫瘍拒絶抗原1-61および1-81(TRA-1-60、TRA-1-81)の生細胞染色を受ける。TRA-1-60およびTRA-1-81は、たとえばChemicon International, Inc (Temecula, Calif., USA)から、市販品を購入することができる。モノクローナル抗体を用いたこれらの抗体の免疫学的検出を用いて、他のマーカーと組み合わせて多能性幹細胞の特性を明らかにした(Shamblott M. J. et al. (1998) PNAS 95: 13726-13731; Schuldiner M. et al. (2000). PNAS 97: 11307-11312; Thomson J. A. et al. (1998). Science 282: 1145-1147; Reubinoff B. E. et al. (2000). Nature Biotechlnology 18: 399-404; Henderson J. K. et al. (2002). Stem Cells 20: 329-337; Pera M. et al. (2000). J. Cell Science 113: 5-10)。ある実施形態において、KLF4、OCT4、SOX2、c-MYCもしくはn-MYCもしくはL-MYC、ならびに任意選択もしくは代替としてNANOGまたはGlis1を含有する、少なくとも1つの異所性RNAベクターで形質転換された体細胞の集団は、TRA-1-81またはTRA-1-60発現を有する細胞について濃縮される。他の実施形態において、レトロウイルスベクターと関連する検出可能なマーカーのない細胞も濃縮することができる。
【0104】
別の態様において、本明細書は、本明細書の人工幹細胞を単離する方法を提供する。本明細書のヒト人工多能性幹細胞は、たとえば、ヒト人工多能性幹細胞上のマーカー(たとえば、TRA-1-81、TRA-1-60、マーカーの組み合わせ)に結合する分子(たとえば、抗体、抗体誘導体、リガンド、またはFC-ペプチド融合分子)を利用し、それによってその分子と結合する細胞をポジティブに選択すること(すなわち正の選択)によって単離することができる。正の選択の方法の、他の例には、望ましい細胞型と望ましくない細胞型の混合集団において望ましい細胞型の増殖を優先的に促進する方法がある。あるいはまた、望ましい細胞型には存在しないが、望ましくない細胞型には存在するマーカーと結合する分子を用いて、そうしたマーカーを含有する望ましくない細胞を望ましい細胞から取り除くことができる(すなわち負の選択)。他の負の選択の方法としては、望ましい細胞型と望ましくない細胞型の混合集団において望ましくない細胞型の増殖を優先的に止め、または抑制することが挙げられる。したがって、負の選択、正の選択、またはそれらの併用によって、幹細胞の濃縮された集団を生じさせることができる。
【0105】
分離のための方法には、抗体でコーティングされた磁気ビーズを用いた磁気分離、アフィニティクロマトグラフィー、モノクローナル抗体に結合した細胞毒性物質、またはモノクローナル抗体と併用されるそのような物質、たとえば補体および細胞毒素、ならびに固体マトリックス(たとえばプレート)に付着した抗体との「パニング(panning)」、または他の便利な方法を含めることができる。精密な分離をもたらす技術としては蛍光励起セルソーターがあるが、これはさまざまな程度の精巧さ、たとえば、多数のカラーチャンネル、低角度および鈍角の光散乱検出チャンネル、およびインピーダンスチャンネルを有することができる。好都合なことに、特定の細胞型の分離しやすさを考慮して、抗体を、直接分離を可能にする磁性ビーズ、支持材に結合したアビジンもしくはストレプトアビジンで取り除くことができるビオチン、蛍光励起セルソーターで使用することができる蛍光色素、などといったマーカーと結合させることができる。ヒト人工多能性幹細胞の生存能力に対して過度に不利益でない任意の方法を使用することができる。ある実施形態において、細胞をマーカーに対する抗体(たとえばTRA-1-81抗体)とともにインキュベートし、マーカーに対して陽性に染まる細胞を手作業で選択して継代する。
【0106】
濃縮の方法を組み合わせて使用して、精製もしくは濃縮の期間または効率を改善することができる。たとえば、目的の細胞を指示しないマーカーを有する細胞を除去する濃縮ステップの後、蛍光励起セルソーター(FACS)または他の高い特異性を有する方法によって細胞をさらに分離または濃縮することができる。マルチカラー分析をFACSとともに使用することができる。特定の抗原に対する染色レベルもしくはその欠如に基づいて、細胞を分離することができる。蛍光色素を用いて、特定の抗原に特異的な抗体を標識することができる。こうした蛍光色素には、フィコビリタンパク質、たとえばフィコエリトリンおよびアロフィコシアニン、フルオレセイン、Texas Redなどがある。
【0107】
任意の細胞型特異的マーカーを使用して、特定の細胞型を求めて、または特定の細胞型に反して選択することができる。濃縮に有用な人工幹細胞マーカーは、TRA-1-81などの発現されたマーカー、ならびにレトロウイルスベクターもしくは他の外来ベクターと関連するマーカー(たとえばGFP)の欠如を含む。
【0108】
幹細胞が単離されたら、必要に応じて、支持細胞層あり、またはなしで、適当な培地中でその細胞を増殖させることができる。さらに、本発明のヒト人工多能性幹細胞は、バイオリアクター系で培養してもよい。
【0109】
本明細書のヒト人工多能性幹細胞が上記のように培養下で樹立されたら、それを、通常の継代が必要な細胞のin vitro連続培養物、または凍結保存された細胞のいずれかを含む細胞「バンク」で維持もしくは保存することができる。実施形態によっては、バンク化された細胞を被験体の自家治療に使用する。
【0110】
線維芽細胞は、線維芽細胞の起源となるべき適当な臓器もしくは組織を構成要素に分解することによって、容易に単離することができる。これは、当業者に公知の方法を用いて容易に達成することができる。たとえば、組織もしくは臓器を機械的に構成要素に分解する、ならびに/または消化酵素および/もしくはキレート剤で処理することができるが、このキレート剤は、隣り合う細胞間の結合を弱め、目に見えるほど細胞を破損することなしに、組織を分散させて個々の細胞の懸濁液とすることを可能にするものである。酵素的な解離は、組織を刻み、多くの消化酵素のいずれかを単独で、または組み合わせて使用して、刻んだ組織を処理することによって達成することができる。上記酵素には、トリプシン、キモトリプシン、コラゲナーゼ、エラスターゼ、および/またはヒアルロニダーゼ、DNアーゼ、プロナーゼ、ディスパーゼなどがあるがそれらに限定されない。機械的破砕も、多くの方法によって達成可能であって、その方法には、ほんの数例を挙げれば、グラインダー、ブレンダー、篩、ホモジナイザー、圧力セル、または超音波処理装置(insonator)の使用があるがそれに限定されない。組織の脱凝集法の総説として、Freshney, Culture of Animal Cells. A Manual of Basic Technique, 2d Ed., A.R. Liss, Inc., New York, 1987, Ch. 9, pp. 107-126を参照されたい。
【0111】
組織が個々の細胞の懸濁液にまで分解されたら、懸濁液を亜集団に分画することが可能であり、この亜集団から、線維芽細胞および/または他の間質細胞および/またはエレメントを得ることができる。これも細胞分離の標準的な技術を用いて達成することが可能であり、その技術には、特定の細胞型のクローニングおよび選択、不要な細胞の選択的破壊(負の選択)、混合集団における細胞凝集性の差異に基づく分離、凍結融解法、混合集団における細胞の接着性の差異、濾過、従来型およびゾーン遠心分離、遠心水簸(向流遠心分離)、単位重力分離、向流分配、電気泳動、および蛍光励起セルソーティングが含まれるが、それに限定されない。クローン選択および細胞分離法の総説として、Freshney, Culture of Animal Cells. A Manual of Basic Techniques, 2d Ed., A.R. Liss, Inc., New York, 1987, Ch. 11 and 12, pp. 137-168を参照されたい。
【0112】
線維芽細胞の単離は、たとえば、次のように実施することができる:新鮮な組織サンプルを十分に洗浄し、血清を除去するためにハンクス液(HBSS)中で細かく切断する。細かく切断した組織を、トリプシンなどの解離酵素の新調製溶液中で1-12時間インキュベートする。このインキュベーション後、解離した細胞を懸濁し、遠心によりペレット状にして、培養ディッシュ上に蒔く。すべての線維芽細胞は他の細胞に先んじて付着するので、適当な間質細胞を選択的に単離して増殖させることができる。
【0113】
脱分化した細胞を、in vivoで移植する、もしくは植え込むために使用すべき場合、患者自身の組織から間質細胞を得ることは有用である。
【0114】
オリゴヌクレオチドプローブおよびプライマーは、本明細書な記載のさまざまな因子の発現を確認するために使用され、同様にクローニングおよび増幅の手順に使用することができる。オリゴヌクレオチドプローブもしくはプライマーは、長さが8から2000ヌクレオチドまでの核酸分子を意味する。より詳細には、これらのオリゴヌクレオチドの長さは、8、10、15、20、もしくは30から100ヌクレオチドまでの範囲とすることができるが、典型的には約10から50までとなる(たとえば、15から30ヌクレオチド)。特定の条件下での、本明細書のアッセイにおけるオリゴヌクレオチドの適当な長さは、当業者が実験的に決定することができる。
【0115】
オリゴヌクレオチドプライマーおよびプローブは任意の適当な方法で調製することができるが、その方法には、たとえば、適当な配列のクローニングおよび制限、ならびに既知のKLF4、OCT4、SOX2、c-MYCもしくはn-MYCもしくはL-MYC、NANOG、またはそれらの任意の組み合わせのポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列に基づく直接化学合成が含まれる。他種由来のさまざまなオルソログが当技術分野で知られている。
【0116】
オリゴヌクレオチドプローブおよびプライマーは、核酸アナログ、たとえば、ペプチド核酸、ロックド核酸(LNA)アナログ、およびモルホリノアナログを含んでいてもよい。プローブの3'末端は、KLF4、OCT4、SOX2、c-MYCもしくはn-MYCもしくはL-MYC、NANOG、Glis1、またはそれらの任意の組み合わせの核酸の検出に役立つ、捕捉もしくは検出可能な標識によって官能基を有することができる。
【0117】
本明細書のオリゴヌクレオチドもしくは核酸はいずれも、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、または化学的手段で測定することができる検出可能な標識を組み込むことによって標識することができる。たとえば、このような標識は、放射性物質(
32P、
35S、
3H、
125I)、蛍光色素(5-ブロモデオキシウリジン、フルオレセイン、アセチルアミノフルオレン、ジゴキシゲニン)、ビオチン、ナノ粒子などを含んでいてもよい。このようなオリゴヌクレオチドは典型的には3'および5'末端で標識される。
【0118】
オリゴヌクレオチドプライマーおよびプローブは、固体支持体に固定化することができる。固体支持体は当業者に知られており、反応トレイのウェルの壁、試験管、ポリスチレンビーズ、磁性ビーズ、ニトロセルロースストリップ、膜、ラテックス粒子などの微粒子、ガラスなどがある。固体支持体は必ずしも重要ではなく、当業者が選択することができる。したがって、ラテックス粒子、微粒子、磁性もしくは非磁性粒子、膜、プラスチック試験管、マイクロタイターウェルの壁、ガラス、またはシリコンチップなどはすべて好適な例である。固相にオリゴヌクレオチドを固定化するために適当な方法は、イオン結合的、水素結合的、共有結合的な相互作用などである。固体支持体は、捕捉試薬を引きつけて固定化することができる支持体固有の能力で選択することができる。オリゴヌクレオチドプローブおよびプライマーは、固体支持体上に個別に、または一つの固体支持体に対して本明細書の約2-10,000個の別個のオリゴヌクレオチドからなるグループとして、付着もしくは固定化することができる。KLF4、OCT4、SOX2、c-MYCもしくはn-MYCもしくはL-MYC、NANOG、Glis1、またはそれらの任意の組み合わせを検出または増幅するために、本明細書の多数のオリゴヌクレオチドプライマーもしくはプローブを含む基質を使用することができる。たとえば、オリゴヌクレオチドプローブは、Affymetrixにより販売され、米国特許第5,143,854号;PCT公報WO 90/15070および92/10092に記載されるような、オリゴヌクレオチドチップに使用することが可能であって、この開示は参考として本明細書に組み入れられる。これらのアレイは、機械的合成法もしくは光による合成法を用いて作製することができるが、その方法はフォトリソグラフィー法と固相オリゴヌクレオチド合成法の組み合わせを組み込んでいる。本明細書はさらに、KLF4、OCT4、SOX2、c-MYCもしくはn-MYCもしくはL-MYC、NANOG、またはGlis1ポリペプチドに特異的に結合することができる抗体を検討する。
【0119】
基準の、または対照の集団は、一般集団を代表すると予測される被験体もしくは個体の一群を表す。テストサンプルは、サンプル中のKLF4、OCT4、SOX2、c-MYCもしくはn-MYCもしくはL-MYC、NANOG、Glis1、またはそれらの任意の組み合わせの量を測定し、その量を対照サンプルと比較する。
【0120】
別の態様において、本明細書は、分化系列決定に沿って幹細胞を分化させる方法を提供するが、その方法は、KLF4、OCT4、SOX2、c-MYCもしくはn-MYCもしくはL-MYC、NANOG、Glis1、またはそれらの任意の組み合わせの発現もしくは活性を阻害することを含む。これに関して有用な分化剤には、たとえば、抗体、アンチセンスオリゴヌクレオチド、RNAi構築物、またはリボザイムがある。
【0121】
本明細書の方法に有用な培養技術は、国際特許公開番号WO 2010/120785に開示されており、これは参考として本明細書に組み入れられる。
【0122】
以下の実施例は、本明細書の特定の態様を説明するために、ならびに本明細書の実施に際して当業者を支援するために提供される。これらの実施例は、いかなる形においても、本明細書の範囲を限定すると考えられるべきでない。
(実施例)
【実施例1】
【0123】
細胞。BJ包皮線維芽細胞およびSTO細胞株はATCCより入手した。初代ヒト包皮線維芽細胞(HFF)およびHUES-9ヒトES細胞株は既存の供給元から入手した。BJ、HFF、およびSTOは、10% FBS、MEM Non-Essential Amino Acids (NEAA)、ピルビン酸塩、ペニシリン、およびストレプトマイシンを含有するDMEM中で培養した。HUES-9およびiPS細胞は、ES培養培地を用いて、20% Knockout SR、GlutaMAX、NEAA、2-メルカプトエタノール(すべてInvitrogen製)、ペニシリン、ストレプトマイシン、およびbFGF(10 ng/ml)を含有するKnockout D-MEM中で培養する。STOフィーダー細胞は、マイトマイシンC処理(10μg/ml、Sigma)によって調製した。iPS細胞クローンおよびHUES-9のフィーダーフリー培養のために、細胞はMatrigel(商標名)(BD Bioscience)コートしたウェルで継代し、ES培養培地を用いてSTOフィーダー細胞から調製された馴化培地中で培養した。
【0124】
プラスミド構築。OCT4(受入番号NM_002701)、c-MYC(受入番号NM_002467)、およびGLIS1 (受入番号BC104911)をコードするcDNAはOpen Biosystemsから入手した。SOX2(受入番号NM_003106)、KLF4(受入番号NM_004235)、NANOG(受入番号BC099704)はATCCから入手できる。B18R(受入番号D01019)はAddgeneから入手した。前記受入番号のそれぞれに関連するポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列は、参考として本明細書に組み入れられる。cDNAは、PCR増幅の鋳型として使用して、制限酵素部位および/またはKozak配列を付加し、cDNA配列を確認するためにpBluescript SK+ベクターにクローニングした。次に、cDNAを、mRNA合成のためにpTNTベクター(Promega)にクローニングし、レトロウイルス作製のためにpCX4bsr1にクローニングした。ウイルス性2Aペプチド配列を用いたマルチシストロン性発現のために、F2Aオリゴヌクレオチド、T2Aオリゴヌクレオチド、およびE2Aオリゴヌクレオチド(表1)をアニールし、それぞれpBluescript SK+ベクターのEcoRI/SpeI、SpeI/XbaI、およびXbaI/NotI部位にクローニングした。初期化因子のcDNAをインフレームで2Aペプチド配列につなぎ、次にpVEE-S-IRES-Puroにクローニングした。pVEE-S-IRES-Puroは、初期化因子をクローニングするためにp5’VEE/S/GFP/Pac3から構築した。手短に述べると、p5’VEE/S/GFP/Pac3のGFP/Pac遺伝子および一部の3'UTRをXbaI/MfeI消化によって欠失させた後、複数のクローニング部位(MCS; NdeI、AscI、BbvCI、ClaI、MfeI、FseI、およびNotI)(表1)、IRES、およびピューロマイシン耐性遺伝子をpCX4puroから導入した。このベクターは、便宜上pVEE-IRES-Puroと名称を変更した。T7 RNAポリメラーゼを用いてRNAを作製するために、鋳型としてVEEベクターのSacI/BstZ17I断片を使用するPCR(表1)によって、SP6プロモーター(ATTTAGGTGACACTATAG(たとえば配列番号31の16844-16861を参照されたい))をT7プロモーター(TAATACGACTCACTATAG(たとえば配列番号32の16843-16860を参照されたい))で置き換えた。
【0125】
表1:PCRクローニングプライマー
【0126】
【表1】
mRNAおよびレプリコンRNA合成。pTNT-B18Rプラスミドを、B18R mRNA合成のために使用した。pTNTベクターは、5'βグロビンリーダー配列および合成ポリAテール(30塩基)を含有し、遺伝子の発現を増強する。30塩基のポリAではmRNAの安定化には不十分なので、追加のポリAテールをポリAテールポリメラーゼにより付加した。B18R-mRNA合成は、RiboMAX Large Scale RNA Production System-SP6 (Promega)キットを使用し、改変ヌクレオチドを用いて行った。改変は、UTPの100%をプソイドウリジン(Psi)(TriLink Biotechnologies)で置き換えることによって、またはUTPおよびCTPの25%をそれぞれPsiおよび5-メチルシチジン(5mc)(TriLink Biotechnologies)で置き換えることによって、実行された。転写反応後、DNA鋳型はデオキシリボヌクレアーゼ消化により除去された。mRNAは、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール(PCI)およびクロロホルム/イソアミルアルコール(CI)を用いた抽出によって精製し、次に酢酸アンモニウム沈殿(2.5M)により濃縮したが、これは、メーカーのプロトコール(Epicentre)によれば、タンパク質、DNA、および取り込まれないNTPの大半を上清中に残す一方で、RNAを選択的に沈殿させるものである。典型的には、100μlの反応スケールに対して10μgの線状化プラスミドを使用し、約400μg mRNAを得た。mRNAの5'キャッピングのために、ScriptCap m7G Capping System(商標名)を使用し、ScriptCap 2’-O-メチルトランスフェラーゼ(Epicentre、現在CELLSCRIPTより入手可能)を用いてCap 1-キャップ化RNAを作製し、キャッピングが定量的に完了するまで続行した。5'キャッピングの後、mRNAを酢酸アンモニウム沈殿で簡単に精製し、次に追加のポリAテールを、ポリAポリメラーゼ(Epicentre、現在CELLSCRIPTより入手可能)によって付加した。5'キャッピングおよびポリAテールを有するmRNAは、PCIおよびCIによる抽出、次いでアンモニウム沈殿によって精製した。レプリコンRNA合成のために、鋳型プラスミドを、MluIによる消化で線状化し、その後、mRNA合成と同様にRNA合成のために使用した。RNAレプリコン合成は、RNA修飾なしで行った。デオキシリボヌクレアーゼ処理後、合成されたRNAは、有機溶媒による精製なしで酢酸アンモニウム沈殿により精製したが、それは高分子RNAの大半が有機溶媒抽出後に中間相にトラップされるからである。レプリコンRNAは、上記のように5'キャッピングおよびポリAテールを付加し、次に有機溶媒精製なしに酢酸アンモニウム沈殿で精製した。すべてのRNAをRNA Storage Solution (Ambion)中に1μg/μlの濃度で再懸濁し、使用するまで-80℃で保存した。
【0127】
B18R馴化培地(B18R-CM)の調製。Lipofectamine 2000 (Invitrogen)を用いて、25%二重改変B18R mRNA(6ウェルプレートの1ウェルに対して1μg)をHFFにトランスフェクトした。3時間後、15% FCS(ES細胞用品質、Millipore)、ペニシリン、およびストレプトマイシンを含有するAdvanced DMEM (Invitrogen)中で、またはES培養培地中で細胞を培養した。培養培地を翌日収集し、濾過して細胞培養培地で5倍に希釈した後、B18R-CM(20% B18R-CM)として使用した。B18R-CMの活性は、mRNAの反復トランスフェクションの効率によって簡易に評価した。
【0128】
レプリコントランスフェクションによるiPS作製。BJまたはHFFを第0日に6ウェルプレートに継代し、第1日に約90-100%の培養密度(4 x10
5 細胞/ウェル)まで培養した。1μg RNA混合物(VEE RNAレプリコンのB18R mRNAに対する比、3:1)は、Lipofectamine 2000を用いてトランスフェクトした。25%二重改変B18R mRNAまたは100% Psi改変mRNAを同時トランスフェクションのために使用した。3時間後、トランスフェクション培地を、15% FCS (ES細胞用品質、Millipore)、ペニシリン、およびストレプトマイシンを含有するAdvanced DMEM (Invitrogen)に変えた。第2日から細胞は、B18R-CMおよびピューロマイシン(0.8μg/ml)を含有する培地中で培養した。培地は毎日交換し、トランスフェクションは3日ごと(第1、4、7、10、または14日)に実施した。第7日からES培地を使用した。ピューロマイシンは第7日または第11日に取り除いた。最終トランスフェクションの翌日、細胞をSTOフィーダーに継代し、B18R-CM含有ES培地で培養した。ES培地は毎日交換し、iPS細胞コロニーが生じるまで培養した。コロニーは、コロニー単離のために機械的に採取するかまたは、Alkaline Phosphase Detection kit (Millipore)、もしくはAPバッファー(100 mM Tris、100 mM NaCl、および50 mM MgCl
2, pH 9.5)中に1 mg/ml FastRed TR (Sigma)および0.4 mg/ml リン酸1-ナフチル(Sigma)を含有する、手作業で調製されたAP-染色溶液を用いて染色した。
【0129】
RNAレプリコンを検出するためのRT-PCR。トータルRNAはRNeasy mini kit(Qiagen)またはTRIzol(Invitrogen)を用いて単離した。TRIzol精製RNAを次に、酢酸アンモニウム沈殿により精製した。cDNAの合成は、1μgのトータルRNAから、QuantiTect Rev. Transcription Kit(Qiagen)またはiScript cDNA synsethis kit(Bio-Rad)を用いて行った。20μl RT反応液のうち1-2μlをPCR増幅に使用した。PCRは、PCRxエンハンサー (Invitrogen)を添加したTaq DNAポリメラーゼ(NEB)を用いて行った:初期変性94℃にて3分;94℃25秒間、56℃25秒間、68℃30秒間を36サイクル;続いて72℃5分間。RT-PCRに使用したプライマー配列は表1に記載した。
【0130】
TaqMan RT-PCR。RNeasy mini kitを用いて、iPSCクローン、HUES-9、BJ、およびHFFのフィーダーフリー培養からトータルRNAを単離した。TaqMan RT-PCR反応は、RNA-to-Ct one-step reaction (Applied Biosystem)を用いてメーカーのプロトコールにしたがって行った。反応当たり10 ngのトータルRNAを使用した。プライマーおよびプローブは、AB TaqMan Gene Expression Assay catalog (GAPDH, Hs99999905_m1; POU5F1 Hs03005111_g1; Sox2 Hs01053049_s1; DNMT3B Hs00171876_m1; TERT Hs00972656_m1; Lin28 Hs00702808_s1; Nanog Hs02387400_g1; TDGF1 Hs02339499_g1)より入手した。定量的PCR反応は、三連で実施し、条件は以下の通りとした:20分55℃、10分95℃、40サイクルの95℃0.15分、65℃1分。データは、ΔΔCt法を用いて7300 リアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems)で解析した。
【0131】
バイサルファイトゲノムシークエンシング。ゲノムDNAの非メチル化シトシンのウラシルへの変換は、EZ DNA Methylation-Gold Kit (Zymo Research)を用いてメーカーのプロトコールにしたがって行った。変換されたゲノムDNAは次に、ZymoTaq(登録商標)DNA ポリメラーゼ(Zymo Research)によるOCT4またはNANOGのプロモーター領域のPCR増幅のために使用した。PCR産物は、pBluescript SK+からTベクターにクローニングした後、配列決定した。PCRに使用したプライマー配列は表1に記載した。
【0132】
テラトーマ形成。iPSCクローンはSTOフィーダー細胞により培養した。細胞をAccutase処理によって集めた後、ヌードマウスの後肢筋肉もしくは背側の脇腹に、筋肉内注入または皮下注入した(注入1回についておよそ10 cmディッシュの培養細胞)。注入の5-8週間後、腫瘍を切り出して4%パラホルムアルデヒドで固定した。腫瘍をパラフィン中に包埋して薄片に切り分けた後、ヘマトキシリンおよびエオジン(H&E)染色、または三胚葉マーカーの免疫染色を行った。外胚葉のマーカーにはAE1/AE3(サイトケラチン)、NF-1(神経細胞)、およびGFAP(神経細胞)、中胚葉のマーカーにはDesmin(筋細胞)、そして内胚葉のマーカーにはAFP(原始内胚葉および完全に発達した形態の内胚葉)を使用した。
【0133】
免疫蛍光染色。細胞をPBSで2回洗浄し、10分間4%パラホルムアルデヒドで固定した。洗浄した細胞を0.1% Triton X-100のPBS溶液で10分間処理した。2% BSAで室温(RT)にて1時間、細胞をブロックしてから、一次抗体とともにPBS中で4℃にて一晩インキュベートした。細胞を洗浄して二次抗体とともにインキュベートし、続いてDAPIまたはHoechst 33342とともにインキュベートした後、洗浄してPBS中で保存した。ウサギ抗Oct4、ヤギ抗Nanogおよび抗Sox2、マウス抗SSEA4、抗Tra-1-60および抗Tra-1-81抗体などの一次抗体は、1:100から1:500希釈で使用した。Alexa Fluor 488 (BD Biosciences)二次抗体は、1:800希釈で使用した。
【0134】
抗体。本研究で使用した抗体は以下の通りである;抗OCT4 (sc-9081)、抗KLF4 (sc-20691)、抗GLIS1 (sc-67584)、抗c-MYC (sc-42)、抗LIN28 (sc-54030)、TRA-1-60 (sc-21705)、SSEA1 (sc-21702)およびSSEA4 (sc-21704)はSanta Cruz製;抗SOX2 (AF2018)、および抗NANOG (AF1997)はR&D Systems製;TRA-1-81 (09-0011)はStemgent製;AE1/AE3 (RB-9010P0)、Desmin (MS-376-S0)、AFP (RB-365)およびGFAP (RB-087)はLabvision製;NF-1 (NB-300-155)はNovus Biological製である。
【0135】
RNA配列。トータルRNAをRNeasy mini kit (Qiagen)により単離し、各細胞のcDNAライブラリーを、当技術分野で知られているように合成して解析した。
【0136】
RNAに基づくiPS作製法を開発するために:1) 限られた回数の細胞分裂のついて自己複製する能力を有する一本鎖RNA分子種を利用することによってトランスフェクションの回数を減らすアプローチ;2) 少なくとも4つの初期化因子のオープンリーディングフレーム(ORF)をコードすることができるアプローチ;ならびに3) 複数回の細胞分裂にわたって高い閾値レベルで4つすべてのRF遺伝子を常に発現させるアプローチに全力を注いだ。4つすべてのRFを異所性に発現させるために、改変非感染性自己複製ベネズエラウマ脳炎(VEE)ウイルスRNAレプリコンを使用したが、これは現在、ワクチン開発のための発現プラットフォームとして検討中である。VEEレプリコンは、DNA中間体を利用しない、5'キャップおよびポリAテールを有する細胞性mRNAを模した、プラス鎖の一本鎖RNA分子種であるので、ゲノム組込の可能性はない。VEEは、3'末端にあるウイルスの構造タンパク質ORFから離れたRNAの5'末端に、4つの非構造複製複合体タンパク質(nsP)を1つのORFとしてコードする(
図1A)。Petrakovaらは、3'構造タンパク質ORFをGFPで置き換えることによって外来タンパク質を表すことができることを示した。しかしながら、一本鎖VEE RNAに細胞を暴露すると、強いIFNα/β自然免疫応答を生じ、それはこのアプローチを厳しく制限するものであった。
【0137】
VEE RNAレプリコンを評価するために、3'ORFをGFPに続いて配列内リボゾーム進入部位(IRES)およびピューロマイシン耐性遺伝子(Puror)で置き換えた(
図1a)。VEE-GFP RNAは、標準的なSP6ポリメラーゼin vitro転写キット、続いて5'キャップ形成およびポリAテール付加によって作製され、高収率完全長11,500 nt RNA転写物をもたらした。VEE-GFP RNAに対する自然免疫応答を軽減するために、WesternワクシニアウイルスのB18Rタンパク質を使用したが、これはI型IFNと結合して中和する。組換えB18Rタンパク質存在下の、またはB18R mRNAの同時トランスフェクションを伴う、初代ヒト包皮線維芽細胞(HFF)のVEE-GFP RNA単独によるトランスフェクションの比較を行った。一本鎖RNAに暴露された細胞に対する強い自然免疫応答の誘導と符合して、B18Rの非存在下では、GFR発現はほとんど、ないしまったく観察されなかった(
図1b)。組換えB18Rタンパク質の添加はGFP発現を増加させたが、GFP蛍光レベルはごく低いものであった。しかしながら、VEE-GFP RNAレプリコンとB18R mRNAとの同時トランスフェクションは、HFFにおいて高レベルのGFP発現をもたらし(
図1b-d)、これは、VEE RNAレプリコンからのタンパク質の効率的発現のためにはB18Rが必要であることを示す。
【0138】
iPS細胞の作製には、7日より長い期間、常に高レベルの初期化因子の発現が必要である;したがって、線維芽細胞におけるVEE-GFPレプリコンの持続性を調べた。HFFは、第1日にVEE-GFP RNAレプリコンとB18R mRNA(3:1の比率)で同時トランスフェクトした後、第2日にB18R馴化培地(CM)プラス/マイナスピューロマイシンの存在下もしくは非存在下で培養した。未処理のVEE-GFP RNA/B18R mRNAトランスフェクト細胞は第1日に高レベルのGFP発現を示したが、次の数日にわたって発現レベルは急速に減少し、第7日までにはベースライン値に至った(
図1e)。その上、持続的なB18R-CM暴露なしでは、VEE-GFP RNAトランスフェクト細胞は増殖を止めるか、または自然免疫応答により死滅するか、あるいはその両方であった(
図1d)。それとは対照的に、B18R-CM/ピューロマイシン処理VEE-GFP RNA/B18R mRNAトランスフェクト細胞は、健全な増殖特性を有する>90%の細胞において、持続的な高レベルGFP発現を維持した(
図1d、e)。これらの結果は、B18R暴露がVEE RNAによる自然免疫応答問題の克服を可能にすることを示し、またB18R-CMの暴露または使用中止によって細胞からVEE RNAレプリコンを選択的に保持または分解できることも実証した。
【0139】
VEE RNAレプリコンの3'ORFを操作して、3つの初期化因子OCT4、KLF4、SOX2を組み合わせた1つのORFをコードするようにしたが、それらは配列内リボソームスキッピング2Aペプチドで隔てられた。ORFの次にIRES、次いでc-MYC (OKS-iM)またはGLIS18 (OKS-iG)が続くが、それがc-MYCによって引き起こされるゲノム不安定性を回避し、その後に第2のIRESおよびピューロマイシン耐性遺伝子(Puror)が続く(
図1a;表1)。VEE-GFP RNAプロトコールと同様に、VEE-RF RNAは、SP6 in vitro転写、5'キャップ形成、およびポリAテール付加によって作製され、高収率完全長およそ14,500 nt VEE-OKS-iM RNA、または約15,000 nt VEE-OKS-iG RNAをもたらした。VEE-OKS-iM RNAまたはVEE-OKS-iG RNAレプリコンとB18R mRNA(3:1の比率)の、BJもしくはHFFヒト線維芽細胞への同時トランスフェクションは、結果として、4つすべてのRFの長期間高レベルの発現をもたらしたが、これはレトロウイルスからのRF発現レベルを超えるものであった(
図1f)。これらの知見から、自然免疫応答をブロックするためにB18Rを利用するが、初代ヒト細胞において1つの合成VEE-RF RNAレプリコンから4つの初期化因子を発現させることができることが実証された。
【0140】
RNAに基づくiPS細胞作製プロトコールを開発するために、VEE-RF RNAトランスフェクションの回数およびタイミング、VEE-RF RNAレプリコン保持のためのピューロマイシンによる選択、ならびにVEE-RF RNAレプリコンの遺伝子構成を含めて、いくつかのパラメーターを評価した(
図1a、2a)。たった1回か2回のRF-RNAトランスフェクションでもiPS細胞の生成をもたらすが、B18R存在下での3回もしくは4回のトランスフェクションは常に、アルカリホスファターゼ陽性(AP+)コロニーの最高の生成をもたらした(
図2b-d)。100個を越えるiPS細胞コロニーがVEE-OKS-iMおよびVEE-OKS-iG RNAプロトコールから機械的に単離されたが、単離されたiPS様クローンが継続的に分裂してヒト胚性幹細胞(hESC)の形態を保持することができる成功率は95%を上回った。単離された100個を越えるiPS様クローンのうち、30クローンは、免疫蛍光による幹細胞マーカーの発現で単離された。30個のVEE-RF RNA iPSクローン(6x HFF-OKS-iMクローン、12x BJ-OKS-iMクローン、6x HFF-OKS-iGクローン、6x BJ-OKS-iGクローン)はすべて、内因性OCT4、SOX2、およびNANOGの強い核染色、ならびにSSEA4、TRA-1-60、およびTRA-1-81の強い細胞表面染色を示したが、SSEA1の染色は陰性であった(
図2e)。VEE-RF RNAレプリコンを除去するために、すべてのiPSプロトコールはリプログラミング中の第7日または10日にB18R-CMおよびピューロマイシンを取り除いた(
図2a)。VEE RF-RNAレプリコンが完全になくなったことを確認するために、10フェムトグラム未満のVEE RF-RNAレプリコンを検出することができる高感度で特異的なqRT-PCRプロトコールを開発した(
図4)。予想通り、qRT-PCR分析は、すべてのiPS細胞クローンがVEE RF-RNAレプリコンをなくしたことを示した(表2)。さらに、4つの別個のiPS細胞クローン(BJ-OKS-iM #2 & #21、BJ-OKS-iG #5、HFF-OKS-iM #1)の核型分析は、正常な2倍体の核型を示した(
図5)。
表2:RF-RNAレプリコンのqRT-PCRによる検出
【0141】
【表2】
a; iMはOKS-iM RNAレプリコンからのクローンを示す。iGはOKS-iG RNAレプリコンからのクローンを示す。b;RT-PCRのための領域、R1; nsP2、R2; nsP4、R3; Oct4-T2A-Klf4 (OK)、c;フィーダー細胞に継代する前のプレート上でのトランスフェクション(PL)、d;フィーダー細胞に継代した後のトランスフェクション(FD)。+;陽性バンド検出、+/-;かすかなバンドを検出、-;バンド検出せず。ND;実施せず。
【0142】
樹立されたiPS細胞クローンの特徴をさらに明らかにするために、ヒトESマーカー遺伝子の発現をqRT-PCRによって解析した。ヒトHUES9 ES細胞における発現レベルと一致して、OKS-iMもしくはOKS-iG VEE-RF RNAプロトコールによって親BJおよびHFF線維芽細胞から作製されたiPSクローンは、健常なレベルの内在性OCT4、SOX2、NANOG、LIN28、TDGF1、DNMT3B、およびTERTを発現し、出発の親BJおよびHFF線維芽細胞での低発現もしくは無発現レベルとは対照的であった(
図3a)。誘導された多能性の特徴は、OCT4およびNANOGプロモーター領域でのCpGジヌクレオチドのDNAメチル化の減少である。OCT4およびNANOGプロモーター領域のバイサルファイトゲノムシークエンシングは、iPS細胞クローンにおいて親線維芽細胞と比べて大規模な脱メチル化を示した(
図3b)。iPS細胞クローンの全ゲノムmRNA発現プロファイルを調べるために、OKS-iMおよびOKS-iG VEE-RF RNAで作製されたiPS細胞クローン、親BJ、およびHUES-9 ES細胞対照について全ゲノムRNAシークエンシング(RNA-seq)を実施した。RNA-seqにより分析された4つのiPS細胞クローンはすべて、親であるヒト線維芽細胞とは大きく異なるヒトHUES9-ES細胞に特徴的な、教師なし階層的クラスタリングおよび発現特性を示した(
図3c,d)。最後に、ヒトiPS細胞クローンのin vivo多能性を、免疫不全マウスにおけるテラトーマ形成によって、三胚葉すべての細胞へと分化させる能力に関して調べた。分析したVEE-RF RNA iPSクローンのすべてが、三胚葉由来の代表的な細胞型を含むテラトーマを形成したが、それはH&E染色によって検出され、免疫組織化学染色によって確認された(
図3e;
図6)。まとめると、上記の知見は、OKS-iMおよびOKS-iG VEE-RF RNAレプリコンがいずれもヒト多能性iPS細胞を効率よく作製することができることを確認するものである。
【0143】
iPS細胞の作製は、個別化された幹細胞治療開発の大きな可能性を有する;しかしながら、iPS細胞を作製するための簡単で一貫したRNAに基づく方法は、依然として明確ではなかった。本明細書は、1、2、3、4、または5つ以上の独立した初期化因子を発現する1つの合成VEE-RF RNAレプリコンのトランスフェクションによってiPS細胞を作製することができる、単純で、再現性の高い、RNAに基づくアプローチを提供する。VEE-RF RNAによって作製されるiPS細胞は、厳密なin vivo生物学的基準および分子基準にしたがって、ヒトES細胞に匹敵する完全な多能性を獲得した。VEE-RF RNA転写産物の作製は、標準的なSP6 in vitro転写キットを利用するが、これは特別な条件を必要としないので、そのアプローチを広範な用途のためにさらに簡素化するものである。限られた数の複数の細胞世代にわたるVEE-RF RNAの複製と相まって、同一細胞で4つのRFを一貫した高レベルで長期間にわたって発現させることによって、VEE-RF RNAアプローチは、4つの個別のRF mRNAを15日以上にわたって毎日繰り返しトランスフェクションすることでiPS細胞を作製しようとする試みに伴う、2つの主要な非効率の問題をいずれも解決する。重要なことは、VEE-RF RNAが、DNA中間体を利用しない、異所性の一時的効果を狙うアプローチであることであって、したがって、DNAベクターによるiPS細胞アプローチで起こりうる組込み変異の機会はない。その上、分解によるVEE-RF RNAレプリコン喪失のタイミングは、培地からのB18Rの除去によって制御することができる。VEE-RF RNAアプローチを用いて、2つの独立した親のヒト線維芽細胞集団から、2つのOCT4/KLF4/SOX2/c-MYCおよびOCT4/KLF4/SOX2/GLIS1 VEE-RF RNAプロトコールの両方に基づいて100個を越える独立したiPS細胞クローンが作製された。それに加えて、VEE-RF RNAアプローチは、特定の細胞型からのiPS細胞作製をさらに高めるために、または分化転換を行わせるために、他のRFの組み合わせ、および/または追加のRF ORFのRF-RNA骨格への挿入を発現するように操作することができる。要するに、VEE-RF RNAレプリコンアプローチは、最終的にヒト幹細胞治療および再生医療での使用を目的とするヒトiPS細胞を効率よく作製するために、幅広く適用可能である。
【0144】
登録番号。RNA配列データを提出した。これはGene Expression Omnibus (GEO)
登録番号GSE38265にてアクセス可能である。
表3:VEE-RF RNAレプリコンによるiPS細胞作製
【0145】
【表3】
いくつかの実施形態および要点を上記に記載したが、当業者には当然のことながら、添付の特許請求の範囲で規定される開示事項の教示もしくは範囲から逸脱することなしに、上記実施形態および要点の修正および変更を行うことができる
。
本発明は以下の実施形態を包含する。
[1] アルファウイルス由来の少なくとも1つの非構造的レプリカーゼドメイン、ならびに、体細胞で発現されたときに多能性幹細胞の生成を誘導するための因子をコードする、少なくとも1つの非アルファウイルス性異種配列を含んでなる、アルファウイルスレプリコンRNA。
[2] レプリコンが、東部ウマ脳炎ウイルス(EEE)、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE)、エバーグレーズ(Everglades)ウイルス、ムカンボ(Mucambo)ウイルス、ピクスナ(Pixuna)ウイルス、および西部ウマ脳炎ウイルス(WEE)からなる群から選択されるアルファウイルスから得られる配列を含む、1に記載のアルファウイルスレプリコンRNA。
[3] レプリコンが、シンドビス(Sindbis)ウイルス、セムリキ森林(Semliki Forest)ウイルス、ミデルブルグ(Middelburg)ウイルス、チクングニア(Chikungunya)ウイルス、オニョンニョン(O'nyong-nyong)ウイルス、ロスリバー(Ross River)ウイルス、バーマフォレスト(Barmah Forest)ウイルス、ゲタ(Getah)ウイルス、サギヤマ(Sagiyama)ウイルス、ベバル(Bebaru)ウイルス、マヤロ(Mayaro)ウイルス、ウナ(Una)ウイルス、アウラ(Aura)ウイルス、ワタロア(Whataroa)ウイルス、ババンキ(Babanki)ウイルス、Kyzylagachウイルス、ハイランドJ(Highlands J)ウイルス、フォートモーガン(Fort Morgan)ウイルス、ヌドゥム(Ndumu)ウイルス、およびバギークリーク(Buggy Creek)ウイルスからなる群から選択されるアルファウイルスから得られる配列を含む、1に記載のアルファウイルスレプリコンRNA。
[4] 少なくとも1つの非アルファウイルス性異種配列が、少なくとも2、3、4、または5つの非アルファウイルス性異種配列を含んでなる、1に記載のアルファウイルスレプリコンRNA。
[5] 非アルファウイルス性異種配列が、KLFポリペプチド、SOX-2ポリペプチド、OCT-3/4ポリペプチド、c-MYCもしくはn-MYCもしくはL-MYCポリペプチド、GLIS1ポリペプチド、NANOGポリペプチド、およびそれらの任意の組み合わせをコードするポリヌクレオチドから選択される、1〜4のいずれか1つに記載のアルファウイルスレプリコンRNA。
[6] KLFポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、配列番号8の配列に対して少なくとも95%の同一性を有するKLFポリペプチドをコードする、5に記載のアルファウイルスレプリコンRNA。
[7] KLFポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、配列番号8の配列を有するKLFポリペプチドをコードする、5に記載のアルファウイルスレプリコンRNA。
[8] KLFポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、配列番号7に記載の配列を含んでなり、この配列の"T"が"U"となっている、5に記載のアルファウイルスレプリコンRNA。
[9] SOX-2ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、配列番号6の配列に対して少なくとも95%の同一性を有するSOX-2ポリペプチドをコードする、5に記載のアルファウイルスレプリコンRNA。
[10] SOX-2ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、配列番号6の配列を有するSOX-2ポリペプチドをコードする、5に記載のアルファウイルスレプリコンRNA。
[11] SOX-2ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、配列番号5に記載の配列を含んでなり、この配列の"T"が"U"となっている、5に記載のアルファウイルスレプリコンRNA。
[12] OCT-4ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、配列番号4の配列に対して少なくとも95%の同一性を有するOCT-4ポリペプチドをコードする、5に記載のアルファウイルスレプリコンRNA。
[13] OCT-4ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、配列番号4の配列を有するOCT-4ポリペプチドをコードする、5に記載のアルファウイルスレプリコンRNA。
[14] OCT-4ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、配列番号3に記載の配列を含んでなり、この配列の"T"が"U"となっている、5に記載のアルファウイルスレプリコンRNA。
[15] c-MYCポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、配列番号10の配列に対して少なくとも95%の同一性を有するc-MYCポリペプチドをコードする、5に記載のアルファウイルスレプリコンRNA。
[16] c-MYCポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、配列番号10の配列を有するc-MYCポリペプチドをコードする、5に記載のアルファウイルスレプリコンRNA。
[17] c-MYCポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、配列番号9に記載の配列を含んでなり、この配列の"T"が"U"となっている、5に記載のアルファウイルスレプリコンRNA。
[18] GLIS1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、配列番号34の配列に対して少なくとも95%の同一性を有するGLIS1ポリペプチドをコードする、5に記載のアルファウイルスレプリコンRNA。
[19] GLIS1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、配列番号34の配列を有するGLIS1ポリペプチドをコードする、5に記載のアルファウイルスレプリコンRNA。
[20] GLIS1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、配列番号33に記載の配列を含んでなり、この配列の"T"が"U"となっている、5に記載のアルファウイルスレプリコンRNA。
[21] NANOGポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、配列番号2の配列に対して少なくとも95%の同一性を有するNANOGポリペプチドをコードする、5に記載のアルファウイルスレプリコンRNA。
[22] NANOGポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、配列番号2の配列を有するNANOGポリペプチドをコードする、5に記載のアルファウイルスレプリコンRNA。
[23] NANOGポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、配列番号1に記載の配列を含んでなり、この配列の"T"が"U"となっている、5に記載のアルファウイルスレプリコンRNA。
[24] レプリコンが、5'から3'に向かって、(VEE RNAレプリカーゼ)-(プロモーター)-(RF1)-(自己切断型ペプチド)-(RF2)-(自己切断型ペプチド)-(RF3)-(IRESもしくはコアプロモーター)-(RF4)-(IRESもしくは任意のプロモーター)-(任意選択可能なマーカー)-(VEE 3’UTRおよびポリAテール)-(任意に選択可能なマーカー)-プロモーターを含んでなり;上記のRF1-4は、多能性細胞への体細胞の脱分化を誘導する因子であって、上記のRF2-3は任意であり、RF3-4は任意であり、またはRF4は任意であり;上記のRF1-4が、Oct-4、Klf4、Sox-2、c-Myc、Nanog、およびGlis1からなる群から選択される、1に記載のアルファウイルスレプリコンRNA。
[25] レプリコンが、その配列の"T"が”U"で置き換えられた、おおよそ1位からおおよそ7561位までの、配列番号29、30、31、または32に対して90%、95%、98%、99%、または100%同一の配列を含んでなり、それに1つもしくは複数のRFが続き、それに3'UTRおよびポリAテールが続いているが、この1つもしくは複数のRFが、Oct-3/4、Sox-2、Klf4、c-Myc、Nanog、およびGlis1からなる群から選択され;2つ以上のRFが存在する場合には、そのコード配列は配列内リボソーム進入部位(IRES)または小型プロモーターで隔てられていてもよい、1〜24のいずれか1つに記載のアルファウイルスレプリコンRNA。
[26] レプリコンが、"T"が”U"となっている、配列番号29、30、31、または32からなる群から選択される配列に対して、少なくとも95%、98%、99%、または100%同一である配列を含んでなる、25に記載のアルファウイルスレプリコンRNA。
[27] 1〜26のいずれか1つに記載のレプリコンで形質転換されたヒト細胞を含んでなる組成物。
[28] B18R馴化培地を追加して含んでなる、27に記載の組成物。
[29] ヒト細胞が体細胞である、27に記載の組成物。
[30] ヒト細胞が線維芽細胞である、29に記載の組成物。
[31] 幹細胞を作製する方法であって、27に記載の組成物を少なくとも30日間、レプリコンのコード配列が発現される条件下で培養すること、ならびに幹細胞を単離することを含む、前記方法。
[32] 幹細胞を作製する方法であって、1〜26のいずれか1つに記載のレプリコンで体細胞を形質転換すること、レプリコンの発現を促進する条件下で体細胞を培養すること、ならびに幹細胞を単離することを含む、前記方法。
[33] 前記培養が、B18Rで馴化された培地中で細胞を培養することを含む、31または32に記載の方法。
[34] B18R馴化培地が、B18R mRNAの初代ヒト線維芽細胞へのトランスフェクションによって作製される、33に記載の方法。
[35] 幹細胞がレトロウイルスDNAもしくはRNAを含まない、31または33に記載の方法から得られる、単離された幹細胞。
[36] (i) KLF4、(ii) OCT4、(iii) SOX2、(iv) c-MYCまたはn-MYCまたはL-MYC、(v) GLIS1、および(vi) NANOGからなる群から選択される、少なくとも4つの脱分化因子をコードするポリヌクレオチドを含んでなる異所性自己複製RNAレプリコンと、ヒト体細胞を接触させること;
脱分化因子が発現されるように体細胞を培養すること;
幹細胞の形態および/または幹細胞マーカーを示す細胞を選択すること;ならびに
その細胞を人工幹細胞集団が得られるように継代培養すること;
を含む方法。
[37] 細胞が、腫瘍拒絶抗原1-60および/または1-81の発現を検出することによって選択される、36に記載の方法。
[38] ヒト幹細胞を作製するためのベクター系であって:
KLF4、OCT4、SOX2、c-MYCもしくはn-MYCもしくはL-MYC、GLIS1、NANOG、またはそれらの任意の組み合わせ、からなる群から選択される脱分化因子をコードする、1つもしくは複数のポリヌクレオチドを含有する、少なくとも1つの自己複製RNAレプリコンを含んでなる、前記ベクター系。
[39] レプリコンが、
(a)Oct4、Sox2、Klf4、およびc-Myc、または
(b)Oct4、Sox2、Klf4、およびGlis1
を含有する、38に記載のベクター系。
[40] 少なくとも1つの自己複製RNAベクターがアルファウイルスに由来する、38に記載のベクター系。
[41] アルファウイルスがVEEである、40に記載のベクター系。
[42] 1つもしくは複数の脱分化ポリヌクレオチド配列を含有する異所性RNAレプリコンを含んでなる、単離されたヒト体細胞。
[43] 異所性RNAレプリコン中の脱分化ポリヌクレオチドを発現させる培養条件で、体細胞が脱分化する、42に記載のヒト体細胞。
[44] 43に記載の細胞を含んでなる、細胞集団。
[45] 35に記載の方法によって得られる、細胞集団。
[46] 細胞または方法が、異所性RNAレプリコンの分解を阻害する培地中で細胞を培養することを含んでいる、44もしくは45に記載の細胞集団、または35もしくは36に記載の方法。