特許第6396901号(P6396901)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6396901ボールコンタクト特性が増強されたスポーツシューズのための表面構造及びこの構造を準備する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6396901
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】ボールコンタクト特性が増強されたスポーツシューズのための表面構造及びこの構造を準備する方法
(51)【国際特許分類】
   A43B 5/02 20060101AFI20180913BHJP
   A43B 23/02 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   A43B5/02
   A43B23/02 101A
【請求項の数】11
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-523614(P2015-523614)
(86)(22)【出願日】2013年7月25日
(65)【公表番号】特表2015-522386(P2015-522386A)
(43)【公表日】2015年8月6日
(86)【国際出願番号】HU2013000076
(87)【国際公開番号】WO2014016629
(87)【国際公開日】20140130
【審査請求日】2016年7月22日
(31)【優先権主張番号】P1200447
(32)【優先日】2012年7月27日
(33)【優先権主張国】HU
(73)【特許権者】
【識別番号】515023556
【氏名又は名称】ラースロー オロシ
(73)【特許権者】
【識別番号】515023567
【氏名又は名称】ミハーリー イストバーン ラントス
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100171251
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100141081
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 庸良
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(72)【発明者】
【氏名】ラースロー オロシ
(72)【発明者】
【氏名】ミハーリー イストバーン ラントス
【審査官】 山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−509655(JP,A)
【文献】 特開2002−199902(JP,A)
【文献】 西独国実用新案公開第01930740(DE,U)
【文献】 国際公開第98/016129(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0196088(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0007457(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 5/02
A43B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボールコンタクト特性が増強された球技用に使用されるスポーツシューズのための表面構造であって、
各シューズが上方部分とソールとを有し、
前記上方部分がボールのシュートに使用される外側表面を有し、
離間した複数の表面ゾーンによって形成された空間的表面パターンが、前記外側表面上に設けられており、これらの複数の表面ゾーンは、約800ミクロン〜1000ミクロンよりも小さい異なるサイズのゴムの離散的微粒子の粒状構造を含む層によって形成されたコーティングによって与えられ、前記コーティングでは、接着物質が、前記複数の表面ゾーンにおいて前記上方部分の前記外側表面を被覆し、前記離散的微粒子は、前記接着物質上に配置されかつ前記接着物質によって保持される、表面構造において、
前記複数の表面ゾーンが、離間したストライプであり、さらなる同様な層が、前記コーティングの上面上に与えられ、前記さらなる同様な層における微粒子は、ボールが前記さらなる同様な層と接触する時の前記ボールと接触する自由な外面を有する、表面構造。
【請求項2】
前記複数の表面ゾーン、隣り合うリブと溝を備え、請求項に記載の表面構造。
【請求項3】
任意の表面エリアにおける前記複数の表面ゾーン及び/又は前記複数の表面ゾーンにおける前記リブや前記溝の形状は、ボールが前記表面ゾーンに達した時に前記表面エリアと前記ボールの間に形成されるコンタクトラインの形状に実質的に合致する、請求項に記載の表面構造。
【請求項4】
ゴム粒子を300ミクロン〜400ミクロンの開口部を有する篩を通過させることによって得られた粒子によって第1層が与えられる、請求項1〜のいずれか一項に記載の表面構造。
【請求項5】
前記複数の表面ゾーンにおける前記隣り合うリブと溝は、後方へ向かってサイズが増大する深さ及び幅を有する、請求項に記載の表面構造。
【請求項6】
ボールコンタクト特性が増強された球技用に使用されるスポーツシューズのための表面構造であって、
各シューズが上方部分とソールとを有し、前記上方部分がボールのシュートに使用される外側表面を有し、離間した複数の表面ゾーンによって形成された空間的表面パターンが、前記外側表面上に設けられており、これらの複数の表面ゾーンは、ゴムの離散的微粒子の粒状構造を含む層によって形成されたコーティングによって与えられ、前記コーティングでは、接着物質が、前記複数の表面ゾーンにおいて前記上方部分の前記外側表面を被覆し、前記離散的微粒子は、前記接着物質上に配置されかつ前記接着物質によって保持される、表面構造において、
前記複数の表面ゾーンが、離間したストライプであり、前記層の厚さは、少なくとも0.3〜0.4mmであり、前記離散的微粒子は、ボールと接触する自由な外面を有し、前記複数の表面ゾーンの少なくとも一部分において、隣り合うリブと溝が前記層において設けられている、表面構造。
【請求項7】
前記スポーツシューズの外側表面の離間した別個の複数のゾーンを接着物質で被覆するステップを備えた、請求項1〜のいずれか一項に記載のボールコンタクト特性が増強された表面構造をスポーツシューズに与える方法において、
前記方法は、
前記接着物質の上面上に接着剤を硬化させる前にゴム粒子を配置して第1層を形成するステップと、
前記接着物質と前記接着物質上の前記ゴム粒子を反復して塗布するステップを含む、前記第1層の上面上に第2層を配置するステップと、
前記接着剤を硬化させるステップとを含む、ことを特徴とする方法。
【請求項8】
前記ゴム粒子が関連するゾーンに配置された後に僅かな圧力を前記ゴム粒子に加える、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記接着剤を塗布するステップの前に、前記複数のゾーンの間において、マスク又はテンプレートを前記シューズの前記上面上に配置する、請求項又はに記載の方法。
【請求項10】
機械的な力によって及び/又は熱を当てることによって前記複数のゾーンの少なくとも一部分において隣り合うリブと溝を設ける、請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記接着物質を塗布するステップの前に、前記接着剤の結合の質を改良するために前記スポーツシューズの外側表面を予備処理する、請求項〜1のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールコンタクト特性が増強されたスポーツシューズ又はスポーツブーツのための表面構造に関する。スポーツシューズは、上方部分とソールを有し、上方部分の少なくとも一部は、ボールをシュートするために使用される。また、本発明は、この種の表面構造を作る方法に関する。本発明は、球技、特にサッカー及びフットボールに使用されるスポーツシューズに使用できる。
【0002】
ボールがシューズによってどのように前進するかは、主にシューズの外側表面の種類及び設計によって決まることは、スポーツシューズの既知の特性である。いくつかの表面設計が知られているが、時間の経過と共にそのうち特定の種類のものが使用されるようになり、広範に広がった。
【0003】
このように広く使用される表面設計の1つは、本願出願人の特許文献1において説明されておリ、シューズの上方部分の有益な表面エリアに設置された「指向ゾーン」を有し、この種のゾーンは、表面に配置されたゴムシートに複数の平行の細長い溝を備える。このゾーンの各々において、溝は同じ方向に延びるが、異なるゾーンの方向は異なり、方向は、使用者のプレイスタイルによって決められた。
【0004】
最新のスポーツシューズ表面設計の1つは、例えばウェブサイトhttp://www.prodirectsoccer.com/articles/adidas-predator-lethal-zone-d5-football-boots.aspx.において発表されたブランド名「Lethal Zones」を有するシューズ(ドイツの会社ADIDAS AG)において使用されており、この設計は、他の出版物においても言及されている。このスポーツシューズは、長手軸に対して約45°の角度を成す複数の細長い領域又はゾーンを備えて、これらのゾーンの表面構造及び形状並びに所与の場合には材料は、関連する表面エリアのキックタスクに応じて変化する。従って、「ファーストタッチ」と呼ばれる前側面ゾーンは、ボールにとってクッション効果を与えるスポンジ様の弾性材料に作られた溝とリブを備え、その結果正確な標的指向性(targeting)(キリング(killing))効果を得られると言われる。これらのゾーンは真空でも作用する。シューズの側面に沿って、締め紐穴付近には、より正確で長いパスのために使用されるより明確な空間設計を有する「ドライブゾーン」が設置される。このエリアは、より大小の幅の溝状ストライプを備える。トウの位置付近に相当する前側エリアには、狭い「ドリブルゾーン」が設置され、このゾーンは、離間され、素早く確実なコンタクトを与える役割を持つ。シューズの前中央部には、より大きい、「エクレア形」制御及びパスゾーンが設置され、平行の1対のリムによって囲まれる。このゾーンは、発泡材様の材料で作られる。発泡材の形状記憶効果によって、このエリアは、他のゾーンより長いボールとのコンタクト時間を持つ。最後に、前部トウエリアから中央に、より広く上向きのストライプ及びストライプの下端を接続する部分を備えるスウィートスポットゾーンが設置される。このストライプ状リブは、表面からさらに延びて、ボールのツイスト効果及び速度を増す。
【0005】
このシューズの更なる特徴は、ソール部分がほぼ完全に上方部分に成形され、その間にほとんどギャップがなく、ソールの材料の固体堅さ(solid consistency)は、薄い可撓性材料及びプレーヤの足のみが衝撃抵抗を与える上方部分とは異なる衝撃抵抗をボールとの間に与える。
【0006】
弾性の溝/リブ構造は、この靴の設計にもみられるが、より様々な硬さの材料のゾーンがあり、特定のゾーンにおいては、リブの形状及び高さが異なる。
【0007】
これまで使用されたほとんどのスポーツシューズにおいて、ゾーンは、上方部分に固定された1つ又はそれ以上のゴムシートの表面に設置された硬質ゴムのベース上に作られた溝/リブ構造を備える。
【0008】
スポーツシューズの場合、上方部分の非溝付き表面は平滑であり、溝とリブも多少の表面粗さしか持たなかった。即ち、リブ自体は、その長さ及び傾斜面に沿って平滑な表面を持っていた。
【0009】
上述の大きく改良された設計は、平均的プレーヤのスタイルに合わせるためにのみ作られており、任意のプレーヤの個々のプレイスタイルに合わせた位置、形状及び溝/リブ構造を設計し実現する可能性のない大量生産商品である。
【0010】
ボールがシューズ表面の所与の部分に変化する力で接すると、ボールは数分の1秒で変形する。表面との接触面積は、衝撃力の程度によって決まる。ボールは平滑な表面を有し、ボールと靴表面との間の過渡的接触の質及び特徴(例えば、表面に対するボールの一瞬の付着)は、靴の品質に決定的効果を有する。このことは、ボールと靴との間の過渡的接続が、跳ね返るボールの方向、速度及び回転を決定することから、分かる。この効果は、プレーヤのキックの動きの種類及び速度に加えて生じるものであるが、この効果は無視できない。
【0011】
上記の特性及び制限を要約すると、従来の設計の1つの欠点は、個別の設計の可能性が全く又は僅かにしかなく、個別の設計が必要な場合、大量生産の靴をはるかに上回るコストでしか生産できない。更なる欠点は、微細な平滑な靴表面(この表記法においては、空間的構造ではなく表面粗さと理解される)である。最後に、更なる欠点は、ソールの縁又は所与の事例においては、ソールから下向きへ延び靴の表面とは異なる表面を有する側面に配列されたクリート(cleats)の外面は、上方部分の接触面とは全く異なる効果をボールに対して与える可能性がある。球技の混乱した状況において、ボールが縁又はクリートに当たることはしばしば生じることであり、これは概して不正確なシュートを生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】ハンガリー特許第222806号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の主要な目的は、上記の欠点を減少又は排除でき容易に製造できかつ耐久性のある、球技用好ましくはサッカー用のスポーツシューズの表面構造及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、弾性材料の粒状構造、好ましくは粒状ゴムは、スポーツシューズの上方部分の表面に適切な接着剤によって固定でき、構造は、設定された粒度及び分布を持つことが分かった。粒子は、接着剤の中で安定的に硬化し、このように被覆されたシューズの部分において、特殊な粒状の、粗い可撓性の構造が形成される。この原理は、上方部分の設計、被覆領域の数、形状及び位置付けに関してシューズの設計者に大きな自由度を与える。この自由度は、このように確立された表面に対して、機械的干渉によって又は硬化後に熱及び機械的干渉を組み合わせることによって任意の形状又はパターンの溝/リブを作ることができることによって増大する。溝/リブの形状、サイズ、方向及び構造は、スポーツシューズが個別の特性を持ち所有者または使用者のニーズに沿うことができるように自由に選択できる。
【0015】
従って、この種のスポーツシューズの表面は、あらゆるプレーヤの期待、ボールの扱いの好みに応じて設計でき、選別されたキープレーヤの場合には、プレーヤの正確なニーズに応えるために多数の予備テストを実行できる。
【0016】
本発明は、請求項によってその範囲が画定される。
【0017】
本発明に係る表面構造の下の上方部分のタイプ及び材料は、二次的役割しか持たず、たとえ最安値の平滑な革表面でも、本発明に係る表面構造を確立するための基盤として使用できる。上方部分に当接するソールの縁は常に表面の硬さで跳ね返し、たとえボールが上方部分にしか当たらなくてもボールがこの境界ゾーンに当たればボールは様々に反射する。この効果を減少するために、上方部分とソールの縁との間の窪みに接着剤を充填し、縁及び接続ゾーンも上方部分に属するかのように、接着剤と縁自体を均等に可撓性粒状構造で被覆できる。この場合、ボールが縁に当たった場合、上方部分と同種の表面に触れるので、上記の反射エラーは生じない。
【0018】
上方部分において、接着剤の下に、リブと窪みを含む空間的構造を与えることもでき、この場合、上方部分の表面構造は、下の表面の形状に追随できる。
【0019】
地面へ向かって下向きに更なる可能性を与えることができる。即ち、草で覆われた地面におけるスリップを防止するために使用されるクリートの外面を同様にコーティングできる。様々な状況及びポジションにおいてプレーヤがクリートの外面がボールに当たるようにボールを扱ってしまう可能性は、排除できない。
【0020】
提案される方法は、更なる有利な可能性を与える。所与の1足のスポーツシューズが摩耗して、表面が使い古され、所与の事例において、多少のスクラッチ又はクラックが在るときでも、本発明に係る構造によって被覆でき、上方部分がその上に前記構造を持てる限り接着剤の下の表面の特性は関係なくなる。提案される新しい粒状表面構造は、それ以前の全ての欠陥部分を被覆し隠蔽する。このようにして、本発明の解決法は、シューズの耐用期間を増大できる。
【0021】
最後に、被覆構造又はその一部は、研磨機によって又は同様の研磨法によって除去でき、その後、新しい構造をベース表面に与えることができる。プレーヤが以前の溝/リブ構造が気に入らない場合、この構造を取り除いた後、より好ましい表面構造を同じシューズに与えることができる。
【0022】
本発明について、添付図面を参照しながらその好ましい実施形態に関連して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係るスポーツシューズの実施形態の写真の特徴的な細部を示す。
図2】本発明に係るスポーツシューズの実施形態の写真の特徴的な細部を示す。
図3】本発明に係るスポーツシューズの実施形態の写真の特徴的な細部を示す。
図4】本発明に係るスポーツシューズの実施形態の写真の特徴的な細部を示す。
図5】本発明に係るスポーツシューズの実施形態の写真の特徴的な細部を示す。
図6】本発明に係るスポーツシューズの実施形態の写真の特徴的な細部を示す。
図7】別の実施形態の斜視図である。
図8】別の実施形態の斜視図である。
図9】別の実施形態の斜視図である。
図10】別の実施形態の斜視図である。
図11】別の実施形態の細部を示す写真である。
図12】別の実施形態の細部を示す写真である。
図13】別の実施形態の細部を示す写真である。
図14】別の実施形態の細部を示す写真である。
図15】別の実施形態を示す写真である。
図16】別の実施形態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実験的実施のために、革の上方部分を有する1足の既存の中古スポーツシューズを使用し、ブラシを用いてBASF社(ドイツ、ルートウィッヒ67056)製造の商品名CONIPUR301の単一成分を有する無色接着剤で表面全体を被覆した。この接着剤は、ポリウレタン系であり、ポリイソシアネートを主原料とし、大気の水分の効果を受けて硬化する。
【0025】
市場で、数種の粉砕ゴムを入手でき、その多くは、使用済みタイヤをすりつぶすことによって生産されるが、限定的に生産されたゴムの微粒子もある。これらのゴム微粒子は、概略的に、粉砕後に粒子が通過する篩のメッシュサイズによって特徴づけられる。メッシュサイズ0.4mmを持つ篩によってより分けられたゴム粒子は、0.4mm未満の粒を含み、特定の粒度分布を有する。ほとんどの場合、この種の微粒子は、自動的に非常に小さい粒子(約50〜100ミクロン)を充分な量含み、異なるサイズの粒で作られた混合体を使用する必要がない。
【0026】
この状態が保証できない場合、100ミクロンより小さい粒子を2〜10質量パーセント、200ミクロンより小さい粒子を5〜30質量パーセント含み、支配的な成分が、篩にかけた約300〜400ミクロンの粒子であることが望ましい。小さい粒度は、優れた表面付着を与え、より大きい粒は、ボールとのコネクションを容易にするために要求される粗い表面を与える。
【0027】
約0.8mm〜1mmより大きい粒は、完全に接着剤によって拘束されず、表面から剥がれる傾向があり、表面が粗すぎるように見えるので、見た目があまり良くない。従って、0.8〜1mmより小さい粒、好ましくは、0.4〜0.3mmあるいは0.2mmより小さい粒子を使用することが好ましい。最大粒度は、ボールとのコンタクト特性を著しく悪化させないので、粒度はそれほど重要ではなく、粒度は、むしろ、得られた層の耐用性及び外観に影響する。
【0028】
粒子が使用済みの車のタイヤから作られる場合、タイヤの特性を使用することが好ましい。特性に従い、通常又は比較的暖かい環境で使用されるスタンダード(ノーマル)タイヤがあり、またその関連温度範囲において優れた表面付着を有するウィンタータイヤ(12℃未満で使用)がある。従って、冬季においては、ウィンタータイヤで作られた粒子でスポーツシューズを被覆することが好ましい。
【0029】
使用済みタイヤ又はその他のゴム材料から粒子を削ることも、非常に高圧のウォータージェットを用いることによって可能である。この技法から、好ましい粒子形状及び粒度を得ることができる。
【0030】
上述のサイズ分布のゴム粒子を、接着剤によってコーティングされた表面において過剰な量散在させた後、外側表面を、ゴム手袋を着用した手で又は軟らかい織物材によって僅かに押圧し、シューズを硬い物体にぶつけることによって余分な量の粒子を除去した。
【0031】
周囲温度及び空気の湿度次第で、表面は約12〜24時間で充分に硬化する。
【0032】
硬化後、軟らかいラグを用いて、残りの過剰(拘束されない)粒子を取り除ける。残りの表面は、十分に安定し、粗く、ボールとの間に優れた接触コンタクトを有する。
【0033】
同様の結果が、出発物質として上述の接着剤ではなく同じ製造者のCONIPURファミリーの他の商品即ち型番CONIPUR302、CONIPUR315又はCINIPUR322を選択した場合に得られる。これらの接着剤は、多少異なる組成及び硬化時間を持つが、ゴム微粒子へのコネクションに関しては、基本的に等しい。
【0034】
接着剤の塗布に関する限り、表面全体をコーティングしなければならない場合、最も好ましい方法は、ブラシの使用である。表面のある区画のみをコーティングする場合、接着剤の塗布前に区画の境界を適切なペン又はマーキング手段でマークすることが好ましい。数が多い場合、コーティングが施される個所にそれぞれの窓を備えるテンプレート又はマスクを使用すると良い。マスキング後に、ブラシで接着剤を塗布することが更に好ましい。
【0035】
分離したストライプ又は区画にコーティングを施さなければならない事例においては、軟らかく僅かに吸湿性の材料のシリンダを使用するツールを用いて作業することが好ましい可能性がある。この場合、接着剤は、チューブを押圧することによってツールのハンドルに取り付けられた絞り出しチューブからシリンダの対向する側へ給送できる。
【0036】
表面を接着剤によって及び必要な安全処置を維持することによって被覆する既知の手法及び方法はいくつかあり、そのいずれでも、接着剤の塗布に使用できる。
【0037】
接着剤は、シューズのソールの縁及び上方部分と前記縁との間の接続部に形成された溝にも塗布でき、その後で、この被覆された表面に、ゴム粒子を配置しなければならないことが分かるはずである。
【0038】
迅速な硬化が必要とされる場合、そのために、上方部分の革(又はプラスチック)表面にもゴム粒にも同等に付着する速硬性接着剤がある。本発明にとって好ましいこの種の速硬性接着剤の例は、ドイツの会社Henkel AG製造のLOCTITE 4850形式のシアノアクリレート系接着剤である。
【0039】
革表面にコーティングする場合、接着剤の塗布前に洗浄液によって表面を清浄することが妥当であり、別個の下塗り組成を使用する必要がないが、それが害となることはない。
【0040】
全面的または部分的にプラスチックシュート表面を備えるスポーツシューズがあり、所与の事例において、材料は、例えば発泡材インサートを用いることによって多少軟化される。この種のシューズにおいて、粒子が塗布される前に、準備ステップが実行されることが好ましい。第1のステップとして、細かい研磨器で表面を粗くすることが妥当かも知れない。特定の表面設計において(特に縫製のために使用された短い糸の端部が表面から出ている場合、)短時間の燃焼が好ましい可能性がある。この場合、燃焼時間はできる限り短く例えば20秒未満でなければならない。燃焼効果を受けて、外に飛び出した糸又は繊維はなくなるが、短い処理時間で、表面を、溶融又は変形温度まで温めることはできない。その後の洗浄は、アセトン系洗浄液によって実施できる。
【0041】
このようにして準備された表面は、更に、短時間で蒸発するが接着剤の接着力を改良する下塗り組成を塗布することによって処理できる。この種の下塗り組成は、例えばHenkel AGの製品TEROSTAT 450である。
【0042】
接着剤及び粒子を塗布した後にかつ接着剤が完全に硬化する前に、但し接着剤が硬化した後に、使用者が必要とする場所に使用者のプレイスタイル又は好みに応じた方向へ延びる溝/リブ構造を与えることが好ましい。溝/リブパターンを形成する単純な手法は、要求される溝/リブプロフィルに合致するように作られたエッジを持つローラー付きのハンドツールの使用である。この種のツールを溝の予定されたラインに沿ってローリングすると、自動的に要求されるパターンが作られる。この種のツールを小さい圧力でローリングするのに特殊な技能は必要ない。リブは、粒子の塗布から約10〜180分で得られる。
【0043】
接着剤がすでに硬化している場合、溝/リブを作るべき表面を加熱すれば、同様のツールによって必要なリブ作りを行える。別の手法によれば、リブの逆のプロフィルを、高い比電気抵抗を持つシートのエッジに沿って再現できる。適切な電気エネルギーがシートの両側に結合される場合、シートは、約150〜250℃の温度まで温められる。この温められたツールを要求される溝の経路に沿って僅かな圧力を加えて導くと、プロフィル付きのエッジがリブを形成する。接着剤が完全に硬化した後このようにしてリブが与えられる場合、リブは、完全硬化前に純粋に機械的手法によってリブが与えられる場合により安定し、強くなる。
【0044】
接着剤の塗布についてもリブの準備についても、いくつもの既知の方法が、当業者には周知又は明白なので、本発明は、接着剤の塗布又はリブ作りの具体的手法に限定されない。
【0045】
リブの形状に関しては、ハンガリー特許第22806号明細書の教示を参照する。前記特許によれば、リブは僅かな前向きの傾斜を持つことが好ましい。即ち、リブの長さに直交する方向において、リブプロフィルの中央面は、該当の靴表面に直交する平面に対して前方へ約5〜15°の角度を成すことが好ましい。リブのエッジは約20〜40°の角度を持つことが好ましい。
【0046】
コーティングが施される場所における粒子の粒度及び粒度分布次第で及びリブの設計次第で、本発明は、多様な形式及び変形で実施できる。図1〜6において、様々な原理に従って設計されたスポーツシューズの細部を示す。
【0047】
図1に示す実施例において、さび色のゴム粒状体が使用され、図はシューズの前端部の細部を示す。ここで、リブは、長手中心軸に対して対称形に広げた指のように分散するので、軸からの距離は前方へ向かって増大する。ゴム粒子コーティングは連続的である。
【0048】
図2は、図1のスポーツシューズの側面図であり、ソールの全縁もコーティングされているので、表面は連続的であり、上方部分がソールに出会う領域において破断又は凹部がない。図2において、溝/リブの方向は、前側面部において見える。ソールの材料はこれに取り付けられる上方部分よりずっと硬く、ボールに対する表面付着が異なるので、ソールの縁のコーティングが好ましい。ボールが、提案されたコーティングを持たないソールの縁に当たった場合、シュートは必ずしも意図される方向に飛ばない。本発明に従ってこの縁をコーティングした後は、表面付着は縁領域でも同一のままであり、コーティング材料の弾性は、ソールの剛性を緩和するので、シュートは意図される方向へ近づく。
【0049】
図3に示す実施形態において、図2に示す実施形態のようにソールの縁がコーティングされるだけでなく、比較的大きいクリート(ソールの縁付近に示す)の表面にもコーティングされる。クリート表面上の層もリブ付きである。この写真から分かるように、また、表面積のサイズの割合から、ボールがクリートの外面にうまく衝突することが容易に分かる。本発明に従った層によって被覆された表面は可撓性であり、上方部分のコーティング加工表面と全く同様の優れたボールコンタクトを有するので、クリート表面に当たるボールの経路も制御される。
【0050】
図4は、粒状層がシューズの上方部分の離間したストライプに表された実施形態を示す。この実施形態の利点は、被覆されない革表面がある程度の発汗経路を与えることである。層状ストライプは、斜め方向に延びるリブを有する。ストライプは、興味深いパターンを形成する。ボールが、被覆層の縁を表すパターンの境界に当たると、シュートの方向に影響する。
【0051】
図5は、層がより大きくかつ粗い粒を含み溝/リブがより大きい実施形態を示す。写真は、ソールの縁付近の拡大細部を示す。上方部分の最下部領域において、溝/リブは、ソールの平面に平行に延びるが、この領域より多少上方においては、リブの方向は、水平方向に対して角度を成す。
【0052】
図6は、図1に示すのと同様の上方部分の前中央部のリブを示すが、分散する溝の間にV字形領域が形成される中央区分において、溝/リブは水平方向へ即ちシューズの長手軸に直交する方向へ延びる。
【0053】
図7〜10は、本発明の係るコーティングを備えるスポーツシューズの別の実施形態の斜視図である。
【0054】
図7は、中古スポーツシューズに本発明に従って与えられた表面構造を示す。図は、3つの異なるゾーンに分割される右前部表面を示す。3つのゾーンにおいて、関連するリブの方向は非常に異なる。コーティング加工領域において、ソールの縁表面もコーティングされ、その表面設計は、その上方の隣接するゾーンの設計に追随する。中央ゾーンにはリブがない。ボールの方向にとって、優れたボールコンタクトを持つ粒状の粗い表面で十分である。
【0055】
図8は、異なる原理の設計の実施形態を示す。この設計において、中心軸の両側において、離間したリブ付ゾーンのそれぞれの対が前後に配列される。線状のリブの方向は異なる。リブ付ゾーンの間には、狭い空間しか形成されない。
【0056】
図9の斜視図は、シューズのボトム部分の設計を示す。リブは、ゾーンの間に実質的な空間を持つ広いストライプとして設計されたゾーンに設置され、溝/リブは、相互に平行であり、前方及び下向きに傾斜する向きである。図は、ソールに固定されたクリートを示し、クリートもその外面がコーティングされ、溝/リブはクリートの側面にも施される。コーティングは、ソールと上方部分との間の接続ゾーンを被覆する。従って、ソールの縁はその上のコーティングによって完全に隠されているので、見えない。この設計においては、ボールをシュートするためにシューズの全表面を使用することはできない。
【0057】
図10は、可視の締め紐も、締め紐のための可視の大きい穴も持たないので、その上方部分の全表面がシュートのために使用できるスポーツシューズを示す。表面は、離間したコーティング加工エリアを備え、各々のエリアは異なる向きの溝/リブ構造を有する。ソールの縁及びクリートの外面も、この実施形態においてコーティングされる。
【0058】
図11及び12は、同じスポーツシューズの前面上方部分を右及び左方向から撮った写真である。上方部分は、黒いフィールドによって表されるように本発明に係るベースコーティングを備える。ベースコーティングの上に、第2層又はコーティング(図において黄色)が、円弧状境界を持つ複数のフィールドを備える設定されたパターンに従って施される。それぞれの円弧区分の形状は、関連する表面エリアの表面とボールの湾曲したミーティングラインに対応する。所与の円弧の方向は、ボールがシューズを離れる方向に影響する。パターンの境界の円弧設計に加えて、この第2コーティングも、リブを備え、湾曲溝/リブは、対応する円弧区分の方向に追随する(即ち、実質的にこれに平行に延びる)。写真から、表面の様々な部分において、関連する円弧区分の中心半径の方向(即ち、任意の円弧区分の二分点と円弧の中心を結ぶ直線)は、実質的に前向き又は前向きとの間に小さい角度しか成さない。図11及び12は、溝の深さ及び幅がシューズの前部から後部へ向かって増大し、前ノーズ部において、非常に細かい小さい溝/リブしかないことを示す。このように徐々に増大するリブの設計は、標的指向の正確性を改良することが分かった。
【0059】
図13及び14は、同様に、別の実施形態の右及び左側面を示す。ここでは、単一コーティングしか施されないが、溝/リブは、前の実施形態と同じ円弧設計を有し、溝の幅及び深さは、後方へ向かって増大する。溝/リブの設計は、主に、シューズの使用者がプレイするポストによって決まるが、プレーヤのボールの扱いの好みによっても決まる。円弧区分の中心半径線も、実質的に前方向きである。
【0060】
図15及び16は、別の実施形態の左及び右から撮った写真である。この実施形態において、黒いエリアはコーティングを持たず、ストライプ形パターンのみがコーティングされる。パターンを形成するエリアは僅かに湾曲し、境界線の円弧区分の中心半径は、この場合も前方向へ延びる。円弧区分の数は、前の実施形態の場合より少なく、コーティング加工エリアはより大きい。コーティング加工エリアは、この場合にも関連するコーティング加工エリアの円弧境界線と平行に延びる溝/リブを備える。
【0061】
図示する多数の実施形態から、本発明は、溝/リブ、コーティング加工エリア又は、リブ付コーティング加工エリアの設計の仕方に高い自由度を与えることが分かる。従って、ボールの方向付け及び標的指向性は、いくつもの手法でかつ個別の好みで実現できる。
【0062】
但し、本発明の基本的利点は、粒状コーティングに在る。コーティングは、弾性であり、コーティング加工表面とボールとの間に優れたコンタクトを与えて、寒い及び/又は多湿の条件の下でもプレーヤの意図に従ってボールを扱えるようにする。上述のように、リブ、コーティングのパターン及びコーティング加工層の数は、個別の好みに従って実現できる。
【0063】
図示するいくつかの実施形態は、全ての可能な設計の断片しか表していない。最も正確な結果は、プレーヤが自分の期待に合致する設計を見つけるために実験を行う時間が与えられた場合に達成できる。本発明の別の利点は、適切な手段及びツールを用いて基礎のベース表面を傷つけることなく除去でき、特定のプレーヤのためにより適したコーティング及び構造でコーティングし直すことができる。同じシューズを用いて反復的実験を実施できる可能性は、個別的最適化のための理想的解決法を与える。
【0064】
本発明に係るコーティングは、耐久性があり、いくつものシーズンに使用でき、コーティングが擦り減ったり摩耗したりした後、コーティングを除去して、新しいコーティングを施すことによってシューズを再使用できる。
【0065】
本明細書において説明した特性については、数人のプレーヤがテスト済みであり確認している。彼らの報告によれば、コーティングは、ボールの扱いを改良し、標的指向性の正確性を増強し、所与の状況においてボールを捻って方向付けするプレーヤの意図を解決する助けとなった。ボールスリップ又はミスシュートは報告されなかった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16