特許第6396905号(P6396905)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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6396905ワークピースを機械加工するための切削インサートおよびツール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6396905
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】ワークピースを機械加工するための切削インサートおよびツール
(51)【国際特許分類】
   B23C 5/20 20060101AFI20180913BHJP
   B23C 5/10 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   B23C5/20
   B23C5/10 D
【請求項の数】11
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-531516(P2015-531516)
(86)(22)【出願日】2013年9月2日
(65)【公表番号】特表2015-528399(P2015-528399A)
(43)【公表日】2015年9月28日
(86)【国際出願番号】EP2013068089
(87)【国際公開番号】WO2014044519
(87)【国際公開日】20140327
【審査請求日】2016年8月31日
(31)【優先権主張番号】102012108752.0
(32)【優先日】2012年9月18日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503128054
【氏名又は名称】ハルトメタル−ウェルクゾーグファブリック ポール ホーン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュタルク, クリスティアン
【審査官】 津田 健嗣
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−089250(JP,A)
【文献】 特表2002−520169(JP,A)
【文献】 実開平04−005308(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0027530(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0155004(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 5/20
B23C 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピースを機械加工するためのツール用の切削インサート(10)であって、
前記切削インサート(10)が、該切削インサート(10)の2つの対向する同等のベース面(16a、b)の中心を垂直に延びる孔軸線(14)を中心とする180°回転対称を有し、中心面(11)に沿って接続される2つの同等の部分(20a、20b)を有しており、
前記中心面(11)が、前記孔軸線(14)に対して直交するように延び、前記2つの対向する同等のベース面(16a、16b)の各々からの距離が同じであり、各部分(20a、20b)が、2つの相互に対向する同等の一次側面(22a−d)と2つの相互に対向する同等の二次側面(24a−d)とを有しており、
各一次側面(22a−d)が前記中心面(11)に対して平行に延びる直線状の一次刃先(12a−d)を有し、各二次側面(24a−d)が前記中心面(11)に対して直交するように延びる平面状の座面(32a−d)を有しており、
各部分(20a、20b)の前記2つの一次刃先(12a−d)が相互に平行に延び、その他の部分(20a、20b)の前記2つの一次刃先(12a−d)に向けて横断方向に延びており、
各部分(20a、20b)の前記2つの一次刃先(12a−d)がその他の部分(20a、20b)の2つの座面(32a−d)に対して平行に延びており、
各一次刃先(12a−d)が、それに対応する第一の端部(38a−d)において、それに対応する部分(20a、20b)の隣接する一方の二次側面(24a−d)に設けられる第一の突部(28a−d)に位置する第一の弓形刃先(34a−d)に移行するようになっており、
各一次刃先(12a−d)が、それに対応する、前記第一の端部とは反対側の第二の端部(40a−d)において、それに対応する部分(20a、20b)の隣接するその他の二次側面(24a−d)に設けられる第二の突部(30a−d)に位置する第二の弓形刃先(36a−d)に移行するようになっており、
前記第一の突部(28a−d)および前記第二の突部(30a−d)の各々が、それに対応する同一の二次側面(24a−d)に位置する前記座面(32a−d)に隣接し、該座面(32a−d)に対して突出するように構成されてな
前記第一の突部(28a−d)が前記第二の突部(30a−d)よりも大きい、切削インサート。
【請求項2】
前記切削インサート(10)がちょうど4つの同等の一次刃先(12a−d)を備えてなる、請求項1に記載の切削インサート。
【請求項3】
前記孔軸線(14)に沿って平面視で見た場合、前記切削インサート(10)が略偏菱形である、請求項1に記載の切削インサート。
【請求項4】
前記切削インサート(10)の前記2つの相互に対向する同等のベース面(16a、16b)の各々が平坦で、略偏菱形である、請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載の切削インサート。
【請求項5】
前記2つの部分(20a、20b)のうちの一方の部分が、前記中心面に位置する回転軸線を中心にして180°回転し、前記孔軸線(14)を中心にして一次刃先角度回転することにより他方の部分(20a、20b)に写像可能であり、前記一次刃先角度が、一方の部分(20a、20b)の一次刃先(12a−d)が他方の部分(20a、20b)の一次刃先(12a−d)と形成する挟角である、請求項1乃至4のうちのいずれか1項に記載の切削インサート。
【請求項6】
ワークピースを機械加工するためのツール用の切削インサート(10)であって
前記切削インサート(10)が、該切削インサート(10)の2つの対向する同等のベース面(16a、b)の中心を垂直に延びる孔軸線(14)を中心とする180°回転対称を有し、中心面(11)に沿って接続される2つの同等の部分(20a、20b)を有しており
前記中心面(11)が、前記孔軸線(14)に対して直交するように延び、前記2つの対向する同等のベース面(16a、16b)の各々からの距離が同じであり、各部分(20a、20b)が、2つの相互に対向する同等の一次側面(22a−d)と2つの相互に対向する同等の二次側面(24a−d)とを有しており
各一次側面(22a−d)が前記中心面(11)に対して平行に延びる直線状の一次刃先(12a−d)を有し、各二次側面(24a−d)が前記中心面(11)に対して直交するように延びる平面状の座面(32a−d)を有しており
各部分(20a、20b)の前記2つの一次刃先(12a−d)が相互に平行に延び、その他の部分(20a、20b)の前記2つの一次刃先(12a−d)に向けて横断方向に延びており
各部分(20a、20b)の前記2つの一次刃先(12a−d)がその他の部分(20a、20b)の2つの座面(32a−d)に対して平行に延びており
各一次刃先(12a−d)が、それに対応する第一の端部(38a−d)において、それに対応する部分(20a、20b)の隣接する一方の二次側面(24a−d)に設けられる第一の突部(28a−d)に位置する第一の弓形刃先(34a−d)に移行するようになっており
各一次刃先(12a−d)が、それに対応する、前記第一の端部とは反対側の第二の端部(40a−d)において、それに対応する部分(20a、20b)の隣接するその他の二次側面(24a−d)に設けられる第二の突部(30a−d)に位置する第二の弓形刃先(36a−d)に移行するようになっており
前記第一の突部(28a−d)および前記第二の突部(30a−d)の各々が、それに対応する同一の二次側面(24a−d)に位置する前記座面(32a−d)に隣接し、該座面(32a−d)に対して突出するように構成されてなり
前記第一の突部(28a−d)の各々が第一の逃げ面(42a−d)を有しており、該第一の逃げ面(42a−d)が、第一の二次刃先に隣接し、該第一の二次刃先において第一のクリアランス角度(α)を形成するように構成されてな
前記第二の突部(30a−d)の各々が第二の逃げ面(44a−d)を有しており、該第二の逃げ面(44a−d)が、第二の二次刃先に隣接し、該第二の二次刃先において第二のクリアランス角度(β)を形成するように構成されてなり
前記第一の逃げ面(42a−d)が前記第二の逃げ面(44a−d)よりも大きくなっており、前記第一のクリアランス角度(α)が前記第二のクリアランス角度(β)よりも大きくなっている、切削インサート。
【請求項7】
前記切削インサート(10)の4つのすべての一次刃先(12a−d)の各々が前記孔軸線(14)から第一の距離にあり、前記切削インサートの4つのすべて座面(32a−d)が前記孔軸線(14)から第二の距離にあり、前記第一の距離が前記第二の距離よりも小さくなっている、請求項1乃至のうちのいずれか1項に記載の切削インサート。
【請求項8】
前記中心面(11)から一次刃先(12a−d)までの距離は、該中心面(11)から前記ベース面(16a、16b)までの距離よりも小さくなっている、請求項1乃至のうちのいずれか1項に記載の切削インサート。
【請求項9】
各部分(20a、20b)の2つの一次刃先(12a−d)が、前記中心面(11)に対して平行に延びているその部分に対応する共通の一次刃先面に配置されており、各部分(20a、20b)の前記2つの一次刃先(12a−d)の各々と同一の部分(20a、20b)の前記ベース面(16a、16b)との間にはそれぞれ略平坦な一次逃げ面(46a−d)が局所的に設けられており、各一次逃げ面(46a−d)がそれに対応する、同一の部分(20a、20b)の一次刃先面に対して傾斜するように構成されてなる、請求項1乃至のうちのいずれか1項に記載の切削インサート。
【請求項10】
請求項1乃至のうちのいずれか一項に記載の切削インサート(10)が着脱可能に固定される少なくとも1つの切削インサート収納部(54)を有するツールホルダー(50)を備えてなるワークピースを機械加工するためのツール、とくにタンジェンシャルフライス加工用ツール。
【請求項11】
請求項1乃至10のうちのいずれか一項に記載の前記少なくとも1つの切削インサート(10)が、機械加工に用いられる前記一次刃先(12a)が前記半径方向と前記ツールホルダー(50)の回転軸線とにより定義される面との間に刃先ねじれ角度(γ)を形成するように、該刃先ねじれ角度(γ)だけねじられて前記切削インサート収納部(54)内に配置されてなる、請求項10に記載のツール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークピースを機械加工するためのツール用の切削インサート、とくにタンジェンシャル切削インサートに関するものである。さらに、本発明は、当該本発明にかかる切削インサートが着脱可能に固定される少なくとも1つの切削インサート収納部を有するツールホルダーを備えたワークピースを機械加工するためのツール、とくにタンジェンシャルフライス加工用ツールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
インデックス可能切削インサート,とくにタンジェンシャル切削インサートと通常呼ばれる本タイプの切削インサートは、金属加工、とくにフライス加工または旋盤加工の用途に用いられることが多い。第一に、本切削インサートはタンジェンシャルフライス加工に用いられる。このような切削インサートが用いられるフライス加工用ツールは、少なくとも1つ、しかし、通常複数の切削インサートをその周面に着脱可能に固定する回転対称を有したツールホルダーを備えている。
【0003】
フライス加工作業中におけるワークピースからの材料の除去は、切削インサートに形成される高精度なブレードエッジまたは刃先によって担保される。摩耗をできるだけ小さく維持するため、処理中に発生する非常に高い切削力に耐えるため、かつできるだけ高い精度を担保するために、これらの切削インサートはカーバイドから製造されることが多い。しかしながら、材料のストレスが高いため、刃先は時間の経過とともに摩耗されてしまう。したがって、とくに高精度を必要とするフライス加工作業時には、切削インサートをある時間の経過後に交換する必要がある。
【0004】
刃先が摩耗される毎に比較的高価な切削インサート全体を交換しなければならないことを回避するため、相互に対称的に配置される複数の刃先を備えた切削インサートが多数開発されている。相互に対称的に配置される4つの同等の一次刃先を備えたインデックス可能切削インサートがヨーロッパ特許1572407号により公知となっている。
【0005】
この文献に記載のインデックス可能切削インサートは、3つの主軸線の各々について180°回転対称となるように形成されている。使用している一次刃先が摩耗するとすぐ、インデックス可能切削インサートを180°だけ回転または/または逆さにしてツールホルダー内の新しい位置に固定することができる。4つの一次刃先のうちの1つが摩耗した場合であっても、インデックス可能切削インサート全体を交換する必要がなく、ツールホルダー内で回転または逆さにするだけでよいので、まだ使用もせずに摩耗もしていない一次刃先を用いて機械加工を継続することができる。
【0006】
各一次刃先が同一の刃先幾何学形状を有したインデックス可能切削インサートは、その対称性のおかげで、当該インデックス可能切削インサートを逆さにするまたは回転することによって切削特性が変わってしまうようなことはない。換言すれば、4つの刃先のすべてが摩耗してしまってインデックス可能切削インサートを廃棄しなければならないところまでに単一のかつ同じインデックス可能切削インサートを4回使用することができる。
【0007】
逆さにすることができない単純な切削インサートとは対照的に、インデックス可能切削インサートの柔軟性ははるかに大きい。また、インデックス可能切削インサートは、繰り返して使用することができるので、機械加工精度を失うことなくはるかに長い時間用いることができる。このような4つの刃を備えたインデックス可能切削インサートは、単一の刃を備えた(逆さにできない)切削インサートよりも製造がはるかに複雑であるものの、用途がはるかに広いだけでなく、総合的に考えれば、消費者にとってコスト効率もはるかに高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このようなインデックス可能切削インサートを製造業者の視点から考えると、その構造における問題点は、このような複数の同等の刃先を備えるインデックス可能切削インサートの対称性を実現する点だけでなく、それと同時に、これらの刃先の各々が同じ機械加工特性を有し、その結果、同じように使用可能であることを担保するという点にもある。この場合において最も重大な問題は、切削インサートまたはツールホルダーの他の構成要素との起こりうる衝突を回避して、ツールホルダーのツール収納部内に切削インサートを堅固に固定することを担保することにより、最適な力の導入を担保する点にある。
【0009】
具体的にいえば、ある時間において使用されていない刃先、または切削インサートの他の構成要素がワークピースと望ましくない衝突を引き起こしてしまわないことを担保することが重要である。したがって、ワークピースとの衝突は、ある時間にワークピースの機械加工に使用することを意図しない切削インサートの部位に生じてはならない。換言すれば、ある時間に使用していない刃先が障害物の影響を受けることなく自由に走行することを担保することが重要である。たった1つの刃先しかない従来の切削インサートの場合よりも複数の交互に使用可能な刃先を有するインデックス可能切削インサートの場合の方がこのような要件を満たすのが困難であることは明白である。
【0010】
上述の対称性、その他の刃先の自由な走行、およびワークピースとの切削インサートの望ましくない衝突の回避は、ヨーロッパ特許1572407号により公知となっているインデックス可能切削インサートの場合には解決される。というのは、当該インデックス可能切削インサートが当該インデックス可能切削インサートの主軸線を中心として相互に前もって決められた角度だけねじられる2つの部分を備えているからである。この場合、一次刃先の各々は相互に前もって決められた角度だけねじられている。このようにすると、必要な対称性および自由な走行に関する特性は、技術的に持続可能なやり方で担保することができる。それに対して、それ自体がねじられるインデックス可能切削インサートの場合には、複雑な形状した比較的多くの表面が生じる。ねじると、とくに一次インサート面に、製造するのに高度な技術を必要とする比較的複雑なすくい面が生じることとなる。これが技術的に実現可能であるとしても、このタイプのものを製造するとなると、製造コストが非常に高くつく。結局、このことは、最終消費者にとってインデックス可能切削インサートの単位原価が高くなることになる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、従来技術により公知となっている上述のインデックス可能切削インサートに代えて提供する、冒頭に述べたタイプの切削インサート、とくに製造が簡単な切削インサートを提供することを目的としたものである。
【0012】
冒頭に述べた切削インサートによれば、この目的は、切削インサートが、当該切削インサートの2つの対向する同等のベース面の中心を垂直に延びる孔軸線を中心とした180°回転対称を有し、中心面に沿って接続される2つの同等の部分を有しており、中心面が、孔軸線に対して直交するように延び、2つの対向する同等のベース面の各々からの距離が同じであり、各部分が、2つの相互に対向する同等の一次側面と2つの相互に対向する同等の二次側面とを有しており、各一次側面が中心面に対して平行に延びる直線状の一次刃先を有し、各二次側面が中心面に対して直交するように延びる平面状の座面を有しており、各部分の2つの一次刃先が相互に平行に延び、その他の部分の2つの一次刃先に向けて横断方向に延びており、各部分の2つの一次刃先がその他の部分の2つの座面に対して平行に延びており、各一次刃先が、それに対応する第一の端部において、それに対応する部分の隣接する一方の二次側面に設けられる第一の突部に位置する第一の弓形刃先に移行するようになっており、各一次刃先が、それに対応する第一の端部とは反対側の第二の端部において、それに対応する部分の隣接するその他の二次側面に設けられる第二の突部に位置する第二の弓形刃先に移行するようになっており、第一の突部および第二の突部の各々が、それに対応する同一の二次側面に位置する座面に隣接し、当該座面に対して突出するように構成されていることにより達成される。
【0013】
このようにして、上述の目的全体が解決される。
【0014】
本発明者らは、従来技術により公知になっている切削インサートと比較して、製造の視点のみでなく切削特性の向上の視点からも有利なまったく新規の4つの刃を備えた切削インサートを提供することに成功している。ヨーロッパ特許1572407号により公知となっている切削インサートと同様に、本発明にかかる切削インサートは、切削インサートの中心を延びる孔軸線を中心とする180°回転対称を有した2つの接合される同等の部分を備えているものの、本発明にかかる切削インサートは、構造の視点からも幾何学的形状および製造の視点からも、ヨーロッパ特許1572407号により公知となっている切削インサートとは異なるものである。本発明にかかる切削インサートでは、切削幾何学形状および切削インサートに設けられツールホルダーにより支えられる座面はまったく異なって構成されている。ヨーロッパ特許1572407号により公知となっている切削インサートとは対照的に、本発明にかかる切削インサートは、その主軸線のすべてを中心とした180°回転対称を有するように構成されているのではなく、中央の孔軸線を中心とした180°回転対称を有するようにのみ構成されている。それにもかかわらず、切削インサートに設けられる4つの同等の直線状の一次刃先(ブレードエッジ)はすべて、1つの刃先から他の刃先に変更された場合でも、機械加工特性または切削特性が変わってしまうことなく同じように使用可能となっている。
【0015】
この点において特筆すべき点は、本発明では、「180°回転対称」という用語の意味は、孔軸線を中心として180°回転すると、回転前の切削インサートの外観と回転後の切削インサートの外観とが完全に重なり合うことを意味しているということである。さらに特筆すべき点は、本明細書に記載の「2つの同等の部分」は、互いに分離可能な切削インサートの別々の構成要素として解釈されることを意図したものではなく、本発明にかかる切削インサートが、幾何学形状が同じになるように製造されかつ合わせると切削インサートを形成する2つの本体部分からなっていることを示すことのみを意図したものある。これらの2つの部分は、本例では、中心面に沿って一体化するように接続されるようになっている。
【0016】
これら2つの部分の各々は、相互に平行に延びる2つのベース面のうちの1つを有しており、また、いずれの部分の場合であっても、各ベース面は、相互に横断するように延びる空間側面(spatial sides)で、相互に横断するように配置されかつ相互に対向する2つの対向する一次側面および2つの二次側面により空間との境界が区切られている。したがって、一次側面および二次側面は、それぞれ、それに対応する部分の2つの対向する空間側面を表し、これらの空間側面とベース面とにより各部分の表面境界が区切られている。
【0017】
切削インサートの各部分の2つの一次側面または切削インサートの合計4つの一次側面の各々は、そこに配置される一次刃先を有している。当該一次刃先は、中心面に対して平行かつ直線状の延び、その端部の各々は、第一の弓形刃先および第二の弓形刃先に隣接している。いずれの部分の場合であっても、「第一の弓形刃先」および「第二の弓形刃先」という表現は、切削インサートの異なる弓形刃先のことのみを意味したものとして解釈されるべきであり、数を制限したものとして解釈されるべきでない。したがって、本発明にかかる切削インサートは、全体として、4つの一次刃先だけでなく4つの第一の弓形刃先と4つの第二の弓形刃先を備えている。第一の弓形刃先および第二の弓形刃先は、本例では、相互間の幾何学形状およびサイズの違いのみにより離されている。第一の弓形刃先および第二の弓形刃先は切削インサートの外部空間に接する8つの角部(eight spacially external corners)に配置されている。本発明の好ましい構成によれば、第一の弓形刃先および第二の弓形刃先の各々はRの付いた角または面取りされた角として構成されている。これらのRの付いた角または面取りされた角でワークピースを機械加工することもできるので、本例では、これらを第一の弓形刃先および第二の弓形刃先と表すことにする。
【0018】
本発明にかかる切削インサートの重要な特徴は、記載の第一の弓形刃先および第二の弓形刃先が各部分の各二次側面に設けられる第一の突部および第二の突部に配置されているという点にあることが分かる。「第一の突部」および「第二の突部」という表現は、この場合、同一の形状または同一のサイズの突部に対する名称または定義として単に見なされてもよいし、または、切削インサートの角部の領域において各部の二次側面に配置される2つの異なるタイプの突部、すなわち第一の突部および第二の突部を区別するための用語として単に見なされてもよい。本例では、いずれの部分の場合であっても、第一の突部および第二の突部は、それぞれ、同一の二次側面に配置される平坦な座面の端部に隣接し、そこから突出している。したがって、第一の突部および第二の突部は、各部分の二次側面に配置され隣接する座面に対して側面方向に突出する材料突出部または材料隆起部のことであるとして理解される。
【0019】
本件の場合には、これらの突部は、切削インサートの必要なフリーランニング特性を担保することを意図したクリアランス角度を二次刃先に形成するように用いられる。換言すれば、このようにして、機械加工時に必要となる切削インサートのフリーランニング特性に必要なクリアランス角度が第一の突部および第二の突部に形成される。このことは、いずれの部分の場合であっても、複数のクリアランス角度を切削インサートの角部に形成するように、各突部が平坦でおよび/または複雑な形状を有しかつ隣接する座面および隣接する二次刃先に対して傾斜している面を有しているので、基本的に生じる。これらの第一の突部および第二の突部のクリアランス角度の配置または構成により、切削インサートは、機械加工中に用いられない切削インサートの構成要素との衝突を効果的に回避するためにそれ自体を過度にねじる必要はなくなる。その他の点では、たとえばヨーロッパ特許1572407号により公知となっている切削インサートの場合のように、切削インサートの外側シェルの表面の形状がそれほど複雑ではなくなり、このことは、とくに切削インサートの製造をより簡単なものとし、ひいてはコスト効率を良好なものとする。
【0020】
第一の突部および第二の突部が各部分の二次側面に設けられかつクリアランス角度が統合されることにより、切削インサートの対称性を維持するとともにフリーランニング特性をも担保することが可能となる。したがって、本発明にかかるタンジェンシャル切削インサートは、プロセス時に切削特性および幾何学的特性を維持しながら4つの一次刃先を次々と用いることができるように、ツールホルダーにおいて4つの異なる位置で用いることができるようになっている。
【0021】
本発明にかかる切削インサートのさらなる主要な特徴は、いずれの部分の場合であっても、各部分の2つの一次刃先がその他の部分の2つの座面に対して平行となるように延設されているという点にある。このことは、切削インサートの対称性に対する好ましい効果を奏するだけでなく、この目的のためにツールホルダーに設けられる切削インサート収納部に切削インサートを堅固にかつ機械的に安定した位置に固定することも可能とする。従来技術により公知となっている切削インサートの場合、このような座面は一次刃先または刃先に対して平行となるようには構成されていないことが多い。このことは、とくに切削インサートの座面をより複雑なものとし、ひいては製造に対して悪い影響を与えるだけでなく、機械加工時に最終的に生じる切削特性およびチップ特性に対して悪い影響をある程度与えてしまうこととなる。
【0022】
ここまで切削インサートの幾何学形状の説明に用いられている「中心面」とは、実際に物理的に存在しているものではない想像上の補助面のことであることに留意されたい。
【0023】
本発明の好ましい構成によれば、孔軸線に沿って平面視された場合、切削インサートは略偏菱形(substantially rhomboidal)である。具体的にいえば、切削インサートの相互に対向する2つの同等のベース面は、それぞれ、平坦にかつ略偏菱形に構成されていることが好ましい。
【0024】
「偏菱形」とは4つの辺を有する平行四辺形のことである。この場合、この平行四辺形の対向する辺は、平行で同じ長さを有しており、4つの角は直角を形成していない。しかしながら、すべての角の角度の合計は360°となっている。この偏菱形は、異なる長さでありかつ互いに斜交する、すなわち直交しない2つの対角線を有している。したがって、偏菱形は等辺菱形とは異なるものである。
【0025】
しかしながら、本発明にかかる切削インサートは上記の平面視において正確には偏菱形ではないことに留意されたい。具体的にいえば、本発明にかかる切削インサートの形状は、偏菱形の理想的な形状とは切削インサートの角部において少なくとも部分的に異なっている。この部分的な異なりは、先にすでに記載の、切削インサートの角部で突出する第一の突部および第二の突部によるためである。さらに、好ましくは平坦であるベース面も偏菱形の形状とはわずかに異なっている。このように、それらは略偏菱形でしかない。
【0026】
有利には、クリアランス角度を形成する第一の突部および第二の突部を有する切削インサートの偏菱形状は、このようにして必要なフリーランニング特性および対称性を実現することができるという長所を有している。切削インサートが略偏菱形状を有しているため、製造するのが困難で複雑な形状を有した表面が比較的少ない。したがって、切削インサートの4つの一次インサート側面は同一であってもよい。同様に、切削インサートに形成する必要がある傾斜面および凸面の数がほんの僅かしかないので、製造時の機械加工に関連する支出が相当に下げることが可能となる。
【0027】
本発明のさらに好ましい構成によれば、2つの部分のうちの一方の部分は、中心面に位置する回転軸を中心として180°回転させ、孔軸線を中心として一次刃先角度だけ回転させることにより他方の部分に写像可能となっていてもよく、記載の一次刃先角度は、いずれの部分の場合であっても、一方の部分の一次刃先が他方の部分の一次刃先と形成する挟角のことである。
【0028】
したがって、これら2つの部分は中心面に対して鏡面対称とはなっていない。もっと正確にいえば、これら2つの部分は、中心面に沿って相互に接する幾何学的かつ構造上同等の本体部分のことである。上述の対応方位関係(coincidental relationship)は、相互の空間的な配置(spatial orientation)を説明することのみを意図したものである。
【0029】
全体的にみて、2つの対向する同等のベース面を有し、これらのベース面の間を延びる4つの同等の一次インサート面により境界が定められている切削インサートの本体が製造されている。いずれの部分の場合であっても、これらの一次インサート面の各々は、一方の部分の二次側面(一次刃先を含む)と他方の部分の一次側面とを有している。いずれの部分の場合であっても、対向する一次インサート面は同一部分の一次刃先を有しているが、隣接する一次インサート面の場合には、一次刃先は、一次インサート面の下側リムに1つと、上側リムに1つとが配置されている。
【0030】
さらに好ましい構成によれば、第一の突部は第二の突部よりも大きくなるような構成となっている。それに対して、第一の弓形刃先および第二の弓形刃先、すなわち角部のRまたは斜面、ならびに隣接する二次刃先は、同一のサイズとなるように構成されることが好ましい。
【0031】
この理由は、フリーランニング特性の維持、すなわち衝突の回避のためである。この構成にかかる切削インサートを用いると、フライス加工の用途に応じて、両方の角を(両方の弓形刃先で)切削することが可能となるか、または、複数の切削インサートが互いに軸方向にオフセットされているタンジェンシャルスロットフライス加工ツールの場合、いずれの部分の場合であっても、(より大きな第一のクリアランス角度によりもたらされる)第一の弓形刃先を配置する突出した角部がワークピースを適切に押圧するようにすることが可能となる。このことにより逃げ面の磨耗を削減することができる。
【0032】
さらに好ましい構成によれば、いずれの部分の場合であっても、各第一の突部は、第一の二次刃先に隣接するとともに当該第一の二次刃先で第一のクリアランス角度を形成する第一の逃げ面を有している。そして、各第二の突部は、第二の二次刃先に隣接するとともに当該第二の二次刃先で第二のクリアランス角度を形成する二次逃げ面を有している。いずれの部分の場合であっても、第一の二次刃先は第一の弓形刃先に隣接している。また、いずれの部分の場合であっても、第二の二次刃先は第二の弓形刃先に隣接している。好ましくは、第一の逃げ面は第二の逃げ面よりも大きくなるように構成され、第一のクリアランス角度は第二のクリアランス角度より大きくなるように構成されている。しかしながらいうまでもなく、第一の逃げ面の表面積は第二の逃げ面の表面積よりもほんの僅かだけ大きければよい。
【0033】
先の場合と同様に、その理由は、切削インサートを用いて機械加工している間、対称性およびフリーランニング特性の提供が必要となるからである。
【0034】
第一のクリアランス角度および第二のクリアランス角度の各々により、機械加工時に用いられていないその他の刃先および切削インサートの角部のワークピースとの衝突が阻止されるようになっている。本発明によれば、第一のクリアランス角度および第二のクリアランス角度の各々は、1〜10°の範囲、好ましくは1〜5°の範囲である。
【0035】
本発明にかかる切削インサートのために選択される刃先幾何学形状により、ワークピースを機械加工する際にポジティブカットと呼ばれるものが形成される。減少していく材料とは反対(機械加工時に生じるスロット壁と反対)方向に向けてチップがすくい面を介して取り除かれる場合にポジティブカットという表現が用いられる。それとは反対方向に延びるネガティブカットとは対照的に、このポジティブカットはチップ形成特性の点において有利である。
【0036】
本発明のさらなる構成によれば、切削インサートの4つの一次刃先すべてがそれぞれ孔軸線からの第一の距離の位置にあり、また、切削インサートの4つの座面すべてが、それぞれ孔軸線からの第二の距離の位置にあり、第一の距離は第二の距離より小さくなっている。
【0037】
いうまでもなく、用語「距離」が孔軸線からの孔軸線に対する垂直の距離を意味すると理解されることを意図している。したがっていずれの部分の場合であっても、一方の部分の座面は他方の部分の一次刃先に対して前に突出している。したがって、座面は、一次刃先よりも孔軸線から離れた位置にある。逆の言い方をすると、一次刃先は、座面に対して、中央の孔軸線の方向に向けてより内側にオフセットされている。
【0038】
さらに、一次刃先は中心面からの距離がベース面よりも小さな位置にあることが好ましい。この場合、各部分の2つの一次刃先は、それぞれ中心面に対して平行に延びる共通の一次刃先面(想像上の補助面)に設けられている。ベース面の高さと2つの一次刃先の高さとの間がオフセットされているため、いずれの部分の場合であっても、一方の部分の一次刃先とそれと同一の部分のベース面との間には、対応する一次刃先面に対して傾斜する略平坦な一次逃げ面が形成される。
【0039】
この平坦な一次逃げ面は切削インサートの必要なフリーランニング特性を担保するのに必要なものである。というのは、切削インサートのベース面が機械加工時にワークピースと衝突する恐れがあるからである。一次逃げ面がそれに隣接するベース面との間に形成する傾斜角は5°の範囲にあることが好ましい。
【0040】
さらに、好ましくは、本発明にかかる切削インサートは、ベース面に直交するように延びてベース面を貫通する貫通孔を有している。この貫通孔は、ツールホルダーに切削インサートを固定するのに非常に役立つ。この目的のために、固定手段、とくにネジがこの貫通孔を通り抜けてツールホルダーに固定されるようになっていることが好ましい。
【0041】
本発明は、切削インサートそれ自体のみに関するものでなく、この切削インサートを用いるツールにさらに関するものである。以下に、この点に関して記載する。本発明によれば、ツールホルダーの切削インサート収納部内に用いられる切削インサートは、ツールホルダーの半径方向を中心として決められた刃先ねじれ角度だけねじられた状態で配置されることにより、機械加工時に用いられる一次刃先がツールホルダーの半径方向と回転軸とにより定義される面との間に刃先ねじれ角度を形成するようになっている。したがって換言すれば、機械加工時に用いられる一次刃先は、フライス加工ツールの機械加工方向または回転方向に対して僅かに回転させられた状態で配置されている。このようにして刃先ねじれ角度が形成される。刃先ねじれ角度はその配置のため軸角と呼ばれこともある。
【0042】
ツールホルダー内においてインデックス可能切削インサートまたは切削インサートを回転させるのは、基本的に、使用されていない刃先との衝突および上述の第一の突部および第二の突部との衝突を回避する目的のためである。
【0043】
この点では、本発明にかかる切削インサートの使用が主としてタンジェンシャルスロットフライス加工ツールの例を用いて説明されているという点に留意されたい。しかしながら、原則として、本発明にかかる切削インサートは、エンドミルまたはターニングホルダーに同様に用いることができる。したがって、本発明にかかる切削インサートは本明細書に記載の用途に限定されるわけではない。
【0044】
いうまでもなく、上述の特徴および下記の特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、それぞれの実施例に記載の組み合わせのみでなく他の組み合わせでも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図面には、本発明の実施形態の一例が示され、下記の記載により詳細に説明されている。
図1】本発明の第一の実施形態にかかる切削インサートを示す斜視図である。
図2】本発明の第一の実施形態にかかる切削インサートを上から見た平面図である。
図3】本発明の第一の実施形態にかかる切削インサートを正面から見た平面図である。
図4】本発明の第一の実施形態にかかる切削インサートを側面から見たさらなる平面図である。
図5】本発明の第一の実施形態にかかる切削インサートを示す断面図(断面B−B)である。
図6】本発明の第一の実施形態にかかる切削インサートを示すさらなる断面図(断面A−A)である。
図7図6を詳細に示す図である。
図8】本発明にかかる切削インサートが挿入されていない状態の本発明にかかるツールホルダーを示す斜視図である。
図9】本発明にかかる切削インサートが挿入されている状態の本発明にかかるツールホルダーを示す斜視図である。
図10】切削インサートが挿入されている状態の本発明かかるツールホルダーを側面から見た平面図である。
図11】切削インサートが挿入されている状態の本発明かかるツールホルダーを側面から見たさらなる平面図である。
図12】切削インサートが挿入されている状態の本発明かかるツールホルダーを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1図6には、さまざまな方向から本発明のある実施形態にかかる切削インサートを見た図が示されている。切削インサートは、引用符号10でその全体が示されるように表されている。本発明の切削インサートが4つの同一の直線状の一次刃先12a−dを含む4つの刃を持つインデックス可能な切削インサート10のことであることは図1に記載の斜視図から明らかである(図1では隠れている一次刃先12dについては、たとえば図3を参照)。
【0047】
主な使用目的、具体的にはタンジェンシャルフライス加工またはタンジェンシャルスロットフライス加工のため、このタイプの切削インサート10は、タンジェンシャル切削インサートとも呼ばれる。切削インサート本体の外形は6つの側面により境界が画定されている。2つの端面の各々は、切削インサート10の中心を延びる孔軸線14に対して直交するように向いている平面状のベース面16a、16bにより構成されている(図1では隠れているベース面16bについては、たとえば図5および図6を参照)。さらに、切削インサート本体の外側面は、ベース面16a、16bの間を延びる4つの同等の一次インサート側面18a−dによりその境界が画定されている。これらの一次インサート側面18a−dには、それぞれ一次刃先12a−dが配置されている。
【0048】
切削インサート10が2つの同等の部分20a、20bから製造されていることがとくに図1から明らかである。下記の記載では、2つの部分20a、20bへの分割は切削インサート10の説明を簡単にすることのみを意図したものである。しかしながらこの場合、このことが2つの別々の部分が存在することを意味していない。しかしながら、切削インサート10を2つの同等の部分20a、20bに分割することはとくに図1を考慮すると好都合なように見える。これら2つの部分20a、20bは、孔軸線14に対して直交するように延びている想像上の中心面11に沿って接続され、2つのベース面16a、16bの各々からの同一距離にある。このように、この中心面は、切削インサート10を2つの同等の部分、すなわち第一の部分20aと第二の部分20bとに想像上分割するようになっている。
【0049】
これら2つの部分の各々、すなわち本体部分20a、20bは、一次刃先12a−dが配置される2つの相互に対向する同等の一次側面22a−dと、それを横断する方向に延びかつ相互に対向する2つの同等の二次側面24a−dとを有している。一次側面22a、22cは相互に対向し、第一の部分20aに含まれる。同様に、第一の部分20aに含まれる二次側面24b、24dは、相互に対向して配置される。それに対して、一次側面22b、22dおよび二次側面24a、24cは第二の部分20bに含まれる。
【0050】
切削インサート10の4つの同等の一次インサート側面18a−dの各々が一方の部分20a、20bの一次側面22a−dと他方の部分20a、20bの二次側面24a−dとを有しているので、全体として、切削インサート10は180°回転対称を有している。一次インサート側面18aは、たとえば上側の部分20aの一次側面22aと下側の部分20bの二次側面24aとを含んでいる。同様に、一次インサート側面18bは、上側の部分20aの二次側面24bと下側の部分20bの一次側面22bとを含んでいる。
【0051】
4つの同等の一次インサート側面18a−dのためおよび上述の孔軸線14を中心とした切削インサート10の180°回転対称という特性のため、切削幾何学および切削特性を変更することなく、切削インサートをツールホルダーの4つの異なる位置で用いることができる。たとえば、機械加工にまず一次刃先12aを用いることができる。一次刃先12aが摩耗してしまうとすぐ、一次刃先12cを用いることができるように切削インサート10を孔軸線14を中心として180°回転させることができる。2つの一次刃先12b、12cの使用を可能にするには、切削インサートを、中心面11に位置するとともに孔軸線14に対して直交するように向けられている軸線を中心として反転させ、一次刃先12b、dのうちの1つがワークピースの方向に向くようにツールホルダーに対応する方法で再び固定させるだけでよい。いうまでもなく、この目的のためには、切削インサート10をその都度ツールホルダーから取り外して新しい位置に再び固定させるようにしなければならない。
【0052】
図8図12から明らかなように、切削インサート10をたとえばネジの如き固定部材によりワークホルダーに固定することが好ましい。このことについては、下記に詳細に記載する。この目的のため、このネジは、切削インサート10の中心に設けられた貫通孔26に挿入することができるようになっている。好ましくは、貫通孔26は、2つのベース面16a、bに対して正確に直交するように、すなわち孔軸線14に沿って延びている。しかしながらいうまでもなく、本発明の範囲から逸脱することなく他の方法で固定する可能性についても容易に想定しうる。
【0053】
下記の記載では、本発明にとって重要な事項および本発明にかかる切削インサート10の詳細な構造についてより詳細に説明することを意図している。2つの部分20a、20bの二次側面24a−dの各々に配置される第一の突部28a−dおよび第二の突部30a−dに本発明にかかる切削インサート10の中心的な態様を見ることができる。いずれの部分の場合であっても、第一の突部28a−dの各々および第二の突部30a−dの各々は、二次側面24a−dの各々の端部に配置されている。いずれの部分の場合であっても、各二次側面24a−dの第一の突部28a−dおよび第二の突部30a−dは、それぞれ、同一の二次側面に位置する座面32a−dにより分離されている。各座面32a−dは、平面形状に構成され、既に先に記載されているように切削インサート10を2つの部分20a、20bに分割する想像上の中心面11に対して直交するように延びている。図1から明らかなように、たとえば上側の部分20aの二次側面24bについて考察すると、二次側面24bは、図面から見て右側の端部に第一の突部28bを有し、図面から見て左側の端部に第二の突部30aを有している。座面32bはそれらの間に延在している。その他の二次側面24a、24c、24dについても同様に構成されている。
【0054】
第一の突部28a−dおよび第二の突部30a−dは、図示されているように、座面32a−dについてそれぞれ対応する二次側面24a−dから突出している。それらはこのように材料の隆起を形成している。図1からさらに明らかなように、上述の切削インサート10の対称性は、切削インサート10の端部側の第一の突部28a−dおよび第二の突部30a−dの交互の配置のために保持されるようになっている。
【0055】
第一の突部28a−dおよび第二の突部30a−dは、それぞれ、第一の弓形刃先34a−dおよび第二の弓形刃先36a−dを形成しており、いずれの部分の場合であっても、第一の弓形刃先34a−dおよび第二の弓形刃先36a−dは、それぞれ、直線状の一次刃先12a−dの端部に隣接している。したがって、各一次刃先12a−dは、その第一の端部38a−dにおいて第一の弓形刃先34a−dに移行し、その第二の端部40a−dにおいて第二の弓形刃先36a−dへ移行する。このことは、図1のとくに上方左側部にこの場合の一例として視認可能に詳細に説明されている。一次刃先12aがたとえばその第一の端部38aにおいて第一の弓形刃先34aへ移行している。この第一の弓形刃先34aは第一の突部28aに位置している。それとは反対側の端部40aでは、一次刃先12aは第二の弓形刃先36aへ移行し、第二の弓形刃先36aは第二の突部30aに位置している。いずれの部分の場合であっても、第一の弓形刃先34a−dおよび第二の弓形刃先36a−dは、それぞれ、角にRまたは斜面を形成するように構成されている。これらの角のRもしくは斜面でワークピースに機械加工することもできるので、本明細書では、これらは、それぞれ、第一の弓形刃先34a−dおよび第二の弓形刃先36a−dと呼ばれている。
【0056】
2つの異なるタイプの突部28a−dおよび30a−dは、それらの形状およびサイズが異なっているのが好ましい。それに対して、これらの2つの異なるタイプの部分切削刃先34a−dおよび36a−dは同一のサイズとなるように構成されていることが好ましい。
【0057】
好ましくは、第一の突部28a−dは、第二の突部30a−dよりも大きくなるように構成されている。突部28a−dおよび30a−dの幾何学形状またはサイズの点における異なる構成は、それぞれ、個々の機械加工作業中に使用されていな部材および刃先のフリーランニング特性を実質的に担保し、ひいては衝突を回避するように機能するようになっている。フリーランニング特性は切削インサート構造の複雑さのために担保することが比較的難しい。換言すれば、機械加工時における切削インサート10のフリーランニング特性に必要となるクリアランス角度が第一の突部28a−dおよび第二の突部30a−dに直接形成される。従来から知られているこのタイプの切削インサートの場合、これらのクリアランス角度は、通常、それ自体の切削インサート10の比較的大きなねじれによりまたは複雑な構成の切削幾何学形状(cutting geometry of complex configuration)により担保されるようになっている。しかしながら、切削インサート10の角で突出する鼻のような突部28a−d、30a−dに提案のようなクリアランス角度を導入することは、製造の観点から見た利点を有することができる。その他の点では、本発明にかかる切削インサート10は、機械加工特性およびチップ形成特性の点において利点を有していることも証明されている。
【0058】
たとえば図2の記載から明らかなように、切削インサート10の角に形成されるクリアランス角度は、第一の突部28a−dおよび第二の突部30a−dにそれぞれ形成される第一の逃げ面42a−dおよび第二の逃げ面44a−dにより実現される。いずれの部分の場合であっても、これらの第一の逃げ面42a−dは第一の突部28a−dに配置されている。それに対して、第二の逃げ面44a−dは第二の突部30a−dに形成されている。
【0059】
第一の逃げ面42a−dに形成される第一のクリアランス角度は、図2において角度αで表されている。同様に、図2には、第二の逃げ面44a−dに形成される第二のクリアランス角度βが示されている。しかしながら、図2では、第二のクリアランス角度βは概略的にのみ示されている。というのは、ここに記載の実施形態によれば、そのサイズがゼロであるからである。しかしながら、他のサイズの角度も原理的には考えられている。第一のクリアランス角度αおよび第二のクリアランス角度βは、0〜10°の範囲、とくに0〜5°の範囲となるように選択されることが好ましい。
【0060】
フリーランニング特性を担保するために、第一のクリアランス角度αが第二のクリアランス角度βよりも大きいことがとくに好ましい。いうまでもなく、これらのクリアランス角度α、βは、いずれにしても、ツールホルダー内の切削インサート10の向きに応じて変わる。図11において一例として示されているように、軸角γで僅かにねじられているツールホルダー内に配置されている切削インサートの場合、2つのラジアルクリアランス角度αおよびβのサイズはいずれにしても図11に示されている角度α図2に示されている角度αよりも小さくなりかつ図11に示されている角度β図2に示されている角度βよりも大きくなるように変わる。
【0061】
その他の点では、第一の逃げ面42a−dおよび第二の逃げ面44a−dもそれぞれ孔軸線14に対して傾斜させることにより(したがって、それに平行ではない)、とくに図10に示されているさらなるクリアランス角度δが形成される。したがって、切削インサート10のその他の構成要素との望ましくない衝突は軸線方向にも生じなければ半径方向にも生じないようになっている。
【0062】
本発明のさらなる主要な概念は切削インサート10の特徴的な形状によりもたらされる。図2に記載の平面図からとくに明らかなように、切削インサート10は、平面視においてほぼ偏菱形である。具体的にいえば、各部分20a、20bの端側のベース面16a、16bが偏菱形である。いうまでもなく、切削インサート10全体またはベース面16a、bのいずれも偏菱形に正確には一致していないが、ほぼこの形状に似ている。本例では、対向する辺の並列性に加えて、偏菱形の特徴、すなわち隣接する辺が≠90°の狭角を形成するという点が実質的に満たされている。図2から明らかなように、たとえば、一次刃先12aおよび座面32bは90未満の狭角εを形成している。好ましくは、この角度εは80°の領域にある。
【0063】
本発明にかかる切削インサート10のさらなる主要な特徴は、いずれの部分の場合であっても、一方の部分20a、20bの一次刃先12a−d、が他方の部分20a、20bの座面32a−dに対して平行に延びていることにある。たとえば図2から分かるように、部分20aの一次刃先12aは部分20bの座面32aに対して平行に延びている。同様に、部分20aの一次刃先12cも部分20bの座面32cに対して平行に延びている。さらに、図2および図5から分かるように、一次刃先12a−dは、座面32a−dに対して内側向き、すなわち中央孔軸線14の方向に向けてオフセットされている。したがって換言すれば、座面32a−cは、一次刃先12a−cよりも孔軸線14からの距離が大きい。
【0064】
さらに、一次刃先12a−dもベース面16a、16bに対して僅かに鉛直方向にオフセットされている(たとえば図4を参照)。詳細にいえば、中心面11からの一次刃先12a−dの距離は、この中心面11からのベース面16a、bの距離よりも小さくなっている。いずれの部分の場合であっても、この垂直方向のオフセットのため、一次逃げ面46a、46dは、同一の部分20a、20bの一次刃先12a−dとベース面16a、16bとの間に形成されることとなる。
【0065】
図7には、一次逃げ面46aの例を用いて一次逃げ面46a−dにより形成されるクリアランス角度τが拡大して示されている。本発明の好ましい構成によれば、この角度は、0.5〜10°の範囲、とくに5°の領域または正確に5°である。さらに、図7の拡大図から分かるように、いずれの部分の場合であっても、機械加工中に生じるチップを取り除くことができるすくい面48a−dは、それぞれ、一次側面18a−dの各一次刃先12a−dに隣接するようになっている。孔軸線14に対して傾斜しているすくい面48a−dにより、0〜40°の範囲、好ましくは15〜25°の範囲、またはとくにちょうど22°のすくい角度τが形成されることが好ましい。
【0066】
図8図12には、本発明かかる切削インサート10が通常用いられる本発明にかかるツールの一例が示されている。図8図12では、このツールは参照符号100によりその全体が示されている。
【0067】
この場合、一例として示されているツールは、典型的なタンジェンシャルフライス加工ツール100として示されている。このタンジェンシャルフライス加工ツール100は、回転軸線52を中心とする回転対称となるように構成されているツールホルダー50を備えている。いずれの部分の場合にも1つの切削インサート10の収納部として働く少なくとも1つの、好ましくは複数の切削インサート収納部54(図8に詳細に記載)がツールホルダー50の周面に設けられている。図9図12では、それぞれ、一例として1つの切削インサート10が挿入されている。好ましくは、この切削インサート10は、ネジ56を用いてツールホルダー50に着脱可能に固定されるようになっている。
【0068】
切削インサート収納部54の構造の詳細は図8から明白である。切削インサート収納部54は座面58、60を有し、当該座面58、60において、切削インサート10は座面32a−dを介してツールホルダー50に支えられるようになっている。切削インサート収納部54のベースに配置されるさらなるベース面62は座面として働き、切削インサート10は端側のベース面16a、bのうちの1つを介して座面に支えられるようになっている。好ましくは、座面58および60はベース面62に対して直交するように構成されている。このようにして、機械的に安定しかつ明確に画定されるインサート座が実現される。
【0069】
図11は、ツールホルダー50内の切削インサート10の配置をさらに示している。図から明らかなように、切削インサート10は、孔軸線を中心として角度γだけねじられてツールホルダー50内に配置されている。この角度γも軸角と呼ばれる。さらに詳細にいえば、この角度γは、一次刃先12aが機械加工に用い、ツールホルダー50の軸線方向との間に形成される狭角である。角度εおよび軸線方向に向けた小さなねじれ角度γのため(たとえば図2を参照)、(比較的)大きな軸角γ(γ)が形成される。この設計では、できるだけ正の(滑らかな)カットを達成するためには、軸角γが大きいことが望ましい。輪郭偏差(ワークピースに形成される切削輪郭の切削インサートの刃先輪郭からの偏差)は、この種の切削インサートにおいて前面には出てきていないものの、大き過ぎてもよくない。
【0070】
また図10から明らかなように、突部30a−d内に形成される逃げ面44a−dにより、半径方向のフリーランニングを担保するためのさらなるクリアランス角度δが形成されている。
【0071】
なお完全を期すため、図12には図11のA−A線に沿って切断して得られた断面図が示されている。
【0072】
要約すると、比較的簡単に構成されている刃先幾何学形状のために製造が簡単でかつコスト効率が高い上に機械加工精度も高い4本刃の代替えタンジェンシャル切削インサートを提供することに発明者が成功したということができる。フリーランニング特性に必要なクリアランス角度がいわゆる「鼻部」として形成され、本明細書では突部として示されている。その結果、望ましくない衝突を引き起こすことなく刃先の角でさえワークピースを機械加工することが可能となっている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12