【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、従来技術により公知となっている上述のインデックス可能切削インサートに代えて提供する、冒頭に述べたタイプの切削インサート、とくに製造が簡単な切削インサートを提供することを目的としたものである。
【0012】
冒頭に述べた切削インサートによれば、この目的は、切削インサートが、当該切削インサートの2つの対向する同等のベース面の中心を垂直に延びる孔軸線を中心とした180°回転対称を有し、中心面に沿って接続される2つの同等の部分を有しており、中心面が、孔軸線に対して直交するように延び、2つの対向する同等のベース面の各々からの距離が同じであり、各部分が、2つの相互に対向する同等の一次側面と2つの相互に対向する同等の二次側面とを有しており、各一次側面が中心面に対して平行に延びる直線状の一次刃先を有し、各二次側面が中心面に対して直交するように延びる平面状の座面を有しており、各部分の2つの一次刃先が相互に平行に延び、その他の部分の2つの一次刃先に向けて横断方向に延びており、各部分の2つの一次刃先がその他の部分の2つの座面に対して平行に延びており、各一次刃先が、それに対応する第一の端部において、それに対応する部分の隣接する一方の二次側面に設けられる第一の突部に位置する第一の弓形刃先に移行するようになっており、各一次刃先が、それに対応する第一の端部とは反対側の第二の端部において、それに対応する部分の隣接するその他の二次側面に設けられる第二の突部に位置する第二の弓形刃先に移行するようになっており、第一の突部および第二の突部の各々が、それに対応する同一の二次側面に位置する座面に隣接し、当該座面に対して突出するように構成されていることにより達成される。
【0013】
このようにして、上述の目的全体が解決される。
【0014】
本発明者らは、従来技術により公知になっている切削インサートと比較して、製造の視点のみでなく切削特性の向上の視点からも有利なまったく新規の4つの刃を備えた切削インサートを提供することに成功している。ヨーロッパ特許1572407号により公知となっている切削インサートと同様に、本発明にかかる切削インサートは、切削インサートの中心を延びる孔軸線を中心とする180°回転対称を有した2つの接合される同等の部分を備えているものの、本発明にかかる切削インサートは、構造の視点からも幾何学的形状および製造の視点からも、ヨーロッパ特許1572407号により公知となっている切削インサートとは異なるものである。本発明にかかる切削インサートでは、切削幾何学形状および切削インサートに設けられツールホルダーにより支えられる座面はまったく異なって構成されている。ヨーロッパ特許1572407号により公知となっている切削インサートとは対照的に、本発明にかかる切削インサートは、その主軸線のすべてを中心とした180°回転対称を有するように構成されているのではなく、中央の孔軸線を中心とした180°回転対称を有するようにのみ構成されている。それにもかかわらず、切削インサートに設けられる4つの同等の直線状の一次刃先(ブレードエッジ)はすべて、1つの刃先から他の刃先に変更された場合でも、機械加工特性または切削特性が変わってしまうことなく同じように使用可能となっている。
【0015】
この点において特筆すべき点は、本発明では、「180°回転対称」という用語の意味は、孔軸線を中心として180°回転すると、回転前の切削インサートの外観と回転後の切削インサートの外観とが完全に重なり合うことを意味しているということである。さらに特筆すべき点は、本明細書に記載の「2つの同等の部分」は、互いに分離可能な切削インサートの別々の構成要素として解釈されることを意図したものではなく、本発明にかかる切削インサートが、幾何学形状が同じになるように製造されかつ合わせると切削インサートを形成する2つの本体部分からなっていることを示すことのみを意図したものある。これらの2つの部分は、本例では、中心面に沿って一体化するように接続されるようになっている。
【0016】
これら2つの部分の各々は、相互に平行に延びる2つのベース面のうちの1つを有しており、また、いずれの部分の場合であっても、各ベース面は、相互に横断するように延びる空間側面(spatial sides)で、相互に横断するように配置されかつ相互に対向する2つの対向する一次側面および2つの二次側面により空間との境界が区切られている。したがって、一次側面および二次側面は、それぞれ、それに対応する部分の2つの対向する空間側面を表し、これらの空間側面とベース面とにより各部分の表面境界が区切られている。
【0017】
切削インサートの各部分の2つの一次側面または切削インサートの合計4つの一次側面の各々は、そこに配置される一次刃先を有している。当該一次刃先は、中心面に対して平行かつ直線状の延び、その端部の各々は、第一の弓形刃先および第二の弓形刃先に隣接している。いずれの部分の場合であっても、「第一の弓形刃先」および「第二の弓形刃先」という表現は、切削インサートの異なる弓形刃先のことのみを意味したものとして解釈されるべきであり、数を制限したものとして解釈されるべきでない。したがって、本発明にかかる切削インサートは、全体として、4つの一次刃先だけでなく4つの第一の弓形刃先と4つの第二の弓形刃先を備えている。第一の弓形刃先および第二の弓形刃先は、本例では、相互間の幾何学形状およびサイズの違いのみにより離されている。第一の弓形刃先および第二の弓形刃先は切削インサートの外部空間に接する8つの角部(eight spacially external corners)に配置されている。本発明の好ましい構成によれば、第一の弓形刃先および第二の弓形刃先の各々はRの付いた角または面取りされた角として構成されている。これらのRの付いた角または面取りされた角でワークピースを機械加工することもできるので、本例では、これらを第一の弓形刃先および第二の弓形刃先と表すことにする。
【0018】
本発明にかかる切削インサートの重要な特徴は、記載の第一の弓形刃先および第二の弓形刃先が各部分の各二次側面に設けられる第一の突部および第二の突部に配置されているという点にあることが分かる。「第一の突部」および「第二の突部」という表現は、この場合、同一の形状または同一のサイズの突部に対する名称または定義として単に見なされてもよいし、または、切削インサートの角部の領域において各部の二次側面に配置される2つの異なるタイプの突部、すなわち第一の突部および第二の突部を区別するための用語として単に見なされてもよい。本例では、いずれの部分の場合であっても、第一の突部および第二の突部は、それぞれ、同一の二次側面に配置される平坦な座面の端部に隣接し、そこから突出している。したがって、第一の突部および第二の突部は、各部分の二次側面に配置され隣接する座面に対して側面方向に突出する材料突出部または材料隆起部のことであるとして理解される。
【0019】
本件の場合には、これらの突部は、切削インサートの必要なフリーランニング特性を担保することを意図したクリアランス角度を二次刃先に形成するように用いられる。換言すれば、このようにして、機械加工時に必要となる切削インサートのフリーランニング特性に必要なクリアランス角度が第一の突部および第二の突部に形成される。このことは、いずれの部分の場合であっても、複数のクリアランス角度を切削インサートの角部に形成するように、各突部が平坦でおよび/または複雑な形状を有しかつ隣接する座面および隣接する二次刃先に対して傾斜している面を有しているので、基本的に生じる。これらの第一の突部および第二の突部のクリアランス角度の配置または構成により、切削インサートは、機械加工中に用いられない切削インサートの構成要素との衝突を効果的に回避するためにそれ自体を過度にねじる必要はなくなる。その他の点では、たとえばヨーロッパ特許1572407号により公知となっている切削インサートの場合のように、切削インサートの外側シェルの表面の形状がそれほど複雑ではなくなり、このことは、とくに切削インサートの製造をより簡単なものとし、ひいてはコスト効率を良好なものとする。
【0020】
第一の突部および第二の突部が各部分の二次側面に設けられかつクリアランス角度が統合されることにより、切削インサートの対称性を維持するとともにフリーランニング特性をも担保することが可能となる。したがって、本発明にかかるタンジェンシャル切削インサートは、プロセス時に切削特性および幾何学的特性を維持しながら4つの一次刃先を次々と用いることができるように、ツールホルダーにおいて4つの異なる位置で用いることができるようになっている。
【0021】
本発明にかかる切削インサートのさらなる主要な特徴は、いずれの部分の場合であっても、各部分の2つの一次刃先がその他の部分の2つの座面に対して平行となるように延設されているという点にある。このことは、切削インサートの対称性に対する好ましい効果を奏するだけでなく、この目的のためにツールホルダーに設けられる切削インサート収納部に切削インサートを堅固にかつ機械的に安定した位置に固定することも可能とする。従来技術により公知となっている切削インサートの場合、このような座面は一次刃先または刃先に対して平行となるようには構成されていないことが多い。このことは、とくに切削インサートの座面をより複雑なものとし、ひいては製造に対して悪い影響を与えるだけでなく、機械加工時に最終的に生じる切削特性およびチップ特性に対して悪い影響をある程度与えてしまうこととなる。
【0022】
ここまで切削インサートの幾何学形状の説明に用いられている「中心面」とは、実際に物理的に存在しているものではない想像上の補助面のことであることに留意されたい。
【0023】
本発明の好ましい構成によれば、孔軸線に沿って平面視された場合、切削インサートは略偏菱形(substantially rhomboidal)である。具体的にいえば、切削インサートの相互に対向する2つの同等のベース面は、それぞれ、平坦にかつ略偏菱形に構成されていることが好ましい。
【0024】
「偏菱形」とは4つの辺を有する平行四辺形のことである。この場合、この平行四辺形の対向する辺は、平行で同じ長さを有しており、4つの角は直角を形成していない。しかしながら、すべての角の角度の合計は360°となっている。この偏菱形は、異なる長さでありかつ互いに斜交する、すなわち直交しない2つの対角線を有している。したがって、偏菱形は等辺菱形とは異なるものである。
【0025】
しかしながら、本発明にかかる切削インサートは上記の平面視において正確には偏菱形ではないことに留意されたい。具体的にいえば、本発明にかかる切削インサートの形状は、偏菱形の理想的な形状とは切削インサートの角部において少なくとも部分的に異なっている。この部分的な異なりは、先にすでに記載の、切削インサートの角部で突出する第一の突部および第二の突部によるためである。さらに、好ましくは平坦であるベース面も偏菱形の形状とはわずかに異なっている。このように、それらは略偏菱形でしかない。
【0026】
有利には、クリアランス角度を形成する第一の突部および第二の突部を有する切削インサートの偏菱形状は、このようにして必要なフリーランニング特性および対称性を実現することができるという長所を有している。切削インサートが略偏菱形状を有しているため、製造するのが困難で複雑な形状を有した表面が比較的少ない。したがって、切削インサートの4つの一次インサート側面は同一であってもよい。同様に、切削インサートに形成する必要がある傾斜面および凸面の数がほんの僅かしかないので、製造時の機械加工に関連する支出が相当に下げることが可能となる。
【0027】
本発明のさらに好ましい構成によれば、2つの部分のうちの一方の部分は、中心面に位置する回転軸を中心として180°回転させ、孔軸線を中心として一次刃先角度だけ回転させることにより他方の部分に写像可能となっていてもよく、記載の一次刃先角度は、いずれの部分の場合であっても、一方の部分の一次刃先が他方の部分の一次刃先と形成する挟角のことである。
【0028】
したがって、これら2つの部分は中心面に対して鏡面対称とはなっていない。もっと正確にいえば、これら2つの部分は、中心面に沿って相互に接する幾何学的かつ構造上同等の本体部分のことである。上述の対応方位関係(coincidental relationship)は、相互の空間的な配置(spatial orientation)を説明することのみを意図したものである。
【0029】
全体的にみて、2つの対向する同等のベース面を有し、これらのベース面の間を延びる4つの同等の一次インサート面により境界が定められている切削インサートの本体が製造されている。いずれの部分の場合であっても、これらの一次インサート面の各々は、一方の部分の二次側面(一次刃先を含む)と他方の部分の一次側面とを有している。いずれの部分の場合であっても、対向する一次インサート面は同一部分の一次刃先を有しているが、隣接する一次インサート面の場合には、一次刃先は、一次インサート面の下側リムに1つと、上側リムに1つとが配置されている。
【0030】
さらに好ましい構成によれば、第一の突部は第二の突部よりも大きくなるような構成となっている。それに対して、第一の弓形刃先および第二の弓形刃先、すなわち角部のRまたは斜面、ならびに隣接する二次刃先は、同一のサイズとなるように構成されることが好ましい。
【0031】
この理由は、フリーランニング特性の維持、すなわち衝突の回避のためである。この構成にかかる切削インサートを用いると、フライス加工の用途に応じて、両方の角を(両方の弓形刃先で)切削することが可能となるか、または、複数の切削インサートが互いに軸方向にオフセットされているタンジェンシャルスロットフライス加工ツールの場合、いずれの部分の場合であっても、(より大きな第一のクリアランス角度によりもたらされる)第一の弓形刃先を配置する突出した角部がワークピースを適切に押圧するようにすることが可能となる。このことにより逃げ面の磨耗を削減することができる。
【0032】
さらに好ましい構成によれば、いずれの部分の場合であっても、各第一の突部は、第一の二次刃先に隣接するとともに当該第一の二次刃先で第一のクリアランス角度を形成する第一の逃げ面を有している。そして、各第二の突部は、第二の二次刃先に隣接するとともに当該第二の二次刃先で第二のクリアランス角度を形成する二次逃げ面を有している。いずれの部分の場合であっても、第一の二次刃先は第一の弓形刃先に隣接している。また、いずれの部分の場合であっても、第二の二次刃先は第二の弓形刃先に隣接している。好ましくは、第一の逃げ面は第二の逃げ面よりも大きくなるように構成され、第一のクリアランス角度は第二のクリアランス角度より大きくなるように構成されている。しかしながらいうまでもなく、第一の逃げ面の表面積は第二の逃げ面の表面積よりもほんの僅かだけ大きければよい。
【0033】
先の場合と同様に、その理由は、切削インサートを用いて機械加工している間、対称性およびフリーランニング特性の提供が必要となるからである。
【0034】
第一のクリアランス角度および第二のクリアランス角度の各々により、機械加工時に用いられていないその他の刃先および切削インサートの角部のワークピースとの衝突が阻止されるようになっている。本発明によれば、第一のクリアランス角度および第二のクリアランス角度の各々は、1〜10°の範囲、好ましくは1〜5°の範囲である。
【0035】
本発明にかかる切削インサートのために選択される刃先幾何学形状により、ワークピースを機械加工する際にポジティブカットと呼ばれるものが形成される。減少していく材料とは反対(機械加工時に生じるスロット壁と反対)方向に向けてチップがすくい面を介して取り除かれる場合にポジティブカットという表現が用いられる。それとは反対方向に延びるネガティブカットとは対照的に、このポジティブカットはチップ形成特性の点において有利である。
【0036】
本発明のさらなる構成によれば、切削インサートの4つの一次刃先すべてがそれぞれ孔軸線からの第一の距離の位置にあり、また、切削インサートの4つの座面すべてが、それぞれ孔軸線からの第二の距離の位置にあり、第一の距離は第二の距離より小さくなっている。
【0037】
いうまでもなく、用語「距離」が孔軸線からの孔軸線に対する垂直の距離を意味すると理解されることを意図している。したがっていずれの部分の場合であっても、一方の部分の座面は他方の部分の一次刃先に対して前に突出している。したがって、座面は、一次刃先よりも孔軸線から離れた位置にある。逆の言い方をすると、一次刃先は、座面に対して、中央の孔軸線の方向に向けてより内側にオフセットされている。
【0038】
さらに、一次刃先は中心面からの距離がベース面よりも小さな位置にあることが好ましい。この場合、各部分の2つの一次刃先は、それぞれ中心面に対して平行に延びる共通の一次刃先面(想像上の補助面)に設けられている。ベース面の高さと2つの一次刃先の高さとの間がオフセットされているため、いずれの部分の場合であっても、一方の部分の一次刃先とそれと同一の部分のベース面との間には、対応する一次刃先面に対して傾斜する略平坦な一次逃げ面が形成される。
【0039】
この平坦な一次逃げ面は切削インサートの必要なフリーランニング特性を担保するのに必要なものである。というのは、切削インサートのベース面が機械加工時にワークピースと衝突する恐れがあるからである。一次逃げ面がそれに隣接するベース面との間に形成する傾斜角は5°の範囲にあることが好ましい。
【0040】
さらに、好ましくは、本発明にかかる切削インサートは、ベース面に直交するように延びてベース面を貫通する貫通孔を有している。この貫通孔は、ツールホルダーに切削インサートを固定するのに非常に役立つ。この目的のために、固定手段、とくにネジがこの貫通孔を通り抜けてツールホルダーに固定されるようになっていることが好ましい。
【0041】
本発明は、切削インサートそれ自体のみに関するものでなく、この切削インサートを用いるツールにさらに関するものである。以下に、この点に関して記載する。本発明によれば、ツールホルダーの切削インサート収納部内に用いられる切削インサートは、ツールホルダーの半径方向を中心として決められた刃先ねじれ角度だけねじられた状態で配置されることにより、機械加工時に用いられる一次刃先がツールホルダーの半径方向と回転軸とにより定義される面との間に刃先ねじれ角度を形成するようになっている。したがって換言すれば、機械加工時に用いられる一次刃先は、フライス加工ツールの機械加工方向または回転方向に対して僅かに回転させられた状態で配置されている。このようにして刃先ねじれ角度が形成される。刃先ねじれ角度はその配置のため軸角と呼ばれこともある。
【0042】
ツールホルダー内においてインデックス可能切削インサートまたは切削インサートを回転させるのは、基本的に、使用されていない刃先との衝突および上述の第一の突部および第二の突部との衝突を回避する目的のためである。
【0043】
この点では、本発明にかかる切削インサートの使用が主としてタンジェンシャルスロットフライス加工ツールの例を用いて説明されているという点に留意されたい。しかしながら、原則として、本発明にかかる切削インサートは、エンドミルまたはターニングホルダーに同様に用いることができる。したがって、本発明にかかる切削インサートは本明細書に記載の用途に限定されるわけではない。
【0044】
いうまでもなく、上述の特徴および下記の特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、それぞれの実施例に記載の組み合わせのみでなく他の組み合わせでも用いることができる。