【文献】
Sung Hwan Cho et al.,Lab on a Chip,2010年,Vol.10,No12,PP.1567-1573
【文献】
S. Gawad et al.,Lab on a chip,2001年,Vol.1,No.1,PP.76-82
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0091】
本明細書で使用されるように、「1つの(a、an)」および「該(the)」という単数形は、文脈が明確に別様に指示しない限り、複数形の指示対象を含む。したがって、例えば、「1つのデバイス」という用語は、単一のデバイスまたはデバイスの組み合わせを意味することを目的としている。
【0092】
本明細書で使用されるように、「粒子」という用語は、それに基づいて選別することができる、少なくとも1つの特性を有すると見なされる任意の実体を指す。したがって、粒子という用語は、有機粒子、無機粒子、有機および無機成分を有するハイブリッド粒子、および/または同等物を含むが、それらに限定されない。粒子は、ビーズ、ナノ粒子、微粒子、および/または同等物を含むが、それらに限定されない、任意の好適なサイズおよび形態である。粒子という用語はまた、1つ以上の細胞(哺乳類および非哺乳類細胞を含む)、細菌、ウイルスおよび/または同等物等の生物学的実体も含む。粒子という用語は、希少な細胞型、または豊富な細胞型を指すことができる。
【0093】
本明細書で使用されるように、「粒子選別機」、「細胞選別機」、「粒子検出器」、「細胞検出器」、「粒子分析器」、「細胞分析器」、「マイクロ流体選別機」、「マイクロ流体検出器」という用語、およびそれらの変異形は、同義的に使用することができ、かつ他方を包含することができる。例えば、粒子選別機は、粒子検出器を含むことができ、細胞検出器は、細胞選別機を含むことができる。
【0094】
本明細書で使用されるように、「希少細胞」、「比較的希少な細胞」、「比較的希少な細胞型」という用語、およびそれらの変異形は、2つ以上の細胞型を有する組成物中の細胞亜集団を表すために使用されるときに、比較的希少な細胞型より多くの数で組成物中に存在する、少なくとも1つの他の細胞型があることを示す。本明細書で使用されるように、「豊富な細胞」、「比較的豊富な細胞」、「比較的豊富な細胞型」という用語、およびそれらの変異形は、2つ以上の細胞型を有する組成物中の細胞亜集団を表すために使用されるときに、比較的豊富な細胞型より小さい/少ない数で組成物中に存在する、少なくとも1つの他の細胞型があることを示す。
【0095】
細胞の組成物が、「比較的希少な細胞型」および「比較的豊富な細胞型」の両方を有するものとして表されるとき、組成物が、比較的希少な細胞型より大きい数で比較的豊富な細胞型を含有することが示される。換言すると、組成物は、比較的豊富な細胞型より大きい数で存在する他の細胞型、および/または比較的希少な細胞型より小さい/少ない数で存在する他の細胞型を依然として含有することができる。
【0096】
本明細書で開示されるようないくつかの実施形態は、例えば、追跡分析のために、特定の特性を伴う粒子が単離される必要がある場合、粒子特性を判定する単一粒子の調査のために動作可能である。有利には、本明細書で開示される実施形態は、従来技術のシステムと関連付けられる製造および/または動作のサイズ、費用、および複雑性を低減させながら、この機能を果たすように動作可能である。
図1は、本発明の粒子分析器および選別機のモジュール式性質の例示的実施形態を図示する。特に細胞選別を参照すると、本明細書で開示される実施形態は、細胞性質および/または生物学的マーカの光学検出に基づく、選択された細胞亜集団の単離のための高まる必要性を満たすことができる。
【0097】
複数の生物学的マーカを評価する現在の技法は、迅速結果のために非実用的であり、極めて高価であり、複雑で、通常は不良な感度を有する。微量タンパク質の検出のための至適基準検定は、酵素結合免疫吸着検査法(ELISA)である。ELISAは、低いng/mL範囲および高いサンプルスループットでタンパク質を検出することができるが、サンプルにつき複数の被分析物を検出する能力が欠けている。質量分析法に基づくもの等の他の技術プラットフォームは、多重化(サンプルにつき多くのタンパク質を検出すること)において、いくらかの初期成功を示しているが、適度のサンプルスループットおよび検出限界を有する。
【0098】
加えて、質量分析法アプローチは、タンパク質/ペプチドのみに好適である。当技術分野での1つの既知の光学的アプローチは、被分析物につき別の抗体に付着した異なるフルオロフォアと組み合わせられた抗体に結合された蛍光微粒子とともに「2色コード」を使用する、フローサイトメトリプラットフォームを含む。しかしながら、そのような2色コードアプローチは、システムをかさばらせて高価にする、複数のレーザおよび光学検出器を必要とする。これは、計装の広い設置面積および高い費用をもたらす、主要な欠点である。
【0099】
加えて、本明細書で開示される実施形態は、粒子処理のための完全なシステムを提供し、マイクロ流体規模で、(例えば、以降で説明されるらせん状濃縮構造を介した)サンプル濃縮、(例えば、以降で説明される蛇行混合構造を介した)サンプル混合、(例えば、光学ベースの粒子選別機および圧電作動を介した)サンプル/粒子選別、(例えば、インピーダンスベースのセンサを介した)選別の検証、(例えば、ハイブリッド光学/インピーダンスベースのシステムを介した)フィードバックベースの光学選別を包含することができる。本明細書で説明される実施形態はさらに、統合試薬供給、およびサンプルとの混合(例えば、選別前/選別後混合のためのオンチップ試薬)を提供することができる。本明細書で説明される実施形態はさらに、選別粒子収集量の最適化(例えば、選別後弁の使用)を提供することができる。
【0100】
本明細書で説明される実施形態はさらに、粒子検出のための光学システムおよび改良型方法(例えば、COST方法)を提供する。本明細書で説明される例示的実施形態はさらに、(例えば、粒子が2つ以上の波長で蛍光を発するときに)色調補正を含むことができる粒子検出のための改良型システム、ならびに単一検出器システムにおけるダイナミックレンジを向上させるためのアプローチを提供する。
【0101】
非限定的実施例として、サンプル濃縮構造は、サンプル(例えば、血液)を受容し、例えば、(いくつかの実施形態では)オンチップ試薬供給から、試薬を濃縮サンプルに追加するための混合構造(例えば、蛍光マーカ)への入力として、濃縮サンプルを提供することができる。混合構造は、ソースチャネルの入力ポートに選別される粒子を含有する、サンプル混合物を提供することができる。光学検出機構(例えば、本明細書で開示されるようなCOST設定/方法)は、粒子を検出することができ、選別機構は、光学検出機構に基づいて粒子を選別することができる。検証機構は、粒子が適正に選別されたことを確実にすることができ、かつフィードバックを選別機構に提供するために使用することができる。
【0102】
いくつかの実施形態では、光学検出機構は、色調補正を説明することができ、および/またはそれと関連付けられる単一の検出器のダイナミックレンジを増加させるために構成することができる。いくつかの実施形態では、検証機構から受信されるタイミング情報に基づいて、選別された粒子と関連付けられる容積を制御するように、選別後機構(例えば、弁)を各目的地チャネル内で形成することができる。
【0103】
粒子を選別するためのシステム、装置、および方法が、本明細書で説明される。いくつかの実施形態では、粒子は、第1の検出信号によって測定されるような粒子の光学特性に基づいて、第1のチャネルからいくつかの第2のチャネルのうちの1つの中へ選別される。いくつかの実施形態では、第2のチャネルの中への粒子の選別は、第2のチャネル中の粒子の存在および/または体積と関連付けられる第2の検出信号によって検証される。したがって、本開示の側面は、粒子の光学特性が正しく識別されたこと、各選別チャネルの中へ選別された粒子の数が正しかったこと、粒子が正しく選別されたこと、および同等物を検証することを可能にする。本開示の側面はさらに、選別のフィードバック制御のため、選別された粒子を特徴付けるため、および/または同等物等のさらなる分析のために、検証情報を使用するように動作可能である。
【0104】
遠隔部位から侵入し、コロニーを作り、増殖することができる、循環腫瘍細胞(CTC)は、所与の腫瘍の転移性悪性に対するマーカと見なすことができる。末梢血または骨髄から収集されるCTCは、DNA、mRNA、および/またはタンパク質レベルで患者の癌を生物学的に特徴付ける「液体生検」としての可能性を秘めている。CTCの計測と併せて、分子レベルでのそのような分析は、転移性疾患の性質、腫瘍の診断および予後、治療の進行、最も効果的な個人化癌治療(例えば、化学療法)の開発についての重要な情報を明らかにすることができる。
【0105】
フローサイトメトリ(またはFACS)は、複数のパラメータによる、迅速で高度に特異的かつ定量的な細胞ごとの分析、ならびにさらなる分子特性化のためにCTCを選別する能力を可能にすることができる。加えて、フローサイトメトリは、成熟した、よく認識されている商業的に実現可能な技術である。しかしながら、いくつかの障害が、それらの複雑性、サイズ、および高い費用により、現在のフローサイトメータをCTCの診療地点分析のために非実用的にする。ここで、いくつかの実施形態では、汚染および/または飛沫同伴の危険性の低減により、いくつかの実施形態では、臨床用途のために理想的な閉鎖使い捨てチップを使用して、複数の細胞型の組成物中の特定の細胞型/亜集団(例えば、CTC)の検出および/または捕捉を可能にする、マイクロ流体技術が提供される。
【0106】
いくつかの実施形態では、下流分子分析に好適な細胞集団(例えば、CTC)のオンチップ抗体標識、計測、および選別を提供することができる、ラボオンチップマイクロ流体検出器を含む、マイクロ細胞検出システムが本明細書で説明される。いくつかの実施形態では、ラボオンチップマイクロ流体検出器を含む、マイクロ細胞検出システムは、生体(例えば、生存)細胞集団、および/または細胞亜集団(例えば、比較的豊富な細胞型、比較的希少な細胞型、CTC等の特定の細胞型、および/または同等物)の選別、検出、および/または収集を提供することができる。いくつかの実施形態では、マイクロ細胞検出システムは、(i)濃縮構造と、(ii)混合構造と、(iii)マイクロ流体検出器とを含むことができる。いくつかの実施形態では、細胞検出システムは、(i)第1段階細胞分離/細胞濃縮装置と、(ii)流体力学支援混合器と、(iii)細胞単離のための卓上マイクロFACS(例えば、マイクロ流体検出器)とを含む。
【0107】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明される検出器システムは、(1)細胞亜集団(例えば、比較的希少な細胞型/希少細胞集団、例えば、CTC)を計測(例えば、濃縮)し、(2)全血から単離する、費用効率的で使用しやすい、迅速かつ確実な技術および方法であり得る。本明細書で説明される検出器システムは、5〜10倍高価であり、使用することが複雑であり、かつ非常に大型である、従来のFACSシステムと比べて利点を有する。いくつかの実施形態では、検出器システムは、(1)濃縮構造を利用した、約100倍以上(例えば、約400倍)の細胞集団(例えば、特定の細胞型、CTC)の濃縮、(2)混合構造を使用した、2分未満での結合剤(例えば、抗体)を用いた濃縮細胞型または濃縮細胞集団の標識、および(3)約28%以上、または約30%以上、または約40%以上、または約28%〜約90%、または約28%〜約80%、または約28%〜約70%、または約28%〜約60%の回収率で標識細胞を検出および/または単離することを提供することができる。
【0109】
いくつかの実施形態では、細胞(例えば、白血球)の集団から第1の細胞型(例えば、CTC)を選別、分離、および/または収集することができる、濃縮構造が提供される。細胞濃縮とは、第1の細胞型および第2の細胞型を含む組成物等の特定の細胞型とは異なる細胞の集団から、特定の細胞型(例えば、比較的希少な細胞型、または比較的豊富な細胞型)を選別、分離、および/または収集することを指すことができる。特定の細胞型は、いくつかの実施形態では、希少な細胞型であり得る。細胞の物理的または生物学的性質(例えば、表現型、遺伝子型)によって、特定の細胞型を他の細胞型と区別することができる。例えば、サイズ、質量、粒度、変形能、分極率、1つ以上の細胞表面マーカ(例えば、細胞表面分子の存在または非存在)、1つ以上の細胞内マーカ(例えば、細胞内分子、DNA、RNA、タンパク質、タンパク質修飾の存在または非存在)、および/または機能(例えば、細胞代謝機能、酵素機能)、同等物、または、それらの組み合わせによって、特定の細胞型を区別することができる。いくつかの実施形態では、細胞の濃縮は、濃縮構造によって提供される。当技術分野で公知である好適な細胞濃縮構造は、マイクロ細胞検出システムで使用することができる。
【0110】
細胞濃縮構造として使用することができる技術またはデバイスの非限定的実施例は、膜精密濾過、ピンチ流分画、決定論的側方変位、ハイドロフォレーシス、誘電泳動(DEP)、免疫磁性ベースの単離、障害物の周囲の層流の非対称分岐(Huang LR, et.al.. Science. 2004 May 14;304(5673):987−90)、超並列微細ふるい分けデバイス(Mohamed H, et.al., IEEE Trans Nanobioscience. 2004 Dec;3(4):251−6)、生体模倣自己分離(Shevkoplyas SS, et.al., Anal Chem. 2005 Feb 1;77(3):933−7)、受動駆動型マイクロ流体分離(Cho BS, et.al. Anal Chem. 2003 Apr 1;75(7):1671−5)、付着ベースの細胞分離、微小規模層流渦、らせんチャネル、同等物、または、それらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、濃縮構造は、流体チャネルを含むことができる。いくつかの実施形態では、濃縮構造をチップ上に埋め込み、チップに取り付け、またはチップ上で具現化することができる(例えば、ラボオンチップ、または同等物)。
【0112】
いくつかの実施形態では、細胞濃縮構造は、細胞亜集団を分離および濃縮する際に使用するためのらせん状濃縮構造と本明細書で詳細される、らせんチャネル構造を含む、流体力学マイクロ流体構造である。いくつかの実施形態では、らせん状濃縮構造をチップ上に埋め込むことができる(例えば、ラボオンチップ、または同等物)。いくつかの実施形態では、サイズ、形状、質量、および/または密度等の物理的性質に基づいて、細胞および/または粒子を分離するために、らせん状濃縮構造を使用することができる。いくつかの実施形態では、らせん状濃縮構造は、第2のサイズを有する第2の細胞型から、第1のサイズを有する第1の細胞型を分離することができる。いくつかの実施形態では、他の比較的豊富な細胞型(例えば、白血球、無情報細胞、および/または同等物)の溶液から、比較的希少な細胞型(例えば、循環腫瘍細胞)を分離するために、らせん状濃縮構造を使用することができる。いくつかの実施形態では、希少な細胞型および豊富な細胞型を含有する組成物中のより豊富な細胞型に対して希少な細胞型を濃縮するために、らせん状濃縮構造を使用することができる。らせん設計は、細胞の分化的移動、したがって、分離を達成するために、種々のサイズの細胞に作用する慣性揚力および粘性けん引力を利用することができる。らせん流体チャネル幾何学形状による、優勢な慣性力およびディーン回転力が、より大きい細胞に、内側流体チャネル壁付近の単一の平衡位置を占有させることができる一方で、より小さい細胞は、ディーン力の影響を受けて流体チャネルの外側半分まで移動し、別個の出口で収集することができる、明確に異なる粒子流の形成をもたらす。いくつかの実施形態では、高アスペクト比チャネルによって生成される大きい揚力により、低い流速でさえも、らせんチャネルの短い距離で完全な細胞分離または濾過を達成することができる。らせん状濃縮構造の種々の実施形態が、本明細書でさらに詳細に説明される。
【0113】
いくつかの実施形態では、らせん状濃縮構造は、1つ以上の内側入口と、複数の環状ループで配列される流体チャネルと、2つ以上の外側出口とを含むことができる。濃縮構造のいくつかまたは全ての特徴は、好適な微細加工材料から加工することができ、その非限定的実施例は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)材料、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)材料、ポリカーボネート(PC)材料、および/または環状オレフィン共重合体(COC)材料、同等物、または、それらの組み合わせを含む。
【0114】
いくつかの実施形態では、第1の内側入口は、種々のサイズの細胞(例えば、CTCおよび白血球)を含有する細胞を含んだ溶液を受け取るように構成することができ、第2の内側入口は、緩衝剤を受け取るように構成される。いくつかの実施形態では、溶液がらせん状濃縮構造に進入することを可能にするように、1つ以上の内側入口をポートまたは他の連結デバイス(例えば、シリンジと噛合するように構成される)に接続することができる。いくつかの実施形態では、1つの入口を提供することができる。いくつかの実施形態では、2つ以上の入口を提供することができる。
【0115】
いくつかの実施形態では、内側入口および外側入口を、複数のループで配列されるらせん流体チャネルに流体的に連結することができる。いくつかの実施形態では、流体チャネルは、2つの第1の壁および2つの第2の壁を有する、実質的に四辺形(例えば、長方形、平行四辺形、菱形、凧形、台形)の断面であり得る。いくつかの実施形態では、第1の壁は、流体チャネルの幅を画定し、(いくつかの実施形態では)第2の壁は、流体チャネルの高さを画定する。いくつかの実施形態では、流体チャネルは、断面が実質的に円形または卵形である。いくつかの実施形態では、流体チャネルは、断面が実質的に長方形である一部と、断面が実質的に円形または卵形である一部とを含む。いくつかの実施形態では、実質的に円形または卵形の断面を有する、流体チャネルは、部分的に、内径および/または半径によって画定される。
【0116】
いくつかの実施形態では、内側出口および外側出口は、らせん流体チャネルの反対端に位置する。いくつかの実施形態では、分離された細胞は、内側および/または外側出口で収集され、検出され、数えられ、または別様に分析される。いくつかの実施形態では、分離された細胞は、外側出口またはその付近で収集され、検出され、および/または数えられる。いくつかの実施形態では、異なるサイズの細胞が、1つ以上の外側出口またはその付近で収集される。
【0117】
理論によって限定されないが、らせん流体チャネル(例えば、らせん状濃縮構造)を通って流動する流体は、半径方向外向きに指向された遠心加速を受け、チャネルの上および底半分で、ディーン渦として知られている2つの反対に回転する渦の形成につながる。これらの二次流の規模は、pが流体媒体の密度(kg/m
3)であり、U
fが平均流体速度(m/秒)であり、μが流体速度(kg/m−s)であり、Rがらせん流体チャネルの経路の曲率半径(m)であり、Reが流動レイノルズ数である、
図2Cに示される無次元ディーン数(De)によって定量化することができる。真っ直ぐな流体チャネルについては、ディーン流の非存在を示す、De=Oである。湾曲チャネルでは、Deは、より高い曲率(より小さいR)、より大きいチャネルサイズ(より大きいD
h)、およびより速い流動(より高いRe)とともに増加する。曲線チャネル中を流動する細胞は、横断ディーン流によるけん引力を受ける。粒径に応じて、
図2Cに示されるディーン力(F
D)としても知られている、このけん引力は、細胞をディーン渦に沿って移動させ(すなわち、循環させ)、したがって、内側または外側チャネル壁のいずれか一方に向かって移動させることができる。
【0118】
ディーン力F
Dに加えて、曲線チャネル中の細胞は、圧力および慣性揚力を受ける。細胞に作用する正味の揚力(F
L)は、剪断誘導慣性揚力および壁誘導慣性揚力の組み合わせである。ポアズイユ流では、速度プロファイルの放物線性質が、細胞に作用し、流体チャネル中心から離れて方向付けられる、流体剪断誘導慣性揚力をもたらす。細胞が流体チャネル壁に向かって移動すると、細胞の周囲で誘導される非対称伴流が、壁から離れた壁誘導慣性揚力を生成する。これらの対向揚力の規模は、流体チャネル断面にわたって変動し、壁誘導揚力が、流体チャネル壁(例えば、内壁および外壁)の付近で優勢であり、剪断誘導揚力が、流体チャネルの中心付近で優勢である。したがって、細胞は、反対方向に指向された揚力が等しく、狭帯域を形成する、平衡位置を占有する傾向がある。
【0119】
いくつかの実施形態では、らせん流体チャネル中で流動する細胞に作用する力、すなわち、ディーン力および慣性揚力のサイズ依存性は、類似サイズの細胞の集中流を生じるように操作される。細胞は、1つの実施形態では、第1のサイズの第1の細胞と称される。いくつかの実施形態では、第1のサイズではない細胞は、ディーン渦内で循環し続ける。らせん状濃縮構造のらせん幾何学形状は、いくつかの実施形態では、より大きい細胞に、内側流体チャネル壁付近の単一の平衡位置を占有させ、より小さい細胞に、ディーン流によるより高い粘性抗力を受けさせることができ、ディーン渦に沿って再循環し続け、かつ流体チャネルの外側半分に輸送することができる。したがって、いくつかの実施形態では、らせん状濃縮構造は、完全な分離を達成するために、より大きい細胞の慣性移動、およびより小さい細胞へのディーン抗力の影響を使用することができる。
【0120】
いくつかの実施形態では、らせん状濃縮構造設計は、らせん幾何学形状を含む。らせん幾何学形状は、中心点から連続的に増加または減少する距離を置いて固定中心点の周囲に巻回する、平面上の曲線として定義することができる。らせんは、3次元で平面から逸脱することができ、かつ(いくつかの実施形態では)円錐系のばねに類似することができる。いくつかの実施形態では、らせん状濃縮構造は、2つ以上のループを含むことができる。1つのループは、らせん状濃縮構造の中心点の周囲で約1つの完全な円(例えば、1つの完全ならせん、約360度)として画定することができる。いくつかの実施形態では、らせん状濃縮構造は、3個以上のループ、4個以上のループ、5個以上のループ、6個以上のループ、7個以上のループ、8個以上のループ、9個以上のループ、または10個以上のループを含む。いくつかの実施形態では、らせん状濃縮構造は、約2〜約100個のループ、約2〜約75個のループ、約2〜約50個のループ、約2〜約25個のループ、約2〜約20個のループ、約2〜約10個のループ、または約2〜約5個のループを含む。いくつかの実施形態では、らせん状濃縮構造は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または約20個のループを含む。いくつかの実施形態では、らせん状濃縮構造は、2つ以上の入口および2つ以上の出口(例えば、分岐出口)を伴う5ループ幾何学形状を含む。
【0121】
らせん流体チャネルの長さは、1つの実施形態では、約2cm以上、約4cm以上、約6cm以上、約8cm以上、約10cm以上、約12cm以上、約14cm以上、約16cm以上、約18cm以上、約20cm以上、または約22cm以上である。いくつかの実施形態では、流体チャネルの長さは、約2cm〜約50cm、2cm〜約40cm、2cm〜約30cm、2cm〜約25cm、2cm〜約20cm、または約2cm〜約15cmである。いくつかの実施形態では、流体チャネルの長さは、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または約30cmである。
【0122】
いくつかの実施形態では、らせん状濃縮構造の2つの連続ループの間の間隔は、約20μm〜約2000μmである。いくつかの実施形態では、らせん状濃縮構造の2つの連続ループの間の間隔は、約250μmである。いくつかの実施形態では、らせんの初期曲率半径Rは、約1mm〜約10mmである。いくつかの実施形態では、らせんの初期曲率半径Rは、約3mmである。
【0123】
いくつかの実施形態では、らせん状濃縮構造は、2〜約20個の外側出口を含む。いくつかの実施形態では、らせん状濃縮構造は、約2〜約10個の外側出口を含む。いくつかの実施形態では、らせん状濃縮構造は、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の外側出口を含む。
【0124】
いくつかの実施形態では、濃縮構造は、混合構造またはマイクロ流体検出器に流体的に連結される。いくつかの実施形態では、濃縮構造の1つ以上の出口(例えば、外側出口)は、混合構造またはマイクロ流体検出器の入口に流体的に連結される。
【0126】
マイクロ流体システム中の流動チャネルの小さな規模は、表面対体積比を増加させ、したがって、多くの用途のために有利である。しかしながら、そのような流体チャネル中の液体流の特定のレイノルズ数(Re=1ρv/η)は、非常に小さい。例えば、レイノルズ数は、100μmのチャネル幅、1mm/秒の液体流速、1g/cm
3の流体密度、および0.001Ns/m
2の粘度を伴う典型的な水性マイクロ流体システムにおいて約0.1である。そのような低レイノルズ数体制では、乱流混合が起こらず、したがって、拡散種混合が重要な役割を果たすが、本質的に遅いプロセスである。いくつかの実施形態では、混合構造の機能は、徹底的な混合性能を達成することができるように、マイクロ流体チャネルにおける混合効率を増進することであり得る。いくつかの実施形態では、混合構造の性能は、混合時間を短縮し、検出器システムを使用するときに結合剤で細胞を標識するために必要とされる全体的な時間を削減することである。いくつかの実施形態では、混合構造の機能は、混合チャネルの長さを短縮し、検出器システムの全体的サイズを縮小することである。いくつかの実施形態では、混合構造の機能は、混合プロセス中に細胞生存能力を維持することである。いくつかの実施形態では、検出器システムのスループットを増加させるため、および効果的なラボオンチップシステムを可能にするために、効率的な混合構造が採用される。いくつかの実施形態では、混合構造は、流体チャネルを含む。いくつかの実施形態では、混合構造は、チップ上に埋め込まれる(例えば、ラボオンチップ、および/または同等物)。
【0127】
混合構造は、1つの実施形態では、当技術分野で公知である好適なマイクロ流体混合器である。いくつかの実施形態では、混合構造は、能動流体混合器である。能動流体混合器の非限定的実施例は、音響混合器、超音波混合器、誘導泳動混合器、動電時間パルス混合器、圧力摂動混合器、磁気混合器、熱混合器、電気流体力学力混合器、磁気流体力学流混合器、および/または動電不安定混合器、同等物、および/またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、混合構造は、受動流体混合器である。受動流体混合器の非限定的実施例は、積層混合器(例えば、楔形入口、90度回転)、ジグザグチャネル(例えば、楕円形障壁)、3D蛇行構造(例えば、折り畳み構造、漸動構造、積み重ねシム構造、多重分割および伸張、再結合流、不平衡駆動力)、組み込み障壁(例えば、SMX、多方向渦)、捻転チャネル(例えば、分割および再結合)、および/または表面化学(例えば、障害物形状、T−/Y−混合器)、同等物、または、それらの組み合わせを含む。
【0129】
いくつかの実施形態では、混合構造は、
図7A−7Cに示されるような蛇行構造(例えば、蛇行混合器)である。いくつかの実施形態では、蛇行混合器は、2次元蛇行混合器である。いくつかの実施形態では、蛇行混合器は、入口ポートと、連続流体チャネルと、2つ以上の旋回と、入口ポートとしてチャネルの反対端に位置する出口ポートとを含む。いくつかの実施形態では、蛇行混合器の全体的なチャネル長は、約1mm〜約10,000mmである。いくつかの実施形態では、全体的なチャネル長は、約1mm〜約1000mmである。いくつかの実施形態では、チャネル長は、約1mm〜約500mmである。いくつかの実施形態では、蛇行混合器は、約3〜30の旋回を含む。いくつかの実施形態では、蛇行混合器は、約5(
図7A)〜20(
図7B、7C)の旋回を含む。いくつかの実施形態では、蛇行混合器は、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または約20の旋回を含む。いくつかの実施形態では、蛇行混合器は、20の旋回を含む。いくつかの実施形態では、蛇行混合器における各旋回は、チャネル内の流体流の180度方向変更のために構成される。いくつかの実施形態では、蛇行混合器における各旋回は、楕円形湾曲部を含む。いくつかの実施形態では、蛇行混合器における各旋回は、円形湾曲部または水平湾曲部を含む。いくつかの実施形態では、蛇行混合器における旋回を表す、湾曲部(例えば、楕円形、水平、または円形湾曲部)の内側半径は、約20μm〜約10,000μm、約20μm〜約1000μm、約20μm〜約500μm、または約150μm〜約350μmである。いくつかの実施形態では、蛇行混合器における旋回を表す、湾曲部(例えば、楕円形、水平、または円形湾曲部)の内側半径は、約150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、または約300μmである。いくつかの実施形態では、2つの旋回の間のチャネルの長さは、約0.5mm〜1000mmである。いくつかの実施形態では、蛇行混合器は、混合構造である。いくつかの実施形態では、蛇行混合器は、チップ上に埋め込まれる(例えば、ラボオンチップ、および/または同等物)。
【0131】
いくつかの実施形態では、検出システム、検出器システム、フローサイトメトリデバイス、濃縮構造、混合構造、および/またはマイクロ流体検出器は、1つ以上の流体チャネルを含む。いくつかの実施形態では、流体チャネルは、1つの実施形態では、マイクロ流体チャネルである。ラボオンチップは、1つ以上の流体チャネルを含むことができる。いくつかの実施形態では、流体チャネルは、チップ上に埋め込まれる。いくつかの実施形態では、流体チャネルは、細胞(例えば、原核細胞、真核細胞、ヒト細胞)を含む、静的または動的流体(例えば、移動流体または溶液)を含有するように構成される。いくつかの実施形態では、流体チャネルは、粒子(例えば、ビーズ、細胞に付着したビーズ、結合剤に付着した細胞)を含む、静的または動的流体(例えば、移動流体または溶液)を含有するように構成される。当業者であれば、流体チャネルを当技術分野で公知である好適な材料で作製できることを理解するであろう。加えて、流体チャネルの断面は、任意の好適な形状(例えば、長方形、円形)であり得る。いくつかの実施形態では、流体チャネルは、第1の端部と、第2の端部とを含む。いくつかの実施形態では、流体チャネルは、第1の端部を含み、第1の端部は、弁、ポート、流量調節器、および/または1つ以上の入口を含む。いくつかの実施形態では、流体チャネルは、第2の端部を含み、第2の端部は、弁、ポート、流量調節器、および/または1つ以上の出口を含む。いくつかの実施形態では、流体チャネルの第1の端部および/または第2の端部は、濃縮構造と混合構造、および/または混合構造とマイクロ流体検出器との間に連続チャネルを提供するように構成される。いくつかの実施形態では、流体チャネルの内径は、約0.2μm〜約2000μm、または約10μm〜約1000μmであり得る。いくつかの実施形態では、流体チャネルの内径は、約250μmである。
【0133】
いくつかの実施形態では、マイクロ流体検出器が提供される。1つの実施形態では、マイクロ流体検出器は、粒子または細胞(例えば、CTC等の血液中の比較的希少な細胞、比較的豊富な細胞、および/または同等物)を検出および/または選別するように、フォトニックスおよびマイクロ流体力学を組み合わせる。いくつかの実施形態では、マイクロ流体検出器は、フローサイトメータおよび/またはFACSベースの細胞選別機の機能のうちのいくつかまたは全てを提供するように構成される。いくつかの実施形態では、マイクロ流体検出器は、フローサイトメータデバイスを含む。いくつかの実施形態では、マイクロ流体検出器は、検出システム(例えば、マイクロ細胞検出システム)の一部である。いくつかの実施形態では、マイクロ流体検出器は、チップ上に埋め込まれ、チップに取り付けられ、チップ上で具現化される。いくつかの実施形態では、マイクロ流体検出器は、粒子(例えば、ビーズ、細胞、ウイルス、細菌、同等物、または、それらの組み合わせ)を検出し、随意に、粒子によって発せられる光および/または粒子と相互作用した光(例えば、粒子によって回折、散乱、および/または反射される光)に従って選別するために利用される。
【0134】
検出器によって検出される光は、任意の波長または周波数の電磁放射であり得る。波長または周波数の値は、概して、真空を通って伝搬する光に対するものである。光は、いくつかの実施形態では、可視光、紫外線、および/または赤外光として特徴付けることができる。可視光は、概して、約390ナノメートル〜約750ナノメートルの波長であり、概して、約400テラヘルツ(THz)〜約790THzの周波数である。赤外光は、概して、約0.74マイクロメートル〜約300マイクロメートルの波長であり、概して、約300ギガヘルツ(GHz)〜約400THzの周波数である(近赤外線は、約120THz〜約400THzであり得、中赤外線は、約30THz〜約400THzであり、遠赤外線は、約300GHz〜約30THzであり得る)。紫外線は、概して、約10ナノメートル〜約400ナノメートルの波長であり、概して、約0.75ペタヘルツ(PHz)〜約30PHzの周波数である(近紫外線は、約400nm〜約300nmであり得、中紫外線は、約300nm〜約200nmであり得る、遠紫外線は、約200nm〜約122nmであり得る)。光子は、光の量子であり、光子は、特定の光子エネルギーを有することができる。
【0135】
いくつかの実施形態では、粒子は、発光する作用物質(例えば、フルオロフォア)であり、および/または発光する作用物質を含む分子の複合体であり得る。いくつかの実施形態では、粒子は、1つ以上の生物剤(例えば、細胞、タンパク質、核酸、生体膜、例えば、小胞、リポソーム、同等物、およびそれらの組み合わせ)を含むことができる。粒子は、いくつかの実施形態では、1つ以上の生物剤と関連する(例えば、生物剤に結合された)1つ以上の抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、発光する作用物質(例えば、フルオロフォア)に結合される。いくつかの実施形態では、異なる粒子の組み合わせが、マイクロ流体検出器のフローセルまたは流体チャネルに導入される。いくつかの実施形態では、異なる粒子の組み合わせは、異なる光の波長を発する、異なる粒子を含む。
【0136】
いくつかの実施形態では、粒子とは、細胞を指し、細胞は、発光させられ、光を散乱させられ、反射させられ、偏向させられ、または回折させられることができる。いくつかの実施形態では、細胞は、発光し、光を散乱させ、反射し、偏向させ、または回折することができる、検出剤と関連付けられる。いくつかの実施形態では、検出剤は、細胞と関連するか、または細胞に結合する(例えば、特定の細胞型または細胞成分と特異的に関連するか、または特異的に結合する)ことができる、結合剤に接続される。いくつかの実施形態では、結合剤は、細胞表面タンパク質に結合する。
【0137】
いくつかの実施形態では、マイクロ流体検出器、またはその一部が、光源によって照射される。いくつかの実施形態では、光源によって導入される光は、流体チャネル壁を通してチャネル内部の中へ透過させることができる。光源によって発せられる光の角度は、チャネル内の粒子を照射するために好適なチャネル壁に対する角度にあり得る。ある実施形態では、流体チャネル中の粒子は、チャネルに導入される光と相互作用することができ、粒子と相互作用し、粒子によって散乱、反射、または回折させることができる光は、チャネルからマイクロ流体検出器中の1つ以上の他の構成要素に透過させることができる。
【0138】
いくつかの実施形態では、流体チャネル中の粒子は、特定の波長または特定の波長範囲内の光を発し、波長範囲の全体または一部は、チャネルからマイクロ流体検出器中の1つ以上の他の構成要素に透過される。1つの実施形態では、粒子は、特定の波長または波長範囲の光を発し、その波長または波長範囲は、光源によって発せられる波長または波長範囲とは異なる(例えば、光源によって発せられる励起波長は、粒子に付着したフルオロフォア粒子またはフルオロフォアを励起させてもよく、フルオロフォアは、異なる波長の光を発してもよい)。1つの実施形態では、粒子によって発せられる、または粒子と相互作用した光は、流体チャネルを通して透過され、1つ以上の中間構造を通して検出器に透過され、または1つ以上の中間構造によって検出器に伝導される。中間構造の非限定的実施例は、マスク、色フィルタ、導波管、鏡、レンズ、フィルタ、光回折構成要素(例えば、プリズム、回折格子)、同等物、およびそれらの組み合わせを含む。
【0139】
いくつかの実施形態では、マイクロ流体検出器は、光学フィルタ、反射器、および/またはそれらの組み合わせを含む。マイクロ流体検出器は、1つの実施形態では、1つ以上の光学フィルタを含む。さらなる実施形態では、光学フィルタは、吸収フィルタ、色フィルタ、二色性フィルタ、単色フィルタ、赤外線フィルタ、紫外線フィルタ、中性密度フィルタ、ロングパスフィルタ、帯域通過フィルタ、ショートパスフィルタ、誘導モード共鳴フィルタ、金網フィルタ、偏光子フィルタ、光学ノッチフィルタ(例えば、精密光学ノッチフィルタ)、同等物、または、それらの組み合わせである。色フィルタ等のフィルタの非限定的実施例が、本明細書でさらに詳細に説明される。1つの実施形態では、本デバイスは、光を反射する1つ以上の構成要素を含み、その非限定的実施例は、平面鏡、曲面鏡、放物面鏡、およびダイクロイックミラーを含む。いくつかの実施形態では、鏡は、特定の波長範囲の光を実質的に反射し、異なる波長範囲の光に対して実質的に透過性であり、それを反射しない。鏡は、いくつかの実施形態では、フルオロフォア(例えば、粒子に結合した、または粒子と関連付けられたフルオロフォア粒子またはフルオロフォア)を励起する、波長範囲内の光を実質的に反射し、励起したフルオロフォアによって発せられる波長範囲内の光に対して実質的透過性である。
【0140】
いくつかの実施形態では、チャネル中の粒子から発せられる光、または粒子と相互作用した光が、流体チャネルから色フィルタに透過される。いくつかの実施形態では、色フィルタは、2つ以上のゾーン(例えば、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、または100個以上のゾーン)を含むことができる。いくつかの実施形態では、色フィルタは、実質的に透明なゾーンおよび実質的に不透明なゾーン(例えば、光学開口、帯域)を含むマスクと、実質的に透明なゾーンと効果的に接続している導波管とを含むことができる。いくつかの実施形態では、導波管のうちのいくつかは、着色され、マスクによって透過される波長範囲の波長サブレンジを透過する。いくつかの実施形態では、色フィルタは、マスクと、導波管とを含み、いくつかの実施形態では、粒子が流動する流体チャネルと接触しており、(いくつかの実施形態では)流体チャネルからの光は、マスクまたは導波管によって受容される前に任意の他の構成要素を通って透過しない。マスク60と、導波管52、54、56、58とを含む、色フィルタの非限定的実施例が、
図18に示されている。
【0141】
いくつかの実施形態では、色フィルタは、マイクロ流体検出器中の流体チャネルと直接接触していない。いくつかの実施形態では、色フィルタは、粒子が流動する流体チャネルからのある距離、いくつかの実施形態では、約1センチメートル(cm)〜約100cm(例えば、約5、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、または90cm)の距離に位置する。いくつかの実施形態では、チャネルによって発せられる光は、光またはその修正されたバージョンが色フィルタに接触する前に、1つ以上の他の構成要素(例えば、レンズ、鏡)を通して透過させることができる。いくつかの実施形態では、ゾーンは、フィルタ上の離散ゾーン区画であり得、(いくつかの実施形態では)ゾーンは、実質的に連続的である(例えば、連続段階的色ゾーン)。実質的に離散したゾーンを含む、色フィルタの非限定的実施例が、離散(例えば、帯域通過)フィルタからの信号強度を図示する、
図49Aで図示されている。ゾーン間の実質的に連続的な遷移を含む、色フィルタの非限定的実施例が、
図49Bで図示されている。
【0142】
いくつかの実施形態では、色フィルタは、フィルタに透過される光の実質的に全てを透過する、1つ以上のゾーン(例えば、全域通過フィルタゾーン)を含むことができる。いくつかの実施形態では、色フィルタは、少なくとも1つの色ゾーンが、別の色ゾーンとは異なる光の一部を透過する、フィルタに透過される光の一部を透過する2つ以上のゾーン(すなわち、色フィルタゾーンと称される)を含むことができる。いくつかの実施形態では、色フィルタ中の色ゾーンは、広域通過、連続、帯域通過フィルタ、同等物、または、それらの組み合わせとして機能することができる。いくつかの実施形態では、光の異なる部分は、色フィルタによって受容される、それぞれ、光波長範囲、光エネルギー範囲、および/または光周波数範囲の異なる波長サブレンジ、異なるエネルギー部分範囲、および/または異なる周波数部分範囲である。したがって、第1の色ゾーンは、第1の波長サブレンジを透過することができ、第2の色ゾーンは、第2の波長サブレンジを透過することができ、その第1の波長サブレンジおよび第2の波長サブレンジは、異なり(例えば、重複する、または重複しない)、その波長サブレンジは、色フィルタによって受容される光の波長範囲内にある。色ゾーンによって透過される異なる波長サブレンジは、いくつかの実施形態では重複し、いくつかの実施形態では重複しない。(いくつかの実施形態では)色フィルタ中の色ゾーンによって透過される光サブレンジ内の最低波長および最高波長は、いくつかの実施形態では、約0.1nm〜約500nm(例えば、約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、100、150、200、250、300、350、400、または450nmの範囲)だけ異なる。いくつかの実施形態では、色フィルタは、色フィルタに透過される光を実質的に全く透過しない、1つ以上のゾーンを含むことができる(例えば、実質的に不透明なゾーン)。複数のゾーンを含む色フィルタは、いくつかの実施形態では、一連またはアレイの中の光学フィルタのそれぞれがゾーンである、本明細書では「一連の光学フィルタ」および「光学フィルタのアレイ」を伴うフィルタと称することができる。
【0143】
いくつかの実施形態では、色フィルタは、フィルタに透過される光の異なる部分を透過する、3つ以上のゾーンを含むことができる。例えば、1つの実施形態では、色フィルタは、実質的に緑色の光を透過する第1のゾーンと、実質的に青色の光を透過する第2のゾーンと、実質的に赤色の光を透過する第3のゾーンとを含む。後者の実施例は限定的ではなく、色フィルタ内のある色ゾーンは、フィルタによって受容される光の波長範囲の任意の好適な波長サブレンジを透過できることに留意されたい。
【0144】
1つの実施形態では、色フィルタおよび色フィルタのゾーンは、粒子を検出する、粒子の速度を判定する、粒子のサイズを判定する、発せられる、または粒子と相互作用した光の波長を検出する、および/または同等物のために好適な寸法を有する。いくつかの実施形態では、色フィルタは、実質的に円形であり、光を透過するための円形構造の周囲に分配される好適な形状のゾーン(例えば、円形、卵形、長方形、正方形、三角形、円の一部)を含む。
【0145】
いくつかの実施形態では、色フィルタは、実質的に長方形であり、色フィルタの上面図に従って、短い方の長方形寸法にわたる実質的に1つのゾーンと、長い方の長方形寸法に沿って連続的に分配される複数のゾーンとを含む。そのような実施形態では、離散ゾーンの幅は、色フィルタの長い方の長方形寸法と平行なゾーンの長さである。そのような実施形態では、ゾーン幅は、長方形であり得るか、または変動し得る。様々なゾーン幅を含む、色フィルタ実施形態では、幅は、任意の好適なパターンで分配することができ、そのようなパターンの非限定的実施例は、周期的、チャープ、および疑似ランダムパターンを含む。いくつかの実施形態では、実質的に不透明なゾーンは、様々な幅のパターンで分配することができ、(いくつかの実施形態では)光を透過するゾーンは、規則的な幅のパターンで分配することができる。
【0146】
色フィルタは、当技術分野で公知である任意の好適なプロセスによって製造することができる。いくつかの実施形態では、色フィルタは、少なくとも1つの色ゾーンが、別のゾーンによって透過される光の波長サブレンジとは異なる波長範囲を有する光を透過することを可能にする、1つ以上の作用物質が注入された構造を含む。異なる透過性質を伴うゾーンは、例えば、異なる作用物質、または異なる量で1つの作用物質を含むことができる。
【0147】
色フィルタは、複数の層を含むことができる。いくつかの実施形態では、色フィルタは、1つ以上のコーティング層が堆積させられる、支持構造を含む。任意の好適な構造または支持構造を利用することができ、非限定的実施例は、ガラス、ポリマー、および同等物を含む。各ゾーンは、独立して、実質的に一様な厚さ、または様々な厚さ(例えば、段階的な厚さ、先細または広口厚さ(例えば、実質的に一様な先細部または広口部))であり得る。各ゾーンは、独立して、1つの実施形態では、1つ以上のコーティング(例えば、各コーティングにおいて同一または異なる材料)、および/または1つ以上の層(例えば、各層において同一または異なる材料)を含む。複数の層を含むゾーンは、各層が異なる材料を含む、交互の層を含むことができる。ゾーン内の各コーティングまたは層は、同一の屈折率を有することができ、または異なる屈折率を有してもよい。光の異なる波長範囲を透過する色フィルタのゾーンは、同一の屈折率を有することができ、または異なる屈折率を有してもよい。異なる光の波長を透過するゾーンは、いくつかの実施形態では、異なる数の層、異なる材料、異なる厚さ、同等物、または、それらの組み合わせを有することができる。隣接ゾーンが異なる厚さを有する場合、1つの厚さから別の厚さへの遷移は、例えば、段階的、先細、または広口等の任意の好適な遷移であり得る。
【0148】
いくつかの実施形態では、マイクロ流体検出器は、流体チャネル中の粒子によって発せられる光、または粒子と相互作用した光を効果的に受け取る、スプリッタを含む。流体チャネルから発せられる光は、スプリッタがそのような光を受け取る前に、デバイス中の1つ以上の他の構成要素(例えば、レンズ、フィルタ)を通して透過させることができる。スプリッタは、受容した光を2つ以上の分割光線に分割することができる。2つ以上の分割光線のそれぞれを、いくつかの実施形態では、別個の色フィルタに方向付けることができる。言い換えると、マイクロ流体検出器は、いくつかの実施形態では、2つ以上の色フィルタを含み、色フィルタのそれぞれは(いくつかの実施形態では)、他の色フィルタ中の色ゾーンとは異なる光の波長サブレンジを透過する、色ゾーンを含むことができる。1つの分割光線内の光は、別の分割光線内の光と同一の波長範囲、または異なる波長範囲であり得る。スプリッタの非限定的実施例は、2つの三角形ガラスプリズム、半透鏡、およびダイクロイックミラープリズムを含むものを含む。
【0149】
いくつかの実施形態では、マイクロ流体検出器中の流動チャネル、色フィルタ、および光学検出器(例えば、光検出器、光センサ)は、粒子がチャネルを通って移行すると、チャネル中の粒子からの光を複数回検出するために構成することができる。粒子がマイクロ流体検出器中のチャネルの特定の部分の中で1つの位置から第2の位置へ進行すると、第1の位置における粒子から発せられる光、または粒子と相互作用した光は、チャネルを通って色フィルタ上の画像面上の第1の位置に透過させることができる。第2の位置における粒子から発せられる光、または粒子と相互作用した光は、チャネルを通って色フィルタの画像面上の第2の位置に透過させることができる。色フィルタ上の第1の位置および第2の位置が異なる色ゾーンにある、いくつかの実施形態では、各色ゾーンによって光検出器に透過される光の波長範囲は異なり、光検出器は、流動チャネル内の2つの異なる位置で同一の粒子について経時的に2つの異なる光信号を検出する。そのような実施形態では、色フィルタは、同一の粒子に対するフィルタ中の複数の離散ゾーンによって、光の複数の離散波長範囲を光検出器(例えば、1つの光検出器)に透過することができる。いくつかの実施形態では、デバイスは、1つのフィルタから光検出器アレイの中の複数の光検出器に異なる光の波長を透過しない。
【0150】
いくつかの実施形態では、マイクロ流体検出器中の色フィルタは、鏡面を含むことができず、いくつかの実施形態では、色フィルタは、ファブリペロー共振器フィルタまたはファブリペローエタロンではない。いくつかの実施形態では、マイクロ流体検出器中の色フィルタは、ブラッグ反射器ではなく、ブラッグ反射器は、複数の層を有し、層の光学厚さの約4倍の波長を有する波長を反射すると定義される。
【0151】
いくつかの実施形態では、色フィルタは、デバイスの光検出器構成要素と直接接触していない。いくつかの実施形態では、色フィルタは、光検出器構成要素表面からのある距離、例えば、光検出器構成要素表面から約0.1cm〜約20cm(例えば、約0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20cm、およびその間の全ての値)離れた距離に位置することができる。いくつかの実施形態では、1つの色フィルタは、色フィルタによって透過される光が1つの光検出器に透過され、他の光検出器に透過されないように、1つの光検出器を用いて配向することができる。デバイスは、いくつかの実施形態では、いかなる光検出器アレイも含まず、1つの色フィルタは、光検出器アレイの他のセンサセルではなく、1つの光検出器と検出可能に関連している。いくつかの実施形態では、光検出器構成要素表面は、マイクロ流体検出器中の流体チャネルと直接接触しておらず、かつ(いくつかの実施形態では)それに沿って分配されず、いくつかの実施形態では、流体チャネルからのある距離に位置することができる。
【0152】
いくつかの実施形態では、マイクロ流体検出器は、1枚以上のレンズを含むことができる。レンズは、単一のレンズ、または複数のレンズのアレイ(例えば、複合レンズ、レンズアレイは、約2、3、4、5、6、7、8、9、10枚以上のレンズを含んでもよい)であり得る。レンズは、光を透過するための任意の好適な材料から構築することができ、(いくつかの実施形態では)例えば、ガラスおよび/またはポリマーから構築することができる。レンズは、光を透過するための好適な幾何学形状であり得、レンズの非限定的実施例は、両凸(二重凸、凸)、等凸、両凹(凹)、平凸、平凹、凹凸(メニスカス)を含む。いくつかの実施形態では、レンズは、光を集束させることができる。いくつかの実施形態では、レンズは、色フィルタの画像面上に光を集束させることができ、他の実施形態では、レンズは、光検出器の画像面上に光を集束させる。いくつかの実施形態では、レンズは、流動チャネルから伝送される画像等の画像を拡大することができる。レンズは、いくつかの実施形態では、色フィルタから光検出器に透過される画像等の画像を縮小することができる。拡大または縮小は、任意の好適なレベルであり得、(いくつかの実施形態では)約2倍〜約1,000倍(例えば、約10倍、50倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500倍、600倍、700倍、800倍、900倍の拡大または縮小、およびその間の任意の値)である。いくつかの実施形態では、レンズは、チャネルから光を受容し、その光を色フィルタの画像面上に集束することができる。いくつかの実施形態では、レンズは、色フィルタから光を受容し、光をセンサ表面の画像面上に集束することができる。
【0153】
いくつかの実施形態では、マイクロ流体検出器は、導波管を含むことができ、(他の実施形態では)導波管(例えば、粒子が流動するチャネルと関連する導波管)を含まない。いくつかの実施形態では、マイクロ流体検出器は、周囲光がデバイスの1つ以上の構成要素と相互作用することを実質的に阻止する構造を含むことができる。そのような構造は、(いくつかの実施形態では)好適な断面(例えば、長方形、正方形、円形、卵形)の1本以上の管であり得、例えば、いくつかの実施形態では、ボックスである。周囲光を実質的に阻止する構造は、(いくつかの実施形態では)ある構成要素(例えば、レンズ)のための支持体として機能することができる。
【0154】
図28から32、および35から49Bの実施形態で図示される検出器のうちのいずれかは、本明細書で説明される1つ以上の選別構成要素と連結することができる。いくつかの実施形態では、マイクロ流体検出器は、流体を含有することができ、圧電アクチュエータと流体チャネルとの間に位置する、空気・流体界面またはメニスカスが実質的にない。いくつかの実施形態では、マイクロ流体検出器は、流体を含有することができ、圧電アクチュエータと選別される粒子との間に位置する、空気・流体界面またはメニスカスが実質的にない。いくつかの実施形態では、マイクロ流体検出器中のチャネルは、流体を含有することができ、(いくつかの実施形態では)デバイスのチャネル内に空気・流体界面またはメニスカスが実質的にない。いくつかの実施形態では、マイクロ流体検出器は、ガスで充填された貯留部を含むことができず、ガス(例えば、空気)をチャネルに印加するガスポケットまたは構成要素を実質的に含むことができない。
【0155】
図14の実施形態は、本明細書で説明される種々の特徴を実装することができる、フローサイトメトリのためのマイクロ流体検出器1400の実施例を図示する。マイクロ流体検出器1400は、サンプル流体または入力サンプル流体を受け取るための第1のポート(図示せず)と、受容したサンプル流体を出力するための第2のポート(図示せず)とを含む、入力流体チャネル1404を含む。いくつかの実施形態では、サンプル流体内の粒子を選別するために、粒子選別接合点または粒子選別機1411を提供することができ、かつ入力流体チャネルの第2のポートに連結することができる。いくつかの実施形態では、粒子選別接合点から下流で、2つ以上の分岐流体チャネル1410A−1410Cは、入力流体チャネルの第2のポートからのサンプル流体の出口として、粒子選別接合点に連結することができる。いくつかの実施形態では、選別制御信号に応答して、粒子選別接合点内のサンプル流体の方向を制御するように、アクチュエータを粒子選別接合点1411に連結することができる。いくつかの実施形態では、アクチュエータの移動が、粒子選別接合点におけるサンプル流体の移動を引き起こして、サンプル流体の流動方向を変化させるように、アクチュエータは、粒子選別接合点1411の内側に、または粒子選別接合点1411に隣接するか、またはそれと流体連通している流体含有領域中に存在することができる。いくつかの実施形態では、アクチュエータは、選別制御信号の変化に応答して、サンプル流体と相互作用して、それぞれ、分岐流体チャネルに対応する異なる方向にサンプル流体の方向を変化させるように構造化することができる。いくつかの実施形態では、アクチュエータは、サンプル流体中の標的粒子を分岐流体チャネルのうちの選択された1つの中へ方向付けるように動作可能であり得る。
【0156】
図14の実施形態において粒子を選別するためのアクチュエータは、種々の細胞選別技法に基づいて実装することができる。選別技法の非限定的実施例は、電界ベースの選別、誘導泳動(DEP)選別、磁気選別、および流体力学選別を含む。選別は、とりわけ、幹細胞、循環腫瘍細胞、および大腸菌細胞の検出および単離に有利であり得る。いくつかの実施形態では、流体力学選別機の実装は、外部チェック値、統合値、または外部シリンジポンプを伴うことができる。
【0157】
いくつかの実施形態では、
図14のアクチュエータは、粒子選別接合点1411内のサンプル流体に流動方向を変更させるように、選別制御信号としての電圧信号に応答して移動する、圧電アクチュエータを含むように実装することができる。いくつかの実施形態では、マイクロ流体検出器は、細胞選別機であり得、1つ以上の統合圧電アクチュエータを含むことができる。圧電アクチュエータを含む、マイクロ流体検出器は、低い電圧、例えば、10Vp−p未満で動作することができる。瞬間流動切替の実験では、比較的高い周波数(例えば、約1.7kHz)で流動流を変化させるように、圧電アクチュエータを操作することができ、流動中の細胞/粒子の偏向の量を正確に制御することができる。いくつかの実施形態では、目的とする様々なサイズ、形状、および密度の粒子を、圧電アクチュエータによって制御された様式で個別に選別することができる。実施例として大腸菌偏向を使用して、正弦波電圧は、330個の細胞/秒の速度で細胞を偏向させることができ、理論と一致して極めて反復可能な動作を示す。いくつかの実施形態では、特別に設計された空間フィルタ、およびFPGAで実装されるリアルタイム信号処理アルゴリズムを使用して、低いエラー率および約70%の選別効率を伴って、閉ループ選別システムを構築することができる。他のマイクロFACSシステムと比較して、本明細書で開示されるマイクロ流体検出器(すなわち、選別システム)のこれらの実施形態は、いくつかの利点を有する。例えば、空間フィルタ設計およびリアルタイム信号処理アルゴリズムは、信号対雑音比を18dBだけ増進し、選別の検証を可能にすることができる。
【0158】
いくつかの実施形態では、PZT作動型選別モジュールは、少しの電力(例えば、0.1mW)しか消費せず、低い電圧(例えば、<10Vpp)で動作し、チェック値およびシリンジポンプ等のオフチップ機械アクチュエータよりはるかに速い応答(例えば、0.1〜1ミリ秒)を有する。いくつかの実施形態では、FPGAベースの電子制御は、リアルタイム信号増幅、ユーザ定義遅延時間、プログラム可能な出力波形、および低タイミングジッタ(例えば、<10マイクロ秒)を可能にすることができる。いくつかの実施形態では、これらの特徴は、単一粒子レベルで高スループット粒子選別を行うことができる、低費用の選別機に有意に寄与することができる。
【0159】
いくつかの実施形態では、検出器システムは、入力流体チャネル中のサンプル流体から光を受け取るように入力流体チャネルに連結される、粒子検出モジュール1412を含むことができる(
図14)。光は、レーザまたは他の光源等の光源から得ることができ、光は、入力流体チャネル中のサンプル流体を照射するように方向付けることができる。サンプル流体中の粒子のこの照射は、光を粒子によって生成させることができる。したがって、粒子検出モジュール1412は、粒子検出モジュールによって検出される、少なくともサンプル流体中の粒子の速度を示す、受容した光から1つ以上の第1の光学信号を生じることができる。いくつかの実装では、粒子検出モジュール1412は、受容した光から異なる光学信号を生じ、異なるコードで異なる光学信号を符号化する、符号化構造を含むことができる。この符号化は、空間ベースのコードまたは時間ベースのコードであり得、マイクロ流体検出器において複数の光学信号、例えば、マイクロ流体検出器中の異なる場所から異なる光学信号を検出するために、単一の光学検出器を使用することを可能にする。いくつかの実施形態では、粒子検出モジュール1412から1つ以上の光学信号、またはマイクロ流体検出器1400中の他の場所から光を受容して、受容した光によって搬送される情報を搬送する、検出器信号を生じるように、PMTおよび/またはアバランシェフォトダイオード等の光学検出器1420を提供することができる。いくつかの実施形態では、受容した光の中の情報は、アクチュエータを制御すること、および粒子選別接合点におけるそれぞれの選別を含む、種々の目的で光学検出器1420からの検出器信号を処理することによって、抽出することができる。
【0160】
図14の実施形態では、粒子選別機制御モジュール1424が、粒子検出モジュールと流体連通して検出器信号を受信するように、およびアクチュエータと流体連通して選別制御信号をアクチュエータに送信するように提供される。いくつかの実施形態では、粒子選別機制御モジュール1424は、例えば、デジタル信号処理(DSP)回路を使用することによって、適正な処理技法を用いて検出器信号を処理することによって、検出器信号から情報を抽出するように、信号処理機構を含むことができる。光学信号が符号化されるとき、信号処理機構は、異なる光学信号によって搬送される情報を分離するように、異なる光学信号における異なるコードに基づいて検出器信号を処理することができる。粒子選別機制御モジュール1424はまた、粒子選別接合点に到達するための粒子検出モジュールで検出される粒子のタイミングを含む、抽出された情報に基づいて、選別制御信号を生じる、制御機構を含むこともできる。
【0161】
図14の実施形態では、異なる分岐マイクロ流体チャネル1410A、1410B、および1410Cは、粒子選別接合点から選別された粒子を受け取るように粒子選別接合点1411に連結される。
【0162】
図15の実施形態では、マイクロ流体検出器1500は、粒子選別接合点1511から下流の1つ以上の分岐流体チャネル1510A−1510Cの中に光学感知機構(例えば、以下でさらに詳細に説明される基準文字1514A−1514C)を含む。いくつかの実施形態では、より効率的なフローサイトメトリ測定のためのより良好な制御された動作を提供するために、マイクロ流体検出器中の選別前の場所で光学感知および選別後の場所で光学感知を使用することの組み合わせを使用することができる。図示した実施形態では、粒子選別接合点1511においてアクチュエータによって行われる所望の粒子選別が適正に実行されるかどうかを検証するために、選別後感知を使用することができる。図示した実施形態では、選別後の値を操作するための入力として、選別後感知を使用することができる(以下の実施例を参照)。
【0163】
いくつかの実施形態では、
図15の実施形態は、1つの分岐流体チャネルから光を受け取るように、および標的粒子がアクチュエータによって1つの分岐流体チャネルの中へ方向付けられるかどうかを検証するために使用することができる分岐検証光学信号を生じるように、分岐流体チャネル(例えば、チャネル1510A)のうちの1つに連結される分岐検証構造(例えば、1514A)を含む。2つ以上のそのような分岐検証構造を、いくつかの実施形態で実装することができる。
図15の実施形態では、3つ全ての分岐流体チャネル1510A−1510Cが、そのような検証検出モジュール1514A−1514Cを有する。他の実施形態では、いくつかの分岐は、他の分岐がそのような検証構造を有さなくてもよいときに有することができる。
【0164】
図15の実施形態では、光学検出器1520が、少なくとも、粒子検出モジュール1512からの1つ以上の光学信号、および検証検出モジュール1514A−1514Cからの分岐検証光学信号を含む、光を受け取るように位置する。いくつかの実施形態では、光学検出器は、受容した光に含有される情報を搬送する、検出器信号を生じる。粒子選別機制御モジュール1524中の信号処理機構は、標的粒子がアクチュエータによって1つの分岐流体チャネルの中へ方向付けられるかどうかを検証する、指標を生じるように分岐検証光学信号の情報を抽出する。いくつかの実施形態では、この検証は、選別の誤動作の検証に応答して、システム動作を中断する(例えば、流入サンプル流およびアクチュエータによる選別動作を停止する)ことができる、粒子選別機制御モジュール1524に自動的にフィードバックすることができる。いくつかの実施形態では、選別の誤動作についてマイクロ流体検出器のオペレータに警告するように、粒子選別機制御モジュール1524によってアラート信号(例えば、ポップアップ警告および/または点滅光等の視覚信号、ビープ音等の音声信号、および/または同等物)を生成することができる。
【0165】
従来のフローサイトメトリシステムにおける制限は、異なる蛍光波長における光学信号をそれぞれ検出するために、複数のPMTを使用することである。そのようなシステムの中の複数のPMTの存在は、マイクロ流体検出器の設計を複雑にし、費用を増加させ、システムをかさばらせて重くする。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるようなマイクロ流体検出器は、異なる光学信号が一意的かつ相互に異なるか、または直交するコードを用いて符号化されるように、複数の異なる光学信号において信号符号化を提供することができる。いくつかの実施形態では、単一の光学検出器による光学検出のために、これらの光学信号をともに多重化することができ、一意的かつ相互に異なるか、または直交するコードに基づく逆多重化によって、異なる光学信号によって搬送される情報を分離することができる。逆多重化は、デジタル信号処理を介して行うことができる。
【0166】
図16Aおよび
図16Bの実施形態は、そのような信号符号化を実装する、2つのマイクロ流体検出器の実施例を図示する。
【0167】
図16Aで図示されるように、入力流体チャネル1604に連結される粒子検出モジュール1612は、受容した光から異なる光学信号を生じ、異なる符号を用いて異なる光学信号を符号化する、符号化構造を含むように構造化される。いくつかの実施形態では、図示されるように、光学エンコーダ1612A、1612Bが、そのような符号化構造の実施例として示されている。光学エンコーダ1612Aは、第1のコードを用いて第1の光学信号#1を生じ、光学エンコーダ1612Bは、第1のコードとは異なる第2のコードを用いて第2の光学信号#2を生じる。いくつかの実施形態では、光学検出器1620は、異なる光学信号および異なるコードの情報を搬送する検出器信号を生じるように、異なる光学信号を受信する。いくつかの実施形態では、粒子選別機制御モジュール1624の信号処理機構、例えば、DSPが、異なる光学信号の中の異なるコードに基づいて、検出器信号から異なる光学信号の情報を抽出する。いくつかの実施形態では、粒子選別機制御モジュール1624の中の制御機構が、粒子選別接合点に達するための粒子検出モジュールで検出される粒子のタイミングを含む、抽出された情報に基づいて、選別制御信号を生じる。
【0168】
図16Bで図示されるように、同一の光学検出器1612’が符号化された光学信号を検出することを可能にするように、追加の光学エンコーダが流体検出器1600’の中で提供される。追加の光学エンコーダ1614A’および1614C’が、それぞれ、分岐流体チャネル1610A’、1610C’の中の符号化構造の実施例として示されている。いくつかの実施形態では、光学エンコーダ1614A’は、第1および第2のコードとは異なる第3のコードを用いて第3の光学信号#3を生じ、第4の光学エンコーダ1614C’は、他の3つ全てのコードとは異なる第4のコードを用いて第4の光学信号#4を生じる。いくつかの実施形態では、光学検出器1620’は、異なる光学信号#1−#4および異なるコードの情報を搬送する検出器信号を生じるように、異なる光学信号#1−#4を受信する。
図16Bでは、第3および第4の光学信号は、光学エンコーダ1614A’および1614C’のそれぞれが分岐検証構造として実装されるときの分岐検証光学信号であり得る。いくつかの実施形態では、光学検出器1620’は、光学信号#1および#2ならびに分岐検証光学信号#3および#4の両方を受信する。
【0169】
図16Cの実施形態は、
図16Bの実施形態における信号検出および処理を示す。いくつかの実施形態では、信号検出は、多重化信号#1−#4を搬送する検出器信号に変換される入力光としてともに多重化される、4つ全ての光学信号#1−#4の光を受け取る単一の光学検出器1620’によって行われる。いくつかの実施形態では、アナログ・デジタル変換後に、多重化信号を処理するため、およびそれらの一意的なコードに基づいて4つの異なる信号を分離するために、(例えば、粒子選別機制御モジュール1624’の一部であり得るような)DSPユニットが使用される。
【0170】
場合によっては、マイクロ流体検出器における光学符号化および復号は、
図16A−16Cで図示される光学エンコーダのように、光学信号構造を介した信号符号化に基づく、単一の光学検出器を用いた光学調査方法に基づく。いくつかの実施形態では、本方法は、流体チャネルのネットワークを形成して、流体チャネルによって搬送される流体を照射するように、光を流体チャネルのうちの1つ以上に方向付けるステップと、流体を照射する光から光学信号を生じるように、異なる場所で流体チャネルのうちの少なくともいくつかにそれぞれ連結される、光学信号構造を提供するステップとを含むことができる。いくつかの実施形態では、各光学信号は、それぞれの光学信号構造の場所で、流体中で搬送される粒子の性質を示す情報を搬送することができる。場合によっては、光学信号構造は、それぞれ、相互とは異なる光学信号において一意的なコードを生じるように構造化される。いくつかの実施形態では、本方法は、光学信号構造で生成される全ての光学信号から光を収集して、収集された光に応答して電気検出器信号を生じるために、単一の光学検出器を使用することができる。いくつかの実施形態では、電気検出器信号は、光学信号によって搬送される情報を分離して、光学信号のそれぞれによって搬送される情報を抽出するように、光学信号の中の一意的なコードに基づいて処理することができる。
【0171】
いくつかの実施形態では、マイクロ流体検出器は、単一の検出器、より具体的には、いくつかの実施形態では、単一の光電子倍増管(PMT)、または単光子アバランシェ検出器(SPAD)あるいはアバランシェフォトダイオードを使用して、複数の(例えば、20以上の)蛍光波長の検出を支援するために、色時空間(COST)に基づく信号符号化および復号を利用することができる。いくつかの実施形態では、マイクロ流体検出器は、ラボオンチップ技術およびアーキテクチャを使用して実装される。多重点検出および「検証信号」の結果として生じる生成を可能にして、リアルタイムで選別効率および精度を記録するように、(時空間符号化と称することができる)そのようなアーキテクチャのより単純なバージョンもまた、いくつかの実施形態で提供される。
【0172】
以下の実施形態は、ラボオンチップマイクロ流体検出器内の単一の検出器を使用する、複数の蛍光波長のCOST符号化検出のため等を含む、方法、システム、および/またはデバイスを含む。マイクロ流体検出器は、ラボオンチップ蛍光活性化細胞選別機(FACS)またはラボオンチップフローサイトメータを含むことができる。そのような実施形態は、蛍光を検出器に透過する導波管に色素を組み込むことによって、色分けを含むように修正される、時空間符号化の拡張と見なすことができる。いくつかの実施形態では、染料の適切な選択および吸収スペクトルの較正により、20以上の蛍光波長が、色フィルタ導波管を通過することができ、PMTまたはSPAD等の単一の検出器を使用して検出することができる。しかし、いくつかの実施形態では、着色された導波管/フィルタが、COST符号化検出を達成するようにチップ上に統合される。いくつかの実施形態では、チップと統合されていない1つ以上の外部色フィルタを使用して、COST概念を実装することも可能である。いくつかの実施形態では、チップが単回の使用または数回の使用後に処分されるとき、色フィルタは処分されない(または処分される必要がない)。
【0173】
いくつかの実施形態では、マイクロ流体検出器は、1つ以上の追加の構成要素および/または特徴を含む。いくつかの実施形態では、これらは、例えば、光を集束し、検出スループットを増進するように調査ゾーンを短縮する、統合レンズのアレイを含むことができる。いくつかの実施形態では、これらの特徴は、最小限の細胞損失とともに>1M濃縮係数を達成するように、流動障害の最小限化、3D流動閉じ込め、および/または連鎖選別方略を含むことができる。場合によっては、これらの特徴は、検出および選別を協調させ、感度を増進し、選別誤差を最小限化するように、リアルタイム電子制御および信号処理アルゴリズムとともにシステム統合アーキテクチャを含むことができる。いくつかの実施形態では、COSTアプローチは、統合光学流体解決策を多色検出に提供し、したがって、既存の商業システムより桁違いに小型、軽量、および/または安価である、マイクロ流体検出器の構築を可能にする。
【0174】
いくつかの実施形態では、マイクロ流体検出器は、マイクロ流体チャネルと、実質的に全ての可視光成分を伝達するよう構成され、マイクロ流体チャネルに近接する第1の端部を有する、第1の光伝達構造とを含む。マイクロ流体検出器はまた、マイクロ流体チャネルに近接する少なくとも1つの第2の端部を有し、第1の光伝達構造と実質的に平行に延在する、少なくとも1つの第2の光伝達構造を含むこともでき、少なくとも1つの第2の光伝達構造は、可視光成分の少なくとも1つのサブセットを伝達するように構成される。場合によっては、マイクロ流体検出器はさらに、光伝達構造のそれぞれの各追加の端部に近接して配列される、光感知デバイスを含み、それぞれの追加の端部は、それぞれ、各第1および第2の端部の反対にある。マイクロ流体チャネルを通過する材料から発する光のそれぞれの部分は、それぞれの光伝達構造によって受容され、それによって、少なくとも部分的に光感知デバイスに伝えられ、それによって、光感知デバイスによって出力される1つ以上の信号に基づいて、マイクロ流体チャネルを通過する材料の指示を判定することができる。
【0175】
加えて、いくつかの実施形態では、フローサイトメトリを行う方法は、材料が通過しているマイクロ流体チャネルに第1の光を注入するステップと、マイクロ流体チャネルから複数の導波管の中へ第2の光を受け取るステップとを含み、導波管のうちの第1のものは、実質的に全ての可視光成分を伝導し、導波管のうちの第2のものは、可視光成分のサブセットを伝導する。いくつかの実施形態では、本方法はさらに、導波管のそれぞれの第1の端部から導波管のそれぞれの第2の端部まで、第1および第2の導波管を通して第2の光の第1および第2の部分を伝達するステップと、第2の光の伝達された第1および第2の部分のうちの少なくとも一部を光検出器に伝えるステップと、光検出器から色時空間信号を出力するステップとを含む。
【0176】
さらに、いくつかの実施形態では、フローサイトメトリを行う方法は、材料が通過しているマイクロ流体チャネルに第1の光を注入するステップと、マイクロ流体チャネルから複数の光学フィルタの中へ第2の光を受け取るステップとを含むことができ、フィルタのうちの第1のものは、実質的に全ての可視光成分を伝導し、フィルタのうちの第2のものは、可視光成分のサブセットを伝導する。いくつかの実施形態では、方法は、加えて、第2の光の伝達された第1および第2の部分のそれぞれのうちの少なくともいくつかを光検出器に伝えるステップと、光検出器から色時空間信号を出力するステップとを含む。
【0177】
図17の実施形態は、マイクロ流体細胞検出器1702の概略図を図示する。いくつかの実施形態では、マイクロ流体検出器1702は、レーザ光を生成し、その光をマルチモードファイバ1706の中へ提供する、レーザ1704を含む。いくつかの実施形態では、マルチモードファイバ1706は、順に、ボックス1708によって概略的に表されるマイクロ流体チャネル1710に向かって光を方向付ける。いくつかの実施形態では、マイクロ流体チャネル1710の内部構成要素の画像1712もまた、ボックスに隣接して提供され、これらの内部構成要素は、以下でさらに詳細に説明される。光がマイクロ流体チャネル1710に提供された後、光は、そのデバイスの(以下でさらに説明される)マイクロ流体チャネルを通過する細胞、または他の材料あるいは物質と相互作用し、その相互作用の結果として、結果として生じた光が、マイクロ流体チャネル1710から光を感知する光電子倍増管(PMT)1714に提供される。PMT1714は、順に、光を感知すると、順に、データをパーソナルコンピュータ1718に提供する、National Instruments LabViewベースのソフトウェア1716(National Instruments Corp.(Austin, Texas)から入手可能である)に、感知した光を示す信号を出力する(
図14で提供される表現にもかかわらず、ソフトウェア1716は、パーソナルコンピュータ上で実装されると見なすことができる)。
【0178】
図17の実施形態および少なくともいくつかの他の実施形態では、色時空間(COST)符号化技術を適用することによって、多重パラメータ検出が達成される。多重パラメータ検出は、本明細書で説明および図示される実施形態のうちのいずれかのマイクロ流体検出器1710から発する、12以上の光の異なる蛍光波長の検出を可能にするときに、さらなる関心となる。
図17の実施形態では、マイクロ流体検出器1710は、単一の検出器を使用して、マイクロ流体検出器から発する光の複数の(例えば、20以上の)蛍光波長の検出を支援することができる。単一の検出器が、実施形態に応じて異なる形態を成すことができる一方で、
図17は、単一の検出器としてPMT1714を図示し、他の実施形態(図示せず)では、検出器は、他の形態、例えば、単光子アバランシェ検出器(SPAD)を成すことができる。
【0179】
いくつかの実施形態では、レーザ光源1704は、405/488nm(またはBlu−ray(登録商標)規格)レーザを含むことができる。いくつかの実施形態では、種々の他の励起レーザを使用することができる(例えば、630〜650nmにおけるレーザ、および/またはNichia、Sony、Xerox、Omicron等の種々の企業によって製造された他のレーザ)。いくつかの実施形態(例えば、
図17の実施形態)では、マイクロ流体細胞検出器1702またはその少なくともある部分(例えば、マイクロ流体検出器1710)は、バルク光学部品を統合光学部品と置換する、ラボオンチップ技術プラットフォームを採用するデバイスであり得る。
【0180】
図18は、符号化構造が、入力流体チャネルの感知領域1840に沿って複数の光学開口を伴う光学開口構造1860と、構造1860内の光学開口を介して感知領域1840から光を受け取る、光学導波管1852、1854、1856、および1858とを含む、マイクロ流体検出器1710の設計の例証的な説明図である。感知領域1840を通って流動するサンプル流体中の粒子1898(例えば、細胞)は、異なる時間に異なる位置で入力流体チャネルに沿った光学開口を連続的に通過する、光を発する。導波管1852、1854、1856、および1858によって受容される光は、光学検出器(例えば、光学検出器1714等のPMT)によって収集することができる。導波管1852は、粒子1898によって発せられる全ての波長の光を伝導することができる。導波管1854、1856、および1858は、異なる中心透過周波数をそれぞれ中心とする、光透過帯域を伴う光学フィルタ導波管である。導波管1854、1856、および1858は、光学検出器によって受信されるように、異なる時間に、異なる中心透過周波数、例えば、赤色、緑色、および青色波長を中心とする、異なる光学スペクトル帯域を伴って、異なるフィルタにかけられた光透過信号を生じることができる。いくつかの実施形態では、導波管1854、1856、および1858は、異なる中心透過周波数をそれぞれ中心とする、光学透過帯域中でスペクトル重複を有するように構成される。したがって、赤色中心波長で透過する赤色導波管1854はまた、緑色波長における一部の光、および青色波長における一部の光も透過し、緑色中心波長で透過する緑色導波管1856はまた、赤色波長における一部の光、および青色波長における一部の光も透過し、青色中心波長で透過する青色導波管1858はまた、緑色波長における一部の光、赤色波長における一部の光も透過する。この設計では、信号処理は、信号処理忠実性を向上させるように、異なるフィルタにかけられた光透過信号のそれぞれの中の重複スペクトル情報に基づいてもよい。例えば、重複スペクトル範囲を伴う眼内の赤色、緑色、および青色受容器または錐体細胞からの信号に基づく、ヒト視覚系による画像処理を、上記のデバイスにおける信号処理のためにモデル化することができる。
【0181】
図19Aは、さらに詳細にマイクロ流体検出器1910の構成要素を図示する。示されるように、マイクロ流体検出器1910は、いくつかの実施形態では、流体中に懸濁させられた目的とする粒子、細胞、または他の物質が通過することができる、マイクロ流体チャネル1920を含むことができる。第1の端部1922におけるマイクロ流体チャネル1920は、それぞれ、第1、第2、および第3の進入オリフィスまたはポート1924、1926、および1928に連結され、第2の端部1932では、それぞれ、第1、第2、および第3の出口/出口ポート1934、1936、および1938に連結される。その端部1922、1932の中間にあるマイクロ流体チャネル1920のサンプリング領域1940では、追加の導波管構造1950が提供される。追加の導波管構造1950が、マイクロ流体チャネル1920のサンプリング領域1940とともに、
図19Bでさらに詳細に示されている。マイクロ流体検出器1910は、少なくともいくつかの実施形態では、その低い加工費用により、使い捨てと見なすことができる。
【0182】
図19A−19Bの実施形態では、ラボオンチップデバイスとしてのマイクロ流体検出器1910の信頼性および再利用可能性を向上させるように、マイクロ流体チャネル1920は、(いくつかの実施形態では)ポリジメチルシロキサン(「PDMS」)で作製され、いくつかの実施形態では、流体と接触しているPDMS表面(例えば、チャネルの内面)はさらに、非晶質Teflon
(登録商標)の(例えば、Teflon
(登録商標)AFを伴う)薄く平滑で一様な層、具体的には、水の屈折率(約1.33)より低い屈折率(例えば、約1.31)を有するTeflon
(登録商標)コーティングでコーティングされる。いくつかの実施形態では、Teflon
(登録商標)コーティングの使用は、(特に小分子を取り扱うときに懸念を提示し得る)PDMSの多孔質および透過性質と関連付けられる(種々のPDMSベースのマイクロ流体デバイスで提示され得る)懸念を軽減する。
【0183】
上記の利益に加えて、Teflon
(登録商標)コーティングしたマイクロ流体チャネル1920を採用することの別の利益は、加えて、それが低損失光学導波管としてのマイクロ流体チャネルの動作を促進することであり得る。つまり、Teflon
(登録商標)コーティングしたマイクロ流体チャネル1920の使用を通して、本実施形態では、概して、動作中に(例えば、マルチモードファイバ1706等のマルチモードファイバから)マイクロ流体検出器1910に進入する光1946は、マイクロ流体チャネル1920の中へ指向され、(矢印1948によって示されるように)マイクロ流体チャネル1920のサンプリング領域1940に向かって、かつその中へ、マイクロ流体チャネル1920内で誘導される。サンプリング領域1940に到達すると、光1946は、マイクロ流体チャネルを通過する、目的とする細胞または他の物質に衝突し、蛍光を発光させ、そのうちの一部または全ては、マイクロ流体チャネル1920/サンプリング領域1940の側面1944に沿って配列される追加の導波管構造1950の中へ進入する。
【0184】
「ラボオンチップ技術」の(
図19A−19Bの)上記の実施形態は、感度を増進し、雑音を抑制するように、流路に沿った複数の検出点を可能にする。いくつかのマイクロ流体検出器アーキテクチャでは、光源(励起レーザ源等)からの光は、電力分割損失に悩まされる。換言すると、細胞(または目的とする他の対象物質)が、いくつかの(例えば、4つの)異なる光学調査ゾーンを通過する場合、励起レーザ電力は、過剰な分割損失(例えば、6dBの分割損失)をもたらす様式で、これらのゾーンのそれぞれで分割(例えば、4回分割)されてもよい。対照的に、Teflon
(登録商標)でコーティングしたマイクロ流体チャネル20を採用する上記の実施形態を使用して、細胞(または目的とする他の対象物質)を伝導するチャネルはまた、励起光を誘導する導波管としての機能も果たし、その結果として、以下でさらに議論されるような多点光学調査を達成することが可能である。同時に、誘導された光の光学強度は、光漂白の効果を回避するように、緊密に集束したレーザビーム点より低い。
【0185】
加えて、
図19Bを参照すると、マイクロ流体検出器1910は、マイクロ流体チャネル1920のサンプリング領域1940から離れて延在する追加の導波管構造150を採用することによって、多点光学調査を達成する。示されるように、次いで、追加の導波管構造1950は、単一の導波管のみを含まず、むしろ、それぞれ、第1、第2、第3、および第4の横断導波管1952、1954、1956、および1958を含むことが示されている。追加の導波管構造1950の導波管1952、1954、1956、および1958のそれぞれは、サンプリング領域1940の導波管1952、1954、1956、および1958の間にある、追加の導波管構造の第1の端部1962に位置付けられた第1のフィルタ構造1960と、第1の端部と反対側の追加の導波管構造の第2の端部1965に位置付けられた第2のフィルタ構造1964との間に延在する。
【0186】
いくつかの実施形態では、導波管1952、1954、1956、および1958のそれぞれは、異なるそれぞれの色を有する。より具体的には、第1の導波管1952が、特定の色を伴わずに(例えば、透明である)透過性であり得る一方で、第2の導波管1954、第3の導波管1956、および第4の導波管1958は、それぞれ、赤色、緑色、および青色であり得る。その結果として、第1の導波管1952が、可視光スペクトル内の光の全ての(または実質的に全ての)成分(例えば、約380nm〜750nmの範囲内の波長を有する全ての光成分、または「白色光」)を透過することができる一方で、他の導波管1954、1956、および1958は、それぞれ、赤色、緑色、および青色光成分のみを透過する傾向があり、他の着色光成分は、部分的に除外される。したがって、導波管1952、1954、1956、および1958はまた、光学フィルタと見なすこともできる。第1のフィルタ構造1960は、黒色であるか、黒く/暗くされ、サンプリング領域1940から導波管1952、1954、1956、および1958へ進む光の能力を制限することができる、いくつかのブロック特徴1966を包含する。さらに、第2のフィルタ構造1964に関して、この構造はまた、黒く/暗くされ、導波管1952、1954、1956、および1958から外へ、およびPMT(例えば、PMT1714)に向かってマイクロ流体検出器1910から外へ進む光の能力を制限する、ブロック特徴1968も含む。特徴1966、1968は、特に、コントラスト比を増加させ、クロストークを低減させる働きをし、さらに、光学単離のためのビームブロックとしての機能を果たす。
【0187】
典型的には、所望の動作を得るように、種々の導波管1952、1954、1956、および1958(具体的には、導波管1954、1956、1958)を最適化して特徴付けることに配慮することが望ましい。赤色、緑色、および青色導波管1954、1956、1958、ならびにフィルタ構造1960および1964を作成するために、赤色、緑色、青色、および黒色の色素が、それぞれ、横断導波管およびフィルタ構造に注入される。いくつかの実施形態では、色素は、油溶性であり得、着色光学導波管/フィルタ構造を形成するように高屈折率(例えば、n=1.42〜1.46)PDMSと混合することができる。高屈折率のPDMSプレポリマーは、低屈折率(n=1.41)PDMSを使用して形成される、導波管チャネルを充填する。色素または異なる染料の混合物を適正に選択することによって、かつ吸収スペクトルを較正することによって、導波管1954、1956、1958は、それぞれ、それぞれの所望の透過スペクトルを有することができる。本実施形態では、最大数の波長を網羅するために、3つの色フィルタのための中心波長は、約510nm、570nm、および640nmで生じるべきである。
【0188】
いくつかの実装では、赤色、緑色、青色(RGB)導波管(上記のように光学フィルタと見なすこともできる)1954、1956、1958のそれぞれは、波長とともにその透過特性の(急速なカットオフよりもむしろ)段階的変化を呈するように設計することができる。単一の染料が所望のスペクトル応答を生じることができない場合、染料の混合物が使用されてもよい。さらに、フィルタ構造1960、1964の特徴1966、1968を適切に着色すること/暗くすること、およびこれらの特徴の形状および配列を適切に選択することによって、光をサンプリング領域1940から導波管1952、1954、1956、および1958に適切に方向付けるとともに、PMT(例えば、PMT1714)に向かって導波管から外に方向付けることができる。色フィルタ設計が選択された後、COST符号化マイクロ流体検出器(例えば、マイクロ流体検出器1702)をさらに設計するために、(Zemax Development Corporation(Belleview, Washington)から入手可能であるような)ZEMAX等の光学設計ソフトウェアを使用することができる。
【0189】
図19Bを依然として参照して、本実施形態では、着色/黒色染料は、入口オリフィス、およびこれらの入口オリフィスから導波管/フィルタ構造に至るチャネルを介して、導波管1954、1956、1958およびフィルタ構造1960、1964に注入される。流体注入後、全てのPDMSプレポリマーは、導波管/フィルタ構造に達するように熱硬化させられる。硬化中に間隙または空隙の形成を回避するために、硬化は真空中で行われる。より具体的には、示されるように、黒色チャネル1970が、黒色入力オリフィス1972とフィルタ構造1960、1964のそれぞれとの間に至り、したがって、オリフィスで入力される黒色染料が、フィルタ構造1960、1964の中へ進入し、その特徴1966、1968を形成することができる。また、示されるように、赤色、緑色、および青色チャネル1974、1976、および1978が、それぞれ、それぞれの赤色、緑色、青色入力オリフィス1984、1986、および1988から、それぞれ、それぞれの赤色、緑色、青色導波管1954、1956、および1958に至り、したがって、赤色、緑色、および青色染料を、それぞれのオリフィスおよびそれぞれの関連チャネルを介してそれぞれの導波管に注入することができる。同様に、透明チャネル1980が、透明入力オリフィス1982と導波管1952との間に至り、透明な染料がその導波管に提供されることを可能にする。
【0190】
加えて、
図19Bはまた、追加の導波管構造1950およびサンプリング領域1940の詳細をさらに図示する、
図19Bの第1、第2、および第3の差し込み画像1990、1992、および1994も含む。より具体的には、第1の差し込み画像1990は、サンプリング領域1940と導波管1952、1954、1956、および1958との間に配列されるような第1のフィルタ構造1960の特定の特徴1966をより明確に示す。差し込み画像1990から明白となるように、特徴1966(再度、それを通る光の通過を制限するように黒く/暗くされる)は、サンプリング領域1940と導波管1952との間に位置付けられる2つの小型特徴1996を除いて、導波管1952、1954、1956、および1958のうちの導波管に隣接して概して間に位置付けられる。第2の差し込み画像1992に関して、その画像は、特に、それぞれ、導波管1952および導波管1958への、それぞれ、チャネル1980および1978の連結を示す。さらに、第3の差し込み画像1994に関して、その画像は、それぞれ、導波管1954および導波管1956へのチャネル1974および1976の連結、ならびにそれぞれ、第2のフィルタ構造1964へのチャネル1970の連結を示す。
【0191】
図20Aを参照すると、サンプリング領域1940、および追加の導波管構造50、すなわち、導波管1952、1954、1956、および1958の部分、ならびに第1のフィルタ構造1960の特徴1966を含む第1のフィルタ構造1960、および第2のフィルタ構造1964の特徴68を含む第2のフィルタ構造64の概略図が提供されている。
図20Aはまた、目的とする物質、本実施例では、マイクロ流体チャネル1920のサンプリング領域1940を通過する細胞1998も図示する。細胞1998の異なる陰影によって図示されるように、細胞のうちの異なるものが、異なる染料で蛍光標識されているため、これらの異なる細胞が(
図19Aに示されるように)光1946によって衝突されるときに、異なる細胞が、導波管1952、1954、1956、および1958のうちの異なるものによる透過のために好適な光の異なる色を発する(光の異なる色の全ては導波管1952によって伝導される)。
【0192】
実施形態に応じて、材料の複数の層によって追加の導波管構造1950を形成できることを理解されたい。加えて、それぞれ、
図20Bおよび20Cを参照すると、それぞれ、
図17Aの線B−BおよびC−Cに沿って得られた追加の導波管構造1950の層の実施例が示されている。
図20Bおよび20Cは、特に、本実施形態では、着色または黒色PDMSプレポリマーが、導波管1952、1954、1956、および1958、ならびにフィルタ構造1960、1964に導入される、チャネル1970、1974、1976、1978、および1980は、それに沿ってこれらの導波管/フィルタ構造が存在する(かつそれに沿って検出された光が通過する)検出面からの異なる層にあることを示す。
【0193】
より具体的には、
図20Bは、特にフィルタ構造1960の場所で、追加の導波管構造1950の断面図を示す。示されるように、フィルタ構造1960は、上PDMS層2102と底PDMS層104との間に空洞として形成される。より具体的には、フィルタ構造1960は、特に濾過要素としての機能を果たす特徴1966の上方に位置付けられる、トンネル領域2110を両方とも含む。特徴1966の上方に位置付けられる(その内側に特徴が位置付けられる、底PDMS層2104内よりも上PDMS層2102内に位置付けられる)トンネル領域2110は、オリフィスで入力される黒色染料が特徴1966の中へ進入し、それを形成することができるように、入力オリフィス2112を特徴のそれぞれと接続する。トンネル領域2110および入力オリフィス2112は、これらの構造の配列が
図19Bに対して
図20Bではわずかに異なるが、
図19Bに関して上記で説明される黒色チャネル1970および黒色入力オリフィス1972に対応する(かつそれらとしての機能を果たす)と理解できることが観察されるであろう。
【0194】
同様に、
図20Cは、(フィルタ構造1960ではなく)導波管1952、1954、1956、および1958のみが位置する、追加の導波管構造1950の断面図を示す。示されるように、(
図20Aの線C−Cに対応する)示される特定の場所では、導波管1952、1954、1956、および1958の全てが、上PDMS層2106と底PDMS層2108との間に位置付けられて存在する。加えて、導波管1952を入力オリフィス2116と接続する、トンネル領域2114が、その導波管の上方に(つまり、その内側に導波管1952、1954、1956、および1958が位置付けられる、底PDMS層2108内よりも上PDMS層2106内に)位置付けられて示されている。トンネル領域2114および入力オリフィス2116は、これらの構造の配列が
図19Bに対して
図20Cではわずかに異なるが、
図19Bに関して上記で説明されるチャネル1980および入力オリフィス1982に対応する(かつそれらとしての機能を果たす)と理解できることが観察されるであろう。また、しかし、(
図19Bに関してすでに議論されたように)導波管1952、1954、1956、および1958に関して、対応するトンネル領域および入力オリフィスを提供できることも留意されるであろう。
【0195】
図21の実施形態を参照すると、時空間符号化およびCOST符号化を行うマイクロ流体検出器の動作が、さらに詳細に図示されている。
図21Aの実施形態を最初に参照すると、時空間符号化のみを行う、マイクロ流体検出器2120のより単純な設計が示されている。示されるように、マイクロ流体検出器2120は、上記および以下でさらに議論されるマイクロ流体検出器とは対照的に、マイクロ流体チャネル2126の側面から離れて横方向に延在し、フィルタセクション2128によってフィルタにかけられるようなマイクロ流体チャネル2126のサンプリング領域2124から細胞2118によって生じさせられる蛍光を受け取る、3つの透明な光学導波管2122のアレイのみを有する。より具体的には、蛍光細胞2118のうちの1つは、10cm/秒〜100cm/秒の典型的な速度でチャネル2126を通って進行する。本実施形態では、細胞2118は、上記で議論されるTeflon
(登録商標)コーティング方法によって可能にされる光・流体共同伝搬構成で、途中で光学的に励起させられる。
【0196】
導波管アレイの3つの導波管2122はそれぞれ、矢印2128によって示されるように、マイクロ流体チャネル2126から離して光を伝導し、それらの光出力を単一のPMT検出器に提供する。その結果として、細胞2118のうちの1つが、導波管アレイの導波管2122を連続的に通り過ぎて、マイクロ流体チャネル2126に沿って進行すると、進行の時間によって分離される3つの連続ピークがPMTを介して検出され、したがって、(細胞位置を表す)空間信号を、時空間符号化出力信号または時間ドメイン信号2130に変換する。時間ドメイン信号の波形を合致させるためにデジタル合致フィルタを使用して、雑音を抑制し、各個別細胞の進行速度を取得し、したがって、下流選別のためのタイミングを確立することができる。さらに、細胞2118のうちの所与の細胞をその経路に沿って複数回調査する(例えば、信号対雑音比を増進するように、または細胞が右チャネルに選別されるかどうかを検証するようにオーバーサンプリングする)ことを選択する場合、対応合致フィルタを使用して、各検出点における結果として生じる時間ドメイン信号を抽出することができるように、符号化パターンを変更することが可能である。
【0197】
図21Bを参照すると、COST符号化は、上記で議論される導波管1954、1956、1958等の着色導波管を含む、追加の横断導波管を利用することによって、時空間符号化を改良する。示されるように、マイクロ流体検出器(例えば、検出器1702)を使用すると、サンプリング領域40に由来する蛍光に応答して、追加の導波管構造1950によってPMT(例えば、PMT1714)に提供される出力信号は、色時空間(COST)符号化信号2132である。再度、導波管1952が、透明であり、その結果として「全域通過」導波管としての機能を果たす一方で、他の導波管1954、1956、1958は、これらの導波管の着色に対応する特定の色の光のみを通過させる。その結果として、COST符号化信号2132は、全体的な蛍光強度の基準を確立するために使用することができる、導波管1952から発する種々の光成分を表す白色光信号部分2132、また、導波管1954、1956、1958から発する特定の色の光を表す色コーディングされた信号部分2134の両方を含む。各蛍光波長が約30nmのスペクトル幅を有し、3つの色フィルタ導波管1954、1956、1958が、それぞれ、510nm、570nm、および640nmにおける最大透過波長を有すると仮定して、単一の検出器(例えば、PMT1714)を使用して、20より多くの蛍光波長を検出できることが推定される。
【0198】
導波管1952は、単一の透明な導波管であるものとして上記で説明されたが、
図21Aに示される導波管2122のアレイと同様に、導波管1952はまた、全体的な導波管アレイを形成する1つより多くの導波管を含むこともできる。また、色フィルタの中の非蛍光染料が励起レーザの経路の中にないため、背景蛍光は懸念ではない。
【0199】
上記のCOST技術は、システム機能性および費用において有意な利点を提供する。さらに、特定の設計制約を仮定すると、本技術はまた、満足できるデバイススループットと一致する。具体的には、横断導波管面積全体が、(幅)100umを取り、細胞が50cm/秒で進行すると仮定すると、サンプリング領域1940内の光学調査ゾーン(すなわち、追加の導波管構造1950の最外導波管1952、1958の最外縁によって画定されるゾーン)を通過する時間は、0.2ミリ秒である。これは、検出スループットを2,000〜5,000個の細胞/秒または約10M個の細胞/時間に限定する。これは、いくつかの用途のために満足できる数であり得るが、ある他の用途では依然として足りない。したがって、スループットをさらに増加させるために、ある実施形態では、面内レンズがCOST設計を実装することがさらに提案される。そのような統合レンズアプローチでは、レンズアレイが、相互から5um未満だけ分離される、一連の焦点を生成し、したがって、約25ミクロンになるように調査ゾーンの全幅を縮小する。結果として、COST領域を通って進行する時間は、50マイクロ秒未満になる。この設計は、20〜30K/秒または1時間につき約100M個の粒子までスループットを潜在的に増加させることができる。
【0200】
実施形態に応じて、マイクロ流体検出器の性能をさらに増進するように、追加の構造を使用することができる。例えば、少なくともいくつかの実施形態では、例えば、それぞれが参照することにより本明細書に組み込まれる、「System and Method for Flow Cytometry」と題された2008年5月14日出願の米国特許出願第12/152,665号、同様に「System and Method for Flow Cytometry」と題された2008年3月5日出願の米国仮特許出願第61/068,198号、およびさらに2007年5月14日に出願され、「Light Conveying Device」と題された米国仮特許出願60/917,848号で説明されるように、プリズムおよび他の構造を使用することができる。
【0201】
図21Aでは、蛍光細胞が10cm/秒〜100cm/秒の典型的な速度でチャネルを通って進行すると、細胞は、光・流体共同伝搬構成で、途中で光学的に励起させられる。流体チャネルに対して直角に、それらの光透過を単一のPMT検出器に供給する、3つの開口のアレイがある。細胞がこの3つの開口のアレイを横断して進行すると、進行の時間によって分離される3つの連続ピークが検出され、したがって、空間信号(すなわち、細胞位置)を時間ドメイン信号に変換する。時間ドメイン信号の波形を合致させるためにデジタル合致フィルタを使用して、各個別細胞の進行速度を取得し、したがって、下流選別のためのタイミングを確立するように、信号の雑音を抑制することができる。細胞がその経路に沿って複数回調査される(例えば、信号対雑音比を増進するように、または細胞が右チャネルに選別されるかどうかを検証するようにオーバーサンプリングする)場合、対応する合致フィルタを使用して、各検出点における結果として生じる時間ドメイン信号を抽出することができるように、符号化パターンを変更することが可能である。
図22は、選別が成功して行われたことを検証する、選別後の下流に別の時空間符号化信号(1011)が後に続く、上流検出領域における時空間符号化信号(111)を示す。第1の信号(111)は、ビーズが検出ゾーンを通過するときの検出された蛍光を表す。選別後、約3.5ミリ秒だけ第1の信号の後を追う第2の信号(1011)は、ビーズが正しく選別チャネルの中へ切り替えられたことを示す。
【0202】
マルチパラメータオンチップ検出および細胞選別は、リアルタイム電子システムによって制御される、十分に調整された様式で機能する必要がある。感度、待ち時間、およびタイミングジッタは、良好な電子制御システムが対処する必要がある、3つの主要な問題である。感度は、デバイス自体の品質、および電子システムに組み込まれるリアルタイム信号処理能力の有効性に依存する。待ち時間は、アルゴリズムが計算を完了するために必要とされる時間量である。タイミングジッタは、待ち時間の変動である。制御回路アーキテクチャは、アナログ回路、マイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、および/または同等物で実装することができる。アナログ回路で高度な信号処理アルゴリズムを実装することの困難、ならびに長い待ち時間および大きいタイミングジッタを生じるマイクロプロセッサの限定された計算能力により、ASICアプローチが制御回路のために実装されてもよい。例えば、National Instruments compactRIOシステムは、マイクロプロセッサ上で作動するリアルタイムオペレーティングシステム(RTOS)、および基本的には高度に費用効率的な種類のASICであるフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を伴う、完全な組み込みシステムを提供する。このシステムが、制御に使用されてもよい。
【0203】
RTOSは、イーサネット(登録商標)接続チップ、およびインターネット通信用のTCP/IPプロトコルスタックにアクセスするように、デバイスドライバを提供する。この接続は、compactRIOシステムからのデータフィードバックのために、およびリアルタイムハードウェアを制御するために重要である。リアルタイムアルゴリズムは、FPGAで実装することができ、タイミングジッタは、10マイクロ秒未満であることが期待される。いくつかの実施形態では、電子制御は、少なくとも以下の機能、すなわち、(1)検出効率を向上させるように信号対雑音比(SNR)を増加させること、(2)選別精度を向上させるための瞬間細胞速度推定、および(3)波形発生器を通した選別信号生成を提供する。
【0204】
図23に示されるリアルタイム処理制御ユニットは、検出セクション2304と、制御セクション2306とを含む。細胞検出のための専用ハードウェアの使用は、低いタイミングジッタを達成し、単細胞選別を最適化するように、細胞通過の検出と合成波形を伴うアクチュエータの発射との間のタイミングを正確に制御することに役立ち得る。
【0205】
細胞検出の精度を増加させるために、感度に影響を及ぼす雑音の3つの形態、すなわち、(1)ほぼ白色ガウス雑音(WGN)である検出回路の熱雑音、(2)PMTまたはSPAD暗カウント雑音、および(3)レーザ電力変動および迷光による低周波数雑音を考慮し、検出回路を設計する際に対処することができる。雑音スペクトルの特性を理解すると、信号周波数帯域が雑音スペクトルとの最小重複を有するように、前述の時空間およびCOST設計を使用して、信号を生成することができる。WGN条件下で、信号の波形の逆数である応答を有するフィルタである、合致フィルタの設計を用いて、最高S/N比を達成することができる。合致フィルタの有限インパルス応答(FIR)実装が、
図24A−24Bで図示されている。
【0206】
図24Aは、FIRフィルタの基本構造を示す。これは、プログラム可能な合致フィルタとして使用される。
図24Bは、FIRフィルタのハードウェア実装を示す。この設計は、特殊ハードウェア構成要素、すなわち、同時に読み書きすることができるRAMモジュールである、二重ポートランダムアクセスメモリ(RAM)を利用する。二重ポートRAMは、Xilinx FPGAにおける内蔵モジュールである。二重ポートRAMを利用することによって、非常に高いサンプリングレートのフィルタを達成することができる。
【0207】
いくつかの実装では、リアルタイム細胞速度推定を、高精度の単細胞選別のために実装することができる。流動細胞の速度が変化すると、通過細胞から生成される信号も変化する。マイクロ流体チャネル中の細胞速度が増加する場合、信号持続時間がより短くなる。各細胞の速度がランダムな様式で変動する場合、細胞速度の変動は、追加の雑音源として扱うことができる。それは、S/N比およびタイミングジッタの両方に影響を及ぼす。各細胞の速度の知識に基づいて、より効果的な合致フィルタを設計することができ、それに従って合致フィルタをプログラムすることができる。細胞速度の取得された情報はまた、高精度の単細胞選別のためのタイミング制御を調整するために使用することもできる。
【0208】
周波数ドメイン分析では、細胞速度の変動を信号の周波数応答の変動として扱うことができる。細胞速度の増加は、
図25Aで図示されるように、より多くの高周波数成分を信号に追加する。異なる細胞速度のための周波数スペクトルが異なるため、各個別細胞の流速を推定するために、フィルタバンクアーキテクチャを使用することができる。フィルタ2502A−2502Cを含む、そのようなアーキテクチャ2500の実施例が、
図25Bに示されている。例えば(図示せず)、0.25cm/秒の精度で1cm/秒〜100cm/秒の流速をリアルタイムで測定するために、400個のFIRフィルタのフィルタバンクを使用することができる。
図25Cはさらに、いくつかの実施形態によると、フィルタバンクの中のフィルタの出力に基づいて細胞速度を推定するためのプロセスを示す。
【0209】
図16A−16Cで使用される信号符号化構造は、
図18−21Bに示される実施例に加えて、種々の構成であり得る。
図26Aは、例えば、コードとして異なるビームパターンを形成するために、異なる開口間の間隔を伴う光学開口を使用する、信号符号化構造の別の実施例を示す。異なる光学開口設計を伴う2つの流体チャネルが、2つの信号コードを提供するように図示されている。
図26Bは、時間ドメイン中の2つのチャネルからのPMT信号を示す。
【0210】
図18、20A、20B、および21BのCOST符号化のための光学フィルタ設計を参照すると、導波管1854/1954、1856/1956、および1858/1958のための広帯域フィルタリングは、色を区別するために必要とされるサンプルの数を削減する機構であり、例えば、20個のフィルタ導波管を使用することなく、20の異なる蛍光波長を区別するために、3つのフィルタ導波管1954、1956、および1958を使用することができる。これは、費用の劇的な削減である。時間多重化が、異なる波長からPMTの中への情報に行われるため、3つのフィルタ導波管1954、1956、および1958と関連して、単一のPMTを使用することができる。例えば、
図21Bの実施例では、PMTは、最初に導波管1954を介して赤色光、次いで、導波管1956を介して緑色光、次いで、導波管1958を介して青色光を受け取る。この時間多重化は、流量および導波管(または空間フィルタ)を利用することによるものである。広帯域フィルタリングを用いた時間多重化は、高スループット色検出を可能にする。
【0211】
図27は、プログラム可能なFIRフィルタリングバンクに基づく例示的なDSP処理ブロックを示す。DSP処理ブロックは、例えば、以前に説明されたような粒子選別機制御モジュール(例えば、制御モジュール1424)の構成要素であり得る。
【0212】
マイクロ流体検出器およびシステムの中の粒子選別機構は、種々の構成で実装することができる。以下の実施形態は、低い所要電力(典型的には0.1mW未満)を有し、かつ約1〜10cm/秒の粒子流速とともに約0.1〜1ミリ秒の高速応答時間を有する、低い電圧(典型的には10Vp−p未満)で動作するように構成することができる、圧電アクチュエータに基づく粒子選別機を開示する。粒子選別システムは、空間フィルタ、および経時的に光信号を分析することによって粒子の存在を判定するための処理技法を使用する、閉ループ様式で動作可能であり、その信号は、検出器によって出力される。
【0213】
図28を参照すると、流体中の粒子を選別するための粒子選別機2800が図示されている。粒子選別機2800は、作動領域2811で複数の出力チャネル2810A、2810B、および2810Cに接続される、入力チャネル2804を含む。粒子は、入力チャネル2804を通って作動領域2811まで流動し、各粒子は、作動領域から複数の出力チャネル2810A、2810B、および2810Cのうちの1つまで進行する。
【0214】
圧電アクチュエータ2818は、
図27で図示されるように、コントローラまたはドライバからの電圧制御信号等の制御信号に応答して、作動領域2811中の流体に流動障害を引き起こすように動作する。例えば、図示されるように、圧電アクチュエータ2818に印加される正電圧信号が、下向きの屈曲を引き起こし、負電圧信号が、上向きの屈曲を引き起こす。この屈曲は、特に(約数ナノリットルの)流体の横変位を引き起こすことによって、作動領域2811中で流動障害を引き起こす。流動障害は、粒子が流動障害を伴わずに進行するであろう出力チャネル2810Bとは異なる、出力チャネル2810Aまたは2810Cのうちの1つへの軌道に沿って、作動領域に進入する粒子を方向付ける。例えば、
図28の下部分で図示されるように、印加される正電圧は、圧電アクチュエータ2818の下向きの屈曲をもたらし、作動領域2811中で流動障害を引き起こし、粒子2822にその軌道を変更させ、左側および出力チャネル2810Aへ進行させる。
【0215】
より具体的には、
図29Aは、出力チャネル2810Bへの粒子の進行を示す、印加された制御電圧信号がないときの粒子2824の進行を図示する。
図29Bは、負電圧信号の印加に応答した、出力チャネル2810Cへの粒子2826の進行を示す。同様に、
図29Cは、正電圧信号の印加に応答した、出力チャネル2810Aへの粒子2828の進行を示す。
【0216】
図30A−30Cは、エッチングされたポリジメチルシロキサン(PDMS)基板2830およびガラス基板2832をともに結合する、紫外オゾンによって達成される、粒子選別機2800の単純で低費用の加工を図示する。PDMS基板2830は、入力チャネル2804、出力チャネル2810A−2810C、および作動領域2811を形成するようにエッチングされている。具体的には、PDMS基板およびガラス基板は、254nmで28mWのランプ出力を用いて、紫外オゾンチャンバの中で表面処理され、基板2830、2832が物理的に相互に接触すると、結合が生じる。
【0217】
圧電アクチュエータは、ステンレス鋼または銅等の第1の層2836、およびチタン酸ジルコン酸鉛等の第2の層2834を使用して形成される。チタン酸ジルコン酸鉛は、0<x<1である、Pb[ZrxTi1−x]03という化学式を有し、顕著な圧電効果を示す、セラミックペロブスカイト材料である。それはまた、化学式の省略である、PZTとしても知られている。接触パッド2838が、2つの層を横断する制御信号の印加のために提供される。
【0218】
圧電アクチュエータ2818は、16mm直径のパンチを使用することによって等、最初にPDMS基板に穴を形成することによって、PDMS基板と統合され、次いで、PDMS基板および圧電アクチュエータ2818の両方は、さらに5分間紫外オゾン処理される。次いで、アクチュエータは、整合させられ、PDMS基板2830と接触させられ、次いで、選別機2800は、85℃で8時間にわたって焼成される。
【0219】
図31は、粒子を選別するための粒子選別機の能力を図示し、作動領域中の瞬間有限流体変位によって引き起こされるローダミンの偏向を示す。具体的には、選別機2800は、可視化のために取り付けられた高速カメラを伴う顕微鏡ステージ上に搭載され、圧電アクチュエータ2818への制御信号が、関数発生器によって提供される。ローダミンを伴う流体が、チャネルに導入され、250Hz、9Vp−pの電圧信号が提供され、ビデオが取得される。
【0220】
図32A−32Cは、実験的に取得されるポリスチレンビーズ3228の連続的な位置を図示し、
図32D−32Fは、示される非圧縮性ナビエ・ストークス方程式を使用した、ビーズのシミュレートした軌道3230を図示する。
【0221】
図33は、200Hzで6Vp−pにおける正弦波制御電圧信号を受けた大腸菌細胞3328の選別を図示する。
【0222】
図34は、流体中の他の流体から目的とする粒子を選別するように閉ループ様式で動作する、粒子選別機3400を含む、閉ループ粒子選別システム2440を図示する。可視化のためのカメラ3441が提供される。粒子選別システムはまた、1つ以上のスロットを有し、入力チャネルに連結される、空間フィルタ3442(
図35参照)、ならびに1つ以上の光学フィルタ3443も含む。ハロゲン光等の光源3444が、入力光を入力チャネルに提供する。検出器3446は、入力チャネル中の目的とする粒子から発せられるか、または散乱させられる光を検出し、その光は、空間フィルタ3442の1つ以上のスロットを通過しており、経時的に検出信号を提供する。フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)として実装される1つ以上の構成要素を有する、プロセッサおよびドライバ3450は、検出器3446と通信し、経時的に検出信号を分析するように動作する。プロセッサおよびドライバ3450は、ユーザ入力を受信するためにコンピュータ3448と通信することができる。プロセッサおよびドライバ3450はまた、入力チャネル中の所定の場所を通過する、目的とする粒子の存在を示す存在信号も生成し、かつ存在信号に応答して圧電アクチュエータ3418のための制御信号を生成する。上記で説明されるように、圧電アクチュエータ3418は、制御信号に応答して作動領域中で流動障害を引き起こし、流動障害は、粒子が流動障害を伴わずに進行するであろう出力チャネルとは異なる、複数の出力チャネルのうちの1つへの軌道に沿って、検出された目的とする粒子を方向付けるように動作する。
【0223】
図35に示されるように、空間フィルタ3442は、入力チャネル3404と整合させることができ、それぞれ、目的とする粒子からの光を検出器3446まで通過させる、複数の検出開口部または開口3452を含むことができる。空間フィルタ3442はまた、3410A等の出力チャネルのうちの1つと整合させられた複数の検証開口部3454を含むこともできる。目的とする粒子が検出開口部3452を通り過ぎて進行するとき、(流速に基づく)期待パターンを有する信号3456が生成される。この信号は、目的とする粒子が入力チャネルの中に存在するときを判定するように、デジタル信号処理(DSP)技法を使用して処理することができる。雑音を低減する雑音フィルタリング、有限インパルス応答フィルタ、またはフィルタのバンクを含む、種々のDSP技法を使用することができる。目的とする粒子が入力チャネルの中に存在するとき、目的とする粒子が作動領域3411中の適切な場所にあるときに流動障害が生じるように、遅延させられる必要があり得る、制御信号を生成することができる。信号3458が信号3456に続いて取得されることをチェックすることによって、目的とする粒子が所望の出力チャネル3410Aまで実際に進行したという検証を得ることができる。
【0224】
図35の上記の空間フィルタは、符号化構造の実施例である。空間フィルタ/符号化構造は、チャネル中のある領域からの蛍光のみが検出器に達することを可能にし、したがって、背景およびクロストークを削減する。空間的に設計されたパターン3452および3454のそれぞれは、標的粒子/細胞がある速度で進行すると一時的に符号化された信号に変換される、蛍光信号を空間的に符号化する。空間フィルタを作成するために、フォトリソグラフィ透明マスク(Cad/art services, Inc.)を使用することができる。空間的に符号化されたパターンは、三重スリット(3452)および二重スリット(3454)を有する。三重スリットパターン(3452)は、検出信号を符号化し、二重スリットパターン(3454)は、指定チャネルの中へ選別された粒子/細胞からの検証信号を符号化する。サンプル空間フィルタでは、スリットの幅は、約0.25mm〜0.5mmであり得、20倍の顕微鏡対物レンズによって拡大される前に、マイクロ流体チャネル上で12.5μm〜25μmに変換される。空間フィルタは、拡大後に画像面と意図的に一致するように設計することができる。蛍光粒子が検出スリットを通過し、検証スリットまで選別されると、PMT検出器は、2つのピークが後に続く、3つのピークの信号を登録することが期待される。
【0225】
図36は、電子制御アルゴリズムのプロセスフローを示す、プロセッサおよびドライバ3450の1つの実施形態のブロック図である。アルゴリズムは、外部ドライバに組み込まれるFPGAチップにプログラムされる。例えば、リアルタイム電子制御は、プログラム可能な外部ドライバ(CompactRio, NI)とともにLabview(National Instrument)を使用してプログラムされる。外部ドライバは、組み込みフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)チップを伴う独立オペレーティングシステムを有する。マイクロ流体検出器の測定されたジッタは、10マイクロ秒未満である。(例えば、デバイスの散発性放電によって引き起こされる)PMTのランダムな高パルス雑音は、有限インパルス応答(FIR)フィルタリングに基づいて信号増幅アルゴリズムを実行する前に除去される。FIR合致フィルタを用いると、信号対雑音(SNR)比を18dBだけ増加させることができる。SNR増進後、閾値および最大信号基準の検索が、検出された粒子の存在を判定するように適用される。閾値を上回る信号は、選別される粒子/細胞が見出されたことを示し、以下の動作をトリガし、すなわち、(a)遅延カウンタがパルス発生器の発射を遅延させる、(b)事前にプログラムされた出力電圧信号がPZTアクチュエータを駆動するように発射される、(c)ある期間で、マイクロ流体検出器は、「検証ゾーン」を通って進行する選別されたサンプルから「検証」信号を検出する準備ができている、および(d)選別効率および選別誤差の記録を更新する。時間遅延の量は、光学検出ゾーンから選別接合点までの粒子の進行時間に等しい。選別された粒子が検証されるまで、PZTアクチュエータは再度発射されないであろう。これは、検証信号を、選別されている粒子の過度に近くで進行する粒子の信号と混同するという問題を回避する。
【0226】
図37A−37Dは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)と適合する光学流体導波管を加工するための方法の実施形態を図示する。光路は、検出効率を最大限化し、多くのラボオンチップ用途でチップ面積を最も経済的に利用することができるアーキテクチャである、マイクロ流体チャネルを辿る。PDMSベースのマイクロ流体チャネルは、水/Teflon
(登録商標)AF光学導波管を形成するように水(n=1.33)より低い屈折率(n=1.31)を有する、Teflon
(登録商標)非晶質フッ素重合体(Teflon
(登録商標)AF)でコーティングされる(
図37A、37B)。真空ポンプによって駆動されると、Teflon
(登録商標)AF溶液が、光学導波管のクラッド層としてチャネル壁上にコーティングの薄い(5μm〜15μm)層を残して、チャネルを通って流動させられた(
図37C)。このコーティングプロセスは、Teflon
(登録商標)AFクラッド層とPDMSデバイス本体との間の弾性不一致を低減させることによって、スピンコーティングプロセスの制限を解決する。結果として生じる光学流体導波管は、レーザ光を閉じ込め、流体コアチャネルを通して誘導する(
図37D)。さらに、いくつかの実施形態では、そのような導波管の中の光は、流体流が分割されるときに分割することができる。いくつかの実施形態では、このアプローチは、オンチップ励起を伴うマイクロ流体検出器などの高度統合バイオセンサを可能にする。
【0227】
光学流体力学は、相乗的に機能するように、同一のデバイス上でマイクロ流体力学および光学を統合する、新興分野である。統合生化学センサ等のマイクロ流体チャネルおよびオンチップフォトニック回路の両方を含有するデバイスは、増進した機能性および感度を示し、有意な費用およびサイズ縮小を可能にする。光および流体の経路を指向して整合させる融通性が所望され、流体中の光子および生物サンプルが最高感度のために最も効果的に相互作用することを確実にする。場合によっては、光線が、流体チャネルに交差して調査領域を局限するように要求される。他の場合においては、光波および流体がそれらの相互作用を最大限化するように同一の経路を共有することが所望される。後者の場合については、効果的な加工方法が所望される。ラボオンチップデバイスで使用されるほとんどのポリマーが水より高い屈折率を有するという事実により、流体チャネル中を進行する光は、閉じ込められず、高い放射損失を被るであろう。低屈折率Teflon
(登録商標)AF溶液の層でマイクロ流体チャネルをコーティングし、流体チャネル中の水が導波管の高屈折率コアとして使用されることを可能にするために、PDMS適合プロセスがここで提供される。Teflon
(登録商標)AFでコーティングした導波管は、真っ直ぐな流体チャネルだけでなく、分割チャネルにも機能する。光を送達することに加えて、マイクロ流体チャネルをTeflon
(登録商標)コーティングすることによって、チャネルが低サンプル吸着を伴って作成され、多くのポリマーベースのマイクロ流体デバイスで見出される厄介な問題を回避する。
【0228】
Teflon
(登録商標)AFは、化学的に安定し、紫外線から赤外線波長に光学的に透過性である、非晶質フッ素重合体である。他のフッ素重合体と異なり、Teflon
(登録商標)AFは、水の屈折率(n=1.33)より低い屈折率(n=1.31)を有し、したがって、流体コア光学導波管を被覆するために、Teflon
(登録商標)AFコーティング層を使用することができる。次いで、コーティングしたチャネルが水または水溶液で充填されたときに、全内部反射(TIR)によって、流体が流動するのと同一の物理的経路を通して光が送達されるであろう。マイクロチャネルを通してTeflon
(登録商標)AF溶液を流動させ、それによって、流体流の経路に沿って光学導波管のためのクラッド層を作成することによって、PDMSチャネル壁上にTeflon
(登録商標)AFをコーティングするための手順が、ここで提供される。マイクロチャネルに導入される光は、導波管(すなわち、マイクロ流体チャネル)のコアの内側に閉じ込められ、チャネルを通って流動する流体によって誘導される。
【0229】
いくつかの実施形態では、200μm×70μmであるマイクロ流体チャネルが、PDMSで加工される。マスタ金型は、SU−8 50(MicroChem)を使用して、光学的に平滑なSiウエハ上にリソグラフィで画定される。2つの複製、すなわち、マイクロ流体チャネルを伴う1つの複製、および光学的に平滑なブランクSiウエハの1つの複製が作成される。2%1H,1H,2H,2H−ペルフルオロデシルトリエトキシシラン(Sigma Aldrich Inc.)の溶液が、PDMS基板上にスピンコーティングされ、PDMSとTeflon
(登録商標)AF溶液との間の接着を助長するように110℃で10分間加熱される。次いで、両方のPDMS表面が、3分間の紫外線/オゾン処理(UVO−CLEANER 42、Jelight Inc.)によって恒久結合のために活性化され、ともに結合され、したがって、マイクロ流体チャネルに冠着する。6%Teflon
(登録商標)AF溶液(601−S2、DuPont Corp)が、マイクロ流体チャネルに流入させられる。それらがいったん充填されると、チャネルから過剰なTeflon
(登録商標)AF溶液を除去するように、真空(P=−20kPa)が20分間印加される(例えば、
図37C)。真空力とPDMSチャネル壁への接着との間の平衡は、クラッド層の厚さを判定する。
【0230】
本プロセスは、中空コアを伴う平滑なチャネルをもたらす。Teflon
(登録商標)AFでコーティングしたPDMSデバイスは、フロリナート溶剤を蒸発させるように155℃まで20分間加熱され、次いで、平滑なTeflon
(登録商標)AF層を形成するようにさらに175℃(そのガラス転移温度を15℃上回る)まで20分間加熱される。この比較的低い温度コーティングは、スピンコーティングプロセスと比較してTeflon
(登録商標)溶液の消費を有意に削減しながら、PDMSプロセスと適合する。計算は、厚さ約5μmのTeflon
(登録商標)AFフィルムが、光を流体コアに閉じ込めるために必要であることを示す。いくつかの実装では、クラッド厚さは、典型的には、5μm〜15μmであり、光波を閉じ込めて誘導するために十分厚い。Teflon
(登録商標)AFコーティング層の厚さは、Teflon
(登録商標)AF溶液の印加された真空圧および濃度を調整することによって、さらに制御することができる。熱不一致による亀裂を回避するように、デバイスをゆっくりと冷却した後に、光ファイバが光結合のためにチャネルに挿入される。次いで、脱イオン(DI)水が、サンプル流担体および光学流体導波管のコアの両方としての機能を果たすように、中空コアに導入される。
【0231】
流動するDI水は、同一のチャネル中で懸濁サンプルおよび光の両方を輸送する。
図38A−38Cは、Teflon
(登録商標)AFでコーティングした光学流体導波管3810の加工プロセスを図示する。流体コア導波管の開口数NA=(n
core2−n
cladding2)
1/2は、0.23であり、入力マルチモードファイバ3818のNA(NA=0.22)に良好に合致する。流体コア導波管3810の断面が、
図38Aに示されるように、チャネルの端部における電荷結合デバイス(CCD)3814によって撮像される。
図38Bは、200μm×70μmである、加工されたマイクロ流体チャネルの断面を示す。
図38Cは、レーザがオンであるときの光学流体導波管3810の光出力を示す。点線のボックス3810Aは、PDMSチャネルの壁を示し、実線3810Bは、Teflon
(登録商標)AFクラッド層と流体コアとの間の境界を示す。それは、光がTeflon
(登録商標)AFコーティングによって光学流体導波管の流体コアに閉じ込められることを検証する。488nm波長で2.13dB/cmの導波管損失が測定される。散乱が、光漏出および吸収と比較して支配的な因子である。Teflon
(登録商標)AFコーティングの向上した平滑性により、導波管損失を有意に低減させることができる。
【0232】
図39Aは、分割接合点3911を含む、マイクロ流体チャネル/デバイス3900のレイアウトを示し、
図39Bは、デバイスの写真である。レーザ光(λ=488nm)が、水が流動するマイクロ流体チャネルの中へファイバ結合される。光は、流体流によって誘導され、
図39Aの拡大したボックスで示されるように、3方向接合点において、488nm光は、チャネル出口3910A−3910Cに向かって流体流を流動させる3つの経路に分割される。光を分割して3つのチャネル出口3910A−3910Cを通して誘導できることを実証するために、デバイスは、誘導された488nm光の吸収後に、緑色蛍光を全方向に発する希釈ローダミン6G溶液で充填された。
【0233】
図40に示されるように、上流チャネル4004から誘導される光は、例えば、3つの程度によって分離される、3つの分割チャネル4010A−4010Cに分割される。結果は、励起光が3つのチャネル4010A−4010Cに分割され、分割された光がチャネルを通して依然として誘導されることを実証する。いくつかの実施形態では、光が、サンプルが懸濁させられる流体流を常に辿るため、励起が全ての場所で行われ、したがって、いくつかの実施形態では、検出を任意の位置で行うことができる。この独特な性質は、マイクロ流体検出器のための非常に便利な特徴を提供することができる。例えば、いくつかの実施形態では、高度な設計融通性をマイクロ流体検出器に付与する、単一の光源のみを使用して、高度に敏感な蛍光検出が複数の場所で行われる。
【0234】
図41には、マイクロ流体検出器4100および色時空間(COST)符号化動作の使用の実施形態の概略図が示されている。
図41のマイクロ流体検出器(4100)は、サンプル(例えば、粒子または細胞、あるいは粒子または細胞を含む)が流動する、流体チャネル(例えば、マイクロ流体チャネル)4101と、チャネル壁4108と、レンズ4102と、一連の光学フィルタ4103と、光学検出器(例えば、PMTまたは光検出器)4104とを含む、実施形態を図示する。流体チャネル(例えば、マイクロ流体チャネル)4101を通過するサンプル(例えば、粒子または細胞)は、位置A、B、C、またはDを起源とする光(例えば、蛍光)を発することができる。放射光は、レンズ4102を通過し、画像面4106に到達し、A’、B’、C’、およびD’によって示される対応共役点で光学フィルタ4103のうちの1つに接触することができる。光路4107は、鎖線または実線によって示される。例えば、位置Aを起源とする光は、A’までの示された光路を辿るであろう。レンズ4102は、サンプル経路4105(流体チャネルの内側に位置する)内の一連の点を起源とする光を、光学フィルタのアレイ4103を通して画像面4106へ、光学検出器4104(例えば、PMTまたは光検出器)まで変換することができる。光学フィルタのアレイは、アレイの中の各ゾーンが光のサブセットを透過することができる、複数のゾーン(例えば、色ゾーン)を含むことができる。アレイ4103内の各光学フィルタは、異なる透過スペクトルを有することができる。点A’、B’、C’、およびD’に位置するフィルタまたはゾーンのうちのいずれか1つを通過する光のエネルギー分布は、その点に位置する光学フィルタのスペクトル性質によって定義される。
【0235】
発光サンプル(例えば、粒子または細胞)は、流体チャネル(例えば、マイクロ流体チャネル)を通過すると、位置A、B、C、およびDを過渡的に占有し、それによって、サンプルにつき複数の信号を生成することができる。これらの信号の波形は、光学フィルタの透過スペクトルおよびサンプルの特性によって判定される。サンプルの複合光学信号は、粒子の種類、および蛍光活性化細胞選別機システム中の別個のチャネルの中へ粒子を選別するかどうかを判定するように、デジタル処理することができる。
【0236】
流体チャネル(例えば、マイクロ流体チャネル)は、粒子を流体チャネルの中心に閉じ込めるためにシース流を使用する、マイクロ流体デバイス(例えば、ラボオンチップ)の一部であり得る。マイクロ流体デバイスは、サンプル(例えば、細胞または粒子)選別デバイス等の他の特徴を含有することができる。サンプル選別デバイスは、光学検出領域の下流にあり、残りの集団から目的とするサンプルを分離することができる。そのようなマイクロ流体デバイスは、いくつかの実施形態では、エアロゾルの生成を排除することができる。
【0237】
図42には、フローサイトメトリまたは蛍光活性化細胞選別(例えば、色時空間(COST)符号化動作の実施例)に使用されるマイクロ流体検出器4200の別の実施形態を示す、概略図が示されている。このデバイスは、流体チャネル(例えば、マイクロ流体チャネル)4201と、レンズ4202と、一連の光学フィルタ4203と、光学検出器(例えば、PMTまたは光検出器)4204とを含む。光路4211は、鎖線または実線によって示される。また、流体チャネル(例えば、マイクロ流体チャネル)内の焦点領域4209に励起光を反射する鏡4208(例えば、ダイクロイックミラー)に光を方向付ける、励起光源(例えば、レーザ)4207も示されている。励起光は、サンプル経路4205内の位置A、B、C、またはDのうちのいずれかに位置するサンプル(例えば、粒子または細胞)に接触してもよい。光源4207を起源とする励起光は、レンズ4202によって所望の焦点領域4209に集束することができる。また、望ましくない波長の光(例えば、励起光源4207を起源とする光)の透過を遮断することができる、光学フィルタ4210も示されている。位置A、B、C、またはDで粒子によって発せられる光(例えば、蛍光)は、レンズ4202、鏡4208、フィルタ4210を通過し、A’、B’、C’、およびD’によって示される画像面4206上の対応共役点で光学フィルタのうちの1つに接触することができる。次いで、光学フィルタまたは色ゾーンのうちの1つを透過される光は、光学検出器(例えば、PMTまたは光検出器)4204上に進む。
【0238】
実施形態では、鏡4208(例えば、ダイクロイックミラー鏡)をサンプル経路4205または画像面4206に対して45度で位置付けることができる。いくつかの実施形態では、鏡は、サンプル経路4205または画像面4206に対して30〜60度に位置付けることができる。いくつかの実施形態では、鏡は、サンプル経路4205または画像面4206に対して10〜80度に位置付けることができる。いくつかの実施形態では、鏡は、所望の焦点領域4209への励起光源の透過を可能にする、任意の角度で位置付けることができる。鏡4208は、サンプルから発せられる蛍光の透過を可能にしながら、励起光源(例えば、レーザ)から光を反射することができる。励起レーザビームの強度が、蛍光信号より数桁も大きくあり得るため、アレイフィルタ4203および光学検出器(例えば、PMTまたは光検出器)4204に進入する励起レーザの任意の迷光を遮断するように、光学フィルタ4210を導入することができる。いくつかの実施形態では、光学フィルタ4210は、ロングパスフィルタまたは精密光学ノッチフィルタであり得る。
【0239】
図43は、励起光源(例えば、レーザ)4308および鏡4309を組み込む、マイクロ流体検出器4300の別の実施形態を図示する。ここで図示されるデバイスは、流体チャネル(例えば、マイクロ流体チャネル)4301と、焦点領域4310と、レンズ4302と、フィルタ4305と、一連の光学フィルタ4303と、光学検出器(例えば、PMTまたは光検出器)4304とを含む。サンプル経路4306、サンプル位置A、B、C、およびD、光路4311、ならびに画像面4307における接触点A’、B’、C’、およびD’も示されている。
【0240】
図43の実施形態は、サンプル経路4306または画像面4307に対して約45度で角度を成す鏡(例えば、ダイクロイックミラー鏡)4309を図示する。励起光源(例えば、レーザ)4308は、流体チャネル(例えば、マイクロ流体チャネル)内に位置する焦点領域4310に反射される光を鏡4309に方向付ける。この実施形態では、鏡4309は、レンズ4302と流体チャネル4301との間に位置する。鏡4309は、サンプルから発せられる蛍光の透過を可能にしながら、励起光源(例えば、レーザ)から光を反射することができる。励起光源(例えば、レーザ)の任意の迷光がアレイフィルタ3003および光学検出器(例えば、PMTまたは光検出器)4304に進入することを阻止するように、光学フィルタ4305を導入することができる。
【0241】
図42または
図43で図示されるマイクロ流体検出器の利点は、増加する数の検出パラメータのために複数の励起レーザを導入するための融通性のある方法である。いくつかの実施形態では、
図42または
図43で図示されるように、複数の励起光源(例えば、複数のレーザ)を使用することができる。そのような実施形態では、
図42または
図43で図示される光源は、異なる波長(例えば、405nm、488nm、532nm、および630nm)のいくつかのレーザの組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、光源(例えば、レーザ)からの光は、ビーム結合器または波長分波器を通して伝導された後に、単一の開口から発することができる。
【0242】
いくつかの実施形態では、鏡(例えば、4208または4309)は、全ての波長の励起光を焦点領域に反射することができる。そのような実施形態では、鏡は、サンプルから発せられる光(例えば、蛍光)の透過を妨害または遮断してもよい。この潜在的な問題に対する1つの解決策は、透過光路の外側に鏡を位置付けることである。したがって、実施形態では、鏡(4208または4309)が透過光路の外側に位置付けられる。別の解決策は、遮断される透過光(すなわち、妨害された光)の量が許容レベルまで低減されるように、鏡のサイズを縮小することである。したがって、別の実施形態では、妨害された光の量が許容レベルまで低減されるように、鏡(4208または4309)がサイズを縮小される。妨害された光(例えば、サンプルから発せられる蛍光)の許容レベルは、0%〜50%であり得る。いくつかの実施形態では、妨害された光(例えば、サンプルから発せられる蛍光)の許容レベルは、0%〜30%であり得る。ある実施形態では、妨害された光(例えば、サンプルから発せられる蛍光)の許容レベルは、0%〜15%である。例えば、8mm直径開口を伴う50倍対物レンズについては、1×2mm鏡が、粒子から発せられる蛍光の約3%のみを遮断してもよい。
【0243】
図44は、光学フィルタのアレイ4404と光学検出器4405(例えば、PMTまたは光検出器)との間に位置付けられたレンズ4403を組み込む、マイクロ流体検出器4400の別の実施形態を図示する。
図42で図示される前の実施形態のように、マイクロ流体検出器4400は、流体チャネル(例えば、マイクロ流体チャネル)4401と、第1のレンズ4402と、一連の光学フィルタ4404と、光学検出器(例えば、PMTまたは光検出器)4405とを含む。サンプル経路4406、サンプル位置A、B、C、およびD、光路4409、ならびに第1の画像面4407における接触点A’、B’、C’、およびD’も示されている。第2のレンズ4403は、点A’、B’、C’、およびD’において第1の画像面4407から発する光を第2の画像面4408上の対応する点A”、B”、C”、およびD”に集束または集中することができる。したがって、位置A、B、C、およびDにおいてサンプルから発する光は、光学検出器におけるそれらの対応する位置A”、B”、C”、およびD”に到達することができる。この実施形態では、光学フィルタアレイの中のフィルタ(例えば、色ゾーン)の数は、光学検出器(例えば、PMTまたは光検出器)の感光領域のサイズまたは形状によって限定されない。加えて、光学検出器(例えば、PMTまたは光検出器)の出力波形は、光学検出器(例えば、PMTまたは光検出器)自体の非一様性による影響を受けない。レンズ4403は、いくつかの実施形態では、フィルタ4404から画像面4408上に画像を縮小する。
【0244】
場合によっては、本明細書で議論されるように、COSTシステムが検出することができる光学スペクトルの数は、光学フィルタアレイの中のフィルタの数に関係付けられる。光学検出器(例えば、PMTまたは光検出器)の感光領域からアレイフィルタのサイズを分断することにより、多数のパラメータの検出を可能にすることができる。
【0245】
図45A−45Cは、サンプル(例えば、粒子または細胞)検出のCOST技法に使用することができる回折格子4503を含む、マイクロ流体検出器4500の実施形態を図示する。マイクロ流体検出器4500は、流体チャネル(例えば、マイクロ流体チャネル)4502と、レンズ4501(例えば、対物レンズ)と、光学検出器(例えば、PMTまたは光検出器)4504と、回折表面4509を含む回折格子4503とを含む。回折格子4503は、例えば、プリズム等の任意の光回折構造であり得る。また、頂面4506およびチャネル4507を含む、プレート4505も示されており、チャネル4507は、表面4506に開口を含む。
図45A、
図45B、および
図45Cは、各サンプル位置が説明図で位置A、B、またはCによって表される、発光サンプル(例えば、粒子または細胞)の位置に関して異なる。各位置A、B、およびCは、流体チャネル(例えば、マイクロ流体チャネル)内に位置し、デバイスの一部ではない。
【0246】
流体チャネル(例えば、マイクロ流体チャネル)を通って流動するサンプル(例えば、単一粒子または細胞)は、位置A、B、またはCを過渡的に占有し、光(例えば、蛍光)を発することができる。各位置A、B、またはCから発する光路は、実線4508によって図示される。回折格子4503の回折表面に対するサンプルの位置は、チャネル4507によって画定される開口を通過する光の波長範囲を画定する。例えば、
図45Aは、サンプルが位置Aにあるときに光学検出器(例えば、PMTまたは光検出器)が赤色蛍光を検出できることを図示する。
図45Bは、サンプルが位置Bにあるときに光学検出器(例えば、PMTまたは光検出器)が黄色蛍光を検出することができることを図示し、
図45Cは、サンプルが位置Cにあるときに光学検出器(例えば、PMTまたは光検出器)が青色蛍光を検出することができることを図示する。したがって、粒子が位置AからCまで進行すると、光検出器によって検出される光は、青色に偏移させられる。
【0247】
したがって、主に青色光を発するサンプルは、位置Cで最も強い光学信号を示し、次いで、信号は、粒子がチャネルをさらに下って進行すると減退する。主に青色光を発するサンプルの検出された信号は、主に黄色または緑色光を発する、異なるサンプルからの信号とは異なって見えるであろう。各特定の発光スペクトルが対応する出力波形を生じるため、出力波形は、そのサンプルの際立った特性として扱うことができる。過去数年で、高分解能、高感度、および高フレームレートのCCDおよびCMOS撮像装置の急速な発展により、画像ベースのサイトメトリが、フローサイトメトリの実行可能な代替案になっている。画像ベースのサイトメトリでは、(いくつかの実施形態では)サンプルをスライドガラスまたは表面に固定し、調査することができる。サンプルの光学特性は、CCDおよびCMOS撮像装置等の光検出器によって獲得し、次いで、分析することができる。連続的にサンプル(例えば、粒子または細胞)を分析するフローサイトメトリと異なり、画像ベースのサイトメトリは、(いくつかの実施形態では)並行してフレームごとにサンプルを分析する。本明細書で説明される複数の実施形態は、流動ベースのマイクロ流体検出器および画像ベースのマイクロ流体検出器に適用することができる。
【0248】
図46の実施形態は、COST技法を利用することができる、画像ベースのマイクロ流体検出器の概略図である。流体チャネル(例えば、マイクロ流体チャネル)中を進行する粒子が、単一の高度に敏感な光学検出器によって連続的に検出される、流動システムと異なり、画像ベースのマイクロ流体検出器は、複数の粒子を並行して検出するために、多くの(例えば、数百万個の)センサ(ピクセル)を伴うCCDまたはCMOSデバイスで見出されるもの等の検出器のアレイを使用してもよい。CCDまたはCMOSデバイスの中の各センサの感度は、光学検出器(例えば、PMTまたは光検出器)より低くあり得るが、静的粒子の検出時間は、流動する粒子よりも長く、したがって、撮像装置と光学検出器(例えば、PMTまたは光検出器)等の光学検出器との間の感度差を補償し得る。
図46の実施形態では、画像ベースのマイクロ流体検出器4600は、可動ステージ4601と、レンズ4604と、CCDまたはCMOS撮像装置4606とを含む。
【0249】
撮像装置は、数百万個のピクセルを含有してもよく、これらのピクセルのそれぞれは、赤色、緑色、青色光、またはR、G、Bピクセルに敏感であるように光学フィルタでコーティングされてもよい。一式のRGBまたはRGBGピクセルが、ユニット4607を形成してもよい。位置A1でサンプル4602から発する光は、レンズ4604を通して投影され、4608上で赤色ピクセル上に集束されてもよい。サンプルを位置A2まで移動させるようにステージの位置を変更することによって、光路4605によって示されるように、同一のサンプルの光を緑色ピクセル4609上に集束することができる。サンプルを位置A3まで移動させるようにステージの位置をさらに変更することによって、その光が青色ピクセル4610上に集束される。RGBピクセルの3つの信号を組み合わせることによって、サンプルの蛍光性質を判定することができる。
【0250】
図46のマイクロ流体検出器は、標準蛍光顕微鏡を、サンプルについての追加の情報を生成することができるサイトメータシステムに本質的に変換する。しかしながら、従来のカラー撮像装置は3つの色(R、G、B)を有するため、検出可能な色の数が限定される。
図34の実施形態は、複数の色を検出することができる、マイクロ流体検出器の概略図を図示する。
【0251】
図47のマイクロ流体検出器4700は、可動ステージ4701と、レンズ4704と、CCDまたはCMOS撮像装置4706とを含む、マイクロ流体検出器4600に類似する。画像ベースのマイクロ流体検出器4700はさらに、レンズ4704と撮像装置4706との間に位置する、複数のスペクトルフィルタ4711を伴う回転車輪4705を含む。各位置A1、A2、またはA3については、光が、
図46のデバイスと同様に、それぞれ、赤色4708、緑色4709、および青色ピクセル4710上に投影される。しかしながら、
図47に示されるデバイスについては、光はまた、撮像装置上のピクセルに到達する前に、回転車輪4705上の一連の追加のスペクトルフィルタ4711を通過する。実施形態では、回転車輪は、8つの異なるスペクトルフィルタを含有し、したがって、24の異なる色の検出を可能にしてもよい。
【0252】
図48は、光学検出器(例えば、PMTまたは光検出器)信号を処理するために利用することができるCOST符号化方法のブロック図表現を図示する。粒子が検出ゾーンを通過するとき、光学検出器(例えば、PMTまたは光検出器)によって、放射光(例えば、蛍光)を検出することができる。光学検出器(例えば、PMTまたは光検出器)信号4801は、随意に、信号対雑音比を増進するように、アナログフィルタ4802を通過させることができ、またはアナログ・デジタル変換器(A/D変換器)4803に直接渡すことができる。下流のデジタルフィルタ4804は、信号対雑音比をさらに増進することができる。次いで、デジタル信号は、コンピュータプロセッサ(例えば、FPGA)によって処理することができる。プロセス4805の中のサブプロセス4806、4807、および4808は、コンピュータプロセッサによって実行することができる。プロセス4805内のサブプロセスは、ある実施形態では、
図23に示されるようにウィンドウ表示ピーク検出の一部として実行することができる。信号処理中に、信号を処理することができ、波形を分析することができる(例えば、全ての信号および全ての波形を処理および分析することができる)。いくつかの実施形態では、閾値レベルが基準雑音に従って設定される、閾値計算段階があり得る(例えば、サブプロセス4806)。第2の段階では、波形/COST信号に対する入力信号を分析するために、以前に計算された閾値を使用することができる。粒子の速度もまた、ピークの場所に基づいて判定することができる(例えば、サブプロセス4806)。ピーク検出のために、ピーク(例えば、サブプロセス4806)およびピークパラメータ(例えば、振幅、時間、面積、サブプロセス4807)を識別するように、波形を分析することができる。
【0253】
プロセス4805における好適な時点で(例えば、サブプロセス4807の後またはサブプロセス4808の前に)光学不規則性または信号不規則性を補償するように、1つ以上のピークパラメータを調整することができる。そのような調整の一部として、粒子を含有するサンプルの一部を、色フィルタの代わりに全域通過フィルタを伴って構成されるデバイスに通過させることによって、較正を行うことができ、全域通過フィルタは、色フィルタのゾーンに対応するゾーンを含む。次いで、サンプルの別の部分を、色フィルタを伴って較正されるデバイスに通過させることができ、色フィルタの異なるゾーンから検出される信号を、全域通過フィルタの対応するゾーンから検出される信号に基づいて調整することができる。
【0254】
各ピークに対応する色は、使用されるフィルタセット(例えば、とりわけ、広域、連続、または帯域通過フィルタを使用する色の組み合わせ)に基づいて、マップすることができる(例えば、サブプロセス4808)。例えば、ピークパラメータを、色フィルタ上の配置によって色フィルタ中の離散帯域通過フィルタ(すなわち、色ゾーン)にマップすることができる(例えば、サブプロセス4808)。ピークパラメータは、いくつかの実施形態では、1つ以上のピークパラメータ比に従って、重複透明性のゾーンを含む、色フィルタ中のゾーンにマップすることができ、その比は、正規化ピークパラメータを提供する(サブプロセス4808)。ピークパラメータ比(正規化ピークパラメータ)に基づく色マッピングは、以下でさらに詳細に説明される、粒子(例えば、細胞)につき1つのフルオロフォアまたは量子ドットがある実施形態、および粒子(例えば、細胞)につき複数のフルオロフォアまたは量子ドットがある実施形態に適用可能であり得る。粒子から発せられる蛍光色および蛍光強度を最終的に提示して識別するように、パーソナルコンピュータ(PC)上に常駐することができる、可視化ツール4809を使用して、データをさらに分析して可視化することができる。可視化ツールは、ユーザが検出データを分析し、および/またはマイクロ流体検出器のあるパラメータおよび機能を選択することを可能にする、ユーザインターフェースであり得る。可視化ツールは、いくつかの実施形態では、ユーザが検出データを分析し、特定の粒子またはデバイスを通って流動する粒子の種類を識別することを可能にする(例えば、4811)。いくつかの実施形態では、可視化ツールは、ユーザが特定の粒子を選別するためのパラメータを選択することを可能にする(例えば、4810、ゲーティング信号を選択する)。
【0255】
最小数の光学検出器または撮像装置を使用して、複数のスペクトルを検出するために、COST符号化プロセスを適用することができる。したがって、本明細書で提案される実施形態の設計は、伝統的に各パラメータ(スペクトル)の検出のために1つの光学検出器を必要としてきた、フローサイトメータのスケーリング規則を基本的に変化させてきた。
【0256】
上記のように、COST符号化プロセスは、単一の光学検出器を使用して、種々の種類の細胞または粒子からの複数のスペクトルを区別することができる。いくつかの用途については、COST符号化方法は、サンプルの光学量(例えば、(例えば、抗体を介して)細胞に効果的に結合されたフルオロフォアの種類)に従って、2つの一般的シナリオで適用することができる。ある実施形態では、サンプルは、細胞または粒子の混合物を含有し、各細胞または粒子は、単一の種類の蛍光染料または量子ドットによって標識される。例えば、サンプルは、特定の抗原群を標的にした抗体付着ビーズ群を含んでもよく、各種類の抗体付着ビーズは、特定の種類のフルオロフォアまたは量子ドットによって一意的に識別される。マイクロ流体検出器を使用して、フルオロフォアまたは量子ドット共役ビーズの蛍光を検出し、また、そのようなビーズを単離することによって、特定の抗原の存在または存在度のレベルを判定することができる。そのような粒子につき1つのスペクトルのシナリオでは、
図48で概説されるプロセスを使用して、20より多くのスペクトルを検出するために、4つのスペクトル(例えば、白色・赤色・緑色・青色(W/R/G/B))のCOSTフィルタを使用することができる。アナログ・デジタル(A/D)変換器、ならびにスプリアス光学検出器雑音およびデジタルフィルタを使用した電子機器の熱雑音の除去後に、各スペクトルのフィルタを通過する光の量に対応する信号レベルを識別するか、または表すために、ピーク検出または面積検出方法が使用される。各スペクトルの信号および全域通過(白色)フィルタを通過する信号の比を得ると、「正規化」R−G−B−信号を各サンプルについて取得することができる。各種類のフルオロフォアまたは量子ドットは、正規化R−、G−、B−信号について、その一意的な比を保有する。いずれか2つの異なるフルオロフォアまたは量子ドットについては、同一のフルオロフォアまたは量子ドット内の信号変動の量は、異なるフルオロフォアまたは量子ドットの間の分離より有意に少ない。結果として、複数のスペクトル的に明確に異なるサンプルを正確に区別するように、COST符号化プロセスを適用することができる。
【0257】
いくつかの実施形態では、単一の粒子は、複数のフルオロフォアによってスペクトル的に区別され、例えば、COST信号を解読するために、
図48で概説されるCOST符号化プロセスの実施形態を使用することができる。特定の蛍光スペクトルをそれぞれ有する、N(例えば、20)個の異なる種類のフルオロフォアがあると仮定して、方程式1における以下の関係に従って、t
ijは、i番目の光学フィルタを通るj番目のフルオロフォアの透過係数であり(例えば、j=1,2....N、およびi=1,2,3,4)、Cjは、細胞からのj番目のフルオロフォアの蛍光強度であり、R、G、B、Wは、COST符号化信号において対応するフィルタを通した検出された光強度を表す。
【0260】
スペクトルフィルタが設計されると、スペクトルフィルタを通るN個のフルオロフォアのそれぞれの透過係数を較正することができる。したがって、全ての係数tijが把握され、データベースに記憶することができる。方程式1の中の連立一次方程式は、4つの独立方程式を含有し、4つのフルオロフォアを、多くの(例えば、20個の)可能性として考えられるスペクトルから単一の粒子中で検出することができる。例えば、[0.5,0.2,0,0,0,…0,0,0,0.7,1]という方程式1の中の[C
1,C
2,C
3,C
4,C
5,……,C
20]に対する解については、粒子が、5:2:7:10である、それらの強度比を伴う、4種類のフルオロフォアC
1,C
2,C
19,C
20を含有すると結論付けることができる。場合によっては、全てのCは、雑音により、非ゼロ値を有してもよく、粒子中の各種類のフルオロフォアの存在を判定するように、閾値を判定することができる。スペクトルフィルタにおけるスペクトルの数は、単一の粒子中に共存する、より多くのスペクトルを検出するように増加させることができる。例えば、8スペクトルフィルタを使用することによって、COST符号化プロセスは、1つの粒子中で8つもの多くのフルオロフォアを検出することができる。
【0261】
連続色段階的スペクトルフィルタを、ある実施形態で使用することができる。そのようなフィルタは、いかなる突然の境界も伴わずに、赤色から青色に連続的に段階的である透過スペクトルのために構成することができる。そのようなフィルタは、信号の開始および/または終了を示すように、フィルタの始めおよび/または終わりに、全域通過(白色)フィルタを含むことができる。このようにして、COST信号は、一連の離散ピーク(
図49A)の代わりに、連続波形(
図49B)になる。スペクトルフィルタの所与の位置における透過スペクトルに従って、COST信号を一連のスペクトルフィルタにデジタル解析することができる。フィルタの数をデジタルで定義することができるため、スペクトルフィルタを複数のスペクトルに分割することができる。スペクトルの数の実用的制約は、各スペクトル帯域が狭すぎるときに信号を腐食させ得る、雑音レベルである。
【0262】
図49Bの実施例によって示されるような、そのような動的に調整されたスペクトルフィルタ設計は、多くの場合、有意な融通性を検出システムに提供する。免疫学および癌診断では、ユーザは、1つの粒子中で非常に多数(例えば、20)のスペクトルを検出する必要があり得る。COST信号が時間ドメイン中の広い範囲を網羅する、または換言すると、粒子が検出ゾーンを通って進行するのにより長い時間を費やすように、サンプルの流速を意図的に減速することができる。より長い信号持続時間は、ユーザが、十分な信号対雑音比、および各スペクトル分割にわたって十分な数のサンプリング点を伴う、多数のスペクトル分割に信号を分割することを可能にする。換言すると、COST符号化技法は、複数の光学検出器を単一の検出器と置換することによって、マイクロ流体検出器および検出器システムを単純化するだけでなく、流速(スループット)をマイクロ流体検出器が検出することができるスペクトルの数と交換する独特の能力も提供する。そのようなトレードオフは、ユーザによって、用途に従って動的に調整することができる。
【0263】
フィルタの透過特性が連続的に変化するとき、ユーザは、フィルタの任意の選択された数のユニットに分割することの融通性を与えられる(例えば、
図49B)。試験用の粒子が多数の異なるフルオロフォアで標識される場合、ユーザは、フィルタを多数のユニットにデジタルで分割してもよい。一方で、用途が、より少ない異なる色を伴う場合には、フィルタをより少ないユニットに分割することが、信号対雑音比の管理のために望ましい。粒子の速度を判定するために、段階的フィルタの小セクションを繰り返すか、または任意の「スペクトルシグネチャ」をフィルタの中に追加する(例えば、フィルタ中のいくつかの小領域を黒く塗りつぶす)ことができる。信号波形がこれらのシグネチャパターンを示すとき、マイクロ流体検出器は、粒子の速度を容易に計算することができる。この特徴はまた、実際の流速がユーザによる設定された流速に合致するかどうかを検証するために使用することもできる。この特徴は、設定された流速がチャネルの内側の理想的な層流に基づくため有用である。しかしながら、全ての粒子がチャネルの中心に位置するわけではなく、粒子・粒子相互作用が、中心から離して粒子を押動することができる。流速の他に各粒子の速度を把握することが、細胞選別効率を増進することに役立つ。
【0264】
ある実施形態では、感知チャネルを通して細胞が流動することができ、かつ細胞を感知することができる、マイクロ流体感知チャネルと、感知チャネルの下流の分岐と、分岐の下流の2つ以上のマイクロ流体分岐チャネルと、分岐との流体連通のために構成され、かつアクチュエータの起動時に、細胞を分岐チャネルのうちの1つ以上に駆動するように構成される、アクチュエータとを含む、マイクロ流体検出器が提供され、そのデバイスは、細胞がデバイスを通して流動させられた後の約70.8%以上の細胞生存能力のために構成される。また、いくつかの実施形態では、(a)マイクロ流体感知チャネルを通して細胞を流動させるステップであって、その感知チャネル中で、細胞をマイクロ流体検出器中において感知することができ、そのマイクロ流体検出器は、感知チャネルと、感知チャネルの下流の分岐と、分岐の下流の2つ以上のマイクロ流体分岐チャネルと、細胞と流体連通しているアクチュエータとを含み、そのアクチュエータは、アクチュエータの起動時に細胞を分岐チャネルのうちの1つに駆動することが可能である、ステップと、(b)マイクロ流体チャネルを通って分岐チャネルのうちの1つまで流動する細胞を選別するステップであって、デバイスを通過させられた細胞は、約70.8%以上の細胞生存能力を有する、ステップとを含む、フローサイトメトリ方法も提供される。そのようなマイクロ流体デバイスは、本明細書で説明される、または当技術分野で公知である好適な構成要素(例えば、色フィルタ、検出器、および同等物)を含むことができる。細胞生存能力は、約71%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、または約90%以上(例えば、約71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上、およびその間の全ての値)であり、その細胞生存能力は、細胞がデバイスを通って流動した後に判定される。いくつかの実施形態では、アクチュエータは、(例えば、本明細書で説明される)圧電アクチュエータであり得る。アクチュエータは、いくつかの実施形態では、多くの場合、アクチュエータと分岐および/または細胞との間に実質的に空気を伴わずに、デバイス内の分岐および/または細胞と流体連通している。マイクロ流体検出器は、(いくつかの実施形態では)液滴を生成せず、(いくつかの実施形態では)細胞、デバイス内の流体、または液滴を帯電させる要素を含まない。
【0265】
細胞膜への剪断応力は、以下の関係、すなわち、tau〜a(rho)(v)(f)(tan(theta))に従うことが判定されている。ここで、「a」は、細胞半径であり、「rho」は、平均密度であり、「v」は、流速であり、「f」は、細胞選別アクチュエータの周波数であり、「theta」は、選別による細胞偏向角である。流速および選別機周波数応答の積(vf)は、スループットを判定し、選別機設計の最も効果的なアプローチは、偏向角「theta」を低減させることであると分かっている。圧電アクチュエータによる同一の横方向力下で、低減したtheta設計は、細胞の周囲のより一様な過渡的速度プロファイルを生じ、したがって、増進した細胞生存能力のために、有意に低い剪断応力を生じさせる。圧電アクチュエータ駆動型選別機を含むデバイス上で選別された、新生ラット一次心筋細胞は、わずか70.8%の細胞生存能力を伴う細胞を選別した、穏やかな条件(冷蔵、20psi、100μmノズル)下でBD FACSAriaシステムを用いた従来の選別と比較して、88.7%の細胞生存能力を有した(25%向上した細胞生存能力)。
【0267】
いくつかの実施形態では、検出システムは、マイクロ細胞検出システムである。いくつかの実施形態では、検出システムは、本明細書で説明される、または当技術分野で公知である、1つ以上の構造および/またはデバイスを含む。いくつかの実施形態では、検出システムは、チップ(例えば、ラボオンチップ)を含む。いくつかの実施形態では、ラボオンチップ(LOC)は、サイズが約1平方ミリメートルから約数平方センチメートルである単一のチップ上で1つまたはいくつかの研究室機能を統合する、デバイスであり得る。LOCは、検出システムから取り外し可能であり得、いくつかの実施形態では、使い捨てであり得る。LOCは、いくつかの実施形態では、カートリッジ形式で設計される。いくつかの実施形態では、LOCは、いくつかの実施形態では、各使用後にLOCが交換されることを可能にする、(例えば、
図10Cに示されるような)チップホルダの中で組み立てることができる。LOCは、ピコリットル未満までの極度に少ない流体体積の取扱を扱うことができる。LOCは、当技術分野で公知である、または本明細書で説明される方法によって加工することができ、かつ当技術分野で公知である、または本明細書で説明される好適な材料から製造することができる。LOCは、いくつかの実施形態では、1つ以上の構造を含む。
【0268】
場合によっては、LOCは、濃縮構造、混合構造、1つ以上の流体チャネル、1つ以上のサンプルまたは流体入口(例えば、入口ポートまたはウェル)、および/またはマイクロ流体検出器、あるいはそれらの部分を含む。いくつかの実施形態では、LOCは、1つ以上の圧電ディスクアクチュエータを含む。いくつかの実施形態では、LOCは、混合構造に流体的に連結される、濃縮構造を含む。いくつかの実施形態では、LOCは、マイクロ流体検出器に流体的に連結される混合構造流体、またはその一部を含む。いくつかの実施形態では、LOCは、混合構造に流体的に連結される濃縮構造、およびマイクロ流体検出器に流体的に連結される混合構造、またはその一部を含む。
【0270】
本明細書で使用されるような「結合剤」という用語は、抗原または別の分子構造(例えば、タンパク質、脂質、DNA、RNA、炭水化物、および/またはそれらの一部あるいは修飾)に特異的に結合する、分子構造を指す。結合剤の非限定的実施例は、抗体(例えば、任意の種(例えば、ニワトリ、ヒト、ラクダ、ラマ、ヤツメウナギ、サメ、ヤギ、齧歯類、ウシ、イヌ、ウサギ等)に免疫学的または遺伝子学的に由来する抗体)、抗体ドメインまたはその部分(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、ScFv、VH、VHH、VL、VLR、同等物)、ダイアボディ、モノクローナル抗体、血漿、ポリクローナルAbs、mAbdAbs、ファージ提示由来結合剤、アフィボディ、ヘテロ共役抗体、二重特異性抗体、エビボディ、リポカリン、アフィボディ、アビマー、マキシボディ、GroElおよびGroES等の熱ショックタンパク質、トランスボディ、DARPins、アプタマー、C型レクチンドメイン(例えば、テトラネクチン)、ヒトγ−クリスタリンおよびヒトユビキチン由来結合剤(例えば、アフィリン)、PDZドメイン由来結合剤、サソリ毒素および/またはクニッツ型ドメイン結合剤、フィブロネクチン由来結合剤(例えば、アドネクチン)、受容体、リガンド、レクチン、ストレプトアビジン、ビオチン、同等物、誘導体、または、それらの組み合わせを含む。
【0272】
いくつかの実施形態では、検出剤とは、蛍光分子を含む結合剤を指す。いくつかの実施形態では、検出剤は、ビーズ(例えば、磁気ビーズ、ポリスチレンビーズ、ラテックスビーズ、ガラスビーズ、例えば、ルミネクスビーズ)を含むことができる。いくつかの実施形態では、ビーズは、結合剤および/または蛍光分子を含む。検出剤として、当技術分野で公知である好適な蛍光分子を使用することができる。一般的な蛍光分子の非限定的実施例は、フルオロセイン(FITC)、フィコエリトリン(PE)、R−フィコエリトリン(RPE)、Cy2、Cy3、Cy3.5、Cy5PE、Cy5、Cy5.5、Cy7、Cy7PE、Cy7APC、テキサスレッド(TR)、PE−テキサスレッド、PerCP、PerCP−Cy7、PerCP−Cy5.5、アロフィコシアニン(APC)、GFP、GFP誘導体またはその突然変異体(例えば、EBFP、EBFP2、アジュライト、mKalama1、シアン蛍光タンパク質、ECFP、セルリアン、CyPet、黄色蛍光タンパク質誘導体、YFP、シトリン、ビーナス、YPet、およびBFP誘導体)、カスケードブルー、パシフィックブルー、DyLight 405、DyLight 549、DyLight 649、DyLight 680、DyLight 800、アミノメチルクマリン(AMCA)、ATTO 425、ATTO 488、ATTO ATTO 550、ATTO 594、ATTO 647N、ATTO 532、ATTO 655、ローダミン(TRITC)、IRDye(登録商標) 700DX、IRDye(登録商標) 800CW、IRDye(登録商標) 800、AlexaFluor 488、AlexaFluor 647、AlexaFluor 405、同等物、または、それらの組み合わせを含む。
【0274】
いくつかの実施形態では、希少な細胞型および/または比較的希少な細胞型とは、珍しい細胞型、異常な性質を有する細胞、異質細胞型(例えば、細菌、酵母)、罹患細胞型(例えば、癌細胞、ウイルスを宿している細胞)、未分化細胞型(例えば、幹細胞または幹細胞前駆細胞)、異所性細胞型(例えば、通常は循環内で見出されない細胞、例えば、梗塞後に血液中で見出される心筋細胞)、胎児由来細胞型、胎盤由来細胞型、およびそれらの組み合わせを指すことができる。場合によっては、希少な細胞型は、マーカ(例えば、標識、染料、例えば、代謝性染料、放射性トレーサ)を提示する、個人の血液中に存在する細胞であり得る。罹患細胞型の非限定的実施例は、悪性細胞、転移細胞、循環腫瘍細胞(CTC)(例えば、原発腫瘍から剥離し、血流中で循環する細胞、例えば、乳癌細胞)を含む。いくつかの実施形態では、珍しい細胞型は、前癌循環細胞(例えば、癌になるように運命付けられている細胞、例えば、白血病前駆細胞)であり得る。前癌細胞は、特定の細胞表面マーカまたは細胞内マーカ(例えば、翻訳修飾語タンパク質、例えば、リンタンパク質)、あるいは当技術分野で公知であるマーカの特定の組み合わせを表示することができる。いくつかの実施形態では、比較的希少な細胞型は、胎児細胞であり、比較的豊富な細胞型は、妊婦(例えば、人間の女性)からのサンプルからの母親細胞である。
【0275】
いくつかの実装のみが開示されている。しかしながら、本書で説明および図示されるものに基づいて、説明された実装および他の実装の変動および増進を行うことができる。本書は多くの詳細を含有するが、これらは、発明または請求され得るものの範囲への制限としてではなく、むしろ本発明の特定の実施形態に特有の特徴の説明として解釈されるべきである。別個の実施形態と関連して本書で説明される、ある特徴もまた、単一の実施形態において組み合わせて実装することもできる。逆に、単一の実施形態に関連して説明される種々の特徴もまた、複数の実施形態で別々に、または任意の好適な副次的組み合わせで実装することもできる。また、特徴は、ある実施形態で作用するものとして上記で説明され、最初にそのようなものとして請求さえされ得るが、場合によっては、請求された組み合わせからの1つ以上の特徴を組み合わせから削除することができ、請求された組み合わせは、副次的組み合わせまたは副次的組み合わせの変形例を対象とし得る。
【0277】
図50は、粒子の選別のための粒子選別機5000の例示的かつ非限定的な実施形態を図示する。粒子選別機5000は、それぞれ目的地出口(参照文字5010A−5010Cを使用して参照もされる)と関連付けられる、いくつかの目的地チャネル5010A−5010Cのうちの1つの中へソースチャネル5004を通過する、サンプル入口5002を介して注入された粒子を選別するために構成可能である。粒子選別機5000は、例えば、流体力学集束の目的で、サンプル入口5002を介して注入された粒子のシース流を提供するように、シース入口5016を含む。ソース入口5002およびシース入口5016は、それぞれ、分析される粒子およびシース流を受け入れるために独立して好適に設計することができる。例えば、ソース入口5002の断面形状および面積は、通常のピペット先端に合致させることができる。いくつかの実施形態では、シース入口116は、通常のピペット先端に合致させることができる。同様に、目的地出口5010A−5010Cは、それぞれ、選別された粒子の一時的貯蔵のための貯留部、選別された粒子を引き出すためのインターフェース、および/または同等物を含む等、用途の必要性に基づいて、独立して設計することができる。
【0278】
1つの実施形態では、ソースチャネル5004は、粒子の集束が達成されるように、ソース入口5002からの粒子およびシース入口5016からのシース流の組み合わせによって形成される。ソースチャネル5004は、シース流を生成および/または維持するために必要および/または十分であるような長さ、断面外形、および断面積を有する。
【0279】
1つの実施形態では、粒子選別機5000はさらに、ソースチャネル5004の第1の容積と関連付けられる、第1の検出デバイス/構成要素5012を含む。いくつかの実施形態では、第1の検出デバイス5012は、第1の容積を通過する際に選別される粒子の1つ以上の特性、および/または粒子がそれを通過する際の第1の容積の検出のために構成される。例えば、1つの実施形態では、特性は、蛍光および/または反射率等の光学特性を含み、したがって、第1の検出デバイス5012は、それぞれ、1つ以上の蛍光、反射率検出器を含むことができる。別の実施例として、1つの実施形態では、特性は、選別される粒子が第1の容積を通過し、第1の検出デバイス5012が1つ以上の電圧計を含むときに変化する、第1の容積にわたるインピーダンスを含む。
【0280】
第1の検出デバイス5012は、検出構成要素だけでなく、特性の検出のために必要および/または所望であるような追加の構成要素も含むことができると理解される。例えば、特性が上記で説明されるような蛍光を含む場合、第1の検出デバイス5012は、励起ソース、結合(例えば、光ファイバ)、および他の光学部品(例えば、フィルタ)、制御電子機器、および/または同等物を包含することができる。別の実施例として、特性が上記で説明されるようなインピーダンスを含む場合、第1の検出デバイス5012は、第1のチャネル内のインピーダンスを測定する電気信号を生成するための一対の電極を包含することができる。
【0281】
1つの実施形態では、第1の検出デバイス5012は、目的とする特性の測定を可能にする任意の様式で、第1のチャネルと相互作用するように構成される。例えば、いくつかの実施形態では、特性は、蛍光を含み、第1の検出デバイス5012は、第1の容積を励起させ、例えば、粒子選別機5000が顕微鏡ステージ上に配置されるとき等に、第1の容積の外部の領域から蛍光を検出する。他の実施形態では、励起送達/放射収集のための光ファイバ等のより侵襲性のアプローチを第1の容積に挿入することができる。別の実施例として、いくつかの実施形態では、特性は、インピーダンスを含み、第1の検出デバイス5012は、第1の容積と伝導連通している一対の電極を含む。
【0282】
いくつかの実施形態では、第1の検出デバイス5012は、1つ以上の特性と関連付けられる第1の検出信号を検出する。いくつかの実施形態では、第1の検出信号は、ソースチャネル5002中の粒子の光学特性と関連付けられる。いくつかの実施形態では、特性は、光学特性である。いくつかの実施形態では、光学特性は、蛍光、リン光、化学発光、熱発光、反射率、散乱(前方散乱、大角度散乱、側方散乱、および/または後方散乱を含む)、および/または同等物から選択される。いくつかの実施形態では、光学特性は、蛍光を含み、第1の検出信号は、粒子がソースチャネル5004の第1の容積を通過する際に粒子からの第1の信号として1つ以上の蛍光信号を含む。
図51Aは、いくつかの実施形態による、ソースチャネル5004中で検出される単一の粒子に対する第1の検出デバイス5012の例示的な出力(すなわち、例示的な第1の検出信号)を図示する。未加工光学信号および/またはそのアナログ/デジタル均等物を表す、
図51Aは、5つの時間的に分離されたピーク5102a−5102eを含む、光学トレース5102を図示する。いくつかの実施形態では、ピーク5102a−5102eの各ピークは、第1の検出デバイス5012の同一の検出器で検出することができる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのピークは、1つの他のピークとは異なる検出器で検出される。いくつかの実施形態では、5つのピーク5102a−5102eのうちの少なくとも1つは、基準強度信号である。いくつかの実施形態では、5つのピークのうちの少なくとも1つは、蛍光信号である。
【0283】
図52Aは、トレース5102等の第1の検出信号を生成するための例示的かつ非限定的な設定を図示する。第1の容積/ソースチャネル5204(ソースチャネル5004の第1の容積等)中の蛍光粒子Pからの蛍光は、例えば、第1の検出デバイス5112の落射蛍光設定の一部であり得るような対物レンズ5206を介して得られる。収集された蛍光は、図示されるように、基準フィルタ5208
1および基準蛍光フィルタ5208
2を含む、フィルタアレイ5208によってフィルタにかけられる。しかしながら、任意の数の基準および/または他のフィルタが、粒子Pの光学特性に基づいて、かつ/または本明細書で説明される分析を行うために必要であるように、フィルタアレイ5208の一部であり得る。依然として
図52Aを参照すると、いくつかの実施形態では、基準フィルタ5208
1は、波長非依存性である強度フィルタであり、全域通過フィルタを含むことができるが、それに限定されない。
図52Aで図示されるように、いくつかの実施形態では、基準フィルタ5208
1は、少なくとも一対の基準フィルタを含む。
【0284】
各蛍光フィルタ5208
2は、波長選択性であり得、かつ独立して、高域通過フィルタ、低域通過フィルタ、または任意の好適な波長のための帯域通過フィルタであり得る。
図52Aで図示されるように、いくつかの実施形態では、蛍光フィルタ5208
2は、少なくとも、緑色フィルタ、黄色フィルタ、および赤色フィルタを含む。いくつかの実施形態では、緑色、黄色、および赤色フィルタは、10nm〜30nmの帯域幅を有するもの等の狭帯域通過フィルタであり得る。いくつかの実施形態では、緑色、黄色、および赤色フィルタのうちの少なくとも1つは、広帯域通過フィルタであり得る。
【0285】
検出器5202は、フィルタアレイ5208からフィルタにかけられた蛍光を収集し、第1の検出信号を生成するように構成される。いくつかの実施形態では、検出器5202は、複数の検出器を含むことができる。光電子倍増管(PMT)、フォトダイオード、電荷結合素子(CCD)、アバランシェフォトダイオード(APD)、および/または同等物等であるが、それらに限定されない、任意の好適な検出器を採用することができる。いくつかの実施形態では、検出器5202は、図示されるようなPMTを含む。PMTは、Hamamatsu H9307に類似し得る。
【0286】
検出器5202は、1つの実施形態では、
図52Bのトレース5210でより概念的に図示される、例示的なトレース5102を生成するように、フィルタアレイ5208の各フィルタから粒子Pの蛍光信号を受信する。換言すると、1つの実施形態では、検出器5202は、
図52Bで図示されるようなトレース5102のピーク5102a−5102eを生成し、ピーク5102a、5102bは、基準フィルタ5208
1からの強度基準信号5210a、5210bに対応し、ピーク5102c−5102eは、蛍光フィルタ5208
2からの色コーディングされた信号5210c−5210eに対応する。以前に議論されたように、トレース5102、5210のピークは、時間が分離され、以下の様式で検出される。第1の容積内の粒子Pの移動は、粒子Pによって生成される蛍光を、(レンズ5206によって、および/または任意の他の好適な光学部品によって)フィルタアレイ5208の各フィルタ上に連続的に投影させ、基準フィルタ5208
1のうちの最初から開始して、蛍光フィルタ5208
2のうちの最後で終了する。
【0287】
図53Aは、蛍光フィルタ5208
2が、赤色、緑色、および/または青色フィルタであり得る、いくつかの実施形態に対する例示的かつ非限定的な透過スペクトルを図示する。図示した実施形態では、各色フィルタは、非従来的な狭帯域幅色フィルタと異なり、ゆっくり変化する傾斜を伴う広い帯域幅を有する。
図53Bで図示されるように、染料を区別するために、それぞれ異なる蛍光特性(例えば、5つの異なるブリリアントバイオレット(BV)染料)を有する、5種類の蛍光ナノ粒子の混合物と関連付けられる、複数の第1の検出信号(図示せず)の分析を使用することができる。
図53Bは、どのようにして(
図53Bの透過スペクトルを伴うフィルタを使用して生成される)複数の第1の検出信号からの赤色/白色、緑色/白色、および青色/白色強度比が、単一のPMTを使用して最大5色の色区別の実行可能性を示す、各BV染料を表す非重複点をもたらすかを図示する。別の実施例として、フィルタ5208は、次いで、1つの実施形態では、これらのフルオロフォア間の色区別の実行可能性を示す
図53Dのプロットを生成するように、同様に分析される、他の蛍光剤FITCおよびtdTomatoと区別される、フルオロフォアPEに対する
図53Cで図示される例示的な第1の検出信号を生成するために使用することができる。
【0288】
図52Bを再度参照すると、それによって、トレース5210が、少なくとも粒子Pについての以下の情報、すなわち、(1)粒子が速く移動しているほどピークが近い、ピーク5210a−5210eの間の間隔によって判定されるような粒子Pの速度、(2)ピーク5210a、5210bの任意の組み合わせによって判定されるような第1の検出信号の全体的な強度、および(3)粒子Pの蛍光スペクトル等の蛍光ピーク5210c−5210eに基づく第1の検出信号の中の蛍光情報を提供することができるという結果になる。実施形態内のトレース5210から、追加の推論を引き出すことができると理解される。いくつかの実施形態では、異なる粒子の間の蛍光強度変動が、蛍光色を区別するその能力に影響を及ぼさないように、ピーク5210a、5210bは、時空間符号化信号であり、全体的な蛍光強度の基準を確立する。最初の2つのピークの間の時間を測定することによって、粒子Pが第1の検出ゾーン5012から選別接合点まで進行する時間を正確に計算することができ、高精度の選別を可能にする。
【0289】
いくつかの実施形態では、トレース5210によって提供される情報が粒子を選別するための基礎を形成するという結果になる。したがって、いくつかの実施形態では、トレース5210等の第1の検出信号は、どの目的地チャネル5010A−5010Cが選別される粒子を受信するべきであるかを判定するように分析することができる。各目的地チャネル5010A−5010Cは、粒子をそのチャネルの中へ選別するための基礎を形成するように、粒子の異なる一式の特性を関連付け、指定し、および/または別様に割り当てることができる。例えば、トレース5210は、上記で説明されるような粒子速度情報を生じ、粒子速度に基づいて、目的地チャネル5210A−5210Cのうちの1つを選択することができる。そのような動作は、例えば、異なるサイズ、体積、および/または剛性の粒子が、チャネル5004中の異なる平衡位置において異なる速度で移動するときに有用であり得る。別の実施例では、トレース5210は、上記で説明されるような全体的な蛍光強度情報を生じ、1つの実施形態では、全体的な蛍光強度に基づいて、目的地チャネル5010A−5010Cのうちの1つが選択される。いくつかの実施形態では、目的地チャネル5010A−5010Cのうちの少なくとも1つは、任意の選別基準に合致しない、および/または望ましくない選別基準に合致する、および/または同等物であるとき等の望ましくないと見なされる粒子を受け取る、「廃棄物」チャネルとして指定される。このようにして、粒子は、順に第1の検出デバイス5012によって検出されている1つ以上の特性に基づく、トレース5210に基づいて選別される。
【0290】
図50を再度参照すると、いくつかの実施形態では、選別は、第1の検出信号に基づいて、選別信号を選別要素5006に伝送することによって達成される。選別要素5006は、粒子が正しい目的地チャネルの中へ選別される可能性を増加させる様式で、選別される粒子の変位を引き起こすように構成される。選別要素5006は、第1の検出デバイス5012と関連付けられる第1の容積の下流にある、ソースチャネル5004の選別体積と連通することができる。
【0291】
選別信号は、選別要素5006による粒子の選別に影響を及ぼす、任意の特定の形式であり得る。例えば、選別信号は、1つの実施形態では、目的地チャネル5010A−5010Cのうちのどれに粒子が選別されるべきかという仕様を含む。いくつかの実施形態では、選別信号は、様々な強度の作動信号を含み、強度は、粒子が変位させられる必要がある程度、および/または選択された目的地チャネルに選別されるための(すなわち、選別要素5006に向かった、またはそこから離れた)変位の方向の関数である。いくつかの実施形態では、選別信号は、粒子の選別を誘導するためのタイミング情報を含む。換言すると、選別要素5006は、粒子が選別容積に到達するであろうときの指示を受信する。タイミング情報は、第1の検出信号から判定されるような粒子の速度に基づき、選別容積と第1の容積との間の距離に基づき、および/または同等物であり得る。
【0292】
ソースチャネル5004の軸方向の側方にある方向へ粒子の変位を引き起こすことが可能である、任意の好適な技術を採用することができる。いくつかの実施形態では、選別要素5006は、静電選別機を含む。いくつかの実施形態では、
図50で図示されるように、選別要素5006は、圧電アクチュエータを含む。例えば、1つの実施形態では、選別要素5006は、穴5008A、5008Bを介して充填する、および/または空にすることができる、容積5018を画定する、圧電ダイヤフラム(参照文字5006で参照もされる)を含む。ダイヤフラムは、選別容積と、または選別容積に隣接するソースチャネル5004の変形可能な壁(図示せず)と直接連通することができる。動作中に、ダイヤフラム5006は、目的地チャネル5010A−5010Cのうちの特定の1つの中へ選別するために粒子を押す/引くことができる横力を選別容積中で生成するように、選別信号に基づいて、急速に充填する/空にすることができる。
【0293】
いったん粒子が目的地チャネル(例えば、非限定的な様式で説明を簡単にするためにここで使用される、チャネル5010A)の中へ選別されると、本開示の側面は、粒子の正しい選別を確保するように、換言すると、目的地チャネル5010Aが粒子を選別するための選択されたチャネルであった場合、粒子が正しく選別されたこと、そうでなければ、誤って選別されたことを判定するように、目的地チャネル5010A中の粒子の検出を可能にする。
図50を再度参照すると、第2の検出デバイス/構成要素5014が、目的地チャネル5010Aの第2の容積と関連付けられるが、追加の検出デバイスを他の目的地チャネル5010B−5010Cと関連付けることができ、複数の検出デバイスを目的地チャネル5010A−5010Cのうちのいずれかと関連付けることができる。
【0294】
第2の検出デバイス5014は、第1の検出デバイス5012と類似する、または異なる様式で構成することができる。いくつかの実施形態では、第2の検出デバイス5014は、少なくとも、目的地チャネル5010A中の粒子の存在および/または体積を検出するように、およびそれと関連付けられる第2の検出信号を生成するように構成される。換言すると、第2の検出信号が、任意の好適な形式(例えば、粒子蛍光、インピーダンス等)であり得る一方で、いくつかの実施形態では、それは主に、粒子が目的地チャネル5010Aの中へ選別されたことを判定するように分析される。実施例として、1つの実施形態では、第2の検出信号は、以前に詳細に議論されたように、蛍光、反射率、インピーダンス、および/または同等物のうちの1つ以上と関連付けられる。いくつかの実施形態では、第2の検出信号は、少なくともインピーダンス測定を可能にし、
図51Bは、粒子がそれを通過するときの第2の容積の例示的なインピーダンス測定5104を図示する。測定は、第1の曲線204aの縁と第2の曲線5104bの縁との間の差である、障害の「幅」(この場合は、1ミリ秒)によって特徴付けることができ、粒子速度に特有であり得る。
【0295】
したがって、いくつかの実施形態では、ソースチャネル5004から目的地チャネル5010Aへの粒子の選別は、第2の検出信号に基づいて検証される。例えば、(トレース5102等の第1の検出信号に基づいて)粒子の速度を把握することができるため、検証するステップは、1つの実施形態では、第2の検出信号が、1度に、および/または第1の検出信号後の期間内に受信されることを判定するステップを含む。このようにして、多数の粒子が1つずつであるが急速に選別されているとき、別の粒子に対応する第2の検出信号の可能性を回避することができる。
【0296】
いくつかの実施形態では、検証するステップは、第2の検出信号が生成されることを判定するステップを含む。このようにして、わずかな数の粒子が選別されているとき、第2の検出信号のタイミング詳細と関連付けられる計算オーバーヘッドが回避される。さらに、より安価であり、より小さい設置面積を有し、および/または同等物である、より単純な検出手段を使用することができる。
【0297】
いくつかの実施形態では、第2の検出デバイス5014は、第1の検出デバイス5012に類似する。換言すると、1つの実施形態では、同一の粒子については、第2の検出信号および第1の検出信号は、一式の一般的に判定された信号を有する。そのような実施形態では、検証するステップは、一般的に判定された信号が同一である、および/または閾値限界内で異なることを判定するステップを含む。例えば、1つの実施形態では、第2の検出信号および第1の検出信号が両方とも
図52Aの設定を含む場合、検証するステップは、第2の検出信号および第1の検出信号が両方ともトレース5102を含むことを判定するステップを含む。
【0298】
いくつかの実施形態では、検証するステップは、粒子選別機の動作、および/または強度、出力電圧波形幅、タイミング、および/または同等物を含むが、それらに限定されない、選別信号のパラメータを修正するように、是正および/または他のフィードバック信号を提供するステップを含むことができる。
【0299】
いくつかの実施形態では、検証するステップは、正しく選別されたことを判定するように、選別された粒子に追加の試験/動作を行うステップを含むことができる。
【0300】
図54は、単一の時間ベースのプロット上に第1の検出信号および第2の検出信号を組み合わせる、粒子選別機5000を使用した単一の粒子の選別の検証のための例示的な出力プロット5400を図示する。第1の検出デバイス5012における(選別される粒子の)蛍光検出は、選別要素5006による選別のトリガにつながる。選別された粒子は、目的地チャネル5010A中で第2の検出デバイス5014によって検出される。第2の検出信号が、第2の検出デバイス5014によって生成され、目的地チャネル5010Aの中への粒子の選別が、上記で議論されるように検証される。
【0301】
図55は、トレース1および2(すなわち、第1の検出信号)が、それぞれ、第2の検出信号1’および2’に相関し、それによって、どの第1の検出信号がどの第2の検出信号と関連付けられるかを判定し、それによって、2つの粒子の選別を検証する、2つの粒子の選別の検証のための例示的な出力プロット5500を図示する。
【0302】
図56A−56Cは、2つの第2の検出デバイス5014A、5014Cが、それぞれ、目的地チャネル5010A、5010Cと関連付けられる、実施形態を図示する。
図56Bで見られるように、目的地チャネル5010Aは、(例えば、特定の蛍光剤に対応する)第1の種類のトレース5612Aを受け取るように指定することができる一方で、目的地チャネル110Cは、(例えば、異なる蛍光剤に対応する)第2の種類のトレース5612Cを受け取るように指定することができる。第2の検出デバイス5014Aは、形態5614Aの第2の検出信号を生成するように構成することができ、第2の検出デバイス5014Cは、形態5614Cの第2の検出信号を生成するように構成することができる。このようにして、トレース5612A、5612Cおよび第2の検出信号5614A、5614Cをともに描画することができるとき(
図56C参照)、検証をより容易に行うことができる。2つの第2の検出デバイス5014A、5014Cについてここで図示されるが、異なる第2の検出信号を生成する各第2の検出デバイスのこのアプローチは、追加の目的地チャネルの中の追加の第2の検出デバイスに容易に拡張されることが理解される。
【0303】
図57は、実施形態による粒子選別の検証のための方法5700を図示する。いくつかの実施形態では、コンピュータ実行可能記憶媒体は、方法5700を実行するためのコンピュータ実行可能命令を含む。5702では、第1の検出信号が受信される。第1の検出信号は、第1のチャネル(例えば、ソースチャネル5004)中の粒子の光学特性(例えば、蛍光)と関連付けることができる。いくつかの実施形態では、第1の検出信号は、複数の光学信号と関連付けることができる。いくつかの実施形態では、複数の光学信号は、1つ以上の基準信号と、1つ以上の蛍光信号とを含む。いくつかの実施形態では、光学特性は、粒子の1つ以上の蛍光性質を含む。いくつかの実施形態では、粒子は、無機粒子、有機粒子、ハイブリッド粒子、または1つ以上の細胞(真核または原核)である。
【0304】
5704では、複数の第2のチャネルのうちの選別チャネルが、第1の検出信号に基づいて判定される。このようにして、選別チャネルの中への粒子の選別を判定することは、粒子の光学特性に基づく。いくつかの実施形態では、選別チャネルを判定することは、粒子の1つ以上の蛍光性質に基づく。
【0305】
5706では、第1のチャネルから選別チャネルの中へ粒子を選別するための選別信号が伝送される。いくつかの実施形態では、選別信号を伝送することは、選別信号を選別要素(例えば、選別要素5006)に伝送することを含む。いくつかの実施形態では、選別要素は、圧電アクチュエータを含み、選別することはさらに、粒子を選別チャネルの中へ選別するように、圧電アクチュエータの必要とされる変形に基づいて選別信号を生成することを含む。
【0306】
5708では、第2の検出信号が受信され、第2の検出信号は、選別チャネル中の検出された粒子の存在と関連付けられる。いくつかの実施形態では、第2の検出信号は、インピーダンス検出と関連付けられ、選別チャネル中の検出された粒子の存在は、第2の検出チャネル中の検出されたインピーダンスを変化させる。
【0307】
5710では、第1のチャネルから選別チャネルの中への粒子の選別が、第2の検出信号に基づいて検証される。
【0308】
いくつかの実施形態では、方法5700はさらに、追加の第1の検出信号を受信するステップを含む。追加の第1の検出信号は、1つの実施形態では、第1のチャネル中の第2の粒子の光学特性と関連付けられる。第2の粒子の光学特性は、第1の粒子の光学特性と同一であり得るか、または異なり得る。複数の第2のチャネルの第2の選別チャネルは、追加の第1の検出信号に基づいて判定される。第2の選別チャネルは、チャネルと同一であり得るか、または異なり得る。したがって、第2の選別チャネルの中への第2の粒子の選別は、第2の粒子の光学特性に基づいて判定される。第2の選別信号が、第2の粒子を第1のチャネルから選別チャネルの中へ選別するために伝送される。第2の選別チャネル中の第2の検出された粒子の存在および/または体積と関連付けられる、追加の第2の検出信号を受信することができる。いくつかの実施形態では、第1のチャネルから選別チャネルの中への粒子の選別は、第2の検出信号に基づいて、かつ、追加の第2の検出信号に基づいて検証される。いくつかの実施形態では、第1のチャネルから第2の選別チャネルの中への第2の粒子の選別は、第2の検出信号に基づいて、かつ、追加の第2の検出信号に基づいて検証される。
【0309】
本明細書で議論されるように、粒子速度は、可変であり得、例えば、トレース5102等の第1の検出信号におけるピーク間の間隔に基づいて判定することができる。したがって、2つ以上の粒子が密接して離間すること、および/または1つの粒子からのトレースが少なくとも別の粒子と重複し得る速度で移動することが可能である。本明細書で説明されるアプローチの側面は、各粒子と関連付けられる第2の検出信号を使用して、重複する第1の検出信号を用いて粒子を区別するように動作可能である。
【0310】
例えば、
図58は、2つの連続的に選別および検出された粒子と関連付けられる第1および第2の検出信号(それぞれ、1、2、および1’、2’)の例示的な出力プロット5800を図示する。重複が5804においてトレース1、2の間で見られるが、個々のピークは、依然として区別可能であり、粒子の数は、第2の検出信号1’、2’に基づいて2と正しく識別することができる。
図59A−59Cは、2つの粒子からの例示的なトレース5902、5904が重複する、本明細書で議論される問題を図示する。
図59Aは、個々のトレースとして、したがって、個々の粒子として容易に区別されるときの時間が分離されたトレース5902、5904を図示する。
図59Bは、粒子が同時に第1の容積内にある(すなわち、第1の検出デバイス5012と関連付けられる)とき等に重複するようなトレース5902、5904を図示する。
図59Cは、6つの識別できるピークを有し、粒子数判定を混乱させる、結果として生じるトレース5908を図示する。第1の検出信号の判定の誤差は、不正確な粒子速度および/または蛍光スペクトル判定等の有意な下流影響を及ぼし得、これは順に、粒子の選別の時期を決定することの誤差(すなわち、選別信号が選別要素5006の誤ったトリガ情報を有するであろう)だけでなく、完全に誤った選別の誤差(すなわち、粒子が別の目的地チャネルに属すると見なされ得る)にもつながり得る。
【0311】
図60A−60Bは、たとえ第1の検出信号が重複していても、第2の検出信号に基づいて3つの粒子が正しく数えられる、粒子選別/計数に関する潜在的な誤差を図示する。具体的には、
図60Bの例示的なプロットは、どのようにして重複する第1の検出信号が、(トレース2、3に対応する粒子のみが検出される場合に)第1の検出デバイス5012によって第1の粒子を検出させないであろうかを図示するが、第2の検出信号1’、2’、3’は、トレース2、3が3つの粒子と関連付けられることだけでなく、第2の検出信号1’、2’、3’の間の時間的分離が、粒子分離情報を提供することも示す。すなわち、第2の検出信号1’、2’、3’は、第2の検出信号2’、3’に対応する粒子が、より密接に離間することを示す。
【0312】
概して、したがって、細胞計数のためだけでなく、細胞選別のフィードバック制御のためにも、第2の検出信号から収集される情報を使用することができ、本明細書で説明されるアプローチは、将来のトレースを分析するように、過去の計数誤差と関連付けられるトレースから「習得」することができる。例えば、
図60Bのトレース2、3が再度生じる場合、それらは、3つの粒子を示すこととより正確に関連付けられる可能性が高いであろう。この時点で、3つの粒子は、それに応じて選別されるか、またはこれが可能ではない(例えば、選別要素が十分に迅速に応答できない)場合、どの目的地チャネルに粒子が最後に行くと見なされるかに応じて(すなわち、第2の検出信号1’、2’、3’に基づいて)対処されるかのいずれかであろう。
【0313】
さらに、誤った計数が誤った選別をもたらすとき、本明細書で説明されるアプローチは、任意の好適な様式で誤差に対処することができる。例えば、目的地チャネル5010Aに選別されている粒子が、ワクチン組成物を作製するために使用される場合、最終ワクチン組成物および/または純度を判定する際に、目的地チャネル5010Aの中への望ましくない粒子の誤った選別に対処することができ、そのような組成物および/または純度が必要規制標準を下回る場合に、ワクチン組成物を破棄することができる。
【0314】
したがって、本明細書で説明されるアプローチの側面は、誤差を補償された細胞計数/選別を達成するように、第1の検出デバイス5012と第2の検出デバイス5014との間の検出容積の差を活用することができる。換言すると、第1の検出信号が粒子の選別の基礎を形成することができるため、第1の検出デバイス5012は、より広範な検出技法により、より大きい検出容積(すなわち、第1の容積)と関連付けることができる。一方で、第2の検出デバイス5014は、2値分類(すなわち、粒子が第2の容積中に存在するか、または存在しないかのいずれか一方)を単純に行うように構成することができ、複数の粒子が同時に存在する可能性が多大に低減させられる、より小さい検出容積を使用して、より単純な検出方法を採用することができる。実施例として、
図55の例示的なプロットを参照すると、トレース1(第1の検出信号)が、約2ミリ秒の時間幅を有する一方で、対応する第2の検出信号1’は、約0.5ミリ秒の時間幅を有し、同一の粒子速度については、これは、第1の容積が第2の容積より約4倍大きいことを示すことができる。
【0315】
図61は、実施形態による、粒子のフィードバックベースの計数のための方法6100を図示する。いくつかの実施形態では、コンピュータ実行可能記憶媒体は、方法6100を実行するためのコンピュータ実行可能命令を含む。6102では、各第1の検出信号が、第1のチャネル中の粒子の光学特性と関連付けられる、複数の第1の検出信号が受信される。
【0316】
6104では、第1のチャネル中の第1の複数の粒子が、複数の第1の検出信号に基づいて判定され、第1の複数の粒子は、類似の光学特性を有する。いくつかの実施形態では、複数の第1の検出信号は、少なくとも重複する一対の第1の検出信号を含む。
【0317】
6106では、複数の第2のチャネルの選別チャネルが、第1の検出信号に基づいて判定される。このようにして、選別チャネルの中への全ての第1の複数の粒子の選別は、第1の複数の粒子の類似の光学特性に基づいて判定される。
【0318】
6108では、1つ以上の選別信号が、第1の複数の粒子のそれぞれの粒子を第1のチャネルから選別チャネルの中へ選別するために伝送される。6110では、各第2の検出信号が、選別チャネル中の粒子の存在および/または体積と関連付けられる、複数の第2の検出信号が受信される。6112では、選別チャネル中の第2の複数の粒子が、複数の第2の検出信号に基づいて判定される。6114では、各第3の検出信号が第1のチャネル中の追加の粒子の光学特性と関連付けられる、複数の第3の検出信号が受信される。
【0319】
6116では、第1のチャネル中の第3の複数の粒子が、複数の第3の検出信号に基づいて、判定された第1の複数の粒子に基づいて、かつ、判定された第2の複数の粒子に基づいて判定される。いくつかの実施形態では、判定された第1の複数の粒子は、判定された第2の複数の粒子と同一であり、1つ以上の第3の検出信号は、判定された第3の複数の粒子と関連付けられることが判定される。いくつかの実施形態では、判定された第1の複数の粒子は、判定された第2の複数の粒子より少なく、1つ以上の第3の検出信号は、判定された第3の複数の粒子より多い、第4の複数の粒子と関連付けられることが判定される。
【0320】
以前に議論されたように、第1の検出デバイス5012および/または第2の検出デバイス5014は、検出容積中の粒子と、または検出容積自体と関連付けられる、複数の特性を検出することができる。
図62A−62Cは、粒子1308を含有するチャネル1310を有する、粒子選別機1300の一部を示す、例示的実施形態を図示する。本明細書では、チャネル1310がソースチャネル104に対応すると仮定して説明されるが、これらの実施形態は、目的地チャネル118A−118Cのうちのいずれかに同じくらい容易に適用可能であることが理解される。
【0321】
図62Aを参照すると、選別機6200は、第1の検出デバイスとして、
図52Aに類似する強度基準および蛍光トレース測定設定6212を含み、チャネル6210の第1の検出容積6204は、フィルタアレイ5208に類似するフィルタアレイと関連付けられる。
図62Cは、設定6212によって生成される例示的なトレースを図示する。
【0322】
選別機6200はまた、第1の検出デバイスとして、チャネル6210中の第2の検出容積6206を画定する、電極6202A、6202Bを含む、インピーダンス測定装置6202も含む。いくつかの実施形態では、第1の検出容積6204の少なくとも一部は、第2の検出容積6206と重複する。例えば、
図62Aは、第2の検出容積6206が第1の検出容積6204内に完全に含有されるが、これは必ずしも必要ではないことを図示する。例えば、重複または非重複様式で、第1の検出容積6204の前また後に第2の検出容積6206を形成することができる。いくつかの実施形態では、第2の検出容積6206は、第1の検出容積6204より小さい。
図62B、62Cは、蛍光設定の例示的な出力プロットを図示する。
【0323】
いくつかの実施形態では、インピーダンス測定は、第2の検出容積6206中の粒子6208の存在および/または体積と関連付けられる。いくつかの実施形態では、インピーダンス測定は、粒子6208のサイズと関連付けられる。
図62Bは、どのようにして粒子のサイズが理論的にインピーダンス測定に影響を及ぼし得るかを図示する。
【0324】
インピーダンス測定装置6202の例示的かつ非限定的な実施形態が、
図63Aで図示されており、電極6302A、6302B(電極6202A、6202Bに実質的に対応する)は、粒子選別機6300の基板上で金のピンとして形成される。
図63B−63Cは、ポリスチレンビーズ上で粒子選別機6300を使用して行われる例示的なインピーダンス測定を図示し、
図63Bは、典型的な測定であり、
図63Cは、3つの異なるサイズのビーズのインピーダンス測定である。
【0325】
このようにして、サイズおよび蛍光情報を粒子について同一の場所で獲得することができ、粒子のより特異的および/または正確な選別は、両方の情報に基づき得る。いくつかの実施形態では、サイズおよび/または蛍光情報は、生物活性、化学活性、および/または同等物等であるが、それらに限定されない、粒子の他の性質を判定するために使用することができる。このようにして、選別は、検出された信号と関連付けられる関連性の仮説/推論に基づき得る。
【0326】
図64は、いくつかの実施形態による、粒子の選別のための方法6400を図示する。いくつかの実施形態では、コンピュータ実行可能記憶媒体は、方法6400を実行するためのコンピュータ実行可能命令を含む。6402では、第1のチャネルの第1の容積中の粒子の第1の特性と関連付けられる、第1の検出信号が受信される。いくつかの実施形態では、第1の検出信号は、複数の光学信号と関連付けられる。いくつかの実施形態では、複数の光学信号は、1つ以上の強度基準信号と、1つ以上の色コーディングされた信号とを含む。いくつかの実施形態では、光学特性は、粒子の1つ以上の蛍光性質を含む。
【0327】
6404では、第1のチャネルの第2の容積中の粒子の第2の特性と関連付けられる、第2の検出信号が受信される。いくつかの実施形態では、第2の検出信号は、インピーダンス検出と関連付けられ、インピーダンス検出は、第2の容積中の粒子の存在および/または体積に基づく。いくつかの実施形態では、インピーダンス検出はさらに、粒子のサイズに基づく。いくつかの実施形態では、第1の容積は、第2の容積と重複する。いくつかの実施形態では、粒子の1つ以上の性質は、第1の検出信号のうちの1つ以上に基づいて、かつ、第2の検出信号に基づいて判定され、選別チャネルは、1つ以上の性質に基づいて判定される。いくつかの実施形態では、各性質は、粒径、粒子蛍光、化学活性、および、生物活性のうちの1つ以上から独立して選択される。
【0328】
6406では、複数の第2のチャネルの選別チャネルが、第1の検出信号および第2の検出信号のうちの1つ以上に基づいて判定される。このようにして、粒子の選別を判定することは、粒子の第1の光学特性および第2の光学特性のうちの1つ以上に基づく。いくつかの実施形態では、選別チャネルを判定することは、粒子の1つ以上の蛍光性質に基づく。
【0329】
6408では、選別信号が、粒子を第1のチャネルから選別チャネルの中へ選別するために伝送される。
【0330】
図65は、いくつかの実施形態による、粒子の選別のためのシステム6500を図示する。システム6500は、チャネルアセンブリ6502と、コンピュータ装置6504と、第1の検出デバイス6506と、第2の検出デバイス6508と、選別要素6510とを含む。システム6500の種々の構成要素は、適宜に
図65の線によって示されるように、電気、光学、有線、および/または無線通信することができる。コンピュータ装置6504は、パーソナルコンピュータ、サーバ、ワークステーション、タブレット、モバイルデバイス、クラウドコンピューティング環境、これらのプラットフォームのうちのいずれかの上で作動するアプリケーションまたはモジュール、および/または同等物を含むことができる。
【0331】
チャネルアセンブリ6502は、以前に説明されたように、少なくとも、ソースチャネルと、1つ以上の目的地チャネルとを含む。概して、チャネルアセンブリ6502は、顕微鏡、フローサイトメータ、PCR等の生化学分析機器、マイクロウェルアレイベースのプラットフォーム、および/または同等物を含むが、それらに限定されない、適切な分析プラットフォーム上に嵌合する、および/または別様にそれと相互作用するように定寸することができる。チャネルアセンブリ6502を作製するために、シリコン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリカーボネート(PC)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、環状オレフィンポリマー(COP)、環状オレフィン共重合体(COC)、および/または同等物を含むが、それらに限定されない、任意の好適な材料を採用することができる。いくつかの実施形態では、チャネルアセンブリ1602の材料は、生体適合性および/または光学的に透明である。
【0332】
第1の検出デバイス6506は、ソースチャネルから細胞選別に向かって適用することができる、粒子および/または検出容積の特性を検出するために好適な任意のシステムである。いくつかの実施形態では、第1の検出デバイス6506は、1つ以上の励起ソースと、1つ以上の検出器と、全域通過フィルタおよび蛍光フィルタを含むことができる1つ以上のフィルタアレイと、チャネルアセンブリ6502に連結するための適切な連結光学部品とを含む、蛍光検出システムである。
【0333】
第2の検出デバイス6508は、粒子および/または検出容積の特性を検出するために好適な任意のシステムである。いくつかの実施形態では、第2の検出デバイス6508は、ソースチャネルから細胞選別に向かって適用される。いくつかの実施形態では、第2の検出デバイス6508は、目的地チャネル中の細胞選別の検証に向かって適用される。いくつかの実施形態では、第2の検出デバイス6506は、1つ以上の電極と、チャネルアセンブリ6502に界面接触するための適切な接続要素とを含む、インピーダンス検出システムである。
【0334】
選別要素6510は、いくつかの目的地チャネルのうちの1つの中への粒子の選別の確率を可能にし、および/または別様に増加させるように、ソースチャネル中の粒子の側方変位に影響を及ぼすために好適な任意のシステムである。いくつかの実施形態では、選別要素6510は、圧電アクチュエータである。
【0335】
図66は、いくつかの実施形態による、コンピュータ装置6504を図示する。コンピュータ装置6504は、少なくとも、プロセッサ6512と、メモリ6514とを含み、さらに、入出力インターフェース6516と、接続インターフェース6518とを含む。プロセッサ6504は、取得モジュール6520と、第1の検出モジュール6522と、選別モジュール6526と、第2の検出モジュール6528と、検証モジュール6532とを含む。プロセッサ6504はまた、装置6504と関連付けられる表示デバイス(図示せず)と通信し、および/またはそれを制御するように、表示モジュール6534も含む。
【0336】
いくつかの実施形態では、装置6504は、概して方法5700によって説明されるように、粒子の選別のために構成される。いくつかの実施形態では、装置1604は、概して方法6100によって説明されるように、粒子のフィードバックベースの計数のために構成される。いくつかの実施形態では、装置6504は、概して方法6400によって説明されるように、粒子の選別のために構成することができる。
【0337】
いくつかの実施形態では、取得モジュールは、第1の検出信号と関連付けられる複数の光学信号を取得するように構成され、取得モジュールはさらに、第2の検出信号と関連付けられる電気信号を取得するように構成される。
【0338】
いくつかの実施形態では、第1の検出モジュール6522は、チャネルアセンブリ6502の第1のチャネル中の粒子の1つ以上の光学特性と関連付けられる第1の検出デバイス6506から第1の検出信号を受信するように構成される。
【0339】
いくつかの実施形態では、選別モジュール6526は、第1の検出信号に基づいて複数の第2のチャネルの選別チャネルを判定し、それによって、粒子の1つ以上の光学特性に基づいて粒子の選別を判定するように構成される。選別モジュール6526はさらに、粒子を第1のチャネルから選別チャネルの中へ選別するために選別信号を選別要素6510に伝送するように構成することができる。いくつかの実施形態では、選別モジュール6526はさらに、粒子の1つ以上の蛍光性質に基づいて選別チャネルを判定するように構成される。
【0340】
いくつかの実施形態では、第2の検出モジュール6528は、第2の検出デバイス6508から第2の検出信号を受信するように構成され、第2の検出信号は、選別チャネル中の検出された粒子の存在および/または体積と関連付けられる。
【0341】
いくつかの実施形態では、検証モジュール6532は、第2の検出信号に基づいて、第1のチャネルから選別チャネルの中への粒子の選別を検証するように構成される。
【0342】
いくつかの実施形態では、第1の検出モジュール6522はさらに、第1の検出デバイス6506から追加の第1の検出信号を受信するように構成される。追加の第1の検出信号は、1つの実施形態では、第1のチャネル中の第2の粒子の光学特性と関連付けられ、第2の粒子の光学特性は、第1の粒子の光学特性とは異なる。
【0343】
いくつかの実施形態では、選別モジュール6526はさらに、追加の第1の検出信号に基づいて、複数の第2のチャネルの第2の選別チャネルを判定するように構成される。第2の選別チャネルは、選別チャネルとは異なり得、それによって、第2の粒子の光学特性に基づいて、第2の選別チャネルの中への第2の粒子の選別を判定する。いくつかの実施形態では、選別モジュール6526はさらに、第1のチャネルから選別チャネルの中へ第2の粒子を選別するための第2の選別信号を伝送するように構成することができる。
【0344】
いくつかの実施形態では、第2の検出モジュール6528はさらに、第2の検出デバイス6510から追加の第2の検出信号を受信するように構成することができ、追加の第2の検出信号は、第2の選別チャネル中の第2の検出された粒子の存在および/または体積と関連付けられる。
【0345】
いくつかの実施形態では、検証モジュール6532はさらに、第2の検出信号に基づいて、かつ、追加の第2の検出信号に基づいて、第1のチャネルから選別チャネルの中への粒子の選別を検証するように構成される。いくつかの実施形態では、検証モジュール6532はさらに、第2の検出信号に基づいて、かつ、追加の第2の検出信号に基づいて、第1のチャネルから第2の選別チャネルの中へ第2の粒子の選別を検証するように構成される。
【0346】
いくつかの実施形態では、フィードバックモジュール6530は、第2の検出信号に基づいて、第1のチャネル中の追加の粒子を目的地チャネルのうちの1つの中へ選別するために、選別モジュール1626を訓練する用に構成される。
【0347】
本明細書で開示されるシステム、装置、および方法の実施形態では、(1)上流検出ゾーンからの信号を符号化するため、および(2)デジタル信号処理によって信号対雑音比を増進することができるように、信号を時間的にコード化するために、パターン化スリットを使用することができる。信号の波形を光検出器(例えば、PMT)の前に配置されたスリットパターンによって事前に判定することができるため、信号を増幅し、雑音を抑制するように、デジタル合致フィルタを適用することができる。信号処理アルゴリズムは、リアルタイムで有限インパルス応答(FIR)フィルタを用いて実装することができる。
【0348】
いくつかの実施形態では、選別接合点から下流選別チャネルを横断して底基板上に形成される電極は、細胞、ビーズ、または粒子が通り過ぎるときに、領域におけるインピーダンス変化を検出する電気信号を生じ、したがって、成功した選別事象を確認/検証するように設計される。各細胞が選別チャネルのうちの1つへ偏向させられた後、選別事象の成功を確認するように、「検証」信号も検出されるべきである。
【0349】
ユーザにとっての利益は、ユーザが、選別動作を監視し、リアルタイムでフィードバックを受信することができる、検証信号が観察されない場合、ユーザは、実験を停止し、一対の蛍光・インピーダンス信号を見ることができるまで、PZTトリガタイミング、電圧、および/または整合等の選別パラメータを調節して正すように要求される、蛍光・インピーダンス信号ペアを登録することが、リアルタイムで「選別精度」および「選別純度」を表すことができることを含む。したがって、ユーザは、多くの場合、細胞損失につながる、選別されたサンプルをフローサイトメータに通過させることなく、選別されたサンプルの濃度、その純度(例えば、いくつのサンプル細胞およびいくつの不要細胞が選別されたサンプル中にあるか)を把握することができる。
【0350】
いくつかの実施形態は、射出成形された使い捨ての粒子選別機上に光学、音響学、および/またはマイクロ流体工学を組み込む、ラボオンチップ技術を対象とする。損傷または汚染された場合に交換することができる、射出成形チップを製造することができる。さらに、チップおよび流体経路を使い捨てにすることができるため、交差汚染および滅菌性が対処されなければならない、臨床設定に良好に適している。
【0351】
いくつかの実施形態は、選別を作動させるオンチップ圧電ダイヤフラムを対象としている。圧電ダイヤフラムの急速かつ特異的な偏向は、特定の選別チャネルに向かって、細胞または粒子を含有する少量の流体(例えば、100pL〜1nLまたは1nL〜1μL)を駆動するために、定義された電圧波形を使用することによって活用することができる。圧電ダイヤフラムを大量生産し、射出成形チップに直接結合することができる。圧電設計は、細胞とともに流体を移動させることができ、細胞と流体との間に非常に低い相対加速度および剪断力をもたらす(0.1パスカル)。
【実施例】
【0352】
以下の実施例は、本明細書で説明される技術を例証するが、それを限定しない。
【0353】
実施例1
流体力学マイクロ流体デバイスを使用した第1段階CTC濃縮
【0354】
マイクロFACSを使用した選別(実施例3参照)に先立って、CTCの100倍以上の濃縮を得るために、流体力学性質を利用することができる。100倍以上の濃縮を達成しようとして、いくつかのらせんチャネルデバイスが設計された。いくつかのらせん状濃縮構造が、CTCの第1段階濃縮のために設計された。らせんデバイス構造は、慣性揚力およびディーン力が細胞の集束および分離を可能にする、層流条件下で、細胞の物理的性質を利用する。慣性揚力とディーン力との間の平衡は、サイズに基づいて、任意の種類のサンプルの平衡位置を可能にする。このアプローチは、より小さい細胞の混合物からの標的大型細胞の効果的な分離をもたらした。一般的な構造および概念が、近似寸法とともに、
図2A−2Cで図示されている。第1のステップでは、異なるサイズの細胞(例えば、血液中のCTC)の混合物が、入口チャネル(らせんの中心、
図2A)に導入され、緩衝溶液が他方の入口を通して導入される。らせん構造を通過した後、より大きい細胞が、慣性効果により、より小さい細胞から分離される。
【0355】
マイクロ流体デバイスが、AutoCADソフトウェアを使用して設計および加工され、高分解能(20,000dpi)でフォトリソグラフィマスク印刷のために送信された。SU−8を使用して、金型が構築された。チャネルの幅は、250μmであり、チャネルの高さは、50μmであった。らせん構造の端部では、サイズに基づいて異なる細胞を収集するように、主要チャネルをサブチャネルに分割することができる(
図3A−3C参照)。複数の種類のらせん状濃縮構造が、濃縮、捕捉効率、および製造可能性を向上させるように設計された。2〜10個の流出チャネルを伴うデバイスが設計され、効率的に分離するために使用されたが、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を使用した製造中に若干の困難を提供した。2チャネル設計が容易に製造され、好適な結果を提供した(チャネルを可視化するためにピンク色の染料を伴う
図3Cに示される)。
【0356】
評価および試験
【0357】
異なるサイズ(例えば、直径が7.6μm、10.5μm、25.3μm)のラテックスマイクロビーズを使用して、らせんマイクロ流体デバイスの分離性質が評価され、各ビーズサイズの正確な分離位置が、収集出口の端部で判定された。デバイスの性能(例えば、濃縮)を検証するために、UCSDでBD−Accuri C6を使用した各実行の前および後に、マイクロビーズの初期混合比および最終混合比が測定された。400μl/分、1ml/分、および1.5ml/分における、このプロセス中の種々の流速の効果も試験された。(サイズがほとんどのCTCに類似する)サイズが25.3μmのビーズが、出口チャネル1および2を通して7.6μmおよび10.5μmビーズから十分に分離され、1.5mL/分の流速を使用して、最良の性能を有した(
図4A−4C参照)。25.3μmビーズの集団が、この流動条件で600倍に濃縮された。試験がマイクロビーズを用いて行われたが、この濃縮係数は、設計およびアプローチの正当性を明確に立証した。
【0358】
添加されたCTCを用いたさらなる修正および試験
【0359】
ビーズを使用した初期評価後に、マイクロ流体デバイスは、種々の癌細胞株(例えば、HeLa、MCF−7、およびU2OS細胞)を使用して試験され、場合によっては、赤血球溶解全血からの100倍以上の濃縮が観察された。場合によっては、製造困難により、設計が修正された。1つの元のデバイスは、幅75μmおよび高さ185μmであった、10個の収集チャネルを有した。各出口チャネルは、30μmだけ分離され、その高いアスペクト比(>6)により、高度に粘性のSU−8フォトレジストを使用してデバイス金型を加工することに困難があった。再設計されたデバイスが、5個および2個の出口を用いて試験された。場合によっては、
図3Aより少ない出口を伴う設計が、SU−8金型加工プロセスを向上させた(
図5A参照、デバイス1およびデバイス2)。再設計された2出口デバイスは、25μmビーズ、HeLa、およびMCF−7細胞を1つのチャネルの中へ明確に分離することができ、ほとんどの白血球は、より大きいチャネルを通って退出していた(
図5B)。チャネルのサイズを変更し、「Y」接合点をより平滑にし、端部に拡張領域を作成することによって、精製を向上させるように、さらなる修正が2出口設計に行われた。これらの修正は、開始量と比較して429.5倍濃縮の平均で、癌細胞の細胞外濃縮性質をもたらした。
【0360】
1つの代表的な実験では、約1900万個の白血球を含有する、6ミリリットルの血液が、抗EpCAM−PE抗体で標識された約1,000個のMCF−7細胞を添加された。RBC溶解緩衝剤を使用して赤血球を溶解させた後に、残りの細胞がPBS中で再懸濁させられ、らせん状濃縮構造を通過させられた。実行後に、約21,584個の白血球が残り、白血球の約99.8%の除去を表した(
図6)。実行に続いて、約760個のMCF−7細胞が残り、約80%の保持を表した(
図6)。このプロセスは、6つの別個の実験で添加されたMCF−7癌細胞の70〜100%を保持しながら、白血球の99.8%を除去した。回収の若干の変動性は、各実験の始めおよび終わりに細胞を数えることの高い変動性によるものであり得る。
【0361】
実施例2
CTCへの流体力学支援抗体結合
【0362】
抗体が癌細胞に追加され、迅速かつ効率的な細胞標識を可能にするように混合物が混合構造を通して注入された、設計が試験された。いくつかの市販の抗体がEpCAM(CTCに対する上皮マーカ)に対して試験された。結果は、(20〜60分と比較して)1〜2分で混合構造の使い捨てチップを介してサンプルを潜在的に標識できることを示す。このアプローチは、マイクロ流体検出器システムに使用されるチップの使い捨て性質により、OncoSorterシステムにおいて可能である。初期試験は、優れた標識効率を示した。いくつかの実施形態では、マイクロ流体検出器システムは、自動的であり、細胞取扱およびフローサイトメトリにおいて高度な訓練を受けた科学者が対応可能ではない臨床設定に好適である。
【0363】
混合構造を設計して分析し、チップ上のCTCへの抗体の結合効率を増進するために、流体力学シミュレーションソフトウェアが使用された。閉鎖オンチップ設計を使用したマイクロ流体チップ上の自動混合は、サンプル取扱を低減させ、細胞の効率的な抗体標識を提供することができる。受動型混合構造が開発され、第1および第2段階濃縮および/または選別構造と統合することができる。いくつかの設計反復が生成され、流体力学シミュレーションソフトウェア(COMSOL)を使用して分析された。1つの効果的な設計は、「蛇行」混合構造(
図7)から成った。シミュレーション中に、2つのサンプルの完全混合が、4回だけの旋回後に観察された。十分な混合および結合可能性を確保するために、混合構造チップが、(実施例1のように)PDMSを使用して、20回の旋回を用いて設計および加工され、(いくつかの実施形態では)本明細書で説明される検出器システムに使用される。
【0364】
評価および試験
【0365】
本明細書で説明されるCTC標識および捕捉プラットフォームの1つの利点は、CTCを標識するために任意の蛍光マーカを使用する融通性である。本実施例では、EpCAM(証明された効果的なマーカ)が使用された。抗体標識の初期試験については、2つの市販抗体、すなわち、PerCP−e710ヒトCD326(クローン1B7、eBioscience)およびPE共役EpCAM(VU1D9、Cell Signaling Technologies (CST))が試験された。両方の抗体は、良好に機能したが、eBioscienceのEpCAM抗体を使用して、非標識細胞からの十分な分離が観察されなかった。PE共役VU1D9は、1:100(抗体対細胞サンプル)の体積比を使用した、非標識細胞からの向上した分離、および1:25の混合比を使用した、ほぼ完全な分離を実証した(
図8)。この抗体は、2つの上皮由来癌細胞株、すなわち、HeLaおよびMCF−7で試験され、両方とも類似結果をもたらした。優れた標識はまた、いくつかの添加実験で使用されたGFP陽性であるMCF−7細胞株を用いて観察された。実験結果は、GFP陽性癌細胞をGFPおよびGFP/EpCAM陽性細胞のために適正にゲート制御できることを示した(
図8C−D)。要約すると、PE共役VU1D9が良好に機能し、混合構造を使用した全てのEpCAM標識実験で使用された。
【0366】
混合構造チップの混合および標識性質を評価して比較するために、2つの方法、すなわち、(1)エッペンドルフ管中の従来のオフチップ抗体混合、および(2)本明細書で設計される混合構造を使用した抗体標識(
図9A−9B)が使用された。マイクロ混合器を使用して、1分以内に、生体MCF−7細胞の99%より多くがPE抗体で染色された一方で、オフチップチップ標識は、癌細胞の83%標識に達するために30分以上かかった。蛍光および標識はまた、検出器システムを使用して分析されたときに、いくつかの検出限界を十分に上回った。過剰な抗体は、洗浄されなかった場合、分析中にある背景を生成した。混合構造に従う単純な洗浄ステップは、非結合抗体を除去し、背景蛍光雑音を低減させることができるが、余分なステップを生成する。この問題は、非常に小さいが明るい信号を無視する(例えば、ゲート制御する)ように、分析中にソフトウェアを用いて対処することができ、次の開発段階で実装されるであろう。250μl/分の流速を使用することができ、チップ内の抗体混合中にいかなる細胞死も引き起こさない。したがって、混合構造は、第1のらせん濃縮デバイスとマイクロ流体検出器との間で中間ステップとして使用することができる。統合サンプル調製システムは、プロセス全体をより容易にし、サンプルの非一貫性または汚染を低減させるであろう。
【0367】
実施例3
CTC単離のための卓上マイクロ流体検出器
【0368】
マイクロ流体検出器が、CTCの完全な計測および単離のために開発された。場合によっては、社内設計マイクロ流体蛍光活性化細胞選別機(マイクロ流体検出器)が、CTC単離および分析のために修正された。アルファプロトタイプの1つの設計修正は、ほぼ全てのCTCが選別されていることを確実にするように、収集効率を最大限化した。AutoCAD設計が生成され、UCSDにおいてNano3およびLo labでPDMSを使用して、マイクロ流体検出器を加工するために使用された(
図10A−B)。主要チャネルは、200μm幅で設計され、80μmの高さを伴う3つの50μmサンプル収集チャネルに分割された。各使用後に、または障害物がある場合にチップ交換を可能にする、チップホルダも設計された(
図10C)。ホルダは、すでにデバイスの中へ実装されている整合マーカを使用し、したがって、異なるデバイスのための検出信号の任意の潜在的な変動を排除することによって、光軸へのマイクロ流体チャネルの精密な整合を保証する。ホルダの位置(すなわち、検出領域の位置)は、光学xyzステージによって、容易かつ正確に制御することができる(
図10C、左)。本デバイスは、Teflon
(登録商標)管を使用する、3つの入口および出口を有する。1つのサンプルおよび2つのシース流入口が、最上部に位置し、底部に位置する3つの管は、サンプル/廃棄物収集チャネルである。場合によっては、PZTアクチュエータディスクが、各マイクロ流体検出器に恒久的に結合された。場合によっては、PZTアクチュエータディスクが、LOCに恒久的に結合された。
【0369】
以前のアルファプロトタイプ検出器システムは、オンチップ光学導波管、ならびに蛍光および散乱検出のための時空間符号化アーキテクチャの独特な設計を使用した。光学調査に続いて、本デバイスは、有限量(100ピコリットル〜1ナノリットル)の流体を変位させることによって単細胞を選別するために、統合圧電ディスクアクチュエータを使用した。それはまた、Teflon
(登録商標)AFでコーティングした光学流体導波管を使用する、オンチップレーザ照射も組み込んだ。この検出設計およびアプローチは、PDMS壁上でコーティングされたTeflon
(登録商標)−AF層の質により、経費、複雑な加工プロセス、および散乱光雑音の導入等の商業化のためのいくつかの制限を有する。この目的での修正されたプロトタイプは、チップの外部にレーザ励起を有し、したがって、これらの基準問題を回避するように設計された。400μmの直径(これは調整することができる)を伴うマイクロ流体チャネルの検出領域を照射する、488nmレーザが、オフチップ光学構成要素によって集束され、したがって、加工プロセスを単純化した。光学構成要素は、小型実験用回路板上に組み立てられている。約400μmの直径を伴う検出領域を照射する、光ファイバ結合488レーザ(25mW)は、長さ50倍の作動距離の顕微鏡対物レンズを含む、オフチップ光学構成要素によって集束される。初期電子制御システムが完成させられ、PMT(検出)およびPZT(選別)と界面接触させられた。ビーズの進行速度を推定するための改良型アルゴリズムは、選別速度および精度とともにより高い性能を提供し続けることができる。
【0370】
評価および試験
【0371】
3つ以上の蛍光マーカを検出して分析するために1つだけのPMT(検出器)を使用する、検出システムは、独特の色時空間(COST)アルゴリズムを採用する。向上した検出のために、PMTからのパルス信号を特定の周波数を用いて変調することができるように画像面に配置され、FIR合致フィルタアルゴリズムを適用することによって、速度推定、信号対雑音比増進等のさらに洗練されたデジタル信号処理を可能にする、新しいフィルタアレイが設計および試験された。この構成を使用して、検出システムは、レインボー較正ビーズから第5のピークを検出ために十分敏感であった。この感度範囲は、EpCAM抗体で標識されたGFP陽性細胞およびMCF−7細胞を検出するために十分過ぎるほどである(
図12A参照)。電子システムは、PMTからの出力信号を登録し、マイクロ流体検出器上に搭載されたPZTアクチュエータをトリガするために、鋸歯出力波形を送信する。選別のための出力電圧は10Vであり、起動時間は1ミリ秒であるが、これは、将来、より高いスループットを達成するために、より短くあり得る。下方の
図12Bは、PZTアクチュエータによって印加される圧力パルスに応答して、どのようにして選別事象が起こるかを図示する画像を示す。サンプル流(可視化のためのローダミン染料を含有する)は、PZTによって印加される圧力によって、左チャネルへ偏向させられ、PZTがオフにされたときに元の位置に戻る。次いで、混合サンプルからCTCのみを捕捉するために、複数の色の判別(例えば、COST)およびビーズまたは細胞の速度推定のためのアルゴリズムが使用される。より高速のリアルタイム制御電子システムを使用するように、電子機器をアップグレードすることができる。電子制御システムは、より高い選別効率およびサンプル純度を達成するために最適化することができる。
【0372】
マイクロビーズおよびGFP陽性MCF7を選別することによって、マイクロ流体検出器の選別能力を試験し、正当性を立証した。マイクロビーズまたはCTCに陽性であった、各検出されたサンプルが、選別事象をトリガした。選別を検証するために、下流選別検証システムが使用された。第1に、MCF7細胞が検出され、3ローブピーク信号(111変調)を生成する。次いで、FPGAベースの制御システムが、遅延時間を計算し、10(V)を1ミリ秒間印加することによって、オンチップ圧電アクチュエータ(PZTディスク)をトリガする。MCF7細胞は、下流選別チャネルのうちの1つへ偏向させられ、別の空間的に符号化された信号(1011変調)が、リアルタイムで成功した選別事象を検証する。以下の表は、ここで分析されたマイクロ流体検出器プロトタイプが、ビーズまたは添加癌細胞を選別するときに約70%選別純度(すなわち、回収率)を達成できることを示す。これらの実験では、既知の数のマイクロビーズまたはMCF−7細胞が導入され、マイクロ流体検出器が検出および選別に使用された。平均で、約109個のCTCのほぼ68%が選別後に回収させられた(表1)。
【0373】
【表1】
【0374】
細胞生存能力は、細胞を固定することに依拠し、さらなる下流用途のために不適当である、現在のCTC検出システムと比較して、本明細書で説明されるシステムを区別する。
【0375】
細胞生存能力が、ヨウ化プロピジウム(PI)またはトリパンブルーを使用して、マイクロ流体検出器において2つの主要なステップで検証された。濃縮前らせん状濃縮構造では、模擬MCF−7細胞(未処理、すなわち、らせんなし)およびらせん状濃縮構造を通して処理された細胞の生存能力が比較された。模擬細胞と比較して、処理された細胞の有意な細胞死は検出されなかった(
図13)。最終選別段階では、選別後に収集されたMCF−7細胞が、顕微鏡法によって可視化され、状態が良いと考えられた。現在の最先端のFACSシステム(BD Aria II)を本明細書で説明されるマイクロ流体検出器と比較するために、敏感な心筋細胞が使用された。市販のAria IIシステムが、71%細胞生存能力をもたらした一方で、マイクロ流体検出器は、98%細胞生存能力を実証した。マイクロ流体検出器の増加した細胞生存能力は、部分的に、マイクロ流体システムにおけるより少ない剪断応力に起因し得る。
【0376】
最終実験では、マイクロ流体検出器を用いて、濃縮前から標識、最終的に検出/収集まで、統合システムがどれだけ良好に細胞を検出して収集することができるかを判定するように、システムの3つ全ての段階が統合された。MCF7添加細胞が、高範囲(2,000個の生細胞)および低範囲(約10個の生細胞)で、7.5mlの血液に導入された。3つの完全実験が、各範囲について行われ、最終収集細胞は、市販のフローサイトメータ(BD Accuri C6)を使用して正当性を立証された。予備結果は、模擬CTCの低および高範囲の両方で、印象的な検出、収集効率および一貫性を示した(表2)。平均して、高範囲について566個のCTC(28%)または低範囲の3.3個の細胞(または31.2%)が収集された。収集されたサンプルは、市販のフローサイトメータ(BD Accuri C6)を用いて正当性を立証され、同数の細胞が検出された。各ステップが最初から最後までの流体工学およびポンプシステムを用いて単一のシステムに組み込まれるとき、改良型デジタル信号処理アルゴリズムが用いられると、ならびに前方および側方散乱が含まれるときに、選択および収集効率を向上させることができる。
【0377】
【表2】
【0378】
概要
【0379】
末梢血中で見出されるCTCは、原発腫瘍の悪性および転移を形成し得る細胞の存在を判定するように、低侵襲性「液体生検」の可能性を提供する。ここで試験されたシステムは、初期CTC集団を優に100倍以上(429倍濃縮の平均)事前濃縮し、マイクロ流体混合器を使用してCTCをEpCAM抗体で迅速に標識し、検出される全ての細胞の70%近くを最終的に選別する能力を実証した。本明細書で説明されるシステムは、単癌細胞の検出、また、下流分子分析およびシークエンシング、ならびに個人化診断および治療も向上させることができる。また、本明細書で説明されるシステムは、全て使い捨ての製造可能なチップ(例えば、熱可塑性チップ)上に組み込まれる、2次元流動閉じ込め、改良型電子機器、および検出速度を実装することができる。
【0380】
実施例3
オンチップ試薬混合
【0381】
フローサイトメトリの満たされていない必要性は、分析および選別のためのフローサイトメータ上への装填に先立った、サンプル調製および標識である。典型的には、細胞は、個々の標識抗体(または染料)を細胞サンプルの中へ手動でピペット採取することによって標識されなければならない。この手順は、例えば、抗体取扱の差異、ピペット採取の不正確性、貯蔵の非一貫性、抗体ロットの変動性、および/または同等物により、データの大きな変動をもたらし得る。これは、特に、経験の少ない技師が検定を行わなければならない、臨床および診療地点用途にとって問題である。
【0382】
チップ上に事前装填されたオンチップ試薬を有することにより、どのような抗体であるか、どれだけの抗体であるか、またはピペット採取誤差について心配する必要なく、プロセスを「ターンキー」にすることができる。試薬は、事前装填し、検定または用途に応じて、分析に先立って、または分析後にサンプルと混合することができる。
【0383】
したがって、本明細書で説明されるいくつかの実施形態では、本開示のシステム/デバイス(例えば、粒子選別機)は、試薬の貯蔵および分析中の粒子との混合を可能にするために、その上に形成された1つ以上の領域を含むことができる。
図67は、いくつかの実施形態による、粒子選別機6700のブロック図を図示する。粒子選別機は、1つ以上の試薬を事前装填するための領域6730を含む。細胞サンプルポート6732(例えば、ポート5002に類似する)で受容される細胞サンプルとの事前装填試薬の混合を可能にする、混合器/混合領域6734も形成される。1つ以上の事前装填試薬は、細胞分析に好適であるいずれかであり得、免疫標識抗体、DNA/RNA標識(例えば、ヨウ化プロピジウム)、(例えば、アポトーシス、DNA周期、および/または同等物に対する)細胞状態マーカ、ナノ粒子(時期、蛍光等)、および/または同等物を含むことができるが、それらに限定されない。粒子・試薬混合物は、分析器6736および/または分析器/選別機6738を介して、
図67でも図示されるように、分析および/または選別することができる。いくつかの実施形態では、
図67でも示されるように、分析および/または選別された粒子は、領域6740で同様に粒子選別機上に形成された追加の事前装填試薬でさらに処理することができる。追加の試薬は、細胞分析に好適であるいずれかであり得、下流分子分析のための(例えば、DNA/RNA/タンパク質分析のための)細胞溶解緩衝剤、細胞保存のためのサンプル固定(例えば、パラホルムアルデヒド)溶液、撮像のような下流用途のための免疫標識抗体、成長培地(成長因子、サイトカイン、アミノ酸、および/または同等物)、および/または同等物を含むことができるが、それらに限定されない。
【0384】
チップ上に事前装填されたオンチップ試薬を有することにより、例えば、どのような抗体であるか、どれだけの抗体であるか、ピペット採取誤差、および/または同等物について心配する必要なく、プロセスを「ターンキー」にする。試薬は、事前装填し、検定または用途に応じて、分析に先立って、または分析後にサンプルと混合することができる。
【0385】
図68は、数ミリリットル(例えば、6mL)の血液(例えば、患者血液サンプルおよび/またはCTC添加血液対照サンプル)から始めて、細胞標識および血液からの細胞(例えば、環腫瘍細胞)の単離を行うためにオンチップ混合器を採用する、例示的な粒子選別システムを図示する。赤血球の溶解後、CTCおよびWBCの混合物から成るサンプルを、
図68に示されるように、統合マイクロ流体チップ6800内のシリンジポンプ6802に装填することができる。サンプルは、順番に事前濃縮マイクロ流体システム6804、抗体混合チャンバ6806、およびオンチップ細胞選別機6808を通過する。動作中、ポンプ6802が、WBCからCTCを分離するようにサンプルをらせんデバイス(または任意の好適な濃縮設計)に注入するとき、濃縮デバイスの出口からのCTCは、混合器の蛇行経路を通って進行する前に、抗体が事前装填されたチップ上のチャンバに進入する。ポンプ6802の注入速度およびポンプ6810の引き出し速度を協調させることによって、流量平衡を達成することができる。CTC−抗体結合後に、ポンプ6802を停止することができ、ポンプ6810がサンプルをmicroFACSセクションに注入することができる一方で、ポンプ6812は、シース流を提供する。この段階で、全ての抗体標識CTCを蛍光検出し、選別することができる。
【0386】
実施例4
色時空間(COST)サイトメータシステムのための色調補正
【0387】
色時空間(COST)サイトメータシステムのための色調補正
【0388】
色調補正は、フローサイトメータシステムが2種類以上のフルオロフォアによって蛍光標識される物体の正確な検出および表現を達成するために望ましい。それはまた、色調補正を正しく行うために、有意なユーザ経験およびサンプルの性質についての知識を必要とする、最も困難なタスクのうちの1つでもある。2つの蛍光色を伴う色調補正の単純な実施例では、それぞれの色フィルタ後の2つのPMTからの検出された信号を表すことができる。
【0389】
S
1=T
11I
1+T
12I
2(2−a)
【0390】
S
2=T
21I
1+T
22I
2(2−b)
【0391】
S
1およびS
2は、PMT1およびPMT2からの測定された信号である。I
1およびI
2は、我々がフルオロフォア1およびフルオロフォア2から検出したい真の強度である。2×2T行列のための要素は、各フルオロフォアから色フィルタ(またはダイクロイックミラー)の背後の2つのPMTへ発せられる光の透過を表す。2つのフルオロフォアの透過スペクトルが重複しない、理想的な場合において、非対角要素T
12およびT
21は、両方ともゼロになるべきである。しかしながら、フルオロフォアの比較的広い発光スペクトルにより、1つのフルオロフォアから多大な量の光が、隣接スペクトルでPMTに達し、T
12およびT
21の非ゼロ値を生じることができる。
【0392】
色調補正は、方程式(1)内の測定された信号Sから真の強度Iを求めるプロセスである。方程式(2)を解法し、以下を得る。
【0393】
【数2】
【0394】
【数3】
【0395】
Dは、T行列の行列式であり、T
11T
22−T
12T
21に等しい。実際には、雑音破損により、方程式(3)から真の信号を回収することは困難であり得る。これは、特に、一方の信号が他方の信号より有意に大きい規模を有し、最終的な色調補正された結果に大きな誤差を生じ得るときに当てはまる。
【0396】
COSTアルゴリズムは、従来のフローサイトメータとは根本的に異なる様式で色調補正問題を扱う。我々は、色調補正を行うために、各フルオロフォアによって生成される信号波形を利用する。
図69A−69Cは、COSTアルゴリズムの原理に従って設計された色フィルタからの2つの異なるフルオロフォアのシグネチャとしての波形を示す。信号における最初の2ピーク(
図69A−69B参照)は、COSTフィルタ内の全域通過(白色)窓を通る透過に起因し、全光強度についての情報をもたらし、これら2つのピークに続く残りの特徴は、COSTフィルタを通る光透過に対応する。
【0397】
単一のPMTからの測定された信号S(t)は、以下によって表すことができる。
【0398】
S(t)=I
1f
1(t)+I
2f
2(t)(4)
【0399】
I
1およびI
2は、色調補正プロセス後に我々が解明しようとする値である、フルオロフォア1およびフルオロフォア2によって発せられる光の強度である。f
1(t)およびf
2(t)は、
図69A−69Bで図示されるように、各フルオロフォアの正規化「シグネチャ波形」である。f
1(t)およびf
2(t)は、最初の2つのピークの高さが統一していると仮定され、全域通過(白色)窓にわたる100%光透過を表すという意味で、「正規化」される。下流細胞選別を補助するように細胞速度についての情報を提供する以外に、強度雑音の量を推定することに役立つために、2つのピークがここで使用される。
【0400】
測定された波形S(t)は、波形における2つのピークを示し、S(t)におけるピークの高さは、以下のように記述することができる。
【0401】
S
p=I
1+I
2(5)
【0402】
方程式(4、5)から、個別フルオロフォアの強度を求めることができる。
【0403】
【数4】
【0404】
【数5】
【0405】
ここで、2つの主要ピークの終了とCOST信号の終了との間の時間間隔である、τ<t<Tの間の持続時間への関心がある。τおよびTの値は、細胞の流速に依存する。
【0406】
従来のフローサイトメータおよびCOSTシステムのための色調補正プロセスが異なる数式(すなわち、方程式3および方程式6)を生じることに留意されたい。2つの色調補正方式の間には根本的かつ有意な差異が存在する。従来のフローサイトメータに対する方程式(2)における結果は、2つの数値I
1、I
2を得ることを示す。雑音が高いときに有意な懸念を引き起こし得る、色調補正結果の質または精度を測定する客観的方法がない。本方法はまた、色調補正の結果が妥当であるかどうかを決定するために、別個の較正実験およびユーザ判断も必要とする。
【0407】
方程式(6)で示されるようなCOSTシステムからの結果は、従来のフローサイトメータからの結果とは異なる特性を有する。フルオロフォアの「波形シグネチャ」f
1およびf
2ならびに測定された信号S(t)の両方が時間依存性であるため、方程式(6)における方程式の右側は、時間依存性であることに留意されたい。一方で、I
1およびI
2が、それぞれ、フルオロフォア1およびフルオロフォアによる透明窓(全域通過フィルタ)を通る光透過の規模を表すため、方程式(6)における方程式の左側は、理想的な場合において時間依存性であるはずである。実際には、雑音の効果により、I
1およびI
2の実際の値は、
図69Cで図示されるように、時間とともに若干の変動を示し得る。ここで、ΔIおよび
【数6】
が、方程式(6)におけるIの変動および平均値である、
【数7】
として定義される経時的な変動の程度は、色調補正された結果の定量的な客観的尺度を生じる。さらに、雑音の効果を最小限化し、いかなる特異性も回避することによって、フルオロフォアに対するIの最も確実な値を生成するように、種々の数学アルゴリズムを利用してもよい。例えば、フルオロフォアの特性により、方程式(5)におけるある持続時間からの結果は、他の持続時間からの結果より強い変動を示し得る。これらの持続時間において変動するI値を無視し、変動がある範囲内であるときのみ値を使用することが有益であり得る。
【0408】
要約すると、COSTアルゴリズムは、複数の蛍光色を検出するためのPMTおよび重要な光学構成要素の数を最小限化するだけでなく、色調補正の結果の精度および信頼性を増進することもできる。従来のフローサイトメータのようにフルオロフォアの強度の固定値を生じる代わりに、COSTシステムは、時間間隔にわたって変動を示すフルオロフォアの強度値を生成する。変動の程度は、結果の質および信頼性の定量的尺度を生じ、より正確な結果の変動を低減させるか、またはある結果を容認あるいは拒否する基準を開発し、したがって、全体的なシステム性能を向上させるために、デジタル信号処理アルゴリズムを採用することができる。
【0409】
ダイナミックレンジを増加させる方法
【0410】
COSTアルゴリズムが、複数の蛍光色を検出するために最小数の光電子倍増管(PMT)を使用するため、本技法は、従来のフローサイトメータとは異なる方法でダイナミックレンジ問題を扱う必要がある。
【0411】
従来のフローサイトメータでは、各蛍光色は、特定のPMTに指向され、PMTの増幅係数は、特定の波長における放射光の強度に従って設定される。従来のフローサイトメータでは、ダイナミックレンジの問題は、1つの細胞中の隣接フルオロフォアのスピルオーバー強度が、別の細胞の標的フルオロフォアの発光強度よりはるかに大きい状況で起こる。強いスピルオーバー効果は、PMTの最大利得設定を制限し得、本システムが弱い蛍光強度の細胞について最良の信号対雑音比を達成することを防止する。
【0412】
COSTシステムについては、複数のフルオロフォアを検出するために、単一のPMTが使用される。サンプルが、強い蛍光強度を生じる細胞および弱い蛍光強度を生じる細胞を含有する場合、PMTの増幅係数の設定は、PMTが飽和状態になることを防止するように、強い蛍光発光を生じる細胞によって制限されるであろう。結果として、弱い発光強度を伴う細胞の信号品質が損なわれるであろう。
【0413】
ダイナミックレンジ制限を克服する効果的な方法は、異なる透過係数を伴うタンデムCOSTフィルタを作成することである。
図70Aに示されるように、タンデムCOSTフィルタは、2組の光学フィルタから成る。第1組のフィルタは、(例えば)それぞれ、緑色、黄色、および赤色波長における透過ピークを伴う3つの広帯域色フィルタが後に続く、2つの全域通過フィルタとともに、5つのスリットを有することができる。第2のフィルタセットの絶対透過係数が、第1のフィルタセットより(例えば、30倍)低いことを除いて、第1組の5スリットフィルタのすぐ隣には、第1組のフィルタと同一の順序で配列される第2の5スリットフィルタがある。マイクロ流体チャネル中の移動細胞からの蛍光発光は、PMT検出器に到達する前に、並行してスリットフィルタ上に投影され、第2のフィルタセットの減衰により、信号の第1の半分が信号の第2の半分よりはるかに強い、10ピークCOST信号を生じる(
図70B参照)。PMT増幅は、試験中の細胞集団の間の最も弱い信号に適応するように高い値に設定される。強い発光強度を有する細胞については、PMT信号の第1の半分が、飽和状態になり、いかなる有用な情報も含有することができない。しかしながら、PMT信号の第2の半分は、COSTアルゴリズムが細胞の蛍光色および強度を検出するために、全ての必要な情報を含有する。一方で、弱い発光強度を有する細胞については、信号の第2の半分は、光学減数により、品質が不良であるが、信号の第1の半分は、適正なレベルのPMT増幅を伴って高い品質を有する。タンデムフィルタアーキテクチャから利益を得て、本システムは常に、細胞の信号強度にかかわらず、単一のPMT検出器を用いて高品質の信号を生じることができる。
【0414】
後置増幅器および16ビットA/D変換器に接続されたPMTについては、全出力スケールの1/40(すなわち、5Vの全出力範囲から125mV)である信号を区別することは容易である。第2のフィルタセットにおいて光透過を30倍減衰させることによって、1000以上のダイナミックレンジを達成することができる。そのような概念は、1000より高いダイナミックレンジがある用途に必要とされる場合に、さらに拡張することができる。ダイナミックレンジを変化させるためには、システムの他の調整を伴わずに、COSTフィルタを交換する必要しかない。
【0415】
そのようなタンデムフィルタセットの1つのトレードオフは、システムのスループットを制限し得る、信号の増加する持続時間である。この制限は、細いスリットおよび小型フィルタセットを生成することができる、微細加工または3D印刷プロセス等の改良型フィルタ加工プロセスを用いて軽減することができる。合計で10個のスリットを伴うタンデムCOSTフィルタについては、スリットの間に50μm間隔を伴う100μm幅のスリットを生成し、約1.5mmのフィルタ全長を生じるように、微細加工プロセスを適用することができる。50倍の拡大係数を伴う光学システムについては、マイクロ流体チャネル中の細胞が全信号を生じるための実際の進行距離は、30μm(すなわち、50で割った1.5mm)である。フローサイトメータにおける1m/秒の典型的な細胞速度については、本システムは、ほとんどの用途のための十分なスループットである、30,000細胞/秒より大きいスループットを得ることができる。
【0416】
増加するダイナミックレンジを伴うCOSTフィルタの実施形態
【0417】
以下では、微細加工技術を使用して、どのようにしてタンデムCOSTフィルタを実装することができるかを説明する。当然ながら、類似デバイスを生成するための3D印刷およびレーザ機械加工等の他の方法も存在する。
【0418】
図71A−71Gは、微細加工されたタンデムフィルタのプロセスフローを図示する。目的とするスペクトル範囲にわたって1.41〜1.46の屈折率を伴うガラス基板(
図71A)上に、窒化ケイ素(Si
3N
4)の層が堆積させられる(
図71B)。窒化ケイ素が同一のスペクトル範囲にわたって1.9〜2.1の屈折率を有するため、ガラス上の窒化ケイ素層は、光学干渉計として挙動する。干渉計は、以下の方程式、すなわち、
【数8】
が満たされる波長λ
Tで、その最大透過係数を有する。同様に、干渉計は、関係
【数9】
を満たすλ
Rで、最小透過(または最大反射)を有する。λ
Tおよびλ
Rの値は、COSTフィルタのユニットのスペクトル特性を定義し、窒化ケイ素層の厚さによって制御することができる。
【0419】
標準フォトリソグラフィプロセスを使用して、最大および最小透過係数に対する新しい一式の波長を定義するように、窒化ケイ素層の一部を選択的に除去することができる(すなわち、窒化物の厚さdを変化させる)(
図71C)。フォトリソグラフィおよび窒化ケイ素エッチングプロセスを数回繰り返した後、異なる透過特性を有する干渉計のアレイを得ることができる(
図71D)。全域通過フィルタを作製するために、光がガラス基板のみを通って透過するように、窒化ケイ素層が完全に除去される(
図71E)。
【0420】
所望のスペクトル特性を伴うアレイフィルタの加工に続いて、金属薄膜によって画定されるスリットを作成するように、別のフォトリソグラフィステップが行われる。フィルタの間の空間は、必要であれば、光の反射を最小限化するように陽極酸化することができる、アルミニウム金属膜によって覆われる(
図71F)。最終ステップとして、光学減衰層が、第2組のフィルタの領域を覆ってガラス基板の裏側に追加される(
図71G)。最も単純な方法は、用途が非常に低い電力にあり、加熱が懸念ではないため、吸収型減衰器を作成することである。代替として、回折型または反射型の減衰器を使用することができる。COSTタンデムフィルタの半分のサイズを覆う、減衰器領域の比較的大きいサイズにより、堆積のためのシャドウマスクを使用することができる。例えば、CrまたはNi等のスパッタリングされた反射性金属膜の薄い(例えば、30nm)層が、必要減衰を容易に提供することができる。微細加工プロセスが完了した後、各タンデムCOSTフィルタは、フローサイトメータで使用するために個々の断片に角切りにされる。6インチガラスウエハが、低費用の生産を支援するように、300個より多くのCOSTタンデムフィルタを生成することができる。6インチウエハにわたって5%変動を生じる微細加工プロセスについては、本デバイスは、良好な一様性および高い実行間再現性を有することが期待される。
【0421】
実施例5
選別後弁
【0422】
マイクロ流体選別システムは、典型的には、たとえ細胞が活発に選別されていなくても、選別チャネルから退出するシース流体の連続流を有する。これは、非常に希少な細胞集団を選別するときに課題を提示する。例えば、1mlサンプルが10個またはさらに100個の選別された細胞を含有する場合、希釈サンプルを生じ、例えば、96ウェルプレートの中に固定すること等の複数の下流用途のために修正可能ではないであろう。希少細胞用途の実施例は、とりわけ、循環腫瘍細胞または循環胎児あるいは循環胎盤細胞の単離を含む。
【0423】
この問題に対処する現在の方法は、遠心分離管の中に選別された体積を配置するステップ、サンプルを遠心分離するステップ、上清をピペット採取するステップ、および所望の体積中に再懸濁させるステップから成る。これは、追加の時間を要し、本プロセス中に希少細胞を失う可能性を増加させ、下流用途のための低い容認できない収率を潜在的にもたらす。
【0424】
したがって、本開示の側面は、選別チャネルから退出する連続シース流体による、選別された細胞の希釈を低減させるために、細胞選別事象がない期間中に連続シース流体を迂回させるように選別チャネルに形成された1つ以上の選別後弁を含むことができる。
【0425】
図72A、72Bは、本明細書で説明される粒子選別機(単数または複数)の側面とともに、どのようにして選別後弁7220を採用することができるかを図示する。
図72Aは、選別チャネル7210C(例えば、
図50の選別チャネル5010Cに類似する)中の選別された粒子(例えば、細胞)7028の対処されている問題を図示する。選別された粒子7210は、例えば、要素5014Cとして
図50の実施形態で開示されるように、センサ7214Cによる検出時にインピーダンス信号を生成することができる。選別チャネル7210Cからの連続シース流体収集により、粒子7228は、比較的大きい収集容積中で検出不可能であり得る。
図70Bは、選別チャネル7210Cに形成された選別後弁7220を図示する。選別後弁7220は、(例えば、センサ7214Cからのインピーダンス検出信号、または圧電アクチュエータ5006等の選別機構からの選別信号と関連付けられる)粒子検出事象/信号を受信するように動作可能であり得る。粒子検出信号が受信されない(すなわち、粒子が選別チャネル7210C中で検出されない)とき、選別後弁7220は、単純に、第1の出口7220Aを介してシース流体を除去することができる。粒子検出信号が受信されるとき、選別後弁7220は、第2の出口7220Bを介して選別された粒子7228を除去することができる。このようにして、選別された粒子7228と関連付けられる選別された体積が低減させられる。いくつかの実施形態では、そのような選別後弁を含む、粒子選別機は、選別された粒子の流速を推定するように動作可能であり、選別された粒子が選別後弁に到達することが期待されるときに選別後弁が第2の出口7220Bを開放する(および第1の出口7220Aを閉鎖する)ように動作する。いくつかの実施形態では、粒子速度の推定は、それが捕捉されていることを確実にするように、推定粒子位置の上流および下流の可変体積変位(例えば、+/−2μL)を補償する/可能にすることができる。
【0426】
選別後弁は、任意の種類の弁(オンチップ、オフチップ、機械、圧電、および/または同等物)であり得る。いくつかの実施形態では、粒子検出事象が希少であり得るとき、選別後弁は、迅速な切替のために動作可能である必要はない。
【0427】
実施例6
オンチップマーカを使用した整合
【0428】
本明細書で説明されるいくつかの実施形態では、敏感な検出および高純度選別が、光学構成要素(例えば、
図34、
図52A、および/または
図73で図示される光学構成要素)とマイクロ流体システムの調査領域(例えば、粒子選別機5000の1つ以上のチャネル)との間の正確かつ繰り返し可能な整合を所望する。いくつかの実施形態では、本明細書で開示される側面は、カスタム整合ソフトウェアに基づく半自動整合システム、撮像システム(例えば、顕微鏡)、および電動式XYZステージを用いて整合を達成する。電動式XYZステージと関連付けられ、圧電アクチュエータを介して駆動されるピコモータは、1分以内に高い精度(<5μm)を生じることができる。
【0429】
図73で最も良く図示されるように、1つ以上の整合マーカ7320を、粒子選別機(例えば、
図14−16の粒子選別機)上に形成することができる。整合マーカ7320の任意の好適なサイズ/形態(例えば、50μm辺の正方形)、光学特性(例えば、反射、蛍光、散乱、および/または同等物)を採用することができる。
【0430】
本明細書で開示される実施形態の種々の組み合わせは、本開示の範囲内であることが理解される。そのような組み合わせは、以下を含むことができるが、それらに限定されない。
【0431】
本明細書で開示される任意の粒子選別機(例えば、
図14、15、16A−16C、50、および/または同等物の粒子選別機)の任意の選別チャネル中の1つ以上の選別後弁(例えば、
図72B)の使用。
【0432】
本明細書で開示される粒子選別機(例えば、
図14、15、16A−16C、50、および/または同等物の粒子選別機)のうちのいずれかへの色調補正アプローチ(例えば、
図69−71)の適用。
【0433】
本明細書で開示される粒子選別機(例えば、
図14、15、16A−16C、50、および/または同等物の粒子選別機)のうちのいずれかへの粒子の選別の検証のための方法(例えば、
図57、61、64)の適用。
【0434】
(
図67、68で図示されるような)選別前混合器および(
図67で図示されるような)選別後混合器を含む、本明細書で開示される粒子選別機(例えば、
図14、15、16A−16C、50、および/または同等物の粒子選別機)のうちのいずれかを伴うオンチップ試薬および混合器(
図67、68)の使用。
【0435】
本明細書で説明されるいくつかの実施形態では、非一過性コンピュータ可読媒体(非一過性プロセッサ可読媒体とも称される)を伴うコンピュータ記憶製品は、種々のコンピュータ実装動作を行うための命令またはコンピュータコードをその上に有する。コンピュータ可読媒体(またはプロセッサ可読媒体)は、一過性伝搬信号(例えば、空間またはケーブル等の伝送媒体上で情報を搬送する伝搬電磁波)を含まないという意味で、非一過性である。媒体およびコンピュータコード(本明細書ではコードとも称される)は、1つまたは複数の特定の目的で設計および構築されるものであってもよい。非一過性コンピュータ可読媒体の実施例は、ハードディスク等の磁気記憶媒体、コンパクトディスク/デジタルビデオディスク(CD/DVD)、コンパクトディスク読取専用メモリ(CD−ROM)等の光学記憶媒体、光ディスク等の磁気光学記憶媒体、搬送波信号処理モジュール、ならびに特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブル論理デバイス(PLD)、読取専用メモリ(ROM)、およびランダムアクセスメモリ(RAM)デバイス等のプログラムコードを記憶して実行するように特別に構成されるハードウェアデバイスを含むが、それらに限定されない。
【0436】
コンピュータコードの実施例は、マイクロコードまたはマイクロ命令、コンパイラによって生成されるような機械命令、ウェブサービスを生成するために使用されるコード、およびインタープリタを使用してコンピュータによって実行される、より高レベルの命令を含有するファイルを含むが、それらに限定されない。例えば、実施形態は、Java(登録商標)、C++、あるいは他のプログラミング言語、および/または他の開発ツールを使用して実装されてもよい。
【0437】
本明細書で説明される種々の実施形態は、範囲および精神において本開示を限定すると解釈されるべきではない。それによって、本開示へのいかなる制限も意図されないことを理解されたい。さらに、本開示の精神および/または添付の請求項の範囲から逸脱することなく、当業者に提案され得る、種々の他の実施形態、修正、およびそれらの均等物に再選別が行われ得ることを理解されたい。
【0438】
当業者であれば、日常的にすぎない実験を使用して、本明細書で具体的に説明される具体的実施形態の多数の均等物を認識するか、または確認することができるであろう。そのような均等物は、以下の請求項の範囲に包含されることを目的としている。