(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような電動ステアリングロック装置101では、歯車132の回転を停止させるために、ロック解除位置にロック部材150が位置していることを検知する検知スイッチ(図示せず)が必要となる。
【0005】
検知スイッチをロック部材150に対して設置した場合、ロック部材150がロック解除位置に移動したところで、ロック部材150が検知スイッチをONにし、カム140の回転が停止する構成となる。このような構成におけるロック解除状態では、ロック部材150が、カム面141の傾斜面上に、付勢手段によって付勢された状態で保持されるため、何らかの理由で、カム140が施錠方向に回転するおそれがある。
【0006】
このような問題に対して、上記従来の電動ステアリングロック装置101では、圧電素子170を設置している。そして、ロック部材150がロック解除位置に位置した状態で、圧電素子170の突出部171をカム面141上に圧接させることで、摩擦力によってカム140の施錠側への回転を規制している。
【0007】
しかしながら、上述した従来の電動ステアリングロック装置101では、何らかの理由によって、圧電素子170が破損した場合には、圧電素子170がカム140を圧接できなくなってしまうため、問題が解決されてはいない。
【0008】
本発明は、上記事情を考慮し、ロック部材がロック解除位置に位置した状態で、別部品を設けることなく、解錠状態でのカムの施錠方向への回転を規制することができる電動ステアリングロック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明の第1のアスペクトは、フレーム内に正転、逆転可能に配置されたカムと、回転する該カムのカム面に追従しつつ、進出端となるロック位置と、後退端となるロック解除位置との間を進退自在に配置されたロック部材とを備え、前記カム面は、前記ロック部材をロック位置とロック解除位置の間を移動させる施解錠区間と、該ロック部材をロック解除位置に保持するロック解除位置区間と、を備えつつ、ロック解除位置区間におけるカムの回転角度に対するカムリフト量の変化割合が、施解錠区間におけるカムの回転角度に対するカムリフト量の変化割合よりも小さくなるように構成された電動ステアリングロック装置を提供する。
【0010】
前記ロック解除位置区間における前記変化割合が一定となるように、前記カム面を構成してもよい。
【0011】
前記フレーム、および前記ロック部材との間に該ロック部材が前記ロック解除位置に位置することを検知する位置検出手段を配置してもよい。
【0012】
前記カム面は、前記変化割合が、前記ロック解除位置区間における該変化割合よりも大きくなるように構成された解錠停止区間を備えつつ、前記施解錠区間、前記ロック解除位置区間、該解錠停止区間の順で配置するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1のアスペクトによれば、ロック解除位置区間におけるカムの回転角度に対するカムリフト量の変化割合が、施解錠区間における変化割合よりも、小さくなるようにカム面を設定することによって、ロック部材がロック解除位置に位置した状態で、カムが施錠方向に回転することがなくなる。これによって、別部品を設けることなく、カムの回転を規制することができる。
【0014】
ロック解除位置区間におけるカムの回転角度に対するカムリフト量の変化割合が一定となるように、カム面を構成した場合には、施解錠区間とロック解除位置区間とを滑らかに連続することができる。これによって、カム面を追従するロック部材が施解錠区間とロック解除位置区間とを変位する際に発生する打音を抑制することができる。
【0015】
ロック部材がロック解除位置に位置することを、位置検出手段が検知する構成とした場合には、ロック部材の位置を正確に把握できる。これによって、カムとロック部材との連係が外れてしまった場合であっても、施錠状態を解錠状態と誤判断することを防止することができる。
【0016】
カム面が、前記変化割合が、前記ロック解除位置区間における該変化割合よりも大きくなるように構成された解錠停止区間を備えつつ、前記施解錠区間、前記ロック解除位置区間、該解錠停止区間の順で配置するようにした場合には、解錠停止区間内で、カムの解錠方向の回転を停止することが可能となる。これによって、解錠状態において、ロック解除位置よりもフレーム内に引っ込んだ位置にロック部材を保持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態のステアリングロック装置は、電動ステアリングロック装置1として、自動車のステアリングシャフト80を収容するステアリングコラム装置(図示せず)に固定手段(図示せず)によって取付けられる。電動ステアリングロック装置1は、
図2〜
図9に示すように、フレーム10、フレームカバー20、駆動手段30、ロック部材50、制御基板60とで主に構成されている。
【0019】
フレーム10は、一面(
図4〜
図9などの上面)が開口する略箱形形状を有するケース部11と、ケース部11の底面11aに配設される筒状のガイド部12とを備えている。ガイド部12は、先端側がステアリングシャフト80に面して開口しつつ、収容室13に連通する角筒形状を備え、筒孔であるガイド孔14内にロック部材50が進退自在に収容されている。また、ガイド孔14の収容室側開口部には、後述するストッパ52fと係合するストッパ受部15が設定されている。
【0020】
フレームカバー20は、一面(
図4〜
図9などの下面)が開口する箱形状を備え、開口部の内縁に設けた係止受部21と、フレーム10のケース部11周縁に設けられた係止部11bとを係合することで、フレーム10に組付けられる。また、フレームカバー20は、ケース部11とともに、内部に収容空間としての収容室13を形成する。そして、収容室13には、ロック部材50を駆動する駆動手段30と、駆動手段30の動作を制御する制御基板60とが収容されている。
【0021】
駆動手段30は、駆動源である電動モータ31と、電動モータ31の出力軸に配置されるウォームギヤ(図示せず)と、ウォームギヤと噛合可能な歯車に形成された円盤状のウォームホイール32とで構成される。そして、電動モータ31が正転することで、ウォームギヤがウォームホイール32を解錠方向に回動し、電動モータ31が逆転することで、ウォームギヤがウォームホイール32を施錠方向に回動する。駆動手段30は、ウォームギヤがウォームホイール32に噛合した状態で、モータケース33に収容されてユニット化され、モータケース33ごと収容室13に配置される。
【0022】
ウォームホイール32は、その一方の盤面にカム40を備えている。カム40は、螺旋状のカム溝42と、外周面43とで構成され、カム溝42の内側側壁42aと、外周面43とがカム面41に設定されている。
【0023】
カム面41は、
図10の実線に示すように、施錠側空走区間41a、施解錠区間41b、ロック解除位置区間41c、解錠停止区間41d、および解錠側空走区間41eで構成され、各区間がこの順番で連続している。なお、カムリフト量は、回転中心Oからカム面41までの寸法で、本実施形態では、施錠側空走区間41aで最も小さく、解錠側空走区間41eで最も大きくなるように設定されている。また、カム面41の各区間におけるカム40の回転角度に対するカムリフト量の変化割合は、施錠側空走区間41aのカムリフト量を基準として、大小を判断する。
【0024】
施錠側空走区間41aは、連係するロック部材50のロック位置に対応しており、カム溝42における螺旋形状の中心部分に位置し、カムリフト量が一定(ロック部材50の移動量ゼロ)に設定されている。つまり、施錠側空走区間41aにおける、カム40の回転角度に対するカムリフト量の変化割合はゼロに設定されている。
【0025】
施解錠区間41bは、連係するロック部材50がロック位置とロック解除位置との間で移動する経路に対応している。つまり、施解錠区間41bの一側が施錠側空走区間41aに、他側がロック解除位置区間41cにそれぞれ連続するとともに、施錠側空走区間41aからロック解除位置区間41cに向かうに従って、カムリフト量が大きくなるように設定されている。また、施解錠区間41bにおけるカム40の回転角度に対するカムリフト量の変化割合は、施解錠区間41bのロック位置側とロック解除位置側では異なるように設定されている。施解錠区間41bにおけるロック位置側の変化割合は、解錠操作時に、ロック本体51の先端の係合部51aが係合溝81に係合した状態から後退するため、引抜きトルクが大きくなるように、変化割合が比較的小さく設定されている。施解錠区間41bにおけるロック解除位置側の変化割合は、ロック本体51の係合部51aが係合溝81から離間していることから、解錠操作時に、速やかに後退するように、変化割合がロック位置側よりも大きく設定されている。
【0026】
ロック解除位置区間41cは、連係するロック部材50のロック解除位置に対応しており、カムリフト量が一定(ロック部材50の移動量ゼロ、カムリフト量の変化割合がゼロ)に設定されている。なお、ロック解除位置区間41cにおけるカム40の回転角に対するカムリフト量の変化割合は、ゼロである必要はなく、少なくとも施解錠区間41bにおける変化割合よりも、小さくなるように設定されていればよい。
【0027】
解錠停止区間41dは、連係するロック部材50(ハンガー52)が後述する解錠検知スイッチ62をONにするための区間で、ロック解除位置区間41cに連続している。解錠停止区間41d内のカムリフト量の変化量は、後述する解錠検知スイッチ62をONするために必要十分な操作ストローク、操作ストロークのばらつき、組付位置のばらつき等を考慮しつつ、解錠検知スイッチ62を破損しない寸法に設定されている。また、解錠停止区間41dの変化割合は、解錠検知スイッチ62を操作するために必要なトルクが発生するように設定されている。
【0028】
解錠側空走区間41eは、ロック解除位置区間41cに連続して、カム40の外周面43に形成され、カムリフト量一定に設定されている。
【0029】
ロック部材50は、
図5,6,8,9に示すように、進出側端部となる前端がステアリングシャフト80の外周面に設けられた係合溝81に係合するロック本体51と、ロック本体51の後退側端部となる後端側に係脱可能に連係するハンガー52と、ロック本体51を後退端側から進出端側へ付勢するロック付勢部材53とで構成されている。そして、ロック部材50を構成するロック本体51とハンガー52は、連係した状態で、ガイド部12のガイド孔14内に進退自在に配置される。つまり、ロック本体51とハンガー52との連係部分50aは、ロック本体51の後端に設けられる本体側連係部51b、およびハンガー52の前端に設けられるハンガー側連係部52bで構成されている。これにより、ロック部材50は、駆動手段30によって進出端となるロック位置と、後退端となるロック解除位置との間を自在に変位する。なお、ロック位置では、ロック本体51の前端がガイド部12から突出して係合溝81に係合し、ステアリングシャフト80の回動を制限する。また、ロック解除位置では、ロック本体51の前端がガイド部12内に後退して係合溝81から離間し、ステアリングシャフト80の回動が可能となる。
【0030】
ロック本体51は、板状の硬質な部材からなり、前端が係合溝81に係合する係合部51aに設定され、後端がハンガー52と連係する本体側連係部51bに設定されている。本体側連係部51bは、スライド方向に延設される本体側首部51cと、本体側首部51cの後端からスライド方向に対して直交しつつ、突出する本体側連係突部51dとで、L字形状に形成されている。
【0031】
ハンガー52は、ロック本体51よりも耐荷重の低い部材で構成されている。ハンガー52は、ハンガー側連係部52b、追従突起52e、ストッパ52f、およびスイッチ腕部52gを備えている。
【0032】
ハンガー側連係部52bは、ハンガー52の前端に配置されており、ハンガー側首部52cとハンガー側連係突部52dとによって、L字状の突起に形成されている。
【0033】
ハンガー側首部52cは、ハンガー52の他の一般部よりも細く、且つロック部材50のスライド方向に延設されている。
【0034】
ハンガー側連係突部52dは、ハンガー側首部52cの前端からスライド方向に対して直交しつつ、突設されている。
【0035】
追従突起52eは、ハンガー52の後端に位置し、ウォームホイール32に向かって突設されている。追従突起52eは、ロック部材50をガイド孔14内に組付け、ウォームホイール32を収容室13に設置した状態で、カム溝42内に配置される。そして、ウォームホイール32が正転、または逆転すると、追従突起52eは、ロック付勢部材53の付勢力を受けて、カム面41に当接しつつ、追従する。
【0036】
ストッパ52fは、ハンガー52の後端側、且つ追従突起52eが配置された面の裏面側に突設されている。ストッパ52fは、ハンガー52とともにスライドする。また、ストッパ52fは、ロック位置で、ストッパ受部15に施錠方向に対して係合するように形成されている。
【0037】
スイッチ腕部52gは、
図11〜
図15に示すように、ハンガー52の後端部に、ハンガー52のスライド方向に対して直交しつつ、ウォームホイール32の回転面に沿って延設される四角柱状の片持ち梁からなる。スイッチ腕部52gは、ロック部材50がロック解除位置からロック位置へ移動した際に、後述する施錠検知スイッチ61の操作部61aに当接し、後述する施錠検知スイッチ61をONにする。
【0038】
ロック付勢部材53は、巻バネからなり、ガイド孔14の後退端壁14aと、本体側連係部51bの背面側の後退端51eとの間に、圧縮された状態で配置される。そして、ロック付勢部材53の圧縮反力によって、ハンガー52とロック本体51は、互いに離間する方向に付勢されつつ、連係した状態が保持される。また、このような連係構造によって、ロック部材50は伸縮可能となっている。
【0039】
制御基板60は、電力を外部から電動モータ31に供給し、正転、逆転、停止の制御を行なっている。また、制御基板60には、施錠検知スイッチ61と解錠検知スイッチ62とが配置されている。これら施錠検知スイッチ61と解錠検知スイッチ62とは、操作部分が押されている間だけONになるモーメンタリスイッチで構成されている。
【0040】
施錠検知スイッチ61は、ロック部材50がロック解除位置からロック位置へ移動したことを検知するスイッチである。また、施錠検知スイッチ61は、ロック部材50(ハンガー52)のスライド方向に沿って、ストッパ受部15近傍の制御基板60上に配置されている。
【0041】
解錠検知スイッチ(位置検出手段)62は、ロック部材50(ハンガー52)がロック位置からロック解除位置へ移動したことを検知するスイッチである。また、解錠検知スイッチ62は、ロック部材50(ハンガー52)のスライド方向に沿って、後退端側の延長線上の制御基板60上に配置されている。
【0042】
次に、上記構成において、電動ステアリングロック装置1の動作を説明する。まず、
図4〜
図6に示されるように、ロック部材50がロック位置に保持された電動ステアリングロック装置1では、ロック本体51がガイド部12から突出している。これによって、ロック本体51の係合部51aがステアリングシャフト80の係合溝81に係合し、ステアリングシャフト80の回動を規制する。
【0043】
そして、施錠状態の電動ステアリングロック装置1に、車体側から解錠信号が入力されると、制御基板60は電動モータ31が正転するように電力を供給する。電動モータ31が正転すると、ウォームギヤを介してウォームホイール32が解錠方向(
図11における時計回り)に回動する。ウォームホイール32が解錠方向に回動すると、
図11〜
図15に示すように、ロック付勢部材53の付勢力に抗いつつ、追従突起52eがカム面41上を施解錠区間41b、ロック解除位置区間41c、解錠停止区間41dの順に追従する。これによって、ロック部材50がロック位置からロック解除位置へ移動する。
【0044】
また、追従突起52eが解錠停止区間41dに差掛かると、ハンガー52の後退端52hが解錠検知スイッチ62の操作部62aに当接し、解錠検知スイッチ62がONになる。そして、解錠検知スイッチ62のON信号が制御基板60に入力されて、制御基板60から電動モータ31への電力が止まり、電動モータ31が停止する。これによって、ロック部材50は、ロック解除位置に保持される。
【0045】
なお、解錠操作時に、何らかの理由で、施解錠区間41bで解錠検知スイッチ62がONにならず、追従突起52eが解錠側空走区間41e上を追従することが考えられる。このような場合、電動モータ31の作動時間が設定された時間よりも長くなるため、制御基板60が異常と判断し、解錠側空走区間41e内で、制御基板60が電動モータ31を強制的に停止する。
【0046】
また、解錠操作時に、ロック本体51が係合溝81に噛込んでしまい、ロック解除位置に移動できない場合が考えられる。このような場合も、電動モータ31の作動時間が設定された時間よりも長くなるため、制御基板60が異常と判断し、制御基板60が電動モータ31を強制的に停止する。
【0047】
解錠状態の電動ステアリングロック装置1では、
図7〜
図9に示されるように、ロック本体51がガイド孔14内部に引込まれたロック解除位置に位置している。このため、ロック本体51の係合部51aとステアリングシャフト80の係合溝81との係合が解除され、ステアリングシャフト80の回動が可能となっている。なお、追従突起52eは、カム面41の解錠停止区間41d上に位置している。つまり、ロック部材50は、ロック解除位置よりもさらに後退した位置に保持されている。
【0048】
ところで、解錠停止区間41dは、そのカムリフト量がロック解除位置区間41cに向かって小さくなるように設定されている。このため、何らかの理由によって、ウォームホイール32とウォームギヤとの噛合が外れた場合には、ロック付勢部材53の付勢力によってウォームホイール32が施錠方向に回転し、追従突起52eがロック解除位置区間41cに移動することが考えられる。
【0049】
しかしながら、追従突起52eは、解錠停止区間41dからロック解除位置区間41cに移動したとしても、ロック解除位置区間41cにおけるカムリフト量の変化割合がゼロのため、施解錠区間41bまで移動することはない。つまり、何らかの理由によって、ウォームホイール32とウォームギヤとの噛合が外れたとしても、ロック付勢部材53の付勢力によって、ロック部材50がロック解除位置よりもロック位置側へ進出することはない構成となっている。
【0050】
次に、解錠状態の電動ステアリングロック装置1に、制御基板60を介して車体側から施錠信号が入力されると、制御基板60は電動モータ31が逆転するように電力を供給する。そして、電動モータ31が逆転すると、ウォームギヤを介してウォームホイール32が施錠方向(
図11における反時計回り)に回動する。ウォームホイール32が施錠方向に回動すると、ロック付勢部材53の付勢力によって、追従突起52eがカム面41上の解錠停止区間41d、ロック解除位置区間41c、施解錠区間41bの順に追従し、ロック部材50がロック解除位置からロック位置へ移動する。
【0051】
追従突起52eが施解錠区間41b上を追従している途中で、ロック部材50がロック位置に到達すると、スイッチ腕部52gが施錠検知スイッチ61の操作部61aに当接し、施錠検知スイッチ61がONになる。そして、施錠検知スイッチ61のON信号が制御基板60に入力されて、制御基板60から電動モータ31への電力が止まり、電動モータ31が停止する。そして、ロック部材50は、ロック位置に保持される。
図4〜
図6に示されるように、ロック部材50がロック位置に保持された電動ステアリングロック装置1では、ロック本体51の係合部51aがステアリングシャフト80の係合溝81に係合し、ステアリングシャフト80の回動を規制する。
【0052】
なお、ロック位置に移動する際に、ロック本体51の係合部51aが、ステアリングシャフト80の係合溝81を構成する突起部82に乗上げた場合には、ロック付勢部材53が圧縮されて縮み、ロック本体51が突起部82に乗上げたままの状態で、ハンガー52はロック位置へ移動する。そして、ステアリングシャフト80が回動し、突起部82がロック本体51の係合部51aからずれると、ロック付勢部材53の付勢力によって、係合部51aが係合溝81に係合し、ステアリングシャフト80の回動を制限する。
【0053】
また、施錠検知スイッチ61の操作ストロークのばらつき、および組付位置のばらつきによって、施錠検知スイッチ61がONになる前にロック本体51が係合溝81に係合するおそれがある。このような場合も、ロック本体51が係合溝81の底部に押付けられて、ロック付勢部材53が圧縮されて縮みつつ、ハンガー52のみが進出するため、不都合が生じることはない。
【0054】
また、何らかの理由で、施解錠区間41bで施錠検知スイッチ61がONにならず、追従突起52eが施錠側空走区間41a上を追従することが考えられる。このような場合には、電動モータ31の作動時間が設定された時間よりも長くなるため、制御基板60が異常と判断し、施錠側空走区間41a内で、制御基板60が電動モータ31を強制的に停止する。さらに、ロック部材50は、ストッパ52fがストッパ受部15に当接し、ロック部材50がロック位置よりも先へ進出することを規制する。
【0055】
以上の構成により、本実施形態では、ロック解除位置区間41cにおけるカムリフト量を一定とし、ロック解除位置区間41cにおけるカム40の回転角度に対するカムリフト量の変化割合が、施解錠区間41bにおける変化割合よりも小さくなるようにカム面41を設定することによって、ロック部材50がロック解除位置に位置した状態で、カム40が施錠方向に回転することがなくなる。これによって、別部品を設けることなく、カム40の回転を規制することができる。
【0056】
また、ロック解除位置区間41cにおけるカムリフト量が一定となるように、カム面41を構成することによって、施解錠区間41bとロック解除位置区間41cとを滑らかに連続することができる。これによって、カム面41を追従するロック部材50が施解錠区間41bとロック解除位置区間41cとの間で変位する際に打音の発生を抑制することができる。
【0057】
ロック部材50がロック解除位置に位置することを、解錠検知スイッチ(位置検出手段)62が検知する構成としたことによって、ロック部材50の位置を正確に把握できる。これによって、カム40とロック部材50との連係が外れてしまった場合であっても、施錠状態を解錠状態と誤判断することを防止することができる。
【0058】
解錠停止区間41dの変化割合が、ロック解除位置区間41cにおける変化割合よりも大きくなるように構成されつつ、施解錠区間41b、ロック解除位置区間41c、解錠停止区間41dの順で配置されたことによって、ロック部材50がロック解除位置よりも後退した位置で、カム40の解錠方向の回転を停止することができる。これによって、解錠状態において、フレーム10内のロック解除位置よりも後退した位置にロック部材50を保持することができる。
【0059】
なお、本実施形態では、
図10の実線に示すように、ロック解除位置区間41cにおけるカムリフト量が一定となるように、カム面41が構成されているが、
図10の破線に示すように、カムの回転角度が大きくなるに従って、ロック解除位置区間41c′におけるカムリフト量が小さくなるようにカム面41を構成しても良い。このような構成とした場合には、何らかの理由によって、ウォームホイール32の施錠方向への回動が自在となり、ロック付勢部材53の付勢力によってウォームホイール32が回転して、追従突起52eが解錠停止区間41dからロック解除位置区間41cに移動した際に、さらに、追従突起52eがロック解除位置区間41cから施解錠区間41bへ移動するには、カム40がロック付勢部材53の付勢力に抗いつつ、施錠方向に回動しなければならない。このような回動は、動力がなければ不可能なため、本実施形態よりもさらにロック部材50がロック位置へ不用意に移動するおそれがなくなり、本実施形態よりもさらに安全性を高めることができる。
【0060】
また、このような構成では、追従突起52eが施解錠区間41bからロック解除位置区間41cに移動する際に、両区間の境界部分で追従突起52eがカム面41上を追従しきれずに、跳ねてしまい、打音が発生する場合が生じる。そこで、操作者に聞こえるように打音を発生させることで、解錠操作によって電動ステアリングロック装置1が解錠されたことを操作者に報知する構成としても良い。
【0061】
さらに、本実施形態では、解錠検知スイッチ(位置検出手段)として、モーメンタリスイッチを用いているが、これに限らず様々なセンサを用いた構成とすることが可能で、同様の作用効果を得ることができる。