(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
フレームを構成するガイド部内に形成されるガイド孔内に収容されるステアリングロック解除位置と、該ガイド部からその先端が突出するステアリングロック位置との間を変位可能に配置され、且つ係脱可能に連係されたハンガーとロック本体とを有するロック部材と、
該ガイド部と該ロック本体のいずれか一方に配置された補助ロック受部と、
該ガイド部と該ロック本体の他方に、該補助ロック受部に向かって付勢配置され、且つ該補助ロック受部と係合する補助ロック位置と、該補助ロック受部と係合しない補助ロック待機位置の間を変位可能に配置された補助ロック部材と、
該補助ロック部材と係合して、該補助ロック部材を補助ロック待機位置に保持する保持部材とを具備し、
該保持部材と該補助ロック部材との係合が解除された際に、該補助ロック部材が該補助ロック位置へ移動して、該ロック部材に係合し、ステアリングロック解除位置に位置する該ロック部材の変位を規制する補助ロック機構と、
を備え、
前記ガイド部におけるステアリングロック解除位置に位置する前記ロック部材の前記ハンガーと前記ロック本体との連係部分と重なる部位に、前記フレームの他の部位よりも耐荷重が低く設定された脆弱部を備え、
前記ガイド部に形成され、且つ前記保持部材が配設される保持孔について、脆弱部側の外部からの荷重が入力する所定の方向に沿った寸法が、前記補助ロック部材側の寸法よりも大きく設定され、外力が前記フレームに加わった際に、前記保持部材が前記保持孔内で傾いて、前記保持部材と前記補助ロック部材との係合を解除するステアリングロック装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来のステアリングロック装置101では、破断構造170が破断してから、補助ロック機構160が機能するまでに時間差が生じて、補助ロック部材161がロック本体151に係合する前に、ロック本体151が施錠位置側へ移動してしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、上記事情を考慮し、フレームが分離した際に、補助ロック構造が確実に機能するステアリングロック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1のアスペクトは、フレームを構成するガイド部内に形成されるガイド孔内に収容されるステアリングロック解除位置と、該ガイド部からその先端が突出するステアリングロック位置との間を変位可能に配置され、且つ係脱可能に連係されたハンガーとロック本体とを有するロック部材と、該ガイド部と該ロック本体のいずれか一方に配置された補助ロック受部と、該ガイド部と該ロック本体の他方に、該補助ロック受部に向かって付勢配置され、且つ該補助ロック受部と係合する補助ロック位置と、該補助ロック受部と係合しない補助ロック待機位置の間を変位可能に配置された補助ロック部材と、該補助ロック部材と係合して、該補助ロック部材を補助ロック待機位置に保持する保持部材とを具備し、該保持部材と該補助ロック部材との係合が解除された際に、該補助ロック部材が該補助ロック位置へ移動して、該ロック部材に係合し、ステアリングロック解除位置に位置する該ロック部材の変位を規制する補助ロック機構とを備え、前記ガイド部におけるステアリングロック解除位置に位置する前記ロック部材の前記ハンガーと前記ロック本体との連係部分と重なる部位に、前記フレームの他の部位よりも耐荷重が低く設定された脆弱部を備えたステアリングロック装置を提供する。
【0007】
前記ガイド部に形成され、且つ前記保持部材が配設される保持孔について、脆弱部側の外部からの荷重が入力する所定の方向に沿った寸法を、前記補助ロック部材側の寸法よりも大きく設定してもよい。
【0008】
前記ハンガーと前記ロック本体との連係部分において、前記ハンガーに設けられたハンガー側連係部が、所定の荷重入力方向に対して、奥側から手前側に向かって突出するL字状突起からなり、該連係部分では、該ハンガー側連係部と、該ロック本体に設けられた本体側連係部とが該ロック部材の長手方向に係合することで、該ハンガーと該ロック本体とが連係するようにしてもよい。
【0009】
前記ガイド孔の前記脆弱部に重なる部位が、外部からの荷重が入力する所定の方向に対して奥側に膨出されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1のアスペクトによれば、ハンガーとロック本体との係合を解除する動作は、ハンガーが破断する動作と比較して、分離する際の荷重を小さくすることができる。これによって、ガイド部とハンガーを破断する構成と比較して、確実に補助ロック機構を機能させることができる。
【0011】
また、ステアリングロック解除位置に位置するロック部材の連係部分と重なるガイド部の部位に、脆弱部が配置されることによって、分離後の脆弱部から連係部分が露出する。つまり、脆弱部が分離する際に、連係部分の周囲に空間が形成されるため、連係部分に遊びが生じて、脆弱部が分離するタイミングよりも、連係部分の連係が外れるタイミングを遅らせることができる。これによって、補助ロック機構の補助ロック部材が補助ロック位置へ移動するまでの時間的な猶予が生じるため、確実に補助ロック機構を作用させることができる。
【0012】
脆弱部側の外部からの荷重が入力する所定の方向に沿った寸法が、補助ロック部材側よりも大きく設定した場合には、所定の荷重入力方向に沿って外力がフレームに加わった際に、保持部材が保持孔内で倒れる。これによって、保持部材と補助ロック部材との係合を解除することができるため、補助ロック機構が機能するまでの時間を短くすることができ、補助ロック機構を確実に作用させることができる。
【0013】
ハンガー側連係部が所定の荷重入力方向に対して、奥側から手前側に突出する突起からなるようにした場合には、フレームが分離する際に、ハンガー側連係部から本体側連係部へ、ロック本体の先端側から基端側に向かう力が加わる。これによって、フレームが分離してから、連係部分の連係が外れるまでに遅れが生じる。これによって、補助ロック機構の補助ロック部材が補助ロック位置へ移動するまでの時間的な猶予が生じるため、確実に補助ロック機構を機能させることができる。
【0014】
ステアリングロック解除位置に位置するロック部材の連係部分と重なるガイド孔の部位に、離脱領域を設ける場合には、連係部分の周囲により大きな空間が形成される。これによって、連係部分に生じる遊びによって、脆弱部が分離するタイミングよりも、連係部分の連係が外れるタイミングをさらに遅らせることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態のステアリングロック装置は、電動ステアリングロック装置1として、自動車のステアリングシャフト80を収容するステアリングコラム装置(図示せず)に固定手段(図示せず)によって取付けられる。電動ステアリングロック装置1は、
図2〜
図11に示すように、フレーム10、フレームカバー20、駆動手段30、制御基板40、ロック部材50、補助ロック機構60とで主に構成されている。
【0017】
なお、電動ステアリングロック装置1が組付けられた車両が、衝突事故等を起こした際に、事故等の衝撃によって、車載物が、電動ステアリングロック装置1に激しい勢いでぶつかるおそれがある。このような場合、電動ステアリングロック装置1に対して、外力が車両の下方から上方に向かって作用する。そこで、所定の荷重入力方向として、このような外力の入力方向をXとする。
【0018】
フレーム10は、一面(
図4〜
図11などの上面)が開口する略箱形形状を有するケース部11と、ケース部11の底面11aに配設される筒状のガイド部12とを備えている。また、ケース部11は、フレームカバー20とともに、内部に収容空間としての収容室13を形成する。ケース部11とガイド部12は、耐荷重が他よりも低く設定された脆弱部としての係合構造15によって結合されている。そして、ケース部11に、設定値以上の荷重が掛かると、係合構造15が外れ、ケース部11とガイド部12が分離する。
【0019】
ガイド部12は、先端側がステアリングシャフト80に面して開口しつつ、収容室13に連通する角筒形状を備え、筒孔であるガイド孔14内にロック部材50が進退自在に収容されている。
【0020】
ガイド孔14は、ガイド部12を貫通する孔であり、ロック本体領域14a、ハンガー領域14b、および離脱領域14cの3つの領域で構成されている。
【0021】
ロック本体領域14aは、後述するロック本体51が、ステアリングロック位置とステアリングロック解除位置との間を移動する範囲に設定されており、ガイド部12の前端側に設定され、ステアリングシャフト80に面して開口している。ロック本体領域14aにおけるガイド孔14の孔形状は、ロック本体51がガタ付くことなく、スライド可能となるように形成されている。また、ロック本体領域14aの内壁面には、補助ロック機構60が収容される補助ロック穴16が、ガイド孔14に直交するように設けられ、開口している。
【0022】
ハンガー領域14bは、後述するハンガー52が、ステアリングロック位置とステアリングロック解除位置との間を移動する範囲に設定されており、ロック本体領域14aの後端側に連通し、且つ収容室13に開口している。ハンガー領域14bにおけるガイド孔14の孔形状は、ハンガー52がガタ付くことなく、スライド可能となるように形成されている。また、ハンガー領域14bの収容室側開口部には、後述するストッパ52fと係合するストッパ受部18が設定されている。
【0023】
離脱領域14cは、ガイド孔14におけるステアリングロック解除位置に位置するロック部材50の連係部分50aと重なる部位に、外部からの荷重入力方向Xに対して奥側(
図17における連係部分50aの左側)に膨出されている。
【0024】
係合構造15は、係合凹部15aと係合突部15bとで構成され、ステアリングロック解除位置に位置するロック部材50のロック本体51とハンガー52との連係部分50aと重なる部位に設定されている。また、係合構造15は、脆弱部として、その耐荷重が、フレーム10の他の部位よりも低く設定されている。係合凹部15aは、ガイド部12後端(
図4におけるガイド部12の上端部)の外側面に、ガイド孔14の長手方向に直交する溝状の凹部で構成されている。係合突部15bは、ケース部11前端に、係合凹部15aと係合可能なレール状の突部で構成されている。係合凹部15aと係合突部15bが係合することで、ケース部11とガイド部12が一体に構成されている。
【0025】
フレームカバー20は、一面(
図4〜
図11などの下面)が開口する箱形状を備え、開口部の内縁に設けた係止受部21と、フレーム10のケース部11周縁に設けられた係止部11bとを係合することで、フレーム10に組付けられる。
【0026】
収容室13には、ロック部材50を駆動する駆動手段30と、駆動手段30の動作を制御する制御基板40とが収容されている。
【0027】
駆動手段30は、駆動源である電動モータ31と、電動モータ31の出力軸に配置されるウォームギヤ(図示せず)と、ウォームギヤと噛合可能な歯車に形成された円盤状のウォームホイール32とで構成される。ウォームホイール32は、その盤面に螺旋状のカム溝33を備えており、ウォームホイール32の外周面32aと、カム溝33の内側側壁とがカム面35に設定されている。そして、電動モータ31が正転することで、ウォームギヤがウォームホイール32を解錠方向に回動し、電動モータ31が逆転することで、ウォームギヤがウォームホイール32を施錠方向に回動する。駆動手段30は、ウォームギヤがウォームホイール32に噛合した状態で、モータケース34に収容されてユニット化され、モータケース34ごと収容室13に配置される。
【0028】
制御基板40は、電力を外部から電動モータ31に供給し、正転、逆転、停止の制御を行なっている。
【0029】
ロック部材50は、進出側端部となる前端がステアリングシャフト80の外周面に設けられた係合溝81に係合するロック本体51と、ロック本体51の後退側端部となる後端側に係脱可能に連係するハンガー52とで構成されている。また、ロック付勢部材53によって、ロック本体51が前端側に向けて付勢されている。そして、ロック部材50を構成するロック本体51とハンガー52は、ロック部材50の長手方向に係合することで連係した状態で、ガイド部12のガイド孔14内にスライド自在に配置される。つまり、ロック本体51とハンガー52との連係部分50aは、ロック本体51の後端に設けられる本体側連係部51bと、ハンガー52の前端に設けられるハンガー側連係部52bとで構成されている。これにより、ロック部材50は、駆動手段30によって進出端となるステアリングロック位置と、後退端となるステアリングロック解除位置との間を自在に変位する。なお、ステアリングロック位置では、ロック本体51の前端がガイド部12から突出して係合溝81に係合し、ステアリングシャフト80の回動を制限する。また、ステアリングロック解除位置では、ロック本体51の前端がガイド部12内に後退して係合溝81から離間し、ステアリングシャフト80の回動が可能となる。
【0030】
ロック本体51は、板状の硬質な部材からなり、前端が係合溝81に係合する係合部51aに設定され、後端がハンガー52と連係する本体側連係部51bに設定されている。本体側連係部51bは、スライド方向に延設される本体側首部51cと、本体側首部51cの後端からスライド方向に対して直交しつつ、突出する本体側連係突部51dとで、L字形状に形成されている。
【0031】
ハンガー52は、ロック本体51よりも耐荷重の低い部材で構成されている。ハンガー52は、ハンガー側連係部52b、追従突起52e、およびストッパ52fを備えている。ハンガー側連係部52bは、ハンガー52の前端に配置されており、ハンガー側首部52cとハンガー側連係突部52dとによって、L字状の突起に形成されている。ハンガー側首部52cは、ハンガー52の他の一般部よりも細く、且つロック部材50のスライド方向に延設されている。ハンガー側連係突部52dは、ハンガー側首部52cの前端からスライド方向に対して直交しつつ、所定の荷重入力方向Xに対して、奥側から手前側(
図17の左側から右側)に向かって突設されている。
【0032】
追従突起52eは、ハンガー52の後端に位置し、ウォームホイール32に向かって突設されている。追従突起52eは、ロック部材50をガイド孔14内に組付け、ウォームホイール32を収容室13に設置した状態で、カム溝33内に配置される。そして、ウォームホイール32が正転、または逆転すると、追従突起52eは、ロック付勢部材53の付勢力を受けて、カム面35に当接しつつ、追従する。
【0033】
ストッパ52fは、ハンガー52の後端に位置し、追従突起52eが配置された面の裏面側に突設されている。ストッパ52fは、ハンガー52とともにスライドする。また、ストッパ52fは、ステアリングロック位置で、ストッパ受部18に施錠方向に対して係合するように形成されている。
【0034】
ロック付勢部材53は、巻バネからなり、圧縮された状態で、ロック本体領域14aの後退端側に配置される。そして、巻バネの圧縮反力によって、ロック本体51を後端側から前端側に向かって付勢する。
【0035】
補助ロック機構60は、補助ロック部材61、補助ロック付勢部材62、保持機構63、および補助ロック受部64で構成されている。
【0036】
補助ロック部材61は、補助ロック穴16内に位置する補助ロック待機位置と、補助ロック穴16から突出して、補助ロック受部64と係合し、ハンガー52の変位を阻止する補助ロック位置との間をスライド可能に、補助ロック穴16内に配置されている。補助ロック部材61は、スライドする方向に長い長方形の板状部材で形成されている。
【0037】
補助ロック付勢部材62は、巻バネからなり、圧縮された状態で、補助ロック部材61のスライド方向後方に配置される。そして、巻バネの圧縮反力によって、補助ロック部材61を補助ロック待機位置側から補助ロック位置側に向かって付勢する。
【0038】
補助ロック受部64は、解錠側受部64aと施錠側受部64bで構成されている。
【0039】
解錠側受部64aは、ロック本体51の縁部に形成される凹部からなり、ロック本体51がステアリングロック解除位置に位置した状態で、補助ロック部材61が係合可能な部位に形成されている。
【0040】
施錠側受部64bは、ロック本体51の縁部に形成される溝状凹部からなり、ロック本体51がステアリングロック位置に位置した状態で、補助ロック部材61が係合可能な部位に形成されている。
【0041】
保持機構63は、保持部材63a、および保持付勢部材63bとで構成されている。
【0042】
保持部材63aは、クランク形状の板状部材で構成され、後述する保持孔17内に挿脱可能に配置される。
【0043】
保持付勢部材63bは、巻バネからなり、収容室13の底部と保持部材63aの段部63cとの間に圧縮された状態で配置される。そして、保持付勢部材63bの圧縮反力によって、保持部材63aは、フレームカバー20の内面に付勢保持される。
【0044】
保持孔17は、ガイド部12に、ガイド孔14に沿って、収容室13と補助ロック穴16とを連通するように設定されている。保持孔17は、その荷重入力方向X手前側の孔壁17a(
図16における保持孔17の右側の孔壁)が、ロック部材50のスライド方向と平行に形成されている。また、保持孔17は、その荷重入力方向X奥側の孔壁17b(
図16における保持孔17の左側の孔壁)が、収容室13側から補助ロック穴16側に向かって、手前側の孔壁17aに近接するように、ロック部材50のスライド方向に対して斜めに形成されている。つまり、保持孔17は、その荷重入力方向Xに沿った寸法について、脆弱部である係合構造15側の寸法が、補助ロック部材61側の寸法よりも大きく設定されており、略V字形状を備えている。
【0045】
このように、保持機構63は、フレームカバー20をフレーム10に組付けた状態で、フレームカバー20の内面によって、保持付勢部材63bを圧縮しつつ、保持機構63の先端が保持孔17から突出した状態で保持される。なお、保持機構63の先端が、保持孔17から突出することで、保持機構63の先端が、補助ロック待機位置に位置する補助ロック部材61と係合し、補助ロック部材61を補助ロック待機位置に保持する。
【0046】
次に、上記構成において、電動ステアリングロック装置1の動作を説明する。まず、
図4〜
図7に示されるように、解錠状態の電動ステアリングロック装置1では、ロック本体51がガイド孔14内部に引込まれたステアリングロック解除位置に位置している。このため、ロック本体51の係合部51aとステアリングシャフト80の係合溝81との係合が解除され、ステアリングシャフト80の回動が可能となっている。なお、補助ロック部材61は、保持部材63aによって補助ロック待機位置に保持されている。また、ロック本体51が、ステアリングロック解除位置に位置した状態において、解錠側受部64aは、補助ロック穴16と正対している。
【0047】
次に、解錠状態の電動ステアリングロック装置1に、制御基板40によって、車体側から施錠信号が入力されると、制御基板40は電動モータ31が逆転するように電力を供給する。電動モータ31が逆転すると、ウォームギヤを介してウォームホイール32が施錠方向(
図4における反時計回り)に回動する。ウォームホイール32が施錠方向に回動すると、ロック付勢部材53の付勢力によって、追従突起52eがカム面35上を追従し、ロック部材50がステアリングロック解除位置からステアリングロック位置へ移動する。そして、ロック部材50がステアリングロック位置に到達すると、ストッパ52fがガイド孔14のストッパ受部18に係合するとともに、センサ(図示せず)が反応して、制御基板40から電動モータ31への電力が止まり、電動モータ31が停止する。
【0048】
そして、
図8〜
図11に示されるように、施錠状態の電動ステアリングロック装置1では、ロック本体51がガイド部12から突出したステアリングロック位置に位置している。このため、ロック本体51の係合部51aがステアリングシャフト80の係合溝81に係合し、ステアリングシャフト80の回動を規制している。
【0049】
なお、ステアリングロック位置に位置するロック部材50は、ロック付勢部材53の付勢力によって、ストッパ52fがストッパ受部18に当接した状態が保持されるため、ステアリングロック位置に保持される。また、ステアリングロック位置に移動する際に、ロック本体51の係合部51aが、ステアリングシャフト80の係合溝81を構成する突起部82に乗上げた場合には、ロック付勢部材53が圧縮されて縮み、ロック本体51が突起部82に乗上げたままの状態で、ハンガー52はステアリングロック位置へ移動する。そして、ステアリングシャフト80が回動し、突起部82がロック本体51の係合部51aからずれると、ロック付勢部材53の付勢力によって、係合部51aが係合溝81に係合し、ステアリングシャフト80の回動を制限する。
【0050】
また、施錠状態の電動ステアリングロック装置1に、車体側から解錠信号が入力されると、制御基板40は電動モータ31が正転するように電力を供給する。電動モータ31が正転すると、ウォームギヤを介してウォームホイール32が解錠方向(
図8における時計回り)に回動する。ウォームホイール32が解錠方向に回動すると、カム面35から離間していた追従突起52eがカム面35を追従し、ロック部材50がステアリングロック位置からステアリングロック解除位置へ移動する。そして、ロック部材50のステアリングロック解除位置への移動が完了したところで、センサ(図示せず)が反応して、制御基板40から電動モータ31への電力が止まり、電動モータ31が停止する。そして、ロック本体51がステアリングロック解除位置へ移動し、ガイド孔14内部に引っ込んだ状態では、ロック本体51の係合部51aとステアリングシャフト80の係合溝81との係合が解除され、ステアリングシャフト80の回動が可能となる。
【0051】
次に、電動ステアリングロック装置1に外力が掛かり、フレームカバー20がフレーム10から脱落した場合には、
図12〜
図15に示されるように、保持付勢部材63bの圧縮反力によって、保持部材63aが保持孔17内を図の上方へ移動する。そして、保持部材63aと補助ロック部材61との係合が解除され、補助ロック部材61が補助ロック位置へ移動する。フレームカバー20が脱落する際に、解錠状態であった場合には、
図12,
図13に示すように、補助ロック部材61が補助ロック位置へ移動することによって、補助ロック部材61が解錠側受部64aに挿入される。そして、補助ロック部材61が解錠側受部64aと係合し、ロック本体51のステアリングロック位置への移動が制限される。また、フレームカバー20が脱落する際に、施錠状態であった場合には、補助ロック部材61が補助ロック位置へ移動することによって、
図14,
図15に示すように、補助ロック部材61が施錠側受部64bに挿入される。そして、補助ロック部材61が解錠側受部64aに係合し、ロック本体51のステアリングロック解除位置への移動が制限される。
【0052】
また、所定の荷重入力方向Xから設定値を超える外力が、解錠状態の電動ステアリングロック装置1に掛かった場合には、
図16〜
図20に示すように、係合構造15を構成する係合凹部15aと係合突部15bの係合が外れる。係合凹部15aと係合突部15bの係合が外れることで、保持部材63aが、ケース部11とともに、荷重入力方向Xに傾き、補助ロック部材61との係合が外れ、補助ロック部材61が補助ロック位置へ移動する。また、ケース部11が荷重入力方向Xに傾きつつ、ガイド部12から脱落する際に、ハンガー側連係部52bから本体側連係部51bへ、ロック本体51の先端側から基端側に向かう力が加わり、ロック本体51が解錠方向への移動する。これによって、フレーム10が分離してから、連係部分50aの連係が外れるまでに遅れが生じる。さらに、ハンガー側連係部52bが本体側連係部51bから脱落したところで、ロック本体51がステアリングロック解除位置へ移動し、補助ロック部材61が解錠側受部64aに挿入される。そして、補助ロック部材61が解錠側受部64aに係合し、ロック本体51のステアリングロック位置への移動が制限される。
【0053】
なお、所定の荷重入力方向Xから設定値を超える外力が、施錠状態の電動ステアリングロック装置1に掛かった場合には、係合凹部15aと係合突部15bの係合が外れ、ケース部11がガイド部12から荷重入力方向に脱落する。これによって、保持部材63aが荷重入力方向Xに傾きながら、保持孔17から抜落ちる。すると、保持部材63aが荷重入力方向Xに傾くことで、保持部材63aと補助ロック部材61との係合が解除され、補助ロック部材61が補助ロック位置へ移動する。そして、補助ロック部材61が補助ロック位置へ移動することによって、補助ロック部材61が解錠側受部64aに係合し、ロック本体51のステアリングロック解除位置への移動が制限される。
【0054】
以上の構成により、本実施形態の電動ステアリングロック装置1では、フレーム10の脆弱部が係合凹部15aと係合突部15bとで構成される係合構造15からなることから、破断する場合に比べて分離する際の荷重を小さくすることができる。また、ハンガー52とロック本体51との係合を解除する動作は、ハンガー52が破断する動作と比較して、分離する際の荷重を小さくすることができる。これによって、ガイド部12とハンガー52を破断する構成と比較して、確実に補助ロック機構60を機能させることができる。
【0055】
また、ステアリングロック解除位置に位置するロック部材50の連係部分50aと重なるガイド部12の部位に、係合構造15が配置されたことによって、フレーム10が分離した後のガイド孔14の開口部から連係部分50aが露出する。つまり、係合構造15が分離する際に、連係部分50aの周囲に空間が形成されるため、連係部分50aに遊びが生じて、係合構造15が分離するタイミングよりも、連係部分50aの連係が外れるタイミングを遅らせることができる。これによって、補助ロック機構60の補助ロック部材61が補助ロック位置へ移動するまでの時間的な猶予が生じるため、確実に補助ロック機構60を作用させることができる。
【0056】
保持孔17がV字形状を備えることで、所定の荷重入力方向Xに沿って外力がフレーム10に加わった際に、保持部材63aが保持孔17内で倒れて、保持部材63aと補助ロック部材61との係合を解除することができる。これによって、補助ロック機構60が機能するまでの時間を短くすることができ、補助ロック機構60を確実に作用させることができる。
【0057】
ハンガー側連係部52bが所定の荷重入力方向Xに対して、奥側から手前側に突出するL字状突起からなることで、フレーム10が分離する際に、ハンガー側連係部52bから本体側連係部51bへ、ロック本体51の先端側から基端側に向かう力が加わる。これによって、ハンガー52がロック本体51をステアリングロック解除位置側へ引上げ、補助ロック部材61が、ロック本体51に到達してからハンガー52とロック本体51の連係が外れる。つまり、補助ロック機構60の補助ロック部材61が補助ロック位置へ移動するまでの時間的な猶予が生じるため、確実に補助ロック機構60を機能させることができる。
【0058】
比較例として、ガイド部12が分離する際に、ハンガー52がロック本体51をステアリングロック解除位置側へ引上げない構成について説明する。このような構成の場合、ガイド部12が分離する際に、保持部材63aが補助ロック部材61から離間するタイミング等によって、補助ロック機構60の作動が遅れるとともに、ロック本体51がステアリングロック位置側へ移動することが考えられる。そして、補助ロック部材61が補助ロック位置へ移動する前に、ロック本体51がステアリングロック位置側へ移動することで、補助ロック穴16に正対していた解錠側受部64aの位置がずれてしまい、補助ロック部材61が解錠側受部64aと係合できないおそれが生じる。
【0059】
しかしながら、本実施形態では、ガイド部12が分離する際に、ハンガー52がロック本体51をステアリングロック解除位置側へ引上げる。これによって、解錠側受部64aは、正対する補助ロック穴16からステアリングロック解除位置側へずれるものの、ハンガー52とロック本体51の連係が外れて、ロック本体51がステアリングロック位置側へ移動する際に、補助ロック穴16の前を再度通過する。このため、補助ロック機構60の作動が遅れた場合でも、解錠側受部64aが補助ロック穴16の前を再度通過するまでに、補助ロック部材61が、補助ロック位置側に移動し、解錠側受部64aに係合することができる。
【0060】
ステアリングロック解除位置に位置するロック部材50の連係部分50aと重なるガイド孔14の部位に、離脱領域14cを設けることで、連係部分50aの周囲により大きな空間が形成される。これによって、連係部分50aに生じる遊びによって、係合構造15が分離するタイミングよりも、連係部分50aの連係が外れるタイミングをさらに遅らせることができる。
【0061】
また、離脱領域14cを設けることで、連係部分50aの連係が外れるのに十分な空間が確保されるため、より確実に連係部分50aの連係を外すことができる。これによって、連係部分の連係が外れずに、ハンガー側連係部52bが破断することでフレーム10が分離するといった設定外の現象を防止し、分離する際の荷重を抑えることができる。
【0062】
なお、本実施形態の脆弱部は、係合構造15によって構成されているが、ガイド部12の外周に、荷重入力方向Xに沿った溝を形成して、細く括れさせ、他の一般部よりも耐荷重を下げる構成としても良い。このような構成とした場合には、フレーム10の構成を簡素化することができ、装置全体の軽量化を図ることができる。
【0063】
なお、本実施形態の電動ステアリングロック装置では、補助ロック部材61をガイド部12に配置し、補助ロック受部64をロック本体51に配置する構成としているが、補助ロック部材をロック本体に配置し、補助ロック受部をガイド部に配置する構成としても同様の作用効果を得ることができる。