特許第6396921号(P6396921)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サロモン エス.エー.エス.の特許一覧

特許6396921ソックスおよび補強構造体から製作される靴
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6396921
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】ソックスおよび補強構造体から製作される靴
(51)【国際特許分類】
   A43B 23/02 20060101AFI20180913BHJP
【FI】
   A43B23/02 101A
【請求項の数】18
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-548686(P2015-548686)
(86)(22)【出願日】2013年12月6日
(65)【公表番号】特表2016-504106(P2016-504106A)
(43)【公表日】2016年2月12日
(86)【国際出願番号】FR2013000323
(87)【国際公開番号】WO2014096560
(87)【国際公開日】20140626
【審査請求日】2016年11月22日
(31)【優先権主張番号】1203568
(32)【優先日】2012年12月21日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】508280601
【氏名又は名称】サロモン エス.エー.エス.
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107401
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 誠一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120064
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 孝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154162
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 浩輔
(74)【代理人】
【識別番号】100182257
【弁理士】
【氏名又は名称】川内 英主
(74)【代理人】
【識別番号】100202119
【弁理士】
【氏名又は名称】岩附 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】ブーシェー,ベアトリス
(72)【発明者】
【氏名】グーティエー,ジェラード
【審査官】 片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/166244(WO,A1)
【文献】 特表2010−508994(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/108506(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソックス足部(10)と、第1の踵部(14)と、第1の上側部(16)と、前記上側部の上端部に配置され、前記上側部の軸に垂直な平面に関して前記第1の踵部(14)と実質的に対称な第2の踵部(18)と、前記第2の踵部(18)の延長上にある第2の上側部(20)とを備え、前記第2の踵部は、前記第2の上側部が前記ソックス足部へ引かれたとき、前記第1の踵部を覆うように構成されている布地要素(2)。
【請求項2】
1つまたは複数の靴紐(37)の通路を設けるために、前記第2の上側部に作られた開口(21)をさらに備える、請求項1に記載の布地要素。
【請求項3】
地材の少なくとも一部分が、臭気制御、殺菌性制御、湿気吸収、皮膚治療、不浸透性または撥水性、異物の侵入に対する抵抗性、耐摩耗性、弾性などを確保することができるようになる1つまたは複数の物理および/または化学特性を有する、請求項1または2に記載の布地要素。
【請求項4】
前記第2の上側部(20)は、縫い目なしに前記第1の上側部に連結される、請求項1乃至3項のいずれか1項に記載の布地要素。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の布地要素と、補強構造体とを備え、前記ソックス足部と、前記第1の踵部と、前記第1の上側部とは、ソックスを形成する第1の可撓性布地層(10、14、16)を形成し、前記第2の踵部と前記第2の上側部は第2の布地層(18、20)を形成し、前記第1の可撓性布地層は、前記補強構造体の中に配置され、かつ固定手段によって前記補強構造体に固定され、前記補強構造体は、前記第2の上側部が前記ソックス足部へ引かれたとき、前記第1の可撓性布地層と前記第2の布地層との間に配置される、靴。
【請求項6】
前記第1の可撓性布地層が、
スナップ式ファスナ、ボタン、面ファスナ面などの手段を用いて前記補強構造体に連結されて、前記補強構造体から取り外せるように、
または、
接着または熱融着によって前記補強構造体に連結されて、前記補強構造体から取り外せないように
配置される、請求項5に記載の靴。
【請求項7】
前記第2の布地層(18、20)は、前記第1の可撓性布地層(10、14、16)に連続して設けられ、前記第1の可撓性布地層と前記第2の布地層とは縫い目なしに連結される、請求項5または6に記載の靴。
【請求項8】
前記補強構造体は、少なくとも1つの靴底(30)と、側面補強要素(31〜36)とを備える、請求項5乃至のいずれか1項に記載の靴。
【請求項9】
前記補強構造体は、少なくとも1つのトップ・キャップ要素(40)と、1つの補強部形成要素(42)とをさらに備える、請求項に記載の靴。
【請求項10】
前記補強構造体は可撓性である、請求項5乃至のいずれか1項に記載の靴。
【請求項11】
前記補強構造体は繊維系材料から製作される、請求項5乃至10のいずれか1項に記載の靴。
【請求項12】
前記第1の可撓性布地層(10、14、16)および/または前記第2の布地層(18、20)の布地材の少なくとも一部分が、臭気制御、殺菌性制御、湿気吸収、皮膚治療、不浸透性または撥水性、異物の侵入に対する抵抗性、耐摩耗性、弾性などを確保することができるようになる1つまたは複数の物理および/または化学特性を有する、請求項5乃至11のいずれか1項に記載の靴。
【請求項13】
前記布地材の少なくとも2つの領域同士が、1つまたは複数の異なる物理または化学特性を有する、請求項12に記載の靴。
【請求項14】
前記布地材の少なくとも2つの領域を、異なるレベルの不浸透性を有する領域にすることができる、請求項13に記載の靴。
【請求項15】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の布地要素であるソックス(2)と、少なくとも1つの靴底(30)および少なくとも1つの側面補強構造体(31〜36、43、43’)を備える補強構造体(3)とを使用して靴を製作する方法であって、
前記ソックスを足形状の型(52)上に嵌めるステップと、
前記補強構造体を前記ソックス上に接触させて配置するステップ、および固定手段を用いて前記補強構造体を前記ソックスに固定するステップと
を含む方法。
【請求項16】
前記補強構造体は、接着、熱融着などによって、取り外せないように前記ソックスに固定される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記補強構造体は、スナップ式ファスナ、ボタン、面ファスナ面などの手段によって、取り外せるように前記ソックスに固定される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記補強構造体は、前記ソックスに取り付けられる前に、前記補強構造体を前記足形状の型に合わせるために、相対的に変位可能な第1の部分と第2の部分とを備える、請求項15乃至17のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴またはより一般的には履物などの衣料品の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
靴の製造は、その形に関係なく、数ダース程、ときには45個までもの多数の要素を使用する必要があり、全てのそれら要素を互いに組立、結合、付着する多数のステップを含む。
【0003】
したがって、靴の組立ては、時間の掛かるプロセスであり、特殊で、重く、高価な工具を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、靴または履物のための新規な構造、ならびに靴または履物を製作する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そのために、本発明は、先ず、ソックス足部(sock foot)と、第1の踵部と、第1の上側部と、前記上側部の上端部に配置された第2の踵部と、第2の踵部の延長上にある第2の上側部とを備える布地要素を提供する。たとえば、第2の上側部は、縫い目なしに第1の上側部に連結されている。
【0006】
1つまたは複数の靴紐の通路を設けるために、第2の上側部に開口を作ることができる。
【0007】
本発明は、また、ソックスを形成する第1の可撓性布地層と、その布地層がその中に配置された補強構造体であって、その布地層が固定手段によってそこに固定された補強構造体とを、その内側から順に備える靴に関する。
【0008】
布地層は、
− スナップ式ファスナ、ボタン、面ファスナ面(フックアンドループ面)などの手段によって補強構造体に連結されて、補強構造体から取り外せるように、
または、
− たとえば接着、熱融着、または任意の他の手段によって補強構造体に連結されて、補強構造体から取り外せないように
配置することができる。
【0009】
靴は、第2の布地層をさらに備えることができ、補強構造体は、第1の布地層と第2の布地層との間に配置される。
【0010】
第2の布地層は、たとえば、第1の布地層の延長上に作られ、第1の層と第2の層とは縫い目なしに連結される。
【0011】
一実施形態によれば、補強構造体は、少なくとも1つの靴底(sole)と、側面補強要素とを備える。
【0012】
その補強構造体は、少なくとも1つのトウ・キャップ(toe−cap)要素および/または補強部形成要素をさらに備えることができる。
【0013】
補強構造体が可撓性であることができ、たとえば繊維系材料から製作される。
【0014】
本発明は、また、ソックスと、少なくとも1つの靴底および少なくとも1つの側面補強構造体を備える補強構造体とを使用して靴を製作する方法であって、
− ソックスを足形状の型上に嵌めるステップと、
− 補強構造体をソックス上に接触させて配置するステップ、および固定手段を用いてその補強構造体を前記ソックスに固定するステップと
を含む方法に関する。
【0015】
特定の実施形態によれば、ソックスは、既に上記に説明したように布地要素である。
【0016】
補強構造体は、たとえば接着、熱融着などによって、取り外せないようにソックスに固定される。
【0017】
あるいは、補強構造体は、スナップ式ファスナ、ボタン、面ファスナ面などを用いて、取り外せるようにソックスに固定される。
【0018】
一実施形態によれば、まさに靴の製作中に、補強構造体を適合させることができ、その補強構造体が、ソックスに取り付けられる前に、その補強構造体を足形状の型に合わせるために、相対的に変位可能な第1の部分と第2の部分とを備える。
【0019】
想定される実施形態とは関係なく、使用される布地材の少なくとも一部分が、臭気制御、殺菌性制御、湿気吸収、皮膚治療、不浸透性または撥水性、異物の侵入に対する抵抗性、耐摩耗性、弾性などを確保することができるようになる1つまたは複数の物理および/または化学特性を有することができる。
【0020】
布地材の少なくとも2つの領域が、1つまたは複数の異なる物理または化学特性を有することができる。たとえば、布地材の少なくとも2つの領域同士を、異なるレベルの不浸透性を有する領域にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1A】本発明の範囲内で提供されることができる布地要素またはソックスを示す。
図1B】本発明の範囲内で提供されることができる布地要素またはソックスを示す。
図2A図1Aおよび1Bに示されたタイプの要素を製作するステップを示す。
図2B図1Aおよび1Bに示されたタイプの要素を製作するステップを示す。
図2C図1Aおよび1Bに示されたタイプの要素を製作するステップを示す。
図3A】本発明の範囲内で提供されることができる補強手段の様々な実施形態を示す。
図3B】本発明の範囲内で提供されることができる補強手段の様々な実施形態を示す。
図3C】本発明の範囲内で提供されることができる補強手段の様々な実施形態を示す。
図3D】本発明の範囲内で提供されることができる補強手段の様々な実施形態を示す。
図3E】本発明の範囲内で提供されることができる補強手段の様々な実施形態を示す。
図4A】本発明による靴をその上で実現することができる予備成形品を示す。
図4B】本発明による靴をその上で実現することができる予備成形品を示す。
図5A】本発明による方法の実施形態の最初のステップを示す。
図5B】本発明による方法の実施形態の最初のステップを示す。
図6A】本発明による方法の実施形態の第2のステップを示す。
図6B】本発明による方法の実施形態の第2のステップを示す。
図7A】本発明による方法の実施形態の第2のステップを示す。
図7B】本発明による方法の実施形態の第2のステップを示す。
図7C】本発明による方法によって得られる靴の例を示す。
図8】本発明による方法によって得られる靴の別の例を示す。
図9A】本発明による方法の別の実施形態のステップを示す。
図9B】本発明による方法の別の実施形態のステップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
最初に、本発明による履物の製作に使用することができる布地要素2の製作について説明する。
【0023】
その要素が、図1Aおよび1Bに概略的に示されている。
【0024】
その要素は、端部12および踵部14を備えるソックス足部10を形成する第1の部分を備える。この足部から上側部16が延在する。これら要素10、12、14、16はソックスの通常の構造を構成する。しかし、ここで使用されるソックスでは、上側部16から第2の踵部18が延在し、次いで端部開口22を有する第2の上側部20が延在する。この要素は、平面上に配置されると、図1Aのように実質的にU字形を有する。
【0025】
靴紐を形成する紐を通すために、開口21を第2の上側部20に設けることができる。
【0026】
そのアセンブリは、上側部16の軸に略垂直であり、図1Bにその交線が示される平面C−C’に対して実質的に対称である。その対称性に、端部12および開口22は含まれない。
【0027】
図1Aおよび1Bを参照して上記で説明されたような要素を製作する方法のステップを、図2A〜2Cを参照して説明する。
【0028】
上側部16の直径に実質的に対応する直径を有する略円筒形の布地要素1が、たとえば編む、織る、または縒ることによって、円筒5(図2A)上に製作される。
【0029】
要素1が、完成すると支持体5から取り外され、踵部14、18をその中に配置するために、2つの切込部または切抜部4、8が要素1に作られる(図2B)。図2Bは、要素10の終端部になる開口22も示している。
【0030】
切断部4、8は、布地要素1の両端部を、その円筒の対称軸X−X’から離して配置することができるようにする。
【0031】
踵部を形成する布地部分14、18およびソックス足部の端部を形成する部分12を、次いで、切込部4、8によって作られる開口に取り付けることができる(図2C)。それによって、図1Aおよび1Bを参照して上記で説明されたタイプの要素を得ることができる。
【0032】
要素2および上記の方法に使用される布地は、ソックス全体に一様でもよい。この布地は、いくつかの機能を組み込むために、1つまたは複数の特定の物理および/または化学特性を有してもよい。たとえば、布地は、1つまたは複数の以下の機能を果たすための組成を有し、かつ/または手段を備えることができる。すなわち、臭気制御、殺菌性制御、湿気吸収、皮膚治療、不浸透性または撥水性(ある程度まで不浸透性である特性)、異物の侵入に対する抵抗性、耐摩耗性、および弾性である。
【0033】
さらに、これら特性の1つまたは複数は、ソックスの1つまたは複数の局所部分にしか関係しないこともある。たとえば、ある部分は、異物の侵入に抵抗することができる特性を有することができるが、他の部分にはそれは必要ないこともある。別の例として、ある部分は不浸透性を有することができるが、別の部分にはそれは必要ないこともある。
【0034】
したがって、要素2および上記の方法に使用される布地は、一様でもよく、1つまたは複数の上記の機能を組み込むために、特定の局部的な物理および/または化学特性を有してもよい。
【0035】
次に、本発明による靴または履物の製作に使用することができる補強構造体3の様々な実施形態が、図3A〜3Eを参照して説明される。
【0036】
これら様々な例のそれぞれは、繊維系材料、たとえばポリアミド、ポリウレタン、または任意の同等な材料から製作され、靴(ブーツ)の靴底アセンブリの一部分および側面補強手段を形成するようになされている。その方式に限定されないが、構造体3は、熱可塑性エラストマー材を成形することによって得ることができ、または当業者に既知の任意の技法によって得ることができる。
【0037】
図3Aは、縁部30’、30’’によって画定された、靴底30を形成する可撓性部分と、側面補強要素31〜36とを備える上記のような補強要素3の第1の例を示す。側面補強要素31〜36は、その第1の端部が、靴底30の縁部30’、30’’のうちの一方に取り付けられ、他方の端部が、1つまたは複数の紐帯または紐37を通す保持部を形成する手段31a〜36aを備えることができる。紐帯または紐37は、たとえば、図3Cに示されるように、締結要素39を終端部とするタイプの1つまたは複数の靴紐を形成するようになされている。それぞれの側面補強要素は、好ましくは、図3Aに示されるような形状を有し、その形状が、靴底30の対応する縁部30’、30’’の反対側の端部から靴底の縁部に直接連結されている端部まで延在する。この形状が、側面領域においてより効果的な補強手段を有することを可能にする。
【0038】
薄い繊維層のその形状ゆえに、靴底30は、好ましくは、一方では足部の軸に垂直な、他方ではその同じ軸に沿う2つの方向に沿って可撓性である。これによって、後続のステップにおける適合性が向上することになる。
【0039】
図3Aの実施形態では、靴底30は、平坦であり、その前方部分においてもその後方部分にも限界が設けられていない。したがって、その靴底は、足部の端部領域も、足部のために補強部を形成する領域も画定しない。
【0040】
図3Bに示された実施形態は、図3Aを参照して上記に説明された要素の全てを備えるが(それゆえ、それら要素は再度説明しない)、さらに、靴底の前端部に、トウ・キャップを形成し、足部の前端部の位置を画定する要素40を備える。先の実施形態と同様に、この補強要素は、足部の後方領域には限界を有せず、特に、補強部を形成する要素を有しない。この前方要素40は、バンドによって構成され、やはり繊維系材料から製作され、靴底によって定義される面に略垂直に配置される。
【0041】
図3Cの実施形態は、足部の前端部の位置を画定する領域40と、さらに、補強要素31〜36の少なくとも一部分に側面繊維層43、43’によって連結されるとともに、補強部を形成する後方領域42とを備え、側面繊維層43、43’は、ある程度の可撓性を維持しながら、後方部分にある程度の強度または剛性も与える。この図3Cに示されている他の要素は、図3Aおよび3Bを参照して上記で既に説明したものと同一または同様である。
【0042】
図3Dの実施形態は、図3Cの実施形態の変化形である。側面補強手段と、トウ・キャップ40と、後方補強部42とを備える構造体がやはり達成されているが、今度は、図3Aの構造体と図3Eに示される構造体とを組み合わせることによって、2つの部分で達成されている。図3Eの構造体は、靴底を形成する部分30aと、トウ・キャップ40と、補強部を形成する後方部分42と、側面繊維層43a、43a’の形態の補強手段をやはり形成する側面要素とを備える。たとえば、その靴底30の前縁部がトウ・キャップ40の内面に接触するまで、この靴底部分30aに図3Aの構造体を挿入することができる。逆の組立もまた可能であり、その場合、図3Aの構造体の補強要素31〜34の上側部分が側面繊維層43a、43’aのそれぞれの縁部430、430’に実質的に一致するまで、図3Aの構造体に図3Eの構造体が挿入される。
【0043】
次に、既に上記で説明された様々な要素から、靴をどのように製作することができるかを説明する。
【0044】
そのために、図4Aおよび4Bに前視および側視でそれぞれ示された立体型50のような型または予備成形品が使用される。この型は足の外形を模っている。
【0045】
図1Aおよび1Bの布地要素をこの型上に嵌めて、図5Aおよび5Bに示される中間要素を得ることができる。ソックスの前端部分12が足の前端部に接触し、部分10が足自体を覆い、部分14が踵部と接触し、上側部16が踝を取り巻き、第2の踵部18が踝の後方上側部分に接触している。そのアセンブリから、第2の上側部20が延在する。
【0046】
図3A〜3Eの補強要素のうちの1つがこのアセンブリ上に配置され、ここでは図3Dの複合要素が選択されている。型50(ソックスを嵌められた)の足の前方部分が、トウ・キャップ40の内面に当接して配置され、補強部48が、型50の踵の後方に当接して配置される。このように配置された補強要素を構成する繊維系材料の可撓性ゆえに、補強要素を、立体要素50によって決められる形状に適合させることができる。さらに、図3Dの補強手段の構造体は、後方および前方の2つの部分が、場合によっては相互に摺動することができ、それによって、型50によって決められる寸法に補強構造体を適合させることができるという利点を有する。
【0047】
図6Aおよび6Bで分かるように、ソックスの第2の上側部20に作られた開口21は、後に靴を締めることを可能にする紐をそこに通すことができる。
【0048】
これら2つの要素、布地材から製作されたソックスと補強要素とは、たとえば接着によって、組み立てることができ、それによって、アセンブリは元に戻せない構造体を形成する。あるいは、補強構造体の材料とソックス10の材料との融合を達成するために、アセンブリに加熱ステップを施すことができる。
【0049】
別の実施形態では、布地材から製作されたソックスと補強要素とを元に戻せるように組み立てることができる。たとえば、相互に組み立てられる面同士を、互いに接触するようになされた領域に配置されたスナップ式ファスナ、ボタン、「Velcro(登録商標)」タイプの面ファスナ面などの手段によって結合する。
【0050】
後続のステップ中、図7Aおよび7Bに示されるように、第2の上側部20を形成する部分を、次いで、足部の上に引き下ろすことができ、このステップは、作業者による簡単な操作しか必要としない。作業者は、ソックスの端部開口22の縁を掴み、第2の上側部20を形成する部分を、足部の上側部分および靴底を形成する領域の両方の上に徐々に引き下ろす。
【0051】
作業者は、開口22がソックスの前端部に達するまでこの作業を続けて、図7Cに示されるようなアセンブリを形成する。そのとき、第2の踵部18は、第1の布地層に位置し型50と接触する第1の踵部14を覆う。紐37およびその締結手段39は、開口21を介してアクセス可能に残される。
【0052】
このようにして得られたアセンブリを、さらに補強層を追加することによって、すなわち、図3A〜3Eを参照して既に上記で説明されたタイプのうちの1つによる第2の補強構造体に、図7Cの構造体を挿入することによって、補強することもまた可能である。
【0053】
このようにして履物が達成され、その履物は、場合によっては、補強要素の繊維系材料部分30より強い靴底52を、たとえば接着することによって、完成することができる(図8参照)。
【0054】
靴底52があり、またはなしで得られたアセンブリは、2つの繊維層と、極めて細く非常に軽い繊維材から製作された1つまたは複数の補強要素とを備えるのみなので、極めて軽い。この構造体は、したがって、2つの「皮」を備え、その間に1つまたは複数の補強要素が配置されている。
【0055】
それらの説明を読んで理解されるように、諸工程では、縫合ステップを1つも行わず、または要素同士を相互に位置決めする難しいステップを1つも行わない。したがって、極めて簡単で、極めて速く、かつ極めて経済的な方式で、履物または靴を完成することが可能である。
【0056】
上記の例示的実施形態は、図1Aおよび1Bを参照して説明されたタイプの、すなわち2つの上側部16、20を有する、ソックスを実現する。
【0057】
図9Aおよび図9Bに示される別の実施形態の例では、1つのみの上側部16を有する簡易ソックスが使用される。このソックスが、図4Aおよび4Bの型50上に嵌められる。次いで、図6Aおよび6Bのステップにおけるように、たとえば図3A〜3Eを参照して上記で説明されたうちの1つのタイプの補強構造体が、そのアセンブリに適用される。布地要素および補強要素は、次いで、恒久的に(たとえば接着および/または加熱によって)、または、たとえば、互いに接触するようになされた領域に配置されたスナップ式ファスナ、ボタン、「Velcro(登録商標)」タイプの面ファスナ面などの手段によって、元に戻せるように組み立てられる。
【0058】
それによって、図9Bの構造体が得られ、その構造体を、図8に示されるような靴底52によって完成することができる。
【0059】
この別の実施形態の例に関し、上記に既述の機能の1つをソックスに与えるために、ソックスの布地材として1つまたは複数の物理および/または化学特性を有する材料を使用することもできる。さらに、それら1つまたは複数の特性は、布地材全体に一様でもよく、布地材の一部分のみに局限されていてもよい。
【0060】
布地要素2は、第1の部分と第2の部分とが相互に直接連続して作られているという意味で、一体に製造することができることが示されてきた。しかし、別法として、布地要素2は、縫合などの任意の適切な手段によって互いに取り付けられた2つ以上の部分を備えてもよい。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8
図9A
図9B