(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6396929
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】内歯の創成または機械加工方法および運動変更装置および工作機械
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/00 20060101AFI20180913BHJP
B23F 5/16 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
B23Q11/00 M
B23F5/16
【請求項の数】18
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-559435(P2015-559435)
(86)(22)【出願日】2014年1月27日
(65)【公表番号】特表2016-508452(P2016-508452A)
(43)【公表日】2016年3月22日
(86)【国際出願番号】EP2014000207
(87)【国際公開番号】WO2014131487
(87)【国際公開日】20140904
【審査請求日】2016年10月17日
(31)【優先権主張番号】102013003288.1
(32)【優先日】2013年2月26日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500120211
【氏名又は名称】グリーソン − プァウター マシネンファブリク ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス ブローニ
(72)【発明者】
【氏名】ドメニコ ペトラリーア
(72)【発明者】
【氏名】オズワルド ウィッチ
【審査官】
宮部 菜苗
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−078139(JP,A)
【文献】
特開2012−143821(JP,A)
【文献】
実開平02−061510(JP,U)
【文献】
実開平02−047108(JP,U)
【文献】
特開昭62−068220(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23F 1/00−23/12
B23Q 11/00−13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物(20)の一端側の内歯付け領域に内歯(22)を切り屑除去創成または機械加工するための方法であって、前記被加工物は、その回転軸線(C)を中心として回転可能であって、前記内歯付け領域から前記被加工物の軸線方向に沿った他端側まで延在する自由空間(40)がその内側に画成され、前記被加工物が前記内歯付け領域の内径よりも小径の領域(48)をその他端側に有し、
外歯付き工具(50)の回転軸線(B)を前記被加工物の回転軸線(C)に対して或る角度にて交差させた状態で、この外歯付き工具が前記被加工物の内歯付け領域と転がりかみ合い状態となるように、当該外歯付き工具をその回転軸線(B)を中心とする回転運動にて駆動すると共に前記被加工物を回転運動させ、
その処理中に作り出されて遠心力を受ける切り屑は、機械的な力が加えられることにより、それらの運動が前記小径の領域側へと変更され、
前記機械的な力は、切り屑がこの切り屑よりも大きな質量を有すると共に静止状態にある衝突パートナー(30,36)と衝突する結果、加えられることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記運動の変更が切り屑の接線速度成分の減少を具えていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記運動の変更が切り屑の径方向内側に向けた速度成分に対する上昇を与えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記被加工物(20)の前記小径の領域(48)と前記内歯付け領域との間には、凹部(26)が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記凹部(26)の内径が前記内歯付け領域の内径よりも大きいことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記衝突パートナー(30,36)は、前記被加工物(20)と接触することなく、前記被加工物と前記外歯付き工具(50)との間のかみ合い部分の径方向反対側の前記被加工物と前記外歯付き工具との間の前記自由空間(40)に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記衝突パートナー(30,36)は、前記内歯付け領域に面する前記小径の領域(48)の端面(28)に近接して配置されていることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記衝突パートナー(30,36)は、前記被加工物(20)の前記凹部(26)内に入り込むように配置されていることを特徴とする請求項4にのみ従属する請求項5から請求項7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記衝突パートナー(30,36)は、前記内歯付け領域を通って延在し、この衝突パートナーを保持するホルダー器具は、前記内歯付け領域内に前記外歯付き工具(50)から或る距離だけ離れて配置されていることを特徴とする請求項1から請求項8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
流体、特に空気の流れは、前記自由空間(40)を通ってこの自由空間が延在する方向に送られることを特徴とする請求項1から請求項8の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
被加工物の内歯付け領域に内歯を創成または仕上げるための機械加工処理にて作り出される切り屑の運動を変化させるための装置(30)であって、前記被加工物は、前記内歯付け領域からこの被加工物の反対側まで軸線方向に延在する自由空間がその内側に画成され、
前記自由空間を通って前記軸線方向に延在する首部(34)と、
前記首部の自由端にて径方向に突出し、切り屑との衝突のために設計された衝突面を持つ少なくとも一つのヘッド部(36)と、
前記自由端の反対側にある前記首部の反対端に接続し、第1の独立した軸線方向の運動の第1のベクトル成分と、この第1のベクトル成分から独立した径方向の第2のベクトル成分とで運動変更装置(30)の案内運動を可能にする可動支持装置に結合するように設計された基部(32)と
を具えたことを特徴とする装置。
【請求項12】
前記被加工物は、前記内歯付け領域の内径よりも小径の領域を有し、前記ヘッド部の軸線方向の寸法は、前記内歯付け領域と前記小径の領域との間の前記自由空間の輪郭に対して少なくとも部分的に合致していることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記衝突面が被加工物の回転軸線を含む平面に対して少なくとも部分的に傾斜していることを特徴とする請求項11または請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記ヘッド部が取り外し可能、特に交換可能であることを特徴とする請求項11から請求項13の何れか一項に記載の装置。
【請求項15】
60°以上、好ましくは90°以上、特に好ましくは120°以上の中心角の全範囲に亙って相互に延在し、周方向に分けられた複数のヘッド部を具えていることを特徴とする請求項11から請求項14の何れか一項に記載の装置。
【請求項16】
それぞれの装置の前記ヘッド部の軸線方向および/または径方向の寸法が相互に異なっていることを特徴とする請求項11から請求項15の何れか一項に記載の装置のセット。
【請求項17】
その回転軸線を中心とする回転運動にて駆動されることができる被加工物(20)に内歯を創成するか、または仕上げるための工作機械(100)であって、その軸線を中心とする回転運動にて駆動されることができ、かつ軸線の交差角により前記内歯との転がりかみ合いのために設計された外歯付き工具(50)を具えており、この工作機械は、
内歯付け被加工物(20)を固定することができる被加工物主軸(2)と、
工具(50)を固定することができる工具主軸(10)と、
前記被加工物主軸と前記工具主軸との間の相対位置を前記被加工物の回転軸線と平行に延びる方向成分と共に変更することができる第1の直線変位軸線(Z)と、
前記被加工物の回転軸線と前記工具の回転軸線との間の距離を変更することができる第2の直線変位軸線(X)と、
前記被加工物および前記工具のそれぞれの回転軸線間の交差角を変更することができる回転軸線(A)と
を具え、請求項11から請求項15の何れか一項に記載の装置(30)が前記第1の直線変位軸線(Z)と平行な運動の第1のベクトル成分と、特に前記第1のベクトル成分から独立し、これと直交する第2のベクトル成分とで動くことができる支持装置(12,14)によって特徴付けられる工作機械。
【請求項18】
請求項1から請求項10の何れか一項に記載の方法を実行中の工作機械を制御するように設計された制御装置を具えたことを特徴とする請求項17に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その回転軸線を中心として回転可能であって、内歯付け領域を越えた一方側へと少なくとも軸線方向に延在し、径方向の幅がその軸線方向延在部の方向の少なくとも一カ所で狭くなっている自由空間を径方向に区切る被加工物に対し、内歯を切り屑除去創成または機械加工するための方法に関係する。さらに、本発明は、この方法を実行することかできる工作機械のみならず、この方法を実行中に用いられるように設計された運動変更装置にも関係する。
【背景技術】
【0002】
前述した種類の内歯付き製品は、例えば自動車産業における自動変速機、例えば8速または9速の変速機のための部品として製造され、歯車形削り処理を経て作成される。自由空間の径方向の幅の狭窄は、例えば内歯の後ろの被加工物の内側にある凹部から結果として生じ、これは継手スリーブを収容するのに役立つ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】DE 10 2011 009 027 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前述した種類の方法をさらに進展させ、特に製造観点から改善した変法を提供するという目的を有する。
【0005】
方法に向けた観点から、この処理は、その回転軸線を中心とする回転運動にて駆動される外歯付き工具が、ゼロとは異なる或る角度にて軸線を相互に交差させた内歯とその向かい側から転がりかみ合い状態へともたらされるという考え方を本質的に介し、また機械的力の適用を介した本発明によって解決され、この処理において作り出され、かつ遠心力を受ける切り屑は、幅の狭い領域の前方の領域にてそれらの運動が遠心力の起点に対して向けられる方法で変化させられる。
【0006】
軸線が或る角度にて相互に交差する外歯付き工具との転がりかみ合いを介して歯を創成する方法は、それ自体、周知の方法であり、例えば特許文献1に外歯付き被加工物のための方法として主に記述されているけれども、単純な設計幾何学的形状の内歯付き被加工物を作り出すために用いることもまた、基本的に可能ではある。この運動学的な考え方によって処理される切り屑切削機械加工方法の一つがスカイビングホイールを用いたスカイビングの処理であり、本発明による方法を実践する好ましい方法を表す。出願人の団体内において、「パワースカイビング」という表現はまた、「スカイビング」という用語の代わりに与えられている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、幅の狭い場所の前方領域にて切り屑に作用する機械的な力を遠心力の起点に対して向けられる方法を導入するという本発明の構想と共に、被加工物または工具へのあらゆる損傷なく、前述の運動学的原理に基づく方法を行うことができるという驚くべき結果に基づいている。(被加工物の径と軸線の交差角とに依存して)600rpm以上、好ましくは1500rpm以上、特に2000rpm以上に達することができるが、3000rpm以上、例えば3500rpmまでの速度の可能性を除く非常に高速度な被加工物の回転のため、切り屑に作用する機械的力を与えるという本発明の構想なしでは、被加工物および/または工具に対する損傷または破壊の結果を伴う幅の狭い領域の前方の被加工物内での切り屑の堆積を回避することができない。切り屑に作用する遠心力は非常に強く、切り屑を内歯車によって囲まれた自由空間から吹き飛ばすために単純な設計幾何学形状の内歯付き被加工物の製造中に用いられる空気の噴射は、もはや切り屑のすべてを除去するのに効果的でない。
【0008】
本発明の方法に関し、被加工物または工具がもはや破損しないように、どのような場合であっても、この切り屑の堆積を充分に回避することができる。
【0009】
運動の変更は、切り屑の方位速度成分の減少の形態で好ましくは起こる。この速度成分が減少するので、遠心力は二次的割合で低下する。方位速度を特に一桁以上の桁で減ずることができ、実際、ほぼゼロまで下げられる。
【0010】
さらなる一実施形態は、運動の変更が切り屑の径方向内側に向けた速度成分を生じさせることを伴うことができる。これは、自由空間の径方向のより中央領域へと切り屑が迅速に動くことをもたらし、それによって切り屑の除去もまた促進させる。
【0011】
特に好ましい実施形態において、機械的力の適用は、回転に関与していないより大きな質量の衝突パートナーと衝突する切り屑の結果として起こる。回転に関与していない基準方式に対し、この衝突パートナーは、衝突する切り屑のための静止バリヤーに相当する。
【0012】
幅それ自体を狭めることは、例えば段部の形態にて生じさせることができる。特に、この段部は被加工物の凹部の径方向に向けた後方壁であってよい。
【0013】
好みに関し、がっしりした衝突パートナーは、自由空間の空間境界に近接して径方向に配され、特に被加工物とのどのような接触もない。如何なる場合においても、追加の機能を衝突パートナーにあてがわないのであれば、後者は被加工物およびその回転運動に影響を与えることが可能であるべきではない。
【0014】
がっしりした衝突パートナーは、幅の狭い場所に近接して軸線方向に配されるが、特に被加工物との如何なる接触もない。これは、機械的な力の適用がその目的を満たすという信頼性を増大する。自由空間が幅の増大する場所を含む場合、衝突パートナーがこの幅の増大する場所に近接して配されるが、特に被加工物に対してどのような接触もないことが同様に好ましい。換言すると、衝突パートナーは、被加工物の凹部により作り出された空間を遮断する。
【0015】
好ましくは、衝突パートナーは、内歯の領域の自由空間を通って延びる位置に保持され、ホルダー器具は、工具から或る距離をおいた領域に配される。従って、内歯によって囲まれる空間は、自由空間の利用可能な径方向の幅の三分の一から三分の二を通常占める外歯付き工具に加え、追加の物品によって塞がれる。この構成の結果として存在する物品と工具との間の衝突の危険性が、物品と工具との間の適切な安全距離を可能にすることによって減じられる。
【0016】
従って、がっしりした衝突パートナーがその指定位置に到達した後、初めて被加工物および工具が相互に作業かみ合い状態へともたらされることが好ましい。
【0017】
実際的な対策として、特に被加工物軸線の水平な構成において、軸線方向の速度成分を切り屑に与えるため、流体の流れ、特に空気が自由空間を通って後者が延在する方向に送られる。
【0018】
装置に向けた観点から、被加工物の内歯を創成または仕上げるための機械加工処理において作り出される切り屑の運動を変化させるための装置が提案されて保護の下に置かれる。この装置は、内歯により径方向に区切られる自由空間を通って延びるように軸線方向に延在する首部と、この首部の自由端にて径方向に突出し、切り屑との衝突のために設計した衝突面を支持するヘッド部と、首部の反対端に隣接し、軸線方向における運動の第1のベクトル成分およびこの第1のベクトル成分から独立した径方向の第2のベクトル成分にて運動変更装置の案内された運動を可能にする可動支持装置に対して運動変更装置を結合するように設計された基部とを含む。
【0019】
この装置の首部は、内歯によって囲まれる自由空間にて工具と並列する位置を塞ぐ機械加工処理中にヘッド部を保持する部分であり、実際の衝突パートナーに相当する。ヘッド部の反対側には、運動変更装置が必要とされる位置へと動くことを可能にする可動支持装置に結合されるように設計した基部を用い、運動変更装置が隣接している。
【0020】
特に好ましい一実施形態において、ヘッド部の軸線方向の寸法は、被加工物の内歯付け領域を越えて延在する径方向に区切られた自由空間の輪郭に対して少なくとも部分的に合致する。これは、機械的力の適用がその目的を満たすという信頼性を同様に増大させる。
【0021】
原則として、ヘッド部の衝突面を径方向に向けることができる。しかしながら、本発明はまた、衝突面が径方向に対して少なくとも部分的に傾斜し、従って切り屑のための傾斜部として機能する場合も含む。
【0022】
ヘッド部の方位角寸法は、工具のための空間の必要条件によってのみ、同様に限定され
る。原則として被加工物の高速rpmのため、小さな角度幅、すなわち径方向寸法と同じ桁のヘッド部の方位角寸法で充分である。しかしながら、ヘッド部を30°以上、さらに60°以上、特に90°以上、あるいはさらに120°以上の如き、より大きな角度に亙る方位角方向に延在させることができる。さらにまた、ヘッド部を複数の部品として形成することも同様に可能である。換言すると、方位角によって相互に分離させたいくつかのヘッド部があってよい。
【0023】
特に好ましい一実施形態において、ヘッド部は取り外し可能であって、特に交換可能である。これは、基部を切り離すことなく、運動変更装置が異なる被加工物の製品ロットに対して適合することを可能にしよう。
【0024】
本発明は、個々のヘッド部がそれらの軸線方向の寸法およびそれらの径方向突出部の大きさにおいて相互に異なる一組の運動変更装置をさらに提供する。これは、被加工物のそれぞれ異なる製品ロットのための適当な運動変更装置を提供することを可能にし、個々の自由空間が幾何学的に区切られた方法で他のロットと異なることができ、最適化した機械的力の適用をそれぞれの場合で達成することができるようになっている。
【0025】
さらにまた、装置に向けた観点から、工作機械が提案されて保護の下に置かれる。これは、その回転軸線を中心とする回転運動にて駆動され得る被加工物に内歯を創成または仕上げるための工作機械であり、内歯との転がりかみ合いのために設計され、相互に或る角度で交差する軸線を持ち、その回転軸線を中心とする回転運動にて駆動され得る外歯付き工具を用いる。この工作機械は、内歯付け被加工物を固定することができる被加工物主軸と、工具を固定することができる工具主軸と、被加工物主軸と工具主軸との間の相対位置を被加工物の回転軸線と平行に延びる方向成分に沿って変更することができる第1の直線変位軸線と、被加工物の回転軸線と工具の回転軸線との間の距離をそれに沿って変更することができる第2の直線変位軸線と、被加工物および工具のそれぞれの回転軸線間の交差角に関して変更することができる回転軸線とを有する。この工作機械は、第1の直線変位軸線に平行な運動の第1のベクトル成分と、特に第1のベクトル成分から独立し、これに対して直交する第2のベクトル成分とで動き得る上述した形態の一つによる装置を使った可動支持装置によって本質的に区別される。
【0026】
本発明による工作機械の利点は、本発明の方法の利点に帰結し、衝突パートナーを形成する運動変更装置を位置決めするために必要とされる運動軸線を有するように、工作機械が設計される。
【0027】
さらに本発明の範囲内において、この工作機械は、上述の方法に向けた形態の1つによる方法を実行中に工作機械を制御するように設計された制御装置を含む。
【0028】
本発明のさらなる利点や、区別される特徴および詳細は、添付した図面に関する以下の説明から明白となろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】工作機械の運動軸線を含む立体投影図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
上方からの立体投影図において、
図1は工作機械の一部を示し、この工作機械の運動軸線が示されている。工作機械100は、被加工物を機械加工するために設計され、被加工物への歯の創成は、工具と被加工物との間の切削かみ合いによって起こり、被加工物および工具のそれぞれの回転軸線は或る角度にて相互に交差する。例示した実施例における工作機械は、内歯をスカイビング加工するために用いられ、スカイビング装置と呼称されている。
【0031】
このスカイビング装置100は、当該スカイビング装置の機械ベッドの固定位置に回転可能に支持され、Cとして識別される被加工物の回転のための回転軸線を持った被加工物主軸2を有する。工具と組み合わせられるのは水平なキャリッジ4であり、これは工作機械のベッドに対し、被加工物主軸の軸線に対して平行に延びる直線変位軸線Zに沿って移動可能である。
【0032】
この水平なキャリッジ4は、さらなる水平なキャリッジ6を支え、これはキャリッジ4の直線変位軸線Zに対して直角に延びる第2の直線変位軸線Xに沿って移動可能である。従って、これらキャリッジ4および6は、クロススライド機構を形成する。
【0033】
工具主軸10を保持するさらなる直線キャリッジ8が、第2の直線変位軸線Xと平行に延びた回転軸線Aを中心として旋回する機能を伴って配されている。従って、旋回可能なキャリッジ8の直線変位軸線Yは、Aを中心とする回転運動の旋回位置によって決定される。工具は、直線変位軸線Yと平行に延びる軸線Bを中心として回転する。従って、軸線Aを中心として旋回する機能に関し、これら軸線の交差角は、被加工物の内歯の創成および機械加工のために設定される。
【0034】
図示実施例において、直接駆動が工具主軸および被加工物主軸のそれぞれの回転CおよびBのために与えられる。慣例に従い、X,Y,Zに沿ってA,B,Cを中心とする運動は、コンピューター化された数値制御(CNC)により行われる。この点まで記述したような工作機械の形態は、周知の最新技術に属する。この装置は、内歯または外歯をスカイビング加工することに加え、軸線を或る角度にて交差させる硬質仕上げ作業や、シェービング作業(ソフトシェービング)にもさらに適している。
【0035】
しかしながら、このスカイビング装置100は、工具キャリッジ構成4,6,8の反対側に被加工物主軸および工具主軸のそれぞれの軸線CおよびBによって画成される平面に対してさらなる移動装置を含む。このさらなる移動装置は、第1の直線変位軸線Zと平行に延びる第4の直線変位軸線Z4に沿って機械ベッドに移動可能に設けられたキャリッジ14を持つクロススライド機構12,14として具体化されている。次に、水平キャリッジ14は、さらなる水平キャリッジ12を支持し、その直線変位軸線X2は、スカイビング装置100の第5の直線変位軸線として、第2の直線変位軸線Xと平行に延びている。決して必須ではないけれども、X2およびXと同様に軸線Z4およびZが平行であることは都合がよる。この実施形態においては、キャリッジ12,14の一方が第1の直線変位軸線Zと平行なベクトル成分に関して移動を行うことができるのに対し、キャリッジ12,14の他方が第2の直線変位軸線Xの方向のベクトル成分に関して移動を行うことができることが重要である。キャリッジ12および14の駆動機構は、スカイビング装置100のCNC制御によって同じように作動する。
【0036】
より明瞭に
図2で見ることができるように、軸線X2に沿って運動可能なキャリッジ12は、径方向、すなわち方向X2に延在するアーム16を有し、これは工具主軸に固定される工具50に向けて外側に延びる。この構成におけるアーム16は、
図2に示した位置において、工具または工具主軸とアーム16との間で接触が起こらないように、充分に小さな軸線方向の寸法が与えられている。
【0037】
アーム16に対して取り外し可能に装着されるのは、運動変更装置であり、その構造および機能が
図3および
図4の拡大図を用いて以下に記述される。
【0038】
図3および
図4において、内歯が形成されるべき被加工物は、参照符号20によって識別される。この被加工物20の内歯歯車22に関し、参照符号24は、
図4の紙面を形成する軸線方向断面に位置する歯を識別している。
図2および
図4に示され、内歯歯車22の左側でその直近に隣接する凹部26が被加工物20に形成されており、被加工物によって径方向に囲まれる空間40がこの場所で径方向に延在するようにしている。それ故、空間40が相補的に狭まるテーパー部を有する結果として、被加工物20は、凹部26の後方端に環状の壁28を有する。従って、被加工物によって囲まれる空間40に関し、この領域における空間部48の直径は、空間部48と内歯によって区切られる空間部42との間の軸線方向に位置する空間部46の直径よりも小さい。
【0039】
図2にて見ることができるように、アーム16は、その機能に基づいた取り外し可能に装着される部材を支持し、以下では切り屑ストッパー30として言及される。この切り屑ストッパー30は、当該切り屑ストッパーがねじ部材の如き締結手段によってアーム16に連結される穴を持った基部32を有する。この基部32に隣接する切り屑ストッパーの首部34は、スカイビング工具50の外歯52が配される空間40の空間部42を通って軸線方向に延在する。従って、機械加工中は、切り屑ストッパー30のみならず作業工具50が内歯22によって囲まれた空間42に同時に存在する。
【0040】
首部34の自由端に設けられているのは、
図4でより明瞭に見ることができるように、径方向外側に突出し、従って被加工物20の凹部26へと延びる切り屑ストッパー30のヘッド部36である。図示した例において、切り屑ストッパー30のヘッド部36は、凹部26を塞ぎ、この場所で空間部46をさもなければ取得可能な自由空間から塞がれた空間へと変更している。
【0041】
以下は、切り屑ストッパー30の機能の説明である。
【0042】
被加工物20に対して行われるべき機械加工処理で必要とされるような
図3に示す位置へと工具50を動かす前に、切り屑ストッパー30は、キャリッジ14および12を変位軸線Z4およびX2に沿って動かすことによって
図3に示す位置へと動かされるが、工具50はまだその格納位置ある。軸線Z4に沿った動きが、
図3に示す位置から被加工物軸線に向かう方向へと径方向に位置を変えるキャリッジ12と共に始まる。ヘッド部36が凹部26と直接対向する位置に達した後、ヘッド部36が環状の壁28に対して凹部26を塞ぐまで、キャリッジ12は、径方向外側へと初めて動く。
【0043】
従って、切り屑ストッパー30が所定位置に動いた後、あるいは自由空間40への切り屑ストッパーの位置決めに続き、充分に残っている自由空間が外歯付き工具50を所定位置へと動かすことに応じられる後のどんな場合であっても、内歯歯車22を創成するために利用可能な軸線に対する制御された運動により被加工物と工具とを回転させることによる従来のスカイビング処理の場合のように、工具50は被加工物20と作業かみ合わせ状態へともたらされる。
【0044】
切り屑ストッパー30がない場合、機械加工処理で作り出される切り屑の一部が空間部48を通して切り屑を吹き飛ばすことをもたらす圧縮空気の噴射(図示せず)によって自由空間40から除去されるのではなく、これらが被加工物の高速rpmのために高回転速度と、結果として生ずる遠心力とにさらされているので、最終的に凹部26に行き着き、もはや壁28をきれいにしない。凹部26に集まる切り屑は、工具50の作業領域に結局は到達し、結果として現在創成されている被加工物が工具と同様に損傷を受けたり、あるいは破壊されたりしさえしよう。これはまた、先細の自由空間を持つ被加工物をなぜスカイビング加工によってあらかじめ作り出すことができなかったかという理由でもある。
【0045】
しかしながら、切り屑ストッパー30が被加工物と平行な所定の位置に動かされるという結果として、ヘッド部36は対応する方位角の場所にて凹部26を塞ぐ。これは、凹部26に集まる可能性のある任意の切り屑が切り屑ストッパー30に衝突するという結果を有し、切り屑の質量は切り屑ストッパーの質量よりも数桁小さいので、これらの方位速度がそれらの直前の速い速度と比較して著しく減じられ、それどころか衝突面が形成された後にゼロに近いレベルまで減じられるようになっている。結果として、切り屑に作用する遠心力がゼロまで実質的に減少し、切り屑は、用いられている圧縮空気の作用によって自由空間40の外へさらに動かされる。
【0046】
ヘッド部36の衝突面は、図示していないけれども、方位角によって径方向内側部分が被加工物の回転方向に減少するように、径方向に対して傾けられることができる。従って、衝突面が平坦面である必要はなく、湾曲面であってもよい。この傾斜した方向付けのため、衝突面との衝突は、径方向内側に向けた速度成分を切り屑に与え、これらがより迅速かつ効果的に圧縮空気の流れによって捕らえられ、空間40を離脱することができる。しかしながら、切り屑ストッパー30が衝突面の的確な形状とは無関係であっても、効果的であることが判明している。
【0047】
従って、提案した切り屑ストッパーに関し、スカイビング処理のための適用分野は、前述の形態の内歯を持つ被加工物に対して拡大される。
【0048】
さらにまた、形状および材料の適当な選択に関し、切り屑ストッパー30はまた、例えば後方歯端縁のデバリングの如き追加の機能を満たすことも可能である。これはまた、特に内歯の後方に位置して例えば凹部26それ自体であってよい被加工物の輪郭を創成するためのバイトとして用いることができる。従って、凹部26および内歯歯車22は、例えば同時並行作業として創成されることができ、それによって被加工物の製造のための機械加工時間の合計が著しく減じられる。デバリングに関し、上述したように、人は内部歯車22を創成し、続いてその端縁にて軸線方向に突出する材料を除去するためのデバリング器具としても役立つよう設計された切り屑ストッパー30を使用する可能性を有する(必要な場合、この作業局面中に工具50を格納する)。おそらく、デバリング切り屑ストッパー30の(X2に沿って向けられた)径方向運動のためのさらなる空間を与えるため、スカイビング工具50を格納することが可能である。デバリングの後、このデバリングの結果として歯端縁の領域にて方位角方向に突出する残余の材料を除去するため、スカイビング工具を仕上げパスにて歯面に沿ってもう一度動かすことができる。
【0049】
本発明は、例示した実施例を用いて記述され、構造的に具体化した実施形態に限定されない。どちらかと言えば、個々に、または組み合わせて用いられ、この説明および特許請求の範囲で述べた特徴は、その異なる実施形態において本発明の具体化に欠くことができない可能性がある。