(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0006】
詳細な説明
以下の詳細な説明では、添付の図面を参照する。図面は、説明の一部を形成し、実例として提供されるのであって、限定としてではない。図示される態様は、当業者による本発明の主題の実施を可能にするほど十分詳細に記述されている。本発明の範囲から逸脱することなく、他の態様を用いることができ、かつ機械的、構造的、物質的変更が可能である。
【0007】
以下において、開示される主題のある特定の実施例について詳細に言及するが、その実施例のいくつかは、添付の図面に示されている。開示される主題ついて、主に、添付の図面と併せて説明するが、そのような説明は、開示される主題をそれらの図面に限定することを意図するものではないことは理解されるべきである。逆に、開示される主題は、特許請求の範囲によって定義されるような、開示される本主題の範囲内に含まれ得る代替物、改変物、および等価物のすべてを網羅することが意図される。
【0008】
「一態様」、「ある態様」、「例示的態様」などに対する明細書での言及は、説明される態様が特定の特徴、構造、または特性を含み得ることを示しているが、必ずしも全ての態様が特定の特徴、構造、または特性を含み得るわけではない。さらに、そのような表現は、必ずしも同じ態様について言及しているとは限らない。さらに、特定の特徴、構造、または特性が、ある態様に関連して説明されている場合、明確に説明されているか否かにかかわらず、他の態様に関連するそのような特徴、構造、または特性にも影響を及ぼすことは、当業者の知識の範囲内であると言える。
【0009】
本明細書において、用語「1つの(「a」または「an」)」は、1つまたは複数を包含するために使用され、用語「または(「or」)」は、特に明記されない限り、非排他的な「または(「or」)」を意味するために使用される。さらに、本明細書において使用される表現または専門用語は、特に定義されない限り、説明目的のみのためであり、限定目的ではないことは、理解されるべきである。
【0010】
本発明の主題は、鋳型全体を通して固体-液体境界面の一貫した進行を維持しつつ、方向性凝固技術を使用してシリコンを精製するための鋳型、鋳型システム、および関連する方法に関する。方向性凝固から結果として得られた精製シリコンは、太陽電池において使用することができる。鋳型内の温度勾配を制御することにより、高度に制御された方向性凝固を達成することができることが見出された。シリコンの精製は、以下の実施例において最も詳細に説明されるが、説明されるシステムおよび方法は、サファイアなどの他の材料の方向性凝固および精製にも使用することができる。
【0011】
方向性結晶化は、概して、下部から上部へと進行するので、所望の温度勾配は、下部においてより低い温度を有し、および上部においてより高い温度を有する。温度勾配に対する高度な制御とそれに対応する方向性結晶化は、より効率的な方向性結晶化を有利に可能にすることができ、その結果としてより高純度のシリコンを生じる。
【0012】
図1は、シリコンの方向性凝固のための鋳型システム100の特定の態様を示している。当該システムは、鋳型120の上部分またはその近くに配置された上部加熱器110を含み得る。上部加熱器110は、1つまたは複数の鎖101によって支持することができ、鎖は、垂直構造部材103の穴102により第一端部に係合される。この実施例の鎖101は添えロープを形成し、これにより、クレーンまたは他の揚重システムを使用することによって上部加熱器110を移動させることが可能である。システム100はまた、例えば、フォークリフトまたはテーブルリフトの上に鋳型120を乗せるなどによって、上部加熱器110を鋳型120の上方に残しつつ、移動させることもできる。スクリーンボックス106は、外側鋳型ジャケットから突き出ている上部加熱器110の加熱部材の端部を囲むことができ、これらの部材の端部または付近に存在する熱および電気から使用者を保護する。
【0013】
垂直構造部材103は、上部加熱器110の下端から上部加熱器110の上端まで延在し得る。垂直構造部材103は、上部加熱器110の外側鋳型ジャケットの外側表面上に配置されていてよく、かつ外側表面に対して垂直な方向に外側へと延在していてよい。上部加熱器はさらに、上部加熱器110の外側鋳型ジャケットの外側表面上に配置された水平構造部材104も含み得、水平構造部材は外側表面に対して垂直な方向に外側へと延在し得る。
【0014】
上部加熱器110は、加熱器の外側鋳型ジャケットの一部を形成する縁部105を含み得る。縁部は、外側鋳型ジャケットから外側へと突き出していてよく、かつ存在する任意の断熱材の厚さを覆うように、上部加熱器110の中心軸に向かって内側へと延在し得る。あるいは、縁部105は、上部加熱器110の外側鋳型ジャケットの下端を覆うのに十分に、内側へのみ延在し得る。
【0015】
図1に表された態様において、鋳型120からの断熱材111は、上部加熱器110と鋳型120との間に広がり得る。様々な実施例において、鋳型120の1つまたは複数の断熱層111の少なくとも一部は、鋳型の外側ジャケットの高さの上まで延在し得る。上部加熱器110と同様に、鋳型120は、垂直構造部材112を含み得る。垂直構造部材112は、鋳型120の外側ジャケットの外側表面上に配置され得、ならびに外側ジャケットに対して垂直な方向に外側へと延在し得る。垂直構造部材112は、鋳型120の下端から鋳型120の上端まで延在し得る。鋳型112は、1つまたは複数の水平構造部材113も含み得る。水平構造部材113は、鋳型120の外側ジャケットの外側表面上に示されており、外側鋳型ジャケットから外側へと延在している。水平構造部材113は、円筒形鋳型112の円周の周りに、または非円筒形鋳型の1つまたは複数の辺に沿って、水平に延在し得る。鋳型112は、交差する下部構造部材114、115も含み得る。下部構造部材114、115は、鋳型112の下部を横断して延在し得る。下部構造部材115のいくつかは、フォークリフトまたはテーブルリフトまたは他の機械がシステム100を物理的に操作する(例えば、移動させる)ことを可能にする形状およびサイズであり得る。
【0016】
図2は、本発明の態様による鋳型200を示している。鋳型200は、底部212および壁部断熱構造体220を囲む、側壁201および床202を含む外側鋳型ジャケット210を含む。一実施例において、側壁201および床202は、一体的に形成される。別の実施例において、側壁201および床202は、ボルトで締められるかまたは別の方法で機械的に一緒に接続されて、外側鋳型ジャケット210を形成する。
【0017】
鋳型200は、ある量の溶融シリコンを収容するための内側部分201を鋳型200内に形成する。一実施例において、壁部断熱構造体220は、隣り合って位置決めされたいくつかの異なる材料を含む複合構造体である。複合壁部断熱構造体220の利点の1つとしては、複合構造体の個々の構成要素の材料および幾何学的構造を選択することによって熱勾配を制御する能力が挙げられる。複合壁部断熱構造体220の別の利点としては、鋳型のコストを低減する能力が挙げられる。溶融シリコンが接触するであろう露出表面には、より高コストの高耐熱性の材料を使用し、その一方で、低い耐熱性の低コストの材料は、溶融シリコンとは反対側に複合構造体が進展するように層化させる。
【0018】
一実施例において、壁部断熱構造体220は、第一の厚さ224を有する鋳型200の縁部222から、第一の厚さ224より薄い第二の厚さ228を有する底部212との下部境界面226へとテーパ状になっている。一実施例において、第二の厚さは、第一の厚さよりおよそ25パーセント薄い。作動時には、壁部断熱構造体220のテーパが、方向性凝固の間のシリコンにおける液体-固体境界面の望ましい進行を提供する熱勾配を提供する。一実施例において、壁部断熱構造体220のテーパは、溶融物の表面を液体状態に維持するために溶融物の上部付近においてより一層の断熱を提供し、その一方で、鋳型220の下部における冷却を促進するために、底部212との下部境界面付近には断熱はあまり提供されない。
【0019】
一実施例において、壁部断熱構造体220は、方向性凝固の実施の際に溶融シリコンに直接接触するであろう露出層230を含む。一実施例において、露出層230は、溶融シリコンを収容するために、(組み立てられたレンガ層などとは対照的に)実質的に連続している。良好な熱特性を有する材料の1つとしては、Al
2O
3などの形態の酸化アルミニウムが挙げられる。一実施例において、酸化アルミニウムは、実質的に純粋なAl
2O
3であり、これが、露出層230からシリコン溶融物中へ混入する不純物を最小限に抑える。一実施例において、Al
2O
3は、98パーセントを超える純度のAl
2O
3である。一実施例において、露出層230は、壁部断熱構造体220の上面231を包んでいる。この構成の特徴には、露出層230のような温度に対して高い耐熱性を持ち得ない壁部断熱構造体220内の内部構造または層に対する保護が含まれる。この構成の別の特徴としては、壁部断熱構造体220内の他の層に含有され得る潜在的汚染物質からの溶融シリコンの隔離が挙げられる。
【0020】
一実施例において、壁部断熱構造体220はさらに、露出層230との境界面を形成する耐火レンガの層232を含む。一実施例において、耐火レンガの層232はAl
2O
3を含む。耐火レンガ232は、壁部断熱構造体220に、望ましい構造的特性、例えば靱性などを提供し得る。一実施例において、耐火レンガの層232は、1540℃以下に定格されるレンガを含む。一実施例において、耐火レンガの層232は、1430℃以下に定格されるレンガを含む。耐火レンガ232の選択においては、溶融シリコンの所望の勾配のために必要な厚さおよび熱特性、ならびに他の特性、例えば、コスト、強度、および靱性などの特性の組み合わせが考慮される。
【0021】
一実施例において、壁部断熱構造体220はさらに、微孔性耐火層236も含む。一実施例において、微孔性耐火層236は、1000℃以下に定格される。微孔性耐火層236における細孔は、良好な断熱特性を提供する。選択された実施例において、さらに、セラミック繊維断熱材の層が選択された層の間に含まれる。一実施例において、第一セラミック繊維層238は、外側鋳型ジャケット210と微孔性耐火層236との間に含まれる。一実施例において、第二セラミック繊維層234は、微孔性耐火層236と耐火レンガの層232との間に含まれる。セラミック繊維層の例としては、ボード、柔軟な織物、または他の構成が挙げられる。
【0022】
一実施例において、壁部断熱構造体220の1つまたは複数の層は、壁部断熱構造体220の縁部222から、壁部断熱構造体220の下部226までテーパ状になっており、この場合、壁部断熱構造体220は、底部212との境界面を形成する。
図2に示される実施例において、露出層230および耐火レンガの層232の両方は、縁部222から下部226へとテーパ状になっており、その一方で、微孔性耐火層236は一定の厚さ242を維持している。一実施例において、微孔性耐火層236は、外側鋳型ジャケット210に沿って、ならびに外側鋳型ジャケット210の下部の少なくとも一部を覆うように角240の周りにおいても、一定の厚さ242を維持している。この構成は、シリコンの冷却速度の精密な制御を提供する。
【0023】
一実施例において、底部212は、1つまたは複数の熱伝導層を含む。
図2に示された実施例には、2つの熱伝導層が示されている。グラファイト含有層214が示されており、ならびにシリコンカーバイド層216が示されている。シリコンカーバイドおよびグラファイトなどの材料は、高熱伝導性および高耐熱性といった望ましい特性を有する。示された実施例において、底部212は、それ自体は溶融することなく、またはシリコンに混入することなく、シリコン溶融物から鋳型200の下部へと熱を伝導する。2つの層214、216が示されているが、他の態様は、3つ以上の層または1層のみを含む場合もある。
【0024】
一実施例において、グラファイト含有層214はセミグラファイトを含むが、本発明はそれに限定されない。一実施例において、グラファイト含有層214は、高密度化グラファイトを含み、グラファイト含有層214は、二倍高密度化グラファイトを含む。一実施例において、グラファイト含有層214は、層へと組み立てられたいくつかのグラファイトレンガを使用して形成される。他の実施例は、連続するグラファイトシートまたは鋳造グラファイト層を含む。一実施例において、グラファイト含有層214は、およそ1〜2インチの厚さを有する。一実施例において、グラファイト含有層214は、およそ2インチの厚さを有する。
【0025】
一実施例において、シリコンカーバイド層216は、層へと組み立てられたいくつかのシリコンカーバイドレンガを使用して形成される。一実施例において、シリコンカーバイド層216は、連続するシリコンカーバイドシートである。一実施例において、シリコンカーバイド層216は、適切な位置に鋳造される。一実施例において、シリコンカーバイド層216は、およそ2〜3インチの厚さを有する。一実施例において、シリコンカーバイド層216は、およそ2.5インチの厚さを有する。一実施例において、シリコンカーバイド層216は、耐火性バインダー材料においておよそ80重量%のシリコンカーバイド鋳造物を含む。
【0026】
図2に示す実施例において、シリコンカーバイド層216は、グラファイト含有層214を覆うように形成される。そのような構成において、シリコンカーバイド層216は、グラファイト含有層214などの後続の層中に含まれ得る潜在的な不純物に対する防壁を提供し得る。
【0027】
図2に示す実施例において、グラファイト含有層214は、外側鋳型ジャケット210の底部に隣接するように配置される。そのような構成において、グラファイト含有層214は、下記においてより詳細に説明されるように、外側鋳型ジャケット210に対して、および外側鋳型ジャケット210上に配置された冷却フィンに対して、熱伝導性の増加を提供することができる。一実施例において、本開示において説明する鋳型および鋳型システムの構成は、凝固の先端を1時間あたりおよそ1〜2センチメートルの速度で移動させることができる。一実施例において、本開示において説明する鋳型および鋳型システムの構成は、凝固の先端を1時間あたりおよそ10センチメートルの速度で移動させることができる。
【0028】
図3は、望ましくは凝固が鋳型の下部から上部へと進行している間、シリコン溶融物の上面を液体状態に維持することをさらに容易にし得る上部加熱器300を示している。上部加熱器300は、1つまたは複数の加熱部材310を含み得る。1つまたは複数の加熱部材のそれぞれは、独立して、任意の好適な材料を含み得る。例えば、1つまたは複数の加熱部材310のそれぞれは、独立して、加熱素子を含み得、この場合、加熱素子は、シリコンカーバイド、二ケイ化モリブデン、グラファイト、銅、またはそれらの組み合わせを含んでもよく、かつ1つまたは複数の加熱部材のそれぞれは、二者択一的に、独立して、誘導加熱器を含んでもよい。一態様において、1つまたは複数の加熱部材310は、およそ同じ高さに位置決めされる。別の態様において、1つまたは複数の加熱部材は、異なる高さに位置決めされる。
【0029】
一実施例において、上部加熱器300は、12個の加熱部材310を含む。一実施例において、12個の加熱部材310は、距離312にわたっておよそ等間隔で離間されている。一実施例において、距離312は、およそ54インチである。加熱部材の位置決めおよび加熱部材の数などの可変因子は、処理の際にシリコンに生じる熱勾配に対して重要である。熱勾配における小さい変動も、方向性凝固の際のシリコンにおける液体-固体境界面部分の望ましくない進行を生じる原因となり得る。例えば、溶融シリコンの表面を凝固させて、インゴット内に溶融状態の内部部分を閉じ込めることは望ましくない。閉じ込められたシリコンの溶融部分は、結果として得られるシリコン材料の性能に悪影響を及ぼす望ましくないレベルの不純物を含有し得る。
【0030】
加熱部材310の数および加熱部材310の横方向の間隔に加えて、一実施例では、いくつかの加熱部材310は、溶融物の表面の上方のおよそ1.9インチの距離314に位置決めされる。一実施例において、加熱部材310の直径は、およそ2インチである。加熱部材310の選択された数および加熱部材310の横方向の間隔と共に、選択された寸法、例えば、加熱部材310の直径および溶融物の表面から上方への距離などが、方向性凝固の際のシリコンの液体-固体境界面部分の望ましい進行を提供することが、本開示において見出された。
【0031】
一実施例において、加熱部材310およびシリコン溶融物の表面から酸素などのガスを除去するために、ベント穴302が上部加熱器300に備わっている。一実施例において、望ましくないガスをベント穴302を通して除去するために、真空ポンプ(図示されず)がベント穴302に連結される。一実施例において、直径がおよそ1〜2インチのサイズの単一のベント穴302のみが、上部加熱器300において使用される。一実施例において、単一のベント穴302は、およそ1インチの直径である。適切な寸法の単一のベント穴などの可変因子により、シリコン溶融物の表面の望ましくない冷却を生じることなく、望ましくないガスが効率的に除去されることが見出された。
【0032】
一例において、加熱要素は、シリコンカーバイドを含み、これは、ある特定の利点を有する。例えば、シリコンカーバイド加熱要素は、酸素の存在下において高温でも腐食しない。腐食性材料を含む加熱素子の場合には、真空チャンバーを使用することによって酸素腐食を減じることができるが、シリコンカーバイド加熱素子は、真空チャンバーを用いなくても腐食を避けることができる。さらに、シリコンカーバイド加熱素子は、水冷却リードを用いずに使用することができ、複数の作業ゾーン、例えば、加熱素子の端部での低温ゾーンおよび加熱素子の中心部での高温ゾーンなどを有する。一態様において、加熱素子は、真空チャンバー内において、または水冷却リードを用いて、またはその両方において使用される。別の態様において、加熱要素は、真空チャンバーを用いずに、水冷却リードを用いずに、またはその両方を用いずに使用される。
【0033】
一態様において、1つまたは複数の加熱部材310は、誘導加熱器である。誘導加熱器は、1種または複数種の耐火材料中に鋳造され得る。次いで、誘導加熱コイルを含む耐火材料が、鋳型を覆うように位置決めされ得る。耐火材料は、任意の好適な材料であり得る。例えば、耐火材料は、酸化アルミニウム、酸化シリコン、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化クロム、シリコンカーバイド、グラファイト、またはそれらの組み合わせを含み得る。別の態様において、誘導加熱器は、1種または複数種の耐火材料中に鋳造されない。
【0034】
上部加熱器は、断熱材を含んでいてもよく、例えば、
図4に示される上部加熱器300は、断熱材316を含む。断熱材は、任意の好適な断熱材料を含み得る。断熱材は、1種または複数種の断熱材料を含み得る。例えば、断熱材は、断熱れんが、耐火物、耐火物の混合物、断熱ボード、セラミックペーパー、高温ウール、鋳造断熱材料、またはそれらの混合物を含み得る。断熱ボードは、高温セラミックボードを含み得る。一実施例において、断熱材316は、加熱部材310の周りに鋳造され、それらをより頑健にし、ならびに熱衝撃に対して抵抗性を持たせて加熱部材310の周りの部分の変形を防ぐ。好適な鋳造材料の1つとして、Morgan Thermal Ceramics, Inc.からのKaolite(登録商標) 3300が挙げられる。
【0035】
上部加熱器は、外側ジャケットを含み得、例えば、
図3に示される上部加熱器300は、外側ジャケット304を含む。外側ジャケットは、任意の好適な材料を含み得る。例えば、外側ジャケットは、スチールまたはステンレス鋼を含み得る。別の態様において、外側ジャケットは、スチール、ステンレス鋼、銅、鋳鉄、耐火材料、耐火材料の混合物、またはそれらの組み合わせを含む。断熱材316は、少なくとも部分的に、1つまたは複数の加熱部材と外側ジャケットとの間に配設される。
図4において、外側ジャケット304の下端は、断熱材の下端とおよそ等しく示されている。
【0036】
本発明の範囲内において、多様な上部加熱器が可能である。例えば、外側ジャケット304の端部は、断熱材316および1つまたは複数の加熱部材310の端部より下に延在していてもよい。別の実施例において、外側ジャケット304の端部は、断熱材316の端部より下に、または1つもしくは複数の加熱部材より下に延在していてもよく、あるいはそれらの組み合わせであってもよい。一実施例において、外側ジャケット304は、断熱材316の下端より下に延在し、かつ断熱材の下端を完全にまたは部分的に覆うように続いていてもよい。いくつかの態様において、断熱材の端部を覆う外側ジャケット304の一部は、比較的低い伝導性の材料、例えば、好適な耐火物など、例えば、酸化アルミニウム、酸化シリコン、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化クロム、シリコンカーバイド、グラファイト、またはそれらの組み合わせなど、を含み得る。別の実施例において、外側ジャケット304は、断熱材の下端または1つまたは複数の加熱部材の高さより下には延在していない。別の態様において、外側ジャケット304は、1つまたは複数の加熱部材310の高さより下に延在しているが、依然として断熱材316の下端より上にある。
【0037】
上記で説明したように、当該機器における温度勾配を制御することにより、高度に制御された方向性凝固を達成することができる。温度勾配に対する高度な制御およびそれに対応する方向性結晶化によって、より効果的な方向性凝固が可能となり得、それにより、高純度のシリコンが得られる。本発明において、方向性結晶化は、およそ下部から上部へと進行し、したがって、所望の温度勾配は、下部においてより低い温度を有し、上部においてより高い温度を有する。上部加熱器を有する態様において、上部加熱器は、方向性凝固の鋳型の上部から熱の流入または損失を制御するための方法の1つである。
【0038】
図5は、本発明のある態様による方向性凝固システム500を示している。鋳型501は、壁部構造体502および底部504によって形成される。鋳型501は、ある体積の溶融シリコン503を収容して、方向性凝固プロセスにおいて溶融シリコン503を冷却するように、適合される。システム500は、溶融シリコン501の熱勾配および冷却速度を制御するための上部加熱器520も含む。他の態様において上記で説明された上部加熱器と同様の、いくつかの加熱素子522を含む上部加熱器520が示されている。
【0039】
空間511を形成するために鋳型501を床面512の上方のある距離に保持している支持構造体510が示されている。一実施例において、鋳型501の底部504における冷却速度を制御するために、空気または他の冷却媒体の流れが空間511内において制御される。一実施例において、空間511内において空気または他の冷却媒体を移動させるために、1つまたは複数の流路が備えられている。
図5には、流路540が示されている。選択された実施例では、2つの流路が使用されているが、他の実施例は、3つ以上の流路または1つだけの流路を含む。単一の流路は、同時に導入口および導出口として機能し得る。
【0040】
図5にはさらに、ファンまたは空気もしくは他の冷却媒体の他の能動的駆動機などの空気循環装置550も含まれている。一実施例において、空気循環装置550は、底部504のおよそ中心に位置決めされた水平ファンを含む。
図5には、第一バッフル530および第二バッフル534も示されている。第一バッフル530は、空間532を調節して鋳型501の下の空間511への計量されたアクセスを提供するために、方向531に移動可能である。同様に、第二バッフル534は、空間536を調節して鋳型501の下の空間511への計量されたアクセスを提供するために、方向535に移動可能である。作動時には、1つまたは複数のバッフル、例えば、バッフル530および534などを移動させることで、空間511内の循環および冷却条件が変更される。一実施例において、1つまたは複数のバッフル、例えば、バッフル530および534などと共に、循環装置538の速度も変えることができる。
【0041】
一実施例において、いくつかの冷却構造体(例えば、フィンなど)が、空間511内に配置され、鋳型501の底部504に連結されている。冷却構造体は、鋳型の底部504から熱を伝導する能力を高める。ただし、空間511がバッフル530および534によって閉じられている場合、底部504において冷却はほとんど生じないであろう。
【0042】
一実施例において、底部504は、上記の実施例において説明されるようなグラファイト含有層を含む。一実施例において、底部504は、いくつかの熱伝導層を含む。一実施例において、底部504はさらに、上記の実施例において説明されるようなシリコンカーバイド層を含む。
【0043】
一実施例において、さらに、金属熱拡散層506が底部504に含まれる。一実施例において、金属熱拡散層506は、溶融シリコン503から離れて配置される。一実施例において、金属熱拡散層506の厚さは、加熱および冷却における熱的力による反りを防ぐのに十分厚く、良好な熱伝導を提供するのに十分薄い。一実施例において、金属熱拡散層506は、およそ0.75インチの厚さの層を含む。
【0044】
一実施例において、底部504における熱伝達は、材料選択によって制限され、この場合、グラファイト熱含有層は、シリコンカーバイド底部層のみを有する態様よりも高い熱伝導を提供する。
【0045】
図5に示されているように、一実施例において、バッフル530および534は、鋳型501の両方の壁部502を覆い、かつ任意で鋳型501の下の空間511へのアクセスを覆う断熱壁を含む。鋳型501の壁部502に隣接するさらなる適用範囲はさらに、壁部502の反対側の領域における溶融シリコン503を断熱し、かつ底部504での凝固前の壁部での望ましくない凝固を防ぐ。一実施例において、バッフル530および534の断熱壁は、鋳型501と上部加熱器520との間の境界面524も覆う。この構成は、境界面524での熱損失に対するさらなる保護を提供する。バッフル材料の例としては、耐火材料または他の断熱材料、例えば、上記の態様において説明したものなど、が挙げられる。
【0046】
作動時には、バッフル530および534は、いくつかの方法において制御することができる。一実施例において、バッフル530および534は、方向性凝固プロセスの際に一度設定される、調節可能な空間532、504を提供する。一実施例において、1つまたは複数のバッフル530および534が、経路540、542を徐々に開放するために、方向531、535において連続的な変化量で移動するように設定される。バッフル530および534の動きは、各バッフルにおいて同じ変化量であってもよく、または各バッフルを異なる速度で操作することもできる。バッフル530および534の変化量は直線的であってもよく、または変化量は、方向性凝固プロセスの間に変えることもできる。
【0047】
循環装置538、バッフル530および534、上部加熱器520、テーパ状の壁部構造体502、グラファイト含有層、金属熱拡散体506、およびフィン508などの可変因子を用いることによって、溶融シリコン503に対する冷却の速度およびプロファイルを、正確に制御することができる。一実施例において、フィン508は、
図6に示されているように、底部540上に放射状に配置される。放射状フィン508が水平ファン550と組み合わされる場合、他のファンおよびフィンの配置に勝る熱伝達の増加が可能である。
【0048】
冷却の速度およびプロファイルの制御は、いくつかの利点、例えば、不純物分離の効率向上などを提供する。上記において説明した構成および方法を使用して、より少ない方向性凝固工程においてシリコンを処理することができ、より高純度で、より速い処理速度において、より大きなインゴットを製造するために、シリコンのより大きなバッチを処理することができる。
【0049】
図6は、鋳型602および脱着可能な熱拡散体610を含むシステム600を示している。鋳型602は、縁部604および底部606を含む。いくつかの方向性凝固の操作において、鋳型602が受ける大きな熱勾配は、鋳型602の底に配置された熱拡散構造体の歪みおよび損傷の原因となり得る。一体化された熱拡散体を有する歪んだ鋳型において修復が必要な場合、修理の間、鋳型全体を製造から外さなければならない。
図6に示された実例構成において、歪んだまたは損傷した脱着可能な熱拡散体610は、修理のために取り外すことができ、歪んだまたは損傷した脱着可能な熱拡散体610が修理されている間、鋳型602を製造において利用可能に維持するために、予備の脱着可能な熱拡散体610を即座に取り付けることができる。
【0050】
図7において、脱着可能な熱拡散体610の底面図が示されている。一実施例において、いくつかの放射状の冷却フィン614が備わっている。一実施例において、フォークリフトのためのスロットなどの輸送システムまたは他の輸送システムが、脱着可能な熱拡散体610に備わっている。取り付け位置612を使用することにより、脱着可能な熱拡散体610を鋳型602の底部606に連結することができる。連結方法の例としては、掛け金、緊結用ハードウェア、または他の緊結システムの使用が挙げられる。緊結用ハードウェアの例としては、これらに限定されるわけではないが、ボルト、ネジ、ナット、リベット、または他の好適な留め具が挙げられ、この場合、脱着可能な熱拡散体610は、鋳型の底部606から分離して脱着可能である。一実施例において、犠牲的留め具、例えばリベットなどが使用され、この場合、脱着可能な熱拡散体610は、切断または別の方法で犠牲的留め具を破壊することによって取り外され、脱着可能な熱拡散体610を再び取り付けるためには、新しい犠牲的留め具が使用される。犠牲的留め具を使用する構成は、溶接で一体化された熱拡散体よりも取り外しが容易であり、それにもかかわらず、脱着可能な熱拡散体610を鋳型602の底部606に対して確実に保持する。
【0051】
歪んだまたは損傷した脱着可能な熱拡散体610を迅速に交換する能力に加えて、脱着可能な熱拡散体610は選択されたいくつかの取り付け位置612において鋳型602に取り付けられているだけなので、脱着可能な熱拡散体610は、鋳型602から独立して、熱応力下での伸縮に対してある程度の自由が許容されており、これが歪みの原因を減少させる。選択された実施例において、取り付け位置612は、細長い穴状の開口部または大きめの開口部を含み、これが、脱着可能な熱拡散体610に対して、鋳型602から独立して、留め具(掛け金、緊結用ハードウェアなど)の周りの膨張および収縮に対する動きのさらなる自由を可能にする。
【0052】
本明細書において開示される鋳型、鋳型システム、および関連する方法をより良く示すために、実施例の非限定的な一覧を以下に提供する。
【0053】
実施例1は、
外側鋳型ジャケットと、
外側鋳型ジャケットの壁部に内張りされた少なくとも1つの断熱層と、
グラファイト含有層を含む、外側鋳型ジャケットの底部に内張された少なくとも1つの熱伝導層と
を含む方向性凝固のためのシステムを含む。
【0054】
実施例2は、少なくとも1つの熱伝導層が、外側鋳型ジャケットに隣接するグラファイト含有層と、使用時に溶融シリコンに接触する露出表面を形成するシリコンカーバイド層とを含む、実施例1のシステムを含む。
【0055】
実施例3は、シリコンカーバイド層がおよそ2〜3インチの厚さである、実施例1〜2のうちのいずれか1つのシステムを含む。
【0056】
実施例4は、シリコンカーバイド層が鋳造シリコンカーバイド層を含む、実施例1〜3のうちのいずれか1つのシステムを含む。
【0057】
実施例5は、グラファイト含有層がおよそ1〜2インチの厚さである、実施例1〜4のうちのいずれか1つのシステムを含む。
【0058】
実施例6は、外側鋳型ジャケットの底部が、およそ0.76インチの厚さのスチール層を含む、実施例1〜5のうちのいずれか1つのシステムを含む。
【0059】
実施例7は、グラファイト含有層がいくつかの別々のグラファイトレンガを含む、実施例1〜6のうちのいずれか1つのシステムを含む。
【0060】
実施例8は、グラファイト含有層がセミグラファイトを含む、実施例1〜7のうちのいずれか1つのシステムを含む。
【0061】
実施例9は、鋳型を含む、方向性凝固のためのシステムを含む。鋳型は、外側鋳型ジャケットと、外側鋳型ジャケットの壁部に内張りされた少なくとも1つの断熱層と、グラファイト含有層を含む、外側鋳型ジャケットの底部に内張された少なくとも1つの熱伝導層とを含む。システムは、床面の上方に鋳型を離間しかつ鋳型と床との間に空間を規定する支持構造体と、該空間における1つまたは複数の流路内で空気を移動させる空気循環システムとをさらに含む。
【0062】
実施例10は、空気循環システムがファンを含む、実施例9のシステムを含む。
【0063】
実施例11は、空気循環システムが、前記空間内に配置された水平ファンを含む、実施例9〜10のうちのいずれか1つのシステムを含む。
【0064】
実施例12は、前記空間内での空気の流れを制御するための1つまたは複数の調節可能なバッフルをさらに含む、実施例9〜11のうちのいずれか1つのシステムを含む。
【0065】
実施例13は、鋳型を含む、方向性凝固のためのシステムを含む。鋳型は、外側鋳型ジャケットと、外側鋳型ジャケットの壁部に内張りされた少なくとも1つの断熱層と、グラファイト含有層を含む、外側鋳型ジャケットの底部に内張された少なくとも1つの熱伝導層と、外側鋳型ジャケットの底部の外側表面に配置された、放射状のフィンを有する金属熱交換器とを含む。システムはまた、床面の上方に鋳型を離間しかつ鋳型と床との間に空間を規定する支持構造体と、該空間における1つまたは複数の流路内で空気を移動させる空気循環システムとを含む。
【0066】
実施例14は、放射状のフィンを有する金属熱交換器がスチール熱交換器を含む、実施例13のシステムを含む。
【0067】
実施例15は、放射状のフィンを有する金属熱交換器が脱着可能であり、かつ外側鋳型ジャケットから分離している、実施例13〜14のうちのいずれか1つのシステムを含む。
【0068】
実施例16は、上部加熱器をさらに含む、実施例13〜15のうちのいずれか1つのシステムを含む。
【0069】
実施例17は、空気循環システムが、前記空間内に配置された水平ファンを含む、実施例13〜16のうちのいずれか1つのシステムを含む。
【0070】
実施例18は、前記空間内での空気の流れを制御するための1つまたは複数の調節可能なバッフルをさらに含む、実施例13〜17のうちのいずれか1つのシステムを含む。
【0071】
実施例19は、ある量の溶融シリコンを鋳型内に配置する工程を含む方向性凝固の方法を含み、該鋳型は、外側鋳型ジャケットと、外側鋳型ジャケットの壁部に内張りされた少なくとも1つの断熱層と、グラファイト含有層を含む、外側鋳型ジャケットの底部に内張された少なくとも1つの熱伝導層とを含む。該方法は、熱が鋳型の底部から優先的に伝導されるように、溶融シリコンを方向性凝固させる工程をさらに含む。
【0072】
実施例20は、溶融シリコンを方向性凝固させる工程が、1時間あたりおよそ1〜2センチメートルの速度で溶融シリコンを方向性凝固させることを含む、実施例19の方法を含む。
【0073】
実施例21は、溶融シリコンを方向性凝固させる工程が、1時間あたりおよそ2〜10センチメートルの速度で溶融シリコンを方向性凝固させることを含む、実施例19〜20のうちのいずれか1つの方法を含む。
【0074】
本発明の鋳型、鋳型システム、および関連する方法のこれらの実施例および他の実施例ならびにその特徴については、以下の詳細な説明においてその一部を説明する。これらの概説は、本主題の非限定的な例を提供することを意図するものであって、排他的または包括的な説明を提供することを意図するものではない。以下の詳細な説明は、本発明の鋳型、鋳型システム、および方法についてのさらなる情報を提供するために含められる。
【0075】
本主題のいくつかの態様について説明してきたが、上記の態様は、包括的であることを意図するものではない。示された特定の態様の代わりに、鋳型全体を通しての固体-液体界面の一貫した進行を維持しつつ、方向性凝固技術を使用してシリコンの精製を達成するために構成された任意の配置を用いることができることを、当業者は理解するであろう。上記の態様の組み合わせおよび他の態様は、上記の説明を吟味することにより、当業者に明らかとなるであろう。この出願は、本主題のあらゆる適合例または変更例を網羅することが意図される。上記の説明は、例示を意図するものであって、制限を意図するものではないことは理解されたい。