(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基材と、前記基材の上に形成され、NOx還元用触媒金属及びNOx吸蔵材を含有している第一触媒層と、前記第一触媒層の上に形成され、NOx酸化用触媒金属を含有している第二触媒層とを有している排ガス浄化触媒であって、
前記第二触媒層の全細孔の体積割合が、2.82体積%以上8.30体積%以下であり、
前記第二触媒層において、1000μm3以上の全大細孔の体積の合計を、10〜1000μm3の全中細孔の体積の合計で除した値が、2.44以下である、
排ガス浄化触媒。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。さらに、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
全全
【0015】
また、本発明において、「大細孔」とは、1000μm
3以上の体積を有している細孔を意味し、「中細孔」とは、10〜1000μm
3の体積を有している細孔を意味し、かつ「小細孔」とは、10μm
3以下の体積を有している細孔を意味している。
【0016】
《従来の排ガス浄化触媒》
従来の排ガス浄化触媒は、基材と、基材の上に形成され、NOx還元用触媒金属及びNOx吸蔵材を含有している第一触媒層と、第一触媒層の上に形成され、NOx酸化用触媒金属を含有している第二触媒層とを有している。
【0017】
従来の排ガス浄化触媒では、リーン雰囲気において、第二触媒層に含有されているNOx酸化用触媒金属が、NOが酸化されてNO
2に転化する反応を触媒し、これによって排ガス浄化触媒がNO
2を吸蔵し、かつストイキ及びリッチ雰囲気において、第一触媒層に含有されているNOx還元用触媒金属が、吸蔵されているNO
2が還元されてN
2に転化する反応を触媒し、これによってNOxが浄化される。
【0018】
本発明者らは、従来の排ガス浄化触媒では、排ガス中のNOxが十分に吸蔵されていないことを見出した。これは、何らの論理に束縛されないが、第二触媒層が有している比較的多数の大細孔を通して、排ガスが第一触媒層に不均一に供給されるため、第二触媒層でNOxの酸化反応が十分に触媒されていないこと、かつ/又は第一触媒層でNOxの吸蔵が十分に行われていないことによると考えれる。したがって、本発明者らは、NOx吸蔵能を改善するために、下記の本発明の排ガス浄化触媒に想到した。
【0019】
《本発明の排ガス浄化触媒》
本発明の排ガス浄化触媒は、基材と、基材の上に形成され、NOx還元用触媒金属及びNOx吸蔵材を含有している第一触媒層と、第一触媒層の上に形成され、NOx酸化用触媒金属を含有している第二触媒層とを有している。
【0020】
また、本発明の排ガス浄化触媒では、第二触媒層の全細孔の体積割合が、2.82体積%以上、3.00体積%以上、3.50体積%以上、又は3.52体積%以上でよい。これによって、排ガスが、第二触媒層中に十分に進入することができる。さらに、本発明の排ガス浄化触媒では、第二触媒層の全細孔の体積割合が、8.30体積%以下、8.00体積%以下、7.50体積%以下、7.00体積%以下、6.00体積%以下、5.00体積%以下、又は4.67体積%以下でよい。これによって、排ガスが、第二触媒層で十分に処理される。
【0021】
さらに、本発明の排ガス浄化触媒の第二触媒層において、細孔の形状が、細長い形状であってよい。これによって、当該排ガス浄化触媒の第二触媒層において、独立気孔の割合よりも、連続気孔の割合を高くすることが可能であり、排ガスが、第二触媒層中に十分に拡散することができる。また、細孔の形状が細長い形状、すなわち楕円形状であるため、真球形状の細孔と比較して、比表面積が大きい。したがって、より多くの排ガスを処理することができる。
【0022】
細孔の形状を、細孔の断面の縦横比で数値化してよい。また、縦横比の頻度分布の最頻値は、2以上であるのが好ましい。すなわち、第二触媒層において、2以上の縦横比を有している細孔が、最も多く存在しているのが好ましい。これによって、連続気孔の割合を高くすることが可能となるためである。また、最頻値は、2以上100以下であることがより好ましく、2以上20以下であることがさらに好ましく、2以上5以下であることが特に好ましい。
【0023】
また、本発明の排ガス浄化触媒の第二触媒層において、1000μm
3以上の全大細孔の体積の合計を、10〜1000μm
3の全中細孔の体積の合計で除した値は、2.44以下、2.40以下、又は2.00以下でよい。すなわち、中細孔の割合が増加するため、大細孔に進入した排ガスが中細孔にさらに進入することができる。
【0024】
さらに、本発明の排ガス浄化触媒の第二触媒層において、1000μm
3以上の全大細孔の体積の合計を、10〜1000μm
3の全中細孔の体積の合計で除した値は、0.50以上、又は1.00以上でよい。すなわち、大細孔の割合が増加するため、より多くの排ガスが第二触媒層に進入し易くなる。
【0025】
本発明の排ガス浄化触媒の第二触媒層において、1000μm
3以上の全大細孔の体積の合計を、10〜1000μm
3の全中細孔の体積の合計で除した値が、上記の範囲で特定される数値であることによって、第二触媒層が有している比較的少数の大細孔及び比較的多数の中細孔を通して、排ガスが第一触媒層に均一に供給され、NOxの酸化効率、及び/又はNOxの吸蔵効率を、向上することができる。すなわち、第二触媒層を通過した排ガスに含有されているNOxは、十分に酸化され、第一触媒層に均一に供給されてNOx吸蔵材で吸蔵されてよい。
【0026】
なお、本発明において、「第二触媒層の全細孔の体積割合」は、第二触媒層において、単位体積に存在している全細孔の体積の合計を、当該単位体積で除した値を意味する。具体的には、「第二触媒層の全細孔の体積割合」は、X線コンピュータ断層撮影(X線CT)によって撮影された複数の画像から、三次元画像解析装置を用いて三次元像を作製し、当該三次元像中の全細孔の体積の合計を、当該三次元像の全体積で除した値である。また、本発明において、「1000μm
3以上の全大細孔の体積の合計」は、上記の三次元像中において1000μm
3以上の全大細孔の体積の合計を算出した値である。さらに、「10〜1000μm
3の全中細孔の体積の合計」は、上記の三次元像中において10〜1000μm
3の全中細孔の体積の合計を算出した値である。
【0027】
図1(a)は、従来の排ガス浄化触媒の概念図を示している。従来の排ガス浄化触媒100は、第一触媒層110と、第一触媒層110の上に形成されている第二触媒層120とを有している。また、第一触媒層110は、第一触媒部分111を有し、かつ第二触媒層120は、第二触媒部分121、及び比較的多数の大細孔122を有している。排ガス130は、この大細孔122に進入して、不均一に第一触媒層110に至り、そして、第一触媒層110の触媒部分111に至る。この排ガス浄化触媒100では、第一触媒層110の触媒部分の一部しか活用しておらず、排ガス中のNOxが十分に吸蔵されていない。
【0028】
図1(b)は、本発明の排ガス浄化触媒の一実施形態の概念図を示している。排ガス浄化触媒200は、NOx吸蔵材を含有している第一触媒層210と、第一触媒層210の上に形成されている第二触媒層220とを有している。また、第一触媒層210は、第一触媒部分211を有し、かつ第二触媒層220は、触媒部分221、及び比較的多数の中細孔222を有している。排ガス230は、この中細孔222に進入して、これに含有されているNOxが酸化される。そして、排ガス230は、比較的均一に第一触媒層210に至り、第一触媒層210の触媒部分211に至る。この排ガス浄化触媒200では、NOx吸蔵材を含有している第一触媒層210の触媒部分の全体を活用しているので、NOxの酸化効率、及び/又はNOxの吸蔵効率が、向上している。
【0029】
下記で本発明の排ガス浄化触媒の構成要素を詳細に説明する。
【0030】
〈基材〉
基材は、排ガスを通過させるガス流路を有する。このガス流路の構造は、例えばハニカム構造、フォーム構造、又はプレート構造でよい。基材の材質の例は、特に限定されず、コージェライト、SiC等のセラミックス製のもの、金属製のもの等でよい。
【0031】
〈第一触媒層〉
第一触媒層は、NOx還元用触媒金属及びNOx吸蔵材を含有し、さらに、他の触媒金属、担体粉末、及び助触媒を、任意選択的に含有している。
【0032】
第一触媒層の厚みとしては、特に限定されないが、15〜130μmの範囲が好ましく、70〜120μmの範囲がより好ましい。第一触媒層の厚みが上記範囲内であると、排ガスを第一触媒層に十分に接触させることができる。
【0033】
(NOx還元用触媒金属)
NOx還元用触媒金属は、リッチ雰囲気において、NOxの還元反応を触媒することが可能な金属であれば、特に限定されない。NOx還元用触媒金属の例は、NOxの還元反応を触媒する能力の観点から、白金族元素、例えば、Rhでよい。
【0034】
第一触媒層中におけるNOx還元用触媒金属の含有濃度は、特に限定されないが、0.05〜10g/Lの範囲が好ましく、0.1〜5g/Lの範囲がより好ましい。なお、ここで「g/L」とは、基材1LあたりのNOx還元用触媒金属の質量(g)を意味している。
【0035】
(NOx吸蔵材)
NOx吸蔵材は、NOx還元用触媒金属の触媒活性を抑制しなければ、特に限定されない。NOx吸蔵材の例としては、アルカリ金属及びその塩、例えば、リチウム(Li)及び酢酸リチウム、カリウム(K)及び酢酸カリウム等;アルカリ土類金属及びその塩、例えば、バリウム(Ba)及びは酢酸バリウム等;並びにこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0036】
(他の触媒金属)
他の触媒金属は、NOx還元用触媒金属の触媒活性を抑制しなければ、特に限定されない。
【0037】
(担体粉末)
担体粉末は、NOx還元用触媒金属の触媒活性を抑制しなければ、特に限定されない。担体粉末は、NOx還元用触媒金属及び任意選択的な他の触媒金属を担持してよい。担体粉末の例として、シリカ(SiO
2)、ジルコニア(ZrO
2)、セリア(CeO
2)、アルミナ(Al
2O
3)、チタニア(TiO
2)、及びそれらの固溶体、並びにそれらの組み合わせ等を挙げることができる。担体粉末は、例えば、アルミナ−ジルコニア−チタニアの複合酸化物でよい。
【0038】
粉末担体が担持している触媒金属及び/又は他の触媒金属の担持量は、特に限定されないが、例えば、粉末担体100質量部に対して、一般に、0.01質量部以上、0.05質量部以上、0.1質量部以上、0.5質量部以上、若しくは1質量部以上の担持量でよく、及び/又は5質量部以下、3質量部以下、若しくは1質量部以下でよい。
【0039】
(助触媒)
助触媒は、NOx還元用触媒金属の触媒活性を抑制しなければ、特に限定されない。助触媒は、触媒活性、例えば触媒金属の触媒活性をより向上させる目的で用いられる。助触媒の例は、特に限定されないが、セリアでよい。
【0040】
〈第二触媒層〉
第二触媒層は、NOx酸化用触媒金属を含有し、さらに、他の触媒金属、担体粉末、NOx吸蔵材、及び助触媒を、任意選択的に含有している。
【0041】
第二触媒層の厚みとしては、特に限定されないが、50〜120μmの範囲が好ましく、15〜65μmの範囲がより好ましい。第二触媒層の厚みが前記範囲内であると、排ガスを第二触媒層に十分に接触させることができる。
【0042】
(NOx酸化用触媒金属)
NOx酸化用触媒金属は、NOxの酸化反応を触媒することが可能であれば、特に限定されない。NOx酸化用触媒金属の例は、リーン雰囲気において、NOxの酸化反応を触媒する能力の観点から、白金族元素、例えば、Pt及び/又はPdでよい。
【0043】
第二触媒層中におけるNOx酸化用触媒金属の含有濃度は、特に限定されないが、0.05〜10g/Lの範囲が好ましく、0.1〜5g/Lの範囲がより好ましい。なお、ここで「g/L」とは、基材1LあたりのNOx酸化用触媒金属の質量(g)を意味している。
【0044】
他の触媒金属、担体粉末、NOx吸蔵材、及び助触媒に関しては、上記の第一触媒層の記載を参照することができる。
【0045】
《本発明の排ガス浄化方法》
排ガスを浄化する本発明の方法は、リーン雰囲気において、上記本発明の排ガス浄化触媒に、NOを含有している排ガスを接触させて、NO
2に酸化して吸蔵し、ストイキ雰囲気又はリッチ雰囲気において、吸蔵されたNO
2を還元して浄化する。
【0046】
本発明の方法を、リーン雰囲気で稼働する内燃機関に適用することが好ましい。これは、リーン雰囲気では、HC及びCOが酸化及び浄化され易い一方で、NOxが還元及び浄化されにくいため、NOxが大量に発生するためである。
【0047】
リーン雰囲気において、本発明の排ガス浄化触媒に、NOを含有している排ガスを接触させる方法としては、任意選択的な方法を採用することができる。
【0048】
《排ガス浄化触媒の製造方法》
排ガス浄化触媒を製造する方法は、例えば下記の工程を含む:
基材に、第一触媒層スラリーを塗工して、第一触媒層スラリー層を形成し、第一触媒層スラリー層を乾燥及び/又は焼成して、第一触媒層を形成する工程;かつ
基材の表面上に形成された第一触媒層に、さらに第二触媒層スラリーを塗工して、第二触媒層スラリー層を形成し、第二触媒層スラリー層を乾燥及び/又は焼成して、第二触媒層を形成する工程。
【0049】
〈第一触媒層を形成する工程〉
(第一触媒層スラリーの調製及び塗工)
第一触媒層を形成する工程は、第一触媒層スラリーを調製する操作を含んでよい。
【0050】
第一触媒層スラリーは、上記の本発明の排ガス浄化触媒の第一触媒層に含まれる材料の他に、溶媒及びバインダーを含んでよい。
【0051】
なお、触媒金属の原料、例えばNOx還元用触媒金属の原料の例は、当該触媒金属の塩及びハロゲン化物、並びにこれらの組み合わせを挙げることができる。触媒金属の原料の例としては、触媒金属の無機塩、例えば、硝酸塩、リン酸塩、及び硫酸塩等;触媒金属の有機酸塩、例えば、シュウ酸塩及び酢酸塩等;触媒金属のハロゲン化物、例えば、フッ化物、塩化物、臭化物、及びヨウ化物等;並びにこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0052】
溶媒の例は、特に限定されないが、例えば水やイオン交換水でよい。また、バインダーの例は、特に限定されないが、アルミナバインダーでよい。
【0053】
第一触媒層スラリーを塗工する方法の例は、特に限定されないが、ウォッシュコート法でよい。
【0054】
(第一触媒層スラリー層の乾燥等)
第一触媒層スラリー層を乾燥する温度、時間、及び雰囲気は、特に限定されないが、例えば80〜120℃の範囲の温度、1〜10時間の範囲の時間、及び大気雰囲気でよい。第一触媒層スラリー層を焼成する温度、時間、及び雰囲気は、特に限定されないが、400〜1000℃の範囲の温度、2〜4時間の範囲の時間、及び大気雰囲気でよい。
【0055】
〈第二触媒層を形成する工程〉
(第二触媒層スラリーの調製及び塗工、並びにその層の乾燥等)
第二触媒層を形成する工程では、第二触媒層スラリーを調製する操作を含んでよい。
【0056】
第二触媒層スラリーは、上記の本発明の排ガス浄化触媒の第二触媒層に含まれる材料の他に、気孔形成材、溶媒及びバインダーを含んでよい。
【0057】
気孔形成材は、目的とする大きさを有している細孔を第二触媒層に形成するのに用いてよい。気孔形成材の形状は、特に限定されないが、細長い形状であるのが好ましい。第二触媒層の細孔の形状は、気孔形成材が焼失することによって形成されるためである。
【0058】
気孔形成材のサイズが、本発明において目的とする中細孔サイズ(10〜1000μm
3)よりも、比較的大きい場合には、例えば、中細孔サイズの気孔形成材を同量で使用した条件と比較して、製造された排ガス浄化触媒の第二触媒層において全大細孔の体積の合計に対する10〜1000μm
3の中細孔の体積の合計の割合が、大きくなる傾向がある。換言すれば、1000μm
3以上の全大細孔の体積の合計を、10〜1000μm
3の全中細孔の体積の合計で除した値が、小さくなる傾向がある。
【0059】
なんらの論理に束縛されないが、気孔形成材のサイズが、目的とする中細孔の生成に影響することを、
図2を参照して説明する。
図2(a)は、中細孔の模式図であり、
図2(b)は、大細孔の模式図である。
【0060】
図2(a)は、気孔形成材のサイズが、本発明において目的とする中細孔のサイズと同程度である場合には、目的とする中細孔よりも小さな小細孔の割合が高くなる傾向があることを示している。すなわち、中細孔の周りの亀裂は、この中細孔より小さいため、目的とする中細孔より小さな小細孔の割合が、中細孔と比較して高くなる傾向がある。
【0061】
図2(b)は、気孔形成材のサイズが、本発明おいて目的とする中細孔のサイズより比較的大きい場合には、大細孔よりも小さな中細孔の割合が高くなる傾向があることを示している。すなわち、大細孔の周りの亀裂は、この大細孔より小さいため、目的とする中細孔の割合が、大細孔と比較して高くなる傾向がある。
【0062】
気孔形成材のサイズに関して、特に限定されないが、その短径最頻値が10〜50μmの範囲にあるのが好ましく、その長径最頻値が20〜70μmの範囲にあるのが好ましい。また、気孔形成材のサイズに関して、特に限定されないが、その体積が10〜2000μm
3の範囲にあるのが好ましく、220〜1400μm
3の範囲にあるのがより好ましい。なお、気孔形成材のサイズは、第二触媒層スラリー中の溶媒等の影響で気孔形成材が、膨張又は収縮することを考慮して、決定してもよい。
【0063】
気孔形成材の例として、特に限定されないが、炭素含有化合物、例えば、カーボンやセルロース、ポリカーボネート、及びブドウ糖、並びにこれらの組み合わせを挙げることができる。これらの炭素含有化合物は、比較的低温、例えば200〜400℃の温度で焼失することができる。
【0064】
第二触媒層スラリーの調製及び塗工、並びにその層の乾燥等に関して、上記の第一触媒層スラリーの調製及び塗工、並びにその層の乾燥等の記載を参照することができる。
【0065】
なお、第二触媒層スラリーを乾燥及び/又は焼成する場合には、気孔形成材を燃焼させることを考慮した時間、温度、及び雰囲気を採用するのが好ましい。しかしながら、搭載される内燃機関から排出される排ガスの温度が、当該気孔形成材を焼失させるのに十分に高い温度である場合には、排ガス浄化触媒を、内燃機関に搭載した段階において、気孔形成材が、排ガス浄化触媒中に残存していてもよい。
【0066】
なお、上記の本発明の排ガス浄化触媒、上記の本発明の排ガス浄化方法、及び排ガス浄化触媒の製造方法に関して、それらの記載を相互に関連付けて参照することができる。
【0067】
以下に示す実施例を参照して本発明を更に詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例によって限定されるものでないことは、言うまでもない。
【実施例】
【0068】
《留意》
以下、排ガス浄化触媒の製造方法を示す。この製造方法で使用する材料の量、例えば「硝酸Pt」等の材料の量は、この排ガス浄化触媒の構成を表現した表(下記で参照されたい)に記載されている「Pt」等の量を達成することができるような量であることを理解されたい。
【0069】
また、下記の表において、単位「g/L」とは、基材の体積1Lあたりに担持されている材料の質量(g)を意味する。
【0070】
また、「上流端」とは、基材を通過する排ガスがハニカム基材に進入する入口部分を意味し、かつ「下流端」とは、かかる排ガスが基材から退出する出口部分を意味する。
【0071】
《実施例1》
〈第一触媒層を形成する工程〉
(第一触媒層スラリーの調製及び塗工)
担体粉末としてのAl
2O
3−ZrO
2−TiO
2複合酸化物(AZT複合酸化物としても言及される)粉末を、硝酸Pt及び硝酸Pdの混合溶液に浸漬して、触媒金属としてのPt及びPdを、AZT複合酸化物粉末に担持し、これによって触媒粉末1を調製した。
【0072】
また、担体粉末としてのアルミナ粉末を、硝酸Pd溶液に浸漬して、触媒金属としてのPdを、アルミナ粉末に担持し、これによって触媒粉末2を調製した。
【0073】
さらに、担体粉末としてのAZT複合酸化物粉末を、硝酸Rh溶液に浸漬して、触媒金属としてのRhを、AZT複酸化物粉末に担持し、これによって触媒粉末3を調製した。
【0074】
これらの触媒粉末1〜3;NOx吸蔵材としての酢酸バリウム、酢酸カリウム、及び酢酸リチウム;助触媒としてのセリア;並びにバインダーとしてのアルミナバインダーを混合し、さらに、この混合物と水とを混合して第一触媒層スラリーを調製した。
【0075】
この第一触媒層スラリーを、基材としてのコージェライトハニカム基材(13R13、φ=129mm、L=100mm)の上流端から下流端にかけてウォッシュコートし、さらに、この基材の下流端から上流端にかけて、もう一度ウォッシュコートした。
【0076】
(第一触媒層スラリー層の乾燥等)
その後、この基材を90℃で1時間にわたって乾燥し、かつ500℃で2時間にわたって焼成し、これによって、第一触媒層を調製した。
【0077】
〈第二触媒層を形成する工程〉
(第二触媒層スラリーの調製及び塗工、並びにその層の乾燥等)
粉末担体としてのAl
2O
3−ZrO
2−TiO
2複合酸化物(AZT複合酸化物としても言及される)粉末を、硝酸Pt及び硝酸Pdの混合溶液に浸漬して、触媒金属としてのPt及びPdを、AZT複合酸化物粉末に担持し、これによって触媒粉末を調製した。
【0078】
この触媒粉末;NOx吸蔵材としての酢酸バリウム、酢酸カリウム、及び酢酸リチウム;助触媒としてのセリア;並びにバインダーとしてのアルミナバインダーを混合し、さらに、この混合物、水、及び気孔形成材としての炭素化合物(帝人株式会社、テピルス(登録商標))を混合して第二触媒層スラリーを調製した。
【0079】
この第二触媒層スラリーを、第一の触媒層が形成されている基材の上流端から下流端にかけてウォッシュコートし、さらに、この基材の下流端から上流端にかけて、もう一度ウォッシュコートした。
【0080】
(第二触媒層スラリー層の乾燥等)
その後、この基材を90℃で1時間にわたって乾燥し、かつ500℃で2時間にわたって焼成し、これによって排ガス浄化触媒を得た。
【0081】
《実施例2〜7、及び比較例1〜3》
実施例1の「第二触媒層を形成する工程」において、気孔形成材の量を変更したことを除き、実施例2〜7、及び比較例1〜3の排ガス浄化触媒を、実施例1と同様にして得た。
【0082】
実施例1の排ガス浄化触媒の構成を下記の表1に示し、かつ実施例1〜7及び比較例1〜3の排ガス浄化触媒の製造で用いた気孔形成材(炭素化合物)の詳細を下記の表2に示している。
【0083】
【表1】
【0084】
表1中の「炭素化合物」は、排ガス浄化触媒を調製するときに、気孔形成材として炭素化合物(帝人株式会社、テピルス(登録商標))を用いたことを意味している。したがって、乾燥処理や焼成処理によって調製した排ガス浄化触媒では、この炭素化合物が焼失していてよい。
【0085】
【表2】
【0086】
表2中の「添加量(質量%)」は、第二触媒層スラリーのg/Lに基づいて算出される値である。なお、第二触媒層スラリーのg/Lは、65.03g/Lであった。
【0087】
《評価》
上記の各例の排ガス浄化触媒に対して、X線コンピュータ断層撮影(X線CT)による評価と、90%NOx吸蔵量による評価を行った。
【0088】
〈X線CTの評価〉
X線CTの評価は、各例の排ガス浄化触媒を2セル切り出し、このセルに対して下記の装置及び条件を適用することによって行った。具体的には、下記の装置等を用いて三次元像を作製し、当該三次元像から、細孔の体積に関する情報を算出した。結果を、表3及び
図3〜5に示している。
【0089】
(装置)
・マイクロフォーカス型X線管球(浜松ホトニクス製L8321)
・X線検出器(浜松ホトニクス製イメージインテンシファイア+CCDカメラ)
・CT再構成ソフト(緑野リサーチ製TomoShop)
・三次元画像解析装置(ラトックシステムエンジニアリング製TRI/3D VOL)
【0090】
(条件)
・管電圧:60kV
・管電流:100〜170μA
・幾何学拡大率:100倍
・撮影枚数:778枚/箇所
・画素寸法:0.63μm×0.63μm×0.63μm
・撮影視野:φ0.65mm
【0091】
【表3】
【0092】
表3において、添加量が1質量%で同等である、実施例1、3、及び5を参照されたい。すなわち、表3からは、10〜1000μm
3の全中細孔の割合が、実施例1(27.77)、3(31.02)、及び5(40.15)の順に高いことが分かる。また、添加量が3質量%で同等である比較例2、実施例4及び6でも、同様のことが言える。これは、気孔形成材のサイズが比較的大きいサイズ、例えば、中細孔程度のサイズである場合には、第二触媒層において中細孔の割合が、大細孔の割合と比較して高くなる傾向があるためと考えられる。
【0093】
なお、気孔形成材のサイズが同等である、実施例3及び4、並びに比較例3では、10〜1000μm
3の全中細孔の割合がこの順で減少していることが分かる。これは、気孔形成材の添加量が増加したためと考えられる。具体的には、複数の気孔形成材が凝集し易い状態となり、これによって大細孔が形成されること等の要因が考えられる。
【0094】
図3(a)〜(d)は、それぞれ、実施例1及び2、並びに比較例2;実施例3及び4、並びに比較例3;実施例5〜7;並びに比較例1の排ガス浄化触媒の第二触媒層に関して、細孔体積(μm
3)と、累積頻度(vol%)との関係を示している。
【0095】
図4は、実施例1〜7及び比較例1〜3の排ガス浄化触媒の第二触媒層に関して、添加量(質量%)と、10〜1000μm
3の全中細孔の体積の合計が占める割合(全中細孔の合計体積割合(vol%)としても言及される)との関係を示している。
【0096】
また、
図5は、実施例1〜7及び比較例1〜3の排ガス浄化触媒の第二触媒層に関して、添加量(質量%)と、1000μm
3以上の全大細孔の体積の合計が占める割合(全大細孔の合計体積割合(vol%)としても言及される)との関係を示している。
【0097】
図4からは、比較例1〜3と比較して、実施例1〜7の中細孔割合は、より高いことが分かる。また、
図5からは、比較例1〜3と比較して、実施例2〜7の大細孔割合は、低いことが分かる。なお、比較例2及び実施例1の大細孔割合の差異は、実質的にない。
【0098】
〈90%NOx吸蔵量の評価〉
各例の排ガス浄化触媒(フルサイズ)を、エンジンの排気系に装着し、触媒温度を350℃に設定し、かつエンジンからの排気ガスを排ガス浄化触媒に流通させることによって90%NOx吸蔵量の評価を行った。
【0099】
排気ガスは、リッチガス及びリーンガスから構成した。最初にリッチガスを5分流通させて排ガス浄化触媒のNOx吸蔵量を最小にし、その後にリーンガスを、入力リーンガス(110ppm)のNO濃度の10%が出力リーンガスのNO濃度(11ppm)となるまで、流通させた。90%NOx吸蔵量は、かかる手順を経た後の排ガス浄化触媒において、吸蔵されたNOxの量である。
【0100】
なお、排ガス浄化触媒にNOxが経時的に担持され、このNOxの吸蔵速度が低下するにつれて、出力リーンガスのNO濃度が経時的に上昇し、11ppmに達する。
【0101】
なお、90%NOx吸蔵量の単位は、排ガス浄化触媒の体積1LあたりのNOx吸蔵質量mg、すなわち「mg/L」で表す。排気ガスの組成を下記の表4に示している。また、結果を、表5、並びに
図6及び7に示している。
【0102】
【表4】
【0103】
図6は、実施例5及び比較例1の排ガス浄化触媒に関して、排ガスの雰囲気をリッチ雰囲気からリーン雰囲気に切り替えてから経過した時間(Time(s))と、350℃でのNOx浄化率(%)との関係を示している。
【0104】
図6からは、NOx浄化率が90%になるまでの時間(Time)に関して、比較例1の時間より実施例5の時間が長いことが分かる。すなわち、排ガス浄化触媒が吸蔵したNOxの量に関して、比較例1の量より実施例5の量が多いことが理解される。
【0105】
【表5】
【0106】
表5からは、第二触媒層において、1000μm
3以上の全大細孔の体積の合計を、10〜1000μm
3の全中細孔の体積の合計で除した値が、2.44以下である場合に、高いNOx吸蔵量を達成していることが分かる。
【0107】
これは、第二触媒層において、1000μm
3以上の大細孔に進入した排ガスが、10〜1000μm
3の中細孔にさらに進入し、排ガスが第一触媒層に均一に供給され、NOx吸蔵材に吸蔵されたためと考えられる。
【0108】
図7は、実施例1〜7及び比較例1〜3の排ガス浄化触媒に関して、1000μm
3以上の全大細孔の体積の合計を、10〜1000μm
3の全中細孔の体積の合計で除した値(全大細孔の合計体積割合/全中細孔の合計体積割合)と、90%NOx吸蔵量(mg/L)との関係を示した図である。
【0109】
図7からも、第二触媒層において、1000μm
3以上の全大細孔の体積の合計を、10〜1000μm
3の全中細孔の体積の合計で除した値が、2.44以下である場合に、高いNOx吸蔵量を達成していることが分かる。さらに、
図7中の斜線からは、全大細孔の合計体積割合/全中細孔の合計体積割合の値が、小さいほど、90%NOx吸蔵量が向上していることが理解される。
【0110】
本発明の好ましい実施形態を詳細に記載したが、特許請求の範囲から逸脱することなく、変更が可能であることを当業者は理解する。