特許第6396943号(P6396943)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6396943非接触振動測定による故障診断装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6396943
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】非接触振動測定による故障診断装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01H 17/00 20060101AFI20180913BHJP
   G01H 3/00 20060101ALI20180913BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20180913BHJP
【FI】
   G01H17/00 Z
   G01H3/00 A
   G01M99/00 Z
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-89029(P2016-89029)
(22)【出願日】2016年4月27日
(65)【公開番号】特開2017-198525(P2017-198525A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2017年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147500
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 雅啓
(74)【代理人】
【識別番号】100166235
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100179914
【弁理士】
【氏名又は名称】光永 和宏
(74)【代理人】
【識別番号】100179936
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 明日香
(72)【発明者】
【氏名】落岩 崇
(72)【発明者】
【氏名】内海 聡
【審査官】 安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−139343(JP,A)
【文献】 特開2005−241089(JP,A)
【文献】 特開2003−156388(JP,A)
【文献】 特開2003−222553(JP,A)
【文献】 特開昭63−108235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 1/00−17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動状態の測定対象物(1)の付近に設置されたマイクロフォン(3)と、前記マイクロフォン(3)に接続され、前記マイクロフォン(3)で得た前記測定対象物(1)の駆動中の音圧(1A)を収集するためのデータロギングシステム(4)と、前記データロギングシステム(4)に接続され、前記音圧(1A)を振動加速度(5A)に変換するための音圧/振動加速度算定システム(5)と、前記音圧/振動加速度算定システム(5)に接続され、前記振動加速度(5A)が予め設定された異常閾値(TH)以下か以上であるかを判定するための故障予知システム(6)と、を備え、
前記測定対象物(1)の振動加速度(5A)を、前記測定対象物(1)に対して非接触状態で計測すると共に、計算を行いながら振動加速度データ(5A)を蓄積し、前記故障予知システム(6)では、音圧/振動加速度算定システム(5)で算定した振動加速度データ(5A)を用いて事前に設定しておいた異常となる異常閾値(TH)をこえたことを検出する構成としたことを特徴とする非接触振動測定による故障診断装置。
【請求項2】
駆動状態の測定対象物(1)の付近に設置されたマイクロフォン(3)と、前記マイクロフォン(3)に接続され、前記マイクロフォン(3)で得た前記測定対象物(1)の駆動中の音圧(1A)を収集するためのデータロギングシステム(4)と、前記データロギングシステム(4)に接続され、前記音圧(1A)を振動加速度(5A)に変換するための音圧/振動加速度算定システム(5)と、前記音圧/振動加速度算定システム(5)に接続され、前記振動加速度(5A)が予め設定された異常閾値(TH)以下か以上であるかを判定するための故障予知システム(6)と、を用い、
前記測定対象物(1)の振動加速度(5A)を、前記測定対象物(1)に対して非接触状態で計測すると共に、計算を行いながら振動加速度データ(5A)を蓄積し、前記故障予知システム(6)では、音圧/振動加速度算定システム(5)で算定した振動加速度データ(5A)を用いて事前に設定しておいた異常となる異常閾値(TH)をこえたことを検出することを特徴とする非接触振動測定による故障診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触振動測定による故障診断装置及び方法に関し、特に、駆動中の測定対象物の付近に設けられたマイクロフォンによりその音圧を得て、この音圧から得た振動加速度により前記測定対象物の故障の予知を行うための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の振動測定では、測定対象物に直接、加速度センサを設置する必要があるため、駆動している箇所に加速度センサを設置するのは、センサの配線の引き回しや、設置箇所に大きな制約が生じてしまい、計測自体が困難な場合が多かった。
更に、駆動している対象物に対しては、特許文献1のように、回転中の駆動系部品に対して速度変動を計測するため、非接触形磁気センサを用いているが、前後方向に駆動している測定物に対しては、一定の計測ギャップを保ちながら計測を行えず、正常に速度変動を計測できず、そのため、加速度センサをつけた計測を想定した場合においても計測が正常に行えないことが考えられる。
その他の非接触による測定方法として、特許文献2では、摺動部を有する可動機構部が潤滑油に満たされている必要があるという非常に限定的な構造で計測を行っており、汎用的に非接触に測定できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−97813号公報
【特許文献2】特開2000−241295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の特許文献1及び2に開示された構成では、次のような課題が存在していた。
すなわち、前述の特許文献1の構成においては、回転中の駆動系部品に対して回転速度変動を計測するため、非接触形の磁気センサを用いているが、本願のように、前後方向又は振子式に駆動している測定対象物に対しては、その直線往復動作の速度変動を正確に計測することは困難であった。
【0005】
また、潤滑油で潤滑される摺動部を有してなる可動機構の検査を、潤滑油中に含有される異物に基づいて行うための可動機構検査方法に関して提供されたものである。
この検知方法として2次元超音波アレイセンサを備えており、潤滑油中に含有される異物を立体的に、かつ、リアルタイムで把握することが可能となっていた。
【0006】
本発明は、上記のような従来のものの課題を解決するためになされたもので、特に、音圧データからこの振動加速度を算出することで、非接触の状態でも駆動している測定対象物の振動状態を計測でき、このデータを用いて駆動初期からの振動の経時変化を比較することで、駆動している測定対象物が大きく振動していれば、機構上に何らかのガタ等の問題点が発生していると考えられ、故障診断として用いるようにした非接触振動測定による故障診断装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による非接触振動測定による故障診断装置は、駆動状態の測定対象物の付近に設置されたマイクロフォンと、前記マイクロフォンに接続され、前記マイクロフォンで得た前記測定対象物の駆動中の音圧を収集するためのデータロギングシステムと、前記データロギングシステムに接続され、前記音圧を振動加速度に変換するための音圧/振動加速度算定システムと、前記音圧/振動加速度算定システムに接続され、前記振動加速度が予め設定された異常閾値以下か以上であるかを判定するための故障予知システムと、を備え、前記測定対象物の振動加速度を、前記測定対象物に対して非接触状態で計測すると共に、計算を行いながら振動加速度データを蓄積し、前記故障予知システムでは、音圧/振動加速度算定システムで算定した振動加速度データを用いて事前に設定しておいた異常となる異常閾値をこえたことを検出する構成としたことを特徴とする非接触振動測定による故障診断装置であり、また、駆動状態の測定対象物の付近に設置されたマイクロフォンと、前記マイクロフォンに接続され、前記マイクロフォンで得た前記測定対象物の駆動中の音圧を収集するためのデータロギングシステムと、前記データロギングシステムに接続され、前記音圧を振動加速度に変換するための音圧/振動加速度算定システムと、前記音圧/振動加速度算定システムに接続され、前記振動加速度が予め設定された異常閾値以下か以上であるかを判定するための故障予知システムと、を用い、前記測定対象物の振動加速度を、前記測定対象物に対して非接触状態で計測すると共に、計算を行いながら振動加速度データを蓄積し、前記故障予知システムでは、音圧/振動加速度算定システムで算定した振動加速度データを用いて事前に設定しておいた異常となる異常閾値をこえたことを検出することを特徴とする非接触振動測定による故障診断方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明による非接触振動測定による故障診断装置及び方法は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、駆動状態の測定対象物の付近に設置されたマイクロフォンと、前記マイクロフォンに接続され、前記マイクロフォンで得た前記測定対象物の駆動中の音圧を収集するためのデータロギングシステムと、前記データロギングシステムに接続され、前記音圧を振動加速度に変換するための音圧/振動加速度算定システムと、前記音圧/振動加速度算定システムに接続され、前記振動加速度が予め設定された異常閾値以下か以上であるかを判定するための故障予知システムと、を備え、前記測定対象物の振動加速度を、前記測定対象物に対して非接触状態で計測する構成と方法であるため、マイクロフォンとデータロギングシステムを介して得られた時々刻々の音圧データより、駆動中の測定対象物の振動加速度データをリアルタイムに算出することで、駆動中の測定対象物の故障状況を定量的に把握することが可能となり、迅速な故障予知ができる。
また、駆動中の測定対象物は、振動することにより音圧を発生するため、その音圧をマイクロフォンで計測され、その計測された音圧は、データロギングシステムに収集されながら、計算機により時々刻々の振動加速度を計算し、振動加速度のデータとして保存される。そして、算定された振動加速度データに対して、上下限異常設定値、すなわち、異常閾値を設けて比較していき、上下限異常値を越えれば、警報を発報することで故障診断を行うことができる。
従って、警報の発生により、測定対象物のグラツキ等の故障の有無を容易に知ることができ、測定対象物を有する装置全体の故障を未然に得て、例えば、装置全体の安全運転の実現に供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明による非接触振動測定による故障診断装置及び方法を示すための概略構成図である。
図2図1における振動加速度の正常時と異常時の状態を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明による非接触振動測定による故障診断装置及び方法は、駆動中の測定対象物の付近に設けられたマイクロフォンによりその音圧を得て、この音圧から得た振動加速度により前記測定対象物の故障の予知を行うことである。
【実施例】
【0011】
以下、図面と共に本発明による非接触振動測定による故障診断装置及び方法の好適な実施の形態について説明する。
図1において符号1で示されるものは、工作機及び自動車等の大型の装置2の一部として設けられている各種部品等からなる測定対象物であり、前記測定対象物1は、矢印Aで示される往復方向に沿って駆動する駆動状態Bとなるように構成されている。
前記測定対象物1の駆動状態Bは、矢印Aに沿って前記測定対象物1全体が、例えば、図示しない台座上において台座と共に水平状に往復駆動状態となるように構成されている。
また、前記測定対象物1は、例えば、下部が軸支されていて、左右方向Cに沿って往復回動するように構成することもできる。
【0012】
前記測定対象物1の付近には、マイクロフォン3が設けられ、このマイクロフォン3にはデータロギングシステム4を介して音圧/振動加速度算定システム5が接続されており、前記音圧/振動加速度算定システム5は故障予知システム6に接続されている。
【0013】
次に、前述の本発明による非接触振動測定による故障診断装置及び方法の動作について述べる。
まず、駆動中の測定対象物1は、振動することにより音圧を発生するため、その音圧をマイクロフォン3で計測し、その計測された音圧は、データロギングシステムに収集されながら、計算機により時々刻々の振動加速度5Aを計算し、この振動加速度5Aをデータとしてメモリ5Bに格納される。
【0014】
前記振動加速度5Aは、前記故障予知システム6に入力され、この故障予知システム6においては、前記振動加速度5Aに対して異常閾値THを図2のように設定しておき、比較の結果、算定された振動加速度5Aが前記異常閾値THを越えれば、異常とみなして警報を発報するように構成されている。
すなわち、前記測定対象物1が駆動状態Bにある中で、ガタ等によって前記測定対象物1の振動が設定値よりも大となった時に、前述のように、前記故障予知システム6によって、異常状態が検出される。
【0015】
本発明を実施するにあたり、事前に測定対象物1の付近の干渉しない位置にマイクロフォン3を設置する。そして、測定対象物1を駆動させて、データロギングシステム4で音圧データ4Aを収集した後、音圧/振動加速度算定システム5で、収集された音圧データ4Aより振動加速度データ5Aを算出して、故障予知システム6内に記憶させておく。この手順をリアルタイムに実施することで、経時変化による故障予知を行う。
この中で、マイクロフォン3、データロギングシステム4は、市販のものを使用する。音圧/振動加速度算定システム5は、関係式としてa=2√2l0πP/pSに代入して振動加速度を算出する。ここで、aは振動加速度(m/s2)、l0は測定距離(m)、Pは音圧(実効値)(Pa)、pは空気の密度(kg/m3)、Sは断面積(m2)となる。この計算をリアルタイムに行いながら、時々刻々の算定した振動加速度データ5Aを蓄積していく。
故障予知システム6では、音圧/振動加速度算定システム5で算定した振動加速度データ5Aを用いて、事前に設定しておいた異常となる異常閾値THをこえた場合、図2、装置に異常を通知して、必要に応じて装置停止を促す。この故障システムは、上記のような単純な異常となる閾値による故障予知だけでなく、ロギングした振動加速度データ5Aの統計的処理やAI(人工知能)などを用いた学習予知などを用いて故障診断するなどの高度化も考えられる。
【0016】
次に、本発明による非接触振動測定による故障診断装置及び方法の要旨とするところは、以下の通りである。
すなわち、駆動状態の測定対象物1の付近に設置されたマイクロフォン3と、前記マイクロフォン3に接続され、前記マイクロフォン3で得た前記測定対象物1の駆動中の音圧1Aを収集するためのデータロギングシステム4と、前記データロギングシステム4に接続され、前記音圧1Aを振動加速度5Aに変換するための音圧/振動加速度算定システム5と、前記音圧/振動加速度算定システム5に接続され、前記振動加速度5Aが予め設定された異常閾値TH以下か以上であるかを判定するための故障予知システム6と、を備え、前記測定対象物1の振動加速度5Aを、前記測定対象物1に対して非接触状態で計測すると共に、計算を行いながら振動加速度データ5Aを蓄積し、前記故障予知システム6では、音圧/振動加速度算定システム5で算定した振動加速度データ5Aを用いて事前に設定しておいた異常となる異常閾値THをこえたことを検出する構成としたことを特徴とする非接触振動測定による故障診断装置であり、また、駆動状態の測定対象物1の付近に設置されたマイクロフォン3と、前記マイクロフォン3に接続され、前記マイクロフォン3で得た前記測定対象物1の駆動中の音圧1Aを収集するためのデータロギングシステム4と、前記データロギングシステム4に接続され、前記音圧1Aを振動加速度5Aに変換するための音圧/振動加速度算定システム5と、前記音圧/振動加速度算定システム5に接続され、前記振動加速度5Aが予め設定された異常閾値TH以下か以上であるかを判定するための故障予知システム6と、を用い、前記測定対象物1の振動加速度5Aを、前記測定対象物1に対して非接触状態で計測すると共に、計算を行いながら振動加速度データ5Aを蓄積し、前記故障予知システム6では、音圧/振動加速度算定システム5で算定した振動加速度データ5Aを用いて事前に設定しておいた異常となる異常閾値THをこえたことを検出することを特徴とする非接触振動測定による故障診断方法である。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明による非接触振動測定による故障診断装置及び方法は、測定対象物の駆動状態を発生する音圧をマイクロフォンで捕捉して、その音圧を振動加速度のデータとして用いているため、測定対象物の良否を高精度に判定することができる。
【符号の説明】
【0018】
1 測定対象物
1A 音圧
2 装置
3 マイクロフォン
4 データロギングシステム
4A 音圧データ
5 音圧/振動加速度算定システム
5A 振動加速度
5B メモリ
6 故障予知システム
TH 異常閾値
図1
図2