特許第6396974号(P6396974)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6396974流体を皮膚中または皮膚下に適用するための自由噴流投薬システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6396974
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】流体を皮膚中または皮膚下に適用するための自由噴流投薬システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/142 20060101AFI20180913BHJP
   A61M 5/30 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   A61M5/142 520
   A61M5/30
【請求項の数】19
【外国語出願】
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-237123(P2016-237123)
(22)【出願日】2016年12月6日
(65)【公開番号】特開2017-104541(P2017-104541A)
(43)【公開日】2017年6月15日
【審査請求日】2017年2月1日
(31)【優先権主張番号】10 2015 224 624.8
(32)【優先日】2015年12月8日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500341779
【氏名又は名称】フラウンホーファー−ゲゼルシャフト・ツール・フェルデルング・デル・アンゲヴァンテン・フォルシュング・アインゲトラーゲネル・フェライン
(74)【代理人】
【識別番号】100134119
【弁理士】
【氏名又は名称】奥町 哲行
(72)【発明者】
【氏名】リヒター・マーティン
(72)【発明者】
【氏名】マーティン・ヴァッカーレ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルト・クリスティアン
【審査官】 川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/136304(WO,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0061526(US,A1)
【文献】 特開2002−126092(JP,A)
【文献】 特表2006−524120(JP,A)
【文献】 特表2012−506279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/142
A61M 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を皮膚中または前記皮膚下に投与するための自由噴流投薬システム(10、10、10’’、10’’’)であって、
入口(22、22、22’’)と出口(24、24’)とを備えるマイクロポンプ(20、20、20’’)であって、前記入口(22、22、22’’)から前記出口(24、24’)に流体を移送し、前記出口(24、24’)において少なくとも20バールのブロッキング圧力を生成するように構成されたマイクロポンプ(20、20、20’’)と、
自由噴流の前記流体が前記皮膚中に注射され得るように、前記出口(24、24’)において出力された前記流体を前記自由噴流として出力するように構成された、前記出口側上に配置されたノズル(30、30、30’’32’’’)とを備え、
前記マイクロポンプ(20、20’20’’)は膜(26’、26’’)と圧電アクチュエータ(28、28’’)とを備え、
前記マイクロポンプ(20、20’20’’)は、前記入口(22、22、22’’)において受動チェックバルブの形態のバルブ(23’’)を備え、前記マイクロポンプ(20、20’20’’)は、前記出口(24、24’)において受動チェックバルブの形態のバルブ(25’、25’’)を備える、
自由噴流投薬システム(10、10、10’’、10’’’)。
【請求項2】
前記圧電アクチュエータ(28、28’’)は、少なくとも300μmの厚さを備える、請求項1に記載の自由噴流投薬システム(10、10、10’’、10’’’)。
【請求項3】
前記圧電アクチュエータ(28、28’’)は、少なくとも2つのセラミック層を備える多層セラミックを備え、および/または
前記セラミック層は互いに接合される、
請求項2に記載の自由噴流投薬システム(10、10、10’’、10’’’)。
【請求項4】
前記自由噴流投薬システム(10、10、10’’、10’’’)は、前記マイクロポンプ(20、20、20’’)を制御するための駆動電子回路を備え、前記駆動電子回路は、200V未満の電圧と高い電流とをもつエネルギーを前記圧電アクチュエータ(28、28’’)に供給するように構成された、請求項3に記載の自由噴流投薬システム(10、10、10’’、10’’’)。
【請求項5】
前記マイクロポンプ(20、20、20’’)は駆動電子回路または駆動用のASICに結合される、請求項1からのいずれかに記載の自由噴流投薬システム(10、10、10’’、10’’’)。
【請求項6】
前記膜(26、26’’)は、少なくとも200μmの厚さを備える、請求項2から5のいずれかに記載の自由噴流投薬システム(10、10、10’’、10’’’)。
【請求項7】
前記膜(26、26’’)は偏倚される、請求項6に記載の自由噴流投薬システム(10、10、10’’、10’’’)。
【請求項8】
前記マイクロポンプ(20、20、20’’)は、前記入口(22、22、22’’)において一方向バルブ(23’’)を備える、請求項1から7のいずれかに記載の自由噴流投薬システム(10、10、10’’、10’’’)。
【請求項9】
前記マイクロポンプ(20、20、20’’)は、前記出口(24、24’)において一方向バルブ(25’、25’’)を備える、請求項1から8のいずれかに記載の自由噴流投薬システム(10、10、10’’、10’’’)。
【請求項10】
前記出口(24、24’)に配置された前記バルブ(25、25’’)は、2つの側上で支持されるカンチレバーまたはすべての側上で支持される膜バルブを備える、請求項9に記載の自由噴流投薬システム(10、10、10’’、10’’’)。
【請求項11】
前記マイクロポンプ(20、20、20’’)は少なくとも0.2の圧縮比を備える、請求項1から10のいずれかに記載の自由噴流投薬システム(10、10、10’’、10’’’)。
【請求項12】
前記ノズル(30、30、30’’32’’’)は、<100μmの流体開口直径(32’)を備える、請求項1から11のいずれかに記載の自由噴流投薬システム(10、10、10’’、10’’’)。
【請求項13】
前記自由噴流投薬システム(10、10、10’’、10’’’)は10×10×2mmの最大外部寸法を備える、請求項1から12のいずれかに記載の自由噴流投薬システム(10、10、10’’、10’’’)。
【請求項14】
力側上で前記ノズル(30、30、30’’32’’’)に結合され、前記流体の圧力および/または流量において小滴を判定するように構成された圧力センサを備える、請求項1から13のいずれかに記載の自由噴流投薬システム(10、10、10’’、10’’’)。
【請求項15】
前記マイクロポンプ(20、20、20’’)および/または前記ノズル(30、30、30’’32’’’)は銀コーティングおよび/または別の抗菌コーティングを備える、請求項1から14のいずれかに記載の自由噴流投薬システム(10、10、10’’、10’’’)。
【請求項16】
前記自由噴流投薬システム(10、10、10’’、10’’’)は、入力側上に配置された流体リザーバを備える、請求項1から15のいずれかに記載の自由噴流投薬システム(10、10、10’’、10’’’)。
【請求項17】
前記バルブ(23’’)および/または前記バルブ(25’、25’’)のバルブフラップは、両側で支持されている、請求項1から16のいずれかに記載の自由噴流投薬システム(10、10’、10’’、10’’’)。
【請求項18】
請求項1から17のいずれかに記載の自由噴流投薬システム(10、10、10’’、10’’’)を備えるウェアラブルアームストラップ(85)。
【請求項19】
請求項1から17のいずれかに記載の自由噴流投薬システム(10、10、10’’、10’’’)を備えるパッチ(80)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、流体を皮膚中または皮膚下に適用するための自由噴流投薬システムに関する。さらなる実施形態は、対応する投薬システムを備えるウェアラブルアームストラップと、そのような投薬システムを備えるパッチとに関する。
【背景技術】
【0002】
皮下適用は、最初に物質を皮膚下に、すなわち、例えば、結合組織または脂肪組織中に適用することに関係する。物質を筋肉組織または血流中に適用することも、この一般的定義によって包含される。
【0003】
薬または薬剤を投与することは様々な方法で行われ得る。ピルまたは液体を経口的にとることが最も普及しているが、さらなる例は、肛門的に適用される坐剤、肺を介した吸入、点眼、皮膚に軟膏を適用すること、静脈内注入による全身投与、シリンジによる皮下適用または埋込み可能な薬剤投薬システムである。ペプチドまたはタンパク質のような高分子は、ピルを通して投与され得ないが、注射[1]によって投与され得る。
【0004】
インスリンを投与することがそれの一例である。現在、インスリンの皮下適用は、針によって刺されること、および痛みを伴う。特に中国、インドまたはブラジルのような国では、食習慣の変化に起因する糖尿病が急速に広まっているが、先進国でも、とりわけ人口統計的変化に起因する糖尿病が広まっている。現在の市場分析によれば、(インスリンなしの)「インスリン送出デバイス」の市場は、現在の87億8千米ドルから2019年における138億米ドルに増加している[7]。特に糖尿病の治療では、吸入によってまたは(カプセル化によって)経口的にインスリンを投与することが過去数年にわたって調査されたが、これらの方法は市場における受容を得なかった。その原因は、とりわけ、代替方法の不十分な投薬精度(または生物学的利用能)であり、皮下(または同じく静脈内)注射のみによって、血流に達するインスリンの量が正確に規定され得ることである。しかしながら、注射は痛みを伴い、インスリンを投与することに患者が能動的に寄与することを要する。
【0005】
現在、いわゆる「ペン」が普及しており、インスリンのプリセット量が、ばねラッチングによって、針を介して患者に自動的に注射される。しかしながら、これは針による突き刺しを1日に数回要し、痛みを伴う。体に着用される「パッチポンプ」(供給者:Omnipod)は新しい傾向であり、これらは3日ごとにしか突き刺しを要しない。しかしながら、3日後に、パッチポンプを備えるカテーテルは、感染を避けるために交換される必要がある。現在、患者にとって高度に有益であるはずの、薬剤を皮下に適用するための少ない疼痛および無針の技術はない。
【0006】
第二次世界大戦以来、無針注射が知られている。とりわけ獣医学において採用されている、いわゆる予防接種銃が知られているが、これらは、無菌性の問題のために人間にはもはや使用されていない。ここで、作用物質は、高圧でガスまたはばねによって開口を通って加速され、皮膚中に発射される。Injex[3]によるシステムのような、改善され承認された無針注射システムがあり、これは、糖尿病治療以外に、(例えば口腔外科における)局所麻酔剤のためにも適用される。
【0007】
しかしながら、痛みからの解放が常に保証されるとは限らず、さらに、これらはペンよりも取り扱いが困難である[4]。ペンと比較してさらに不利であるのは、これらは、購入するのにより費用がかかり、例外的な状況(例えばシリンジ恐怖症)においてしか健康保険会社によって支払われないことである。さらに、(数ミリメートルの範囲内にある)薬剤の浸入深さは、これらのシステムを使用して正確に調整され得ず、これが、特に、痛みからの不完全な解放の原因になっている。
【0008】
ここ数年間にわたって、様々な調査グループが、新しいアクチュエータ原理によって無針注射を改善することを試みた。カリフォルニア大学サンタバーバラ校は、(ばねまたはガス駆動の代わりに)圧電スタックアクチュエータを使用してより良く定義された方法で高圧を達成するための考察を実施した[1]。代替として、マサチューセッツ工科大学(MIT)は、高圧を生成するためにローレンツ力駆動を使用して加速されるピストンを使用する注射器を開発した[5]。HSG IMITは、同じ原理を使用して内視鏡における使用のための注射器を考察した[2]。すべてのこれらの新しい無針注射器は、原理としては圧力プロフィル、したがって、薬剤の浸入深さを正確に調整することが可能であり、注射はほぼ痛みなしで行われ、患者は噴流をほとんど感じないことが可能であり、これはかなりの改善である。
【0009】
しかしながら、これらのシステムの欠点は、(数十ナノリットルの量の)マイクロドロップの放出頻度があまりに小さいことである。これは、投薬チャンバが十分迅速に再び充填され得ないことに起因する。ここで、投薬量は約0.5から1.0μl/sに制限される。さらに、これらのシステムでは、死空間、したがって、アクチュエータとノズルとの間の流体容量を低減することが極めて困難であり、したがって、気泡があるとき、圧力プロフィルは噴流で実現され得ない。さらに、医療目的のためのマイクロポンプを示す国際公開第2009/136304号明細書への参照が行われる。
【0010】
最後に、すべてのこれらのシステムは極めて大きく、製造するのに費用がかかり、したがって、これらは統合型適用に好適でない。したがって、改善された手法が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2009/136304号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】[1] Samir Mitragotri、Recent Developments in Needle−Free Drug Delivery、The Bridge (USPS 551−240)、the National Academy of Engineering発行、Val.38、No.4、2008年冬
【0013】
【非特許文献2】[7] 14年4月29日にアクセスされた、http://www.industryreportstore.com/insulin−delivery−devices−market−to−2019−simplified−pump−solutions−and−low−cost−pens−represent−distinct−regional−growth−drivers.htmI
【0014】
【非特許文献3】[3] 14年4月22日にアクセスされた、http://www.injex.de/
【0015】
【非特許文献4】[4] 14年4月22日にアクセスされた、http://www.diabetes−deutschland.de/archiv/archiv 2847.html、Prof.Dr.W.A.Scherbaum、Deutsches Diabetes−Forschungsinstitut Dusseldorf
【0016】
【非特許文献5】[5] Brian D.Hemond、Dawn M.Wendell、N.Cathy Hogan、Andrew J.Taberner、Prof.lan W.Hunter、a Lorentz−Force Actuated Autoloading Needle−free lnjector、Proceedings of the 28th IEEE EMBS Annual International Conference、ニューヨーク市、米国、2006年8月30日9月3日
【0017】
【非特許文献6】[2] Trans−Endoscopic Microinjection for Flexible Endoscopy、K.Mutschler、W.Kunert、R.lngenpass、K.E.Grund、L.Tanguy、A.Ernst、R.Zengerle、P.Koltay、Biomedical Engineering/Biomedizinische Technik。ISSN(オンライン)1862−278X、ISSN(印刷)0013−5585、DOI:10.1515/bmt−2012−4141、2012年8月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、本発明の基礎をなす目的は、上述の欠点を回避しながら無針薬剤投薬の概念を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この目的は独立請求項によって達成される。
本発明の実施形態は、流体(例えば薬剤)を皮膚下に適用するための自由噴流投薬システムを提供する。自由噴流投薬システムは、入口および出口を有する(電気的に作動可能な)マイクロポンプと、出口側上に配置されたノズルとを備える。マイクロポンプは、入口から出口に流体を移送し、出口において少なくとも20または25バールのbブロッキング圧力またはストール圧力を生成するように構成される。ノズルは、自由噴流の流体が皮膚中または皮膚下に注射可能であるように、出口において出力された流体を対応する圧力(例えば5.0バールまたは9.5バール)において自由噴流として出力するように構成される。
【0020】
本発明の中心的考えは、わずか7×7×1mmの投薬チップサイズを備える、最高40バールの高圧(bブロッキング圧力を参照)のための極めて小さい自由噴流投薬システムが、例えば、巧妙なマイクロポンプ設計(例えば不相応に厚い膜またはダイアフラムと強化された出口バルブとを備える膜またはダイアフラムポンプ)によって実現され得ることである。患者へのまたは皮膚中への、薬剤、例えばインスリンの、正確で、疼痛の少ない、無針および皮下適用は、そのような自由噴流投薬システムを使用して可能になる。
【0021】
特定の駆動パラメータに応じて、マイクロポンプまたは高圧マイクロ膜ポンプは、各ポンプ行程とともに、マイクロポンプの行程体積が、正確に調整可能な圧力(例えば20バール)において噴流で皮膚の上層を通って発射されるように調整され得る。小さいノズル開口(例えば50μmから100μm)および規定された浸入深さにより、この注射は痛くない。
【0022】
それの超コンパクト構造により、そのような投薬チップは時計、パッチまたは歯に組み込まれ得る。したがって、さらなる実施形態は、自由噴流投薬システムがその中に組み込まれたウェアラブルアームストラップまたはパッチに関係する。この技術は、針による突き刺しを不要にするので、特に糖尿病治療ではかなりのブレークスルーである。小さくフラットな構造により、このチップは、さらに、例えば、従来の腕時計、スマートウォッチまたはアームストラップのような、フラットなパッチまたはウェアラブルデバイスに組み込まれ得る。
【0023】
さらなる実施形態は、膜と圧電アクチュエータとを備えるマイクロポンプを備える自由噴流投薬システムを提供し、圧電アクチュエータは、少なくとも150μmまたは少なくとも300μmまたは好ましくは最高600μmまたはそれを超える厚さを備える。そのような投薬チップは、投薬圧力が正確に調整されることを可能にし、それに応じて皮膚への浸入深さが決定されるだけでなく、それの自己吸引能力および高い気泡耐性により、失敗に対する受けにくさをも呈する。
【0024】
実施形態に対応して、ここでの圧電アクチュエータは、多層セラミックによって(すなわち、少なくとも2つのセラミック層、もしくは好ましくは最高10個、15個またはさらには20個のセラミック層によって)形成され得る。これらのセラミック層は、場合によっては互いに接合され得る。そのような多層セラミック圧電アクチュエータは、低いターンオン電圧(例えば50ボルト)だが高い駆動電流を用いて、十分高い圧力がポンプチャンバ中に、または特にそれの出口において生成されることを可能にする。この構造のマイクロポンプでは、さらなる実施形態に対応して、ブロッキング圧力を生成するときに20バール超のまたはさらには最高40バールの力に耐えるために、少なくとも100μmまたは少なくとも200μm、または好ましくはさらには最高400μmになるようにあるいはそれを超えるように膜の厚さを実装することにも敏感であり得る。膜の安定性を改善するためのさらなる随意の変形形態は、膜を偏倚させることである。
【0025】
圧電アクチュエータおよび膜の「比較的大きい」寸法にもかかわらず、10×10×2mm未満の全体的な寸法が実現され得る。そのような高いブロッキング圧力を可能にするための構造的特徴は、入口側と出口側の両方の上での(チェックバルブのような)(受動)バルブに関係する。好ましくはここでは一方向バルブが使用される。実施形態に対応して、出口における一方向バルブは、少なくとも、2つの側上で支持されるカンチレバーまたは1つの側上で支持される膜を備える。
【0026】
小さい寸法を同時に伴う、高いチャンバ圧力はまた、少なくとも0.2の高い圧縮場との組合せで、極めて小さい流体開口、例えば100μm未満またはさらには50μm未満の直径を有するノズルがポンプ中で適用されることによって可能になる。これらの小さいノズルは皮膚に対して最小の損傷のみを生じ、したがって、ほぼ無痛の注射を可能にする。
【0027】
追加の実施形態に対応して、自由噴流投薬システムは、駆動プロファイルを設定することを可能にするコントローラを備える。浸入深さは、(ばね原理による従来の噴流分配器とは対照的に)規定された駆動プロファイルによって正確に調整され得る。さらに、ポンプ体積が正確に調整され得、ここでは、複数の、例えば、20ナノリットルの、最小体積単位の完全な駆動が可能である。前述の膜ポンプを使用して、膜ポンプチップがポンプ機能をも備えるので最高200Hzの繰り返し頻度が達成され得る。
【0028】
さらなる実施形態に対応して、ノズルチップ上にまたはチャンバおよびバルブ中に銀層が設けられ得、それにより、薬剤の(長い)無菌性が提供される。
【0029】
さらなる発展は下位請求項において定義されている。本発明の実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】基本的実施形態による自由噴流投薬システムの概略ブロック図を示す。
図2】別の実施形態による膜ポンプを備える自由噴流投薬システムの概略ブロック図を示す。
図3a】拡張された実施形態による投薬チップの形態の自由噴流投薬システムの概略構造図である。
図3b】拡張された実施形態による投薬チップ包含投薬モニタリングの形態の自由噴流投薬システムの概略構造図を示す。
図4a】自由噴流投薬システムを備えるパッチの概略図を示す。
図4b】自由噴流投薬システムを備えるアームストラップの概略図を示す。
図5a】マイクロポンプ中の膜についての行程体積と背圧との間の依存性を示す概略図を示す。
図5b】マイクロポンプの設計例を示す表を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図を参照しながら本発明の実施形態について以下で説明する前に、等しい要素および構造、または等しい効果の要素および構造は、それらの説明が相互に適用可能または交換可能であるように、等しい参照番号を与えられることが指摘されるべきである。
【0032】
図1は、マイクロポンプ20と、出口側上に配置されたノズル30とを備える自由噴流投薬システムを示す。マイクロポンプ20は、少なくとも1つの入口22および1つ出口24を備え、ノズル30は、出口24に配置されまたは/および出口24と合致する。ここではまた、出口24はまた、その中にノズル30を組み込ませ得ることが指摘されるべきである。
【0033】
自由噴流投薬システムは、皮膚12中または皮膚12下に、流体、例えば薬または薬剤を適用することを受け持つ。自由噴流投薬システム10によって、ノズル30において自由噴流15が生成される。自由噴流15を生成するために、入口22において薬剤、または一般的に流体が取り上げられるかまたは吸引され、ポンプ20によって出口24に移送され、ここにおいて、少なくとも20バールまたはさらには40バールのいわゆるブロッキング圧力がセットアップされる。ここでのブロッキング圧力は、流体が出口24を通って流れるのに必要な圧力を意味する。流体の高いブロッキング圧力から開始して、流体は、次いで、皮膚12中に注射されるための自由噴流15の形態で、ノズル30によって高圧で、例えば10もしくは20バール超(または15から30バール)で分配される。非接触注射または皮下適用では、高圧に加えて、例えば50μmまたは最高100μm程度の大きさの、小さいノズル30によって生成される「鋭い」自由噴流15が必要とされる。
【0034】
(皮膚中または皮膚下の)自由噴流15の浸入深さは、ここで説明するパラメータに応じて調整され得る。皮膚は、概して、筋肉、腱および骨を覆っている3つの層に細分化され得る。最上層(30〜2000μm)はいわゆる表皮である。最下層は皮下組織(500〜30000μm)である。それらの間に真皮がある。表皮または真皮中に注射しても、神経がなく血管が損傷されないので、通常痛みを生じない。しかしながら、これらの皮膚層中に導入されるべき薬剤の量は、より大きい量で、皮下適用または繰り返し適用が行われるように制限される。
【0035】
ここで、好ましい実施形態に対応して、行程体積Vとブロッキング圧力pとの間に線形接続があることが指摘されるべきである。線形接続は、行程を生成するために電圧依存要素、例えば圧電アクチュエータが使用されることによって生じる。ブロッキング圧力は、(背圧なしの)最大行程体積Vにおいて最小であり、最小行程体積Vにおいて最大(pmax)である。マイクロポンプ20の動作点(p=20バールおよびV=20nl)は、典型的にはそれらの間の(線形)領域において配置される。
【0036】
図2は、マイクロポンプ20’が膜ポンプとして実装され、出口側上でノズル30’に結合された、自由噴流投薬システム10’の概略ブロック図を示す。
【0037】
マイクロポンプ20’はケーシング21’を備え、ケーシング21’中に入口22’および出口24’が配置される。さらに、ケーシング21’は膜26’によって密封され、それにより、ポンプ20’内にチャンバ27’が形成される。膜26’はアクチュエータ28’、例えば圧電アクチュエータによって動作される。
【0038】
アクチュエータ28’による「作動」の結果として、チャンバ27’を流体で充填するときに内部の圧力が増加するように、チャンバ27’中の体積は低減される。圧力は、例えば、20バールの、出口24’によって規定されたブロッキング圧力に達するまで増加する。実施形態に対応して、ブロッキング圧力は、例えば、一方向バルブとして実現された出口バルブ25’によって規定され得る。一方向バルブ25’は、バルブ蓋とばねとを例示的に含み、弾性様式でケーシング21’の外側上に配置されたカンチレバーまたは屈曲バーのように整形され、このカンチレバーまたは屈曲バーは、チャンバ27’中の第1の圧力状態(例えば<10バール)では、出口24’を密封し、チャンバ27’内の圧力(>10バール)の結果として、チャンバ27’内の圧力に応じて出口24’を開放するように変形する。この第2の圧力状態では、バルブ25’は開いており、したがって、流体はチャンバ27’からノズル30’にまたはノズルチャンバ31’中に流れ、次いで、ノズル開口32’を通って自由噴流15の形態で出力され得る。
【0039】
チャンバ27’内で約20バール(40バール)の体積圧力を生成するために、一方では、バルブ25’が対応して実装され、他方では、ポンプ20’が対応して寸法決定されることが好ましい。バルブ25’’の安定性を高めるための方策は、例えば、屈曲バーの両側支持または対応する材料の使用である。実施形態に対応して、(シリコン)ケーシング21’は、存在するブロッキング圧力で十分な剛性を示すように、例えば、250μmまたは500μmよりも大きい壁厚とともに提供され得る。
【0040】
追加または代替として、駆動膜26’および圧電アクチュエータ28’が対応して設計され得る。実施形態に対応して、例えば、シリコンから製造された駆動膜26’は、例えば、偏倚され、最高400μmの厚さを備えるように実装され得る。さらなる実施形態に対応して、アクチュエータ28’は、最高600μmの厚さを有する圧電セラミックとして実装される。ここで、圧電アクチュエータ28’は、いくつかの層において、すなわち、例えば、最高10または20個の層において実現されることも考えられ得る。
【0041】
図3aは、高いブロッキング圧力におけるマイクロポンプ20’’と自由噴流ノズル30’’とを備える投薬チップ10’’(マイクロ投薬システム)を示す。マイクロポンプ20’’と実際のノズル30’’との間にいわゆるノズルチップ35’’が配置される。マイクロポンプ20’’、ノズルチップ35’’および自由噴流ノズル30’’は、いわゆる基本モジュールを一緒に形成する。この実施形態では、基本モジュールは、例えば、シリコンから形成され、実際の投薬チップを形成する。
【0042】
基本モジュールは、駆動膜26’’と受動チェックバルブ25’’とによって限定されるポンプチャンバ27’’を含む。ノズルチップ35’’がバルブチップ20’’の下方に付加され、場合によっては粒子フィルタ37’’が入口22’’に付加される。
【0043】
圧電ポンプアクチュエータ28’’は、約40バールのブロッキング圧力を示すように構成される。ブロッキング圧力の大きさに関しては新しいグラウンドが破られている。さらに、60バールにおける圧電アクチュエータ(FEMシミュレーションおよび分析計算)のための設計が構成されている。
【0044】
そのような高いブロッキング圧力にとって有利であるのは、(最高400μmまで)シリコン膜26’’の厚さと、(最高600μmまで)圧電セラミック28’’の厚さとの両方を増加させることである。極めて厚いセラミック28’’でターンオン電圧を低減するために、仕様に従って圧電供給者(現在はPI Ceramics)によって提供される、(例えば、10〜20個の層をもつ)多層セラミックが使用され得る。したがって、600μmの厚さをもつ10層多層セラミックでは、ターンオン電圧は(単形性セラミックでの900Vの代わりに)わずか90Vであるが、多層要素のより高いキャパシタンスにより、駆動電子回路(図示せず)は10倍大きい駆動電流を供給する必要がある。それぞれのコントローラは、対応して構成される必要がある。
【0045】
当然、ブロッキング圧力が高いと、行程体積はより小さくなる。これはまた、圧縮比(行程体積と死空間との間の比)(例えば少なくとも0.2)を低減し、投薬チップ10’’の気泡耐性が悪くなり得る。圧縮比は、行程体積と死空間との間の比によって定義される。ここでの行程体積は、背圧なしで電圧振幅において膜によって変位される体積である。死空間は、膜がより低い反転点にあるとき、(背圧なしの)ポンプチャンバ中のすべての体積の和として定義される。これを防止するために、圧電セラミックは、定義された様式でセラミック28’’を偏倚することによって、接合プロセスによって固定される。このようにして、ポンプチャンバ27’’は数マイクロメートルの測度に低減され、それにより死空間が低減され得る。これは、投薬チップの圧縮比を極めて大きくし、したがって、投薬チップが自己吸引性になる、すなわちリザーバ50から流体を吸引するために構成されることになることを可能にする。
【0046】
シリコンから製造された受動チェックバルブ23’’、および特に25’’は、40バールの圧力パルスに耐えるべきである。バルブフラップの幾何学的寸法は適応される必要があり得る(例えばより厚いフラップ、より短いフラップ、両側支持など)。同じくシリコンから製造されたノズルチップ35’’がポンプチップ20’’の下側に付加される。ノズルチップ35’’は、好ましくは、SOIウエハを使用することによってドライエッチングされる。すべてのウエハを互いの間で接続することは、例えば、使用されたシリコン融合接合によって行われるが、例えば共晶接合、ウエハ接合など、代替の接続プロセスによっても行われ得る。代替的に、投薬チップはまた、セラミックを含むか、または金属層、例えばばねステンレス鋼から形成され得、その場合それらは、レーザー溶接または熱拡散接合によって結合される。
【0047】
図3bは、統合型ノズルおよびモニタリング機能をもつ、マイクロポンプ20’’(図3a参照)と、ノズルチップ35’’’と、投薬チップ30’’’とを備える(例えばシリコンから製造された)別の投薬チップ10’’’を示す。ここで、実際のノズルは参照番号32’’’を有することが指摘されるべきである。
【0048】
ノズルチップの代わりに好適な投薬チップ35’’’および30’’’が使用され得る。それは、例えば、ノズルが(例えばドライエッチング工程によって)それからエッチングされる膜中心に、圧電抵抗性圧力センサを含む(それの測定範囲は、例えば40バールの圧力のために構成される)。ノズル32’’’は、減圧のためのダイアフラム流量制限として、および同時に自由噴流15を形成するためのノズルとして働く。
【0049】
圧力センサはホイートストンブリッジとして実現され得る。ホイートストンブリッジ回路中に配置される4つの抵抗器、特に圧電抵抗性抵抗器は、例えば、ノズルを備える膜の上に設けられる。(抵抗性圧電)抵抗器の、したがって膜の変形は、ホイートストンブリッジ回路によってそれの離調を使用して測定され、それから開始して、ノズル直径を知ったとき、ノズルを通る流量(流れに対して規定の抵抗をもつ流れ抵抗)が判定され得る。
【0050】
これは、気泡によって生じる失敗条件:例えば、ポンプチャンバ27’’中に気泡があるとき、放出に必要な圧力はもはやセットアップされ得ず、達成可能な圧力は、気泡のサイズによって規定される圧縮比のみに従って形成することになるという、放出プロセスの機能のモードのオンラインモニタリングを可能にする。
【0051】
別の失敗条件は、気泡がポンプチャンバ中にはないが、出口バルブ25’’とノズル32’’’との間の空間中にあるときである。この場合も、流体キャパシタンスとしての気泡が体積行程をバッファするので、達成可能な圧力は低減される。
【0052】
両方の失敗条件は、薬剤がもはや皮膚12中に浸入することができなくなるように、ノズル32’’’における自由噴流圧力があまりに小さくなることをもたらす。
【0053】
投薬チップは、ノズルにおける圧力の低減を直接測定し、これらの失敗条件を確実に認識する。
【0054】
さらに、どちらのイベントもノズル32’’’における自由噴流圧力の低減を生じるので、投薬チップ10’’’は、マイクロポンプ20’’の劣化(例えば駆動膜の減少またはまたマイクロバルブの劣化)を認識することも可能である。
【0055】
上記で説明した投薬チップ10、10’、10’’および10’’’によって達成可能な流体力学結果の短い概観について以下で説明する。噴流を特徴づけることは、ストロボスコープを使用して脱イオン水を使用して行われる。ノズルの前の圧力pは、以下の式を使用して、噴流速度vから導出され得る:
【0056】
【数1】
、pは液体の密度である(噴流15の自由表面を形成するための表面エネルギー(「自由噴流限界」)は、もはや高圧を伴う役割を果たさないので、ここでは無視されている)。代替的に、力センサに対して噴流することが行われ得、ノズルの前の圧力はそのエリアを使用して導出され得る。圧電セラミックの駆動パラメータを最適化することによって、約20〜30バールの皮膚に薬剤を押圧するのに必要な圧力は、噴流の浸入深さに応じて調整されることになる。
【0057】
膜またはダイアフラム寸法決定は、以下で説明するように、使用の目的および膜またはチャンバ体積に応じて変化し得る。以下の説明は図5aおよび図5bに関して行われる。
【0058】
図5aは、行程体積ΔVがポンプチャンバ圧力pにわたってプロットされた図を示す。図5aによって示される(例えば線形)関数に基づいて、動作点が決定され得る。数学的背景について以下で説明する。
【0059】
圧電アクチュエータの行程体積ΔVおよび流体キャパシタンスCp:ポンプチャンバ圧力pと作動電圧Uとをもつ圧電アクチュエータダイアフラムの行程体積ΔVは以下によって表され得る。
【0060】
ΔV(p,U)=C(p−p)+C*ΔU
ΔV:行程体積
p:ポンプチャンバ圧力
p0:大気圧
ΔU:電圧行程
Cp:作動ダイアフラムの流体キャパシタンス
CE*:係数
【0061】
係数CpおよびCE*は理論によって導出され得る。これは円形形状について計算されている。Cpは以下に依存する。
Yd:ダイアフラムのヤング係数
Rd:ダイアフラムの半径
Yp:圧電のヤング係数
Rp:圧電の半径
v:ポアソン数
【0062】
作動ダイアフラムの流体キャパシタンスCはダイアフラムの体積変化を定義しており、ポンプチャンバ圧力が変化する場合、Cはダイアフラムのスチフネスに反比例する。
CE*は、同じパラメータに、さらにd31圧電係数に依存する。
行程体積ΔVは、背圧なしの行程体積と見なされる(p=p)。
【0063】
【数2】
【0064】
相対最大圧力ヘッドpblockはΔV=0で計算され得る。
【数3】
【0065】
設計、特にダイアフラム/ポンプチャンバの設計は、上記で説明した関数に基づいて計算され得る。図5bは、表を使用して例示的な4つの相違設計の変形態を示す。この表は、幾何学パラメータ、例えば膜半径、および動作電圧のような他の動作パラメータの値を含む。
【0066】
ミクログラムスケールで投薬する投薬チップによる、さらなる一連のテストについて以下で説明する。噴流生成の最大繰り返し頻度、投薬量の長期安定性、および特に気泡を吸引することによる、投薬チップの気泡耐性が大いに興味深い。組織等価(例えばポリアクリルアミドゲル)中への噴流の浸入深さが最後に検査される。(サテライト小滴を回避するために規定された様式で噴流をセットアップするときとブレーキダウンするときの両方において)電圧振幅だけでなく電圧エッジも重要な最適化パラメータである。これらのデータは、その上、産業パートナーおよび医療パートナーと協力する製品開発のための開始点として働く。
【0067】
言い換えれば、上記で説明した自由噴流投薬システムによって、薬剤を無痛様式で適用することが可能な無針コンパクト薬剤噴流器が提供され、それにより、針による突き刺しがなくなる。投薬ユニットは極めて小さいので、それはパッチまたは腕時計に組み込まれ得る。上記で説明したように、特に皮膚の上層中に噴流するとき、注射ごとの最大量は制限される。しかしながら、自由噴流投薬システムが体に永続的に着用されると、注射は、(経時的に投薬を分散させて)所望通り頻繁に繰り返され得、したがって、個々の注射は少量であるにもかかわらず、十分な量の薬剤が適用され、皮膚の上層中への注射は無痛になり得る(上記を参照)。
【0068】
図4aは、別の実施形態、すなわち、自由噴流投薬システム10、10’、10’’または10’’’がパッチに組み込まれるかまたはパッチに適用されるパッチ80を示す。
【0069】
認識され得るように、自由噴流投薬システム10、10’、10’’、10’’’は、パッチ中に典型的に存在する綿パッドの代わりに配置されるが、例えば綿パッド内の、異なる組付けも考えられる。粘着性側(参照番号81を参照)上のこの配置は、パッチが皮膚12上に置かれたとき、自由噴流15がそれに当たり、それにより薬剤または流体が注射されることを保証する。
【0070】
図4bは、自由噴流投薬システム10、10’、10’’または10’’’がアームストラップまたは腕時計に内側(参照番号86を参照)上に組み込まれた、さらなるウェアラブル変形形態、すなわちアームストラップまたは腕時計85を示す。
【0071】
図4aおよび図4bの実施形態では、明示的に説明されていないときでも、薬、例えばインスリンのための対応するリザーバがパッチ80またはアームストラップ85中に提供されることが当業者には明らかである。
【0072】
さらなる実施形態に対応して、上述の自由噴流投薬システムはまた、対応する適用量が管理され得るように、対応して投薬を管理するかまたは対応してアクチュエータを駆動する追加の駆動論理、例えばASICを含み得る。ここで、コントローラは、その場合、投薬量および頻度を制御することになる。コントローラは、特に図4aおよび図4bの実施形態に好適である外部装置、例えばスマートフォンに接続され得る。
【0073】
アームストラップ85を備える図4bの実施形態を参照すると、このアームストラップは、さらなる要素、例えば本特許をモニタリングするセンサを備え得ることが言及されるべきである。
【0074】
上記の実施形態では特に膜ポンプの形態のマイクロ投薬ポンプに関して説明されているときでも、上記の実施形態において、または特に図4aおよび図4bの上記の実施形態においても採用され得る異なるポンピング技術があることが指摘されるべきである。いわゆるパッチポンプまたはペン技術はこれの例である。これらはまた、1Hzから200Hzの高い頻度を可能にし、これらの基本頻度は、マイクロバルブを使用することによって頻繁に達成される。
【0075】
上記の実施形態では、アクチュエータが特に圧電アクチュエータとして説明されているときでも、他の原理、例えば磁気アクチュエータも使用され得ることが指摘される。
【0076】
マイクロ投薬システムが10×10×2mm未満またはさらには7×7×1mm未満の極めて小さい寸法を備えることは上記で説明したすべての実施形態に共通であり、実際のマイクロ投薬システムに加えて、さらなる要素、例えばリザーバおよびバッテリーがその中に組み込まれることになる。
【0077】
上記の実施形態では、それが例えば糖尿病患者のために、薬剤を投与することのみを受け持つと仮定した。実際は、本発明の実施形態はそのような適用例に制限されない。さらなる例は、局所麻酔剤(歯科医学もしくは皮膚科医)、美容医学(ボトックスもしくはヒアルロン酸)、流行病の場合の大量予防接種、獣医学、(焼き印の代わりに)動物をマーキングすることまたはさらには入れ墨のための新規のツールとしての使用である。
【0078】
上記で説明した実施形態は、本発明の原理の例示を表すものにすぎない。本明細書で説明した配置および詳細の修正および変形が他の当業者に明らかになることを理解されたい。したがって、本発明は、実施形態の記述および説明を使用して本明細書で提示された特定の詳細によってではなく、添付の特許請求の範囲のみによって限定されるものである。
【0079】
文献
[1] Samir Mitragotri、Recent Developments in Needle−Free Drug Delivery、The Bridge (USPS 551−240)、the National Academy of Engineering発行、Val.38、No.4、2008年冬
【0080】
[2] Trans−Endoscopic Microinjection for Flexible Endoscopy、K.Mutschler、W.Kunert、R.lngenpass、K.E.Grund、L.Tanguy、A.Ernst、R.Zengerle、P.Koltay、Biomedical Engineering/Biomedizinische Technik。ISSN(オンライン)1862−278X、ISSN(印刷)0013−5585、DOI:10.1515/bmt−2012−4141、2012年8月
【0081】
[3] 14年4月22日にアクセスされた、http://www.injex.de/
【0082】
[4] 14年4月22日にアクセスされた、http://www.diabetes−deutschland.de/archiv/archiv 2847.html、Prof.Dr.W.A.Scherbaum、Deutsches Diabetes−Forschungsinstitut Dusseldorf
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【0084】
[6] S.Weinzierl、Konzept zur Branchenanalyse zur Kommerzialisierung einer piezoelektrisch angetriebenen Mikropumpe fur das Indikationsgebiet Diabetes mellitus、修士論文、Georg Siemon−Ohm Hochschule Nurnberg、Fakultat fur Betriebswirtschaft、2013年8月31日、Fraunhofer EMFTのために実現された。
【0085】
[7] 14年4月29日にアクセスされた、http://www.industryreportstore.com/insulin−delivery−devices−market−to−2019−simplified−pump−solutions−and−low−cost−pens−represent−distinct−regional−growth−drivers.htmI
【0086】
[8] M.Wackerle、A.Drost、M.Richter:A novel device for high frequency ejection of nanoliter jets、proceedings Actuator 2002、8th International Conference on New Actuators、2002年6月10〜12日、ブレーメン、ドイツ、227〜230ページ目
【符号の説明】
【0087】
10、10’、10’’、10’’’ 自由噴流投薬システム、投薬チップ
12 皮膚
15 自由噴流
20、20’、20’’ マイクロポンプ
21’ ケーシング
22、22’、22’’ 入口
23’’ 受動チェックバルブ
24、24’ 出口
25’、25’’ バルブ
26’、26’’ 膜
27’ チャンバ
27’’ ポンプチャンバ
28’、28’’ アクチュエータ
30、30’、30’’、32’’’ ノズル
30’’’、35’’’ 投薬チップ
31’ ノズルチャンバ
32’ ノズル開口
35’’、35’’’ ノズルチップ
37’’ 粒子フィルタ
50 リザーバ
80 パッチ
81 粘着性側
85 アームストラップ
86 内側

図1
図2
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b