(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記表層における、以下の式で表される初期の剥離力に対する簡易耐久試験後の剥離力の変化率が、200%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の導電性エンドレスベルト。
変化率(%)=[{簡易耐久試験後の剥離力(N)−初期の剥離力(N)}/初期の剥離力(N)]×100
【発明を実施するための形態】
【0014】
(導電性エンドレスベルト)
本発明に係る導電性エンドレスベルトは、無端のベルト本体である基材層と、当該基材層の外周側の最表面に形成された表層とを必須部材として備える。基材層と表層との間に、プライマー層などのその他の層を任意に備えてもよい。
本発明の導電性エンドレスベルトは、トナー剥離性の低下を抑制することができるため、画像形成装置における中間転写ベルトとして好適に使用することができる。
以下、本発明に係る導電性エンドレスベルトを構成する必須部材である基材層および表層、ならびに必要に応じて設けることができるその他の層について順に例示説明する。
【0015】
<基材層>
本発明に係る導電性エンドレスベルトにおいて、基材層は、無端のベルト本体を構成する必須部材である。
基材層は、特に限定されず、従来公知の導電性エンドレスベルトの基材層を用いることができる。
【0016】
基材層とする樹脂は、例えば、熱可塑性樹脂を用いることができる。このような熱可塑性樹脂としては、これらに限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル;ポリアミド;ポリカーボネート;ポリフェニレンオキシド;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリスチレンなどのポリオレフィン;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリフッ化ビニリデン(PVDF);ポリメタクリル酸メチル;ポリウレタン;ポリアセタール;ポリ酢酸ビニル;アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂;ポリアミドイミド;ポリアリレート;ポリスルホン;ポリスルホンアミド;サーモトロピック液晶ポリマー;ポリアミド酸を挙げることができる。このような熱可塑性樹脂を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
基材層には、通常、導電性エンドレスベルトの導電性発現のために、従来公知の導電剤が添加される。
基材層に添加される導電剤としては、特に限定されず、例えば、従来公知の電子導電性物質、イオン導電性物質を挙げることができる。このような導電剤を1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
電子導電性物質としては、例えば、ケッチェンブラックEC、アセチレンブラックなどの導電性カーボン;SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MTなどのゴム用カーボン;酸化処理などを施したカラー(インク)用カーボン;熱分解カーボン;天然グラファイト;人造グラファイト;ニッケル、銅、銀、ゲルマニウム、アンチモンドープの酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛などの金属および金属酸化物;ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレンなどの導電性ポリマー、などが挙げられる。
【0019】
イオン導電性物質としては、例えば、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸カルシウム、塩化リチウムなどの無機イオン性導電物質;トリデシルメチルジヒドロキシエチルアンモニウムパークロレート、ラウリルトリメチルアンモニウムパークロレート、変性脂肪族・ジメチルエチルアンモニウムエトサルフェート、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−(3’−ドデシロキシ−2’−ヒドロキシプロピル)メチルアンモニウムエトサルフェート、ステアルアミドプロピルジメチル−β−ヒドロキシエチル−アンモニウム−ジハイドロジェンフォスフェート、テトラブチルアンモニウムホウフッ酸塩、ステアリルアンモニウムアセテート、ラウリルアンモニウムアセテートなどの第4級アンモニウムの過塩素酸塩、硫酸塩、エトサルフェート塩、メチルサルフェート塩、リン酸塩、ホウフッ化水素酸塩;アセテートなどの有機イオン性導電物質;電荷移動錯体、などが挙げられる。
【0020】
基材層の導電性は、上記導電剤の添加によって、所望の導電性に調整すればよく、例えば、抵抗値を10
5〜10
14Ω・cmとすればよい。
【0021】
基材層には、導電剤のほかにも、必要に応じて、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、可塑剤、光安定剤、滑剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、粗し粒子、スリップ剤、架橋剤、架橋助剤、接着剤、難燃剤、分散剤などの公知の添加剤を添加してもよい。また、必要に応じて、例えば、ガラス繊維、カーボン繊維、タルク、マイカ、酸化チタン、炭酸カルシウムなどの公知の補強性充填剤を添加してもよい。
【0022】
基材層は、表層との接着性を向上させるために、プライマー処理、プラズマ処理、コロナ処理などの従来公知の表面処理を施してもよい。この他、基材層上に直接、表層が設けられる場合、基材層の表層側表面に、表層を形成する樹脂組成物中の紫外線硬化性樹脂、溶媒などが浸透した領域が存在してもよい。
【0023】
<表層>
本発明に係る導電性エンドレスベルトにおいて、表層は、基材層の外周側の最表面に形成された部材であって、導電性エンドレスベルトに優れたトナー剥離性を付与するための必須部材である。
表層は、紫外線硬化性樹脂およびシリコーン樹脂を含む樹脂組成物から形成されている。
以下、樹脂組成物の必須成分である紫外線硬化性樹脂およびシリコーン樹脂、ならびに必要に応じて添加することができるその他の成分について順に例示説明する。
【0024】
(紫外線硬化性樹脂)
紫外線硬化性樹脂は、紫外線の照射によって硬化して表層のマトリクス(バインダーともいう)となり得る成分である。紫外線硬化性樹脂は、従来公知の導電性エンドレスベルトに用いられている紫外線硬化性樹脂を用いることができる。このような紫外線硬化性樹脂としては、例えば、これらに限定されないが、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリビニルブチラール樹脂などが挙げられる。所望の性能などに応じて、これらを単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、本発明における「紫外線硬化性樹脂」には、後述する「シリコーン樹脂」は含まれないものとする。
【0025】
(シリコーン樹脂)
本発明におけるシリコーン樹脂は、本発明に係る導電性エンドレスベルトの表層に優れたトナー剥離性を付与する働きを有する。
【0026】
本発明におけるシリコーン樹脂は、1分子当たり、(メタ)アクリロイル基を4個以上有するポリシロキサンを含む。
本発明の一実施形態では、シリコーン樹脂は、1分子当たり、(メタ)アクリロイル基を4個以上有するポリシロキサンである。
本発明の一実施形態では、当該4個以上の官能基は、全てアクリロイル基である。
本発明の別の一実施形態では、当該4個以上の官能基は、全てメタクリロイル基である。
本発明の別の一実施形態では、当該4個以上の官能基は、アクリロイル基とメタクリロイル基の組み合わせである。
理論に縛られることを望むものではないが、本発明においては、ポリシロキサンが、1分子当たり、(メタ)アクリロイル基を4個以上有することにより、硬化時にポリシロキサン間およびポリシロキサンと上記紫外線硬化性樹脂との間で3次元的な架橋構造を形成し、導電性エンドレスベルトのトナー剥離性の低下を抑制することができるものと推測される。
【0027】
本発明におけるポリシロキサンは、(メタ)アクリロイル基を1分子当たり、4個以上有すればよく、ポリシロキサンのポリマー分子の主鎖と側鎖のいずれに有していてもよく、主鎖と側鎖の両方に有していてもよい。
ポリシロキサン中の(メタ)アクリロイル基の合計数は、1分子当たり、4〜8個であることが好ましい。
本発明の一実施形態では、ポリシロキサンは、(メタ)アクリロイル基をポリシロキサンのポリマー分子の主鎖の両方の末端部分に4個以上有する。
本発明の別の一実施形態では、ポリシロキサンは、(メタ)アクリロイル基をポリシロキサンのポリマー分子の主鎖の片方の末端部分に4個以上有する。
本発明の別の一実施形態では、ポリシロキサンは、(メタ)アクリロイル基をポリシロキサンのポリマー分子の側鎖に4個以上有する。
本発明の別の一実施形態では、ポリシロキサンは、(メタ)アクリロイル基をポリシロキサンのポリマー分子の主鎖および側鎖に合計4個以上有する。
【0028】
ポリシロキサンの主鎖の繰り返し単位は、一般式−[SiR
2O]
n−で表すことができ、式中、ケイ素原子に結合したRは、それぞれ独立して、水素原子または1価の炭化水素基である。当該1価の炭化水素基は、N,O,SおよびFなどのヘテロ原子を有していてもよく、有していなくてもよい。
上記Rの1価の炭化水素基中の炭素原子数は、例えば、1〜20個であり、より好ましくは、1〜9個、さらに好ましくは、1〜6個、特に好ましくは、1個である。
上記Rとしては、これらに限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの直鎖または分岐のアルキル基;フェニル基などのアリール基;ベンジル基などのアラルキル基;ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドなどのポリアルキレンオキシド;フルオロアルキル基;−OCOR’(ここでR’は、炭素原子数1〜20個の1価の炭化水素基);−R”NHCOR’基(ここでR’は、上述したとおりであり、R”は、炭素原子数1〜20個の二価の炭化水素基)などの非反応性基が挙げられる。
上記Rの他の例としては、これらに限定されないが、アミノ基;エポキシ基;脂環式エポキシ基;−R”OH基(ここでR”は、上述したとおり);−R”SH基(R”は、上述したとおり);−R”COOH基(R”は、上述したとおり)などの反応性基が挙げられる。
本発明の一実施形態では、上記繰り返し単位中のRは、いずれもメチル基である。
本発明の別の一実施形態では、上記繰り返し単位中のRは、いずれもフェニル基である。
本発明の別の一実施形態では、上記繰り返し単位中のRは、1つが水素原子であり、もう1つがメチル基である。
本発明の別の一実施形態では、上記繰り返し単位中のRは、1つが水素原子であり、もう1つがフェニル基である。
本発明の別の一実施形態では、上記繰り返し単位中のRは、1つがメチル基であり、もう1つがフェニル基である。
【0029】
本発明に係る導電性エンドレスベルトは、シリコーン樹脂が、1分子当たり、アクリロイル基を4個以上有するポリジメチルシロキサンであることが好ましい。これにより、導電性エンドレスベルトのトナー剥離性の低下を抑制する良好な効果が得られやすい。アクリロイル基を4個以上有する好適なポリジメチルシロキサンとしては、例えば、ビックケミー・ジャパン株式会社製のBYK(登録商標)−UV3570が挙げられる。
この他、(メタ)アクリロイル基を1分子当たり、4個以上有するBYK(登録商標)−UVシリーズを用いてもよい。
【0030】
ポリシロキサンの(メタ)アクリロイル基は、主鎖に直接結合していてもよいし、または側鎖の全部または一部を形成していてもよい。
あるいは、ポリシロキサンの(メタ)アクリロイル基は、ポリエステル部分;エチレンオキシド、プロピレンオキシド、これらの組み合わせなどのポリエーテル部分などの連結部分を介して、主鎖もしくは側鎖に結合していてもよい。すなわち、(メタ)アクリロイル基を有するポリエステル変性シロキサンまたはポリエーテル変性シロキサンであってもよい。
【0031】
本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、本発明におけるシリコーン樹脂には、(メタ)アクリロイル基を1〜3個有するポリシロキサンが含まれていてもよい。シリコーン樹脂の合計量に対する(メタ)アクリロイル基を4個以上有するポリシロキサンの含有割合は、50質量%以上であることが好ましく、100%であることがより好ましい。
シリコーン樹脂として、上述したポリシロキサンを1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
シリコーン樹脂の含有量は、用途、所望のトナー剥離性などに応じて適宜調節すればよく、特に限定されない。
例えば、シリコーン樹脂の含有量は、紫外線硬化性樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上とすることができる。0.1質量部以上であることにより、導電性エンドレスベルトに十分なトナー剥離性を付与しやすい。
本発明の一実施形態では、基材と表層の接着性の観点から、シリコーン樹脂の含有量は、紫外線硬化性樹脂100質量部に対して、2.0質量部以下が好ましく、1.0質量部未満がより好ましく、0.5質量部以下が特に好ましい。シリコーン樹脂の含有量を0.5質量部以下とすることにより、トナー剥離性の低下を抑制することができることに加えて、基材と表層の優れた接着性を得ることができる。
【0033】
(樹脂組成物の任意成分)
樹脂組成物には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記紫外線硬化性樹脂およびシリコーン樹脂に加えて、用途、所望のトナー剥離性などの性能に応じて、適宜、導電剤、酸化防止剤、熱安定剤、可塑剤、光安定剤、滑剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、架橋剤、架橋助剤、接着剤、防汚剤、難燃剤、分散剤などの公知の添加剤を添加してもよい。また、樹脂組成物の塗工性向上のために、メチルエチルケトンなどの溶剤を樹脂組成物に添加してもよい。
樹脂組成物中の任意成分の含有量は、用途、所望の性能などに応じて適宜調節すればよく、特に限定されないが、例えば、導電剤の場合、紫外線硬化性樹脂100質量部に対して、0.1〜20質量部とすればよい。その他の任意成分についても、例えば、紫外線硬化性樹脂100質量部に対して、0.01〜10質量部とすればよい。
【0034】
表層を形成する樹脂組成物は、上記各成分を適宜溶媒を用いて混合することにより調製することができる。樹脂組成物の調製方法は特に限定されず、例えば、スプレーコーティング、ディップコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティングなどの従来公知の塗布方法を用いて塗布することにより、塗膜を形成し、乾燥させ、乾燥させた塗膜に紫外線を照射して樹脂組成物を硬化させて表層を形成することができる。
紫外線照射における積算照射エネルギーとしては、適宜調節すればよいが、例えば、100mJ/cm
2〜1500mJ/cm
2の範囲とすればよい。
【0035】
表層の厚みは、導電性エンドレスベルトとしての導電性を確保することができる範囲であれば特に限定されず、従来公知の表層の厚みとすればよい。表層の厚みは、例えば、0.1〜2.0μmの範囲とすることができる。
【0036】
(その他の層)
本発明に係る導電性エンドレスベルトのその他の層としては、例えば、基材層と表層との接着性向上のためのプライマー層が挙げられる。プライマー層としては、従来公知のアクリル系のプライマー層を用いることができる。
【0037】
(表層の剥離力)
表層のトナー剥離性の評価方法として、以下のような剥離力の変化率を用いることができる。この剥離力が小さいほど、表層表面からトナーを剥離するために必要な力が小さいため、トナー剥離性がよい。そして、その剥離力の変化率が小さいほど、トナー剥離性の低下を抑制する効果が高い。
本発明に係る導電性エンドレスベルトの好適な実施形態では、表層における、以下の式で表される初期の剥離力に対する簡易耐久試験後の剥離力の変化率を、200%以下とすることが好ましい。
変化率(%)=[{簡易耐久試験後の剥離力(N)−初期の剥離力(N)}/初期の剥離力(N)]×100
【0038】
(導電性エンドレスベルトの中間転写ベルト以外の用途)
上述したように、紫外線硬化性樹脂および1分子当たり、(メタ)アクリロイル基を4個以上有するポリシロキサンを含む樹脂組成物は、硬化して優れたトナー剥離性を発揮し得るため、本発明の導電性エンドレスベルトは、中間転写ベルトに加えて、画像形成装置におけるトナーカートリッジの転写ベルトとしても有用である。
【0039】
(画像形成装置)
本発明に係る画像形成装置は、中間転写ベルトとして導電性エンドレスベルトを備えることを特徴とする。
これにより、本発明に係る画像形成装置は、中間転写ベルトのトナー剥離性の低下を抑制することができるため、画像品質に優れる。さらに、廃トナーが少なくなるという効果も奏する。
画像形成装置としては、本発明に係る導電性エンドレスを中間転写ベルトとして用いること以外は、従来公知の中間転写ベルト方式の画像形成装置を採用することができる。
【実施例】
【0040】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0041】
基材層は、ポリエステル樹脂(長さ75mm、幅25mm、抵抗率10
10Ω・cm)を用いた。
【0042】
表層の樹脂組成物の成分として、以下の各成分を用いた。
紫外線硬化性樹脂1(ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネート ウレタンプレポリマー):共栄社化学株式会社製の商品名UA−306H
紫外線硬化性樹脂2(2官能アクリレート):共栄社化学株式会社製の商品名ライトアクリレート14EG−A
紫外線硬化性樹脂3(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート):共栄社化学株式会社製の商品名ライトアクリレートDPE−6A
紫外線硬化性樹脂4(トリメチロルプロパントリアクリレート):共栄社化学株式会社製の商品名ライトアクリレートTMP−A
紫外線硬化性樹脂5(フェノキシエチルアクリレート):共栄社化学株式会社製の商品名ライトアクリレートPO−A
紫外線硬化性樹脂6(メトキシ−トリエチレングルコールアクリレート):共栄社化学株式会社製の商品名ライトアクリレートMTG−A
シリコーン樹脂1(アクリロイル基数4個のポリジメチルシロキサン):ビックケミー・ジャパン株式会社製の商品名BYK(登録商標)−UV3570
シリコーン樹脂2(アクリロイル基数1個):信越化学工業株式会社製の商品名X22−2458
シリコーン樹脂3(アクリロイル基数2個のポリジメチルシロキサン):ビックケミー・ジャパン株式会社製の商品名BYK(登録商標)−UV3500
光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキサン−1−イルフェニルケトン):BASF社製の商品名Irgacure184
導電剤(アンチモンドープ酸化スズ):レジノカラー工業株式会社製の商品名ATO−T−7722G−496−AA
導電剤(カーボン分散液):御国色素株式会社製の商品名A223
導電剤(イオン導電剤):三光化学工業株式会社製の商品名サンコノール(登録商標)MTG−A−50R
粗し粒子(ポリテトラフルオロエチレン微粉末、表面粗さコントロール用添加剤):株式会社喜多村製の商品名KTL-2N
粗し粒子(架橋アクリル多分散粒子):綜研化学株式会社製の商品名KMR−3TA
粗し粒子の分散剤(ポリエーテルリン酸エステルのアミン塩):楠本化成株式会社製の商品名ディスパロンDA−325
反応性フッ素オリゴマー(防汚剤):DIC株式会社製の商品名メガファックRS−72−K
【0043】
(実施例1〜8および比較例1〜6)
各実施例および比較例において、上記基材層の外周側の全面に以下のように表層を形成して、長さ75mm、幅25mmの導電性エンドレスベルトを得た。まず、表1および表2に示す組成の材料を、メチルエチルケトン(以下、「MEK」という)に固形分濃度が5質量%となるように溶解して樹脂組成物を調製した。次いで、その樹脂組成物を上記基材層にスプレーコーティングによって塗布して塗膜を形成した。次いで、その塗膜を90℃で5分間乾燥させた。次いで、紫外線照射により塗膜を硬化させ、厚み2μmの表層を形成した。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
(トナー剥離性の評価)
このようにして得た導電性エンドレスベルトの表層について、トナー剥離性の評価として、作製直後の剥離力(初期の剥離力)と簡易耐久試験後の剥離力をそれぞれ測定した。その結果と、そこから以下の式により表される初期の剥離力に対する簡易耐久試験後の剥離力の変化率(%)を表2に合わせて示す。
変化率(%)=[{簡易耐久試験後の剥離力(N)−初期の剥離力(N)}/初期の剥離力(N)]×100
この変化率が小さいほど、トナー剥離性の低下を抑制する効果が高い。
【0047】
表層の剥離力は、
図2および
図3に示すように以下の方法で測定した。すなわち、まず、長さ75mm、幅25mmの寸法の導電性エンドレスベルト1を用意した。次いで、その表層3の表面に、長さ55mm、幅18mmのニチバン株式会社製のセロハン粘着テープ(商品名セロテープ(登録商標)CT−18)4のうち、長さ45mmだけを表層3の一端(折り返し端部)から貼り付け、セロハン粘着テープの残り長さ10mm部分は貼らずに剥離した状態で残した。次いで、オートローダーの2つのクランプのうち、一方のクランプ5が、剥離した状態のセロハン粘着テープ4の一端を保持し、もう一方のクランプ6が、そのセロハン粘着テープ4が貼られていない部分の導電性エンドレスベルト1の端部を保持するようにセットした。次いで、200mm/分の引張速度で、クランプ5をクランプ6に対して180°の方向に、表層3からセロハン粘着テープ4が全て剥がれるまで引っ張り、その引張時の力(N)を測定した。次いで、
図3に例示するように、引張時の力(N)がほぼ一定となった区間(少なくとも70mm)の平均値を算出した。この平均値を剥離力(N)とした。
【0048】
簡易耐久試験は、メタノール(1mL)を含浸させた20mm×20mmの寸法のワーパー(千代田株式会社製、商品名コットンシーガル)を、4.9N(0.5kgf)荷重で導電性エンドレスベルトの表層の表面に押し付けて、50往復させることにより行った。
【0049】
(導電性エンドレスベルトの表層の、基材層に対する接着力)
また、各実施例および比較例の簡易耐久試験後の導電性エンドレスベルトの表層について、基材層に対する接着力を、JIS K5600−5−6のクロスカット法に準拠して以下の評価基準で評価した。その結果を表2に合わせて示す。
評価◎:クロスカット法における試験結果の分類が0点
評価○:クロスカット法における試験結果の分類が1点
評価△:クロスカット法における試験結果の分類が2点
評価×:クロスカット法における試験結果の分類が3点以上
【0050】
表2より、シリコーン樹脂中のアクリロイル基数が1個の比較例1〜3では、剥離力の変化率が450〜950%となり、また、シリコーン樹脂中のアクリロイル基数が2個の比較例4〜6では、剥離力の変化率が567〜900%となり、簡易耐久試験後に大きく剥離力が上昇した。このことから、比較例の導電性エンドレスベルトでは、トナー剥離性が大きく低下したことが分かる。
これに対して、実施例1〜8では、実施例5で変化率が175%となったが、その他では、40%以下となった。実施例1,6および8では、変化率が0%となった。このように、実施例では、比較例に比べて変化率を極めて小さくすることができた。このことから、実施例の導電性エンドレスベルトでは、トナー剥離性の低下を抑制する効果に優れることがわかる。
【0051】
また、クロスカット法での接着力の評価結果から、シリコーン樹脂の含有量が0.5質量部以下の場合に、トナー剥離性の低下の抑制に加えて、基材層と表層の優れた接着性を得ることができた。
【0052】
(実施例9〜13)
実施例9〜13では、表3に示す組成の材料を用いたこと以外は、実施例1と同様に、樹脂組成物を調製し、厚み2μmの表層を形成した。
実施例9〜13で得られた導電性エンドレスベルトの表層について、実施例1と同様に、初期の剥離力と簡易耐久試験後の剥離力をそれぞれ測定した。
また、実施例9〜13の簡易耐久試験後の導電性エンドレスベルトの表層について、基材層に対する接着力を、実施例1と同様に測定した。
これらの測定結果を表3に合わせて示す。
【0053】
【表3】