【文献】
TYLER GRUBER etal.,RAMAN STUDIES OF HEAT-TREATED CARBON BLACKS,Carbon,英国,1994年,Vol.32, No.7,1377-1382
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【技術分野】
【0001】
この出願は、2013年6月21日出願の米国仮出願第61/837,970号および2013年6月21日出願の米国仮出願第61/837,976号に対して、合衆国法典第35巻第119条e項の下での優先権を主張し、これらを参照することによって本明細書の内容とする。
【0002】
本明細書に開示されるのは、リチウムイオン電池に用いるための、電気活性の活性材料および電導性炭素含む正極配合物である。
【0003】
電子装置の増え続ける機能性、より高い処理能力への要求、より高い解像度のスクリーン、より大きいRAMメモリー、ワイヤレスの能力などが、出力への更により高い要求へと駆り立てている。それらの装置の小型化は、エネルギー貯蔵システムのエネルギー密度への更により大きな要求へと駆り立てる。現在は、選択されたエネルギー貯蔵装置は、リチウムイオン電池、技術であり、それが最も高いエネルギーおよび出力密度を示している。しかしながら、Liイオン電池技術をもってしても、消費者用電子装置における、より小型でのより高い出力およびエネルギーへの傾向に追随するのはますますより困難になってきている。バッテリーサイズに関して用途範囲の他の一端にあるのは、電気およびハイブリッドの電気用途であり、それらは同様に、小型で制限された体積に、比較的に高い出力およびエネルギーを必要とする。
【0004】
従って、新規な正極配合物の継続した開発への必要性がなお存在している。
【0005】
1つの態様では、
1μm〜6μmの範囲のD
50を有するリチウムイオン系電気活性材料;ならびに、
130〜700m
2/gの範囲のBET表面積および150mL/100g〜300mL/100gの範囲のOANを有するカーボンブラック、
を含む正極配合物が提供される。
【0006】
他の態様では、リチウムイオン系電気活性材料およびカーボンブラックを含む粒子を含む正極ペーストが提供され、このペーストは、更に、
バインダー、および、
溶媒、
を含み、ここで、リチウムイオン系電気活性材料は、1μm〜6μmの範囲のD
50を有し、そして、カーボンブラックは、130〜700m
2/gの範囲のBET表面積および150mL/100g〜300mL/100gの範囲のOANを有している。
【0007】
他の態様では、
カーボンブラック、リチウムイオン系電気活性材料、およびバインダーを含む粒子を、溶媒の存在の下で混合して、ペーストを生成させる工程;
このペーストを基材上に堆積させる工程;ならびに、
正極を形成させる工程;
を含む正極の製造方法であって、
この電気活性材料は、1μm〜6μmの範囲のD
50を有し、そして、このカーボンブラックは、130〜700m
2/gの範囲のBET表面積および150mL/100g〜300mL/100gの範囲のOANを有している、
正極の製造方法が提供される。
【0008】
他の態様では、
1μm≦D
50≦5μmの粒子径分布を有する第1のリチウムイオン系電気活性材料、および、
5μm
<D
50≦15μmの粒子径分布を有する第2のリチウムイオン系電気活性材料、含む正極配合物が提供され、
ここで、この混合物のW/kgおよびW/Lでの最大パルス出力は、第1および第2の電気活性材料のそれぞれの最大パルス出力よりも大きい。
【0009】
他の態様では、
1μm≦D
50≦5μmの粒子径分布を有する第1のリチウムイオン系電気活性材料、および、
5μm
<D
50≦15μmの粒子径分布を有する第2のリチウムイオン系電気活性材料、含む正極配合物が提供され、
ここで、この混合物のWh/kgおよびWh/Lでのエネルギー密度は、第1および第2の電気活性材料のそれぞれのエネルギー密度よりも大きい。
【0010】
他の態様では、
1μm≦D
50≦5μmの粒子径分布を有する第1のリチウムイオン系電気活性材料、
5μm
<D
50≦15μmの粒子径分布を有する第2のリチウムイオン系電気活性材料、および、
130〜700m
2/gの範囲のBET表面積を有するカーボンブラック、
含む正極配合物が提供される。
【0011】
他の態様では、第1のリチウムイオン系電気活性材料、第2のリチウムイオン系電気活性材料、およびカーボンブラックを含む粒子を含む正極ペーストが提供され、このペーストは、
バインダー、および、
溶媒、
を更に含んでおり、ここで、
第1のリチウムイオン系電気活性材料は、1μm≦D
50≦5μmの粒子径分布を有し、
第2のリチウムイオン系電気活性材料は、5μm
<D
50≦15μmの粒子径分布を有し、そして、
カーボンブラックは、130〜700m
2/gの範囲のBET表面積を有する。
【0012】
他の態様では、
カーボンブラック、リチウムイオン系電気活性材料、およびバインダーを含む粒子を、溶媒の存在の下で混合して、ペーストを生成させる工程;
このペーストを基材上に堆積させる工程;ならびに、
正極を形成させる工程;
を含む正極の製造方法であって、
このリチウムイオン系電気活性材料は、
1μm≦D
50≦5μmの粒子径分布を有する第1のリチウムイオン系電気活性材料、および、
5μm
<D
50≦15μmの粒子径分布を有する第2のリチウムイオン系電気活性材料、を含んでいる、
正極の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0041】
多くの電池用途では、高出力および高エネルギーを与える電池が必要とされる。しかしながら、リチウムイオン電池技術においては、出力およびエネルギー密度は、典型的には2つの異なる方法で最適化されている。高エネルギー密度は、典型的には厚い電極層を設けることによって、例えば活性材料を充填する領域を増大させて、不活性な要素、例えばセパレータ、電流コレクタ箔などの質量および体積寄与率を最小化することによって達成される。複合正極の密度を更に最大化するためには、活性相の粒子は、典型的には大きく、例えば粒径が約10〜25μmである。そのような大粒子は、約0.3m
2/gの小さなN
2BET表面積を有している。このモルフォロジーは、複合電極内の良好な充填密度および、不利益な副反応がその上で起こる可能性がある表面積の小ささの結果として、高エネルギー密度および長サイクル寿命には好適である。
【0042】
商業的に入手可能な「小さな」活性粒子は、約2〜4.5μmの粒径を有しており、対応して約2.5m
2/gのより高いN
2BET表面積を与える。この表面積は、「大きな」粒子径の材料の表面積よりもほぼ10倍大きい。従って、この電極層中の充填密度は、小粒径の材料ではより小さい。更に、例えばより高温でのサイクル寿命は、小さなN
2BET表面積を有する活性正極材料では、良好ではない。従って、小さく、そして制限された体積中に高エネルギー密度が必要とされる、ほとんどのモバイル/ポータブル用途では、大粒子の、対応する小さなN
2BET表面積を有する、活性材料が、通常は用いられる。
【0043】
大粒子は、上記のように利益を与えるけれども、厚い電極層中での大粒子の使用は、電解質および固体粒子相中の両方における物質移動の制限をもたらすことが観察されている。リチウムイオン電池では、電池の充電および放電の間のエネルギーの貯蔵および放出のプロセスは、固体活性材料粒子中のLiイオンの拡散を含んでいる。従って、大粒子径材料中でのリチウムのより遅い移動性は、放電レート(出力)のより小さな値をもたらす。固体状態の拡散は、電解質相中でのLi+イオンの拡散よりも典型的にはずっと遅いことを鑑みれば、小粒子径の活性材料が、出力を要求される用途に対してはより好適である。
【0044】
ここで開示されるのは、1μm〜6μmの範囲のD
50を有する、リチウムイオン系電気活性材料、ならびに130〜700m
2/gの範囲のBET表面積および150mL/100g〜300mL/100gの範囲のOANを有するカーボンブラックを含む正極配合物である。開示された正極配合物は、高エネルギー密度用途のために十分なリチウムイオン移動性を備えた活性材料と、製造の間の好適な取扱いのための十分に小さな表面積を維持しながら、最大の性能を達成することを援ける導電性カーボンブラックとを結び付ける。1つの態様では、電気活性材料は、1μm〜6μmの範囲のD
50、例えば1μm〜5μmの範囲のD
50を有している。
【0045】
1つの態様では、電気活性材料は、2種もしくは3種以上の材料(例えば、第1および第2の電気活性材料)の混合物を含み、それぞれが、1μm〜6μmまたは1μm〜5μmの範囲のD
50を有し、あるいは第1の電気活性材料が1μm〜6μmの範囲のD
50を有し、そして第2の電気活性材料が、1μm〜5μmの範囲のD
50を有する。
【0046】
また、出力密度および/またはエネルギー密度が、混合物を組み入れることによって向上することが見出された。1つの態様では、小および大活性正極粒子を混合することで、小粒子の存在によってはしばしば低下が起こるにも拘わらず、エネルギー密度を犠牲にすることなく、出力密度が向上する。1つの態様では、W/kgおよびW/Lでの混合物の最大パルス出力は、第1または第2電気活性材料のそれぞれの最大パルス出力よりも高い。他の態様では、Wh/kgおよびWh/Lでの混合物のエネルギー密度は、第1または第2電気活性材料のそれぞれのエネルギー密度よりも大きい。
【0047】
また、ここに開示されるのは、二峰性の(bimodal)粒子径分布を有する活性材料を含む正極配合物である。他の態様では、
1μm≦D
50≦5μmの粒子径分布を有する、第1のリチウムイオン系電気活性材料、および、
5μm
<D
50≦15μmの粒子径分布を有する、第2のリチウムイオン系電気活性材料、
が提供される。
【0048】
1つの態様では、第1の電気活性材料は、1μm≦D
50≦5μmの粒子径分布を有しており、そして第2の電気活性材料は、6μm≦D
50≦15μmの粒子径分布を有している。他の態様では、第1の電気活性材料は、1μm≦D
50≦5μmの粒子径分布を有しており、そして第2の電気活性材料は、8μm≦D
50≦15μmの粒子径分布を有している。他の態様では、第1の電気活性材料は、1μm≦D
50≦5μmの粒子径分布を有しており、そして第2の電気活性材料は、10μm≦D
50≦15μmの粒子径分布を有している。
【0049】
1つの態様では、第2の電気活性材料粒子の球状の半径は、第1の電気活性材料の半径の0.4倍以下である。
図1には、球の単純立法充填の2次元投射が示されている。この場合には、より大きな球形粒子の半径の0.41倍の半径に等しい球形粒子は、より大きな球の単純立法充填によって生成される体積を占有することができる。
【0050】
1つの態様では、正極材料の共沈合成では、ろ過工程によって制限されるので、粒径下限は、4〜5μm以下である。
【0051】
1つの態様では、ここに記載された電気活性材料(例えば、第1の電気活性材料)は、15nm未満の細孔サイズ、例えば5nm〜15nmの範囲の細孔サイズ、または7nm〜15nmの範囲の細孔サイズを有している。他の態様では、電気活性材料(例えば、第1の電気活性材料)は、少なくとも0.002cm
3/gの一点法吸着総細孔体積を有している。
【0052】
電気活性成分に加えて、正極配合物は、更に導電性添加剤を含んでいる。電池産業においては、必要とされる導電性添加剤の量について、少なくとも2つの競合する要求がある:(i)偏極効果を排除する高く、そして均一な電気伝導性、偏極効果は、高い電流密度で高められる可能性があり(電圧損失=電流密度×セル抵抗)、多量の導電性添加剤を必要とさせる、ならびに(ii)可能な限り小さい体積(小さい質量)に多量のエネルギーが貯蔵されることを可能にする高エネルギー密度、導電性添加剤(希釈剤)の量は可能な限り少ないことになる。これらの2つの相反する要求は、現在は、エネルギーと出力密度との間の必然的なトレードオフをもたらしている。
【0053】
カーボンブラックは、凝集体へと互いに融合された一次粒子(小塊)を有しており、これが更に集塊となる可能性がある。カーボンブラックを記述するのに用いられるパラメータとしては表面積、構造、結晶性、純度などが挙げられる。表面積は、一般に一次粒子の大きさおよびそれらの多孔性に相関し、表面積が大きければ大きい程、一次粒子および凝集体が小さく、そして従って、単位質量当たりにより多く凝集している。単位質量当たりのより高い凝集総数により、カーボンブラック粒子自体の間の接触およびカーボンブラックと活性材料の間の接触の確率が増加し、それが電極層の向上した電気伝導率をもたらす可能性がある。従って、カーボンブラックの大きな表面積が、電極層の電気的性質に有益である可能性がある。
【0054】
しかしながら、大きな表面積は、多くの他の領域で不利益、例えば促進された寄生反応およびサイクル寿命とカレンダー寿命への悪影響を伴う。更には、大きな表面積のカーボンブラックはまた、高められた量のバインダー(絶縁体)、および付随して、エネルギーの貯蔵の役割を果たす活性材料の量の減少が必要とされる可能性がある。製造の間に、大きな表面積のカーボンブラックは、典型的には分散がより難しく、そしてスラリー粘度の増加をもたらす可能性がある。ペースト化可能なスラリーを得るためには、固体の充填量は低減される必要があり、そのことがプロセス/製造の経済性に悪影響を与える(溶媒は高価であり、そして100%回収されることはない)。
【0055】
更に、いずれかの理論によって拘束されることは望まないが、この表面積の範囲では、5C放電での容量保持によって測定される電池性能は、
図2に示されているように、カーボンブラックの表面積と相関することが信じられる。
図2は、3質量%の種々のカーボンブラック試料を含む正極配合物におけるカーボンブラック表面積の関数としての5Cでの比容量のプロットである。
図2で見ることができるように、比容積は、通常は、130〜700m
2/gの表面積範囲において、表面積とともに増加する。
図2のプロットは、典型的なパーコレーション曲線の形状を有しており、この中で、転移は、約200〜300m
2/gの表面積範囲で起こる。700m
2/g超の表面積値では、性能の向上は無視できることを理解することができる。
【0056】
1つの態様では、カーボンブラックは、130〜500m
2/gの範囲のBET表面積、例えば130〜400m
2/g、130〜300m
2/g、200〜500m
2/g、200〜400m
2/g、または200〜300m
2/gの範囲の表面積を有している。BET表面積は、ASTM−D6556に従って測定することができる。
【0057】
1つの態様では、カーボンブラックは、オイル吸着数(OAN)によって規定される構造を有しており、これは、より高い程度の黒鉛化によるより少ない数の欠陥を示している。OANは、ASTM−D2414に従って定めることができる。1つの態様では、カーボンブラックは、250mL/100g未満のOAN、例えば50〜250mL/100g、100〜250mL/100g、または100〜200mL/100gの範囲のOANを有している。
【0058】
1つの態様では、黒鉛化のより高い程度は、より低い表面エネルギー値によって示されることができ、それは典型的には、カーボンブラック表面上の酸素の量、そして従って、その疎水性の指標である。表面エネルギーは、動的水収着によって測定することができる。1つの態様では、カーボンブラックは、10mJ/m
2以下、例えば、9mJ/m
2以下、7mJ/m
2以下、6mJ/m
2以下、5mJ/m
2以下、3mJ/m
2以下、または1mJ/m
2以下の表面エネルギー(SE)を有している。
【0059】
1つの態様では、カーボンブラックは、ラマン分光法で測定される、少なくとも25Åの結晶子サイズ(L
a)を有しており、ここでL
aは、43.5×(Gバンドの面積/Dバンドの面積)として規定される。結晶子サイズは、黒鉛化の程度の指標を与えることができ、より大きなL
a値は、黒鉛化のより高い程度に相関する。L
aのラマン測定は、Gruberら、"Raman studies of heat-treated carbon blacks"、Carbon、Vol. 32 (7)、p.1377-1382、1994に基づいており、これを参照することによって本明細書の内容とする。炭素のラマンスペクトルは、約1340cm
−1および1580cm
−1に、2つの主要な「共鳴」バンドを含んでおり、それぞれ「D」バンドおよび「G」バンドと表される。通常は、Dバンドは、不規則的(disordered)sp
2炭素に帰属され、そしてGバンドは、黒鉛状炭素もしくは「規則的(ordered)」sp
2炭素に帰属される。経験的な取り組みを用いると、G/Dバンドの比と、X線回折(XRD)によって測定されたL
aとは高度に相関し、そして回帰分析で、下記の経験的な関係が与えられる。
L
a=43.5×(Gバンドの面積/Dバンドの面積)
式中、L
aは、オングストロームで計算される。従って、より高いL
a値は、より規則的な結晶構造に相当する。
【0060】
他の態様では、カーボンブラックは、少なくとも30Å、少なくとも35Å、少なくとも40Å、少なくとも45Å、または少なくとも50Åの結晶子サイズを有している。
【0061】
1つの態様では、より高い%の結晶化度(DおよびGバンドの比として、ラマン測定から得られる)もまた、より高い黒鉛化の程度を示すことができる。1つの態様では、カーボンブラックは、ラマン分光法で測定された、少なくとも35%の%結晶化度(I
D/I
G)、例えば、少なくとも38%、もしくは少なくとも40%の結晶化度を有している。
【0062】
1つの態様では、カーボンブラックは、熱処理されたカーボンブラックである。カーボンブラックの「熱処理」は、ここでは、通常は、当技術分野で一般的に知られている方法、例えばファーネスブラックプロセスによって前もって形成されているカーボンブラックの後処理を表している。この熱処理は、不活性条件下(すなわち、酸素を実質的に欠いている雰囲気中)で起こることができ、そして典型的には、それ以外では、その中でカーボンブラックが形成された容器中で起こる。不活性条件としては、不活性ガス、例えば窒素、アルゴンなどの雰囲気が挙げられるが、それらには限定されない。1つの態様では、ここに記載される不活性条件下でのカーボンブラックの熱処理は、カーボンブラック結晶子中の欠陥、転位および/または不連続の数を低減ならびに/あるいは黒鉛化の程度を増加することができる。
【0063】
1つの態様では、熱処理(例えば、不活性条件下)は、少なくとも1000℃、少なくとも1200℃、少なくとも1400℃、少なくとも1500℃、少なくとも1700℃、または少なくとも2000℃の温度で行われる。他の態様では、熱処理は、1000℃〜2500℃の範囲の温度で行われる。
【0064】
1つの態様では、熱処理(例えば、不活性条件下)は、少なくとも1000℃、少なくとも1200℃、少なくとも1400℃、少なくとも1500℃、少なくとも1700℃、または少なくとも2000℃の温度で行われる。他の態様では、熱処理は、1000℃〜2500℃の範囲の温度で行われる。「ある温度で行われる」熱処理は、ここに開示された1つもしくは2つ以上の温度範囲を表し、そして安定した温度での加熱、または温度を、連続的もしくは段階的のいずれかで、増減させながら加熱することを含むことができる。
【0065】
1つの態様では、熱処理は、少なくとも15分間、例えば少なくとも30分間、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも6時間、少なくとも24時間、または48時間以下のそれらのいずれかの時間、ここに開示した1つもしくは2つ以上の温度範囲で、行われる。他の態様では、熱処理は、15分間〜少なくとも24時間、例えば15分間〜6時間、15分間〜4時間、30分間〜6時間、または30分間〜4時間の範囲の時間に亘って行われる。
【0066】
1つの態様では、電気活性材料(例えば、第1および第2の電気活性材料の合計)は、正極配合物中に、正極配合物の総質量に対して、少なくとも80質量%の量、例えば少なくとも90質量%の量、80質量%〜99質量%の範囲の量、または90質量%〜99質量%の範囲の量で存在する。
【0067】
混合物では、1つの態様では、第2の電気活性材料は、電気活性材料の総質量(例えば、第1および第2の電気活性材料の合計)に対して、10質量%〜50質量%の範囲の量で存在する。
【0068】
1つの態様では、電気活性材料は、リチウム系化合物である。例示的な電気活性材料としては、以下の少なくとも1つから選択されたものが挙げられる。
LiMPO
4、ここでMは、Fe、Mn、Co、およびNiから選択される1種または2種以上の金属を表している;
LiM’O
2、ここでM’は、Ni、Mn、Co、Al、Mg、Ti、V、Cr、Fe、Zr、Ga、およびSiから選択される1種または2種以上の金属を表している;
Li(M’’)
2O
4、ここでM’’は、Ni、Mn、Co、Al、Mg、Ti、V、Cr、Fe、Zr、Ga、およびSiから選択される1種または2種以上の金属を表している(例えば、Li[Mn(M’’)]
2O
4);および、
Li
1+x(Ni
yCo
1−y−zMn
z)
1−xO
2、ここでxは0〜1の範囲、yは0〜1の範囲、そしてzは0〜1の範囲である。
【0069】
1つの態様では、電気活性材料は、LiNiO
2;LiNi
xAl
yO
2(ここで、xは0.8〜0.99の範囲であり、yは0.01〜0.2の範囲であり、そしてx+y=1である);LiCoO
2;LiMn
2O
4;Li
2MnO
3;LiNi
0.5Mn
1.5O
4;LiFe
xMn
yCo
zPO
4(ここで、xは0.01〜1の範囲であり、yは0.01〜1の範囲であり、zは0.01〜0.2の範囲であり、そしてx+y+z=1である);LiNi
1−x−yMn
xCo
yO
2(ここで、xは0.01〜0.99の範囲であり、そしてyは0.01〜0.99の範囲である);およびLi
2MnO
3相もしくはLiMn
2O
3相を含む層−層組成物(layer-layer compositions)の少なくとも1つから選択される。
【0070】
1つの態様では、電気活性材料は、Li
2MnO
3;LiNi
1−x−yMn
xCo
yO
2(ここでxは0.01〜0.99の範囲であり、そしてyは0.01〜0.99の範囲である);LiNi
0.5Mn
1.5O
4;Li
1+x(Ni
yCo
1−y−zMn
z)
1−xO
2(ここでxは0〜1の範囲であり、yは0〜1の範囲であり、そしてzは0〜1の範囲である);ならびにLi
2MnO
3相およびLiMn
2O
3相の少なくとも1つを含む層−層組成物(layer-layer compositions)、の少なくとも1つから選択される。
【0071】
正極は、それらの容量(約160mAh/g)が、負極容量(グラファイトでは320mAh/g)と釣り合わないので、リチウムイオン電池における性能制限要素である。特定のMn含有量の多い配合物の活性材料としての使用は、280mAh/gに近づく容量、および約900Wh/kgの質量エネルギーを有する正極をもたらすことが見出された。しかしながら、それらの材料は、低い充電および放電レートの能力を有しており、2Cの中間的な放電レートであってさえも、それらから、それらのエネルギーの利点を失わせしめる結果となる。それらの材料のその他の欠点は、それらが放電の間に4.8〜2.0Vの幅広い電圧振幅を示すことである。
【0072】
従って、1つの態様では、約4.5Vの高く、そして平坦な放電電圧および高電力能力を有するニッケルをドープされたMnスピネル;ならびに放電電圧および電力能力を増大させることを可能にさせるMnを豊富に含む層−層組成物(a layer-layer Mn rich composition)を含む活性材料の混合物が提供される。1つの態様では、ニッケルをドープされたMnスピネルは、式LiNi
0.5Mn
1.5O
4を有しており、そしてMnを豊富に含む層−層組成物(layer-layer Mn rich composition)は、Li
2MnO
3もしくはLiMn
2O
3相、ならびにそれらの混合物を含んでいる。
【0073】
1つの態様では、電気活性材料は、1μm〜5μmの範囲のD
50を有する第1の電気活性材料および1μm〜6μmの範囲のD
50を有する第2の電気活性材料を有し、ここで、
第1の電気活性材料は、式aLi
2MnO
3:(1−a)LiMO
2を有し、ここでaは0.1〜0.9の範囲であり、そしてMはMn、NiおよびCoから選択される1種もしくは2種以上の金属であり、そして、
第2の電気活性材料は、式LiNi
0.5Mn
1.5O
4を有している。
【0074】
1つの態様では、正極配合物は、バインダーを更に含む。例示的なバインダー材料としては、フッ素化ポリマー、例えばポリ(ビニルジフルオロエチレン)(PVDF)、ポリ(ビニルジフルオロエチレン)−コ−ヘキサフルオロプロピレン(PVDF−HFP)、ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)、ポリイミド、水溶性バインダー、例えばポリ(エチレン)オキシド、ポリビニルアルコール(PVA)、セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン(PVP)ならびにそれらの共重合体および混合物が挙げられるが、それらには限定されない。他の可能性のあるバインダーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)およびフッ素ゴムならびにそれらの共重合体および混合物が挙げられる。
【0075】
1つの態様では、活性材料は、反応性スプレー法(RST)によって調製される。1つの態様では、反応性スプレー法は、米国特許第6,770,226号明細書に記載されたように行われ、それを参照することによって本明細書の内容とする。RSTを行うための他の方法が、ここに開示されている。反応性スプレー法は、液相および固体相処理の両方を結び付ける。
図3に、反応性スプレー法および、初期の液滴からの固体粒子の形成が概略的に描写されている。この処理は、液体配合物から開始し、液体配合物は溶解された、もしくは懸濁された試薬を含んでおり、それが最終的な生成物の前駆体として、または支持体として作用する。この液体(「液体供給」)は、ガス(「ガス供給」)と共に、次いで噴霧ユニットへと供給され、そこでその液体はエーロゾルに変換される。このエーロゾルを含むガス流は、次いでガス相処理ユニット中で加熱されて、液滴の、最終的な粉末への物理的および化学的変換をもたらす。
図3には、温度/時間の増加の過程(初期の液滴−乾燥された塩粒子へ−無定形粒子へ−ナノ結晶性粒子へ−多結晶性粒子へ−単一結晶粒子へ)を経た、液から固体状態相への変化を示している。最終的な粉末は、ガス状の流出物のみを残して、慣用の粉末収集方法(「収集」)を用いてガス流から分離される(処理される液体流出物はない)。最終的な粉末のミクロ構造(「生成物」)および組成は、滞留時間、温度、液滴成分の反応性およびガスの組成に依存する。これらの粒子の物理的および/または化学的な進展は、反応媒体の急冷によって、いずれの段階においても止めることができ、独特のミクロ構造およびモルフォロジーと組合わせた広範囲な材料および組成を製造するためのこのプロセスの使用を可能にする。
【0076】
他の態様では、
1μm〜6μmの範囲のD
50を有するリチウムイオン系電気活性材料、ならびに、
130〜700m
2/gの範囲のBET表面積および150mL/100g〜300mL/100gの範囲のOANを有するカーボンブラック、
を含む、から本質的になる、または、からなる正極配合物が提供される。
【0077】
他の態様では、
1μm〜6μmの範囲のD
50を有するリチウムイオン系電気活性材料、ならびに、
130〜700m
2/gの範囲のBET表面積および150mL/100g〜300mL/100gの範囲のOANを有するカーボンブラック、ならびに、
バインダー、
を含む、から本質的になる、またはからなる正極配合物が提供される。
【0078】
他の態様では、
1μm≦D
50≦5μmの粒子径分布を有する第1のリチウムイオン系電気活性材料、
5μm
<D
50≦15μmの粒子径分布を有する第2のリチウムイオン系電気活性材料、ならびに、
130〜700m
2/gの範囲のBET表面積を有するカーボンブラック、
を含む、から本質的になる、または、からなる、正極配合物が提供される。
【0079】
他の態様では、
1μm≦D
50≦5μmの粒子径分布を有する第1のリチウムイオン系電気活性材料、
5μm
<D
50≦15μmの粒子径分布を有する第2のリチウムイオン系電気活性材料、
130〜700m
2/gの範囲のBET表面積を有するカーボンブラック、ならびに、
バインダー、
を含む、から本質的になる、または、からなる、正極配合物が提供される。
【0080】
1つの態様では、正極配合物は、ペーストまたはスラリーの形態をとることができ、その中で粒子状電気活性材料およびカーボンブラックは、溶媒の存在下で混合される。他の態様では、正極配合物は、ペースト/スラリーからの溶媒除去からもたらされる固体である。
【0081】
1つの態様では、配合物は、粒子状正極配合物である。1つの態様では、「粒子状」とは、粉末(例えば、自由流動粉末)を表す。1つの態様では、粉末は、水または溶媒を実質的に含まず、例えば10%未満、5%未満、3%未満、または1%未満の水もしくは溶媒である。
【0082】
1つの態様では、カーボンブラックは、電気活性材料、例えばリチウムイオン系材料と均一に散在(均一に混合)されている。また、他の態様では、バインダーは、カーボンブラックおよび電気活性材料と均一に散在されている。
【0083】
他の態様は、
カーボンブラック、リチウムイオン系電気活性材料、およびバインダーを含む粒子を、溶媒の存在の下で混合して、ペーストを生成させる工程;
このペーストを基材上に堆積させる工程;ならびに、
正極を形成させる工程;
を含み、この電気活性材料は、1μm〜6μmの範囲のD
50を有し、そしてカーボンブラックは、130〜700m
2/gのBET表面積および150mL/100g〜300mL/100gの範囲のOANを有している、
正極の製造方法を含んでいる。
【0084】
他の態様では、
カーボンブラック、リチウムイオン系電気活性材料、およびバインダーを含む粒子を、溶媒の存在の下で混合して、ペーストを生成させる工程;
このペーストを基材上に堆積させる工程;ならびに、
正極を形成させる工程;
を含み、このリチウムイオン系電気活性材料は、
1μm≦D
50≦5μmの粒子径分布を有する第1のリチウムイオン系電気活性材料、および、
5μm
<D
50≦15μmの粒子径分布を有する第2のリチウムイオン系電気活性材料、を含んでいる、
正極の製造方法を含んでいる。
【0085】
1つの態様では、1つの態様では、ペーストは、電気活性材料を含む粒子をカーボンブラックおよびバインダーと溶媒の存在下で混合した生成品である。1つの態様では、ペーストは、より低い粘度のペースト(例えば、より少ない固形分充填量を有すること)でもたらされる可能性がある固有の欠陥(例えば、亀裂)の形成を最小化しながら、基材上への堆積を可能とするのに十分な高い固形分充填量を有している。更に、より高い固形分充填量は、必要となる溶媒の量を低減させる。
【0086】
粒子は、溶媒中に、結果として得られるペーストが実質的に均質である限りにおいて、いずれかの順番で混合することができ、それは、振とう、撹拌などによって達成することができる。粒子は、インサイチュで形成されるか、またはここに開示されたドメインサイズを有する既に形成された粒子として加えることができる。ここで用いられる「溶媒」は、1種または2種以上の溶媒を表す。例示的な溶媒としては、例えば、N−メチルピロリドン、アセトン、アルコール、および水が挙げられる。
【0087】
1つの態様では、本方法は、集電装置(例えば、アルミニウムシート)上にペーストを堆積すること、次いで正極を形成すること、を含んでいる。1つの態様では、「正極を形成すること」は、溶媒を除去することを含んでいる。1つの態様では、1つの態様では、溶媒は、ペーストを、周囲温度または低い熱条件下、例えば20℃〜100℃の範囲の温度のいずれかで乾燥することによって除去される。本方法は、堆積された正極/Alシートを所望の寸法に切断すること、随意選択的に次いでカレンダー加工すること、を更に含むことができる。
【0088】
他の態様では、リチウムイオン系電気活性材料およびカーボンブラックを含む粒子を含む正極ペーストが提供され、このペーストは
バインダー;および、
溶媒、
を更に含んでおり、
この電気活性材料は、1μm〜6μmの範囲のD
50を有し、そしてカーボンブラックは130〜700m
2/gの範囲のBET表面積および150mL/100g〜300mL/100gの範囲のOANを有している。
【0089】
他の態様では、第1のリチウムイオン系電気活性材料、第2のリチウムイオン系電気活性材料、およびカーボンブラックを含む粒子を含む正極ペーストが提供され、このペーストは、更に、
バインダー、および、
溶媒、
を含んでおり、
第1のリチウムイオン系電気活性材料は、1μm≦D
50≦5μmの粒子径分布を有し、
第2のリチウムイオン系電気活性材料は、5μm
<D
50≦15μmの粒子径分布を有し、そして、
カーボンブラックは、130〜700m
2/gの範囲のBET表面積を有している。
【0090】
他の態様では、リチウムイオン系電気活性材料、カーボンブラック、バインダー、および溶媒から本質的になる、または、からなる正極ペーストが提供される。
【0091】
1つの態様では、正極配合物を含む正極が提供される。正極は、バインダーおよび集電装置を更に含むことができる。1つの態様では、活性材料は、Li金属参照電極に対して4.95Vの充電カットオフ電圧を有する高電圧正極である。1つの態様では、正極は、少なくとも10μmの厚さ、例えば少なくとも30μmの厚さを有している。他の態様では、正極を含む電気化学セル、例えばリチウムイオン電池が提供される。
【0092】
1つの態様では、開示された正極材料を含む電気化学セルは、電力性能、エネルギー性能、炭素腐食酸化に対する不活性、炭素および/または電解質酸化に対する不活性から選択される1つもしくは2つ以上の向上、ならびに向上したパーコレーション挙動を与える。
【実施例】
【0093】
例1
この例には、米国特許第6,770,226号明細書(参照することによって本明細書の内容とする)中に記載されている、反応性スプレー法によるLiNi
0.33Co
0.33Mn
0.33O
2の調製が記載されている。前駆体は、Ni(NO
3)・26H
2O、Co(NO
3)26H
2O(供給者)および硝酸マンガンである。溶液は、1.65MHzの浸漬された超音波スプレー発生器またはエアアシストノズルのいずれかを用いることによって霧化されて、液滴を生成させ、その液滴はキャリアガスによって高温度反応器中に運ばれたが、その反応器は内部または外部加熱することができる。反応器の温度は、反応器の投入エネルギーおよびデザインを制御することによって、600℃から1500℃超に変化させることができる。反応区域中の滞留時間は、<100msから約10秒まで変えられた。ニッケル、コバルト、マンガン、およびリチウム成分の全体の溶液の固体充填量は、5質量%であった。生成されたままの活性材料の粉末は、あるいは空気雰囲気下で900℃の温度で4時間に亘って後処理した。
【0094】
合成された粉末の結晶構造は、40kV/40mAで、10〜90度の2シータ範囲で、Niフィルターを用いたCu−Kα線を用いて、X線回折法(XRD、Bruker D-8 Advance instrument)を用いて行った。解析は、TOPASソフトウエアおよびRietveldの構造精密化法を用いて行った。
【0095】
粉末のモルフォロジーは、通常2.0kVの加速電圧で操作され、元素マッピングおよびEDSのためのPGT EDSシステムおよびPGT Spiritソフトウエアと連結された、走査型電子顕微鏡(日立S-5200電界放出型SEM)を用いて検討した。
【0096】
それぞれの試料のBET表面積および多孔性は、Micromeritics Tristar 3000装置中で、多点法窒素吸着/脱着サイクルによって測定した。それぞれの試料は、最初に真空で、200℃で、2時間脱気した。測定にはUHP N
2ガスを用いた。
【0097】
粒子径分布の解析は、BlueWave粒子径解析機で行った。試料(0.20g)を50ミリリットルのDI水および3滴のDarvan C界面活性剤と混合した。結果として得た溶液を、装填する前に、Branson 450で3分間超音波処理した。
【0098】
特に断りのない限り、電極スラリーは、2つのジルコニア媒体を備えたSPEXミルを用いて、30分間に亘りNMP中に分散させた。電極は、Arを充填したグローブボックス(MBraun)中でのコインセルの組み立ての前に、80℃で約15分間、次いで少なくとも4時間、100℃で真空下に乾燥した。ここで報告した全ての電気化学測定においては、約1.5mAh/cm
2の容量装荷に相当する9mg/cm
2の一定の質量充填量を用いた。電極を、約40ミクロンの厚さにカレンダー加工し、15〜20%の多孔質をもたらした。15mmのカレンダー加工された正極ディスクを、リチウム負極に対して2032コインセル(Hosen)で試験した。Whatman GF/Dガラス繊維セパレータおよびEC-DMC-EMC-VC 1%、LiPF
6 1M電解質(Novolyte、<20ppmの水分)を用いた。
【0099】
これらの試料の初期の充電/放電容量は、0.2Cの一定の電流密度で、2.8〜4.3V電位範囲のサイクルを通して測定した。電流に対する容量曲線を、C/2の一定の電流充電、次いでC/50の電流カットオフでの4.3Vの一定の電圧、そしてC/5、C/2、1C、2C、5Cおよび幾つかの場合には10C、15C、20Cの放電レートで、で作成した。60℃の高温での正極粉末のサイクル性能を、0.5Cの一定の電流密度で測定した。電気化学インピーダンス測定を、コインセルで、PowerSineソフトウエアを用いて、EG&G 2273で、1MHz〜10mHzの範囲、および10mVの信号振幅で行った。
【0100】
図4には、超音波エーロゾル発生およびインラインの電気的熱源を用いて、異なる反応器温度で、RSTによって調製された、結果として得られた粉末についての、XRDパターンが示されている。より低い反応器温度(450℃)作られた粉末については、硝酸塩前駆体の分解は不完全であり、そしてTGA分析(示されてはいない)によって測定されるように、有意な量の前駆体が、分解されずに残った。また、粉末は、部分的にだけ真の(right)結晶相に変換され、そして結晶層化された相の代わりに、岩塩相により類似していた。より高い反応器温度で作られた試料については、XRD解析およびRietveldの精密化法は、個々の酸化物からのピークを含まない純粋なLi[Ni
1/3Co
1/3Mn
1/3]O
2相を示した。Rietveld分析を基にすると、RSTによって作られた材料は、格子パラメータ、a=2.863Å、c=14.234Åを備えたR−3m空間群に属し、そして平均結晶粒子(grain)サイズ(XRDから)は、700℃の反応器温度で作られた材料の46nmから、1000℃で作られた粉末の265nmまでの範囲である。
【0101】
RSTによって調製された粉末は、20〜50nmのより小さな粒子状凝集体の集塊化によって形成された多孔質の球状粒子からなるモルフォロジーを有していた。RST処理の間の粒子径は、溶液濃度、液滴サイズおよび他のプロセスパラメータによって制御することができる。それぞれの液滴は、粒子となり、そしてプロセス条件および最終的な粒子径分布の間の単純な相関関係が確立された。スプレーされた状態のままの材料(RST工程の後)の物理的特徴の結果が、表1に与えられている。
【0102】
【表1】
【0103】
全体の反応器温度範囲に亘って、表面積は20〜70m
2/gの範囲であった。表1から、結果として得られる球状粒子は、一点法のN
2BET吸着測定結果からの総細孔体積によって、大量の内部多孔性を示したことを理解することができる。全ての試料は、4〜5μm未満の粒子径を有しており、これは当技術分野で知られている共沈プロセスの典型的な下限である。概して、より高い温度は、増大した粒子の緻密化(
図1に概略的に示されているように)および、表1に示されているように、粒子径と内部多孔性の両方の低下をもたらした。
【0104】
粉末の結晶化度は、反応器温度と滞留時間を増加することによって向上させることができたが、反応性スプレー法を用いた1工程での連続的な製造の可能性を潜在的に開いている。RSTプロセスの包括的な特性の1つは、原子のレベルでの緊密で均質な前駆体の混合(リチウムを含む)である。元素成分は、互いに極く近接しており、従って、遅い固体状態の拡散を克服するための長い熱処理工程は必要としない。RSTを用いることによって作られる材料のこの特徴は、熱的な後処理が必要とされる場合において、熱処理工程を短縮することをもたらすことが期待される。更には、随意選択的な後処理工程は、原子のレベルでの元素の混合および短い拡散経路のために、典型的にはずっと低い温度で行うことができる。初晶の大きさへの焼成時間および焼成温度の効果が、
図5Aに示されている。
【0105】
初晶のサイズとC/5レートでの可逆的なリチウム容量との間の相関関係が、
図5Bに示されている。電気活性粉末のC/5電気化学容量は、結晶サイズの増加と共に、約200nmの結晶サイズでは約165mAh/gの値に増加することが見出されたが、しかしながらより大きな結晶サイズでは、更なる向上は観察されなかった。初晶の最適なサイズは、180〜220nmの範囲であり、この場合には可逆的容量は約165mAh/gで最大化された。
【0106】
図6には、スプレー熱分解工程(上部、700℃の反応器温度)の後、および追加の焼成(下部、空気中で750℃で4時間)の後の材料の異なる倍率でのSEM画像が示されている。
図6から理解することができるように、粒子サイズとモルフォロジーは、随意選択的な後処理工程の後に大きな変化なしに維持され、このことは特有の粉末モルフォロジーの可能性を開く。より高い倍率のSEM画像から、粒子内のより小さな凝集体が、後処理工程の後により結晶性であったことが明らかである。焼成が900℃で行われた場合には、所望の結晶サイズが、僅か2〜4時間の後に得られたが、RSTの、後処理時間を有意に短縮させるという利益を確立させている。
【0107】
図7には、a)700℃でスプレーされた状態のままの、そしてb)空気中で900℃で2時間焼成された後の、LiCo
0.33Mn
0.33Ni
0.33O
2のXRDパターンを示している。理論的なXRDピークが、X軸に隣接して示されている。
図7には、RST工程の後に、正しい(correct)結晶相が得られたことが示されている。従って、後処理は、初晶の成長を通した、結晶化度の向上のみをもたらした。後処理の後に、いずれの種類の結晶性不純物も検知されなかった。Co:Mn:Ni比は、±0.01の係数差(coefficients differences)を有して実質的に1であった。
【0108】
700℃の反応器温度でスプレーされた材料の、空気中での900℃での後処理の前後の基本的な物理的性質が、表2に示されている。比較のために、共沈法によって作られた粉末の性質もまた与えられている。
【0109】
【表2】
【0110】
スプレーされた材料の表面積(72.7m
2/g)は、空気中での900℃での4時間の焼成の後に、2.05m
2/gに減少した。粒子径は幾分か増加するが、しかしながら全体のモルフォロジーは、スプレーされた状態のままの粉末の最初のモルフォロジーと非常に酷似したままに維持された。
図5Aに先に示されたように、高温での焼成は、初晶サイズの増加をもたらしたが、このことはまた球状の凝集体内の内部多孔性を低下させた。900℃での4時間の更なる熱処理の後に、多孔性は、RSTプロセス工程の後の初期の粉末の多孔性の僅かに3%にまで低下した。しかしながら、結果として得られる多孔性は、共沈法によって作られたLiCo
0.33Mn
0.33Ni
0.33O
2粉末の全多孔性(すなわち、細孔体積)よりもなお約5倍大きかった。
【0111】
いずれかの理論によって拘束されることは望まないが、内部多孔性と組み合わされた(電気化学的活性の)表面積の増加は、促進された反応速度および物質移動(すなわち、イオン性伝導率)をもたらすはずであることを期待することができる。内部細孔は、電解質の「ハイウエイ」として作用することができ、固体相を通してLi移動が起こった場合よりも、全体の電気化学活性な表面積に、有意に速い速度で、到達できるようにする。
【0112】
例2
この例は、大粒子の活性材料に対する小粒子の活性材料を含む電極の間の比較を提供する。小粒子の材料の表面積は、大粒子の材料の表面はほぼ10倍大きいので、そのような電極は、電極層のより小さな充填密度、および特により高い温度におけるより不十分なサイクル寿命をもたらすことが信じられた。
【0113】
この例で用いられた小粒子の活性材料は、例1に記載された方法によって作られた式LiNi
0.33Co
0.33Mn
0.33O
2の粉末であったが、RST処理は、700℃で行われ、そして空気中で900℃で4時間後処理された。大粒子の材料は、商業的に入手可能であり、慣用の共沈法によって作られた。表3に、大粒子径および小粒子径の材料についてのサイズおよび表面積の性質が列挙されている。
【0114】
【表3】
【0115】
両方のモルフォロジーを、それらのベースライン性能を定めるために独立して試験した。電気化学性能は、2032コインセル構成で評価した。作用電極/正極は、下記の表4に与えられた比の、活性材料(AM)、バインダー(PVDF)、およびカーボンブラック(CB、LITX200H(商標)、Cabot Corporationから入手可能)からなっていた。電気活性材料の150mAh/gの容量を仮定すると、正極の装荷(loading)は1.5mAh/cm
2であった。対電極はLi金属であった。電極配合物の更なる詳細および電気化学試験の構成が、表4に与えられている。
【0116】
【表4】
【0117】
図8Aは、小粒径および大粒径の活性材料を含む電極についてのCレートに対する放電容量のプロットである。
図8Bは、放電容量に対する電圧のプロットである。
図8Aおよび8Bから理解できるように、小粒子の活性材料を含む正極は、より良好な出力性能を与える。
【0118】
図9には、小粒子(実線)および大粒子(点線)の活性材料の、最初のC/5充電−放電電圧プロファイルおよび、それらの導関数(挿入図)が示されている。小粒子の活性材料のC/5電圧プロファイルは、大粒子の材料のものと同様ではあるが、しかしながら、より大きな容量を有し、典型的には、大粒子材料では159〜160mAh/gであるのに対して、165〜168mAh/gの範囲である。電圧プロファイルの導関数は同様であるが、Li
+/Liに対して4V未満に1対の可逆なピークを備えており、同じレドックス対(Ni
2+/Ni
4+)が、両方の場合において活性であることを示している。
【0119】
図10には、(a)小粒子および大粒子の材料についての、異なるレートでの放電曲線、および(b)放電レート(Cレート)の関数としての比容量が示されている。活性相の装荷(loading)は、1.5mAh/cm
2であった。これらの曲線の形状は、活性材料中へのLiインターカレーションの初期の段階における同様の電圧プロファイルを含めて、両方の材料について同様である。このことは、電子流に対する同様の抵抗を示しており、そして導電性添加剤の最適な充填は、活性材料のモルフォロジーに依存することを更に裏付けている。2つの間の分極曲線の差異は、支配的には電極層中の物質移動の制限の影響で、放電のより後の段階で拡大されている。C−レートに対する容量のプロット(b)からは、小粒子の材料の利点が示されている。小粒子の材料を用いた電極においては、10Cの放電レートで137mAh/gの容量が維持されているが、大粒子の材料は、同じ電極装荷(loading)では、97mAh/gを供給するだけである。従って、小粒子の材料では、40%超の向上が得られる。
【0120】
図11Aおよび11Bには、大粒子および小粒子の材料についての、出力に対するエネルギーの質量Ragoneプロット(11A)および体積Ragoneプロット(11B)を示している。
図11Aの質量で正規化されたRagoneプロットを基にすれば、小粒子の材料は、全体の出力範囲において優れたエネルギー密度を示している。また、体積で正規化されたエネルギーおよび出力密度は、電極密度に依存し、それが更には、活性材料粉末の充填特性の作用に依存する。小粒子は、電極密度の低下をもたらすので、同様のカレンダー圧力の下で、大粒子の材料で得られた3.52g/ccと比較して、小粒子の材料では2.95g/ccの電極密度が得られた。
【0121】
図11Bの体積で正規化されたRagoneプロットから、低出力において、低電極密度の不利益を理解することができる。しかしながら、より高い出力では、エネルギー密度の相違は低減され、そしてある値を超えると完全に接近した。その点を超えると、小粒子および大粒子の材料は、同様の体積エネルギー密度を有している。この傾向は、高出力用途における活性相の小粒子の利点を示している。非常に高い放電出力が要求される場合には、小粒子のレート容量における向上は、より低い充填密度を相殺するだけではなく、活性粒子の大粒子と同程度の体積エネルギーおよび出力密度をもたらし、一方で質量エネルギー密度におけるほぼ50%の向上を更に提供する。また、より低い電極密度は、高い放電電流でのより良好な容量保持の原因である、小粒子の材料におけるより高い電極多孔性の間接的な証拠である。
【0122】
図12には、10mVの信号振幅を備えた1MHz〜1mHzの周波数範囲で測定された大粒径または小粒径粒子のいずれかを有して形成され、そして放電されたコインセルの電気化学インピーダンススペクトルが示されている(コインセル面積=1.77cm
2)。放電された状態では、3つの主な特徴を観察することができる:(1)高周波数の実軸との切片(これは電解質抵抗(両方のコインセルについて同じ定数)プラス電極の電子抵抗を示しており)、ならびに電荷移動半円(charge transfer semi-circle)(これは電極を通した物質移動速度を示している):(2)より低い周波数では、Warburg拡散、次いで二重層容量が観察され、これは放電された状態における電極のブロッキング性を反映している−−小粒子の活性材料の場合には、より小さい粒子は、より大きな数の粒子間接続を有するので、より高い電子抵抗が観測される;ならびに(3)より小さな電荷移動抵抗が観察され、RSTによって作られたより小さな多孔性粒子内部の、リチウムイオンのより速いイオン拡散に起因している。後者の特徴は、小粒子の活性材料で観察されるより高い放電レート容量をもたらす。
【0123】
図13Aおよび13Bは、質量(13A、質量)および体積(13B、体積)の両方で正規化された1−SOC(充電の状態)と等しい放電の状態(SOD)に対する最大パルス出力の、HPPC試験から得られたプロットである。HPPC試験は、“Battery Test Manual for Plug-In Hybrid Electric Vehicles”、改訂0(2008年3月)、U.S. Department of Energy, Vehicle Technologies Programによる出版、に記載されたように行なわれた。放電パルスは、10秒間に5Cであり、一方で充電パルスは10秒間の継続時間に亘って3.75Cであった。
図13Aおよび13Bから、小粒子の活性材料が、放電の状態(SOD)の全体の範囲においてセルからの供給出力で優れていることを理解することができる。電池の充電と放電の間のエネルギーの貯蔵および放出プロセスは、電気活性材料の固体粒子内部のLiの拡散を伴っている。固体状態の拡散は、典型的には電解質相中のLi
+イオンの拡散よりも遥かに遅いことを考慮すれば、このことは出力が要求される用途にあっては、小粒子の活性材料がより好適である理由となる。
【0124】
例3
この例には、ニッケルがドープされたMnスピネル、層−層のMnの多い組成物、およびそれらの混合物を含む活性材料が記載されている。全ての粉末は、ここに記載されているように、RSTによって、Co、Ni、MnおよびLiの硝酸塩前駆体の水溶液から調製された。
【0125】
スプレーされた状態のスピネルは、約1.5μmのD
50の直径および45m
2/gのBET表面積の球状粒子からなっている。空気中で、750℃/2時間、または800℃/6時間次いで600℃/8時間、または900℃/時間、次いで600℃/4時間の焼成を行った。2段階の焼成では、第2の段階は、酸素が不足したスピネルの形成を防止するために、より高い温度で、酸素の損失を回復させることが意図されている。
図14の左側には、種々の温度でアニールされたスピネルのXRDスペクトルが示されている。
図14の右側には、対応するSEM画像が示されている。
図14には、純粋なスピネル相が、750℃でスプレーされた状態で直接得られたことが示されているが、しかしながら結晶性は、焼成によって有意に向上されている。900℃/8時間、次いで600℃/4時間でアニールされた試料のRietveld精密化によって、187nmの初晶サイズおよびa=8.171オングストロームの格子パラメータが示されている。BET表面積は、900℃の焼成温度で、0.71m
2/gまで低下している。種々の焼成温度での粒子のSEM観察では、球状のモルフォロジーは800℃まで保持されるが、しかしながらスピネル正極材料に典型的なより大きなファセット結晶が、900℃で形成されることが明らかである。スプレーされた状態のままの粒子は、いくらかのしぼんだ球体を示しており、反応器中での液滴の急速な乾燥を示している。焼成の後に、粉末は、大きな固い凝集体を形成した。
【0126】
式Li
1.2Ni
0.2Mn
0.6O
2、Li
1.2Ni
0.3Mn
0.6O
2.2およびLi
1.2Ni
0.133Co
0.133Mn
0.533O
2のMnの多い層−層試料は、それらの金属成分の硝酸塩溶液からの超音波スプレー熱分解によって調製された。スプレーされた状態のままの粉末は、84〜62m
2/gの範囲のBET表面積および約1.6μmのD
50粒子直径を有していた。焼成の後に、それらのBET表面積は、7m
2/g未満へと低下し、そして初晶サイズは、900℃での16時間の焼成で75nmに到達した。Li
1.2Ni
0.2Mn
0.6O
2の場合には、D
50粒子径は、4μmに増加しただけであった。Coがドープされた配合物の場合には、900℃での16時間の焼成の後に、2.9m
2/gのより小さなBET表面積および142nmのより大きな初晶サイズが観察された。
【0127】
図15の左側に、スプレーされた状態のままの粉末および900℃/4時間の焼成後のXRDスペクトルが示されており、純粋な相が、スプレーの後に直接に得られているが、しかしながら結晶性を向上させるには焼成工程が必要であること示している。
図15の中央の部分には、900℃/4時間の焼成の前後の一連のSEM画像があり、焼成の後にも保持されている球状のモルフォロジーを示している。スピネルとは異なり、焼成は、粒子の有意な凝集はもたらさず、そしてスプレーされた状態のままの粒子径分布は、
図15の右側から分かるように、焼成の後にも保持されている。そのように、Mnの多い層−層粉末は、いずれかの付加的な粉末処理工程なしに、電極中に直接に組み込むことができた。
【0128】
電極は、82質量%の活性材料、5質量%のSuper P(商標)導電性カーボンブラック(TIMCAL Graphite and Carbon)、5質量%のSFG6グラファイトおよび8質量%の、NMP中のPVDF、Solef 1031を、2つのジルコニア媒体を備えたSpexミルを用いて、30分間混合することによって調製した。活性材料は、0.5Li
2MnO
3・0.5Li[NiMnCo]
1/3(層−層、D
50=2.1μm)、LiNi
0.5Mn
1.5O
4(スピネル、D
50=1.5μm)または2種の正極粉末の質量比で1:1の混合物のいずれかであった。スラリーは、ドクターブレードで、Al箔(17μmの厚さ)上にコーティングされ、そして80℃で乾燥された。最終的な活性剤の量は、7.9mg/cm
2であった。それらはカレンダー加工され、そしてLi箔対電極およびEC:DMC:EMC1:1:1、VC1%、LiPF6 1Mの電解質を用いて2032コインセルに組み立てられた。セルは、2.0〜4.8Vの同じ電圧範囲で、種々のC−レートの放電電流で、容量を試験した。
【0129】
試料の初期の充電/放電容量を、スピネルでは2.8〜4.8Vの電位範囲で、そして層−層組成物では2.0〜4.8Vの電位範囲で測定した。層−層試料については、充電レートは、4.8VまでC/10であり、そして放電レートは、0.1C、0.2C、0.4C、0.8C、1.6Cおよび3.2Cであり、1Cの放電名目容量を250mA/gに設定した。25℃の室温での正極粉末のサイクル性能を、0.5Cの一定の電流密度で測定した。典型的には、データの再現性を確実にするために、試料当たりに4つの同じコインセルを測定し、そして4つの中の最良のものを報告している。
【0130】
図16Aおよび16Bには、層−層材料は、スピネルよりも高い容量を有しているが、しかしながらより低いC−レート容量を有することが示されている。両方の1:1の混合物は、より高い初期の放電電圧および、C−レートに伴ってより低い容量損失を示している(
図16C)。出力に対してエネルギーをプロットすると、この混合物の利点が捉えられる:遅い放電レート(0.1C)では、単独型の層−層での952Wh/kgに対して、この混合物は801Wh/kgの比エネルギーを有している。このことは、単独型の層−層の273mAh/gに対して、217mAh/gのより低い比容量に起因している。しかしながら、3.2Cのより速い放電レートでは、単独型の層−層正極の264Wh/kgに対して、この混合物は502Wh/kgの比エネルギーを有している。このレートでは、容量は141mAh/gであり、これはLiCoO
2と同様であり、一方で、単独型の層−層正極では、容量は95mAh/gまで低下している(
図16D)。
【0131】
例4
例1〜3に説明したように、小粒子の活性材料を含む正極は多くの改善点を生み出すことができる一方で、特定の用途では、小粒子の材料の単独での使用は、利益を与えない可能性がある。完全なカレンダー加工の後の電気化学性能および電極厚さを測定し、そして電極密度を計算するのに用いた。
図17Aは、例2の小粒子および大粒子の活性材料についての複合電極密度を示す棒グラフである。
図17Bは、小粒子および大粒子の活性材料を含む電極の体積エネルギーおよび出力密度のプロットである。より小さな粒子は、より密でなく充填され、このことが、更にはより大きな粒子から作られた電極に比較して、より小さな密度を有する複合電極をもたらす。体積容量が、質量で正規化されたエネルギーと電極密度を掛け算することによって計算された場合には、より大きな活性材料粒子は、
図17Bに示されるように、より優れた体積エネルギー密度を生じさせた。
【0132】
これらの電極を、室温でサイクル試験した。
図18には、サイクル数に対して容量をプロットして、サイクル性能の結果が示されている。大粒子の電極では、初期の30サイクルの間は容量の減衰のいずれかの兆候も示されなかったが、小粒子の活性材料を含む電極では、より顕著な減少が示されており、そして30サイクルの後には、それらはそれらの初期の容量の僅かに60%を維持していた。小粒子の活性材料の容量低下の問題は、高い方のカットオフ電圧、すなわちその中で活性材料が反復されるSOC範囲、を制御することによってある程度は軽減することができる。従って、小粒子の活性材料は、典型的には部分的な充電の状態の用途において、例えば、電池が、充電の状態の狭いウインドウで、高い放電レートおよび再生可能な出力回復を可能にするために100%未満で、サイクル使用される、HEV用途において、用いられる。
【0133】
従って、この例は、例1および2に記載された、小粒子および大粒子の活性材料の混合物を含む正極配合物の調製および試験を記載している。
【0134】
図19は、完全なカレンダー処理の後の、小粒子の活性材料の質量%の関数としての電極密度のプロットである。小粒子の活性材料の充填量(小粒子および大粒子の活性材料の全質量に対する質量%)は、0質量%〜100質量%の範囲で変え、ここで0質量%は、大粒子だけの配合物を表し、そして100質量%は小粒子だけの配合物を表している。小粒子径の活性材料の質量%が増加すると、全体の電極密度が増加することを理解することができる。いずれかの理論によって拘束されることは望まないが、この密度の増加は、大粒子の充填によって生じる空隙中への小粒子の充填のためであることが信じられる。小粒子は、大粒子の充填密度を最小限に分配させ(distribute)、一方でそれらの粒子間の空隙空間に活性の塊を加える。しかしながら、より大きな粒子によって生じた空隙の体積は、球状粒子のランダムな充填によって制限されており、そして限定される。より大きな体積分率では、小粒子は、適合されることができず、そして大粒子の充填密度を妨害する可能性すらあり、最大値を達成した後には、電極密度の低下をもたらす。表3に列挙されたサイズを有するLiNi
0.33Co
0.33Mn
0.33O
2粒子について、
図19に見られるように、40質量%の小粒子の活性材料および60質量%の大粒子の活性材料を混合することで、大粒子だけの配合物に比較して、より大きな電極密度が得られる。更には、結果として得られる複合電極は、大粒子だけの配合物での0.3m
2/gに比較して、1.62m
2/gの電気化学活性表面積を有している。この増加した表面積は、出力性能に有益であることが期待される。
【0135】
図20Aおよび20Bには、純粋な小粒子および大粒子正極配合物ならびにそれらの混合物についての、質量で正規化された(20A)および体積で正規化された(20B)Ragoneプロット、そして出力性能、すなわち質量エネルギーおよび出力密度、への効果が示されている。出力性能値は、活性材料の利用を示しており、それが更には活性粒子のサイズの関数である。全ての混合物は、大粒子または小粒子の材料のいずれかのエネルギー/出力性能の間の性能を示しており、そしてそれらの混合比がそのいずれに近いかに依存している。大粒子/小粒子混合物の60/40の混合物は、両方の品種のそれぞれよりも向上した質量エネルギーおよび出力密度を示したが、これは予測できない、そして驚くべき結果であった。体積エネルギーおよび出力密度を得るために、質量で正規化されたエネルギーおよび出力密度が電極密度と掛け算された場合には、混合することによる取り組みの利点を理解することができる。
【0136】
全ての混合物が、それぞれの純粋な品種に対して、体積で正規化されたエネルギーおよび出力の両方で、改善を示している。
図21Aおよび21Bには、充電の状態(SOC)の関数としての、パルスHPPC試験から得られた質量で正規化された(21A)および体積で正規化された(21B)最大放電出力のプロットが示されている。パルス(HPPC)放電の形態の間に最大放電出力レートが測定された場合には、連続的な放電で観察された予測できない挙動が、確かめられ、そして拡大さえされた。この場合には、それらの個々のいずれかの性能を凌ぐ、混合された配合物での相乗効果が明らかに認められる。この利点は、エネルギーおよび出力性能の電極体積での正規化の後には、更により拡大される。
【0137】
サイクル寿命性能への混合の影響が評価され、このデータが
図22にプロットされており、これは、サイクル数の関数としてのコインセル容量(初期の%)を示している。全ての混合物が、サイクル寿命性能が、小粒子の配合物のサイクル寿命性能よりも有意に良好であり、そして大粒子の配合物のサイクル寿命性能に匹敵することを示した。
【0138】
要約すれば、混合物の使用は、向上した体積エネルギーおよび出力密度をもたらし、特定の混合比では、体積エネルギーおよび出力密度に加えて、質量エネルギーおよび出力を究極的に向上させる相乗効果をもたらす。全ての混合物は、より安定な大粒子のモルフォロジーに匹敵するサイクル寿命性能をもたらし、従って、完全な深度の放電を用いる用途を可能にする。
【0139】
用語「a」および「an」および「the」の使用は、特に断りない限り、または文脈から明確に否定されない限り、単数と複数の両方を包含すると理解されなければならない。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」および「含む(containing)」は、特に断りの回限り開放型の用語(すなわち、「含むが、しかしながらそれらには限定されない」を意味する)と理解されなければならない。本明細書における数値範囲の記載は、特に断りのない限り、その範囲内に入るそれぞれの個々の値を独立して表すための略記方法としての役割をすることが単に意図されており、そしてそれぞれの個々の値が、それが独立して本明細書中に記載されているのと同様に本明細書中に組み込まれている。本明細書中に記載された全ての方法は、特に断りない限り、または文脈から明確に否定されない限り、いずれかの好適な順序で行うことができる。本明細書中に与えられるいずれかの、そして全ての例、または例示的な用語(例えば、「例えば」)は、単に、本発明をよりよく説明することを意図したものであり、そして特に断りのない限り、本発明の範囲に限定を加えるものではない。明細書中のいずれの用語も、いずれかの特許請求されていない要素が、本発明の実施に必須であると示していると理解されてはならない。
本発明は、以下の態様を含んでいる。
(1)1μm≦D50≦5μmの粒子径分布を有する第1のリチウムイオン系電気活性材料;および、
5μm<D50≦15μmの粒子径分布を有する第2のリチウムイオン系電気活性材料、
を含んでなる正極配合物であって、
この混合物のW/kgおよびW/Lでの最大パルス出力が、第1または第2の電気活性材料それぞれの最大パルス出力よりも大きい、
正極配合物。
(2)
1μm≦D50≦5μmの粒子径分布を有する第1のリチウムイオン系電気活性材料;および、
5μm<D50≦15μmの粒子径分布を有する第2のリチウムイオン系電気活性材料、
を含んでなる正極配合物であって、
この混合物のWh/kgおよびWh/Lでのエネルギー密度が、第1または第2の電気活性材料それぞれのエネルギー密度よりも大きい、
正極配合物。
(3)1μm≦D50≦5μmの粒子径分布を有する第1のリチウムイオン系電気活性材料;
5μm<D50≦15μmの粒子径分布を有する第2のリチウムイオン系電気活性材料;および、
130〜700m2/gの範囲のBET表面積を有するカーボンブラック、
を含んでなる正極配合物。
(4)前記第1の電気活性材料が、1μm≦D50≦5μmの粒子径分布を有し、かつ前記第2の電気活性材料が、6μm≦D50≦15μmの粒子径分布を有する、(1)〜(3)のいずれか1項記載の正極配合物。
(5)前記第1の電気活性材料が、1μm≦D50≦5μmの粒子径分布を有し、かつ前記第2の電気活性材料が、8μm≦D50≦15μmの粒子径分布を有する、(1)〜(3)のいずれか1項記載の正極配合物。
(6)前記第1の電気活性材料が、1μm≦D50≦5μmの粒子径分布を有し、かつ前記第2の電気活性材料が、10μm≦D50≦15μmの粒子径分布を有する、(1)〜(3)のいずれか1項記載の正極配合物。
(7)前記第1の電気活性材料が、15nm未満の細孔サイズを有する、(1)〜(6)のいずれか1項記載の正極配合物。
(8)前記第1の電気活性材料が、7nm〜15nmの範囲の細孔サイズを有する、(1)〜(6)のいずれか1項記載の正極配合物。
(9)前記第1の電気活性材料が、少なくとも0.002cm3/gの一点法吸着全細孔体積を有する、(1)〜(8)のいずれか1項記載の正極配合物。
(10)前記第2の電気活性材料粒子の球半径が、前記第1の電気活性材料粒子の球半径の0.4倍以下である、(1)〜(9)のいずれか1項記載の正極配合物。
(11)130〜700m2/gの範囲のBET表面積を有するカーボンブラックを更に含む、(1)、(2)および(4)〜(10)のいずれか1項記載の正極配合物。
(12)前記BET表面積が、130〜300m2/gの範囲である、(3)または(11)記載の正極配合物。
(13)前記カーボンブラックが、100mL/100g〜300mL/100gの範囲のOANを有する、(1)〜(12)のいずれか1項記載の正極配合物。
(14)前記カーボンブラックが、150mL/100g〜250mL/100gの範囲のOANを有する、(1)〜(12)のいずれか1項記載の正極配合物。
(15)前記カーボンブラックが、前記配合物中に、前記配合物の全質量に対して0.1質量%〜10質量%の範囲の量で存在する、(1)〜(12)のいずれか1項記載の正極配合物。
(16)前記カーボンブラックが、前記配合物中に、前記配合物の全質量に対して0.1質量%〜10質量%の範囲の量で存在する、(1)〜(14)のいずれか1項記載の正極配合物。
(17)前記カーボンブラックが、ラマン分光法によって測定して、少なくとも25%の結晶性(ID/IG)を有する、(1)〜(16)のいずれか1項記載の正極配合物。
(18)前記カーボンブラックが、ラマン分光法によって測定して、少なくとも30%の結晶性(ID/IG)を有する、(1)〜(16)のいずれか1項記載の正極配合物。
(19)前記カーボンブラックが、ラマン分光法によって測定して、少なくとも40%の結晶性(ID/IG)を有する、(1)〜(16)のいずれか1項記載の正極配合物。
(20)前記カーボンブラックが、ラマン分光法によって測定して、少なくとも30Åの結晶子サイズ(La)を有する、(1)〜(19)のいずれか1項記載の正極配合物。
(21)前記カーボンブラックが、ラマン分光法によって測定して、少なくとも35Åの結晶子サイズ(La)を有する、(1)〜(19)のいずれか1項記載の正極配合物。
(22)前記カーボンブラックが、ラマン分光法によって測定して、少なくとも40Åの結晶子サイズ(La)を有する、(1)〜(19)のいずれか1項記載の正極配合物。
(23)前記カーボンブラックが、10mJ/m2以下の表面エネルギーを有する、(1)〜(22)のいずれか1項記載の正極配合物。
(24)前記カーボンブラックが、5mJ/m2以下の表面エネルギーを有する、(1)〜(22)のいずれか1項記載の正極配合物。
(25)前記カーボンブラックが、1mJ/m2以下の表面エネルギーを有する、(1)〜(22)のいずれか1項記載の正極配合物。
(26)前記第1および第2の電気活性材料が、前記正極配合物中に、前記正極配合物の全質量に対して、合計で少なくとも80質量%存在する、(1)〜(25)のいずれか1項記載の正極配合物。
(27)前記カーボンブラックが、熱処理されたカーボンブラックである、(1)〜(26)のいずれか1項記載の正極配合物。
(28)前記カーボンブラックが、少なくとも1000℃の温度で熱処理されている、(27)記載の正極配合物。
(29)前記カーボンブラックが、1000℃〜2500℃の範囲の温度で熱処理されている、(27)記載の正極配合物。
(30)前記カーボンブラックが、1200℃〜2100℃の範囲の温度で熱処理されている、(27)記載の正極配合物。
(31)(1)〜(30)のいずれか1項記載の正極配合物であって、前記電気活性材料が、
LiMPO4、ここでMは、Fe、Mn、Co、およびNiから選択される1種または2種以上の金属を表している、
LiM’O2、ここでM’は、Ni、Mn、Co、Al、Mg、Ti、V、Cr、Fe、Zr、Ga、およびSiから選択される1種または2種以上の金属を表している、
Li(M’’)2O4、ここでM’’は、Ni、Mn、Co、Al、Mg、Ti、V、Cr、Fe、Zr、Ga、およびSiから選択される1種または2種以上の金属を表している、ならびに、
Li1+x(NiyCo1−y−zMnz)1−xO2、ここでxは0〜1の範囲であり、yは0〜1の範囲であり、そしてzは0〜1の範囲である、
から選択される、正極配合物。
(32)前記電気活性材料が、LiNiO2;LiNixAlyO2、ここでxは0.8〜0.99の範囲であり、yは0.01〜0.2の範囲であり、そしてx+y=1である;LiCoO2;LiMn2O4;Li2MnO3;LiNi0.5Mn1.5O4;LiFexMnyCozPO4、ここで、xは0.01〜1の範囲であり、yは0.01〜1の範囲であり、zは0.01〜0.2の範囲であり、そしてx+y+z=1である;LiNi1−x−yMnxCoyO2、ここでxは0.01〜0.99の範囲であり、そしてyは0.01〜0.99の範囲である;ならびにLi2MnO3相もしくはLiMn2O3相を含む層−層組成物の少なくとも1つから選択される、
(1)〜(30)のいずれか1項記載の正極配合物。
(33)前記電気活性材料が、Li2MnO3;LiNi1−x−yMnxCoyO2、ここでxは0.01〜0.99の範囲であり、そしてyは0.01〜0.99の範囲である;LiNi0.5Mn1.5O4;Li1+x(NiyCo1−y−zMnz)1−xO2、ここでxは0〜1の範囲であり、yは0〜1の範囲であり、そしてzは0〜1の範囲である;ならびにLi2MnO3相およびLiMn2O3相の少なくとも1つを含む層−層組成物の少なくとも1つから選択される、
(1)〜(30)のいずれか1項記載の正極配合物。
(34)前記第1の電気活性材料が、式aLi2MnO3:(1−a)LiMO2を有し、ここでaは0.1〜0.9の範囲であり、そしてMはMn、NiおよびCoから選択される1種もしくは2種以上の金属であり、かつ、
前記第2の電気活性材料が、式LiNi0.5Mn1.5O4を有する、
(1)〜(30)のいずれか1項記載の正極配合物。
(35)前記第2の電気活性材料が、前記電気活性材料の全質量に対して、10質量%〜50質量%の範囲の量で存在する、(1)〜(34)のいずれか1項記載の正極配合物。
(36)前記電気活性材料が、スプレー法によって 調製される、(1)〜(35)のいずれか1項記載の正極配合物。
(37)前記カーボンブラックが、前記リチウムイオン系材料で均一に散在されている、(1)〜(36)のいずれか1項記載の正極配合物。
(38)バインダーを更に含む、(1)〜(37)のいずれか1項記載の正極配合物。
(39)(1)〜(38)のいずれか1項記載の正極配合物を含む、粒子状材料。
(40)(1)〜(38)のいずれか1項記載の正極配合物を含む、正極。
(41)前記正極が、少なくとも10μmの厚さを有する、(40)記載の正極。
(42)(40)記載の正極を含む、電気化学セル。
(43)他の態様では、第1のリチウムイオン系電気活性材料、第2のリチウムイオン系電気活性材料およびカーボンブラックを含む粒子を含む正極ペーストが提供され、該ペーストは、更に、
バインダー、および、
溶媒、
を含み、ここで、
該第1のリチウムイオン系電気活性材料は、1μm≦D50≦5μmの粒子径分布を有し、
該第2のリチウムイオン系電気活性材料は、5μm<D50≦15μmの粒子径分布を有し、かつ、
該カーボンブラックは、130〜700m2/gの範囲のBET表面積を有している。
(44)正極の製造方法であって、
カーボンブラック、リチウムイオン系電気活性材料、およびバインダーを含む粒子を溶媒の存在下で混合してペーストを生成させる工程、
該ペーストを基材上に堆積させる工程、ならびに、
該正極を形成する工程、
を含んでなり、該リチウムイオン系電気活性材料が、
1μm≦D50≦5μmの粒子径分布を有する第1のリチウムイオン系電気活性材料、および、
5μm<D50≦15μmの粒子径分布を有する第2のリチウムイオン系電気活性材料を含む、
方法。
(45)前記の形成が、前記溶媒を除去することを含む、(44)記載の方法。
(46)1μm〜6μmの範囲のD50を有するリチウムイオン系電気活性材料、および、
130〜700m2/gの範囲のBET表面積および150mL/100g〜300mL/100gの範囲のOANを有するカーボンブラック、
を含んでなる正極配合物。
(47)前記D50が、1μm〜5μmの範囲である、(46)記載の正極配合物。
(48)前記D50が、1μm〜3μmの範囲である、(46)記載の正極配合物。
(49)前記カーボンブラックが、130〜300m2/gの範囲のBET表面積を有している、(46)〜(48)のいずれか1項記載の正極配合物。
(50)前記カーボンブラックが、250mL/100g未満のOANを有する、(46)〜(49)のいずれか1項記載の正極配合物。
(51)前記カーボンブラックが、150mL/100g〜250mL/100gの範囲のOANを有する、(46)〜(49)のいずれか1項記載の正極配合物。
(52)前記電気活性材料が、15nm未満の細孔サイズを有する、(46)〜(51)のいずれか1項記載の正極配合物。
(53)前記電気活性材料が、7nm〜15nmの範囲の細孔サイズを有する、(46)〜(51)のいずれか1項記載の正極配合物。
(54)前記電気活性材料が、少なくとも0.002cm3/gの一点法吸着全細孔体積を有する、(46)〜(53)のいずれか1項記載の正極配合物。
(55)前記電気活性材料が、1μm〜6μmの範囲のD50を有する第1の電気活性材料および、1μm〜6μmの範囲のD50を有する第2の電気活性材料を含む、(46)〜(54)のいずれか1項記載の正極配合物。
(56)前記電気活性材料が、1μm〜6μmの範囲のD50を有する第1の電気活性材料および、1μm〜5μmの範囲のD50を有する第2の電気活性材料を含む、(46)〜(54)のいずれか1項記載の正極配合物。
(57)電気活性材料に対するカーボンブラックの表面積比が、1〜5の範囲である、(46)〜(56)のいずれか1項記載の正極配合物。
(58)前記カーボンブラックが、前記配合物中に、前記配合物の全質量に対して0.1質量%〜10質量%の範囲の量で存在する、(46)〜(57)のいずれか1項記載の正極配合物。
(59)前記カーボンブラックが、前記配合物中に、前記配合物の全質量に対して1質量%〜10質量%の範囲の量で存在する、(46)〜(57)のいずれか1項記載の正極配合物。
(60)前記カーボンブラックが、ラマン分光法によって測定して、少なくとも35%の結晶性(ID/IG)を有する、(46)〜(59)のいずれか1項記載の正極配合物。
(61)前記カーボンブラックが、ラマン分光法によって測定して、少なくとも40%の結晶性(ID/IG)を有する、(46)〜(59)のいずれか1項記載の正極配合物。
(62)前記カーボンブラックが、ラマン分光法によって測定して、少なくとも25Åの結晶子サイズ(La)を有する、(46)〜(61)のいずれか1項記載の正極配合物。
(63)前記カーボンブラックが、ラマン分光法によって測定して、少なくとも30Åの結晶子サイズ(La)を有する、(46)〜(61)のいずれか1項記載の正極配合物。
(64)前記カーボンブラックが、ラマン分光法によって測定して、少なくとも40Åの結晶子サイズ(La)を有する、(46)〜(61)のいずれか1項記載の正極配合物。
(65)前記カーボンブラックが、10mJ/m2以下の表面エネルギーを有する、(46)〜(64)のいずれか1項記載の正極配合物。
(66)前記カーボンブラックが、5mJ/m2以下の表面エネルギーを有する、(46)〜(64)のいずれか1項記載の正極配合物。
(67)前記カーボンブラックが、1mJ/m2以下の表面エネルギーを有する、(46)〜(64)のいずれか1項記載の正極配合物。
(68)前記電気活性材料が、前記正極配合物中に、前記正極配合物の全質量に対して、少なくとも80質量%の量で存在する、(46)〜(67)のいずれか1項記載の正極配合物。
(69)前記電気活性材料が、前記正極配合物中に、前記正極配合物の全質量に対して、少なくとも90質量%の量で存在する、(46)〜(67)のいずれか1項記載の正極配合物。
(70)前記カーボンブラックが、熱処理されたカーボンブラックである、(46)〜(67)のいずれか1項記載の正極配合物。
(71)前記カーボンブラックが、少なくとも1000℃の温度で熱処理されている、(70)記載の正極配合物。
(72)前記カーボンブラックが、1000℃〜2500℃の範囲の温度で熱処理されている、(70)記載の正極配合物。
(73)前記カーボンブラックが、1200℃〜2100℃の範囲の温度で熱処理されている、(70)記載の正極配合物。
(74)(46)〜(73)のいずれか1項記載の正極配合物であって、前記電気活性材料が、
LiMPO4、ここでMは、Fe、Mn、Co、およびNiから選択される1種または2種以上の金属を表している、
LiM’O2、ここでM’は、Ni、Mn、Co、Al、Mg、Ti、V、Cr、Fe、Zr、Ga、およびSiから選択される1種または2種以上の金属を表している、
Li(M’’)2O4、ここでM’’は、Ni、Mn、Co、Al、Mg、Ti、V、Cr、Fe、Zr、Ga、およびSiから選択される1種または2種以上の金属を表している、ならびに、
Li1+x(NiyCo1−y−zMnz)1−xO2、ここでxは0〜1の範囲であり、yは0〜1の範囲であり、そしてzは0〜1の範囲である、
から選択される、正極配合物。
(75)前記電気活性材料が、LiNiO2;LiNixAlyO2、ここでxは0.8〜0.99の範囲であり、yは0.01〜0.2の範囲であり、そしてx+y=1である;LiCoO2;LiMn2O4;Li2MnO3;LiNi0.5Mn1.5O4;LiFexMnyCozPO4、ここで、xは0.01〜1の範囲であり、yは0.01〜1の範囲であり、zは0.01〜0.2の範囲であり、そしてx+y+z=1である;LiNi1−x−yMnxCoyO2、ここでxは0.01〜0.99の範囲であり、そしてyは0.01〜0.99の範囲である;ならびにLi2MnO3相もしくはLiMn2O3相を含む層−層組成物の少なくとも1つから選択される、
(46)〜(73)のいずれか1項記載の正極配合物。
(76)前記電気活性材料が、Li2MnO3;LiNi1−x−yMnxCoyO2、ここでxは0.01〜0.99の範囲であり、そしてyは0.01〜0.99の範囲である;LiNi0.5Mn1.5O4;Li1+x(NiyCo1−y−zMnz)1−xO2、ここでxは0〜1の範囲であり、yは0〜1の範囲であり、そしてzは0〜1の範囲である;ならびにLi2MnO3相およびLiMn2O3相の少なくとも1つを含む層−層組成物の少なくとも1つから選択される、
(46)〜(73)のいずれか1項記載の正極配合物。
(77)前記電気活性材料が、1μm〜6μmの範囲のD50を有する第1の電気活性材料および、1μm〜6μmの範囲のD50を有する第2の電気活性材料を含む、(46)〜(76)のいずれか1項記載の正極配合物。
(78)前記電気活性材料が、1μm〜5μmの範囲のD50を有する第1の電気活性材料および、1μm〜6μmの範囲のD50を有する第2の電気活性材料を含む、(46)〜(76)のいずれか1項記載の正極配合物。
(79)前記第1の電気活性材料が、式aLi2MnO3:(1−a)LiMO2を有し、ここでaは0.1〜0.9の範囲であり、そしてMはMn、NiおよびCoから選択される1種もしくは2種以上の金属であり、かつ、
前記第2の電気活性材料が、式LiNi0.5Mn1.5O4を有する、
(78)記載の正極配合物。
(80)前記電気活性材料が、スプレー法によって 調製される、(46)〜(79)のいずれか1項記載の正極配合物。
(81)前記カーボンブラックが、前記リチウムイオン系材料と均一に散在されている、(46)〜(80)のいずれか1項記載の正極配合物。
(82)前記正極配合物がバインダーを更に含む、(46)〜(81)のいずれか1項記載の正極配合物。
(83)(46)〜(82)のいずれか1項記載の正極配合物を含む、正極。
(84)前記正極が、少なくとも10μmの厚さを有する、(83)記載の正極。
(85)(84)記載の正極を含む、電気化学セル。
(86)1μm〜6μmの範囲のD50を有するリチウムイオン系電気活性材料、
130〜700m2/gの範囲のBET表面積および150mL/100g〜300mL/100gの範囲のOANを有するカーボンブラック、
バインダー、ならびに、
溶媒、
を含む粒子を含んでなる正極ペースト。
(87)正極の製造方法であって、
カーボンブラック、リチウムイオン系電気活性材料、およびバインダーを含む粒子を溶媒の存在下で混合してペーストを生成させる工程、
該ペーストを基材上に堆積させる工程、ならびに、
該正極を形成する工程、
を含んでなり、該電気活性材料が、1μm〜6μmの範囲のD50を有しており、かつ該カーボンブラックが、130〜700m2/gの範囲のBET表面積および150mL/100g〜300mL/100gの範囲のOANを有する、
方法。
(88)前記の形成が、前記溶媒を除去することを含む、(87)記載の方法。