特許第6397018号(P6397018)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6397018視野角最適化機能を持つ医療ビューイングシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6397018
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】視野角最適化機能を持つ医療ビューイングシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20180913BHJP
   A61B 8/12 20060101ALN20180913BHJP
【FI】
   A61B6/00 320Z
   A61B6/00 370
   !A61B8/12
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-530863(P2016-530863)
(86)(22)【出願日】2014年11月5日
(65)【公表番号】特表2017-500079(P2017-500079A)
(43)【公表日】2017年1月5日
(86)【国際出願番号】EP2014073769
(87)【国際公開番号】WO2015074869
(87)【国際公開日】20150528
【審査請求日】2017年11月1日
(31)【優先権主張番号】13194184.1
(32)【優先日】2013年11月25日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(72)【発明者】
【氏名】ブラッケン ジョン アラン
(72)【発明者】
【氏名】ナイホフ ニールス
(72)【発明者】
【氏名】グラス マイケル
【審査官】 九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−329729(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00−6/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療ビューイングシステムにおいて、
Cアームにより可変回転角度から関心器官のライブX線画像を提供するX線画像取得装置と、
前記関心器官のライブ超音波画像を提供する超音波プローブを有する心エコー撮像装置と、
前記X線画像取得装置及び前記心エコー撮像装置に接続された処理ユニットと、
を有し、
前記医療ビューイングシステムが、2つの異なる回転角度からの前記関心器官及び前記超音波プローブのX線蛍光透視画像の第1のセットを取得し、
前記処理ユニットが、
前記X線蛍光透視画像の第1のセットに基づいて前記超音波プローブを位置特定することによりライブ心エコー画像及びライブX線画像を位置合わせし、
前記位置合わせの後のX線フレームの前記ライブX線画像において特徴的フィーチャのセットの位置を特定し、
前記特徴的フィーチャのセットのそれぞれの特定された位置にマッチするようにマーカのセットのそれぞれを確立し、
前記X線画像取得装置の最適な回転角度を決定し、前記最適な回転角度において前記マーカのセットのマーカがX線視野において所定の位置関係を有する、
医療ビューイングシステム。
【請求項2】
前記特徴的フィーチャのセットが、尖底を有する、
請求項1に記載の医療ビューイングシステム。
【請求項3】
前記特徴的フィーチャのセットの位置を特定することが、オペレータにより与えられたマーカの予備セットの周りで心エコー画像又はX線画像における前記特徴的フィーチャのセットの位置を認識することを有し、
前記処理ユニットが、前記認識された位置によって前記マーカの予備セットを調節する、
請求項1乃至2のいずれか一項に記載の医療ビューイングシステム。
【請求項4】
前記処理ユニットが、前記位置合わせの後のX線フレームの前記ライブX線画像の中心領域において前記特徴的フィーチャを認識する、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の医療ビューイングシステム。
【請求項5】
前記処理ユニットが、前記マーカのセットを形成するために少なくとも1つの関心器官の三次元モデルから前記特徴的フィーチャのセットの位置を抽出する、
請求項1に記載の医療ビューイングシステム。
【請求項6】
前記処理ユニットが、保存された又はライブの大動脈造影画像が前記処理ユニットにより受信されると当該画像において自然器官を自動的にフィッティングする、
請求項5に記載の医療ビューイングシステム。
【請求項7】
医療画像を提供する医療ビューイングシステムの作動方法において、前記方法が、
X線画像取得装置が、2つの異なる回転角度からの関心器官及び心エコー撮像装置の超音波プローブのX線蛍光透視画像の第1のセットを取得するステップと、
処理ユニットが、前記X線蛍光透視画像の第1のセットに基づいて前記超音波プローブを位置特定することによりライブ心エコー画像及びライブX線画像を位置合わせするステップと、
前記処理ユニットが、前記位置合わせの後のX線フレームの前記ライブX線画像において特徴的フィーチャのセットの位置を特定するステップと、
前記処理ユニットが、前記特徴的フィーチャのセットのそれぞれの特定された位置にマッチするようにマーカのセットのそれぞれを確立するステップと、
前記処理ユニットが、前記X線画像取得装置の最適な回転角度を決定するステップであって、前記最適な回転角度において前記マーカのセットのマーカがX線視野において所定の位置関係を有する、ステップと、
を有する方法。
【請求項8】
前記位置合わせの後のX線フレームの前記ライブX線画像において特徴的フィーチャのセットの位置を特定するステップが、尖底を位置特定するステップを有する、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記処理ユニットが、オペレータにより与えられたマーカの予備セットの周りで前記ライブ心エコー画像又は前記位置合わせの後のX線フレームの前記ライブX線画像における前記特徴的フィーチャのセットの位置を認識するステップと、
前記処理ユニットが、前記認識された位置によって前記マーカの予備セットを調節するステップと、
を有する、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記特徴的フィーチャのセットの位置を認識するステップが、前記位置合わせの後のX線フレームの前記ライブX線画像の中心領域において行われる、
請求項7乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記処理ユニットが、前記マーカのセットを形成するために少なくとも1つの関心器官の三次元モデルから前記特徴的フィーチャのセットの位置を抽出するステップ、
を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記処理ユニットが、保存された又はライブの大動脈造影画像が前記処理ユニットにより受信されると当該画像において自然器官を自動的にフィッティングするステップ、
を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
処理ユニットにより実行される場合に、請求項7乃至12のいずれか一項に記載の方法のステップを実行する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の医療ビューイングシステムを制御するコンピュータプログラム。
【請求項14】
請求項13に記載のコンピュータプログラムを記憶したコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療ビューイングシステム、医療画像を提供する方法、コンピュータプログラム及びコンピュータ可読媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
二次元X線撮像は、心臓インターベンションに対する有力な撮像モダリティである。軟組織情報を要求する処置、例えば、器質的心疾患のガイダンスを提供するために、心エコー情報も採用される。例えば、経カテーテル大動脈弁置換処置(TAVR)は、ライブX線(蛍光透視法)及びライブ超音波(心エコー)撮像の両方に依存するインターベンション心臓病学における挑戦的な処置である。安全に大動脈弁の人工弁置換術を展開するために、X線画像取得装置、例えばCアーム撮像装置の位置に対する最適な視野角(viewing angle)が、要求される。人工弁を展開するのに最適な視野角は、自然(又は元の)大動脈弁の3つ全ての弁尖の下部(底、nadirs)が前記X線画像において可視であるX線視野角である。尖底は、互いに整列し、前記最適な視野角において前記X線画像において等間隔で離れているべきである。
【0003】
心臓専門医がライブX線画像及びライブ心エコー(経食道心エコー検査、TEE)画像を一緒に融合することによりTAVR処置中に最適なCアーム視野角を迅速に見つけるのを助ける可能性がある画像ガイダンスシステムが、存在する。前記弁尖のTEE画像上に手動で配置されたマーカは、前記X線画像上の近似の弁尖位置に自動的に表示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記X線画像内の尖底に対する前記マーカのアライメント(alignment)は、このアプローチが使用される場合、改良に対する対象でありうる。前記底は、上述のTEE画像において配置するのが難しい。
【0005】
結果的に、本発明の目的は、弁展開に対する最適な視野角を決めるのに有用であるように、前記X線画像内の尖底に対するマーカのアライメントが改良されると同時に、ライブ蛍光透視画像及び心エコー画像を融合することができる撮像システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的は、独立請求項1のフィーチャを持つシステムにより満たされる。有利な実施例及び更なる改良は、下位請求項及び以下の記載から集められうる。
【0007】
可変視野角からライブX線画像を提供するX線画像取得装置と、ライブ超音波画像を提供する超音波プローブを持つ心エコー撮像装置と、前記X線画像取得装置及び前記心エコー撮像装置に接続可能な処理ユニットとを有する医療ビューイングシステムが、提案される。前記医療ビューイングシステムは、2つの異なる視野角において前記超音波プローブのX線蛍光透視画像の第1のセットを取得するように構成される。前記処理ユニットは、
‐前記X線蛍光透視画像の第1のセットに基づいてライブ超音波及びライブX線画像を位置合わせし、
‐後のフレームにおいて特徴的フィーチャのセットの位置を特定し、
‐前記特徴的フィーチャの認識された位置にマッチするようにマーカのセットを確立し、
‐前記X線画像取得装置の最適な視野角を決定し、前記最適な視野角において前記マーカがX線視野において所定の関係を持つ、
ように構成される。
【0008】
前記X線画像取得装置は、好ましくは、X線源及び前記X線源の真向かいに取り付けられたX線検出器を持つCアーム構造、並びに前記Cアーム構造の回転移動に対するモータ付駆動装置を含むCアームアセンブリを有してもよい。前記Cアーム構造は、回転軸の周りで及び可変視野角で複数のX線投影を取得するアイソセンタの周りで回転スキャンを実行するように備えられる。前記X線画像取得装置に接続された前記処理ユニットは、前記Cアーム構造の運動及びX線画像の取得を制御することができる。
【0009】
前記心エコー撮像装置は、先端に超音波トランスデューサを含むプローブを持つ撮像装置として理解されるべきであり、前記プローブは、ライブ超音波画像及びドップラ評価を提供するために患者の体内に注入されうる又は体上に配置されうる。前記プローブは、患者の食道内に挿入されるべき経食道心エコー(TEE)プローブ、又は前記患者の胸部上にはいちされるべき経胸壁心エコー(TTE)プローブのような、様々な異なるプローブから選択されうる。特に、TEEは、心臓専門医に心臓組織のリアルタイム三次元撮像を提供する。
【0010】
前記処理ユニットは、プロセッサと、メモリと、ユーザ入力及び前記X線画像取得装置及び前記心エコー撮像装置からのライブ画像データを受信し、データ及び制御信号を出力するインタフェースとを持つ計算ユニットとして理解されるべきである。更に、前記処理ユニットは、上述の機能を実行する複数のアルゴリズムを実行するように構成される。
【0011】
X線画像データ及び心エコーデータの合理的な融合を可能にする基本的な準備機能は、2つの異なる視野角における前記心エコープローブのX線蛍光透視画像の第1のセットを提供することにある。これは、更なる追跡装置を採用する必要なしに画像ベースの心エコープローブ位置特定を行うことを可能にする。
【0012】
前記プローブ位置特定を行った後に、三次元心エコー画像及び二次元蛍光透視画像の正確なリアルタイム位置合わせが、可能である。これは、周知の位置合わせ技術のいずれによって行われてもよく、保護範囲を限定すべきでない。
【0013】
前記処理ユニットは、更に、大動脈弁の尖底のような、検査されるべき体/器官の特徴的フィーチャのセットの位置を特定することができる。これは、自動又は半自動でありうる異なる処理によって達成されうる。例えば、前記処理ユニットは、インターベンション医により入力されうる又は前記処理ユニットにより推定されうるマーカ位置の予備セットを受信するように構成される。このマーカ位置の予備セットは、特に、三次元心エコー画像において作成されてもよい。しかしながら、これらは、前記ライブ二次元X線画像において設定されてもよい。これに対する代替例として、三次元画像データも、前記マーカのセットを確立するように前記画像モダリティの1つから使用されてもよい。
【0014】
一度前記特徴的フィーチャのセットの位置の座標が特定されると、これらの位置の座標は、マーカ位置に自動的に割り当てられる。この割り当ては、直接的であり、例えば無冠尖及び左冠尖が、それぞれ、大動脈造影(aortogram)画像の探索エリアの左下領域及び右上領域に配置される。同時に、前記ライブ心エコー画像がライブ大動脈造影画像と同時に前記処理ユニットに送信され、位置合わせされるので、前記マーカ位置は、同様に前記心エコー画像上で自動的に調節される。
【0015】
一度前記マーカが、前記特定された位置に配置されると、前記処理ユニットは、容易に前記X線画像取得装置の視野角を調節することができる。これは、前記マーカ(のセット)が所定の関係を有する場合に、前記X線画像取得装置が最適な視野角まで迅速に回転するように制御されることを意味する。特に、TAVR処置に対して、これらは、X線視野において単一の線上にあり、互いから等間隔である。他の処置に対して、他の関係が可能でありうる。
【0016】
したがって、前記医療ビューイングシステムは、前記マーカが尖底に配置されるので、最適な視野角に対するX線ビューイング装置の正確な位置決めを提供する。この技術は、特に前記最適な視野角を決定するのにこの医療ビューイングシステムを使用する場合にTAVR処置に対する臨床ワークフローを明確に単純化及び改良する。
【0017】
前記処置が開始する前に前記最適な視野角が何であるかの事前指示なしで、複数の大動脈造影が、この角度を決定するのに要求される。例えば、ライブ心エコー画像内の前記弁尖上にマーカを配置することにより、大動脈造影内の弁尖底に前記マーカをアラインする自動補正が、これらのいくつかの代わりに前記最適な視野角を見つけるのに単一の大動脈造影のみを要求する。
【0018】
したがって、本発明による撮像システムは、理想的な角度が見つけられるまでの患者に対する放射線量及び造影剤使用の両方を減少させる大きな可能性を持つ。
【0019】
この医療ビューイングシステムにより達成可能な前記方法は、他の心臓弁、例えば、僧房弁の置換に対して適用されることもあり得る。
【0020】
前記医療ビューイングシステムが、前記決定された最適な視野角まで前記X線画像取得装置を移動するように構成されることは、好適である。
【0021】
有利な実施例において、前記特徴的フィーチャのセットの位置を特定することは、オペレータにより与えられたマーカの予備セットの周りの心エコー画像又はX線画像、すなわち大動脈造影における前記特徴的フィーチャのセットの位置を認識することを有し、前記処理ユニットは、前記認識された位置によって前記マーカの予備セットを調節するように更に構成される。
【0022】
このマーカの予備セットのマーカ位置の精度を改良するために、典型的には、固定の視野角におけるX線大動脈造影が、取得される。これに関連して、大動脈造影は、特に、前記X線画像取得装置により取られた心臓弁の画像のシーケンスを有する。心臓弁及びその周囲の十分な不透明性及びより良好な改良された視覚的検出可能性を提供するために、これらの画像は、造影剤(CA)が血管又は心腔に注入された後に取得される。前記大動脈造影が、注入された造影剤の下で1つの画像のみを有してもよいことは、言うまでもない。また、表現「大動脈造影」の代わりに、表現「弁造影(valvogram)」も、この処理を記述するのに適していてもよい。
【0023】
前記大動脈造影画像は、前記大動脈造影画像シーケンスにおける特に前記弁尖底に対する自動探索を行うことを可能にする。点又はフィーチャ検出探索アルゴリズムは、前記大動脈造影画像シーケンスの後のフレームが前記処理ユニットにより受信及び表示されると当該フレームにおいて尖底を位置特定しようと試みてもよい。尖底は、弁尖湾曲が方向を変える前記弁尖上の場所であるので、これは、前記探索を単純化しうる。
【0024】
したがって、前記医療ビューイングシステムは、特に自然大動脈弁尖の底を位置特定するようにライブ又は保存された大動脈造影画像シーケンスの1以上の画像フレーム上で点又はフィーチャ検出探索を実行することにより正確な補正を提供する。前記マーカは、この場合、前記大動脈造影内の弁尖底まで自動的に移動及びアラインされる。前記ライブX線及びライブ心エコー画像は、同時に前記処理ユニットに転送され、位置合わせされるので、前記マーカ位置は、前記大動脈造影において更新された後に前記心エコー画像において自動的に補正及び更新される。
【0025】
換言すると、本発明による医療ビューイングシステムは、人工弁位置決め及び展開の前の標準的治療の一部として既に得られているX線大動脈造影画像シーケンスに含まれる情報を使用する補正技術を提供する。弁尖底は、前記心エコー画像より前記大動脈造影において容易に検出されることができる。この技術は、前記大動脈造影画像シーケンス内のフィーチャ情報に基づいて弁尖底まで前記マーカを自動的に移動するのにアルゴリズムを使用する。
【0026】
他の典型的な実施例において、前記処理ユニットは、前記X線画像シーケンスの中心領域において前記特徴的フィーチャのセットの位置を認識するように構成される。前記処理ユニットは、前記X線画像シーケンスの中心領域、特に前記X線画像シーケンスの第1のフレーム上の右冠尖のマーカ位置を中心とする領域において尖底を認識するように構成されてもよい。前記マーカを認識する前記アルゴリズムに対して要求される労力は、これにより、明らかに減少されることができる。
【0027】
更に他の実施例において、前記処理ユニットは、前記心エコー画像に基づいて前記マーカのセットの運動を繰り返し追跡するように構成される。例えば、前記マーカのセットが確立された後に、大動脈基部が移動するときに、前記マーカが前記底に留まることを保証することは、明らかに有利である。更に、前記X線画像取得装置の視野角は、繰り返し再調整されてもよい。両方の撮像モダリティが、前記マーカ位置を追跡するのに使用されてもよいが、特に尖底の場所を示すように前記X線画像内に造影剤がもはや存在しない場合にマーカ運動追跡が可能ではないので、これは、前記心エコー画像に基づいて行う方がおそらく単純である。
【0028】
他の有利な実施例において、前記処理ユニットは、前記マーカのセットを形成するために、少なくとも1つの関心器官、例えば大動脈弁の三次元モデルから前記特徴的フィーチャのセットの位置を抽出するように構成される。特に、この実施例は、尖底の場所が前記モデルにおいて既知であり、前記モデル内のこれらの底の場所が前記大動脈造影画像シーケンス内の前記底の位置に容易に適合されうるので、大動脈弁尖の前記心エコー又は大動脈造影画像上に手動でマーカを配置しなくてはならない必要を克服する。前記モデルメッシュは、大動脈弁の前記大動脈造影画像シーケンスに適合及び適応されることだけを必要とし、尖底の場所が前記モデルにおいて既知であるので、この実施例は、前記大動脈造影において尖底を探索する必要性をも取り除く。
【0029】
他の実施例において、前記処理ユニットは、インターベンションに対する準備プロセスとしてこのような三次元モデルを生成するように構成されてもよい。特に、このモデルは、大動脈弁の複数の以前に取得されたCT画像データセットから作成されてもよい。前記モデルは、事前にマークされた前記特徴的フィーチャの場所を持ちえ、前記モデルは、この場合、保存された又はライブの大動脈造影画像が前記処理ユニットにより受信されると当該画像において自然器官を自動的にフィットさせるように構成されることができる。
【0030】
更に他の実施例において、前記処理ユニットは、大動脈造影実行を記録、保存及び再生するように構成されてもよい。これは、前記特徴的フィーチャの位置における前記マーカの第1のセットの配置を容易化する追加オプションとして有用でありうる。例えば、前記底を検出する自動探索アルゴリズムは、前記大動脈造影の保存された画像シーケンス全体又は前記大動脈造影の単一の画像フレームのいずれかに対して試みられることができる。単一画像フレームを使用する場合に対して、ユーザは、尖底を位置特定するのにいずれの画像フレームを使用するかを選択するオプションを持つ。保存された大動脈造影画像シーケンス全体又は単一画像フレームのいずれかにおいて尖底上にマーカを手動で配置することができるオプションは、前記底の自動探索が成功しない場合に非常に有用である。一度前記マーカが前記保存された大動脈造影画像において自動又は手動アプローチのいずれかを使用して前記底に移動されると、前記マーカ位置は、ライブTEE画像上に記録及び更新される。
【0031】
本発明は、医療画像を提供する方法にも関し、前記方法は、X線画像取得装置を用いて2つの異なる視野角において心エコー撮像装置の超音波プローブのX線蛍光透視画像の第1のセットを取得するステップと、処理ユニットを用いて前記X線蛍光透視画像の第1のセットに基づいてライブ心エコー画像及びライブX線画像を位置合わせするステップと、後のX線フレームにおいて特徴的フィーチャのセットの位置を特定するステップと、前記特定された位置にマッチするようにマーカのセットを確立するステップと、前記X線画像取得装置の最適な視野角を決定するステップとを有し、前記最適な視野角において、前記マーカのセットのマーカは、X線視野において所定の関係を有し、例えば、TAVR処置に対して単一の線上にあり、互いから等間隔である。前記決定された最適な視野角まで移動するように前記X線画像取得装置を制御することも有利である。これら及び以下の方法ステップは、前記医療ビューイングシステムの上の記載と同様である。
【0032】
有利な実施例において、前記方法は、更に、オペレータにより与えられたマーカの予備セットの周りで心エコー画像又はX線画像における前記特徴的フィーチャの位置を認識するステップと、前記認識された位置によって前記マーカの予備セットを再調節するステップとを有する。
【0033】
更に、これらの位置を認識することは、前記X線画像シーケンスの中心領域、特に前記X線画像シーケンスの第1のフレームにおける右冠尖のマーカ位置を中心とする領域において行われてもよい。
【0034】
代替的な実施例において、前記方法は、前記マーカのセットを形成するために少なくとも1つの関心器官の三次元モデルから前記特徴的フィーチャのセットの位置を抽出するステップを有する。
【0035】
また、前記方法は、前記処理ユニットにより受信されると保存された又はライブの大動脈造影画像において自然器官を自動的にフィッティングするステップをも有してもよい。
【0036】
前記特徴的フィーチャのセットが、弁尖底及び体、特に人体の特定の器官の他の特徴的フィーチャを有してもよいことは、言うまでもない。
【0037】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に記載される実施例を参照して説明され、明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】概略図において医療ビューイングシステムを示す。
図2】弁尖底を持つ大動脈造影を示す。
図3】心エコー画像及びX線画像を用いてマーカの予備セットを調節するプロセスを示す。
図4】X線大動脈造影における自動フィーチャ検出の一例を示す。
図5】概略的なブロック志向図において本発明による方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1の例によると、X線画像取得装置12及び医療画像ビューイング装置14を有する医療ビューイングシステム10が、提供される。X線画像取得装置12は、X線源16及びX線検出器18を有する。X線画像取得装置12は、対象のX線画像を提供するように構成される。更に、例えば、患者の血管内に造影剤を導入する造影剤注入器22から造影剤を受けてもよい患者のような対象を受ける支持台20が、示される。制御ユニット24は、X線画像取得装置12を制御するために存在してもよい。
【0040】
図1に示されるX線画像取得装置12が、Cアーム構造として示されることに注意すべきである。しかしながら、可動又は非可動な他のX線画像取得装置も、本発明の概念から逸脱することなしに使用されてもよい。
【0041】
医療画像ビューイング装置14は、典型的には、とりわけ画像データ提供ユニット28及び処理ユニット30を含む計算ユニット26を有する。医療画像ビューイング装置14は、第1のディスプレイ34及び第2のディスプレイ36を持つディスプレイユニット32をも有し、これらは、X線画像取得装置12においても見つけられうる。
【0042】
画像データ提供ユニット28は、典型的には、対象の関心領域の大動脈造影画像を提供するように構成される。
【0043】
また、処理ユニット30に提供される心エコー画像を取得する、TEEプローブであってもよい超音波プローブを持つ心エコー撮像装置38が、存在する。
【0044】
処理ユニット30は、X線画像取得装置12及び心エコー撮像装置38に接続可能であり、前記X線蛍光透視画像の第1のセットに基づいてライブ心エコー画像及びライブX線画像を位置合わせし、後のX線フレームにおいて尖底を位置特定し、尖底の特定された位置にマッチするようにマーカのセットを確立し、前記X線撮像装置の最適な視野角を決定するように構成され、前記最適な視野角において、マーカの第2のセットのマーカが、X線視野において単一の線上にあり、互いから等間隔である。X線画像取得装置12は、この最適な視野角を移動するように制御可能である。
【0045】
ディスプレイユニット32は、X線画像及び心エコー画像をそのままで及び融合として表示するように構成される。全てのコンポーネントの間のデータ接続は、有線接続及び無線接続により提供されうる。更に、処理ユニット30及び画像データ提供ユニット28は、単一の計算ユニットに含まれるのではなく、別個の装置であってもよい。
【0046】
一例において、他に図示されないが、処理ユニット30は、オペレータにより与えられたマーカの予備セットの周りで心エコー画像又はX線画像における尖底位置を特定し、前記処理ユニットは、前記認識された尖底位置によって前記マーカの予備セットを調節するように更に構成される。前記認識は、X線画像シーケンスの第1のフレーム上の右冠尖のマーカ位置を中心とする特定の領域において行われうる。
【0047】
しかしながら、処理ユニット30は、大動脈弁の三次元モデルを作成又は受信し、このモデルから弁尖底の位置を抽出してもよい。
【0048】
処理ユニット30は、保存された又はライブの大動脈造影画像が処理ユニット30により受信されると当該画像において自然大動脈弁を自動的にフィッティングしてもよい。
【0049】
図2において、CアームX線画像取得装置12の最適な視野角に対する要件が、示される。例えば、経カテーテル大動脈弁置換(TAVR)インターベンションプロセスにおいて、罹患した自然大動脈弁が、カテーテル及びガイドワイヤを用いて送られ、大動脈基部において展開される人工弁で置換される。この処置は、ライブX線(蛍光透視及び大動脈造影)及びライブ経食道心エコー(TEE)画像ガイダンスの両方を使用して実行される。TAVR処置に対するX線Cアームシステムの最適な視野角は、互いにおおよそ整列され、互いから等間隔である大動脈弁尖の3つの底(下部)を示すべきである。3つの弁尖、左冠尖(LCC)42、右冠尖(RCC)44及び無冠尖(NCC)46が、図2のこのX線大動脈造影画像に示される。
【0050】
図3において、3つの尖底42、44及び46をマークするマーカの予備セットを調節するプロセスが、示される。上のセクションa)において、左冠尖(LCC)42、右冠尖(RCC)44及び無冠尖(NCC)46に対する予備マーカは、2Dx面心エコー画像内の大動脈弁尖の直交する2Dビュー上に配置される。下のセクションb)に見られるように、前記弁尖底のマーカの予備セットは、X線大動脈造影画像において弁尖底と良好に整列しない。大動脈内腔48は、患者に注入される造影剤の援助で可視である。前記心エコー画像を生成するのに使用されるプローブ40も、前記大動脈造影において可視である。
【0051】
しかしながら、図4において、尖底42、44及び46を位置特定するためのX線大動脈造影フレームにおける自動フィーチャ検出探索の一例が、示される。前記底は、円内に示される。他のフィーチャの検出は、十分なフィルタ及びより小さな探索窓により除外されうる。
【0052】
図5において、本発明による方法は、ブロック志向の概略図に示される。基本的に、前記方法は、X線画像取得装置12を用いて2つの異なる視野角において心エコー撮像装置38の超音波プローブ40のX線蛍光透視画像の第1のセットを取得するステップ50と、処理ユニット30を用いて前記X線蛍光透視画像の第1のセットに基づいてライブ心エコー画像及びライブX線画像を位置合わせするステップ52と、後のX線フレームにおいて尖底を位置特定するステップ54と、前記尖底の特定された位置にマッチするようにマーカのセットを確立するステップ56と、X線画像取得装置12の最適な視野角を決定するステップ58であって、前記最適な視野角において前記マーカの第2のセットのマーカがX線視野において単一の線上にあり、互いから等間隔である、ステップと、前記決定された最適な視野角まで移動するようにX線画像取得装置12を制御するステップ60とを有する。
【0053】
しかしながら、位置特定するステップ54は、前記マーカのセットを確立するステップが、認識された尖底位置によってマーカの予備セットを調節することにより行われるように、オペレータにより与えられたマーカの予備セットの周りで心エコー画像又はX線画像において尖底位置を認識するステップ62により行われてもよい。このオプションは、「I」でマークされる。更に、尖底位置を認識するステップ62は、前記X線画像シーケンスの中心領域、特に前記X線画像シーケンスの第1のフレーム上の右冠尖のマーカ位置を中心とする領域において行われてもよい。
【0054】
「II」でマークされる代替的な実施例において、位置特定するステップ54は、前記マーカのセットを形成するために大動脈弁の三次元モデルから弁尖底42、44、46の位置を抽出するステップ64により行われてもよい。
【0055】
本発明の他の典型的な実施例において、先行する実施例の1つによる方法の方法ステップを適切なシステム上で実行するように構成されることにより特徴づけられるコンピュータプログラム又はコンピュータプログラム要素が、提供される。
【0056】
前記コンピュータプログラム要素は、したがって、本発明の一次指令の一部であってもよいコンピュータユニットに記憶されてもよい。この計算ユニットは、上記の方法のステップを実行する又は実行を誘導するように構成されてもよい。更に、これは、上記の装置のコンポーネントを動作するように構成されてもよい。前記計算ユニットは、自動的に動作する及び/又はユーザのオーダを実行するように構成されることができる。コンピュータプログラムは、データプロセッサのワーキングメモリにロードされてもよい。前記データプロセッサは、本発明の方法を実行するように備えられてもよい。
【0057】
本発明のこの典型的な実施例は、最初から本発明を使用するコンピュータプログラム及び更新を用いて既存のプログラムを、本発明を使用するプログラムにするコンピュータプログラムの両方をカバーする。
【0058】
更に、前記コンピュータプログラム要素は、上記の方法の典型的な実施例の手順を満たすように全ての必要なステップを提供することができてもよい。
【0059】
本発明の他の典型的な実施例によると、CD−ROMのようなコンピュータ可読媒体が、提示され、前記コンピュータ可読媒体は、先行するセクションにより記載されたコンピュータプログラム要素を記憶している。
【0060】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアと一緒に又は一部として供給される光記憶媒体又は半導体媒体のような適切な媒体に記憶され及び/又は分配されてもよいが、インターネット又は他の有線若しくは無線電気通信システムを介するような他の形式で分配されてもよい。
【0061】
しかしながら、前記コンピュータプログラムは、ワールドワイドウェブのようなネットワーク上に提示されてもよく、このようなネットワークからデータプロセッサのワーキングメモリにダウンロードされることができる。本発明の他の典型的な実施例によると、コンピュータプログラム要素をダウンロード可能にする媒体が、提供され、前記コンピュータプログラム要素は、本発明の以前に記載された実施例の1つによる方法を実行するように構成される。
【0062】
本発明の実施例が、異なる対象を参照して記載されていることに注意すべきである。特に、一部の実施例は、方法型請求項を参照して記載されるのに対し、他の実施例は、装置型請求項を参照して記載される。しかしながら、当業者は、上の及び以下の記載から、他に示されない限り、1つのタイプの対象に属するフィーチャのいかなる組み合わせに加えて、異なる対象に関するフィーチャ間のいかなる組み合わせも、本出願とともに開示されていると見なされると推測する。しかしながら、全てのフィーチャは、組み合わせられることができ、前記フィーチャの単純な合計以上である相乗効果を提供する。
【0063】
本発明は、図面及び先行する記載において詳細に図示及び記載されているが、このような図示及び記載は、例示的又は典型的であり、限定的ではないと見なされるべきである。本発明は、開示された実施例に限定されない。開示された実施例に対する他の変形は、図面、開示及び従属請求項の検討から、請求された発明を実施する当業者により理解及び達成されることができる。
【0064】
請求項において、単語「有する」は、他の要素又はステップを除外せず、不定冠詞"a"又は"an"は、複数を除外しない。単一のプロセッサ又は他のユニットが、請求項に記載された複数のアイテムの機能を満たしてもよい。特定の方策が相互の異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの方策の組み合わせが有利に使用されることができないことを示さない。請求項内のいかなる参照符号も、範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【符号の説明】
【0065】
10:医療ビューイングシステム
12:X線撮像システム
14:医療画像ビューイング装置
16:X線源
18:X線検出器
20:支持台
22:造影剤注入器
24:制御ユニット
26:計算ユニット
28:画像データ提供ユニット
30:処理ユニット
32:ディスプレイユニット
34:第1のディスプレイ
36:第2のディスプレイ
38:心エコー撮像装置
40:超音波プローブ
42:左冠尖(LCC)
44:右冠尖(RCC)
46:無冠尖(NCC)
48:大動脈内腔
50:X線蛍光透視画像の第1のセットを取得するステップ
52:ライブ心エコー及びX線画像を位置合わせするステップ
54:特徴的フィーチャのセットの位置を特定するステップ
56:マーカのセットを確立するステップ
58:最適な視野角を決定するステップ
60:X線撮像装置を制御するステップ
62:特徴的フィーチャの位置を認識するステップ
64:特徴的フィーチャのセットの位置を抽出するステップ
図1
図2
図3
図4
図5