特許第6397060号(P6397060)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6397060ブロック共重合体組成物、成形材料、樹脂組成物、及び成形体
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  • 特許6397060-ブロック共重合体組成物、成形材料、樹脂組成物、及び成形体 図000010
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6397060
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】ブロック共重合体組成物、成形材料、樹脂組成物、及び成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 25/08 20060101AFI20180913BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20180913BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   C08L25/08
   C08L53/02
   C08J5/00CEQ
   C08J5/00CET
【請求項の数】10
【全頁数】45
(21)【出願番号】特願2016-574784(P2016-574784)
(86)(22)【出願日】2016年2月5日
(86)【国際出願番号】JP2016053568
(87)【国際公開番号】WO2016129532
(87)【国際公開日】20160818
【審査請求日】2017年5月26日
(31)【優先権主張番号】特願2015-23199(P2015-23199)
(32)【優先日】2015年2月9日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-23417(P2015-23417)
(32)【優先日】2015年2月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】堀 有加里
(72)【発明者】
【氏名】高橋 聡
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 尚彦
(72)【発明者】
【氏名】石原 收
(72)【発明者】
【氏名】星 進
(72)【発明者】
【氏名】島津 啓
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開平4−39351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 25/08
C08J 5/00
C08L 53/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル芳香族単量体単位が95質量%を超え100質量%以下であり、かつ共役ジエン単量体単位が0質量%以上5質量%未満である重合体(a)と、
ビニル芳香族単量体単位が15質量%以上45質量%以下であり、かつ共役ジエン単量体単位が50質量%以上85質量%以下であるブロック共重合体(b)と、から構成され、
前記重合体(a)と、前記ブロック共重合体(b)とが質量比で、
(a)/(b)=70/30〜30/70である、
ブロック共重合体組成物。
【請求項2】
前記重合体(a)が、
ビニル芳香族単量体単位が95質量%を超え100質量%未満であり、かつ共役ジエン単量体単位が0質量%を超え5質量%未満である、
請求項1に記載のブロック共重合体組成物。
【請求項3】
ビニル芳香族単量体からなる二量体及び三量体の総量が1000ppm未満である、請求項1又は2に記載のブロック共重合体組成物。
【請求項4】
ISO14782に規定されている2mm厚みにおけるヘイズ値が65%以上100%以下である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のブロック共重合体組成物。
【請求項5】
GPC法による分子量分布曲線において、30000以上180000以下の間に少なくとも1つのピーク分子量を有する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のブロック共重合体組成物。
【請求項6】
−70℃〜−40℃の範囲に、少なくとも1つの動的粘弾性のtanδのピークを有する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のブロック共重合体組成物。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のブロック共重合体組成物からなる成形材料。
【請求項8】
ゴム変性ビニル芳香族重合体(c)を80質量%以上99質量%以下と、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のブロック共重合体組成物、又は請求項7に記載の成形材料を1質量%以上20質量%以下と、
を、含有する樹脂組成物。
【請求項9】
ビニル芳香族系重合体(d)を0質量%を超え80質量%以下と、
前記ゴム変性ビニル芳香族重合体(c)を10質量%以上45質量%以下と、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のブロック共重合体組成物、又は請求項7に記載の成形材料を10質量%以上55質量%以下と、
を、含有する樹脂組成物。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の樹脂組成物を含む成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロック共重合体組成物、成形材料、樹脂組成物、及び成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、スチレン−ブタジエン共重合樹脂(以下、「SBC樹脂」ともいう)は、ブタジエンゴム成分を含んでいるため、柔軟性に富み、かつ優れた透明性と加工性を有していることが知られており、かかる特徴を生かして、食品包装材、電子部品包装材、ブリスターパッケージ、玩具等の幅広い用途で使用されている。
【0003】
これらの用途においては、前記SBC樹脂が単独で使用される場合もあるが、多くはスチレン単独重合体樹脂(GPPS)や、高衝撃性ポリスチレン(HIPS)等のポリスチレン樹脂や、スチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合樹脂とブレンドされて使用される。
その理由としては、材料設計面において耐衝撃性と剛性とのバランスが取り易い点、力学特性と経済性とのバランスが取り易い点等が挙げられ、具体的には、SBC樹脂とポリスチレン樹脂の2つの原料を用い、それらの配合比率を調整することにより、目的とする製品の特性に合致させることができ、さらには目的とする製品の特性に応じて多様な素材を生産できる点等が挙げられる。
【0004】
従来から、スチレン共重合比率が高いSBC樹脂と、スチレン共重合比率が低く柔軟性に優れたスチレン−ブタジエン共重合エラストマー(以下、「SBSエラストマー」ともいう)とを組み合わせ、かつポリスチレン樹脂やスチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合樹脂とブレンドし、透明で柔軟性と耐衝撃性に優れた樹脂組成物が得る技術が多く開示されている。
例えば、特許文献1には、SBC樹脂とSBSエラストマーとポリスチレン樹脂からなるポリスチレン樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭56−70044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されているポリスチレン樹脂組成物は、改質剤としてSBC樹脂(スチレン量62質量%)と、SBSエラストマー(スチレン量39質量%)を、ポリスチレン樹脂組成物を得る過程において添加しているが、SBC樹脂とSBSエラストマーとが組成物となっていないため、十分な耐衝撃性を得るためには相当量のSBSエラストマーを配合する必要があり、結果として剛性が低下するという問題を有している。そのため、耐衝撃性と剛性とのバランスは不十分なものとなり、実用上十分なコシのある成形体を得ることができないという問題を有している。
【0007】
さらには、特許文献1に記載されているポリスチレン樹脂組成物は、非効率なSBSエラストマーの分散形態を有しているため、シート形状の成形体とした場合、当該シートの縦と横の力学物性の差(これを異方性と言う)が大きくなり、シートの等方性が低下するという問題を有している。
【0008】
上述した従来技術の問題点に鑑み、本発明においては、低スチレンSBSエラストマーの分散性を大幅に改善させることにより、耐衝撃性と剛性とのバランスと、等方性を大幅に改善できるブロック共重合体組成物、当該ブロック共重合体組成物を含む樹脂組成物、及び成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、所定の重合体(a)と所定のブロック共重合体(b)を含むブロック共重合体組成物を、ポリスチレン等の樹脂の耐衝撃性改質材として用いることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0010】
〔1〕
ビニル芳香族単量体単位が95質量%を超え100質量%以下であり、かつ共役ジエン単量体単位が0質量%以上5質量%未満である重合体(a)と、
ビニル芳香族単量体単位が15質量%以上50質量%以下であり、かつ共役ジエン単量体単位が50質量%以上85質量%以下であるブロック共重合体(b)と、
から構成され、
前記重合体(a)と、前記ブロック共重合体(b)とが質量比で、
(a)/(b)=70/30〜30/70である、
ブロック共重合体組成物。
〔2〕
前記重合体(a)が、
ビニル芳香族単量体単位が95質量%を超え100質量%未満であり、かつ共役ジエン単量体単位が0質量%を超え5質量%未満である、
前記〔1〕に記載のブロック共重合体組成物。
〔3〕
ビニル芳香族単量体からなる二量体及び三量体の総量が1000ppm未満である、前記〔1〕又は〔2〕に記載のブロック共重合体組成物。
〔4〕
ISO14782に規定されている2mm厚みにおけるヘイズ値が65%以上100%以下である、前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載のブロック共重合体組成物。
〔5〕
GPC法による分子量分布曲線において、30000以上180000以下の間に少なくとも1つのピーク分子量を有する、前記〔1〕乃至〔4〕のいずれか一に記載のブロック共重合体組成物。
〔6〕
−70℃〜−40℃の範囲に、少なくとも1つの動的粘弾性のtanδのピークを有する、前記〔1〕乃至〔5〕のいずれか一に記載のブロック共重合体組成物。
〔7〕
前記〔1〕乃至〔6〕のいずれか一に記載のブロック共重合体組成物からなる成形材料。
〔8〕
ゴム変性ビニル芳香族重合体(c)を80質量%以上99質量%以下と、
前記〔1〕乃至〔6〕のいずれか一に記載のブロック共重合体組成物、又は前記〔7〕に記載の成形材料を1質量%以上20質量%以下と、
を、含有する樹脂組成物。
〔9〕
ビニル芳香族系重合体(d)を0質量%を超え80質量%以下と、
前記ゴム変性ビニル芳香族重合体(c)を10質量%以上45質量%以下と、
前記〔1〕乃至〔6〕のいずれか一に記載のブロック共重合体組成物、又は前記〔7〕に記載の成形材料を10質量%以上55質量%以下と、
を、含有する樹脂組成物。
〔10〕
前記〔8〕又は〔9〕に記載の樹脂組成物を含む成形体。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、優れた耐衝撃性と高い剛性とのバランスが良好で、等方性にも優れた樹脂組成物、及び成形体が得られるブロック共重合体組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ブロック共重合体組成物の透過型電子顕微鏡写真(以下、TEM像、と言う)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。
なお、本発明は、以下の本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0014】
〔ブロック共重合体組成物〕
本実施形態のブロック共重合体組成物は、
ビニル芳香族単量体単位が95質量%を超え100質量%以下であり、かつ共役ジエン単量体単位が0質量%以上5質量%未満である重合体(a)と、
ビニル芳香族単量体単位が15質量%以上50質量%以下であり、かつ共役ジエン単量体単位が50質量%以上85質量%以下であるブロック共重合体(b)と、
から構成され、
前記重合体(a)と、前記ブロック共重合体(b)とが質量比で、
(a)/(b)=70/30〜30/70である。
【0015】
本実施形態においては、重合体(a)とブロック共重合体(b)が組成物であることにより、本実施形態のブロック共重合体組成物と汎用ポリスチレン等とを組み合わせ、樹脂組成物を製造する際に、押出機に投入し、溶融させて樹脂組成物のシートを得る過程で、スチレン量の比較的低いSBSエラストマーであるブロック共重合体(b)が、汎用ポリスチレン等の樹脂へ十分に分散し、限られた押出機の長さ(L/D)でSBSエラストマーを効率良く微分散させることができる。
ここで、「組成物である」とは、重合体(a)とブロック共重合体(b)とが、ミクロンオーダーで相容している状態であることが好ましい態様として挙げられる。
上記のように、SBSエラストマーであるブロック共重合体(b)が効率的な分散形態となることで、効率よく耐衝撃性を発現することができ、所望の耐衝撃性を得るためにSBSエラストマーの配合量を増加させなくても、剛性を低下させることなく、実用上十分な耐衝撃性が得られる。
更には、本実施形態のブロック共重合体組成物を用いた樹脂組成物は、当該樹脂組成物中のSBSエラストマーの分散形態が良好であるため、シートの縦と横の力学物性の差(これを異方性と言う)が小さくなり、シートの等方性が向上する。
ここで、本実施形態のブロック共重合体組成物は、図1に示すように、ミクロンオーダーで重合体(a)とブロック共重合体(b)が相容していることが好ましい。
図1中、約0.5μm程度以下の分散相を形成している淡色部分が重合体(a)を示し、連続相を示している濃色部分がブロック共重合体(b)を示す。
重合体(a)とブロック共重合体(b)が相容していることは後述する実施例に記載する方法で、透過型電子顕微鏡を用いて確認することができる。
本実施形態のブロック共重合体組成物からなる成形材料を配合してポリスチレン等と樹脂組成物を作製すると、SBSエラストマー成分の分散性が良好となるため、配合効率が向上し、そのため、所望の衝撃強度を発現するために必要なSBSエラストマー成分の配合量を削減することができるため、剛性の低下を最小限とすることが可能となり、衝撃強度と剛性のバランスに優れた成形体を得ることができる。とりわけ、本実施形態のブロック共重合体組成物を配合してポリスチレンシートを成形した場合、従来のSBSエラストマー配合シートの欠点でもあった、縦方向の引張弾性率の値が大きく乖離し、縦横の異方性が大きいという欠点に対して、大幅に改善した等方性に優れたシート成形体を得ることができる。異方性が大幅に改善し等方性に優れたシートを成形することにより、容器等に成形した際に、外部からの変形応力に対する耐性が増し、薄肉でも割れにくく丈夫な容器を得ることができる。
【0016】
本明細書中において、重合体を構成する各単量体単位の命名は、単量体単位が由来する単量体の命名に従う。
例えば、「ビニル芳香族単量体単位」とは、単量体であるビニル芳香族単量体を重合した結果生ずる重合体の構成単位を意味し、その構造は、置換ビニル基に由来する置換エチレン基の二つの炭素が重合体主鎖となっている分子構造である。
また、「共役ジエン単量体単位」とは、単量体である共役ジエン単量体を重合した結果生ずる重合体の構成単位を意味し、その構造は、共役ジエン単量体に由来するオレフィンの二つの炭素が重合体主鎖となっている分子構造である。
【0017】
(ビニル芳香族単量体からなる二量体及び三量体)
一般的に、ブロック共重合体は、後述する有機アルカリ金属を用いたアニオン重合により製造される。
ビニル芳香族単量体からなる単独重合体は一般的にはラジカル重合により製造されるが、アニオン重合により製造することも可能である。
本実施形態のブロック共重合体組成物は、アニオン重合により製造された重合体(a)とブロック共重合体(b)とからなるものであることが好ましく、これにより、本実施形態のブロック共重合体組成物は、ラジカル重合により製造されたポリスチレンなどのビニル芳香族単量体単独重合体よりもビニル芳香族単量体からなる二量体及び三量体の含有量が少なくなる。
【0018】
ビニル芳香族単量体からなる二量体及び三量体とは、ビニル芳香族単量体が2分子結合したものが二量体、3分子結合したものが三量体である。
二量体と三量体の化学構造は、なんら限定されず、例えば二量体の場合、ビニル結合が環状構造をとった環状二量体でも、直鎖構造の二量体であっても、いずれも二量体の概念に含まれる。三量体も同様である。
ラジカル重合の場合は重合時に副次反応で生成する場合が多く、一般的には二量体と三量体の合計で3000〜10000ppm程度含まれる場合が多い。
一方で、有機アルカリ金属によるアニオン重合の場合は、重合時にはこれらの二量体や三量体は殆ど生成せず、その後の成形材料とした際の熱履歴等により分子切断等が生じた結果、微量の二量体や三量体が生成することがある。その場合でも、一般的には二量体と三量体の合計値で1000ppm未満であることが多い。
ラジカル重合により製造されたビニル芳香族単量体からなる重合体(a)の場合、重合時の副次反応による二量体及び三量体に合わせ、その後の熱履歴により分子切断により生成した二量体及び三量体も同時に存在する。
分子切断により生成した二量体及び三量体の分子量は、ビニル芳香族単量体の分子量のちょうど2倍、3倍になっているとは限らず、切断位置によっては単量体分子量の倍数にならずにズレを生じることもある。この場合、分子内に含まれる芳香族環の数で二量体か三量体かそれ以外かを判断することができる。
【0019】
本実施形態のブロック共重合体組成物、及び当該ブロック共重合体組成物よりなる成形材料は、ビニル芳香族単量体からなる二量体及び三量体の総量が1000ppm未満であることが好ましく、より好ましくは500ppm以下であり、さらに好ましくは250ppm以下である。
ビニル芳香族単量体からなる二量体及び三量体の総量が1000ppm未満であることにより、力学物性と品位に優れたブロック共重合体組成物並びに成形材料となる。
【0020】
また、ビニル芳香族単量体からなる二量体及び三量体の総量が1000ppm未満となるためには、重合体(a)はアニオン重合により製造された重合体であることが好ましく、ビニル芳香族単量体単位の含有量が95質量%を超え100質量%未満、及び共役ジエン単量体単位が0質量%を超え5質量%未満であるブロック共重合体であることがより好ましい。
ビニル芳香族単量体からなる二量体及び三量体の含有量は、後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
【0021】
(ブロック共重合体組成物のヘイズ値)
ヘイズ値は、樹脂材料の透明性を評価する指標のひとつであり、ISO14782で規定された方法により測定することができる。
なお、ISO14782には、『この試験方法は、この方法によって測定したヘイズ値40%以下の材料に適用できる』、との断り書きがあるが、本実施形態で規定するヘイズ値は、40%を超えるヘイズ値であってもISO14782で規定された試験方法により測定する。
本実施形態のブロック共重合体組成物、及び当該ブロック共重合体組成物よりなる成形材料は、2mm厚みの鏡面平板でのヘイズ値が65%以上100%であることが好ましく、75%以上100%以下であることがより好ましく、85%以上100%以下であることがさらに好ましい。
重合体(a)とブロック共重合体(b)のビニル芳香族単量体の含有量が大きく乖離したものとし、ミクロンオーダーで相分離構造をとるようにすることで、ブロック共重合体組成物は白濁し、上記の好ましいヘイズ値の範囲となる。
例えば、スチレン99質量%とブタジエン1質量%の重合体(a)(メルトフローレート:5.0)50質量%と、スチレン40質量%とブタジエン60質量%のブロック共重合体(b)(メルトフローレート:16)50質量%とからなるブロック共重合体組成物は、ヘイズ値92%であり、重合体(a)をドメインとし、ブロック共重合体(b)が連続相を形成し、重合体(a)が約1μm程度以下に均一に分散した構造を有していることが確認されている。
なお、メルトフローレートの測定方法については後述するブロック共重合体組成物のメルトフローレートの測定方法を適用することができる。
【0022】
(ピーク分子量、分子量、及び分子量分布)
重合体(a)のピーク分子量、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、なんら制限されないが、いずれも、好ましくは10000〜1000000であり、より好ましくは30000〜400000であり、さらに好ましくは40000〜300000である。
ブロック共重合体(b)のピーク分子量、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、なんら制限されないが、いずれも、好ましくは10000〜1000000であり、より好ましくは30000〜400000であり、さらに好ましくは40000〜300000である。
重合体(a)とブロック共重合体(b)からなる本実施形態のブロック共重合体組成物は、GPC法による分子量分布曲線において、30000以上180000以下の間に少なくとも1つのピーク分子量を有することが好ましく、40000以上150000以下の間に少なくとも1つのピーク分子量を有することが好ましく、45000以上130000以下の間に少なくとも1つのピーク分子量を有することが好ましい。
本実施形態のブロック共重合体組成物は、GPC法による分子量分布曲線において、上記範囲内にピーク分子量が2つ以上あってもよい。
また、分子量分布曲線における分子量ピークの形状は、ピークの狭いシャープな分布であっても、広いブロードな分布であってもよい。同時に併せて30000未満、あるいは180000を超える分子量領域にピーク分子量を有していてもよい。
本実施形態のブロック共重合体組成物が上記の範囲にピーク分子量を有することにより、本実施形態のブロック共重合体組成物をポリスチレン樹脂の改質材として用いた際に、分散性が良好となり、耐衝撃性と剛性のバランスがより向上する傾向にある。
【0023】
重合体(a)とブロック共重合体(b)のピーク分子量、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、それぞれ、同じであっても異なっていてもよい。
現実的に、組成物から、重合体(a)とブロック共重合体(b)の各々のピーク分子量、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を算出するために、重合体(a)とブロック共重合体(b)を分離することは必ずしも容易ではなく、ブロック共重合体組成物としての分子量で定義することができる。具体的には、ブロック共重合体組成物の、分子量の異なる2つ以上のピークとして検出されるか、なだらかなブロードのピークとして検出することができる。
【0024】
本実施形態のブロック共重合体組成物の分子量分布(Mw/Mn)に関しては特に制限はない。
カップリング剤等により一部ポリマーの重合活性末端を会合させることにより、異なる分子量の組み合わせを有する重合体(a)、ブロック共重合体(b)を得ることができる。
更には、重合途中にエタノール等のアルコールを、用いた重合開始剤よりも少ないモル数の量で添加することにより、一部のポリマーの重合を停止させることが可能であり、結果として、異なる分子量を有する重合体(a)、ブロック共重合体(b)を得ることができる等、分子量の設計の自由度は大きい。
ブロック共重合体組成物のピーク分子量、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、GPCを用いて実施例に記載の方法により測定することができる。
【0025】
(ブロック共重合体組成物のメルトフローレート)
ブロック共重合体組成物のメルトフローレート(ISO1133 温度200℃、荷重5kgf)は、好ましくは0.1〜50g/10分であり、より好ましくは3〜30g/10分であり、さらに好ましくは6〜25g/10分である。
ブロック共重合体組成物のメルトフローレートが上記範囲内であることにより、本実施形態のブロック共重合体組成物と、後述するゴム変性ビニル芳香族重合体(c)やビニル芳香族系重合体(d)を組み合わせた樹脂組成物から得られる成形体の成形外観と耐衝撃性、耐亀裂性がより向上する。
ブロック共重合体組成物のメルトフローレートは、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
重合体(a)とブロック共重合体(b)の各成分のメルトフローレートは何ら制限されないが、重合体(a)よりブロック共重合体(b)のメルトフローレート値が高い方が、所望の特性を発現する上で好ましい。
【0026】
(ブロック共重合体組成物の動的粘弾性のtanδピーク温度)
本実施形態のブロック共重合体組成物は、動的粘弾性測定した際の損失正接(tanδ)のピークを−70℃〜−40℃の範囲に少なくとも1つ有することが好ましい。
ブロック共重合体組成物が上記範囲にtanδピークを有することにより、優れた耐衝撃性を発揮し、剛性と耐衝撃性のバランスに優れ、かつ耐熱老化性にも優れた樹脂組成物を得ることができる。
この温度範囲のtanδピークは、ブロック共重合体(b)の共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位の双方を含むブロック由来の転移温度に由来していると考えられる。
なお、重合体(a)において共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位の双方を含むブロックがあった場合は、共役ジエン単量体単位は5質量%未満であるため、−70℃〜−40℃の範囲において、明確なtanδのピークとしては観測されない。
ブタジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックのtanδピーク温度は−70℃よりも低温であるため、共役ジエン単量体とビニル芳香族単量体単位の双方を含む、少なくとも1つのランダム共重合体ブロック(B/S)を有することでtanδピーク温度がこの温度範囲に入る。
このtanδピーク温度は、ブロック共重合体(b)単体でも、ブロック共重合体組成物でも、殆ど重合体(a)に影響を受けず、変化なく一定の値を示すことから、ブロック共重合体(b)の共役ジエン単位を含むブロック構造を反映したものとみなすことができる。
【0027】
本実施形態のブロック共重合体組成物の動的粘弾性は、後述する実施例に記載する方法により測定することができる。
このtanδピークは、ブロック共重合体(b)のランダム共重合体ブロック(B/S)に由来していると考えられる。
例えば、ビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位の比率が異なるランダム共重合体ブロック(B/S)を複数有する場合には、複数のピークを示すことがあり、あるいは、一つのブロードでなだらかなピークとして観測されることもあり得る。
動的粘弾性のtanδピーク温度は、ランダム共重合ブロック(B/S)のビニル芳香族単量体単位の共重合比率を増すことにより高温側にシフトし、ビニル芳香族単量体単位の共重合比率を下げることにより低温側にシフトする。
なお、ブロック共重合体(b)は、上記温度範囲外のtanδピークを有していてもよい。実際、ビニル芳香族重合体を主体とする重合体ブロックに由来したピークを多くの場合有する。
共役ジエン単量体単独より、ビニル芳香族単量体単位とのランダム共重合ブロックの方が耐熱劣化性が改善するため、本実施形態のブロック共重合体組成物の動的粘弾性を測定した際の損失正接(tanδ)のピークが−70℃〜−40℃の範囲に少なくとも1つ有することにより、耐熱劣化性が向上する。
【0028】
(重合体(a)とブロック共重合体(b)の質量比)
重合体(a)とブロック共重合体(b)の質量比((a)/(b))は、70/30〜30/70であり、好ましくは67/33〜40/60であり、より好ましくは60/40〜40/60であり、さらに好ましくは55/45〜45/55である。
質量比を上記範囲とすることで、ポリスチレン樹脂の改質材としての耐衝撃性付与と剛性との良バランス化を達成しつつ、ブロック共重合体組成物の加工時のゲル化を抑制できるため、好ましい。
【0029】
(重合体(a))
重合体(a)は、重合体(a)の総量に対して、ビニル芳香族単量体単位が95質量%を超え100質量%以下、及び、共役ジエン単量体単位が0質量%以上5質量%未満を含む。
重合体(a)は、ビニル芳香族単量体単位及び共役ジエン単量体単位以外の重合可能な他の化合物単位を、必要に応じて含んでもよい。
【0030】
ビニル芳香族単量体としては、分子内に芳香環とビニル基とを有するものであればよく、以下に限定されるものではないが、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、1,1−ジフェニルエチレン等が挙げられる。
特に、スチレンが一般的であり好ましい。
これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
共役ジエン単量体としては、一対の共役二重結合を有するジオレフィンであればよく、以下に限定されるものではないが、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。
特に、1,3−ブタジエン、イソプレンが一般的であり好ましい。
これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
重合体(a)におけるビニル芳香族単量体単位の含有量は、重合体(a)の総量に対して、95質量%を超え100質量%以下であり、好ましくは95質量%を超え100質量%未満であり、より好ましくは97質量%以上100質量%未満であり、さらに好ましくは98.5質量%以上100質量%未満である。
【0033】
また、重合体(a)における共役ジエン単量体単位の含有量は、重合体(a)の総量に対して、0質量%以上5質量%未満であり、好ましくは0質量%を超え5質量%未満であり、より好ましくは0質量%を超え3質量%以下であり、さらに好ましくは0質量%を超え1.5質量%以下の範囲である。
ビニル芳香族単量体単位、及び共役ジエン単量体単位の含有量は、後述する実施例に記載する方法により算出することができる。
ビニル芳香族単量体単位の含有量及び共役ジエン単量体単位の含有量が上記範囲内である重合体(a)を用いることにより、剛性と耐衝撃性のバランスに優れた樹脂組成物が得られる。
【0034】
重合体(a)としては、ビニル芳香族単量体単位100質量%からなるビニル芳香族単量体の単独重合体と、共役ジエン単量体単位が0質量%を超え5質量%未満含まれる共重合体との両方が挙げられる。
重合体(a)がビニル芳香族単量体のみからなる重合体である場合、一般的には汎用ポリスチレン(GPPS)と呼ばれる工業的に量産されている汎用樹脂の一種である。
一方で、重合体(a)が共役ジエン単量体単位との共重合体である場合、ビニル芳香族単量体単位を主体とする、少なくとも1つの重合体ブロック(S)を含むことが好ましい。
剛性と耐衝撃性のバランスの観点から、重合体(a)が共役ジエン単量体単位との共重合体であることが好ましい。
なお、本明細書中において重合体ブロック(S)とは、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックであり、重合体ブロック(B)とは、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックである。
【0035】
重合体(a)としては、特に限定されないが、例えば、下記の各一般式に示すブロック構造を有するものが挙げられる。
S (ビニル芳香族単量体の単独重合体)
S1−B1
S1−B/S1
S1−B1−S2
S1−B/S1−S2
S1−B1−S2−B2
S1−B/S1−S2−B/S2
S1−B/S1−B/S2−S2
S1−B1−S2−B2−S3
(上記一般式中、Sはビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(S)を示し、Bは共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)を示し、B/Sはビニル芳香族単量体単位及び共役ジエン共重合体単位の含有量が各々90質量%未満であるランダム共重合体ブロック(B/S)を示す。)
【0036】
なお、上記のブロック構造を表す式中の、S、B、B/Sに付した番号は、それぞれ、重合体ブロック(S)と、重合体ブロック(B)と、ランダム共重合体ブロック(B/S)と、を同定するための番号であり、数字が異なるものは、それぞれのブロックの分子量(重合度)、あるいは共重合比率が同一であっても異なっていてもよい。
【0037】
また、重合体ブロック(S)及び重合体ブロック(B)は、成分や組成が異なるブロックの連続構造により形成されていてもよい。すなわち、例えば、重合体ブロック(B)が、B1−B2−B3(B1、B2、B3は、それぞれ異なる組成又は成分を有するBブロック)であってもよい。
また、ランダム共重合体ブロック(B/S)の連鎖構造は、ランダムブロックでもテーパードブロック(連鎖に沿って、徐々に組成比率が変化したもの)であってもよい。
【0038】
重合体(a)は、線状重合体でも分岐状重合体のいずれでもよい。
分岐状重合体を得る方法としては、重合終末端をカップリング反応させる方法や、多官能開始剤を用いて重合初期から分岐させる方法等が挙げられる。
また、本実施形態の樹脂組成物の耐衝撃性等の力学特性の観点から、重合体(a)はブロック共重合体の場合、両端に、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(S)が各々結合しているブロック共重合体であることが好ましい。
【0039】
なお、本明細書中、「主体とする」とは、所定の単量体単位の含有量が90質量%以上であることをいう。例えば、ブロック共重合体(a)において、「ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック」とは、ビニル芳香族単量体単位が90質量%以上、かつ、共役ジエン単量体単位が10質量%以下であるブロックをいう。ビニル芳香族単量体単位が90質量%未満、かつ共役ジエン単量体単位が10質量%を超える重合体ブロックはランダム共重合体ブロックと定義する。ランダム共重合体ブロックは、完全ランダム構造でも、テーパード構造(連鎖に沿って、共重合組成比率が段階的に変化するもの)でもよい。
【0040】
重合体(a)の製造方法については、後述するブロック共重合体(b)と多くの部分で説明が重複するため、ブロック共重合体(b)の説明の後に併せて説明する。
【0041】
(ブロック共重合体(b))
ブロック共重合体(b)は、ブロック共重合体(b)の総量に対して、ビニル芳香族単量体単位15質量%以上50質量%以下であり、かつ共役ジエン単量体単位50質量%以上85質量%以下である。
ブロック共重合体(b)は、ビニル芳香族単量体単位及び共役ジエン単量体単位以外の共重合可能な他の化合物単位を、必要に応じて含んでもよい。
【0042】
ブロック共重合体(b)に含まれるビニル芳香族単量体としては、分子内に芳香環とビニル基とを有するものであればよく、以下に限定されるものではないが、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、1,1−ジフェニルエチレン等が挙げられる。
特に、スチレンが一般的であり好ましい。
これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
ブロック共重合体(b)に含まれる共役ジエン単量体としては、一対の共役二重結合を有するジオレフィンであればよく、以下に限定されるものではないが、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。
特に、1,3−ブタジエン、イソプレンが一般的であり好ましい。
これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
ブロック共重合体(b)におけるビニル芳香族単量体単位の含有量は、ブロック共重合体(b)の総量に対して、15質量%以上50質量%以下であり、好ましくは15質量%以上45質量%以下であり、好ましくは20質量%以上42質量%以下であり、より好ましくは30質量%以上40質量%以下である。
また、ブロック共重合体(b)における共役ジエン単量体単位の含有量は、ブロック共重合体(b)の総量に対して、50質量%以上85質量%以下であり、好ましくは55質量%以上85質量%以下であり、好ましくは58質量%以上80質量%以下であり、より好ましくは60質量%以上70質量%以下である。
ビニル芳香族単量体単位の含有量及び共役ジエン単量体単位の含有量が上記範囲内であるブロック共重合体(b)を用いることにより、剛性と耐衝撃性のバランスに優れた樹脂組成物が得られる。
【0045】
ブロック共重合体(b)におけるビニル芳香族単量体単位の含有量、及び共役ジエン単量体単位の含有量は、UV計(紫外線吸光光度計)により測定することができる。具体的には、後述する実施例に記載した方法により測定できる。
【0046】
ブロック共重合体(b)は、ビニル芳香族単量体単位を主体とする、少なくとも1つの重合体ブロック(S)を含むことが好ましい。
また、ブロック共重合体(b)は、ビニル芳香族単量体単位及び共役ジエン単量体単位を含む、少なくとも1つのランダム共重合体ブロック(B/S)をさらに有することが好ましい。
ブロック共重合体(b)が、共重合体ブロック(B/S)をさらに有することにより、耐衝撃性がより向上する傾向にある。
また、ブロック共重合体(b)は、少なくとも2つの重合体ブロック(S)を有することが好ましい。少なくとも2つの重合体ブロック(S)を有することにより、耐衝撃性や降伏強度、破断時伸び等の力学的特性がより向上する傾向にある。
【0047】
ブロック共重合体(b)としては、特に限定されないが、例えば、下記の一般式に示すブロック構造を有するものが挙げられる。
S1−B1
S1−B/S1
S1−B1−S2
S1−B/S1−S2
S1−B/S1−S2−B/S2
S1−B/S1−B/S2−S2
S1−B1−B/S1−S2
S1−B1−B/S1−B2−S2
S1−B1−S2−B2−S3
(前記一般式中、Sはビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(S)を示し、Bは共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)を示し、B/Sはビニル芳香族単量体単位及び共役ジエン単量体単位の含有量が各々90質量%未満であるランダム共重合体ブロック(B/S)を示す。)
【0048】
なお、上記のブロック構造を表す式中の、S、B、B/Sに付した番号は、それぞれ、重合体ブロック(S)と、重合体ブロック(B)と、ランダム共重合体ブロック(B/S)と、を同定するための番号であり、数字が異なるものは、それぞれのブロックの分子量(重合度)、あるいは共重合比率が同一であっても異なっていてもよい。
【0049】
また、ランダム共重合体ブロック(B/S)の連鎖構造は、ランダムブロックでもテーパードブロック(連鎖に沿って、徐々に組成比率が変化したもの)でもよい。
【0050】
ブロック共重合体(b)は、線状ブロック共重合体でも分岐状ブロック共重合体でもよいが、線状ブロック共重合体の方が成形加工性と耐衝撃性とのバランスの観点から好ましい。
【0051】
また、樹脂組成物の力学特性の観点から、ブロック共重合体(b)は、両端に重合体ブロック(S)が各々結合しているブロック共重合体であることが好ましい。
【0052】
前述の通り、ブロック共重合体(b)は、ビニル芳香族単量体単位及び共役ジエン単量体単位を含む、少なくとも1つのランダム共重合体ブロック(B/S)をさらに有することが好ましい。
ランダム共重合体ブロック(B/S)のBとSの共重合比率は、ビニル芳香族単量体と共役ジエン単量体との混合物の比率を調整することにより制御できる。後述の通り、これらの混合物を連続的に重合系に供給して重合する、及び/又は、極性化合物或いはランダム化剤を使用してビニル芳香族単量体と共役ジエン単量体を共重合する、等の方法が採用できる。
重合体ブロック(S)を構成しているビニル芳香族単量体単位の割合(以下、「重合体ブロック(S)率」ともいう。)は、ブロック共重合体(b)の全ビニル芳香族単量体単位に対して、好ましくは50〜90質量%であり、より好ましくは55〜85質量%であり、さらに好ましくは60〜80質量%である。
重合体ブロック(S)を構成しているビニル芳香族単量体単位の割合(重合体ブロック(S)率)が上記範囲内であることにより、耐熱老化性に優れ、効果的に耐衝撃性を発現し、剛性と耐衝撃性とのバランスにも優れた樹脂組成物を得ることができる。
また、重合体ブロック(S)率を上記範囲とすることにより、樹脂組成物の動的粘弾性のtanδピークを−70〜−40℃の範囲に制御することができる。
ブロック共重合体(b)における重合体ブロック(S)率は、ブロック共重合体(b)のランダム共重合体ブロック(B/S)の、ビニル芳香族単量体と共役ジエン単量体との質量比を変えることにより、すなわちこれらの仕込み原料の量比を調整することにより制御することができる。
【0053】
ブロック共重合体(b)における重合体ブロック(S)率は、四酸化オスミウムを触媒としてジターシャリーブチルハイドロパーオキサイドによりブロック共重合体を酸化分解する方法(I.M.KOLTHOFF,et al.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法)により得た重合体ブロック(S)成分(但し平均重合度が約30以下のビニル芳香族単量体重合体成分は除かれている。)を、ブロック共重合体(b)中の全ビニル芳香族単量体の重量で除することにより算出できる。
【0054】
(重合体(a)及びブロック共重合体(b)の製造方法)
重合体(a)は、炭化水素溶媒中、ビニル芳香族単量体を重合することにより、あるいは、必要に応じて共役ジエン単量体を共重合することにより得られる。
ブロック共重合体(b)は、炭化水素溶媒中、重合開始剤を用い、ビニル芳香族単量体及び共役ジエン単量体を共重合することにより得られる。
重合体(a)、及びブロック共重合体(b)の製造に用いる炭化水素溶媒としては、従来公知の炭化水素溶媒が使用でき、以下に限定されるものではないが、例えば、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘプタン等の脂環式炭化水素類;また、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族単量体等が挙げられる。
これらは1種のみを単独で使用してもよく、2種以上混合使用してもよい。
これらの中でも、有機リチウム開始剤を用いる場合は、n−へキサン、シクロヘキサンが一般的で好ましく使用される。
【0055】
重合体(a)は、ビニル芳香族単量体単位100質量%からなるビニル芳香族単量体の単独重合体を含むことが好ましい。重合体(a)が共役ジエン単量体単位を含む共重合体であれば、有機リチウム化合物等の重合開始剤を用いたアニオン重合による製法が一般的であるが、重合体(a)がビニル芳香族単量体の単独重合体であれば、アニオン重合に限らず、例えば工業的に汎用化しているラジカル重合による製造も可能であり、製法による制約はない。ラジカル重合には、熱ラジカルによる重合と開始剤ラジカルによる重合があり、いずれも好適に用いられる。必要に応じて連鎖移動剤や重合助剤を使用することも可能である。
【0056】
重合開始剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、共役ジエン単量体及びビニル芳香族単量体に対し、アニオン重合活性を示すことが知られている、脂肪族炭化水素アルカリ金属化合物、芳香族単量体アルカリ金属化合物、有機アミノアルカリ金属化合物等のアルカリ金属化合物が挙げられる。
【0057】
本実施形態のブロック共重合体組成物に含まれる重合体(a)、及びブロック共重合体(b)の製造方法は、公知の技術を利用できる。
以下に例示する技術は、いずれも炭化水素溶剤中で有機リチウム化合物等のアニオン開始剤を用い、共役ジエン単量体とビニル芳香族単量体をブロック共重合する方法である。
例えば、特公昭36−19286号公報、特公昭43−17979号公報、特公昭48−2423号公報、特公昭49−36957号公報、特公昭57−49567号公報、特公昭58−11446号公報に記載された方法により製造することができる。
【0058】
アルカリ金属化合物中のアルカリ金属としては、以下に限定されるものではないが、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
好適なアルカリ金属化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、炭素数1〜20の脂肪族及び芳香族炭化水素リチウム化合物であって、1分子中に1個のリチウムを含む化合物や、1分子中に複数のリチウムを含むジリチウム化合物、トリリチウム化合物、テトラリチウム化合物が挙げられる。
このようなアルカリ金属化合物としては、以下に限定されるものではないが、具体的には、n−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、ヘキサメチレンジリチウム、ブタジエニルジリチウム、イソプレニルジリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとsec−ブチルリチウムの反応生成物、さらにはジビニルベンゼンとsec−ブチルリチウムと少量の1,3−ブタジエンとの反応生成物等が挙げられる。
また更に、米国特許第5,708,092号、英国特許第2,241,239号、米国特許第5,527,753号に示す外国特許に開示されている有機アルカリ金属化合物も使用することができる。
これらは1種のみを単独で使用してもよく、2種以上混合使用してもよい。特に、n−ブチルリチウムが一般的で好ましく使用される。
【0059】
重合体(a)及びブロック共重合体(b)の各々の製造プロセスにおいて、重合原料であるビニル芳香族単量体及び共役ジエン単量体の仕込み比率を調整することにより、最終的に得られる重合体(a)、ブロック共重合体(b)の各々のビニル芳香族単量体単位の含有量及び共役ジエン単量体単位の含有量を制御できる。
重合反応槽内では、撹拌を行い均一な系で重合を行うため、重合体(a)とブロック共重合体(b)は、同時に同一反応槽で製造することはできず、各々に重合を行うことにより製造する。
【0060】
共役ジエン単量体成分を含む場合の重合体(a)、及びブロック共重合体(b)に、ランダム共重合体ブロックを導入する場合の、ランダム共重合体ブロックを製造する方法としては、ビニル芳香族単量体と共役ジエン単量体との混合物を連続的に重合系に供給して重合する方法、極性化合物あるいはランダム化剤を使用して、ビニル芳香族単量体と共役ジエン単量体とを共重合する等の方法等が挙げられる。
【0061】
極性化合物やランダム化剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のエーテル類;トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン等のアミン類;チオエーテル類;ホスフィン類;ホスホルアミド類;アルキルベンゼンスルホン酸塩;カリウムやナトリウムのアルコキシド等が挙げられる。
【0062】
重合体(a)、及びブロック共重合体(b)の重合工程における重合温度は、重合開始剤を用いたアニオン重合の場合、一般的には−10℃〜150℃、好ましくは40℃〜120℃の範囲である。
重合に要する時間は、条件によって異なるが、通常は48時間以内であり、好ましくは1〜10時間の範囲である。
また、重合系の雰囲気は窒素ガス等の不活性ガス等をもって置換することが好ましい。
重合圧力は上記重合温度範囲で単量体及び重合溶媒を液層に維持するために十分な圧力の範囲で行えばよく、特に制限されるものではない。
更に重合系内には触媒及びリビングポリマーを不活性化させるような不純物、例えば水、酸素、炭酸ガス等が混入しないよう留意することが好ましい。
【0063】
重合体(a)及び/又はブロック共重合体(b)に、ランダム共重合体ブロックが含有される場合において、ビニル芳香族単量体と共役ジエン単量体との混合物を連続的に重合系に供給して重合する、及び/又は、極性化合物或いはランダム化剤を使用してビニル芳香族単量体と共役ジエン単量体を共重合する、等の方法が採用できる。
【0064】
本実施形態のブロック共重合体組成物の構成成分である重合体(a)、ブロック共重合体(b)の製造において、重合開始剤として有機アルカリ金属を用いる場合、重合反応を停止させる際に、2分子以上が結合して停止させるカップリング反応を好適に利用することができる。
カップリング反応は、下記に例示するカップリング剤を重合系内に添加することができる。また、カップリング剤の添加量を調整することで、重合系内の一部のポリマーのみをカップリングさせ、未カップリングポリマーとカップリングポリマーを共存させることで、分子量分布において2つ以上のピークを有する重合体(a)及び/又はブロック共重合体(b)を製造することも可能である。
【0065】
本実施形態のブロック共重合体組成物を構成する重合体(a)及び/又はブロック共重合体(b)の製造に好適に使用できるカップリング剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、2官能以上の任意のカップリング剤が挙げられる。
具体的には、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル−p−フェニレンジアミン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルオルソトルイジン、γ−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリブトキシシランが挙げられる。
【0066】
更に、カップリング剤としては、例えば、1−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−4−メチルピペラジン、1−[3−(ジエトキシエチルシリル)−プロピル]−4−メチルピペラジン、1−[3−(トリメトキシシリル)−プロピル]−3−メチルイミダゾリジン、1−[3−(ジエトキシエチルシリル)−プロピル]−3−エチルイミダゾリジン、1−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−3−メチルヘキサヒドロピリミジン、1−[3−(ジメトキシメチルシリル)−プロピル]−3−メチルヘキサヒドロピリミジン、3−[3−(トリブトキシシリル)−プロピル]−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン、3−[3−(ジメトキシメチルシリル)−プロピル]−1−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン、1−(2−エトキシエチル)−3−[3−(トリメトキシシリル)−プロピル]−イミダゾリジン、(2−{3−[3−(トリメトキシシリル)−プロピル]−テトラヒドロピリミジン−1−イル}−エチル)ジメチルアミンが挙げられる。
【0067】
更に、カップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリフェノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジフェノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジエチルエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルフェノキシシランが挙げられる。
【0068】
更に、カップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルジエチルメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジイソプロペンオキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)ジメトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)ジエトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)ジプロポキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)ジブトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)ジフェノキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルメトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルエトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルプロポキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルブトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルフェノキシシランが挙げられる。
【0069】
更に、カップリング剤としては、例えば、トリス(γ−グリシドキシプロピル)メトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシエチルトリエトキシシラン、ビス(γ−メタクリロキシプロピル)ジメトキシシラン、トリス(γ−メタクリロキシプロピル)メトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリフェノキシシランが挙げられる。
【0070】
更に、カップリング剤としては、例えば、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル−トリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−エチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−エチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジフェノキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメチルメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジエチルエトキシシランが挙げられる。
【0071】
更に、カップリング剤としては、例えば、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメチルエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメチルプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメチルブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメチルフェノキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロ ヘキシル)エチル−ジエチルメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジイソプロペンオキシシラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、N,N'−ジメチルプロピレンウレア、N−メチルピロリドンが挙げられる。
【0072】
なお、重合体(a)及び/又はブロック共重合体(b)のリビング末端に上記カップリング剤を付加反応させる場合には、重合体のリビング末端の構造はなんら限定されないが、本実施形態のブロック共重合体組成物の機械的強度等の観点から、ビニル芳香族単量体を主体とするブロックのリビング末端であることが好ましい。
カップリング剤の使用量は、重合体(a)及び/又はブロック共重合体(b)のリビング末端1当量に対して、0.1当量以上10当量以下であることが好ましく0.5当量以上4当量以下であることがより好ましい。
カップリング剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0073】
(ブロック共重合体組成物の製造方法)
本実施形態のブロック共重合体組成物は、上述の方法で重合体(a)及びブロック共重合体(b)を製造した後、公知のブレンド方法を適用することにより製造することができる。
具体的には、例えば、ロール、ミキサー、ニーダー、バンバリー、押出機(単軸あるいは二軸等)等の公知の混練機を用いた加熱溶融混練によりブロック共重合体組成物を得る方法、重合体(a)及びブロック共重合体(b)を有機溶剤等に溶解した溶液状態で混合撹拌した後、溶剤を加熱や減圧等の任意の方法により除去してブロック共重合体組成物を得る方法等が例示できる。
熱履歴による重合体の劣化の観点で、溶液状態で混合撹拌した後に脱溶剤を行ってブロック共重合体組成物を得る方法が、熱履歴が少なく好ましい。
【0074】
〔成形材料〕
本実施形態の成形材料は、
ビニル芳香族単量体単位が95質量%を超え100質量%以下であり、かつ共役ジエン単量体単位が0質量%以上5質量%未満である重合体(a)と、
ビニル芳香族単量体単位15質量%以上50質量%以下であり、かつ共役ジエン単量体単位が50質量%以上85質量%以下であるブロック共重合体(b)と、
から構成され、
前記重合体(a)と、前記ブロック共重合体(b)とが、質量比で、(a)/(b)=70/30〜30/70、
であるブロック共重合体組成物からなる成形材料である。
【0075】
成形材料とは、重合体(a)とブロック共重合体(b)からなるブロック共重合体組成物、あるいは任意の他の1種以上の材料と任意の比率で混合された状態で、成形機や混合機を使用して加熱溶融し、再度冷却させることで中間製品や最終製品等の所望の成形体に加工可能な形態である組成物を指す。
本実施形態の成形材料としては、例えば、粉状、ペレット状、クラム状、フレーク状等の組成物が挙げられる。これらはペレタイザーや粉砕機等の機械装置で製造することができる。
均一混合性の観点からペレット形状が好ましい。
ペレットの粒子径を一定範囲内に揃えることで、ドライブレンド時に分級し難くなるため好ましい。
ペレットの長径と短径の平均径は0.1mm以上5mm以下が好ましく、より好ましくは1mm以上4mm以下である。
ペレット形状については、なんら制限は無く、ストランドカットで仕上げる円柱状や、水中カットで仕上げる球状が工業的には一般的であり、好ましく利用される。
【0076】
〔樹脂組成物〕
本実施形態のブロック共重合体組成物は、優れた耐衝撃性と高い剛性を両立した樹脂組成物、とりわけ高度に改質されたポリスチレン樹脂製シートを提供するための樹脂組成物の改質材として大変有用である。
本実施形態の樹脂組成物は、上述した本実施形態のブロック共重合体組成物を配合したものであり、改質対象となるゴム変性ビニル芳香族重合体(c)とブロック共重合体組成物からなる樹脂組成物である。更には、本実施形態の樹脂組成物は、用途や目的に応じて、ゴム変性ビニル芳香族重合体(c)と、ビニル芳香族系重合体(d)と、ブロック共重合体組成物からなる樹脂組成物であってもよい。
【0077】
ゴム変性ビニル芳香族重合体(c)を、本実施形態のブロック共重合体組成物で改質し、本実施形態の樹脂組成物を得る場合、本実施形態の樹脂組成物は、ゴム変性ビニル芳香族重合体(c)を80質量%以上99質量%以下、ブロック共重合体組成物を1質量%以上20質量%以下とすることが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物においては、ゴム変性ビニル芳香族重合体(c)が82質量%以上96質量%以下であり、ブロック共重合体組成物が4質量%以上18質量%以下であることがより好ましく、ゴム変性ビニル芳香族重合体(c)が84質量%以上94質量%以下であり、ブロック共重合体組成物が6質量%以上16質量%以下であることがさらに好ましい。
特に、本実施形態の樹脂組成物においては、ブロック共重合体組成物が1質量%以上であると、応力が加わっても縦方向にシートが裂けにくくなり、いわゆる耐亀裂性が向上し、また、ブロック共重合体組成物が20質量%以下であると、樹脂組成物として、剛性と耐衝撃性のバランスがより向上する傾向にある。
20質量%を超えてブロック共重合体組成物を配合した場合、剛性は更に低下する一方で、耐衝撃性の向上は頭打ちとなる。
上述した組成範囲とすることで、耐衝撃性と剛性のバランスに優れた樹脂組成物を得ることができる。
【0078】
更に、本実施形態の樹脂組成物は、上記ゴム変性ビニル芳香族重合体(c)に加え、ビニル芳香族系重合体(d)を含んでもよい。
本実施形態の樹脂組成物が、汎用ポリスチレン(GPPS)に代表されるビニル芳香族系重合体(d)を含む場合、ビニル芳香族系重合体(d)が0質量%を超え80質量%以下、ゴム変性ビニル芳香族重合体(c)が10質量%以上45質量%以下、ブロック共重合体組成物が10質量%以上55質量%以下であることが好ましい。
ビニル芳香族系重合体(d)が25質量%以上70質量%以下、ゴム変性ビニル芳香族重合体(c)が15質量%以上30質量%以下、ブロック共重合体組成物が15質量%以上45質量%以下であることがより好ましく、ビニル芳香族系重合体(d)が30質量%以上60質量%以下、ゴム変性ビニル芳香族重合体(c)が20質量%以上30質量%以下、ブロック共重合体組成物が20質量%以上40質量%以下であることがさらに好ましい。
特に、ブロック共重合体組成物が10質量%以上であると靱性が向上するため、応力が加わっても割れ難い成形体を得ることができる。
また、ブロック共重合体組成物が55質量%以下、特に25質量%以下であると、得られる押出シートの等方性が良好となり、縦方向にシートが裂けにくくなり、いわゆる耐亀裂性が向上する傾向にある。
上述した組成範囲の樹脂組成物とすることで、耐衝撃性と剛性のバランスに優れた樹脂組成物を得ることができる。
【0079】
本実施形態の樹脂組成物の製造方法はなんら制限されないが、とりわけTダイを備えたシート押出機によるシート成形を行うことにより、本実施形態のブロック共重合体組成物の配合効果が発揮される。
Tダイシート成形は、各種原料を各々の専用ホッパーより投入し、押出機内で溶融混練されながら、Tダイより出てきた溶融樹脂をロールで巻き取りながら冷却し、シートを製造する、いわゆる予備混練を経ずに直接溶融成形を行う「ドライブレンド成形」が一般的である。
ここで、「ドライブレンド」とは、重合体(a)とブロック共重合体(b)との双方が溶融される前の固体の状態、例えば粒子状のペレットの状態において、混合した状態にすることをいう。
限られた押出機長の中で効率良くSBSエラストマーを分散させるためには、スチレン成分比率の高い重合体(a)と予めブレンドされたブロック共重合体(b)との樹脂組成物を改質材として使用することにより、予備ブレンドを経ずにSBSエラストマーを単独で投入して得られるシートよりも、極めて高い改質効果が得られる。
以下にゴム変性ビニル芳香族重合体(c)と、ビニル芳香族系重合体(d)について説明する。
【0080】
(ゴム変性ビニル芳香族重合体(c))
ゴム変性ビニル芳香族重合体(c)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)として知られているものが好適に使用できる。
【0081】
(ゴム変性ビニル芳香族重合体(c)の製造方法)
ゴム変性ビニル芳香族重合体(c)は、工業的にはラジカル重合法を用いて、ゴム状重合体の存在下で、連続塊状重合法、懸濁重合法、あるいは乳化重合法により製造することができる。
ゴム変性ビニル芳香族重合体(c)の原料として用いられる前記ゴム状重合体としては、ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン単量体を主体とした単独重合体、共重合体、及び/又はこれらの水素添加物が挙げられ、その他、スチレン等のビニル芳香族単量体との共重合ゴムも好ましい例として挙げられる。
【0082】
(ゴム変性ビニル芳香族重合体(c)中のグラフトゴム粒子)
ゴム変性ビニル芳香族重合体(c)は、グラフトゴム粒子を含有している。
このグラフトゴム粒子は前述のゴム状重合体にビニル芳香族単量体がグラフト重合したもので、重合系内を撹拌することで相反転が起き、撹拌によるせん断によりグラフトゴムの粒子が形成する。グラフトゴムの平均粒子径については、溶液粘度と撹拌速度を制御することにより、目的の平均粒子径とすることができる。
【0083】
ゴム変性ビニル芳香族重合体(c)に含まれるゴム状重合体由来の共役ジエン単量体単位は3〜20質量%の範囲が一般的でかつ好ましい。
ゴム状重合体由来の共役ジエン単量体量は、熱分解ガスクロマトグラフを用いて既知サンプルを用いた検量線法により定量することができる。
また、ゴム変性ビニル芳香族重合体(c)に含まれるグラフトゴム粒子の平均粒子径は1.0μm〜5.0μmの範囲であることが一般的であり、かつ好ましく、より好ましくは2.0μm〜5.0μmであり、さらに好ましくは2.2μm〜4.0μmの範囲である。前記平均粒子径の範囲のゴム変性ビニル芳香族重合体(c)を用いることで、物性バランスの良好なシート製品を得ることができる。
【0084】
グラフトゴム粒子の平均粒子径の測定方法を下記に示す。
先ず、ゴム変性ビニル芳香族重合体(c)を、四酸化オスミウムで染色し、それから厚み75nmの超薄切片を作製し、透過型電子顕微鏡を用いて撮影し、倍率1万倍の写真を得る。
ゴム変性ビニル芳香族重合体(c)単体ではなく、ブロック共重合体組成物とブレンドされた樹脂組成物であっても、グラフトゴム粒子は容易に判別できるため、ブロック共重合体組成物がブレンドされた樹脂組成物を用いて測定してもよい。
【0085】
次に、写真中、黒く染色されたゴム粒子径を測定して、次式により算出する。
(平均粒子径)=ΣnDi/ΣnDi ・・・長径Diのゴム粒子の個数がn
グラフトゴム粒子は、その内部にポリスチレンを内包した、いわゆるサラミ構造のものやコアシェル構造のものがある。
【0086】
(ゴム変性ビニル芳香族重合体(c)のメルトフローレート)
ゴム変性ビニル芳香族重合体(c)のメルトフローレート(ISO1133 温度200℃、荷重5kgf)は、好ましくは0.1〜50g/10分であり、より好ましくは0.5〜20g/10分であり、さらに好ましくは1〜10g/10分である。
ゴム変性ビニル芳香族重合体(c)のメルトフローレートが上記範囲内であることにより、本実施形態の樹脂組成物、及び成形体の成形外観と耐衝撃性が改善される。
【0087】
(ビニル芳香族系重合体(d))
本実施形態の樹脂組成物に用いられるビニル芳香族系重合体(d)は、ビニル芳香族単量体のみからなる重合体、もしくは、ビニル芳香族単量体と共重合可能な単量体とを共重合して得られるものである。
ビニル芳香族単量体としては、分子内に芳香環とビニル基とを有するものであればよく、特に限定されるものではないが、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、1,1−ジフェニルエチレン等が挙げられる。
特にスチレンが一般的であり好ましい。
これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、本実施形態の樹脂組成物において、ビニル芳香族系重合体(d)と重合体(a)は同一であっても異なっていてもよい。とりわけ重合体(a)がビニル芳香族単量体からなる単独重合体の場合、同一であってもよい。かかる場合、本実施形態のブロック共重合体組成物の構成成分として(b)成分と相容しているものを重合体(a)、それ以外をビニル芳香族系重合体(d)として両者を区別することができる。
【0088】
ビニル芳香族単量体と共重合可能な単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物、アクリロニトリル、無水マレイン酸等が例として挙げられる。
なお、(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物のアルキル基の炭素数は1〜20が一般的であり好ましい。例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、ドデシル、ラウリル、パルミチル、ステアリル、シクロヘキシル等が挙げられる。特に、炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。
【0089】
ビニル芳香族系重合体として最も汎用的なのは、ラジカル重合により工業的に製造されるポリスチレン(GPPS)であり、本実施形態の樹脂組成物に好適に使用することができる。また、スチレン−αメチルスチレン共重合樹脂、スチレン−ブチルアクリレート共重合樹脂、スチレン−メチルメタクリレート共重合樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合樹脂等も使用可能である。
【0090】
(ビニル芳香族系重合体(d)のメルトフローレート)
ビニル芳香族系重合体(d)のメルトフローレート(ISO1133 温度200℃、荷重5kgf)は、好ましくは0.1〜50g/10分であり、より好ましくは0.5〜20g/10分であり、さらに好ましくは1〜10g/10分である。
ビニル芳香族系重合体(d)のメルトフローレートが上記範囲内であることにより、本実施形態の樹脂組成物並びにそれらから得られる成形体は、成形外観と耐衝撃性が改善される。
【0091】
(その他の重合体、添加剤等)
本実施形態の樹脂組成物には、必要に応じてその他の重合体や添加剤等を配合することができる。
例えば、加熱による各成分の混練や成形加工時の熱劣化や酸化劣化を抑制するための酸化防止剤等の熱安定剤が好ましく添加使用できる。
これらの熱安定剤の含有量は、樹脂組成物の総量に対して、好ましくは0.1〜1.5質量%である。添加剤の含有量が上記範囲内であることにより添加剤の効果が十分に発揮される。
【0092】
添加剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、2−t−ブチル−6(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート等の熱安定剤、n−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニルプロピオネートや、テトラキス[3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4‘−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]ペンタエリトリトール等の酸化防止剤が挙げられ、好ましく使用することができる。
【0093】
その他の添加剤としては、熱可塑性樹脂に一般的に用いられるものであれば、特に制限されるものではないが、例えば、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ、炭酸カルシウム、タルク等の無機充填剤;有機繊維、クマロンインデン樹脂等の有機充填剤;有機パーオキサイド、無機パーオキサイド等の架橋剤;酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄等の無機顔料;銅フタロシアニン等の有機顔料;青,赤,紫,黄等の有機染料;難燃剤;紫外線吸収剤;帯電防止剤;脂肪酸、脂肪酸アマイド、脂肪酸エステル、脂肪酸金属塩等の滑剤;ミネラルオイル、シリコンオイル等のオイル類等が挙げられる。
これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0094】
〔成形体〕
本実施形態の成形体は、上記樹脂組成物から任意の成形方法により成形することにより得られる。
成形体の態様としては、特に限定されないが、例えば、Tダイを備えた押出機を使用することで連続的に押出成形されるシートが挙げられ、当該シートの場合、単層シートでも積層シートでもよく、更に、ペレットやストランド等の成形材料を成形加工して得られる深絞容器でもよい。
特に、本実施形態の樹脂組成物は、Tダイを備えた押出機から連続的に押出成形されるシートや、当該シートから真空成形や圧縮成形等の二次成形を経て得られる深絞成形品に最も適している。深絞成形品としては、丼状の食品容器や食品用以外の包装容器等が挙げられる。
樹脂組成物を製造する工程と成形体を製造する工程が連続であっても、不連続でもよい。
【0095】
また、シート押出成形では容器等を成形した後に発生するシートの端材を粉砕して原料供給側に戻し、再度、新しい成形材料とブレンドして再利用する場合がある。
例えば、汎用ポリスチレン(GPPS)は、延伸することで強度を付与できる特性を生かして、延伸装置の付帯した押出機により、延伸ポリスチレン(OPSとも言う)に加工され、お弁当の蓋材等に多く利用されている。
蓋材に加工される過程で、シートの端材が必ず発生するが、この端材に少量のゴム変性ポリスチレン(HIPS)と、本実施形態のブロック共重合体組成物を配合することにより、未使用のゴム変性ポリスチレン単体に近い力学特性を有する樹脂組成物を得ることができる。
またさらに、発泡スチロールは汎用ポリスチレンを原料に加工した包装容器であるが、使用済みの発泡スチロールの有効利用としても、上記と同様に応用可能であり、樹脂製品の廃棄物量の削減に貢献し、資源の有効活用の観点でも極めて有用である。
【0096】
〔成形体の製造方法〕
本実施形態の成形体は、先ず、本実施形態の樹脂組成物を製造し、当該樹脂組成物を成形することにより得られる。
本実施形態の樹脂組成物は、従来公知の混練・混合方法によって製造できる。
例えば、ロール、ミキサー、ニーダー、バンバリー、押出機(単軸あるいは二軸等)等の公知の混練機を用いた溶融混練方法、成形体の成形時に複数の材料をドライブレンドし、成形機内の溶融過程で混合させる方法、各成分を有機溶剤等に溶解した溶液状態で攪拌・混合した後、溶剤を加熱や減圧等の任意の方法により除去して混合物を得る方法、あるいは、上記の組み合わせ、例えば、一部の成分を有機溶剤等に溶解した溶液状態で混合・攪拌した後、溶剤を加熱や減圧等の任意の方法により除去して部分的に混合物を得た後に、前述の混練機を用いた溶融混練法や成形機内の溶融過程で混合させる方法を併用すること等が挙げられる。
【0097】
具体例を挙げれば、予め混合しておいた重合体(a)とブロック共重合体(b)からなるブロック共重合体組成物と、ゴム変性ビニル芳香族重合体(c)と必要に応じてビニル芳香族系重合体(d)の各々の原料を専用のホッパーへ投入し、加熱筒とTダイと成形ロールを備えたシート押出機を用いて、ドライブレンドによる押出成形により、溶融過程を経て均質に混合された樹脂組成物からなるシート形状の成形体が得られる。
この場合、重合体(a)とブロック共重合体(b)を用いてブロック共重合体組成物を予め得るための混合方法はなんら限定されない。加熱式の混合機を用いて溶融混合させる「溶融混練ブレンド」法の他、重合反応直後の重合体溶液の状態で混合してから脱溶剤して成形材料に仕上げる「溶液ブレンド」法も好適に採用するこができる。
【0098】
本実施形態のブロック共重合体組成物、及びブロック共重合体組成物からなる成形材料は、「溶融混練ブレンド」でも「溶液ブレンド」でもいずれも好適に利用可能であるが、熱履歴が少ない故に品位の観点から、溶液ブレンドで製造することがより好ましい。
溶液ブレンドによる製造方法は、公知の技術を使用することができる。例えば、特開2008−231371号に記載の方法が挙げられる。
【0099】
上述のようにして本実施形態の樹脂組成物を得た後、当該樹脂組成物を成形することにより、本実施形態の成形体が得られる。
本実施形態の成形体は公知の成形方法で製造することが可能である。成形方法としては、以下に限定されるものではないが、例えば、射出成形、Tダイシート押出成形、異形押出成形、ブロー成形、射出ブロー成形、インフレーション成形等が挙げられる。
更には上記の成形体に二次成形による再加工を行うことも可能である。代表的なものに、Tダイ押出成形で得られたシートを再加熱し、プレス成形や真空成形を行うことにより、深絞りの容器を成形すること等が挙げられる。
【0100】
本実施形態のブロック共重合体組成物を改質材として配合した樹脂組成物は、任意の成形体に製造することが可能であるが、特に、本実施形態の本質である、優れた改質効果を発揮できる観点で、予備混練を経ずに直接溶融成形を行う「ドライブレンド成形」によるTダイシート押出成形により得られるシート状の成形体、並びに当該シート状成形体の二次成形により得られる深絞り容器形状の成形体に好適に使用でき、本発明の効果が最も発揮される。
本実施形態の成形体としてシートを成形した場合、当該シートの厚みは特に制限はないが、好ましくは0.1mm〜4mm、より好ましくは0.4mm〜2.5mm、さらに好ましくは1mm〜2mmである。
シートは単層、積層のいずれでもよい。
なお積層とは、本実施形態の樹脂組成物から構成される層を少なくとも1種以上含む2種以上の樹脂組成物からなる積層シートである。
シートの成形方法はなんら限定されないが、加熱筒とTダイとロール成形機を備えたシート押出機で成形する方法が一般的であり、好ましい。
【実施例】
【0101】
以下、本発明について、具体的な実施例及び比較例を挙げて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0102】
ブロック共重合体組成物の材料として用いる、重合体(a)、ブロック共重合体(b)、ゴム変性ビニル芳香族重合体(c)、ビニル芳香族系重合体(d)について、以下に説明する。
【0103】
〔ブロック共重合体組成物の材料〕
(重合体(a))
<重合体(a)−1>
窒素ガス雰囲気下において、スチレン49.25質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液に、n−ブチルリチウムを0.067質量部添加し、80℃で5分間重合した後、1.3−ブタジエン1.5質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液を添加し、80℃で5分間重合した。
続いて、スチレン49.25質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液を添加し、80℃で10分間重合した後、テトラグルシル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンを、n−ブチルリチウムに対して0.5当量添加し、80℃で5分間反応させた。
【0104】
その後、重合を完全に停止するため、反応器中にエタノールをn−ブチルリチウムに対して0.6当量添加し、ブロック共重合体100質量部に対して、熱安定剤として2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレートを0.2質量部添加し、重合体(a)−1が25質量%溶解したシクロヘキサン溶液を得た。
このようにして得られた重合体(a)−1は、スチレン含有量98.5質量%、ブタジエン含有量1.5質量%の、S1−B1−S2構造、及びこれがカップリングされて生成した(S1−B1−S2)×3.5構造との混合物であり、2つのピーク分子量を有するブロック共重合体であった。
【0105】
<重合体(a)−2>
窒素ガス雰囲気下において、スチレン49.25質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液に、n−ブチルリチウムを0.067質量部添加し、75℃で5分間重合した後、1.3−ブタジエン1.5質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液を添加し、75℃で5分間重合した。
続いて、スチレン49.25質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液を添加し、65℃で10分間重合した。
【0106】
その後、重合を完全に停止するため、反応器中にエタノールをn−ブチルリチウムに対して1.0当量添加し、重合体100質量部に対して、熱安定剤として2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレートを0.2質量部添加し、重合体(a)−2が25質量%溶解したシクロヘキサン溶液を得た。
このようにして得られた重合体(a)−2は、スチレン含有量98.5質量%、ブタジエン含有量1.5質量%のS1−B1−S2構造であり、1つのピーク分子量を有するブロック共重合体であった。
【0107】
<重合体(a)−3>
窒素ガス雰囲気下において、スチレン47質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液に、n−ブチルリチウムを0.070質量部とテトラメチルメチレンジアミン0.015質量部を添加し、80℃で10分間重合した後、1.3−ブタジエン4質量部とスチレン2質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液を添加し、80℃で10分間重合した。
続いて、スチレン47質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液を添加し、80℃で10分間重合した。
【0108】
その後、重合を完全に停止するため、反応器中にエタノールをn−ブチルリチウムに対して1.0当量添加し、重合体100質量部に対して、熱安定剤として2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレートを0.2質量部添加し、重合体(a)−3が25質量%溶解したシクロヘキサン溶液を得た。
このようにして得られた重合体(a)−3は、スチレン含有量96.0質量%、ブタジエン含有量4.0質量%のS1−B/S1−S2構造であり、1つのピーク分子量を有するブロック共重合体であった。
【0109】
<重合体(a)−4>
窒素ガス雰囲気下において、スチレン46.5質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液に、n−ブチルリチウムを0.068質量部添加し、80℃で5分間重合した後、1.3−ブタジエン7質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液を添加し、80℃で5分間重合した。
続いて、スチレン46.5質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液を添加し、80℃で10分間重合した後、テトラグルシル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンを、n−ブチルリチウムに対して0.5当量添加し、80℃で5分間反応させた。
【0110】
その後、重合を完全に停止するため、反応器中にエタノールをn−ブチルリチウムに対して0.6当量添加し、ブロック共重合体100質量部に対して、熱安定剤として2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレートを0.2質量部添加し、重合体(a)−4が25質量%溶解したシクロヘキサン溶液を得た。
このようにして得られた重合体(a)−4は、スチレン含有量93質量%、ブタジエン含有量7質量%の、S1−B1−S2構造、及びこれがカップリングされて生成した(S1−B1−S2)×3.5構造との混合物であり、2つのピーク分子量を有するブロック共重合体であった。
【0111】
<重合体(a)−5>
窒素ガス雰囲気下において、スチレン45質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液に、n−ブチルリチウムを0.069質量部添加し、80℃で5分間重合した後、1.3−ブタジエン10質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液を添加し、80℃で5分間重合した。
続いて、スチレン45質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液を添加し、80℃で10分間重合した。
【0112】
その後、重合を完全に停止するため、反応器中にエタノールをn−ブチルリチウムに対して1.0当量添加し、重合体100質量部に対して、熱安定剤として2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレートを0.2質量部添加し、重合体(a)−5が25質量%溶解したシクロヘキサン溶液を得た。
このようにして得られた重合体(a)−5は、スチレン含有量90質量%、ブタジエン含有量10質量%のS1−B1−S2構造であり、1つのピーク分子量を有するブロック共重合体であった。
【0113】
<重合(a)−6>
スチレン含有量100質量%であるスチレンの単独重合体として、PSジャパン株式会社より入手可能な、PSJ−ポリスチレン685を使用した。
【0114】
下記〔表1〕に、前述の重合体(a)−1〜6の構造、組成等を示した。
【0115】
【表1】
【0116】
(ブロック共重合体(b))
<ブロック共重合体(b)−1>
窒素ガス雰囲気下において、スチレン17質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液に、n−ブチルリチウムを0.110質量部とテトラメチルメチレンジアミン0.0055質量部を添加し、80℃で5分間重合した後、1.3−ブタジエン17質量部とスチレン3質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液を添加し、80℃で10分間重合した。
続いて、1.3−ブタジエン8質量部と25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液を添加し、80℃で5分間重合した。
続いて、1.3−ブタジエン35質量部とスチレン6質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液を添加し、80℃で10分間重合した。
続いて、スチレン14質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液を添加し、80℃で10分間重合した。
【0117】
その後、重合を完全に停止するため、反応器中にエタノールをn−ブチルリチウムに対して1.0当量添加し、重合体100質量部に対して、熱安定剤として2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレートを0.4質量部添加し、重合体(b)−1が25質量%溶解したシクロヘキサン溶液を得た。
このようにして得られたブロック共重合体(b)−1は、スチレン含有量40質量%、ブタジエン含有量60質量%のS1−B/S1−B1−B/S2−S2構造であり、1つのピーク分子量を有するブロック共重合体であった。
【0118】
<ブロック共重合体(b)−2>
窒素ガス雰囲気下において、スチレン8.5質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液に、n−ブチルリチウムを0.118質量部とテトラメチルメチレンジアミン0.0059質量部を添加し、80℃で5分間重合した後、1.3−ブタジエン72質量部とスチレン11.5質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液を添加し、80℃で5分間重合した。
続いて、スチレン8質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液を添加し、80℃で10分間重合した。
【0119】
その後、重合を完全に停止するため、反応器中にエタノールをn−ブチルリチウムに対して1.0当量添加し、重合体100質量部に対して、熱安定剤として2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレートを0.4質量部添加し、重合体(b)−2が25質量%溶解したシクロヘキサン溶液を得た。
このようにして得られたブロック共重合体(b)−2は、スチレン含有量28質量%、ブタジエン含有量72質量%のS1−B/S1−S2構造であり、1つのピーク分子量を有するブロック共重合体であった。
【0120】
<ブロック共重合体(b)−3>
窒素ガス雰囲気下において、スチレン10.7質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液に、n−ブチルリチウムを0.112質量部とテトラメチルメチレンジアミン0.0056質量部を添加し、80℃で5分間重合した後、1.3−ブタジエン70質量部とスチレン10.5質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液を添加し、80℃で5分間重合した。
続いて、スチレン8.8質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液を添加し、80℃で10分間重合した。
【0121】
その後、重合を完全に停止するため、反応器中にエタノールをn−ブチルリチウムに対して1.0当量添加し、重合体100質量部に対して、熱安定剤として2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレートを0.4質量部添加し、重合体(b)−3が25質量%溶解したシクロヘキサン溶液を得た。
このようにして得られたブロック共重合体(b)−3は、スチレン含有量30質量%、ブタジエン含有量70質量%のS1−B/S1−S2構造であり、1つのピーク分子量を有するブロック共重合体であった。
【0122】
<ブロック共重合体(b)−4>
窒素ガス雰囲気下において、スチレン2質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液に、n−ブチルリチウムを0.117質量部とテトラメチルメチレンジアミン0.0059質量部を添加し、80℃で5分間重合した後、1.3−ブタジエン90質量部とスチレン5質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液を添加し、80℃で5分間重合した。
続いて、スチレン3質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液を添加し、80℃で10分間重合した。
【0123】
その後、重合を完全に停止するため、反応器中にエタノールをn−ブチルリチウムに対して1.0当量添加し、重合体100質量部に対して、熱安定剤として2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレートを0.4質量部添加し、ブロック共重合体(b)−4が25質量%溶解したシクロヘキサン溶液を得た。
このようにして得られたブロック共重合体(b)−4は、スチレン含有量10質量%、ブタジエン含有量90質量%のS1−B/S1−S2構造であり、1つのピーク分子量を有するブロック共重合体であった。
【0124】
<ブロック共重合体(b)−5>
窒素ガス雰囲気下において、スチレン19質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液に、n−ブチルリチウムを0.116質量部添加し、80℃で5分間重合した後、1.3−ブタジエン61質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液を添加し、80℃で5分間重合した。
続いて、スチレン20質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液を添加し、80℃で10分間重合した。
【0125】
その後、重合を完全に停止するため、反応器中にエタノールをn−ブチルリチウムに対して1.0当量添加し、重合体100質量部に対して、熱安定剤として2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレートを0.4質量部添加し、ブロック共重合体(b)−5が25質量%溶解したシクロヘキサン溶液を得た。
このようにして得られたブロック共重合体(b)−5は、スチレン含有量39質量%、ブタジエン含有量61質量%のS1−B1−S2構造であり、1つのピーク分子量を有するブロック共重合体であった。
【0126】
<ブロック共重合体(b)−6>
窒素ガス雰囲気下において、スチレン10質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液に、テトラメチルエチレンジアミンを0.006質量部、n−ブチルリチウムを0.120質量部添加し、80℃で5分間重合した後、1.3−ブタジエン60質量部とスチレン30質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液を添加し、80℃で10分間重合した。
続いて、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンを1当量添加し、80℃で5分間反応させた。
【0127】
その後、重合を完全に停止するため、反応器中にエタノールをn−ブチルリチウムに対して0.5当量添加し、重合体100質量部に対して、熱安定剤として2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレートを0.4質量部添加し、重合体(b)−6が25質量%溶解したシクロヘキサン溶液を得た。
このようにして得られたブロック共重合体(b)−6は、スチレン含有量40質量%、ブタジエン含有量60質量%のS1−B/S1構造、及びこれがカップリングされ生成した(S1−B/S1)×3であり、2つのピーク分子量を有するブロック共重合体であった。
【0128】
下記〔表2〕に、前述の重合体(b)−1〜6の構造、組成等を示す。
【0129】
【表2】
【0130】
(ゴム変性ビニル芳香族重合体(c))
ゴム変性ビニル芳香族重合体(c)として、ポリブタジエンゴムで変性したポリスチレンの重合体である耐衝撃性ポリスチレンを選択し、PSジャパン(株)のPSJ−ポリスチレン475Dを使用した。
メルトフローレートは2.0g/10分であった。
【0131】
(ビニル芳香族系重合体(d))
<ビニル芳香族系重合体(d)−1>
ビニル芳香族系重合体(d)−1として、スチレンの単独重合体であるポリスチレンである、PSジャパン(株)のPSJ−ポリスチレン685を使用した。
メルトフローレートは2.1g/10分であった。
【0132】
<ビニル芳香族系重合体(d)−2>
ビニル芳香族系重合体(d)−2として、食料品店やコンビニエンスストアで販売されているOPS(延伸ポリスチレン)製の弁当の蓋材を製造している加工場で発生したOPS端材を回収し、粉砕して実施例の原料に使用した。
メルトフローレートは2.8g/分であった。
【0133】
〔ブロック共重合体組成物の製造〕
溶液ブレンドと溶融混練ブレンドの2通りを実施して、ブロック共重合体組成物を製造した。
溶液ブレンドにおいては、重合体(a)−1〜5の各々の25質量%シクロヘキサン溶液と、ブロック共重合体(b)−1〜5の各々の25質量%シクロヘキサン溶液を、所定の比率で溶液ブレンドし、加熱と真空減圧により脱溶剤を行い、押出機を用いて、平均粒子径2.5mmの球状ペレット形状の成形材料を得た。
また、比較例4〜6用として、溶液ブレンドを行わずに、単独仕上げとして、重合体(a)、ブロック共重合体(b)各々を単独で脱溶剤を行い、単独でも同様なペレット状の成形材料に仕上げた。
いずれのペレット形状の成形材料も残留シクロヘキサン量が0.3質量%未満であることをガスクロマトグラフにより確認した。
【0134】
溶融混練ブレンドによるブロック共重合体組成物は、前述した重合体(a)、ブロック共重合体(b)の各々を単独でペレット状に仕上げた成形材料、及び製造例(a)−6のPSJ−ポリスチレン685を用いて、溶融混練ブレンドを実施した。
溶融混練は、スクリュー径40mm、L/D=28の単軸押出機を用い、重合体(a)とブロック共重合体(b)を用い、シリンダー温度210℃にて加熱溶融ブレンドを行い、ストランドカットにより、平均長径3mm、平均短径2mmの円柱ペレット形状の成形材料に仕上げた。
【0135】
ブロック共重合体組成物の組成と配合比率、ブレンド方法について下記〔表3〕に示す。
【0136】
〔分析値の測定方法〕
なお、前記〔表1〕に示す重合体(a)、前記〔表2〕に示すブロック共重合体(b)、及び下記〔表3〕に示すブロック共重合体組成物、の各々の組成構造に由来する分析値は、下記の方法に従い測定した。
【0137】
((1)ビニル芳香族単量体(スチレン)の含有量)
ビニル芳香族単量体の含有量は、UV計(紫外線吸光光度計)により測定した。
具体的には、測定対象である、重合体(a)、ブロック共重合体(b)、ブロック共重合体組成物が固体であれば、そのまま分析に使用した。
シクロヘキサン等に溶解した重合体溶液の場合は、重合体溶液を約1mL採取し、アルミホイル上に垂らして、ドラフト内で風乾し、ある程度溶剤を除去できたところで、更に防爆型の真空乾燥機にて、減圧下80℃・2時間乾燥してポリマーの固体を得た。
次に、測定対象の重合体を約30mg(0.1mg単位まで正確に秤量)をクロロホルム100mLに溶解させ、そのポリマー溶液を石英セルに満たして分析装置にセットし、これに紫外線波長260〜290nmを走査させ、得られた吸光ピーク高さの値により検量線法を用いて求めた。
なお、ビニル芳香族単量体がスチレンの場合、ピーク波長は269.2nmに現れた。
【0138】
((2)共役ジエン単量体(ブタジエン)含有量)
重合体(a)、ブロック共重合体(b)、ブロック共重合体組成物の共役ジエン単量体(ブタジエン)含有量は、上記で得られたビニル芳香族単量体単位の質量%を元に、100質量%から差し引いて算出した。
【0139】
((3)ビニル芳香族単量体(スチレン)の二量体と三量体の総量(質量%)の定量方法)
測定対象であるブロック共重合体組成物を約2g採取し、0.1mg単位まで正確に秤量した。
メスシリンダーで正確にメスアップしたメチルエチルケトン20mLに溶解させた後、更に標準物質として、トリフェニルメタンを使用し、トリフェニルメタンの濃度既知のメタノール溶液5mLを加えた。
測定条件は以下の通りとした。
機器 :島津製製作所製ガスクロマトグラフィー GC−17Apf
カラム :DB−1(100%ジメチルポリシロキサン) 30m
膜厚0.1μm、0.25mmφ
カラム温度 :100℃で2分保持→5℃/分で260℃まで昇温→260℃で
5分保持
注入口温度 :200℃
検出器温度 :200℃
キャリアガス :窒素
内部標準物質のトリフェニルメタンは、ビニル芳香族単量体がスチレンの場合、スチレン二量体と三量体の間のリテンションタイムにピークとして現れた。
内部標準物質の濃度を基に、ピークエリアの面積を求めることにより、ビニル芳香族単量体の二量体及び三量体の濃度を算出した。
【0140】
((4)ヘイズ)
ヘイズ(Haze)は曇価ともいう。
試験規格はISO14782に定められている。
ヘイズ測定用として、2mm厚み試験片を用い、これはブロック共重合体組成物を射出成形法により成形した。
射出成形は、日精樹脂工業製射出成形機(型式:FE120)を用い、シリンダー温度を210℃、金型温度を40℃に設定し、長辺90mm、短辺50mm、厚み2mmの鏡面状平板試験片を射出成形し、23℃環境下に24時間静置した後、試験規格ISO14782に準じ、スガ試験機製ヘイズコンピューターHZ−1にてヘイズを測定した。
なお、ISO14782には、『この試験方法は、この方法によって測定したヘイズ値40%以下の材料に適用できる』、と記載があるが、本実施例においてはヘイズ値40%を超えても同様の方法で測定した。
【0141】
((5)GPCによるピーク分子量、分子量ピークの数の測定)
ブロック共重合体組成物、重合体(a)、ブロック共重合体(b)のピーク分子量、及び分子量ピークの数の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC装置)により、下記測定条件で測定した。
GPC装置:東ソー社製 HLC−8220
カラム :東ソー社製 SuperMultiporeHZ−Mを2本直列に接続
カラム温度:35℃
溶媒 :テトラヒドロフラン
送液量 :0.2mL/分
検出器 :屈折計(RI)
【0142】
なお、溶媒であるテトラヒドロフランに、分子量測定を行う目的の重合体50mgを振とう器等を用いて完全に溶解させ、クラボウ社製のディスクフィルターを用いてろ過し、ゲル等の不溶分を除去してGPC測定用サンプルを得た。
【0143】
具体的な測定法を以下に示す。
まず、分子量が各々異なる分子量既知の、GPC用単分散標準ポリスチレンを9点用いて検量線を作成した。
最も高分子量の標準ポリスチレンの重量平均分子量Mwは1090000、最も低分子量のものは1050のものを使用した。
分子量測定の対象である重合体(a)、ブロック共重合体(b)を用いて上記の要領で測定用サンプルを調整した。
【0144】
カラムが収納されている槽内温度が一定になったことを確認した後、溶液サンプルを注入し、測定を開始した。
測定終了後、得られた分子量分布曲線の統計処理を行い、重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnを算出した。
分子量分布は、得られた重量平均分子量Mwを数平均分子量Mnで除した値とした。また、分子量ピーク数は、上記分子量分布曲線の形状から判断した。
【0145】
((6)重合体ブロック(S)率)
「重合体ブロック(S)率」とは、重合体(a)、ブロック共重合体(b)において、重合体ブロック(S)を構成しているビニル芳香族単量体単位の割合(質量%)である。
測定手順は下記の通りである。
まず、前述の通りUV計により、重合体に含まれる全てのビニル芳香族単量体(スチレン)の含有量を算出する。
次に、重合体ブロック(S)を構成しているスチレン含有量を求める。具体的には、正確に秤量した重合体約50mgを約10mLのクロロホルムに溶解した後、オスミウム酸溶液を加えて共役ジエン単量体単位部分を分解し、分解後のポリマー溶液を約200mLのメタノール中に静かに滴下した。これによりメタノールに溶解しない重合体ブロックスチレン成分を沈殿させた。この沈殿した成分が重合体ブロック(S)であり、重合体ブロック(S)を形成していないスチレン単量体や、重合度の低いスチレンは、メタノール/クロロホルム混合溶液に溶解した。ポリマー沈殿分をろ過し、真空乾燥後、残渣としての重合体ブロック(S)の質量を秤量することにより、重合体ブロック(S)量の値を得た。
重合体ブロック(S)を構成しているビニル単量体の割合は、ブロックスチレン量を全スチレン量で除した値とした。
【0146】
((7)動的粘弾性のtanδピーク温度)
動的粘弾性は、試験片として幅5mm、長さ50mm、厚み2mmの短冊片を圧縮成形にて作製した。
測定は、レオロジー社製DVE−V4FTレオスペクトラーを用い、周波数35Hz、−110℃よりtanδピーク温度が確認できる常温までの間、昇温速度3℃/分にて、引張モードにて測定した。
冷却は液体窒素を使用した。
また、樹脂組成物又は成形体から測定する場合は、以下のように試験片を作製した。
樹脂組成物又は成形体約10gをビーカーに採取し、トルエン200mLを注ぎ、室温にて撹拌溶解させ、完全に溶解した後、溶液を遠沈管に移し、遠心分離機を用いて10℃以下に冷却しながら20000rpmにて30分間遠心分離を行った。
遠心分離により、ゴム変性ビニル芳香族重合体(c)由来のグラフトゴム粒子は沈降し、可溶分と分離された。
可溶分をアルミホイル上に垂らして、ドラフト内で風乾し、ある程度溶剤であるトルエンを除去できたところで、更に防爆型の真空乾燥機にて、減圧下80℃・2時間乾燥してポリマーの固体を得る。得られたポリマー固体をプレス成形により幅5mm、長さ50mm、厚み2mmの短冊片を圧縮成形にて試験片を作製し、上記同様の条件で測定した。
【0147】
((8)ブロック共重合体組成物のメルトフローレート)
ブロック共重合体組成物のメルトフローレートは、ISO1133に準拠し、温度200℃、荷重5kgfにて、ブロック共重合体組成物のペレットを用いて測定した。
【0148】
〔樹脂組成物のシート成形〕
実施例及び比較例の樹脂組成物を用いて、小型のラボシートの押出成形を実施した。
シート成形は、株式会社池貝製シート押出成形機(単軸スクリュー、ダルメージ混練付き、スクリュー径40mm、L/D=36、Tダイ幅400mm、鏡面ロール)を用いて、シリンダー温度210℃、ロール温度60℃にて、厚み0.4mm(耐亀裂性評価用の容器成形時のみ1.0mm)のシートを作製した。
両端は各々約30mm程度トリミングし、幅250mmの原反シートを得た。
【0149】
〔透過型電子顕微鏡(TEM像)による観察〕
TEM像は、ブロック共重合体組成物をいったん200℃に加熱して2mm厚みの板を作製し、その板状のブロック共重合体組成物を、5%オスミウム酸水溶液に24時間常温にて浸漬して染色を行った。染色後のブロック共重合体組成物から水分を除去して十分乾燥させた後、液体窒素で凍結しながらクライオミクロトームを用いて厚み約70nmの超薄切片を作製し、透過型電子顕微鏡により観察を行った。
オスミウム酸が反応し易い共役ジエン単量体単位部が黒っぽく濃色部分として観察された。
図1に、後述する〔実施例4〕のTEM画像を示す。
図1中、およそ0.5μm程度以下の分散相を形成している淡色部分が重合体(a)、連続相を形成している濃色部分がブロック重合体(b)である。
【0150】
〔樹脂組成物の特性〕
<耐衝撃性(衝撃強度)>
耐衝撃性の指標として、ダート衝撃値を適用し、ISO7765−1:1988に準拠し、IFW衝撃試験機(Instrumented Falling Weight Impact Tester;ROSAND PRECISION社製)により衝撃強度を測定した。
落錘は、打撃面が直径38.0mmの半球状のものを用いた。
単位はJとした。
【0151】
<引張試験による引張弾性率、TD/MD比、引張破断伸び>
上述した〔樹脂組成物のシート成形〕に従いシートを成形後、原反シートを23℃・湿度50%の恒温室内に24時間養生した。
養生後、上記シート成形で得られた厚み0.4mm原反シートから、ダンベル社製のスーパーダンベルカッターを用いて、JIS K7113に準拠したJIS1号ダンベルを打ち抜いて引張試験片を作製した
引張試験は、引き続き同じ温度湿度環境下にてミネベア株式会社製TG−5kNを用いて実施した。
シート押出し方向に対して並行に打ち抜いたダンベルをMD、垂直に打ち抜いたダンベルをTDとした。
ロードセルとダンベルを挟むチャックを装着し、チャック間距離115mm、引張速度50mm/分で、上記のダンベルにてMD、TD各々についてn=5で測定し、平均値を算出し、測定結果とした。
引張試験より得られる応力歪曲線において、引張初期の微小歪に対する応力の立ち上がりの接線を引張弾性率と定義し、MDにおける引張弾性率とTDにおける引張弾性率の比を求めた。等方性に優れてMDとTDの引張弾性率の値が近いほどその比は1に近くなり、一方、異方性が大きくなると、MDとTDの引張弾性率の値が乖離し、その比は1から離れていく。
等方性=(TDの引張弾性率)÷(MDの引張弾性率)
併せて、MD方向については、破断するまで歪を与え続け、破断時の歪を計測した。破断時のチャック間距離(単位mm)を以て引張破断伸びを算出した。
引張破断伸び=(破断時のチャック間距離−115)/115(単位:%)
なお、ゴム変性ビニル芳香族重合体(c)のみの場合は、上述した耐衝撃性の値が0.73J以上、MDとTDの平均値が2000MPa以上、かつTDの引張弾性率が1800MPa以上、ゴム変性ビニル芳香族重合体(c)とビニル芳香族系重合体(d)の併用の場合は、上述した耐衝撃性の値が0.72J以上、MDとTDの平均値が1700MPa以上であれば、実用上十分な効果を有しているものとした。
【0152】
<耐熱老化性>
上記<引張試験による引張弾性率、TD/MD比、引張破断伸び>に示したJIS1号にてMD方向に打ち抜いたダンベルを、100℃に設定したギヤオーブンで72時間加熱した。
72時間経過後オーブンから取り出し、23℃・湿度50%に保たれた恒温室内で24時間養生を行った後に、上述した方法と同様の方法で引張試験を行い、加熱していない状態で測定した上述の引張弾性率の値、引張破断伸びの値と比較し、その変化率を下記式により算出した。
耐熱老化試験後の変化率〔%〕=〔(未加熱サンプル数値−加熱後サンプル数値)÷(未加熱サンプル数値)〕
【0153】
<耐亀裂性>
耐亀裂性の評価においては、前述した〔樹脂組成物のシート成形〕のシート押出成形により、1mm厚みの原反シートを作製した。
さらに真空成形により、容器上部の縁部が縦180mm、横130mm、容器底部は縦160mm、横110mm、深さ25mmの深絞形状の容器を成形した。
容器の最下部の縁の肉厚が0.6mmになるように成形条件を設定した。
容器の上下を返し、容器の縁が最下部にある状態、すなわち容器の口が開いている方を下にし、底面側を上にした状態で、容器の底面の角をISO曲げ試験の治具で10mm/分の一定速度で押し、最大応力を示した後に応力低下を示す座屈変形時まで試験を行った。
15回繰り返し測定し、座屈時までに容器の縁部分が割れない回数を計測し、下記の基準により評価を行った。
12回以上の場合:◎
10〜11回の場合:○
9回以下の場合:×
【0154】
〔実施例1〜14、比較例1〜6〕
上記〔表1〕に示す重合体(a)と、上記〔表2〕に示すブロック共重合体(b)を各々組み合わせて予めブレンドを行い、下記〔表3〕に記載した各種ブロック共重合体組成物を得た。
ブレンド方法について、「溶融混練ブレンド」と「溶液ブレンド」のいずれかで実施した。
なお、比較例4〜6においては、重合体(a)とブロック共重合体(b)のブレンドは行わず、各々単独で脱溶剤を実施し、ペレットに仕上げた。
また、実施例13と14においては、比較例4及び5に記載した単独でペレットに仕上げたもの、及びPSJ−ポリスチレン685を、下記〔表3〕に記載した配合比率で、40mm単軸押出機にてシリンダー温度210℃にて溶融混練ブレンドを行い、ブロック共重合体組成物からなるペレット形状の成形材料を得た。
実施例4と実施例14においては、用いた重合体も組成比も同じであり、ブレンド方法のみ異なっている。
【0155】
【表3】
【0156】
〔実施例15〜32、比較例7〜14〕
前記〔表3〕に示した各種のブロック共重合体組成物からなる成形材料を、ゴム変性ビニル芳香族重合体(c)と組み合わせ、下記〔表4〕に示す配合比率にてペレットによるドライブレンドを行い、Tダイ押出シート成形を行い、厚み0.4mmのシートを作製した。
また、比較例10〜14として、重合体(a)及びブロック共重合体(b)の各々の単独の重合体からなる成形材料を用いて(すなわち重合体(a)及びブロック共重合体(b)よりなるブロック共重合体組成物を用いずに)、同様にゴム変性ビニル芳香族重合体(c)と、下記〔表5〕に記載した配合比率にてペレットによるドライブレンドを行い、Tダイ押出シート成形を行い、厚み0.4mm及び厚み1.0mmのシートを得た。
【0157】
得られた樹脂組成物シートを用いて先に説明した各種特性評価を行った。
また、厚み1.0mmのシートより、真空成形により容器を成形し、耐亀裂性の評価を実施した。
配合組成と評価結果を、下記〔表4〕と〔表5〕に示す。
下記〔表5〕の方に、重合体(a)及びブロック共重合体(b)の各々の単独の重合体からなる成形材料を用いて評価を行った結果をまとめた。
【0158】
【表4】
【0159】
【表5】
【0160】
各々の、実施例21と比較例10の対比、実施例22と比較例11の対比、実施例29と比較例12の対比は、配合成分及び配合比率が全く同一であるが、重合体(a)とブロック共重合体(b)とを予めブレンドしたブロック共重合体組成物として使用したか、各々単独で仕上げて個別のペレットとして使用したか、の違いである。
予め重合体(a)とブロック共重合体(b)をブレンドしたブロック共重合体組成物を改質材として配合した方が、TD/MD比が1に近く異方性の少ない等方性のシートが得られており、かつ、耐熱老化試験後の変化率も小さく、耐亀裂性試験も良好であることが分かった。
【0161】
一方で、比較例7及び8は、重合体(a)のビニル芳香族単量体単位の結合量が本発明の範囲を外れており、その結果、衝撃強度は発現しているものの、耐熱老化試験後の物性低下が大きく、また耐亀裂性も悪いことが分かった。
また、比較例9は、シート成形性が悪く、シート表面の全面にフローマークが発生し、良品が得られなかったため、評価の対象から除外した。
【0162】
〔実施例33〜39、比較例15〜22〕
さらに、ビニル芳香族系重合体(d)を加えて、物性の検討を行った。
上記〔表3〕に示した各種ブロック共重合体組成物からなる成形材料を、ゴム変性ビニル芳香族重合体(c)、及びビニル芳香族系重合体(d)と組み合わせ、下記〔表6〕に示す配合比率にて、ペレットによるドライブレンドを行い、Tダイ押出シート成形を行い、厚み0.4mmのシートを作製した。
また、比較例18〜22として、重合体(a)及びブロック共重合体(b)の各々の単独の重合体からなる成形材料を用いて(すなわち重合体(a)及びブロック共重合体(b)ブロック共重合体組成物を用いずに)、同様にゴム変性ビニル芳香族重合体(c)、ビニル芳香族系重合体(d)と組み合わせ、下記〔表7〕に記載した配合比率にてペレットによるドライブレンドを行い、Tダイ押出シート成形を行い、厚み0.4mm及び厚み1.0mmのシートを得た。
【0163】
得られたシートを用いて先に説明した各種評価を行った。厚み1.0mmのシートより、真空成形により容器を成形し、耐亀裂性の評価を実施した。
配合組成と評価結果を下記〔表6〕及び〔表7〕に示す。
【0164】
【表6】
【0165】
【表7】
【0166】
各々の、実施例33と比較例18の対比、実施例34と比較例19の対比、実施例39と比較例20の対比は、配合成分及び配合比率が全く同一であるが、重合体(a)とブロック共重合体(b)を予めブレンドしたブロック共重合体組成物として使用したか、各々単独で仕上げて個別のペレットとして使用したかの違いである。
予め重合体(a)とブロック共重合体(b)をブレンドしたブロック共重合体組成物を改質材として配合した方がより高い衝撃強度を発現し、TD/MD比が1に近く異方性の小さい等方性の良好なシートが得られており、かつ、耐衝撃性も耐亀裂性試験も良好であることが示された。
また、比較例17はシート成形性が悪く、シート表面の全面にフローマークが発生し、良品が得られなかったため、正確な評価が出来なかった。
【0167】
〔実施例40、比較例23〕
更に、ビニル芳香族系重合体として、GPPS原料からOPSシートに加工されたシートの端材を粉砕したもの(ビニル芳香族系重合体((d)−2))を使用し、0.4mm厚みと1.0mm厚みのシートを作製し、同様な評価を実施した。
評価結果を下記〔表8〕に示す。
【0168】
【表8】
【0169】
実施例4のブロック共重合体組成物を用いた実施例40の樹脂組成物は、(c)成分として実施例に使用したPSJ−ポリスチレン475D単体に近似した力学特性が得られた。
一方で、比較例23の、重合体(a)とブロック共重合体(b)とを事前ブレンドを行わずに各々のペレットで配合したシートは、耐衝撃性に劣り、かつ異方性の大きいものとなったことが分かった。
【0170】
本出願は、2015年2月9日に日本国特許庁へ出願された日本特許出願(特願2015−023417号)、及び2015年2月9日に日本国特許庁へ出願された日本特許出願(特願2015−023199号)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0171】
本発明のブロック共重合体組成物は、各種飲料容器包装、各種食品包装容器、電子部品包装容器等の材料として、産業上の利用可能性を有する。
図1