(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
メタンガスとの接触により電気的特性が変化する、ガス検知層と、前記メタンガス以外のガスが前記ガス検知層に到達することを防ぐように、触媒を添加した多孔質体から構成され、かつ前記ガス検知層を覆うように形成される選択燃焼層と、前記ガス検知層を加熱可能なヒータ層とを有するセンサ素子を備え、前記ヒータ層により加熱された前記ガス検知層の抵抗値に基づいて前記メタンガスを検知可能とするように構成された薄膜式ガスセンサの検査方法であって、
初期状態の前記薄膜式ガスセンサにて測定された前記ガス検知層の抵抗値R及び前記メタンガスのガス濃度Xを用いて所定の指標値を算出し、予め設定された前記指標値の閾値を基準として前記薄膜式ガスセンサの良否を判定するために、前記メタンガスのガス濃度Xが2000ppmであるときに前記初期状態の薄膜式ガスセンサにて測定された前記ガス検知層の抵抗値R2000と、前記ガス濃度Xが0ppmであるときに前記初期状態の薄膜式ガスセンサにて測定された前記ガス検知層の抵抗値R0との比であるガス感度Sを、下記(式1)により定義し、
S=R0/R2000 ・・・(式1)
前記ガス感度Sを前記指標値とし、かつ
前記ガス感度Sの閾値を12と設定して、
前記ガス感度Sが前記閾値の12以下である場合に、前記測定された薄膜式ガスセンサが良品であると判定する薄膜式ガスセンサの検査方法。
前記センサ素子が、貫通孔を有する板状のシリコン基板と、前記貫通孔の開口を覆うように前記シリコン基板上に重ねて形成される薄膜状の支持層と、前記支持層上に配置される前記ヒータ層を覆うように前記支持層上に形成される電気絶縁層とをさらに有し、かつダイヤフラム構造になっている、請求項1に記載の薄膜式ガスセンサの検査方法。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ガスセンサはガス検知装置等に用いられており、特定の検知対象ガス、例えば、一酸化炭素(CO)、メタンガス(CH
4)、プロパンガス(C
3H
8)、メタノール蒸気(CH
3OH)等に対して選択的に感応するように構成されている。ガスセンサについては、その性格上、高感度、高選択性、高応答性、高信頼性、及び低消費電力が要求されている。
【0003】
このようなガスセンサを用いたガス検知装置のうち、家庭用のガス漏れ警報器には、都市ガス用やプロパンガス用の可燃性ガスの検知を目的としたもの、燃焼機器の不完全燃焼ガスの検知を目的としたもの、又はこれら両方の機能を合わせ持つもの等が存在している。しかしながら、いずれのガス漏れ警報器についても高いコストや設置の難易性の問題から広く普及していない。ガス漏れ警報器が広く普及するためには、特に、設置性を改善することが望まれている。このような要望に応じるためには、駆動源に電池を用いるとともにコードレス化を図ることによって、コンパクトなガスセンサを提供することが考えられる。駆動源に電池を用いる場合、ガスセンサを低消費電力化することが特に重要となる。しかしながら、接触燃焼式や半導体式のガスセンサは、400℃〜500℃の高温に加熱された状態でガスを検知する。そのため、高温状態を維持するために多くの電力を消費する必要があり、このことがガスセンサを低消費電力化する上で問題となっている。
【0004】
このようなガスセンサについては、例えば、特許文献1に間欠駆動する薄膜式ガスセンサが開示されている。
図2に示すように、この薄膜式ガスセンサのセンサ素子2においては、略板状のシリコン(Si)基板10を有している。シリコン基板10には、その厚さ方向に延びる貫通孔10aが形成されている。シリコン基板10の上には薄膜状の支持層11が重ねて配置されている。支持層11においては、シリコン基板10上に熱酸化SiO
2(二酸化ケイ素)層11aが重ねて配置され、熱酸化SiO
2層11a上にCVD−Si
3N
4(窒化ケイ素)層11bが重ねて配置され、CVD−Si
3N
4層11b上にCVD−SiO
2層11cが重ねて配置されている。さらに、支持層11上の中央部にはヒータ層12が重ねて配置され、ヒータ層12を覆うように支持層11上に電気絶縁層13が配置されている。電気絶縁層13上の中央部にはガス検知層14が配置されている。ガス検知層14においては、電気絶縁層13上の中央部に一対の接合層14aが配置され、一対の接合層14a上にそれぞれ感知層電極14bが配置されており、一対の感知層電極14bの間を結ぶように電気絶縁層13上に感知層14cが配置されている。さらに、電気絶縁層13上には感知層電極14b及び感知層14cを覆うように選択燃焼層14dが配置されている。そのため、特許文献1の薄膜式ガスセンサは微細加工プロセスを用いたダイヤフラム構造等によって高断熱性・低熱容量性に優れている。
【0005】
薄膜式ガスセンサにおいて行なわれるヒータ層12の間欠駆動については、例えば、従来では、メタンガス、プロパンガス等の可燃性ガスを検出する場合、ヒータ層12の温度を400℃〜500℃の高温とするように、50msec〜500msecの一定時間ヒータ層12に通電を行い(High状態)、感知層電極14bにより感知層14cの抵抗値を測定し、その抵抗値の変化からメタンガス、プロパンガス等の可燃性ガス濃度を検出している。高温下にある選択燃焼層14dにおいて、一酸化炭素、水素(H
2)等の還元性ガスその他の雑ガスを燃焼させることによって、不活性なメタンガス、プロパンガス等の可燃性ガスが、選択燃焼層14dを透過して拡散するとともに、感知層14cに到達して感知層14cの二酸化スズ(SnO
2)と反応する結果、二酸化スズの抵抗値が変化するので、このことを利用して、ガス機器等のガス漏れ時に発生するメタンガス、プロパンガス等の可燃性ガスの濃度を検出している。さらに、ヒータ層12に通電を行わない状態(Off状態)を一定時間設定している。このような間欠駆動は、High−Off駆動と呼ばれ、High状態及びOff状態を所定の周期(例えば、60sec周期)で繰り返している。
【0006】
また、不完全燃焼時に発生する一酸化炭素を検知する場合、一旦、ヒータ層12の温度を400℃〜500℃の高温状態とするように、50msec〜500msecの一定時間ヒータ層12に通電を行い(High状態)、薄膜式ガスセンサのクリーニングを行った後に、ヒータ層12の温度を約100℃の低温状態に降温するように通電を行い(Low状態)、この低温状態で一酸化炭素を検知する。このとき、一酸化炭素に対する感度(以下、「CO感度」という)及び選択性が高くなることが知られている。さらに、ヒータ層12に通電を行わない状態(Off状態)を一定時間設定している。このような間欠駆動は、High−Low−Off駆動と呼ばれ、High状態、Low状態、及びOff状態を所定の周期(例えば、150sec周期)で繰り返している。
【0007】
Low状態において一酸化炭素の検知を行なうとともに、High状態において薄膜式ガスセンサのクリーニングに加えてメタン検知も行うことによって、1つの薄膜式ガスセンサにおいてメタン及び一酸化炭素の両方を検知可能なものも存在している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1参考形態]
本発明の第1参考形態に係る薄膜式ガスセンサ及びその検査方法について以下に説明する。
図1に示すように、ガス検知装置に用いられる薄膜式ガスセンサ1は、検知対象ガスを検知するセンサ素子2を有している。センサ素子2はテーブル3上に配置されており、センサ素子2の底部とテーブル3の頂面とが当接している。テーブル3は複数のステム4によって支持されている。ステム4は、上下方向に延びる棒状に形成されている。また、テーブル3上には、センサ素子2を囲むようにキャップ5が配置されている。キャップ5は、上下方向に延びる筒状に形成されており、キャップ5の底部には底部開口5aが設けられ、テーブル3の頂面とキャップ5の底部開口5aの周縁部とが当接している。キャップ5の頂部には頂部開口5bが設けられ、キャップ5の頂部には、頂部開口5bを覆うように網状の上部ネット6が取付けられている。キャップ5の内部には、網状の下部ネット7が上部ネット6の下方に間隔を空けて配置されている。上部ネット6と下部ネット7との間には、活性炭から構成されたフィルタ8が配置されている。薄膜式ガスセンサ1は、センサ素子2、テーブル3、ステム4、キャップ5、上部ネット6、下部ネット7、及びフィルタ8を収容する筐体9を有しており、筐体9は上下方向に延びる筒状に形成されている。筐体9の頂部には、通気開口9aが設けられている。
【0016】
このような薄膜式ガスセンサ1において、外部ガスが、筐体9の通気開口9aを通過した後にフィルタ8を通過してキャップ5の内部に送られる。このようにキャップ5の内部に送られたガスに対してセンサ素子2が反応することとなる。
【0017】
薄膜式ガスセンサ1のセンサ素子2について説明する。
図2に示すように、薄膜式ガスセンサ1のセンサ素子2は、略板状のシリコン(Si)基板10を有している。このようなシリコン基板10には、その厚さ方向に延びる貫通孔10aが形成されている。シリコン基板10の上には薄膜状の支持層11が重ねて配置されている。支持層11においては、シリコン基板10上に熱酸化SiO
2(二酸化ケイ素)層11aが重ねて配置され、熱酸化SiO
2層11a上にCVD−Si
3N
4(窒化ケイ素)層11bが重ねて配置され、CVD−Si
3N
4層11b上にCVD−SiO
2層11cが重ねて配置されている。
【0018】
貫通孔10aの位置に対応するように支持層11上の中央部にはヒータ層12が重ねて配置されている。このヒータ層12を覆うように支持層11上に電気絶縁層13が配置されている。貫通孔10aの位置に対応するように、電気絶縁層13上の中央部にはガス検知層14が配置されている。ガス検知層14においては、貫通孔10aの位置に対応するように電気絶縁層13上の中央部に一対の接合層14aが配置され、一対の接合層14a上にそれぞれ感知層電極14bが配置されており、一対の感知層電極14bの間を結ぶように電気絶縁層13上に感知層14cが配置されている。感知層14cは、例えば、一酸化炭素(CO)、メタンガス(CH
4)、プロパンガス(C
3H
8)、メタノール蒸気(CH
3OH)等に対して選択的に感応した場合に電気的特性が変化するように構成されている。さらに、電気絶縁層13上には感知層電極14b及び感知層14cを覆うように選択燃焼層14dが配置されている。選択燃焼層14dは、触媒を添加した多孔質体から構成され、かつ検知対象となるガス以外のガスが感知層14cに到達することを防ぐように構成されている。
【0019】
このような支持層11、ヒータ層12、及び電気絶縁層13におけるシリコン基板10の貫通孔10aに対応する部分(以下、「ダイヤフラム部分」という)は、シリコン基板10によって支持されていない状態になっており、薄膜式ガスセンサ1のセンサ素子2はダイヤフラム構造を有している。
【0020】
さらに、センサ素子2の好ましい構成の一例を説明するが、センサ素子2の構成は、これに限定されない。シリコン基板10は、熱酸化膜付のシリコンウェハであると好ましい。ヒータ層12は、タングステン(Ta)から構成された第1のヒータ層上に、プラチナ・タングステン(PtW)から構成された第2のヒータ層を重ねて配置し、かつ第2のヒータ層上に、タングステンから構成された第3のヒータ層を配置した積層構造(Ta/PtW/Ta)を有していると好ましい。電気絶縁層13は、二酸化ケイ素から構成されていると好ましい。感知層電極14bは、プラチナから構成された第1の電極層上に、タングステンから構成された第2の電極層を重ねて配置した積層構造(Pt/Ta)を有していると好ましい。感知層14cは、二酸化スズ(SnO
2)から構成されていると好ましい。選択燃焼層14dは、酸化アルミニウム(Al
2O
3)にパラジウム(Pd)を触媒として担持した焼結材から構成されていると好ましい。
【0021】
ここで、本参考形態に係るガス検知装置に用いられるセンサ素子2の製造方法の好ましい一例を説明するが、センサ素子2の製造方法は、これに限定されない。シリコン基板10の表面及び裏面に、熱酸化SiO
2層11aを形成する。次に、熱酸化熱酸化SiO
2層11a上に、CVD−Si
3N
4層11bと、CVD−SiO
2層11cとを順次プラズマCVD法により形成する。さらに、ヒータ層12と、二酸化ケイ素から成る電気絶縁層13とを順次スパッタ法により形成する。次に、ガス検知層14を形成すべく、電気絶縁層13の上に、接合層14aと、感知層電極14bと、アンチモン(Sb)をドープした二酸化ケイ素から成る感知層14cとを順次スパッタ法により形成する。本参考形態では一例として、スパッタ法による成膜には、RFマグネトロンスパッタリング装置が用いられると好ましい。成膜条件については、例えば、タングステン(Ta)又はチタン(Ti)から成る接合層6aと、プラチナ(Pt)又は金(Au)から成る感知層電極14bとの場合では、アルゴン(Ar)ガス圧力を1Paとし、基板温度を300℃とし、RFパワーを2W/cm
2とし、接合層14aと感知層電極14bとの厚さをそれぞれ500Åと2000Åとすると好ましい。感知層電極14bを十分に覆うように、選択燃焼層14dをスクリーン印刷法により塗布し、その後、500℃の温度下で1時間以上焼成を行なう。次に、シリコン基板10の裏面からエッチングによりシリコンを除去し、貫通孔10aを形成する。
【0022】
次に、本参考形態に係る薄膜式ガスセンサ1の検査方法について説明する。初期状態の薄膜式ガスセンサ1にて測定されるガス検知層の抵抗値Rと検知対象ガスのガス濃度Xとの関係を下記(式7)により定義する。
【0024】
図3に示すように、抵抗値R及びガス濃度Xから成る直交座標系にて、ガス濃度Xが4000ppm以上である領域における抵抗値R及びガス濃度Xから成る2つの測定点を用いて上記(式7)によって係数a及び係数bを算出する。この係数(以下、「勾配係数」という)bは、抵抗値R及びガス濃度Xの両方を対数表示した状態で上記2つの測定点を通過する直線の傾きを表す。このように算出される係数a及び勾配係数bのうち勾配係数bを指標値とする。さらに、勾配係数bの閾値を−0.8と予め設定しておいて、勾配係数bが−0.8以下である場合に、測定された薄膜式ガスセンサ1が良品であると判定する。
【0025】
なお、
図3では、一例として、初期状態の薄膜式ガスセンサ1において、メタンガスのガス濃度Xが0ppmの時に測定された第1の測定点D1、メタンガスのガス濃度Xが500ppmの時に測定された第2の測定点D2、メタンガスのガス濃度Xが1000ppmの時に測定された第3の測定点D3、メタンガスのガス濃度Xが2000ppmの時に測定された第4の測定点D4、メタンガスのガス濃度Xが5500ppmの時に測定された第5の測定点D5、及びメタンガスのガス濃度Xが12500ppmの時に測定された第6の測定点D6を示している。
図3では、上述の検査方法に用いられる2つの測定点が、第5の測定点D5及び第6の測定点D6になっており、第5の測定点D5及び第6の測定点D6を通過する直線L1(破線で示す)の傾きが、勾配係数bの値に相当している。
【0026】
以上、本参考形態に係る薄膜式ガスセンサ1及びその検査方法によれば、初期状態の薄膜式ガスセンサ1にて測定されたガス検知層14の抵抗値R及び検知対象ガスのガス濃度Xを用いて上記(式7)によって上記勾配係数bを算出し、予め設定された勾配係数bの閾値を基準として薄膜式ガスセンサ1の良否を判定する。このような判定によって選別された薄膜式ガスセンサ1は、後述する参考例1に一例を示すように、長期間に渡って検知対象ガスの検知性能を維持可能できるようになっている。そのため、長期間に渡って検知対象ガスの検知性能を維持できる薄膜式ガスセンサ1を製品初期段階で選別できる。
【0027】
[実施形態]
本発明の実施形態に係る薄膜式ガスセンサ及びその検査方法について以下に説明する。本実施形態は、基本的には、第1参考形態と同様になっている。第1参考形態と同様な要素は、第1参考形態と同様の符号および名称を用いて説明する。ここでは、第1参考形態と異なる構成について説明する。
【0028】
本実施形態に係る薄膜式ガスセンサ及びその検査方法では、第1参考形態と同様の薄膜式ガスセンサ1を検査対象としており、このような薄膜式ガスセンサ1及びその検査方法について説明する。初期状態の薄膜式ガスセンサ1にて測定された検知対象ガスのガス濃度Xが2000ppmである時におけるガス検知層14の抵抗値R
2000と、ガス濃度Xが0ppmである時におけるガス検知層14の抵抗値R
0との比をガス感度Sとし、ガス感度Sを下記(式8)により定義する。
【0029】
S=
R0/R2000 ・・・(式8)
【0030】
このように算出されるガス感度Sを指標値とする。さらに、ガス感度Sの閾値を12と予め設定しておいて、ガス感度Sが12以下である場合に、測定された薄膜式ガスセンサ1が良品であると判定する。
【0031】
以上、本実施形態に係る薄膜式ガスセンサ1及びその検査方法によれば、初期状態の薄膜式ガスセンサ1にて測定されたガス検知層14の抵抗値R及び検知対象ガスのガス濃度Xを用いて上記(式8)によって上記ガス感度Sを算出し、予め設定されたガス感度Sの閾値を基準として薄膜式ガスセンサ1の良否を判定する。このような判定によって選別された薄膜式ガスセンサ1は、後述する実施例に一例を示すように、長期間に渡って検知対象ガスの検知性能を維持できるようになっている。そのため、長期間に渡って検知対象ガスの検知性能を維持できる薄膜式ガスセンサ1を製品初期段階で選別できる。
【0032】
[第2参考形態]
本発明の第2参考形態に係る薄膜式ガスセンサ及びその検査方法について以下に説明する。第2参考形態は、基本的には、第1参考形態と同様になっている。第1参考形態と同様な要素は、第1参考形態と同様の符号および名称を用いて説明する。ここでは、第1参考形態と異なる構成について説明する。
【0033】
本参考形態に係る薄膜式ガスセンサ及びその検査方法では、第1参考形態と同様の薄膜式ガスセンサ1を検査対象としており、このような薄膜式ガスセンサ1及びその検査方法について説明する。初期状態の薄膜式ガスセンサ1にて測定されたガス検知層14の抵抗値Rと検知対象ガスのガス濃度Xとの関係を下記(式9)により定義する。
【0035】
図3に示すように、抵抗値R及びガス濃度Xから成る直交座標系にて、ガス濃度Xが4000ppm以上である領域における抵抗値R及びガス濃度Xから成る2つの測定点を用いて上記(式9)によって係数a及び勾配係数bを算出する。算出された係数a及び勾配係数bと、初期状態の薄膜式ガスセンサ1にてガス濃度Xが0ppmである時に測定された抵抗値R
0とを用いて上記(式9)によりガス濃度(以下、「ゼロガス濃度」という)X
0を算出する。このように算出されるゼロガス濃度X
0を指標値とする。さらに、ゼロガス濃度X
0の閾値を150ppmとして、ゼロガス濃度X
0が150ppm以上である場合に、測定された薄膜式ガスセンサ1が良品であると判定する。
【0036】
なお、
図3では、一例として、第1参考形態にて説明した直線L1(破線で示す)と、第1の測定点D1の抵抗値R
0を表す直線L2(一点鎖線で示す)とを引いており、これらの直線L1,L2の交点Pにおけるガス濃度Xが、指標値のゼロガス濃度X
0となっている。
【0037】
以上、本参考形態に係る薄膜式ガスセンサ1及びその検査方法によれば、初期状態の薄膜式ガスセンサ1にて測定されたガス検知層14の抵抗値R及び検知対象ガスのガス濃度Xを用いて上記(式9)によってゼロガス濃度X
0を算出し、予め設定されたゼロガス濃度X
0の閾値を基準として薄膜式ガスセンサ1の良否を判定する。このような判定によって選別された薄膜式ガスセンサ1は、後述する参考例2に一例を示すように、長期間に渡って検知対象ガスの検知性能を維持できるようになっている。そのため、長期間に渡って検知対象ガスの検知性能を維持できる薄膜式ガスセンサ1を製品初期段階で選別できる。
【0038】
ここまで本発明の実施形態及び参考形態について述べたが、本発明は既述の実施形態及び参考形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
【0039】
[参考例1]
本発明の参考例1について説明する。参考例1においては、本発明の第1参考形態に係る薄膜式ガスセンサ1の検査方法を用いて、複数の薄膜式ガスセンサ1を検査する。検査対象の薄膜式ガスセンサ1は、第1参考形態で説明したセンサ素子2の好ましい構成の一例におけるセンサ素子2を有しており、センサ素子2は、第1参考形態で説明したセンサ素子2の製造方法の好ましい一例のように作製されている。また、薄膜式ガスセンサ1については、ガス漏れ警報を発する基準となるガス検知層14の抵抗値(以下、「警報抵抗値」という)が所定の値に定められている。
【0040】
初期状態の複数の薄膜式ガスセンサ1にて測定されるガス検知層の抵抗値Rとメタンガスのガス濃度Xとを用いて第1参考形態の(式7)によって勾配係数bを算出した。さらに、初期状態の複数の薄膜式ガスセンサ1について、警報抵抗値に達するメタンガスのガス濃度X
1を測定した。次に、複数の薄膜式ガスセンサ1に対して2年相当加速試験を実施した。2年相当加速試験後の複数の薄膜式ガスセンサ1について、警報抵抗値に達するメタンガスのガス濃度X
2を測定した。各薄膜式ガスセンサ1について、初期状態で警報抵抗値に達するガス濃度X
1に対する2年相当加速試験後の状態で警報抵抗値に達するガス濃度X
2の比(以下、「警報濃度変動比」という)T(=X
2/X
1)を算出した。
【0041】
その結果、各薄膜式ガスセンサ1における勾配係数bと警報濃度変動比Tとの関係は、
図4に示すようになった。
図4では、ほとんどの薄膜式ガスセンサ1において、勾配係数bを−0.8以下とする範囲における警報濃度変動比Tが1.5以下になっており、勾配係数bが−0.8より大きな薄膜式ガスセンサ1を除外することによって、警報濃度変動比Tが1.5より大きくなる薄膜式ガスセンサ1をほとんど除外できることが確認できた。よって、第1参考形態に係る薄膜式ガスセンサ1の検査方法によれば、長期間に渡って検知対象ガスの検知性能を維持できる薄膜式ガスセンサ1を製品初期段階で選別できることが確認できた。
【0042】
[実施例]
本発明の実施例について説明する。実施例においては、本発明の実施形態に係る薄膜式ガスセンサ1の検査方法を用いて、複数の薄膜式ガスセンサ1を検査する。検査対象の薄膜式ガスセンサ1は、参考例1と同様のセンサ素子2を有しており、センサ素子2は、参考例1と同様に作製されている。また、薄膜式ガスセンサ1については、参考例1と同様に、警報抵抗値が所定の値に定められている。
【0043】
初期状態の複数の薄膜式ガスセンサ1にて測定されるガス検知層の抵抗値Rとメタンガスのガス濃度Xとを用いて実施形態の(式8)によってガス感度Sを算出した。さらに、初期状態の複数の薄膜式ガスセンサ1について、警報抵抗値に達するメタンガスのガス濃度X
1’を測定した。次に、複数の薄膜式ガスセンサ1に対して2年相当加速試験を実施した。2年相当加速試験後の複数の薄膜式ガスセンサ1について、警報抵抗値に達するメタンガスのガス濃度X
2’を測定した。各薄膜式ガスセンサ1について、初期状態で警報抵抗値に達するガス濃度X
1’に対する2年相当加速試験後の状態で警報抵抗値に達するガス濃度X
2’の警報濃度変動比T’(=X
2’/X
1’)を算出した。
【0044】
その結果、各薄膜式ガスセンサ1におけるガス感度Sと警報濃度変動比T’との関係は、
図5に示すようになった。
図5では、ほとんどの薄膜式ガスセンサ1において、ガス感度Sを12以下とする範囲における警報濃度変動比T’が1.7以下になっており、ガス感度Sが12より大きい薄膜式ガスセンサ1を除外することによって、警報濃度変動比T’が1.7より大きくなる薄膜式ガスセンサ1をほとんど除外できることが確認できた。よって、実施形態に係る薄膜式ガスセンサ1の検査方法によれば、長期間に渡って検知対象ガスの検知性能を維持できる薄膜式ガスセンサ1を製品初期段階で選別できることが確認できた。
【0045】
[参考例2]
本発明の参考例2について説明する。参考例2においては、本発明の第2参考形態に係る薄膜式ガスセンサ1の検査方法を用いて、複数の薄膜式ガスセンサ1を検査する。検査対象の薄膜式ガスセンサ1は、参考例1と同様のセンサ素子2を有しており、センサ素子2は、参考例1と同様に作製されている。また、薄膜式ガスセンサ1については、参考例1と同様に、警報抵抗値が所定の値に定められている。
【0046】
初期状態の複数の薄膜式ガスセンサ1にて測定されるガス検知層の抵抗値Rとメタンガスのガス濃度Xとを用いて第2参考形態の(式9)によってゼロガス濃度X
0を算出した。さらに、初期状態の複数の薄膜式ガスセンサ1について、警報抵抗値に達するメタンガスのガス濃度X
1’’を測定した。次に、複数の薄膜式ガスセンサ1に対して2年相当加速試験を実施した。2年相当加速試験後の複数の薄膜式ガスセンサ1について、警報抵抗値に達するメタンガスのガス濃度X
2’’を測定した。各薄膜式ガスセンサ1について、初期状態で警報抵抗値に達するガス濃度X
1’’に対する2年相当加速試験後の状態で警報抵抗値に達するガス濃度X
2’’の警報濃度変動比T’’(=X
2’’/X
1’’)を算出した。
【0047】
その結果、各薄膜式ガスセンサ1におけるゼロガス濃度X
0と警報濃度変動比T’’との関係は、
図6に示すようになった。
図6では、ほとんどの薄膜式ガスセンサ1において、ゼロガス濃度X
0を150ppm以上とする範囲における警報濃度変動比T’’が1.5以下になっており、ゼロガス濃度X
0が150ppmより小さい薄膜式ガスセンサ1を除外することによって、警報濃度変動比T’’が1.5より大きくなる薄膜式ガスセンサ1をほとんど除外できることが確認できた。よって、第2参考形態に係る薄膜式ガスセンサ1の検査方法によれば、長期間に渡って検知対象ガスの検知性能を維持できる薄膜式ガスセンサ1を製品初期段階で選別できることが確認できた。