(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0003】
発明の背景
変化する電圧で金属イオンが正極と負極の間を往復する再充電可能電池または電気化学的セルの分野において、金属イオンの最初の供給源(通常アルカリ金属)は、典型的に正極物質である。前記金属イオンの例としてはリチウムが挙げられる。
【0004】
リチウムイオン再充電可能電池の最初のサイクル化(cycling)の間に、負極および正極上、特に陰極上に不動態化フィルムが形成される。
図1に示されるように、このフィルムが陰極上に形成される場合、溶媒還元、塩還元、不溶性生成物の形成および重合などのいくつかの反応が起こり得る。不動態化フィルムはしばしば、SEI層(固体電解質界面(solid electrolyte interphase))と称され、この形成により、不可逆的反応による金属イオンの消失および電池容量の大きな消失が生じる。ほとんどの場合、リチウムイオン電池は、10〜30%の不可逆的な初期の消失を有すると記載されている。第2の型の金属イオン(例えば、リチウム+)の不可逆的消失は、金属イオン電池のそれぞれのさらなる充電放電サイクルの際の金属イオンの「往復(shuttling)」の間に起こる副反応のためである。第3の型の不可逆的消失は、可溶性および不溶性のリチウム塩からなる正極不動態化層形成に代表される。
【0005】
全ての型の不可逆的消失(SEI、正極不動態化層、および長時間サイクル化の際の副反応)を制限するために予防措置が取られる。しかしながら、供給源が提供され得る場合、長時間のサイクル寿命を支持するのに必要な量で過剰な金属イオンの必要量(requirement)を補償することが有利である。ほとんどの市販の金属イオン電池系において、この保存(reserve)は正極により提供されるので、正極は、必ず、特定の放電容量の電池の約135〜150%の大きさにならなければならず、したがって電池の総重量が増加する。SEIおよび正極不動態化層形成に関する金属イオンの不可逆的消失が完了すると、正極の金属供与(donating)物質の30%までが「死重量(dead weight)」、または非作動物質となる。これらの重くかつ高価な正極物質の例は、LiFePO
4、LiMn
2O
4などである。
【0006】
負極の構成の際に、リチウム金属を負極の原料とする(source)試みがあった。例えば、FMC Corporation (Philadelphia, PA)は、安定化リチウム金属粉末、すなわちSLMPと称される安定化リチウム源 (特許文献1)を開発した。この物質は、電解質による粉砕(crushing)または溶解などの活性化工程の前に、炭素に混合され得る(特許文献2)。しかしながら、SLMPは、一般の正極供与物質と比較して非常に高価なリチウム源であり、均一に分布させることが困難かもしれない。
【0007】
負極の原料金属の別の例は、Li/ポリマー電池に見られ、ここでLi金属は、集電装置上に配置され、全ての必要な過容量(overcapacity)を含む負極を形成する。しかしながら、このアプローチのクーロン効率は、グラファイト負極系ゲル電池または液体電解質電池アプローチと比較すると低い。さらに、比容量は可能な限り最も高いが、リチウム金属ホイルのコストはかなり高く、必要な固体ポリマー電解質のための放電速度は低い。
【0008】
前リチウム化(pre-lithiation)、第1充電(first charging)または前充電(pre-charging)と称されるプロセスを使用して、電気化学的セルの充電/放電の間に利用可能なアルカリ金属の量を増加させるための他のものが試みられており、ここで不動態化フィルムは、化学的または電気化学的のいずれかで、電池の最終的な組み立ての前に、負極上に形成される(特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6および特許文献7)。電気化学的前リチウム化が実施された場合、リチウムの供給源として、リチウム含有電極(ほとんどの場合元素リチウム金属からなる)またはリチウムホイルのいずれかが使用された。不動態化フィルムの形成、およびそれによる前リチウム化の使用の必要性を回避する代替的なプロセスが、特許文献8に開示される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、負極をアルカリ化するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の概要
本発明は、公知の市販のプロセスを越えた、負極をリチウム化(lithiating)(および/またはアルカリ化(alkaliating))するための改良された方法の発見に関する。この新規の方法では、現在の組み立て法とロールごとに適合性のある(roll to roll compatible)良好な電気化学的な方法を提供することにより従来技術の課題が解決され、特に、リチウム化の際に負極と反応しない非水性溶媒と組み合わせて使用した場合に、良好〜優れた効率を生じる、安価なLi保有塩が使用され得る。好ましい非水性溶媒は、リチウム塩を溶解して、イオン化せず、望ましい電位窓(electrochemical window)に適合するか、または負極バインダー物質に対して実質的に不活性である。好ましい溶媒は、水の沸点から離れた沸点を有する。塩溶解性、イオン導電性、電位窓および水分離の容易さなどの基準の全てを満たす溶媒または溶媒条件が好ましい。
【0012】
いくつかのリチウム保有塩を電気分解に使用できるが、非限定的な例について、低コスト製造のために、LiCl、LiBr、LiF、LiNO
3などの最も安価なものだけが好ましい。これまで、電池負極の製造において、これらの種類の塩を供給源として使用することを可能にする方法はなかった。これまで、非水性溶媒を使用して、30%の効率が限度であり、製造を非常に高コストにしていた。低い湿度、純粋な溶媒/塩溶液を製造するための満足のいく精製方法は見つかっていなかった。副反応で形成された化合物は、成功裡のSEI層の形成を最終的に妨害して、(通常は完全な電池セル内で形成される)不溶性のSEI物質のみが望ましく、これらの典型的な電気分解副生成物は望ましくない。これまで、連続的な精製プロセスは見つかっておらず、供給源として塩を使用して電池または電気化学的セルの負極を前リチウム化することは実際的ではなかった。前述の限界を排除して低コストの前リチウム化負極を作製することを目的とした新規の方法を本明細書に開示する。
【0013】
この議論の目的として、リチウム化は、リチウムを、物質(好ましくは負極)中および/または物質上に電気化学的に導入することであり、インターカレーションの際に、リチウムイオンを、負極物質に電気化学的に移動させること;めっき(plating)の際に、リチウムイオンを、負極集電装置表面上に電気化学的に移動させること;合金化(alloying)の際に、リチウムイオンを、負極金属の合金中に電気化学的に移動させること;および/またはリチウムイオンを、負極の表面層、例えばSEI層に電気化学的に移動させることを含む。めっきは、基質、通常は金属の直上の表面に、電気分解プロセスにより原子の層を形成することをいう。合金化は、リチウム原子を、アルミニウムまたはスズなどの親基質(host substrate)中で均一な混合物の状態で混ぜ込む(wind up)めっきプロセスのことをいう。インターカレーションは、炭素またはケイ素などの負極の主要な物質の面の間にリチウムイオンを挿入するプロセスのことをいう。明細書中のいくつかの例において、リチウム化、インターカレーション、リチウムめっきまたは合金化は、交換可能に使用される。塩によるリチウム化について以下に述べるそれぞれの例において、ハロゲン化リチウムによるリチウム化が好ましいことが理解される。また、本明細書に記載されるプロセスのそれぞれにおいてアルカリ化を達成するために、リチウム塩の代わりに、他のハロゲン化アルカリ金属塩またはアルカリ金属塩を使用することが可能である。
【0014】
電池の組み立ての前に負極をリチウム化することにより、過剰なリチウムが存在することになり、より長時間のサイクル寿命、SEI形成による初期消失、正極関連アルカリ金属イオン消失、および/またはアルカリ金属非含有正極物質サイクル化の必要性が支持され得る。リチウム化方法は、連続して行われ得るか、またはバッチベースで行われ得る。一態様において、炭素、グラファイト、酸化スズおよびケイ素などの金属インターカレート物質で、銅、被覆アルミニウムまたは炭素繊維などの導電性物質の集電装置が被覆され、インターカレーションベース負極が形成される。限定されないが、ガンマブチロラクトン(GBL)などの非水性溶媒および限定されないがLiClなどの少なくとも1つの溶解したリチウム塩を含む槽を負極と接触させる。他の溶媒を使用することができ、好ましくは、適切な塩溶解性、適切な電位窓、良好なイオン導電性、溶媒の分解のリスクを下げるために高真空条件下で低い沸点(例えば、1mTorrで130℃未満)、水の分離を容易にするために水とは異なる沸点(例えば最低で25℃)、他の環状および直鎖状の溶媒との混和性、および/または典型的な負極バインダーに化学的に作用する性質を発揮するものが選択される。他のリチウム塩、好ましくは容易に管理される副生成物を産生するもの、より好ましくは気体状の副生成物を有するものを使用することができる。好ましくは、該塩は、回収され、リチウム化の後の再利用のために容易に精製され(cleanse)得るように、DMCなどの一般的な直鎖状溶媒中で、低い溶解度も発揮すべきである。発見されたように、リチウム塩の溶解度を高めるため、イオン導電性を高めるため、SEI層の質を向上するため、および/またはリチウム化効率を高めるために、CO
2またはSO
2などの散布ガス(sparging gas)をリチウム化槽に添加し得る。電解場プレートが提供される。リチウム化するように、負極に還元電流(reducing current)が適用される。場プレートで、酸化電流が生じ、そのために白金または炭素などの不活性な物質を使用する必要性が生じる。別の好ましい態様において、リチウム化プロセスの副生成物は、カウンター電極(場プレート)において、放出ガス(evolving gas)に限られる。このような方法で、リチウムイオンの十分な補完物が提供される。別の態様において、この方法を用いて、リチウム非相互作用性集電装置がめっきされ得る。別の態様において、この方法において、合金化金属ホイルまたはコーティングがリチウム化され得る。
【0015】
リチウム化の後、負極における残存塩またはリチウム化溶媒の量を低減することが望ましくあり得る。溶媒(GBLまたはDMCなど)によるリンスを含むさらなる工程は、塩含有量を低減することはないが、リチウム化負極における残存塩含有量を低減(performed)し得る。代替的に、負極をリチウム化タンクから取り出す(depart)際に、一対のローラーを使用して、負極から過剰な表面流体を除去し得る。代替的に、処理されてリンスされた負極を真空乾燥して、それにより残存溶媒を除去し、負極の長期保存が可能になり、負極が、通常の電池組み立てプロセスにおけるその後の使用において適合性になり得る。
【0016】
本発明は、好ましくは連続プロセスにおける負極のリチウム化のための方法を提供し、該方法は、
(a) 負極を提供する工程;
(b) 非水性溶媒および少なくとも1つの溶解したリチウム塩、好ましくは塩化リチウムなどのハロゲン化リチウム塩を含む槽を提供する工程、ここで前記槽は、好ましくは連続プロセスで、負極と接触し、前記槽が乾燥ガスで覆われる;
(c) 不活性な導電性物質を含む電解場プレートを提供する工程、ここで前記場プレートは、負極と場プレートの間に場を確立する;ならびに
(d) 負極に還元電流を適用し、場プレートに酸化電流を適用する工程、ここで該槽由来の金属イオンにより負極がリチウム化される
を含む。
【0017】
本発明はまた、リチウム化負極が、セル全体に低減された不可逆的容量を提供するか、または非リチウム金属含有正極物質を操作するのに必要なリチウムの全量を提供する、連続プロセスにおいて負極をリチウム化するための方法を開示し、該方法は、
(a) リチウム活物質またはめっきされ得る不活性化基質を含む負極を提供する工程;
(b) 非水性溶媒および少なくとも1つの溶解したハロゲン化リチウム塩を含む槽を提供する工程、ここで前記槽は、連続プロセスで、負極と接触し、前記非水性溶媒および少なくとも1つの溶解したハロゲン化リチウム塩が乾燥ガスで覆われる;
(c) 不活性な導電性物質を含む電解場プレートを提供する工程、ここで前記場プレートは、負極と場プレートの間に場を確立する;
(d) 負極に還元電流を適用する工程、ここで金属イオンは連続プロセスで該負極をリチウム化する;
(e) 場プレートに酸化電流を適用する工程;ならびに
(f) 場プレートにおいて生じた放出ガスまたは副生成物を回収する工程
を含む。
【0018】
一態様において、負極物質は、炭素、コークス、グラファイト、スズ、酸化スズ、ケイ素、酸化ケイ素、アルミニウム、リチウム活性金属、合金化金属物質およびそれらの混合物から選択され、前記負極物質が銅および炭素繊維から選択される導電性物質の集電装置上にコーティングされる。
【0019】
さらなる態様において、非水性溶媒は、炭酸ブチレン、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、炭酸ビニレン、炭酸ビニルエチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル、炭酸メチルエチル、アセトニトリル、ガンマブチロラクトン、室温イオン性液(room temperature ionic liquid)およびそれらの混合物から選択される。好ましい態様において、非水性溶媒はガンマブチロラクトンである。
【0020】
別の態様において、ハロゲン化塩は、NaまたはKである。別の態様において、リチウム含有塩は、LiNO
3である。さらに別の態様において、ハロゲン化リチウム塩は、LiCl、LiBr、LiFおよびそれらの混合物から選択される。好ましい態様においてハロゲン化リチウム塩はLiClである。
【0021】
さらに別の態様において、非水性溶媒は、高品質のSEI層の形成を容易にする添加剤を含む。例えば、VC、ECまたはマレイン酸無水物が、非水性溶媒に添加され得る。
【0022】
さらに別の態様において、CO
2またはSO
2などの散布されたガスは、塩溶解性を高めるため、イオン導電性を高めるため、Li
2CO
3またはLi
2SO
3の形態の高品質のSEIを支持するため、およびインターカレーションの効率を高めるために、リチウム化槽に取り込まれる。大気圧飽和を生じるまで散布されたガスを泡立たせる。より高いレベルの飽和も有益であるが、ガス飽和のこのレベルは、リチウム化の効率を高めるのに十分である。CO
2は、コストが低く毒性が低いために好ましい。グラファイト負極のサンプルは、記載された方法において、槽のCO
2飽和ありおよびなしで1mAhr/cm
2まで前リチウム化された。得られた負極は、石ビーカー中でリチウム金属カウンター電極に対して、リチウム金属の+1ボルトまで脱リチウム化され、可逆的なリチウム含有量が決定された。全ての場合において、可逆的なリチウム量は、CO
2の例において、CO
2なしのものよりも高かった。
図9は、リチウム化プロセスタンクにCO
2が放出される場合に、リチウム化プロセスが向上することを示す。これは、任意の市販の前リチウム化の適用に対する有意な向上を示す。
【0023】
リチウム、リチウム塩および/またはリチウム化が後述/前述されるそれぞれの例において、他のアルカリ金属およびアルカリ塩を使用し得、アルカリ化を達成し得ることが理解される。
【0024】
即ち、本発明の要旨は、
〔1〕(a) 負極を提供する工程;
(b) 非水性溶媒および少なくとも1つの溶解したハロゲン化リチウム塩を含む槽を提供する工程、ここで、前記槽は、好ましくは連続プロセスで、負極と接触し、乾燥ガス被覆により前記槽が被覆される;
(c) 不活性な導電性物質を含む電解場プレートを提供する工程、ここで、前記場プレートは、負極と場プレートの間に場を確立する;ならびに
(d) 負極に還元電流を適用し、場プレートに酸化電流を適用する工程、ここで槽由来のリチウムイオンにより負極がリチウム化される
を含む、好ましくは連続プロセスにおける、負極のリチウム化のための方法
に関する。
【発明の効果】
【0025】
本発明により、負極をアルカリ化するための方法が提供され得る。
【発明を実施するための形態】
【0028】
発明の詳細な説明
酸化金属または金属合金またはグラファイトまたは炭素またはケイ素またはケイ素/炭素混合物からなる負極、例えばグラファイトまたは炭素からなる負極は、組み立て後の電池操作における第1の充電工程の際に、正極物質から生じたリチウムによりリチウム化される。これらの場合において、正極は、電池中で最も重く、最も高価な成分である。そのため、正極の重量を低減し、電池効率および出力の消失を最小化することが望ましく、商業上重要である。金属イオンの不可逆的消失の効果を軽減する様式で金属イオンを調達することでSEIおよび正極不動態化層の形成により生じる死重量を排除し得る場合、電池の比容量および体積容量密度(volumetric capacity density)を高めることができ、電池のコストを下げることができる。
【0029】
本発明は、インターカレーションベース負極、非反応性めっき可能ホイル、または合金化可能フィルムもしくはホイルのリチウム化のための方法に関し、再充電可能電池または電気化学的セルにおける前記リチウム化負極の利用により、サイクル化に利用可能なリチウムの量の増加および充電および放電の際の可逆的容量の向上がもたらされる。さらなる利用可能なリチウムはまた、初期の非リチウム含有正極物質のサイクル化を支持し得る。上述のように、グラファイトまたは炭素またはケイ素またはケイ素-炭素混合物からなる負極は、正極物質由来のリチウムにより、組み立て後の電池操作における第1の充電工程の際にリチウム化される。これらの場合において、正極は、電池中で最も重く、最も高価な成分である。リチウム電池技術における望ましい特徴の一つは、電池効率および出力を妥協することなく過剰な正極物質のために生じる電池の重量を低減することである。
【0030】
サイクル化に利用可能なリチウムの量の増加、再充電可能電池の充電および放電の際の可逆的容量の向上ならびにその結果の電池の軽量化をもたらすリチウム化負極の作製方法が
図2に開示される。負極と電解場プレートの間に場を確立するため、およびリチウムをホイル上もしくは負極基質中もしくはシート中にめっきもしくはインターカレートすること、または負極上にSEI層を形成することのように負極をリチウム化するために必要な電圧で電解場プレートを保持する。このための典型的な操作電圧は4.1Vである。標的とされる陰極の近くに配置された、Bioanalytical Systems, Inc.のAg/AgNO
3非水性参照などの適切な参照電極は、負極条件をモニタリングするために好ましくあり得る。電圧制御形式または電流制御形式のいずれかで場プレートを操作することが可能である。電流制御によっては、完全な操作電位はすぐには得られないことがある。電流制御下のこの操作は、より低い開始操作電圧を生じることがある。このより低い電圧には、ハロゲン化リチウム塩(例えばLiCl)の電離および負極物質の得られたインターカレーションの代わりに二次副反応が好ましいことがある。電圧制御下の操作は、場プレート電位を、ハロゲン化リチウム塩の電離に有利に作用し(例えば、LiClについて4.1ボルト)、二次副反応を最小限にするのに十分な電位へと、すぐに設定することを確実にし得る。代替的に、電流制御は、その後の操作電圧をハロゲン化リチウム塩電離閾値よりも高く維持する場合に使用され得る。これは、二次副反応よりもむしろ電離に有利に作用する、十分に高い開始電流密度(例えば2mA/cm
2)を設定することによりなされ得る。場プレートで酸化電流が適用されるので、不活性物質または導電性酸化物を使用する必要がある。一態様において、場プレートを含む不活性物質は、ガラス炭素(glassy carbon)、タンタル、金、白金、銀およびロジウムから選択される。好ましい態様において、場プレートを含む不活性物質は、白金、金または炭素から選択される。より好ましい態様において、場プレートを含む不活性物質は、炭素またはガラス炭素である。場プレートはまた、金、白金またはガラス炭素などの不活性導電性物質でめっきされたステンレス鋼などのベース物質で構成され得る。
図2および4に図示されるように、負極を場プレート間に通し、場プレートを槽に浸漬する。単一制御電圧もしくは電流密度で場プレートを単一実体として操作し得るか、または複数のゾーンにわたり電圧もしくは電流密度の独立した制御を可能にするように複数のプレートについて実行し得る。これは
図2および4に図示される。
【0031】
典型的に負極は、電解セルにおいて負極として機能する任意の物質である適合性(compatible)負極物質を含む。本明細書に開示するように、用語、負極は、用語、陰極、導電性ホイル、負極シート、負極基質または非反応性めっき可能ホイルと同等である。一態様において、負極は、リチウムインターカレート負極である。リチウムインターカレート負極を含む物質の例としては、限定されないが、炭素、グラファイト、酸化スズ、ケイ素、酸化ケイ素、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)バインダーおよびそれらの混合物が挙げられる。さらなる態様において、リチウムインターカレート負極物質は、グラファイト、コークス、メソカーボン、炭素ナノワイヤ、炭素繊維、ケイ素ナノ粒子または他の金属ナノ物質およびそれらの混合物から選択される。別の態様において、スズまたはアルミニウムなどの合金化金属は、リチウム化の結果としてリチウム金属に集まる(host)ように使用され得る。リチウムをインターカレートする方法で負極に還元電流を適用する。非水性溶媒および少なくとも1つの溶解したリチウム塩を含む溶液中に負極を浸漬する。用語、非水性溶媒は、無機イオン塩を溶媒和化する目的で機能する、電解質に添加される低分子量有機溶媒である。非水性溶媒の典型的な例は、炭酸ブチレン、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、炭酸ビニレン、炭酸ビニルエチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル、炭酸メチルエチル、アセトニトリル、ガンマブチロラクトン、トリグリム、テトラグリム、ジメチルスルホキシド、ジオキソラン、スルホラン、室温イオン性液(RTIL)およびそれらの混合物である。一態様において、非水性溶媒は、炭酸エチレン、炭酸ビニレン、炭酸ビニルエチレン、ガンマブチロラクトンおよびそれらの混合物から選択される。第2の態様において、非水性溶媒はガンマブチロラクトンである。第3の態様において、高品質SEI形成を支持するために添加剤が導入され得る。該添加剤は、炭酸ビニレン、炭酸エチレンまたはマレイン酸無水物であり得る。第4の態様において、塩溶解度を高めるため、イオン導電性を高めるため、Li
2CO
3またはLi
2SO
3 SEI層の形成を支持するため、およびリチウム化効率を高めるために、非水性溶液中にCO
2またはSO
2などの気体が散布される。
図9には、mAhrで測定されるリチウム供給源の開始量からの可逆的リチウムインターカレーションの効率が記載される。限定されないが、SEI形成などの副反応として消失量が記載され得る。
【0032】
用語、アルカリ金属塩は、非水性溶媒中の使用に適した無機塩のことをいう。アルカリ金属塩を含む適切なアルカリ金属カチオンの例は、Li
+、Na
+、K
+、Rb
+、Cs
+、Fr
+およびそれらの混合物から選択されるものである。アルカリ金属塩を含む適切なハロゲンアニオンの例は、F
-、Cl
-、Br
-、I
-およびそれらの混合物から選択されるものである。一態様において、アルカリ金属塩は、LiF、LiCl、LiBr、NaF、NaCl、NaBr、KF、KCl、KBrおよびそれらの混合物から選択される。LiNO
3などの他の塩が使用されてもよいが、好ましい態様においては、アルカリ金属塩はハロゲン化LiClである。
【0033】
気体性分解生成物を有する安価な塩は、LiCl、LiBrおよびLiFなどのハロゲン化物であり得る。LiClおよび他の簡単な塩は、非水性溶媒中の溶解またはイオン化が困難であり得る。炭酸プロピレン(PC)、炭酸ジメチル(DMC)およびアセトニトリルなどの溶媒は、AlCl
3などの錯体化剤を使用することなく、溶液中の微量のLiClのみを支持する。AlCl
3および他の錯体化剤は、湿度管理および高い腐食性に関して取り扱いが困難であり得る。また、ハロゲン化塩を溶解し得る、DMSOまたはテトラヒドロフラン(THF)などのいくつかの溶媒は、塩の完全なイオン化を可能にせず、および/または負極複合体中の結合ポリマーに化学的に作用しない。ガンマブチロラクトンは、望ましいハロゲン化アルカリ金属塩の溶解およびイオン化を可能にすることが見出されている。これにより、ハロゲン化アルカリ金属塩の良好な溶解性と、TFEテフロン
c、PVDF、ブタジエンゴムおよび他のバインダーに対する適合性とが組み合わされる。気体性分解生成物を伴うLiClなどのハロゲン化塩の使用により、リチウム化プロセスの間の固体沈殿物の生成が防がれる。リチウム化プロセス生成物は、主にリチウムイオンおよびリチウムガスであるので、非水性溶媒溶液中に蓄積し得る固体沈殿物または中間化合物はほとんど生じない。生産システムの長期間の連続操作の間に、固体沈殿物上よりも非水性溶媒溶液から溶解した気体を除去することが好ましい。
【0034】
ガンマブチロラクトンはまた、約-3ボルトのリチウム電位 対 標準的水素電極(SHE)などの可能な電位窓を有する。これは、高い誘電率および低い凝固点を有する可能な電解質であり、1Mまでの濃度のLiClを溶解およびイオン化し得る。この値に達するために適当な熱量が使用され得る。一態様において、1Mまでの濃度のLiClを溶解およびイオン化するための熱は、約30℃〜65℃である。より好ましい態様において、熱は、約38℃〜55℃である。最も好ましい態様において、熱は約45℃である。リチウム化タンクはまた、塩濃度喪失の局在化を防ぐために、内部循環ポンプおよび分配マニホールドを有し得る。
【0035】
本発明において、CO
2またはSO
2などの溶解した気体は、リチウム化プロセスを高め得ることが見出された。これは、塩の溶解度、非水性溶媒のイオン導電性を高め、リチウム化の効率を二倍にする。CO
2は、安価であり、容易に乾燥し、化学的に安全でかつ高品質のSEI層のための有力な建造ブロック(building block)気体であるので、好ましい溶解気体として選択されている。CO
2は優先的に、安定で不溶性のSEI物質(Li
2O、Li
2CO
3など)を形成するリチウム化プロセスの際に、微量のH
2OおよびLi
+と反応する。
図8および10は、前リチウム化ありおよびなしのLiCoO
2/グラファイトセルの操作効率を例示する。リチウム化タンクの湿度レベルは、このプロセスによるCO
2およびH
2Oの消費により下がり、タンク中の湿度レベルを約5〜20ppmの間に制御するように注意が払われる(
図2参照)。この方法において、高品質SEI物質を有するリチウム化負極は、連続的に作製される。
【0036】
ガンマブチロラクトン溶媒中の1MのLiCl塩由来のリチウムイオンのインターカレーションまたはめっきのプロセス(または一般的にリチウム化)は、負極シートと参照電極の間で2mA/cm
2以上の還元電流密度まで測定されて、約4.1ボルトで起こる。インターカレーション速度がこの電流密度よりもかなり高く増加する場合、最終的な電池または電気化学的セルの性能に悪影響を及ぼす樹枝状結晶またはリチウムめっきが生じ始め得る。これは、グラファイト孔隙率(porosity)などに応じて変化する。電流および依存電圧(dependant voltage)の両方を正確に調節するために、場プレートを、
図2および4に示すようなゾーンに分割する必要があり得る。例としてナトリウムなどの他の金属も、この方法によりめっきまたはインターカレートされ得る。上述のように、ハロゲン化アルカリ金属塩を使用した際のインターカレーションプロセスの副生成物は、カウンター電極(場プレート)で放出するガスである。好ましい態様において、放出ガスは、F
2、Cl
2、Br
2およびそれらの混合物から選択される。より好ましい態様において、放出ガスはCl
2である。
【0037】
リチウム化槽に進入させる前に、
図4に示されるように、負極物質を電解液に前浸漬し得る。負極物質の前浸漬により、リチウム化プロセスの開始前に物質を完全に湿らせることが確実になる。この前浸漬槽は、リチウム塩ありまたはなし、散布ガスありまたはなし、およびSEI促進添加剤ありまたはなしで非水性溶媒を含み得る。
【0038】
場プレートまたはカウンター電極での気体の放出は、槽溶液中に進入し、および/または槽溶液から放出される放出ガスを生じ得る。結果的に、溶解した気体および放出された気体の増大(build-up)を調節することは、例えば塩素ガスの放出時に微量の水の混入物(contamination)が塩素ガスと反応してHClを形成する仮定の場合において、腐食を回避するために望ましい。タンクアセンブリは、液体の頂部で乾燥ガス被覆(blanket)を使用することにより湿度が系内に導入されることを調節するように構成され得る。一態様において、乾燥ガス(1〜10ppm湿度)は、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、六フッ化硫黄(SF
6)、窒素(N
2)、乾燥空気、二酸化炭素(CO
2)およびそれらの混合物から選択される。好ましい態様において、乾燥ガスは、窒素、アルゴン、二酸化炭素、乾燥空気およびそれらの混合物から選択される。湿度の進入はまた、負極フィルムのために、逆流乾燥ガスが系内への空気の進入を緩和するために使用される長く狭いギャップ進入路および排出トンネルを有することによっても調節され得る。
【0039】
図2、3、4および7には、連続リチウム化プロセスの間に、湿度、気体および少量のリチウム化有機化合物を連続的に調節するプロセスおよび装置が図示される。一連の弁により槽から液体を抜く。液体は、バッチ様式でかん流ユニットに送達され得るか、または蒸留または逆浸透を含む条件づけループを通って連続的に循環され得る。かん流ユニットは、蓄積した気体および湿度の両方を液体から除去する真空かん流プロセスにより一回分の物質を取り得る。一態様において、蓄積した気体は、F
2、Cl
2、Br
2およびそれらの混合物から選択される。より好ましい態様において、蓄積した気体はCl
2である。蒸留プロセスの代わりにかん流条件づけを使用することで、沈殿により塩含有量の消失を生じる作業液の塩濃度の変化を防ぎ得る。示された期間にバッチ液が還流されると、低い湿度および気体成分を有する液体が槽に戻り得る。かん流ユニットのサイズおよび速度は、槽内の液体を最適な条件に維持するために、湿度進入速度および気体生成速度と適合され得る。複数のバッチを同時に使用すること、ならびにロータリー蒸発器および高真空条件などの高速かん流装置を使用することにより、かん流速度は増加し得る。かん流バッチ湿度含有量は、典型的に、指数関数的に減衰し、回転(turnover)速度は、エネルギー入力および設備コストを最小限にして、最適な湿度調節のために調整され得る。
【0040】
かん流ユニットは、塩供与(dosing)ユニットの後ろに設置され得る。塩供与ユニットは、所望の塩を非水性溶媒溶液に添加および混合するために使用され得る。供与ユニットの温度は、電解液中の塩の溶解度を最大限にするように維持され得、かん流ユニットのための予備加熱工程として、高い温度も使用され得る。一態様において、該供与ユニットは、約30℃〜65℃の高いプロセス温度を維持する。より好ましい態様において、供与ユニットは、約38℃〜55℃の高いプロセス温度を維持する。最も好ましい態様において、供与ユニットは、約45℃の高いプロセス温度を維持する。かん流ユニットの前にある供与ユニット中の塩の供与の有益性は、塩を完全に乾燥した状態にする必要がないということである。固相の塩からの湿度の除去は非常に困難であり得る。しかしながら、塩が溶液に溶解されると、塩の水分は、かん流プロセスにより取り除くことができる。供与ユニットを高い温度で維持することにより、非水性溶媒中のリチウム塩の溶解度が上昇し、かん流ユニットの前に塩を完全に溶解することが確実になる。
【0041】
条件づけ/補充ループは、連続様式で作動し、膜接触器の使用により、槽の液体から溶解した気体を除去するためにも使用され得る。膜接触器およびかん流ユニットからの気体の放出(output)は、スクラバーを通過して、該プロセスにより生じる塩素ガスなどの任意の排出物が捕捉され得る。一態様において、溶解した気体は、F
2、Cl
2、Br
2およびそれらの混合物から選択される。より好ましい態様において、溶解した気体はCl
2である。槽の液体はまた、望ましくない気体を除去するために膜接触器中で真空または乾燥気体のいずれかと対をなし得る。一態様において、乾燥気体は、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、六フッ化硫黄(SF
6)、窒素(N
2)、二酸化炭素(CO
2)、乾燥した空気およびそれらの混合物から選択される。好ましい態様において、乾燥気体は、窒素、アルゴン、二酸化炭素、乾燥した空気およびそれらの混合物から選択される。
【0042】
設備温度が変化しても、高い槽温度を維持し、一定の(consistent)槽の操作条件を維持するために、直線に並んだヒーターを使用し得る。高いリチウム化槽温度は、高品質のSEI層の形成を補助し得る。一態様において、直線に並んだヒーターにより、約30℃〜55℃の高い槽温度が維持される。より好ましい態様において、直線に並んだヒーターにより約30℃〜45℃の高い槽温度が維持される。最も好ましい態様において、直線に並んだヒーターにより約40℃の高い槽温度が維持される。
【0043】
任意の蓄積した粒状混入物を除去するために、フィルターユニットが使用され得る。フィルターユニットは、ポンプの前および塩供与ユニットの後ろを含むループ内の種々の位置に配置され得る。フィルターユニットは、LiNO
3などの非ハロゲン化リチウム塩を使用することで、場プレートに沈殿が形成される場合に、非水性溶媒から粒状物を除去するために使用され得る。
【0044】
ハロゲン化リチウム塩は、塩供与ユニットを使用して非水性溶媒に添加され得る。過剰な固体リチウム塩は、長期間にわたり所望のレベル(すなわち約0.5M〜1.0Mの飽和溶液)で、ループ中および槽中のリチウム塩濃度を維持するために、供与ユニット中で維持され得る。供与ユニットは、固体塩が槽またはかん流ユニットに進入することを維持するように構成され得る。かん流ユニットの前に塩を供与することにより、顆粒状の高い水結合エネルギーを有する塩を別々に乾燥する必要がなくなる。一態様において、塩供与ユニット中のリチウム塩は、LiF、LiCl、LiBrおよびそれらの混合物から選択される。より好ましい態様において、塩供与ユニット中のハロゲン化リチウム塩は、LiClである。溶解したリチウム塩は、ループの残部(rest)により運ばれ得る。液体循環ループのポンプ速度は、タンク中の一定のリチウム塩濃度を維持するように適合され得る。所定の負極物質の処理速度について、ループ循環速度を適合することにより、リチウム化プロセスの消費と同じ量のリチウム塩が供与される。負極プロセス速度が上がるかまたは下がる場合、ループ循環速度は、槽内の平衡状態を維持するように改変され得る。
【0045】
図2および4に示されるように、特定のタンク条件に応じて、槽の液体は、循環ループ、かん流ユニットまたは蒸留ユニットを使用して処理され得る。循環ループは、塩を供与し得、溶解した気体を除去し得、槽温度を調節し得、かつ粒状混入物を除去し得る。かん流ユニットは、溶液の塩含有量を低下することなく、溶解した気体を除去することおよび湿度成分を除去するために有効である。蒸留ユニットは、溶解した気体の除去、湿度成分の除去、全ての塩成分の除去およびリチウム化有機化合物の除去に有効である。蒸留ユニットからの放出は、必要な場合に塩含有量を再度確立するために供与ユニットおよびかん流ユニットにフィードバックされ得る。蒸留ユニットからの排出物は、リチウム化プロセスにおける再利用のために、使用された塩を回収するために回収および処理され得る。例えば、DMC溶媒は、不溶性の塩以外の全てを洗い流すので、塩は、供与ユニットに再度導入され得る。再循環ループ、かん流ユニットおよび蒸留ユニットは、設備のサイズおよびコストを最小化する手段として、異なるインプットおよびアウトプットの必要物を有する複数のタンクを通じて共有され得る。
【0046】
負極を、不可逆的消失の程度および延長されたサイクル消失量にまでリチウム化する場合、負極は、他で必要とされるよりも少量のリチウム保有正極物質ともに、再充電可能電池または電気化学的セルに組み立てられ得、それにより、電池またはセルのコストを低減しながらも、セルの比容量、比エネルギー、体積容量密度および体積エネルギー密度が向上され得る。
【0047】
負極を、不可逆的消失の程度および延長されたサイクル消失量ならびに意図されるサイクル量にまでリチウム化する場合、負極は、最初にリチウムを含まない正極物質と共に、電池または電気化学的セルに組み立てられ得る。この型の正極物質は、リチウム含有正極物質よりもかなり安価であり、例としては、限定されないが、MnO
2、V
2O
5およびポリアニリンが挙げられる。この方法により製造された電池またはセルのコストは、供給源リチウム塩のコストが低いために、低くなる。
【0048】
したがって、より効率的なリチウムイオン電池および電気化学的セルの低コスト製造についての先の限定は、本明細書に記載の新規の方法により克服される。本発明の物質およびプロセスは、例示のみを意図し、発明の範囲を限定しない以下の実施例に関連して、よりよく理解される。
【実施例】
【0049】
実施例
以下は、負極の調製および処理の詳細な例である。25ミクロンの厚さの銅ホイルを、イソプロピルアルコールおよびKimberly-Clark Kimwipesで洗浄し、油および残骸(debris)を除去し、次いで空気中で乾燥させた。2.1グラムのArkema Fluoropolymers Div.の1,000,000重量PVDF粉末を95mlのAldrich Chemicalの乾燥NMP溶媒に添加して溶液を調製した。溶液をスターラーバーで一晩撹拌してPVDF物質を十分に溶解した。溶液を暗所に保存して、光感受性溶媒が反応するのを防いだ。次いで、33.9mlのこのPVDF溶液を、15グラムのConoco Philips CPreme G5グラファイトおよび0.33グラムのアセチレンブラックに添加して、混合ボールなしで、600RPMでボールミル中、2時間撹拌した。得られたスラリーを、加熱能力を有する真空維持プレートを使用して銅ホイルに対して鋳造した。キャスティングおよび120℃での乾燥後の完成したグラファイトの厚さは、約100ミクロンまたは14mg/cm
2であった。次いで負極シートを、2032ボタン電池アセンブリにおける使用のために、直径15mmのディスク状に切削打ち抜き(die punched)し、次いで約3000psiおよび120℃で加圧した。次いで銅/グラファイト負極ディスを、National Appliance Company model 5851真空オーブン中、125℃および約1mTorrで少なくとも12時間真空焼成した。
【0050】
次いで負極ディスクを、Kaeser 2段階再生乾燥機に通した圧縮乾燥空気により供給された-65℃の露点の空気を有するTerra Universal乾燥空気グローブボックスに移した。次いで真空で負極ディスクを、0.5Mの濃度のLiCl塩溶液を有するGBL溶媒に浸漬した。この電解液は、90℃に加熱して、約1mTorrで6時間、真空かん流して、湿度を約10ppmまで除去して調製した。電流をかける前に、真空条件で30分間、常圧条件で30分間およびリチウム化容器中で30分間、負極ディスクを浸漬した。リチウム化容器は、飽和レベルおよび30℃の温度を達成するために、CO
2ガスの一定の発泡を伴った。Maccor 4300電池テスターからの試験導線を、負極サンプル(赤色作動部)およびガラス炭素(黒色カウンター)電極に連結した。作業電極での電圧は、Ag/AgNO
3非水性電極でモニタリングした。全体で1mAhr/cm
2が達成されるまで、グラファイト負極に2mA/cm
2の還元電流を適用した。次いで、前リチウム化負極ディスクを純粋な蒸留GBL中ですすぎ、真空で乾燥させた。次いで負極ディスクを、LiFePO
4またはLiCoO2のいずれかの12mmの直径の正極ディスクと組み合わせた。使用したセパレーターはCelguard 2400であり、組み立てには約0.2mlの電解液を使用した。電解液は、1MのLiPF
6塩および約10ppmの湿度レベルを有し、1% VCを有する1:1:1のEC:DMC:DECであった。MTIモデルMT-160Dクリンピングツール中でクリンピングする前に、組み立てたセルに真空を適用して気泡を除去した。次いで、12時間の遅延、2回の約C/12形成サイクル〜少なくとも3.7ボルト、約C/3の充電/放電サイクル、およびそれらの間に20分の休息工程を使用して、電池テスターユニットでその後の電気的試験を行った。全ての電池試験は、26℃に調節した自家製環境チャンバー中で行った。
【0051】
Maccorモデル4300電池テスターを使用して、CPremeグラファイト負極、LiFePO
4またはLiCoO
2正極およびCelguard 2400セパレーターを組み合わせたCR2032サイズのボタン電池を試験した。1モーラー濃度のLiPF6塩および1% VCを有するEC:DMC:DECの1:1:1混合物を含む電解液を使用した。負極と正極の両方をPVDFバインダーで鋳造した。しばしば形成サイクルと称される第1充電放電サイクルは、約C/12の電流速度で行った。
図5および6は、LiFePO
4正極に積載した前リチウム化および非前リチウム化のグラファイト負極を使用した第1サイクル不可逆的消失を図示する。2つのサンプルの開始絶対充電容量は、異質の(extraneous)パッケージ変形物のために異なる。しかしながら、不可逆的消失は、記載される方法の典型である。
図5において、ボタン電池の可逆的容量は56%である。
図6において、前リチウム化負極と合わせた場合のボタン電池の可逆的容量は98%である。
図8は、約C/3の速度で充電放電サイクルの延長した範囲にわたり試験した、典型的なLiCoO
2/グラファイト 対 LiCoO
2/前リチウム化グラファイト(それ以外は同じサンプル)を示す。結果は、記載の方法を使用した前リチウム化のために、該電池セルには長時間継続の有益性があることを示す。
図11は、前リチウム化負極を有するセルと対照セルの容量保持を比較することによって、前リチウム化プロセスの際に形成されたSEI層の有効性を示し、両方のセルは、加速試験の形態として、48時間、50℃の加熱に供した。
【0052】
リチウム化を達成するために本発明で使用されたLiCl以外の塩の例はLiNO
3である。LiNO
3により妥当なリチウム化の速度が達成された。しかしながら、LiNO
3を使用して前リチウム化した負極をLiFePO
4正極と対にした場合、おそらくは同定されていない副生物のために、乏しいサイクル化が得られた。この問題は、さらなる負極リンスなどのわずかに複雑な除去プロセスにより解決され得る。
【0053】
現在本発明の好ましい態様であると考えられるものを図示および記載したが、本発明の真の範囲から逸脱することなく、種々の変化および変更がなされ得、均等物がその要素にとって代わり得ることが当業者には理解されよう。したがって、本発明は、開示された特定の態様に限定されることはなく、添付の特許請求の範囲の範囲に該当する全ての態様を含むことが意図される。
【0054】
本発明の態様として、以下のものが挙げられる。
[1](a) 負極を提供する工程;
(b) 非水性溶媒および少なくとも1つの溶解したハロゲン化リチウム塩を含む槽を提供する工程、ここで、前記槽は、好ましくは連続プロセスで、負極と接触し、乾燥ガス被覆により前記槽が被覆される;
(c) 不活性な導電性物質を含む電解場プレートを提供する工程、ここで、前記場プレートは、負極と場プレートの間に場を確立する;ならびに
(d) 負極に還元電流を適用し、場プレートに酸化電流を適用する工程、ここで槽由来のリチウムイオンにより負極がリチウム化される
を含む、好ましくは連続プロセスにおける、負極のリチウム化のための方法。
[2]負極活物質が、炭素、コークス、グラファイト、スズ、酸化スズ、ケイ素、酸化ケイ素、アルミニウム、リチウム活性金属、合金化金属物質およびそれらの混合物から選択される、[1]記載の方法。
[3]非水性溶媒が、炭酸ブチレン、炭酸プロピレン 炭酸ビニレン、炭酸ビニルエチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル、炭酸メチルエチル、アセトニトリル、ガンマブチロラクトン、室温イオン性液およびそれらの混合物から選択される、[1]記載の方法。
[4]非水性溶媒がガンマブチロラクトンである、[3]記載の方法。
[5]溶解したハロゲン化リチウム塩のハロゲンが、イオン性のF
-、Cl
-、Br
-、I
-およびそれらの混合物から選択される、[1]記載の方法。
[6]溶解したハロゲン化リチウム塩がLiClである、[1]記載の方法。
[7]溶解したハロゲン化リチウム塩がLiBrである、[1]記載の方法。
[8]溶解したハロゲン化リチウム塩がLiFである、[1]記載の方法。
[9]電解場プレートが、白金、金、ガラス炭素およびグラファイトから選択される、[1]記載の方法。
[10]リチウム化された負極およびホイルが、再充電可能電池の最終的な組み立てに使用される、[1]記載の方法。
[11]リチウムを最初に含まない正極と対をなす場合、サイクル化に必要なリチウムを提供するために、リチウム化された負極が電気化学的セルの組み立てに使用される、[1]記載の方法。
[12]電気化学的セルの組み立ての前に、負極上で外部から前充電サイクルを実施する工程を含む、[1]記載の方法。
[13]場プレートで生じた放出ガスが、かん流ユニット、膜接触器、ガススクラバーおよびそれらの組み合わせにより捕捉される、[1]記載の方法。
[14]一連の並行な連結を含むループ内に連結された、1つ以上のかん流ユニット、膜接触器、ガススクラバー、槽、直線に並んだヒーター、フィルター、塩供与ユニット、ポンプ、弁およびそれらの組み合わせを含む、[1]記載の方法。
[15]前記直線に並んだヒーターが、非水性溶媒および溶解したハロゲン化アルカリ金属塩を30℃〜65℃の温度に加熱する、[14]記載の方法。
[16]前記温度が約40℃である、[15]記載の方法。
[17]溶媒中で負極をリンスするために、別々の浸漬槽が使用される、[1]記載の方法。
[18]使用される非水性溶媒の蒸留およびその後の光非溶媒和液(light non-solvating fluid)中の塩のリンスにより、塩が定期的に回収される、[1]記載の方法。
[19]前記連続プロセスの速度が、上昇および低下され得る、[1]または[14]記載の方法。
[20]負極およびホイルの連続リチウム化の速度が、上昇および低下され得る、[1]または[17]記載の方法。
[21]ループ循環の速度が、上昇および低下され得る、[1]または[17]記載の方法。
[22]非水性溶媒が、高品質SEIの形成を容易にするための添加剤を含む、[3]記載の方法。
[23]添加物が炭酸ビニレンである、[22]記載の方法。
[24]溶解したガスが添加される、[1]記載の方法。
[25]溶解したガスが二酸化炭素である、[24]記載の方法。
[26](a) 負極を提供する工程;
(b) 非水性溶媒および少なくとも1つの溶解したアルカリ金属塩を含む槽を提供する工程、ここで、前記槽は、好ましくは連続プロセスで、負極と接触し、乾燥ガス被覆により前記槽が被覆される;
(c) 不活性の導電性物質を含む電解場プレートを提供する工程、ここで、前記場プレートは、負極と場プレートの間に場を確立する;ならびに
(d) 負極に還元電流を適用し、場プレートに酸化電流を適用する工程、ここで、槽由来の金属イオンにより負極がアルカリ化される
を含む、好ましくは連続プロセスにおける、負極のアルカリ化のための方法。