(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ヘッド部から硬化前流動物をステージに向かって吐出して硬化前層状物を形成し、該硬化前層状物を平坦化部で平坦化したあと硬化するという一連の操作を繰り返すことにより、3次元物体を造形する3次元造形装置であって、
前記ヘッド部は、第1の硬化前流動物を吐出する第1の吐出ヘッド及び前記第1の硬化前流動物とは種類の異なる第2の硬化前流動物を吐出する第2の吐出ヘッドを有し、
前記平坦化部は、前記第1の硬化前流動物により形成された第1の硬化前層状物を平坦化する専用の第1の平坦化部材及び前記第2の硬化前流動物により形成された第2の硬化前層状物を平坦化する専用の第2の平坦化部材を有すると共に、第1及び第2の平坦化部材をそれぞれ独立して前記ステージに対して接近・離間させる駆動機構を有する、
3次元造形装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1の3次元造形装置では、ローラ部を1つしか備えていないため、モデル材の余剰分を回収するときもサポート材の余剰分を回収するときも同じローラ部を使用する。そのため、ローラ部に付着したモデル材がステージ上のサポート材と混ざり合ったり、ローラ部に付着したサポート材がステージ上のモデル材と混ざり合ったりするという問題があった。
【0005】
本発明はこうした課題を解決するためになされたものであり、異なる種類の硬化前流動物が3次元物体の造形中に混ざり合わないようにすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の3次元造形装置は、
ヘッド部から硬化前流動物をステージに向かって吐出して硬化前層状物を形成し、該硬化前層状物を平坦化部で平坦化したあと硬化するという一連の操作を繰り返すことにより、3次元物体を造形する3次元造形装置であって、
前記ヘッド部は、第1の硬化前流動物を吐出する第1の吐出ヘッド及び前記第1の硬化前流動物とは種類の異なる第2の硬化前流動物を吐出する第2の吐出ヘッドを有し、
前記平坦化部は、前記第1の硬化前流動物により形成された第1の硬化前層状物を平坦化する第1の平坦化部材及び前記第2の硬化前流動物により形成された第2の硬化前層状物を平坦化する第2の平坦化部材を有すると共に、第1及び第2の平坦化部材をそれぞれ独立して前記ステージに対して接近・離間させる駆動機構を有する、
ものである。
【0007】
この3次元造形装置では、第1の硬化前流動物が硬化した第1の樹脂と前記第2の硬化前流動物が硬化した第2の樹脂とが混在している層を、以下の第1の工程と第2の工程を行うことにより形成することができる。すなわち、第1の工程では、第1の吐出ヘッドから第1の硬化前流動物を吐出して第1の硬化前層状物を形成させ、第1の硬化前層状物から離間した位置に第2の平坦化部材を待避させた状態で第1の硬化前層状物を前記第1の平坦化部材で平坦化したあと硬化させる。第2の工程では、第2の吐出ヘッドから第2の硬化前流動物を吐出して第2の硬化前層状物を形成させ、第2の硬化前層状物から離間した位置に第1の平坦化部材を待避させた状態で第2の硬化前層状物を第2の平坦化部材で平坦化したあと硬化させる。なお、第1の工程と第2の工程を実施する順序は、この順に行ってもよいし、逆の順序で行ってもよい。こうすれば、第1の硬化前層状物の平坦化には第1の平坦化部材を用い、第2の硬化前層状物の平坦化には第2の平坦化部材を用いるため、異なる種類の硬化前流動物が3次元物体の造形中に混ざり合うのを回避することができる。
【0008】
本発明の3次元造形装置において、前記第1の硬化前流動物は、前記3次元物体のうち最終的に必要な部位を構成するモデル材の元となる材料であり、前記第2の硬化前流動物は、前記3次元物体のうち最終的に除去される部位を構成するサポート材の元となる材料であってもよい。こうすれば、モデル材とサポート材とを用いて3次元物体を作製する場合に、モデル材とサポート材とが混ざり合うのを回避することができる。
【0009】
本発明の3次元造形装置において、前記第1及び第2の平坦化部材は、共にローラとしてもよいし、共にスキージとしてもよいし、一方がローラでもう一方がスキージとしてもよい。なお、ローラを使うにしてもスキージを使うにしても、掻き取った流動物を回収するのが好ましい。
【0010】
本発明の3次元造形装置において、前記ヘッド部、前記平坦化部及び前記平坦化後の硬化前層状物を硬化させる硬化実施部とが一つの筐体にまとめて搭載されていてもよい。こうすれば、ヘッド部、平坦化部及び硬化実施部がそれぞれ別々に搭載されている場合に比べて、装置構成がコンパクトになる。
【0011】
本発明の3次元造形装置は、前記第1の硬化前層状物が硬化した第1の樹脂と前記第2の硬化前層状物が硬化した第2の樹脂とが混在している層を形成するにあたり、前記第1の吐出ヘッドから前記第1の硬化前流動物を吐出して前記第1の硬化前層状物を形成させ、該第1の硬化前層状物から離間した位置に前記第2の平坦化部材を待避させた状態で前記第1の硬化前層状物を前記第1の平坦化部材で平坦化し、その後硬化させる第1の工程と、前記第2の吐出ヘッドから前記第2の硬化前流動物を吐出して前記第2の硬化前層状物を形成させ、該第2の硬化前層状物から離間した位置に前記第1の平坦化部材を待避させた状態で前記第2の硬化前層状物を前記第2の平坦化部材で平坦化し、その後硬化させる第2の工程とをこの順序で又は逆の順序で実行するよう前記ヘッド部及び前記平坦化部を制御する制御手段を備えていてもよい。こうすれば、第1の樹脂と第2の樹脂とが混在している層を形成するにあたり、第1の硬化前層状物の平坦化には第1の平坦化部材を用い、第2の硬化前層状物の平坦化には第2の平坦化部材を用いるため、異なる種類の硬化前流動物が混ざり合うのを回避することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の好適な実施形態を、図面を参照しながら以下に説明する。
図1は3次元造形装置10の概略構成図、
図2は第1のローラ35(又は第2のローラ36)とその周辺部材の断面図である。なお、以下の説明において、X,Y,Z方向を用いるが、それぞれの方向は
図1に示した通りである。
【0014】
本実施形態の3次元造形装置10は、ステージ12と、ヘッド部20と、平坦化部30と、硬化実施部50と、コントローラ(制御手段)60とを備えている。この3次元造形装置10は、インクジェット方式のヘッド部20から硬化前流動物をステージ12に向かって吐出して硬化前層状物を形成し、その硬化前層状物を平坦化部30で平坦化したあと硬化実施部50で硬化するという一連の操作を繰り返す。
【0015】
ステージ12は、造形中の3次元物体を支持するための長方形状の台である。このステージ12は、3次元物体を造形するための造形エリア12aを有している。ステージ12は、Y方向のボールネジ14の移動体に取り付けられ、ボールネジ14をモータ15で駆動することによりY方向(左右方向)へ移動可能である。ステージ12は、Z方向のボールネジ16の移動体に取り付けられ、ボールネジ16をモータ17で駆動することによりZ方向(上下方向)へ移動可能である。
【0016】
ヘッド部20は、ステージ12をX方向に沿って跨(また)ぐように配置されたフレーム25に取り付けられている。このヘッド部20は、ステージ12の造形エリア12aのX方向の幅と略同じ長さの第1のラインヘッド21と第2のラインヘッド22とを備えている。第1のラインヘッド21は、小型の第1の吐出ヘッド23を
図1のX方向にジグザグに並べたものである。第1の吐出ヘッド23は、ステージ12に対向する面にノズル列を有している。ノズル列は、多数のノズルがX方向と平行になるように設けられている。第1の吐出ヘッド23をX方向にジグザグではなく直線的に並べたとすると、隣り合う第1の吐出ヘッド23同士の間にはノズルの存在しない領域が生じてしまう。そのため、ノズルの存在しない領域が生じないように、第1の吐出ヘッド23をX方向にジグザグで且つ一部がオーバーラップするように並べている。第1の吐出ヘッド23は、第1の硬化前流動物の液滴をインクジェット方式によりノズルからステージ12に向かって吐出可能となっている。第1の硬化前流動物は、本実施形態では、所定の波長の紫外線が照射されると重合反応を起こしてモデル材となる材料、つまり、モデル材の元となる光硬化性樹脂である。第1の吐出ヘッド23の各々には、図示しない供給ラインを介して第1の硬化前流動物が供給される。第2のラインヘッド22は、小型の第2の吐出ヘッド24を
図1のX方向にジグザグに並べたものである。ジグザグに並べる理由は既に述べたとおりである。第2の吐出ヘッド24は、第2の硬化前流動物の液滴をインクジェット方式によりノズルからステージに向かって吐出可能となっている。第2の硬化前流動物は、紫外線が照射されると重合反応を起こしてサポート材となる材料、つまり、サポート材の元となる光硬化性樹脂である。第2の吐出ヘッド24の各々には、図示しない供給ラインを介して第2の硬化前流動物が供給される。
【0017】
ここで、モデル材とは、3次元物体のうち最終的に必要な部位(3次元目的物)を構成する材料であり、サポート材とは、3次元物体のうち最終的に除去される部位を構成する材料である。3次元目的物がピラミッド状であれば、サポート材を用いることなくモデル材をピラミッド状に積み上げていくことができる。しかし、3次元目的物が逆ピラミッド状であれば、モデル材だけを積層して造形することはできず、足場となる部分をサポート材で形成しながらモデル材を積み上げていき、最後にサポート材を除去する必要がある。サポート材を除去するには、サポート材を手ではぎ取ったり溶媒(例えば水)に溶かしたりする方法が知られている。なお、モデル材やサポート材の具体的な材料は周知である(例えば特開2012−111226号公報参照)。
【0018】
平坦化部30は、ステージ12をX方向に沿って跨(また)ぐように配置された第1及び第2のフレーム31,32を備えている。
【0019】
第1のフレーム31には、モータ35aによって回転駆動される第1のローラ(第1の平坦化部材)35が取り付けられているほか、
図2に示す第1のブレード37や第1の回収タンク39が取り付けられている。第1のフレーム31は、第1のエアシリンダ(駆動機構)33によって上下動可能となっている。第1のローラ35は、
図2に示すように、第1の硬化前層状物41の凹凸表面を平坦化するものである。第1の硬化前層状物41は、第1のラインヘッド21から吐出された第1の硬化前流動物によって造形エリア12aに形成された層状物である。第1のフレーム31が下方位置にあるとき(
図1の実線参照)、第1のローラ35はステージ12に接近した位置である定位置に配置されて硬化前層状物を平坦化可能な状態となる。一方、第1のフレーム31が上方位置にあるとき(
図1の1点鎖線参照)、第1のローラ35はステージ12から上方に離間した位置である退避位置に配置されて硬化前層状物と接触しない状態となる。第1のブレード37は、第1のローラ35に付着した第1の硬化前流動物を削ぎ落とすものである。第1の回収タンク39は、第1のブレード37によって削ぎ落とされた第1の硬化前流動物を回収するものである。
【0020】
第2のフレーム32には、モータ36aによって回転駆動される第2のローラ(第2の平坦化部材)36が取り付けられているほか、第1のローラ35と同様、第2のブレード38や第2の回収タンク40が取り付けられている。なお、第2のローラ36や第2のブレード38、第2の回収タンク40は、第1のローラ35や第1のブレード37、第1の回収タンク39と同じであるため、
図2では括弧内にこれらの符号を示した。第2のフレーム32は、第2のエアシリンダ(駆動機構)34によって上下動可能となっている。第2のローラ36は、第2の硬化前層状物42の凹凸表面を平坦化するものである。第2の硬化前層状物42は、第2のラインヘッド21から吐出された第2の硬化前流動物によって造形エリア12aに形成された層状物である。第2のフレーム32が下方位置にあるとき(
図1の実線参照)、第2のローラ36はステージ12に接近した位置である定位置に配置されて硬化前層状物を平坦化可能な状態となる。一方、第2のフレーム32が上方位置にあるとき(
図1の1点鎖線参照)、第2のローラ36はステージ12から離間した位置である退避位置に配置されて硬化前層状物と接触しない状態となる。第2のブレード38は、第2のローラ36に付着した第2の硬化前流動物を削ぎ落とすものである。第2の回収タンク40は、第2のブレード38によって削ぎ落とされた第2の硬化前流動物を回収するものである。
【0021】
硬化実施部50は、ステージ12をX方向に沿って跨(また)ぐように配置されたフレーム55に取り付けられている。この硬化実施部50は、第1及び第2の硬化前流動物に光重合反応を起こさせる波長の紫外線をステージ12に向かって照射可能なUVランプ52を備えている。
【0022】
コントローラ60は、CPU62を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、処理プログラムを記憶するROM64、各種データを記憶するHDD66、作業領域として用いられるRAM68などを備えている。これらは、図示しないバスを介して電気的に接続されている。コントローラ60は、入力デバイス70からの指令信号やヘッド部20の各種センサからの検出信号、モータ15,17からの検出信号などを入力可能である。また、コントローラ60は、ステージ12を移動させるモータ15,17やヘッド部20の各種アクチュエータ、第1及び第2のローラ35,36を回転させるモータ35a,36a、第1及び第2のフレーム31,32を昇降させる第1及び第2のエアシリンダ33,34、UVランプ52のスイッチなどへ制御信号を出力可能である。
【0023】
次に、こうした3次元造形装置10の動作について説明する。オペレータが入力デバイス70から3次元造形スタートの指示を入力すると、コントローラ60のCPU62は、ROM64から3次元造形ルーチンのプログラムを読み出し、これを実行する。
図3は、3次元造形ルーチンのフローチャートである。なお、HDD66には、造形しようとする3次元物体の下から上へ所定間隔ごとに水平方向に層状にスライスしたスライスデータが保存されているものとする。スライスデータは、CADデータを加工することにより作成される。これらのスライスデータの中には、モデル材とサポート材とが混在した層のスライスデータもあれば、モデル材のみの層のスライスデータもある。例えば、3次元目的物が略正八面体を縦置きにした形状の場合、スライスデータは
図4に示すようになる。各スライスデータにおいて、白色部分はサポート材S、網かけ部分はモデル材Mを表す。この場合、三次元物体の下から中央までのスライスデータはモデル材Mとサポート材Sとの混合層であり、中央へ行くにしたがって、スライスデータに占めるサポート材Sの割合が小さく且つモデル材Mの割合が高くなる。また、三次元物体の中央から上までのスライスデータはモデル材Mのみの層である。
【0024】
CPU62は、3次元ルーチンのプログラムを開始すると、まず、第1及び第2のローラ35,36を退避位置へ移動させる(ステップS102)。具体的には、CPU62は、第1及び第2のエアシリンダ33,34のスイッチをオフにすることにより、第1及び第2のフレーム31,32を上方位置に配置する。これにより、第1及び第2のローラ35,36は、
図1の1点鎖線で示す退避位置に位置決めされる。
【0025】
次に、CPU62は、造形エリア12aを初期位置へ配置する(ステップS104)。具体的には、CPU62は、造形エリア12aがヘッド部20の下方に位置するようにモータ15を制御してステージ12をY方向へ移動させると共に、ヘッド部20のノズル位置と造形エリア12aの表面との間隔が印刷に適した所定の間隔となるようにモータ17を制御してステージ12をZ方向に移動させる。
【0026】
次に、CPU62は、第1の硬化前層状物を印刷する(ステップS106)。具体的には、CPU62は、今回の印刷に用いるスライスデータのうちモデル材のデータに基づいて、第1のラインヘッド21を構成する第1の吐出ヘッド23から第1の硬化前流動物を吐出させることにより、第1の硬化前層状物を印刷する。
【0027】
次に、CPU62は、第1のローラ35を定位置へ移動させる(ステップS108)。具体的には、CPU62は、第1のエアシリンダ33のスイッチをオンにすることにより、第1のフレーム31を
図1の実線で示す下方位置へ移動させる。これに伴って、第1のローラ35は定位置へ移動する。なお、第2のローラ36は退避位置のまま維持する。
【0028】
次に、CPU62は、印刷した第1の硬化前層状物の平坦化を行う(ステップS110)。具体的には、CPU62は、造形エリア12aが平坦化部30の下方を通過するようにモータ15を制御してステージ12をY方向へ移動させると共に、第1のローラ35の周速がステージ12の移動速度と一致するようにモータ35aを制御する。第1のローラ35は、定位置に配置された状態では、印刷された第1の硬化前層状物の表面とわずかに接触するように設計されている。そのため、第1の硬化前層状物の凹凸表面は第1のローラ35によって平坦化される。このとき、第2のローラ36は退避位置にあるため、第1の硬化前層状物と接触することはない。
【0029】
第1の硬化前層状物の平坦化が終了した後、CPU62は、第1のローラ35を退避位置へ退避させる(ステップS112)。具体的には、CPU62は、第1のエアシリンダ33のスイッチをオフにすることにより、第1のフレーム31を
図1の1点鎖線で示す上方位置へ移動させる。これに伴って、第1のローラ35は退避位置へ移動する。その結果、第1及び第2のローラ35,36は共に退避位置に配置された状態となる。
【0030】
次に、CPU62は、第1の硬化前層状物の硬化を実施する(ステップS114)。具体的には、CPU62は、UVランプ52のスイッチをオンにすると共に、造形エリア12aが硬化実施部50の下方を所定の速度で通過するようにモータ15を制御してステージ12をY方向へ移動させる。これにより、第1の硬化前層状物はUVランプ52によって重合して硬化する。その結果、モデル材の層が形成される。
【0031】
次に、CPU62は、今回、第2の硬化前層状物の印刷が必要か否かを判定する(ステップS116)。
図4のスライスデータを例に挙げれば、CPU62は、3次元物体の下から中央まではサポート材Sが存在するため第2の硬化前層状物の印刷が必要と判定し、中央から上まではモデル材Mのみのため第2の硬化前層状物の印刷は不要と判定する。
【0032】
ステップS116で第2の硬化前層状物の印刷が必要だったならば、CPU62は、造形エリア12aを初期位置へ戻す(ステップS118)。具体的には、CPU62は、造形エリア12aがヘッド部20の下方に位置するようにモータ15を制御してステージ12をY方向へ移動させる。このとき、ヘッド部20のノズル位置と造形エリア12aの表面との間隔は変更しない。
【0033】
次に、CPU62は、第2の硬化前層状物を印刷する(ステップS120)。具体的には、CPU62は、今回の印刷に用いるスライスデータのうちサポート材のデータに基づいて、第2のラインヘッド22を構成する第2の吐出ヘッド24から第2の硬化前流動物を吐出させることにより、第2の硬化前層状物を印刷する。第2の硬化前層状物は直前に形成したモデル材と同じ層に印刷される。
【0034】
次に、CPU62は、第2のローラ36を定位置へ移動させる(ステップS122)。具体的には、CPU62は、第2のエアシリンダ34のスイッチをオンにすることにより、第2のフレーム32を
図1の実線で示す下方位置へ移動させる。これに伴って、第2のローラ36は定位置へ移動する。なお、第1のローラ35は退避位置のまま維持する。
【0035】
次に、CPU62は、印刷した第2の硬化前層状物の平坦化を行う(ステップS124)。具体的には、CPU62は、造形エリア12aが平坦化部30の下方を通過するようにモータ15を制御してステージ12をY方向へ移動させると共に、第2のローラ36の周速がステージ12の移動速度と一致するようにモータ36aを制御する。第2のローラ36は、定位置に配置された状態では、印刷された第2の硬化前層状物の表面とわずかに接触するように設計されている。そのため、第2の硬化前層状物の凹凸表面は第2のローラ36によって平坦化される。このとき、第1のローラ35は退避位置にあるため、第2の硬化前層状物と接触することはない。
【0036】
第2の硬化前層状物の平坦化が終了した後、CPU62は、第2のローラ36を退避位置へ退避させる(ステップS126)。具体的には、CPU62は、第2のエアシリンダ34のスイッチをオフにすることにより、第2のフレーム32を
図1の1点鎖線で示す上方位置へ移動させる。これに伴って、第2のローラ36は退避位置へ移動する。その結果、第1及び第2のローラ35,36は共に退避位置に配置された状態となる。
【0037】
次に、CPU62は、第2の硬化前層状物の硬化を実施する(ステップS128)。具体的には、CPU62は、UVランプ52のスイッチをオンにすると共に、造形エリア12aが硬化実施部50の下方を所定の速度で通過するようにモータ15を制御してステージ12をY方向へ移動させる。これにより、第2の硬化前層状物はUVランプ52によって重合して硬化する。その結果、モデル材とサポート材とが混在した層が形成される。
【0038】
次に、CPU62は、3次元物体が完成したか否かを判定する(ステップS130)。具体的には、今回の3次元物体を造形するためのすべてのスライスデータについて処理を実行したか否かを判定する。3次元物体が完成していなければ、つまりまだ未処理のスライスデータが残っていれば、CPU62は、ステージ12を一段下げ(ステップS132)、再びステップS104以降の処理を実行する。その際、スライスデータは、前回のスライスデータよりも3次元物体の一つ上の層のものを使用する。なお、ステージ12を一段下げることにより、ヘッド部20のノズル位置と造形途中の3次元物体の表面との間隔が印刷に適した所定の間隔となる。一方、ステップS130で3次元物体が完成したならば、つまり未処理のスライスデータが残っていなければ、CPU62は、このルーチンを終了する。
【0039】
このようにして得られた3次元物体は、不要なサポート材を包含しているため、サポート材を手で剥がすか所定の溶媒で溶解させて除去することにより、モデル材のみからなる3次元目的物を得る。
【0040】
なお、上述した3次元造形ルーチンのステップS104〜S114が本発明の制御手段が実行する第1の工程に相当し、ステップS118〜S128が第2の工程に相当する。
【0041】
以上詳述した本実施形態の3次元造形装置10によれば、モデル材とサポート材とが混在している層を形成するにあたり、第1の硬化前層状物の平坦化には第1のローラ35を用い、第2の硬化前層状物の平坦化には第2のローラ36を用いるため、異なる種類の硬化前流動物、つまりモデル材の元となる第1の硬化前流動物とサポート材の元となる第2の硬化前流動物、がローラ上で混ざり合うのを回避することができる。
【0042】
また、第1及び第2の硬化前層状物を平坦化するのに第1及び第2のローラ35,36を使用したため、第1の硬化前層状物や第2の硬化前層状物の移動方向と同方向にローラを回転させることにより、これらの表面をスムーズに平坦化することができる。
【0043】
更に、各硬化前層状物の平坦化を行うため、3次元物体の縦方向の精度が高くなり、ひいては3次元目的物の縦方向の精度が高くなる。
【0044】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0045】
例えば、上述した実施形態では、第1及び第2の平坦化部材として第1及び第2のローラ35,36を用いたが、これらの代わりに
図5に示すように第1及び第2のスキージ135,136を用いてもよい。この場合も、各スキージ135,136を独立して退避位置と定位置のいずれかに位置決めすることができるため、モデル材の元となる第1の硬化前流動物とサポート材の元となる第2の硬化前流動物がスキージ上で混ざり合うのを回避することができる。なお、第1及び第2の平坦化部材の一方をローラ、他方をスキージとしてもよい。
【0046】
上述した実施形態では、第1の硬化前流動物としてモデル材の元となる材料、第2の硬化前流動物としてサポート材の元となる材料を例示したが、特にモデル材とサポート材の2つに限定されるものではなく、互いに種類の異なる材料であればよい。例えば、第1及び第2の硬化前流動物として、種類の異なるモデル材の元となる材料を用いてもよい。その場合、種類の異なるモデル材の元となる材料同士がローラ上で混ざり合うのを回避することができる。
【0047】
上述した実施形態では、第1及び第2の硬化前流動物を例示したが、3次元物体によっては第1〜第n(nは3以上の整数)の硬化前流動物、つまりn種類の硬化前流動物を用いるようにしてもよい。その場合、硬化前流動物の種類ごとにローラを設け、各ローラを独立して定位置と退避位置に位置決めできるように構成する。こうすることにより、n種類の硬化前流動物がローラ上で混ざり合うのを回避することができる。
【0048】
上述した実施形態では、第1及び第2の硬化前流動物として、同じ波長の光で硬化する光硬化性樹脂を例示したが、異なる波長の光で硬化する硬化性樹脂を用いてもよい。その場合、硬化実施部50には、各波長に合ったUVランプを用意すればよい。また、光硬化性樹脂以外に、熱硬化性樹脂を用いてもよい。例えば、モデル材の元となる材料は光硬化性樹脂、サポート材の元となる材料は熱硬化性樹脂としてもよい。
【0049】
上述した実施形態では、モデル材とサポート材とが混在する層を形成するにあたり、まずモデル材の部分を形成し、次にサポート材の部分を形成したが、この順序を逆にしてもよい。
【0050】
上述した実施形態では、第1のエアシリンダ33で第1のフレーム31を上下することにより第1のローラ35を定位置と退避位置との間で位置決めし、第2のエアシリンダ34で第2のフレーム32を上下することにより第2のローラ36を定位置と退避位置との間で位置決めしたが、駆動機構はエアシリンダに限定されるものではなく、例えばモータやソレノイドなどを用いてもよい。また、第1のフレーム31を固定したまま、第1のローラ35をリニアモータやボールネジなどで第1のフレーム31に対して上下動可能に取り付けてもよい。第2のローラ36についても同様である。
【0051】
上述した実施形態では、ヘッド部20は、複数の第1の吐出ヘッド23を有する第1のラインヘッド21と複数の第2の吐出ヘッド24を有する2のラインヘッド22とを備えるものとしたが、特にラインヘッドに限定されるものではない。例えば、第1の吐出ヘッド23及び第2の吐出ヘッド24をX方向に移動可能なキャリッジに搭載し、キャリッジの移動に伴って第1又は第2の吐出ヘッド23,24から硬化前流動物を吐出するようにしてもよい。
【0052】
上述した実施形態では、第1のローラ35を第1のフレーム31に、第2のローラ36を第2のフレーム32に搭載したが、両方のローラ35,36を1つのフレームに搭載してもよい。この場合、駆動機構としては、ローラ35の昇降装置とローラ36の昇降装置とをそれぞれ個別にフレームに取り付ければよい。
【0053】
上述した実施形態では、ヘッド部20と、第1及び第2ローラ35,36を有する平坦化部30と、硬化実施部50とを、それぞれ異なるフレームに搭載したが、
図6に示すように、これらを一つの筐体18にまとめて搭載してもよい。この場合、第1及び第2ローラ35,36の駆動機構としては、ローラ35を昇降可能な昇降装置とローラ36を昇降可能な昇降装置とをそれぞれ個別に筐体18に取り付ければよい。昇降装置としては、リニアモータやボールネジ機構などが挙げられる。このようにしても、上述した実施形態と同様の効果が得られる。また、上述した実施形態に比べて装置構成がコンパクトになる。