(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記粗メッシュソリッドモデル作成部は、前記細密メッシュ表面シェルモデルのメッシュを粗くした粗メッシュ表面シェルモデルを作成し、少なくとも前記たわみ考慮金型のサイズ情報に基づいて、前記粗メッシュ表面シェルモデルから、簡易型の前記粗メッシュソリッドモデルを作成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の金型たわみモデル作成システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、従来技術において、前者のような静解析により得られた金型の下死点におけるたわみ量を剛体シェルモデルにマッピングする方法では、成形途中のたわみ量の変化を考慮できないため、十分な解析精度が得られない。また、一般に金型の構造は、シミュレーションを行うダイフェース設計時点では詳細には確定していないため、後者のような金型全体をソリッド要素でモデル化する方法は、通常の設計ルーチンの中で実施するのが困難である。さらに、前者の静解析結果をマッピングする方法では、複数回計算を実施する必要があるため工数の増加が大きく、後者のソリッドモデルによる解析は、通常のシェルモデルによる解析と比較して多大な設定工数及び計算時間を要する。
【0012】
そこで、本発明は、プレス成形解析に関する上述のような実情に鑑みてなされたもので、通常の設計ルーチンの中で、工数の増加を抑制しながら、精度の高い解析を行うことが可能な金型たわみモデルを作成し、このモデルを用いて成形解析を行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するため、本発明に係る金型たわみモデル作成システムおよびプログラムは、次のように構成したことを特徴とする。
【0014】
本発明に係る金型たわみモデル作成システムの一態様は、
プレス成形金型を用いたプレス成形を有限要素法によって解析するための前記金型の解析モデルにおける金型たわみモデル作成システムであって、
前記金型のうち、たわみを考慮する必要のあるたわみ考慮金型の表面のモデルとして、細密メッシュで非剛性のシェル要素からなる細密メッシュ表面シェルモデルを取得する細密メッシュ表面シェルモデル取得部と、
前記たわみ考慮金型を粗いメッシュで弾性体のソリッド要素からなる粗メッシュソリッドモデルを作成する粗メッシュソリッドモデル作成部と、
前記粗メッシュソリッドモデルの表面と、前記細密メッシュ表面シェルモデルとを所定の接触条件により結合する接着面作成部とを有することを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、細密メッシュ表面シェルモデル取得部は、たわみ考慮金型の表面のモデルとして、細密メッシュからなる非剛性のシェル要素からなる細密メッシュ表面シェルモデルを取得する。細密メッシュ表面シェルモデルは、予め用意されている細密メッシュの剛体シェルモデルを用いて取得してもよいし、CADデータから作成することにより取得してもよい。
粗メッシュソリッドモデル作成部は、たわみ考慮金型を粗いメッシュの弾性体のソリッド要素によってモデル化した粗メッシュソリッドモデルを作成する。粗メッシュソリッドモデルは、CADデータから作成してもよいし、たわみ考慮金型のサイズ情報に基づいて、簡易的に作成してもよい。
接着面作成部は、粗メッシュソリッドモデルの表面と、細密メッシュ表面シェルモデルとを所定の接触条件により結合する。所定の接触条件としては、例えばたわみ考慮金型を変形させた場合に、粗メッシュソリッドモデルの表面と、細密メッシュ表面シェルモデルとが接しているところは、互いに同じように動き、接していないところは、一定の距離を保つというような条件が挙げられる。
以上のように、本態様によれば、たわみ考慮金型を、弾性体非剛性の細密メッシュ表面シェルモデルと、弾性体の粗メッシュソリッドモデルとを結合させたモデルとして作成するので、剛体シェルモデルにマッピングする方法では行うことのできなかった成形途中におけるたわみ考慮金型のたわみ量の逐次計算を行うことができる。また、粗メッシュソリッドモデルは、粗いメッシュによりソリッド要素数を大幅に削減しているため、工数および計算時間の増加を抑えることができる。
【0016】
次に、本発明に係る金型たわみモデル作成システムの他の態様は、前記粗メッシュソリッドモデル作成部は、前記細密メッシュ表面シェルモデルのメッシュを粗くした粗メッシュ表面シェルモデルを作成し、少なくとも前記たわみ考慮金型のサイズ情報に基づいて、前記粗メッシュ表面シェルモデルから、簡易型の前記粗メッシュソリッドモデルを作成することを特徴とする。
【0017】
この態様によれば、粗メッシュソリッドモデルの形状が簡易化されているため、粗メッシュソリッドモデルを作成するための工数、およびたわみ量の計算時間を削減することができる。
【0018】
次に、本発明に係る金型たわみモデル作成システムの他の態様は、前記粗メッシュソリッドモデル作成部は、前記たわみ考慮金型の実形状の形状データに基づいて、実形状型の前記粗メッシュソリッドモデルを作成することを特徴とする。
【0019】
この態様によれば、簡易型の粗メッシュソリッドモデルを用いる場合に比べて、たわみのメカニズムをより一層精度良く再現することができる。
【0020】
次に、本発明に係る金型たわみモデル作成システムの他の態様は、
前記プレス成形金型は、少なくとも、ダイと、パンチと、ブランクホルダとを備える絞りプレス成形金型であり、
前記たわみ考慮金型は、ダイ、パンチ、およびブランクホルダの少なくともいずれか一つである、
ことを特徴とする。
【0021】
この態様によれば、ブランクホルダに対するクッションピンの位置、およびしわ押さえ面のビード力のバランスを考慮しつつ、たわみのメカニズムを精度良く再現することができる。
【0022】
次に、本発明に係る金型たわみモデル作成プログラムの一態様は、
プレス成形金型を用いたプレス成形を有限要素法によって解析するための前記金型の解析モデルにおける金型たわみモデル作成プログラムであって、
コンピュータを
前記金型のうち、たわみを考慮する必要のあるたわみ考慮金型の表面のモデルとして、細密メッシュで非剛性のシェル要素からなる細密メッシュ表面シェルモデルを取得する細密メッシュ表面シェルモデル取得部、
前記たわみ考慮金型を粗いメッシュで弾性体のソリッド要素からなる粗メッシュソリッドモデルを作成する粗メッシュソリッドモデル作成部、
前記粗メッシュソリッドモデルの表面と、前記細密メッシュ表面シェルモデルとを所定の接触条件により結合する接着面作成部、として機能させることを特徴とする。
【0023】
本態様のプログラムをコンピュータに実行させることによって、上記金型たわみモデル作成システムを実施することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、通常の設計ルーチンの中で、工数の増加を抑制しながら、精度の高い解析を行うことが可能な金型たわみモデルを作成し、このモデルを用いて成形解析を行うことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の一実施形態に係る金型たわみモデル作成システム及びプログラムについて説明する。
【0027】
(1)金型たわみモデル作成システムの概要
図1は、本発明の一実施形態に係る金型たわみモデル作成システムの中心となるコンピュータ10の構成を示す図である。
図1に示すように、このコンピュータ10は、CPU等の処理装置11と、メモリまたはハードディスク等の記憶装置12と、キーボード、マウスまたはCD−ROMドライブ等の入力装置13と、液晶ディスプレイまたはプリンタ等の出力装置14と、を有する。
【0028】
(1−1)処理装置
図2は、
図1の処理装置11の構成を示すブロック図である。
【0029】
図2に示すように、処理装置11は、金型形状データ取得部110と、金型シェル要素データ取得部120と、たわみ考慮金型情報取得部130と、境界条件取得部140と、金型たわみモデル作成部200と、成形解析部400と、解析結果表示部500とを備える。
【0030】
金型形状データ取得部110は、金型形状データを記憶装置12から取得する。金型シェル要素データ取得部120は、金型シェル要素データを記憶装置12から取得する。たわみ考慮金型情報取得部130は、後述するたわみ考慮金型としての金型の情報を取得する。境界条件取得部140は、ピン情報データを含む境界条件を取得する。金型たわみモデル作成部200は、金型たわみモデルを作成する。成形解析部400は、金型たわみモデルを用いて絞りプレス成形の解析を行う。解析結果表示部500は、成形解析部400によって得られた解析結果を表示する。
【0031】
図2に示すように、金型たわみモデル作成部200は、細密メッシュ表面シェルモデル取得部210と、粗メッシュソリッドモデル作成部220と、接着面作成部230とを備える。
【0032】
前記金型は、ダイ、ホルダ、パンチ等の金型パートと、クッションピン、ガイド等の部材とから構成されるが、たわみ考慮金型は、金型パートのうち、たわみを考慮する必要のある金型である。ダイ、ホルダ、パンチ等の全てをたわみ考慮金型としてもよいし、状況に応じて、たわみ考慮金型とする金型パートを選んでもよい。本実施形態では、一例として、ホルダをたわみ考慮金型とした例について説明する。
【0033】
細密メッシュ表面シェルモデル取得部210は、たわみ考慮金型の金型シェル要素データから、非剛性の細密メッシュ表面シェルモデルを取得する。本実施形態では、一例として、細密メッシュ表面シェルモデルを金型シェル要素データより取得する。接着面作成部240は、粗メッシュソリッドモデルの表面と、細密メッシュ表面シェルモデルとを接触条件により結合する。
【0034】
(1−2)記憶装置
図3は、
図1の記憶装置12の構成を概略的に示すブロック図である。
図3に示すように、記憶装置12は、プログラム記憶部12Aとデータ記憶部12Bから主に構成されている。
【0035】
図4は、
図3のプログラム記憶部12Aの構成を概略的に示すブロック図である。
図4に示すように、プログラム記憶部12Aは、金型形状データ取得プログラムPR1、金型シェル要素データ取得プログラムPR2、たわみ考慮金型情報取得プログラムPR3、境界条件取得プログラムPR4、金型たわみモデル作成プログラムPR5、成形解析プログラムPR6、および解析結果表示プログラムPR7をそれぞれ格納するプログラム格納部12A
1〜12A
7を有している。プログラムPR1、PR2、PR5ないしPR7は、上述の処理装置11における金型形状データ取得部110、金型シェル要素データ取得部120、金型たわみモデル作成部200、成形解析部400および解析結果表示部500によってそれぞれ実行される。また、プログラムPR3は、上述の処理装置11におけるたわみ考慮金型情報取得部130により実行され、プログラムPR4は、境界条件取得部140によって実行される。
【0036】
図5は、
図4のデータ記憶部12Bの構成を概略的に示すブロック図である。
図5に示すように、データ記憶部12Bは、金型形状データDT1、ブランク材情報データDT2、金型シェル要素データDT3、たわみ考慮金型情報データDT4、ピン情報データDT5、成形条件データDT6、およびFEM解析データDT7をそれぞれ格納するデータ格納部12B
1〜12B
7を有している。
【0037】
ここで、
図6〜
図10は、上述のデータDT1〜DT7のデータ構成を示す図である。
図6〜
図10を参照しながら、データ記憶部12Bに記憶されたデータDT1〜DT7について詳細に説明する。
【0038】
(1−2−1)金型形状データ
金型形状データDT1は、例えば、既存のCADシステムで設計されたCADデータ、現物の金型について三次元計測システムで計測して得られたSTL(Standard Triangulated Language)データなど、各種手法で得られた既存の金型形状データから構成されている。
【0039】
(1−2−2)ブランク材情報データ
ブランク材情報データDT2は、プレス成形される素材となるブランク材に関する各種データである。具体的には、
図6(a)から
図6(d)に示すように、ブランク材の外形線を構成する複数の節点のXY座標に関する外形線データテーブル、応力ひずみ特性データテーブル、曲げ剛性データ及び板厚データ等の属性から構成されている。このブランク材情報データDT2は、液晶ディスプレイやキーボード等の入力装置13を介して処理装置11に入力される。
【0040】
(1−2−3)金型シェル要素データ
金型シェル要素データDT3は、具体的には、ダイ、ホルダ、パンチ、パッド、曲げ刃等のシェル要素データが、成形方法に応じて含まれる。例えば、絞り成形の場合には、ブランクホルダのダイフェース面に関するホルダシェル要素データ及びダイシェル要素データ、パンチに関するパンチシェル要素データが含まれる。なお、本実施形態では、一例として、絞り成形の場合について説明する。
【0041】
(1−2−4)たわみ考慮金型情報データ
たわみ考慮金型情報データDT4は、たわみ考慮金型の形状、サイズ、および材料特性に関するデータである。本実施形態では、一例として、たわみ考慮金型の一つであるブランクホルダのたわみを解析する場合について説明する。
図7に示すように、たわみ考慮金型情報データDT4には、たわみ考慮金型のパート数、弾性体ソリッドモデル化のフラグ、物性データ、ソリッドモデルのサイズデータが含まれる。弾性体ソリッドモデル化のフラグは、フラグが0のとき、金型パートは剛体シェルのままであり、フラグが1のとき、金型パートは弾性体ソリッドモデルとして作成される。物性データは、ヤング率とポアソン比から構成される。
【0042】
(1−2−5)ピン情報データ
ピン情報データDT5は、ブランクホルダを支持するクッションピンに関するデータである。具体的には、
図8に示すように、各クッションピンのピン番号、基端部の位置に関する基端位置座標、直径等のデータと、ピンの物性(例えば、ヤング率(縦弾性係数)、ポアソン比)等のデータとから構成されている。
【0043】
(1−2−6)成形条件データ
成形条件データDT6は、絞りプレス成形時の成形条件であるホルダのクッション力(しわ押さえ力)、パッド荷重等のパラメータから構成されている。
【0044】
(1−2−7)FEM解析データ
最後に、成形解析部400において有限要素法によって数値解析されるFEM解析データDT7について説明する。FEM解析データDT7には、積分点データテーブル、要素構成テーブル、材料属性データテーブル、節点座標テーブルが含まれている。以下、
図9、
図10を参照しながら各テーブルについて説明する。
【0045】
図9に示すように、積分点データテーブルは、絞りプレス成形される成形品の形状モデルを構成する各シェル要素(以下、単に「要素」という)に含まれる積分点番号P1、P2…と、各積分点が含まれる要素番号E1、E2…と、各積分点の要素座標系での位置成分(X、Y、Z)と、応力成分(σ
XX、σ
XY、σ
XZ、σ
YX、σ
YY、σ
YZ、σ
ZX、σ
ZY、σ
ZZ)と、ひずみ成分(ε
XX、ε
XY、ε
XZ、ε
YX、ε
YY、ε
YZ、ε
ZX、ε
ZY、ε
ZZ)とから構成されている。
【0046】
図10(a)に示すように、要素構成テーブルは、要素番号E1、E2…、各要素の材料番号M…、面内積分点数及び面外積分点数、各要素に含まれる第1節点番号、第2節点番号、第3節点番号及び第4節点番号N…から構成されている。
【0047】
図10(b)に示すように、材料属性データテーブルは、材料番号M…、材料データから構成されている。
【0048】
図10(c)に示すように、節点座標テーブルは、節点番号N1、N2…、各節点の全体座標系での位置成分(X、Y、Z)から構成されている。
【0049】
(1−3)入力装置
入力装置13は、上述の各種データの入力、クッション力の設定値等の各種解析条件の設定または当該システムの制御等に用いられる。
【0050】
(1−4)出力装置
出力装置14には、入力設定画面、板厚分布やひずみ分布等の解析結果等が表示される。例えば、出力装置14には、
図11に示すように、成形解析の結果を示す絞りプレス成形品が三次元でグラフィック表示される。
【0051】
(2)絞りプレス成形装置
上述の絞りプレス成形解析システムによって解析を行う絞りプレス成形のための絞りプレス成形工程について、
図12および
図13を参照しながら説明する。
【0052】
図12は、絞りプレス成形の成形工程を説明する説明図である。パンチPは、ホルダHの開口の内部で昇降できるように、ホルダHの開口の内壁面に対して間隙を設けて配置されている。
図12(a)に示すように、ホルダHに対してパンチPが最も下降した状態では、パンチPの最下端はホルダHの開口の周囲の上面に対して同じ高さまたは低くなる。
【0053】
このプレス成形装置を用いたプレス成形は、まず、
図12(b)に示すように、製品の素材となる平板状のブランク材Bの周囲をダイDのキャビティCの周囲のダイフェース面とホルダHのしわ押さえ面との間で所定のクッション力で挟んでしわ押さえを行う。このとき、ホルダHの凸条Hbがブランク材Bを対向するダイDの凹溝Dbに押し込むことで、ブランク材Bにビードb(
図13(b)参照)を成形する。
【0054】
次に、
図12(c)に示すように、パンチPを上昇させ、ブランク材BをダイDのキャビティC内に押し込み、ブランク材Bの中央部をダイDとパンチPとの間に挟んで押圧する。
【0055】
なお、この絞りプレス成形の際に、パンチPを固定してダイDおよびホルダHを昇降させてもよい。また、プレス金型は、下型をダイD、上型をパンチPおよびブランクホルダHで構成してもよい。さらに、プレス成形は、冷間プレスまたは熱間プレスのいずれであってもよい。
【0056】
図13は、成形品の製造工程を説明する説明図である。上述のような
図12に示したプレス成形工程によれば、
図13(a)に示すような外形を有する平坦なブランク材Bから
図13(b)に示すような成形品を成形することができる。この成形品は、製品面部Sとその周囲のしわ押さえ面部等から構成されており、製品面部Sは、上述の成形装置のパンチPとダイDとの間のキャビティC内で主に成形され、しわ押さえ面部は、ブランクホルダHとダイDとの間で成形される。また、しわ押さえ面部には、ダイDの凹溝DbとブランクホルダHの凸条Hbの間でビードbが成形される。
【0057】
なお、この成形品を製品面部Sの外形線である製品形状外形線Lsに沿って打ち抜くと、
図13(c)に示すような製品を得ることができる。
【0058】
(3)金型たわみモデル作成システムによる絞りプレス成形解析方法
金型たわみモデル作成システムによる絞りプレス成形解析方法について以下に説明する。
【0059】
(3−1)絞りプレス成形解析方法の全体的な流れ
図14は、本実施形態の絞りプレス成形解析方法の全体的な流れを示すフローチャートである。
図14のフローチャートに示されたメインルーチンの処理手順に従って、絞りプレス成形解析方法の全体的な流れについて説明する。
【0060】
まず、金型シェル要素データ取得部120によって、データ記憶部12Bから金型シェル要素データDT3を取得する(ステップS1)。金型シェル要素データ取得部120は、標準的な成形解析モデルを取得するが、その中には剛体の金型シェル要素データも含まれる。金型シェル要素データは、細密メッシュからなる剛体シェルモデルであり、本実施形態では、ダイDの剛体シェルモデルと、パンチPの剛体シェルモデルと、ホルダHの剛体シェルモデルが、金型シェル要素データとしてデータ記憶部12Bに記憶されている。
【0061】
次に、たわみ考慮金型情報取得部130によって、たわみ考慮金型情報データDT4をデータ記憶部12Bから取得する(ステップS2)。たわみ考慮金型情報には、たわみ考慮金型がホルダHの場合には、ホルダHのサイズ情報、つまり、ホルダHの水平方向のサイズ、および垂直方向のサイズが少なくとも含まれる。
【0062】
次に、境界条件取得部140によって、ピン情報データDT5を含む境界条件をデータ記憶部12Bから取得する(ステップS3)。ホルダHにガイド等が接する場合には、ガイド等の情報も境界条件として用いられる。
【0063】
次に、金型たわみモデル作成部200によって、金型シェル要素データから取得した細密メッシュ表面シェルモデルと、たわみ考慮金型情報データDT4または実形状データに基づいて取得した粗メッシュソリッドモデルとを結合し、金型たわみモデルを作成する(ステップS5)。
【0064】
最後に、成形解析部200によって、成形条件データDT6及びブランク材情報データDT2等に基づいて絞りプレス成形の成形解析を行う(ステップS6)。
【0065】
以上により、絞りプレス成形解析を行うことができる。
【0066】
(3−2)金型たわみモデル作成方法
次に、上述のフローチャートのサブルーチンである金型たわみモデル作成(ステップS5)について、
図15および
図16を参照しながら説明する。
図15および
図16は、いずれも、
図14に示す金型たわみモデル作成処理(ステップS5)のサブルーチンのフローチャートである。
図15は、たわみ考慮金型の実形状データが用意できていない場合であり、
図16は、たわみ考慮金型の実形状データが用意できている場合である。
【0067】
まず、
図15を参照しつつ、たわみ考慮金型の実形状データが用意できていない場合における金型たわみモデル作成処理について説明する。
最初に、細密メッシュ表面シェルモデル取得部210は、金型シェル要素データ取得部120により取得した、ホルダ表面の金型シェル要素データDT3から、非剛性の細密メッシュ表面シェルモデルを取得する(ステップS11)。ホルダ表面の金型シェル要素データDT3は、細密メッシュの剛体シェルモデルであるが、細密メッシュ表面シェルモデル取得部210は、この剛体シェルモデルの中からたわみ考慮金型DT4で弾性体ソリッドモデル化を指定された金型(ホルダ)を非剛性に設定することにより、細密メッシュ表面シェルモデルを取得する。
【0068】
次に、粗メッシュソリッドモデル作成部220は、細密メッシュ表面シェルモデルのメッシュを粗くして、粗いメッシュの表面シェルモデルを作成する(ステップS12)。粗いメッシュの表面シェルモデルは、金型形状データDT1に含まれるCADデータのうち、ホルダ表面のCADデータを使用して、作成してもよい。
【0069】
次に、粗メッシュソリッドモデル作成部220は、粗いメッシュの表面シェルモデルから、たわみ考慮金型情報データDT4のソリッドモデルサイズに基づいて作成した粗いメッシュのソリッド表面シェルメッシュを用いて、粗いメッシュで弾性体の粗メッシュソリッドモデルを簡易的に作成する(ステップS13)。
【0070】
次に、接着面作成部240によって、粗メッシュソリッドモデルの表面と、細密メッシュ表面シェルモデルとを、接触条件で結合する(ステップS14)。接触条件は、接触計算に用いられる。接触条件としては、例えば金型たわみモデルを変形させた場合に、粗メッシュソリッドモデルの表面と、細密メッシュ表面シェルモデルとが接しているところは、互いに同じように動き、接していないところは、一定の距離を保つというような条件が挙げられる。
【0071】
たわみ考慮金型の実形状データが用意できていない場合は、以上のようにして金型たわみモデルが作成される。
【0072】
次に、
図18を参照しつつ、たわみ考慮金型の実形状データが用意できている場合における金型たわみモデル作成処理について説明する。
最初に、粗メッシュソリッドモデル作成部220は、金型形状データDT1に含まれるCADデータのうち、ダイDと対向する型構造としてのホルダHの実形状のCADデータを使用して、粗いメッシュのソリッド要素からなる弾性体の粗メッシュソリッドモデルを作成する(ステップS21)。
【0073】
次に、細密メッシュ表面シェルモデル取得部210は、金型シェル要素データ取得部120により取得した、ホルダ表面の金型シェル要素データDT3から、非剛性の細密メッシュ表面シェルモデルを取得する(ステップS22)。この処理は、
図15のステップS11の処理と同様である。
【0074】
次に、接着面作成部240によって、粗メッシュソリッドモデルの表面と、細密メッシュの細密メッシュ表面シェルモデルとを、接触条件で結合する(ステップS24)。接触条件は、接触計算に用いられる。この処理は、
図15のステップS14の処理と同様である。
【0075】
次に、以上のようなたわみ考慮金型の実形状データが用意できていない場合における、金型たわみモデル作成処理の具体例を、
図17から
図22を参照しながら説明する。
図17は、絞りプレス成形金型の解析モデルを示す分解斜視図である。
図18は、粗いメッシュの表面シェルモデルSM1から、ホルダHの粗メッシュソリッドモデルSM2を作成する方法を説明するための図である。
図19は、比較例における細密メッシュの弾性体ソリッドモデルを示す図である。
図20は、本実施形態の粗メッシュソリッドモデルSM2、および本実施形態の金型たわみモデルTMを示す図である。
図21は、本実施形態の金型たわみモデルの例を示す図である。
図22は、本実施形態の金型たわみモデルTMの例を示す図である。
【0076】
図17に示すダイDのモデルDMと、パンチPのモデルPMとは、細密メッシュからなる剛体シェルモデルとして作成される。ここで説明する例では、これらのモデルについては、たわみは考慮されない。
【0077】
ホルダ表面の細密メッシュ表面シェルモデルEMは、ホルダHの表面の細密メッシュ表面シェルモデルであり、細密メッシュの非剛性シェル要素から構成される。
【0078】
粗いメッシュの表面シェルモデルSM1は、ホルダHの表面の細密メッシュ表面シェルモデルEMのメッシュを粗くした表面シェルモデルであり、この粗いメッシュの表面シェルモデルSM1から、弾性体のソリッド要素から構成される、ホルダHの粗メッシュソリッドモデルSM2が作成される。
【0079】
図17において矢印Jで示すように、ホルダ表面の細密メッシュ表面シェルモデルEMと、粗メッシュソリッドモデルSM2の表面は、接触条件により結合される。ホルダHの周囲に設けられるピンHp、ガイドG等は、粗メッシュソリッドモデルSM2の境界条件として定義される。ピンHpは、矢印Kで示すように、粗メッシュソリッドモデルSM2の底面に結合させる。
【0080】
以上のように、細密メッシュ表面シェルモデルEMと、粗メッシュソリッドモデルSM2の表面とを接触条件により結合することで、非剛性シェルモデルEMと粗メッシュソリッドモデルSM2は、互いに接しているところは同じように動き、接していないところは一定の距離を保つ。そして、粗メッシュソリッドモデルSM2を弾性体として定義して解析することで、粗メッシュソリッドモデルSM2の表面のたわみ分布と、細密メッシュ表面シェルモデルEMのたわみ分布が同等となる。
【0081】
粗メッシュソリッドモデルSM2を作成する際には、まず細密メッシュ表面シェルモデルEMを取得する。次に、細密メッシュ表面シェルモデルEMのメッシュを粗くした粗いメッシュの表面シェルモデルSM1を作成する。粗いメッシュの表面シェルモデルSM1は、細密メッシュ表面シェルモデルEMと同じ座標に位置している。そして、ホルダHのX,Y,Z方向のサイズに基づいて粗いメッシュの表面シェルモデルSM1の延長面を作成し、それを元にしてホルダHの粗メッシュソリッドモデルSM2を作成する。具体的には、粗いメッシュの表面シェルモデルの外周線を、金型のソリッドモデル水平方向サイズのXimn,Xmax,Ymin,Ymaxの矩形の大きさまで延長した面を作成し、粗いメッシュを作成する。さらに、作成した延長面の外周線とホルダの内周線を、それぞれ垂直方法のサイズZminまで延長した縦壁となる面上と、Zminの位置作成した底面上にも自動で粗いメッシュを作成する。以上の全ての表面シェル要素を使用して、粗いメッシュのソリッドモデルのメッシュを作成する。
【0082】
Z方向のサイズについては、
図19に示すように下型のホルダHがたわみ考慮金型である場合には、−Z方向のサイズだけでよい。しかし、上型の金型パートがたわみ考慮金型である場合には、+Z方向のサイズを用いる。
【0083】
パッドのように矩形状の金型パートがたわみ考慮金型である場合には、Z方向のサイズのみを定義することもあり得る。また、XY方向のサイズ、およびZ方向のサイズを用いずに、たわみ考慮金型の表面データを直接準備するようにしてもよい。
【0084】
たわみ考慮金型の実形状データが用意できていない場合には、このようにして、簡易型の粗メッシュソリッドモデルSM2が作成される。
【0085】
図19に示すように、たわみ考慮金型としてのホルダHを、全て細密メッシュからなる弾性体ソリッドモデルUMを用いて成形解析を行うには、多大な計算時間を要するため、現実的には採用することはできない。
【0086】
そこで、本実施形態では、
図20(a)に示すように、ホルダHを粗いメッシュで弾性体のソリッド要素からなる粗メッシュソリッドモデルSM2でモデル化する。そして、接触計算に必要となるホルダHの表面のみを細密メッシュの弾性体の細密メッシュ表面シェルモデルEMとし、
図20(b)に示すように、粗メッシュソリッドモデルSM2の表面と弾性体の細密メッシュ表面シェルモデルEMとを接触条件で結合して簡易型の金型たわみモデルTMを作成する。
実形状を用いてソリッドモデルを作成する場合には、3D金型構造データの準備が必要となる。しかし、一般的には、ダイフェース設計時点では金型の構造は確定していないため、このような詳細な3D金型構造データの準備は困難である。そこで、詳細な3D金型構造データの準備は困難な場合には、簡易型の金型たわみモデルTMを作成する。簡易型の金型たわみモデルTMを作成することにより、計算時間の増加を抑えることができる。
【0087】
図21と
図22にも、本実施形態の簡易型の金型たわみモデルTMの例を示す。
図21(a)は、粗メッシュソリッドモデルSM2の表面と細密メッシュ表面シェルモデルEMとを接触条件で結合した簡易型の金型たわみモデルTMを示し、
図21(b)は、細密メッシュ表面シェルモデルEMを示し、
図21(c)は、粗メッシュソリッドモデルSM2を示す。
【0088】
図22(a)は、粗メッシュソリッドモデルSM2の表面と細密メッシュ表面シェルモデルEMとを接触条件で結合した簡易型の金型たわみモデルTMを示し、
図22(b)は、細密メッシュ表面シェルモデルEMを示し、
図22(c)は、粗メッシュソリッドモデルSM2を示す。
【0089】
一方、たわみ考慮金型の実形状データが用意できている場合における、金型たわみモデル作成処理の具体例については図示を省略するが、まず、実形状データに基づいて、粗いメッシュで弾性体のソリッド要素からなる粗メッシュソリッドモデルを作成する。次に、非剛性の細密メッシュ表面シェルモデルを取得する。そして、細密メッシュ表面シェルモデルと、粗メッシュソリッドモデルの表面とを接触条件により結合する。
【0090】
本実施形態では、一例として、金型パートのうち、ホルダHをたわみ考慮金型とした場合について説明したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、金型パートであるダイD、パンチP、あるいはパッド等をたわみ考慮金型としてもよい。
【0091】
また、本実施形態では、プレス成形の一例として、絞り成形(ドロー成形)の場合について説明したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。本発明は、フォーム成形の場合についても適用可能である。この場合には、金型パートであるダイ、パンチ、パッドを適宜たわみ考慮金型としてもよい。さらに、本発明は、曲げ成形の場合にも適用可能であり、この場合には、金型パートであるパンチ、パッド、曲げ刃を適宜たわみ考慮金型としてもよい。
【0092】
また、プレス成形においては、ダイの上方に取り付けられる上型ラムと、パンチの下方に取り付けられるボルスターとからなるプレス機が用いられる。このようなプレス機上型ラムおよびボルスターについても、たわみ考慮金型と同様なモデル化をしてもよい。
【0093】
以上のように、本実施形態は、ホルダH等の金型パートをたわみ考慮金型として粗メッシュソリッドモデルSM2を作成し、粗メッシュソリッドモデルSM2の表面と細密メッシュ表面シェルモデルEMとを接触条件で結合した金型たわみモデルTMでモデル化した。その結果、金型たわみモデルTMの変形を解くことで、ホルダHの成形中のたわみ量を逐次考慮した成形解析を実施することができる。
【0094】
また、本実施形態によれば、金型たわみモデルTMは、粗いメッシュのソリッド要素からなる粗メッシュソリッドモデルSM2と、細密メッシュのシェル要素からなる細密メッシュ表面シェルモデルEMとを結合したため、成形途中のたわみ量の計算は、粗いメッシュの粗メッシュソリッドモデルSM2に対して行えばよい。したがって、データ準備の工数と計算時間の増加を抑えることができる。
【0095】
(4)金型たわみモデル作成システムの効果
全て細密メッシュで構成した弾性体ソリッドモデルが最も実機に近いと仮定して、この細密メッシュの弾性体ソリッドモデルと、他のモデルとについて、流入量誤差、たわみ量および計算時間の観点で効果比較を行った。以下、
図23から
図31を参照しながら、この効果比較について説明する。
【0096】
(4−1)流入量誤差
図23は、ブランク材Bを所定のしわ押さえ力でプレス成形した後の解析モデルを示している。なお、ブランク材Bの周縁部にあるP1からP8は、十分なサンプル数が得られる個数の略等間隔に配置された流入量の測定点を示している。
【0097】
図23に示すように、本実施形態のブランク材Bは、P1からP8のいずれにおいても、+Y方向及び−Y方向から中央に向かって流入している。
【0098】
比較に用いたモデルは以下の通りである。
Case0:細密メッシュの弾性体ソリッドモデル
Case1:細密メッシュの剛体シェルモデル
Case2:細密メッシュの非剛性シェルモデル+粗いメッシュの実形状の弾性体ソリッドモデル
Case3:細密メッシュの非剛性シェルモデル+粗いメッシュの簡易型の弾性体ソリッドモデル
Case4:下死点のたわみをマッピングした剛体シェルモデル(従来手法)
【0099】
Case0の細密メッシュの弾性体ソリッドモデルと、Case2の粗いメッシュの実形状の弾性体ソリッドモデルの形状は、ホルダHの実物の形状と同じ形状であり、Case3の粗いメッシュの簡易型の弾性体ソリッドモデルの形状は、例えば
図17に示すような簡易な形状を有している。
【0100】
図24は、Case0からCase4の各モデルを用いて成形解析を行った場合のブランク材Bの各点P1〜P8における流入量誤差を比較したグラフである。また、
図24は、Case0のモデルに対する、Case1からCase4の各モデルの流入量の平均二乗誤差を示したグラフである。
【0101】
図24に示すように、Case0の細密メッシュの弾性体ソリッドモデルを基準にすると、Case1の細密メッシュの剛体シェルモデルと、Case4の下死点のたわみをマッピングした剛体シェルモデルは、流入量の誤差が大きいことがわかる。Case1のモデルと、Case4のモデルは、たわみ量の逐次変化を考慮できないモデルであるので、これらの結果から、金型のたわみ量が流入量の計算精度に影響を及ぼすことが判る。
【0102】
一方、Case2の細密メッシュの非剛性シェルモデルと粗いメッシュの実形状の弾性体ソリッドモデルとを結合させたモデル、およびCase3の細密メッシュの弾性体非剛性シェルモデルと粗いメッシュの簡易型の弾性体ソリッドモデルとを結合させたモデルは、流入量の誤差が、大幅に小さくなっている。Case2のモデルと、Case3のモデルは、たわみ量の逐次変化を考慮できるモデルなので、流入量を精度良く計算可能であることが判る。
【0103】
図25は、各モデルの平均二乗誤差を示すグラフである。また、
図25に示すように、Case0の細密メッシュの弾性体ソリッドモデルを基準にすると、Case1の細密メッシュの剛体シェルモデルの平均二乗誤差は0.78mm、Case4の下死点のたわみをマッピングした剛体シェルモデルの平均二乗誤差は0.65mmであった。
【0104】
一方、Case2の細密メッシュの非剛性シェルモデルと粗いメッシュの実形状の弾性体ソリッドモデルとを結合させたモデルの平均二乗誤差は0.25mmであり、Case2の細密メッシュの非剛性シェルモデルと粗いメッシュの簡易型の弾性体ソリッドモデルとを結合させたモデルの平均二乗誤差は0.15mmであった。
【0105】
したがって、本発明の上記Case2、Case3の解析モデルは、Case1、Case4の下死点のたわみをマッピングした剛体シェルモデルに比べて、細密メッシュの弾性体ソリッドモデルと流入量の点で良く一致している、すなわち実際に成形したときの流入量により近い解析結果が得られることがわかった。
【0106】
(4−2)たわみ量
本発明の上記各解析モデルで成形解析した際のホルダHのたわみ量の比較を行った。
図26は、各モデルにおいてホルダHのたわみ量を計測したポイントを示す平面図である。
図26から
図30は、各ポイントにおけるたわみ量を示すグラフである。なお、Case2、およびCase3のモデルのたわみ量は、ほぼ同じであるため、
図26から
図30においては、これらのモデルのたわみ量を一つの折れ線で示している。
【0107】
図26から
図30に示すように、本発明のCase2およびCase3の解析モデルは、いずれのポイントにおいてもCase0の細密メッシュの弾性体ソリッドモデルに近いたわみ量となっている。したがって、本発明のCase2およびCase3の解析モデルは、Case0の細密メッシュの弾性体ソリッドモデルのたわみの傾向を良く再現している。なお、Case1は剛体なのでたわみがゼロであり
図26から
図30のグラフには表示されていない。
【0108】
(4−3)解析時間
図31は、上記各解析モデルでの解析時間を比較したグラフである。
図31に示すように、Case0の細密メッシュの弾性体ソリッドモデルが22.52分であるのに対し、Case1の剛体ソリッドモデルは11.33分、本発明のCase2の解析モデルは11.82分、および本発明のCase3の解析モデルは11.75分であった。このように、本発明のCase2およびCase3の解析モデルの解析時間は、Case0の細密メッシュの弾性体ソリッドモデルの解析時間のおよそ半分であり、Case1の剛体シェルの解析時間とほぼ同じであった。
【0109】
以上から、本実施形態の金型たわみモデル作成システムによれば、細密メッシュの弾性体ソリッドモデルによる解析時間よりも解析時間を大幅に短縮しながら、細密メッシュの弾性体ソリッドモデルによる解析結果と同等に高い精度を有する、すなわち従来よりも実際の成形結果により近い解析結果を得られることが分かった。
【0110】
上述したCase2およびCase3のモデルは、いずれも、細密メッシュの弾性体シェルモデルと粗いメッシュの弾性体ソリッドモデルとを結合させたモデルある。これらのモデルの違いは、Case2のモデルの形状が、実際のホルダHの形状と同じ実形状であるのに対し、Case3のモデルの形状は、上述したようにホルダHの表面形状のデータから、ホルダHのサイズ情報に基づいてプログラムにより作成した簡易的な形状であるという点にある。Case2のモデルの方が、実形状であるために、より高い精度でたわみを再現することができるが、Case3のモデルのように簡易的な形状とすれば、データ準備の工数および計算時間をより短くすることができる。
【0111】
(5)金型たわみモデル作成システムの特徴
本実施形態の金型たわみモデル作成システムによれば、ホルダHを粗いメッシュで弾性体のソリッド要素からなる粗メッシュソリッドモデルによってモデル化し、ホルダHの表面を細密メッシュで非剛性のシェル要素からなる細密メッシュ表面シェルモデルでモデル化する。さらに、粗メッシュソリッドモデルの表面と細密メッシュ表面シェルモデルとを接触条件により結合して、金型たわみモデルを作成する。
これは、全て細密メッシュからなるソリッドモデルを用いて成形解析を行うには、多大な計算時間を要するため、現実的には採用することはできないためである。
粗メッシュソリッドモデルの表面と細密メッシュ表面シェルモデルとを接触条件により結合して、金型たわみモデルを作成することにより、準備の工数および計算時間を短くしつつ、たわみ考慮金型のたわみのメカニズムを再現することができる。
【0112】
また、本実施形態の金型たわみモデル作成システムによれば、金型たわみモデルTMの変形を解くことで、ホルダHの成形中のたわみ量を逐次考慮した成形解析を実施することができる。
【0113】
さらに、本実施形態の金型たわみモデル作成システムによれば、金型たわみモデルは、粗いメッシュのソリッド要素からなる粗メッシュソリッドモデルと、細密メッシュのメッシュ要素からなる細密メッシュ表面シェルモデルとを結合したため、成形途中のたわみ量の計算は、粗いメッシュの粗メッシュソリッドモデルに対して行えばよい。したがって、計算時間の増加を抑えることができる。
【0114】
[変形例]
本発明は例示された実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能であることは言うまでもない。
【0115】
また、上述の実施形態では、金型解析モデル生成部100と成形解析部400が共に処理装置11に設けられているが、成形解析部400のみを他の処理装置に設けて、処理装置11に設けられた金型解析モデル生成部100で生成された金型解析モデルを成形解析部400が設けられた他の処理装置にデータ転送するようにしてもよい。
【0116】
さらに、上述の実施形態では、絞りプレス成形金型における金型たわみモデルを作成する例について説明したが、曲げプレス成形金型における金型たわみモデルを作成してもよい。この場合には、例えば、パンチ、パッド、ダイ、曲げ刃をたわみ考慮金型とすればよい。
【解決手段】プレス成形金型を用いたプレス成形を有限要素法によって解析するための金型の解析モデルにおける金型たわみモデル作成システムであって、金型のうち、たわみを考慮する必要のあるたわみ考慮金型の表面のモデルとして、細密メッシュで弾性体非剛性のシェル要素からなる細密メッシュ表面シェルモデルを取得する細密メッシュ表面シェルモデル取得部210と、たわみ考慮金型を粗いメッシュで弾性体のソリッド要素からなる粗メッシュソリッドモデルを作成する粗メッシュソリッドモデル作成部220と、粗メッシュソリッドモデルの表面と、細密メッシュ表面シェルモデルとを所定の接触条件により結合する接着面作成部230とを有する。