(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
顔料、染料、光安定剤、UV吸収剤、抗菌作用物質、改質剤、可塑剤、造核剤、重金属不活性剤、安定化助剤、帯電防止剤、導電剤、難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、滑剤、無機フィラー、架橋性ポリマーおよび繊維強化剤から選ばれる1種以上の添加剤を含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の防汚性組成物。
【発明を実施するための形態】
【0018】
≪防汚性組成物≫
本発明の一実施形態に係る防汚性組成物(以下「本組成物」ともいう。)は、プロピレン系樹脂、スチレン系樹脂およびポリフェニレンエーテル系樹脂から選択される少なくとも1種の樹脂(A)と、25℃において固体である、ポリエステル変性またはアルキル変性シリコーン化合物(B)とを含有する。
【0019】
本組成物では、前記樹脂(A)とシリコーン化合物(B)との組み合わせとして、プロピレン系樹脂とアルキル変性シリコーン化合物との組み合わせ、スチレン系樹脂および/またはポリフェニレンエーテル系樹脂とポリエステル変性シリコーン化合物との組み合わせが好ましく、スチレン系樹脂またはポリフェニレンエーテル系樹脂とポリエステル変性シリコーン化合物との組み合わせがより好ましく、スチレン系樹脂とポリエステル変性シリコーン化合物との組み合わせがさらに好ましく、ABS樹脂とポリエステル変性シリコーン化合物との組み合わせが特に好ましい。
前記樹脂(A)と化合物(B)とが前記組み合わせであると、これらの相溶性がより良好となるため、樹脂(A)中において化合物(B)がより分散した状態となり、化合物(B)を少ない使用量で用いても、油分に対し長期にわたり防汚性に優れるフィルムや成形体を容易に安価で形成することができ、該フィルムや成形体は、食品容器等の容器や、トイレ部材、浴室部材などのサニタリー部材、キッチン部材、家電部材および文房具部材等として好適に使用することができる。
【0020】
本組成物は、フィルムや成形体などを形成する際の組成物(以下「成形組成物」ともいう。)であってもよいし、いわゆるマスターバッチであってもよい。
該マスターバッチは、一般に、樹脂以外の固形成分を、プロピレン系樹脂、スチレン系樹脂およびポリフェニレンエーテル系樹脂などの基材樹脂中に高濃度で含有させたペレットのことをいう。基材樹脂としては種々の樹脂が使用可能であるが、本発明の一実施形態においては基材樹脂として前記樹脂(A)を使用することが好ましい。マスターバッチ中における固形成分の含有率は、通常は20〜70重量%、好ましくは30〜60重量%である。
【0021】
前記マスターバッチは、通常、前記基材樹脂と同様の樹脂を含む成分によって希釈され(以下、このマスターバッチを希釈する成分を「希釈成分」ともいう。)、具体的には、マスターバッチの重量と希釈成分の重量との比(マスターバッチの重量:希釈成分の重量)が、好ましくは1:1〜10、より好ましくは1:1〜5となる量で希釈成分によって希釈され、特に好ましくは、下記各成分が、下記含有量になるように希釈成分によって希釈され、フィルムや成形体などを形成する際の組成物とされる。
以下の含有量の記載は、成形組成物についての好ましい範囲である。
【0022】
<樹脂(A)>
本組成物は、プロピレン系樹脂、スチレン系樹脂およびポリフェニレンエーテル系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂(A)を含む。
本組成物に含まれる樹脂(A)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0023】
本組成物中の樹脂(A)の含有量は、所望の用途に応じ適宜選択すればよいが、樹脂(A)および化合物(B)の合計100重量%に対し、好ましくは70〜99.9重量%、より好ましくは80〜99重量%、さらに好ましくは85〜99重量%、特に好ましくは90〜98重量%である。
樹脂(A)の含有量が前記範囲にあると、加工性、成形性に優れる組成物が得られ、樹脂の特性が充分に発揮され、長期防汚性により優れるフィルムや成形体などを容易に得ることができる。
【0024】
[プロピレン系樹脂]
前記プロピレン系樹脂は特に制限されず、プロピレンの単独重合体、ブロック共重合体およびランダム共重合体のいずれでもよいが、本組成物から得られるフィルムや成形体などの剛性や耐熱性等の点からはプロピレンの単独重合体が好ましく、本組成物から得られるフィルムや成形体などの耐衝撃性等の点からはブロック共重合体が好ましい。
プロピレン系樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0025】
前記共重合体は、プロピレンと、プロピレンと共重合可能なコモノマーとを共重合することで得られるが、該コモノマーとしては、エチレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテンなどのオレフィン等が挙げられ、好ましくはエチレンまたは1−ブテンである。
これらのコモノマーは2種以上を用いてもよい。
コモノマーの使用量は、共重合体の合成に用いられる全モノマー100重量%に対し、通常30重量%以下、好ましくは20重量%以下である。
【0026】
前記プロピレン系樹脂は、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ペンテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、プロピレン−ヘキセン共重合体、プロピレン−オクテン共重合体、ブテン−ヘキセン共重合体、ブテン−オクテン共重合体、ヘキセン−オクテン共重合体等のα−オレフィン系共重合体などの他の重合体を含んでいてもよい。
【0027】
前記プロピレン系樹脂は、従来公知の方法で合成して得てもよく、(株)プライムポリマー、日本ポリプロ(株)、住友化学(株)またはサンアロマー(株)製などの市販品を用いてもよい。
【0028】
前記プロピレン系樹脂の、JIS K 7210に基づいて、温度230℃、荷重2.16kgfで測定したメルトフローレート(MFR)は、加工性、成形性に優れる組成物が得られ、防汚効果が増強されたフィルムやシートなどを容易に得ることができる等の点から、好ましくは0.3〜5g/10分、より好ましくは0.5〜3g/10分である。また、加工性、成形性に優れる組成物が得られ、防汚効果が増強された射出成形体などの成形体を容易に得ることができる等の点から、好ましくは5〜100g/10分、より好ましくは10〜60g/10分である。
【0029】
前記プロピレン系樹脂の、ASTM−D256に基づいて測定したアイゾット衝撃強さ(23℃)は、耐衝撃性に優れる射出成形体などの成形体を容易に得ることができる等の点から、好ましくは2〜20kJ/m
2、より好ましくは5〜20kJ/m
2である。
【0030】
前記プロピレン系樹脂の、ASTM−D790に基づいて測定した曲げ弾性率は、機械的強度に優れる射出成形体などの成形体を容易に得ることができる等の点から、好ましくは1000〜3000MPaである。
【0031】
[スチレン系樹脂]
前記スチレン系樹脂は特に制限されないが、プロピレン系樹脂およびポリフェニレンエーテル系樹脂以外の樹脂である。
前記スチレン系樹脂としては、芳香族ビニル単量体を含む原料を重合することで得ることができる。特に、溶解したゴム状重合体の存在下に、芳香族ビニル単量体を重合させるか、または、芳香族ビニル単量体と該単量体と共重合可能なビニル系単量体とを共重合させることによって得られた樹脂であることが好ましい。
前記重合する方法としては特に制限されず、従来慣用の方法、例えば、乳化重合法、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、塊状−懸濁二段重合法などの多段重合法を用いることができる。
スチレン系樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0032】
前記芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレンなどのα−アルキル置換スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、o−t−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレンなどの核アルキル置換スチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、p−ブロモスチレン、ジクロロスチレン、ジブロモスチレン、トリクロロスチレン、トリブロモスチレン、テトラクロロスチレン、テトラブロモスチレン、2−メチル−4−クロロスチレンなどの核ハロゲン化スチレン、p−ヒドロキシスチレン、o−メトキシスチレン、ビニルナフタレンが挙げられるが、これらの中でも、特にスチレンおよびα−メチルスチレンが好ましい。これらの芳香族ビニル単量体は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0033】
前記芳香族ビニル単量体と共重合可能なビニル系単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、フマロニトリル、マレオニトリル、α−クロロアクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系単量体、アクリル酸、メタクリル酸、フタル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの不飽和カルボン酸およびその無水物、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸アミドなどの不飽和カルボン酸エステルまたはアミドが挙げられる。これらの中でも、シアン化ビニル系単量体、特にアクリロニトリルが耐薬品性に優れるフィルムや成形体などを容易に得ることができる等の点で好適である。これらのビニル系単量体は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0034】
前記ゴム状重合体としては、例えば、乳化重合または溶液重合によって得られたシス型、トランス型、低ビニル型などのポリブタジエンや乳化重合または溶液重合によって得られたランダム型、ブロック型などのブタジエン−スチレン共重合体ゴムをはじめ、天然ゴム、ポリイソブチレンゴム、スチレン−イソプレン共重合体ゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレン共重合体ゴムおよびこれらのゴムとスチレンとのグラフト共重合体ゴムが挙げられる。これらの中でも、ポリブタジエンおよびブタジエン−スチレン共重合体ゴムが好ましい。これらのゴム状重合体は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0035】
前記スチレン系樹脂は、前記芳香族ビニル単量体と該単量体と共重合可能なビニル系単量体との組み合わせ70〜96重量%と、溶解状態の前記ゴム状重合体4〜30重量%とを含有する混合物を重合した樹脂であることが好ましく、該ゴム状重合体に前記単量体の一部をグラフト重合させたグラフト重合体を含有することがより好ましい。前記ゴム状重合体の量が4重量%未満では十分な耐衝撃性が得られない場合があり、30重量%を超えると剛性が低下する場合がある。
【0036】
前記スチレン系樹脂の代表的なものとしては、GPPS樹脂(スチレン重合体)、HIPS樹脂(スチレン−ブタジエン共重合体)、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体)、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、MS樹脂(メチルメタクリレート−スチレン共重合体)、AAS樹脂(アクリロニトリル−アクリル−スチレン共重合体)、AES樹脂(アクリロニトリル−エチレンプロピレン−スチレン共重合体)、MBS樹脂(メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体)等が挙げられる。これらの中でも、スチレン系樹脂としては、シリコーン化合物(B)との相溶性により優れる等の点から、GPPS、HIPS、AS、ABS樹脂が好ましい。
【0037】
前記スチレン系樹脂は、従来公知の方法で合成して得てもよく、東洋スチレン(株)、PSジャパン(株)、DIC(株)、デンカ(株)、テクノポリマー(株)、東レ(株)、旭化成(株)製などの市販品を用いてもよい。
【0038】
前記スチレン系樹脂の、JIS K 7210に基づいて、温度220℃、荷重10kgfで測定したメルトフローレート(MFR)は、加工性、成形性に優れる組成物が得られ、防汚効果が増強されたフィルムやシートなどを容易に得ることができる等の点から、好ましくは0.3〜5g/10分、より好ましくは0.5〜3g/10分である。また、加工性、成形性に優れる組成物が得られ、防汚効果が増強された射出成形体などの成形体を容易に得ることができる等の点から、好ましくは5〜100g/10分、より好ましくは10〜60g/10分である。
【0039】
前記スチレン系樹脂の、ASTM−D256に基づいて測定したアイゾット衝撃強さ(23℃)は、耐衝撃性に優れる射出成形体などの成形体を容易に得ることができる等の点から、好ましくは5kJ/m
2以上、より好ましくは15kJ/m
2以上である。
【0040】
前記スチレン系樹脂の、ASTM−D790に基づいて測定した曲げ弾性率は、機械的強度に優れる射出成形体などの成形体を容易に得ることができる等の点から、好ましくは2000MPa以上である。
【0041】
[ポリフェニレンエーテル系樹脂]
前記ポリフェニレンエーテル系樹脂は特に制限されず、未変性ポリフェニレンエーテル系樹脂でもよく、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂でもよいが、本発明の効果がより発揮される等の点から、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂が好ましい。
前記ポリフェニレンエーテル系樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0042】
前記未変性ポリフェニレンエーテルとしては、下記式で示すポリフェニレンエーテルが好ましい。
【0044】
前記式においてR
1およびR
2はそれぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基またはハロゲン原子である。
nは重合度を表す正の整数であり、通常10〜5000である。
【0045】
このようなポリフェニレンエーテルの例としては、ポリ−2,6−ジメチルフェニレン−1,4−エーテル、ポリ−2,6−ジエチルフェニレン−1,4−エーテルおよびポリ−2,6−ジクロロフェニレン−1,4−エーテルが挙げられる。
【0046】
前記変性ポリフェニレンエーテルとしては、例えば、国際公開第2014/203511号に記載されているように、前記未変性ポリフェニレンエーテルを所定の置換基で変性した変性体であってもよく、前記未変性ポリフェニレンエーテルとポリスチレン系樹脂などの熱可塑性樹脂とのポリマーアロイであってもよい。
【0047】
未変性ポリフェニレンエーテル系樹脂は、融点が高く、単独では成形が難しいので、このポリフェニレンエーテル系樹脂と相溶性に優れるポリスチレン系樹脂などの熱可塑性樹脂とのポリマーアロイが好ましい。また、容易かつ安価に所定の効果を奏する防汚性組成物を得ることができる等の点から、ポリマーアロイであることが好ましい。
【0048】
なお、前記ポリマーアロイは、未変性ポリフェニレンエーテルとポリスチレンなどの熱可塑性樹脂とのポリマーアロイであってもよく、該ポリマーアロイとポリスチレン樹脂などの熱可塑性樹脂とのポリマーアロイであってもよい。
【0049】
前記ポリスチレン系樹脂としては、スチレン単独重合体、スチレン・ブタジエン共重合体などの耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、スチレン・α−メチルスチレン共重合体、スチレン・(メタ)アクリロニトリル共重合体、スチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。これらの中でも、スチレン単独重合体またはスチレン単独重合体とHIPSとの組み合わせが好ましい。
前記ポリスチレン系樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0050】
前記ポリスチレン系樹脂の使用量は、未変性ポリフェニレンエーテル系樹脂100重量部に対して、通常は20〜1000重量部、好ましくは50〜500重量部である。
ポリスチレン系樹脂の使用量が前記範囲にあると、ポリフェニレンエーテル系樹脂の有する優れた特性を維持しつつ、ポリスチレン系樹脂の有する特性を付与することができる。
【0051】
前記ポリフェニレンエーテル系樹脂は、従来公知の方法で合成して得てもよく、旭化成(株)、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)またはSABIC社製などの市販品を用いてもよい。
【0052】
前記ポリフェニレンエーテル系樹脂の、JIS K 7210に基づいて、温度300℃、荷重2.16kgfで測定したメルトフローレート(MFR)は、加工性、成形性に優れる組成物が得られ、防汚効果が増強されたフィルムやシートなどを容易に得ることができる等の点から、好ましくは0.3〜5g/10分、より好ましくは0.5〜3g/10分である。また、加工性、成形性に優れる組成物が得られ、防汚効果が増強された射出成形体などの成形体を容易に得ることができる等の点から、好ましくは5〜50g/10分、より好ましくは10〜30g/10分である。
【0053】
前記ポリフェニレンエーテル系樹脂の、ASTM−D256に基づいて測定したアイゾット衝撃強さ(23℃)は、耐衝撃性に優れる射出成形体などの成形体を容易に得ることができる等の点から、好ましくは5kJ/m
2以上、より好ましくは15kJ/m
2以上である。
【0054】
前記ポリフェニレンエーテル系樹脂の、ASTM−D790に基づいて測定した曲げ弾性率は、機械的強度に優れる射出成形体などの成形体を容易に得ることができる等の点から、好ましくは2000MPa以上である。
【0055】
<25℃おいて固体である、ポリエステル変性またはアルキル変性シリコーン化合物(B)>
前記ポリエステル変性またはアルキル変性シリコーン化合物(B)としては、25℃で固体であり、下記シリコーンオイル以外の化合物であれば特に制限されない。前記アルキル変性シリコーン化合物は、炭素数12〜36のアルキル基を有する化合物のことをいう。
シリコーン化合物(B)を用いることで、油分に対する防汚性に優れ、しかもその防汚性が長期にわたり優れるフィルムまたは成形体を容易に形成することができる。特に、シリコーン化合物(B)は、フィルムや成形体からブリードアウトする成分ではなく、前記樹脂(A)との相溶性に優れるため、樹脂(A)中において化合物(B)がより分散した状態となり、化合物(B)を少ない使用量で用いても、油分に対し長期にわたる防汚性に優れるフィルムや成形体を容易に安価で形成することができる。
前記シリコーン化合物(B)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0056】
前記シリコーン化合物(B)としては特に制限されないが、前記樹脂(A)との相溶性に優れ、安定したフィルムまたは成形体を容易に得ることができ、油分に対する防汚性、離型性、耐傷つき性、耐薬品性、耐衝撃性、表面平滑性に優れ、アウトガスが発生し難いフィルムまたは成形体を容易に得ることができる等の点から、ポリエステル変性シリコーン化合物が好ましい。
また、該ポリエステル変性シリコーン化合物は、フィルムまたは成形体表面よりブリードアウトしにくいため、長期にわたって防汚性に優れるフィルムまたは成形体を容易に得ることができる。
【0057】
前記シリコーン化合物(B)としては特に制限されないが、前記樹脂(A)との相溶性に優れ、油分に対する防汚性により優れるフィルムまたは成形体を容易に形成することができる等の点から、下記式(I)で表される化合物であることが好ましい。
【0059】
式(I)中、
Rは互いに独立して、炭素数1〜12の炭化水素基であり、より好ましくは炭素数1〜11の炭化水素基であり、さらに好ましくは炭素数1〜4のアルキル基またはフェニル基であり、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基である。
R
1およびR
2は互いに独立して、ポリエステル基、炭素数1〜36の炭化水素基または該炭化水素基の一部が酸素原子で置換された基である。
n、mおよびpは互いに独立して、0〜58であり、pは、好ましくは0である。
N=n+m+p+2は10〜75、好ましくは15〜50である。
全てのR
1およびR
2のうち、少なくとも1つは、ポリエステル基または炭素数12〜36のアルキル基である。
なお、式(I)において、[ ]
n、[ ]
mおよび[ ]
pで表される繰り返し単位の結合順は任意である。
【0060】
前記ポリエステル基は、エステル構造部分の繰り返し単位(以下「エステル単位」ともいう。例:下記z)が、好ましくは3〜30個、より好ましくは8〜25個、さらに好ましくは15〜25個であり、特に、下記式(II)で表される基であることが好ましい。
−R
q−(R
r)
zH (II)
【0061】
式(II)中
R
qは、−(CH
2)
x−O−(xは2〜10、好ましくは3〜7、より好ましくは6である)で表される基であり、
R
rは、−C(=O)−(CH
2)
y−O−(yは2〜10、好ましくは3〜8、より好ましくは4または5である)で表される基であり、
zは3〜30、好ましくは8〜25、より好ましくは15〜25である。
【0062】
なお、前記n、m、p、x、yおよびzは平均値である。
【0063】
より油分に対する防汚性に優れるフィルムまたは成形体を容易に得ることができる等の点から、前記R
1およびR
2の少なくとも1つは、ポリエステル基であることが好ましい。R
1および1つ以上のR
2がポリエステル基である化合物も好ましい場合がある。
式(I)が2つ以上のポリエステル基を有する場合、これらのポリエステル基は、同じ基であることが好ましい。
【0064】
前記炭素数1〜36の炭化水素基としては、炭素数12〜36の炭化水素基が好ましい。
前記炭素数1〜36の炭化水素基の一部が酸素原子で置換された基としては、エーテル構造やエステル構造を含む基、ヒドロキシ基やカルボキシ基を含む基等が挙げられる。
【0065】
前記炭素数12〜36のアルキル基における炭素数は、好ましくは20〜30、より好ましくは24〜30である。
【0066】
R
1および/またはR
2の1つ以上がポリエステル基である場合、Nは、好ましくは10〜50、より好ましくは15〜45であり、pは、好ましくは0であり、mは、好ましくは0〜10、より好ましくは1〜5である。
【0067】
R
2は、好ましくはポリエステル基、または、炭素数12〜36のアルキル基である。
R
2が前記アルキル基、好ましくは、炭素数30のアルキル基または炭素数24〜28のアルキル基である場合、R
1およびRは好ましくはメチル基であり、Nは、好ましくは40〜50、より好ましくは40または50である。
【0068】
R
1および/またはR
2がポリエステル基、好ましくは15〜25個のエステル単位を有するポリエステル基である場合、Rは、好ましくはメチル基であり、Nは、好ましくは20〜45である。
【0069】
式(I)で表される化合物としては、pが0であり、R
qがヘキサノール基であり、Rがメチル基であり、N、m、R
1およびR
2が下記表1の通りである化合物が好ましい。
【0071】
式(I)で表される化合物は、市販品を用いてもよいし、相応する水素シロキサンと、不飽和炭化水素または不飽和アルコールとを反応させ、次いで、(ポリ)エステル化することによって得てもよいし、不飽和ポリエステルと水素シロキサンとの直接反応によって得てもよい。当該反応は、EP1640418に記載されている通り、ヒドロシリル化または脱水素的ヒドロシリル化によって行うことができる。ポリエステル基を有するポリシロキサンの製造は、例えば、EP0208734の記載を参考にすればよい。
【0072】
前記ポリエステル基は、同じ出発分子から形成された基であってもよく、異なる出発分子から形成された基であってもよいが、同じ出発分子から形成された基であることが好ましい。
また、前記ポリエステル基は、開環反応、特にラクトンのポリ(エステル化)によって得られる基であることが好ましく、カプロラクトンまたはバレロラクトン、特に、ε−カプロラクトン、3,5,5−トリメチルカプロラクトンまたはδ−カプロラクトン、さらにはε−カプロラクトンのポリ(エステル化)によって得られる基であることがより好ましい。
前記ポリエステル基としては、ε−カプロラクトンの繰り返し単位数が、好ましくは3〜30個、より好ましくは8〜25個、さらに好ましくは15〜25個の基が挙げられる。
【0073】
前記シリコーン化合物(B)は、25℃おいて固体であるであるため、25℃における粘度を規定するのは適切ではないが、例えば、回転粘度計により測定された25℃における粘度は、1,000,000cSt以上であることが好ましい。
【0074】
本組成物中のシリコーン化合物(B)の含有量は、油分に対する防汚性により優れるフィルムや成形体を容易に安価で形成することができる等の点から、樹脂(A)および化合物(B)の合計100重量%に対し、好ましくは0.1〜30重量%、より好ましくは1〜20重量%、さらに好ましくは1〜15重量%、特に好ましくは2〜10重量%である。
【0075】
<シリコーンオイル>
本組成物は、シリコーンオイルを実質的に含まないことが好ましい。このように、シリコーンオイルを実質的に含まないことで、長期にわたる防汚性に優れるフィルムや成形体を容易に得ることができ、本組成物を食品容器等のブリードアウトする成分が少ないことが求められる用途に好適に用いることができる。
【0076】
前記シリコーンオイルとは、常温(25℃)でオイル状(液状)である化合物のことをいい、具体的には、回転粘度計により測定された25℃における粘度が、500〜100,000cSt程度、好ましくは800〜30,000cStの化合物である。
【0077】
なお、シリコーンオイルを実質的に含まないとは、該オイルを全く含まないか、含まれていたとしても微量、具体的には、樹脂(A)および化合物(B)の合計100重量部に対し、好ましくは0.1重量部未満であることをいう。
【0078】
<添加剤>
本組成物には、所望の用途に応じ、フィルムや成形体など、具体的には容器やサニタリー部材などの物品に従来用いられてきた、前記(A)〜(B)成分以外の添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で配合してもよい。
前記添加剤はそれぞれ、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0079】
前記添加剤としては、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂からなる成形製品に慣用されている添加剤、例えば、顔料、染料、光安定剤、UV吸収剤、抗菌作用物質、改質剤(相溶化剤および/または耐衝撃剤)、可塑剤、造核剤、重金属不活性剤、安定化助剤、帯電防止剤、導電剤、難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、滑剤、無機フィラー、架橋性ポリマーおよび繊維強化剤が挙げられる。
【0080】
前記添加剤を、本組成物に配合する場合、予め疎水化処理された添加剤を用いることが好ましい。
このように、予め疎水化処理された添加剤を用いることで、前記(A)および(B)成分の組み合わせにより発揮される水分および油分に対する防汚性の効果を損なうことなく、添加剤の効果を奏するフィルムまたは成形体を形成することができる。
前記添加剤として、親水性の添加剤を用いる場合、該添加剤をそのまま配合したのでは、防汚性が低下する傾向にあるため、特にこの場合には、予め疎水化処理された添加剤を用いることが好ましい。
【0081】
前記添加剤を疎水化処理する方法としては、従来公知の方法を採用することができ、具体的には、液相法、気相法、オートクレーブ法などにより、前記添加剤と、疎水化剤、例えば、界面活性剤;シリコーンオイル;アルキルハロゲノシラン、アルキルアルコキシシラン、アルキルジシラザンなどのシリル化剤;フッ素化合物;金属石ケン;高級アルコール;脂肪酸;ロジン;とを接触させ疎水化処理する方法が挙げられる。
前記疎水化剤の使用量は、前記添加剤を疎水化できれば特に制限されないが、例えば、添加剤100重量部に対し、好ましくは0.1〜5重量部である。
【0082】
・難燃剤
本組成物の用途によっては、難燃性が求められる場合があり、この場合には、難燃剤を配合することが好ましい。
例えば、本組成物を、家電、OA部品、ウォシュレット(登録商標)等に用いる場合であって、前記樹脂(A)がスチレン系樹脂である場合、UL94規格の難燃性として、V−2以上の難燃性が求められる。
【0083】
前記難燃剤としては特に制限されないが、例えば、トリス(トリブロモフェノキシ)トリアジン、臭素化エポキシオリゴマー、ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、フェノール付加ヒンダードアミン、ブチルハイドロキノン、ヒンダートアミン等のラジカルトラップ系難燃剤;トリフェニルホスフェート、フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)、フェニレンビス(ジキシレニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、シリコーンパウダー、ホウ酸亜鉛、ベントナイト等の有機変性無機層状化合物、メラミン、膨張黒鉛等のチャー形成系難燃剤;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の吸熱・希釈系難燃剤が挙げられる。
【0084】
これらの難燃剤は、スチレン系樹脂に好適に用いられ、予め疎水化処理した後、使用することが好ましい。
例えば、下記実施例3において、難燃剤またはそれを予め疎水化処理した難燃剤を、それぞれABS樹脂100重量部に対し10重量部配合した場合、UL94規格の垂直難燃試験(試験片の厚み:0.8mm)を行うと、いずれも難燃性の評価はV−2となったが(実施例3の難燃性の評価はHB)、予め疎水化処理した難燃剤を配合した場合、未処理の難燃剤を配合した場合に比べ、オレイン酸接触角および水接触角のいずれもが10°以上大きくなった。
【0085】
また、例えば、本組成物を、家電、OA部品、ウォシュレット(登録商標)等に用いる場合であって、前記樹脂(A)がプロピレン系樹脂である場合、UL94規格の難燃性として、V−2以上の難燃性が求められる。
この場合、本組成物に求められる難燃性を勘案して、難燃剤の種類および量は適宜決定すればよい。
【0086】
この際の難燃剤としては、無機系難燃剤および有機系難燃剤のいずれも利用することができ、これらを適宜選択することで、本組成物の難燃性をV−2以上にすることができる。
前記有機系難燃剤としては、ハロゲン系難燃剤やノンハロゲン系難燃剤が挙げられ、特に臭素系難燃剤と三酸化アンチモンなどのアンチモン化合物との併用が代表的に挙げられる。
【0087】
前記臭素系難燃剤としては特に制限されないが、例えば、デカブロモジフェニルオキサイド、ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、エチレンビス(テトラブロモフタル)イミド、トリス(トリブロモフェノキシ)トリアジン、ポリブロモフェニルインダン、エチレンビスペンタブロモベンゼン、デカブロモジフェニルエーテル、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、ビス[3,5−ジブロモ−4−(2,3−ジブロモプロポキシ)フェニル]スルホン、ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、ビス(ジブロモプロピル)テトラブロモビスフェノールA、ビス(ジブロモプロピル)テトラブロモビスフェノールSが挙げられる。
前記ノンハロゲン系難燃剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機系難燃剤、窒素とリンが主成分であるイントメッセント系難燃剤が挙げられる。
【0088】
例えば、下記実施例4において、難燃剤(臭素系難燃剤および三酸化アンチモン)またはそれを予め疎水化処理した難燃剤を、それぞれPP樹脂100重量部に対し配合した場合(前記臭素系難燃剤を15重量部、三酸化アンチモンを5重量部)、UL94規格の垂直難燃試験(試験片の厚み:1.5mm)を行うと、いずれも難燃性の評価はV−0となったが(実施例4の難燃性の評価はHB)、予め疎水化処理した難燃剤を配合した場合、未処理の難燃剤を配合した場合に比べ、オレイン酸接触角および水接触角のいずれもが10°以上大きくなった。
【0089】
前記難燃剤の使用量は、本組成物に十分な難燃効果を付与できる等の点から、樹脂(A)および化合物(B)の合計100重量部に対し、好ましくは1〜150重量部、より好ましくは3〜100重量部である。
【0090】
・抗菌作用物質
本組成物の用途によっては、抗菌効果が求められる場合があり、この場合には、抗菌作用物質を配合することが好ましい。
前記抗菌作用物質としては特に制限されないが、抗菌剤が挙げられ、該抗菌剤としては、従来公知の抗菌剤を用いることができるが、銀系抗菌剤を用いることが好ましい。
【0091】
銀系抗菌剤としては、例えば、銀−ゼオライト、銀−リン酸ジルコニウム(例:東亞合成(株)製のノバロン)、銀−リン酸カルシウム、銀−カルシウムアパタイト、銀−シリカゲル、銀−ケイ酸カルシウム、銀−ケイ酸アルミン酸マグネシウム、銀−酸化チタン、銀−チタン酸カリウム、銀−シリカ,アルミナ、銀−溶解性ガラス、銀−チオサルファイト系抗菌剤が挙げられる。
【0092】
前記抗菌作用物質の使用量は、本組成物に十分な抗菌効果を付与できる等の点から、樹脂(A)および化合物(B)の合計100重量部に対し、好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは0.1〜3重量部である。
【0093】
・改質剤(相溶化剤および/または耐衝撃剤)
本組成物は、前記樹脂(A)と化合物(B)を含むため、外観や耐衝撃性を改良するための改質剤を配合することが好ましい。
前記改質剤としては特に制限されないが、例えば、無水マレイン酸変性プロピレン系樹脂、無水マレイン酸変性スチレン系樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマーを挙げることができる。
前記改質剤としては、前記樹脂(A)としてプロピレン系樹脂を用いる場合には、無水マレイン酸変性プロピレン系樹脂を用いることが好ましく、前記樹脂(A)としてスチレン系樹脂を用いる場合には、スチレン系熱可塑性エラストマーを用いることが好ましい。
【0094】
前記スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、SBS系(スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体)、SBBS系(スチレン・ブタジエン・ブチレン・スチレンブロック共重合体)、SEBS系(スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体)が挙げられ、これらが水素添加や官能基で変性されたエラストマーがより好ましい。
【0095】
前記改質剤の使用量は、前記樹脂(A)と化合物(B)との相容性を向上させることができる、および/または、本組成物の耐衝撃性を向上させることができる等の点から、樹脂(A)および化合物(B)の合計100重量部に対し、好ましくは1〜30重量部、より好ましくは3〜15重量部である。
【0096】
<防汚性組成物>
本組成物は、前記各成分を混合することで得ることができるが、前記各成分を従来公知の装置、具体的には、単軸押出機、2軸押出機、ニーダー、ミキサー、2本ロールミル等を用いて均一となるように充分に混練することで得ることが好ましい。
【0097】
本組成物(本組成物から得られるフィルムまたは成形体)の25±2℃におけるオレイン酸接触角は、好ましくは30°以上であり、より好ましくは35°以上である。また、水接触角は、好ましくは95°以上であり、より好ましくは100°以上である。
オレイン酸接触角や水接触角が前記範囲にあると、油分やその他汚れ成分に対して防汚性に優れるといえる。
前記オレイン酸接触角および水接触角は、具体的には、下記実施例に記載の方法で測定することができる。
【0098】
本組成物から成形体を形成する場合、射出成形により成形することが好ましく、このような組成物のJIS K 7210に基づいて測定したメルトフローレートは、好ましくは3〜100g/10分であり、より好ましくは5〜60g/10分である。
【0099】
≪防汚性製品≫
本組成物は、従来公知の方法、具体的には、射出成形、押出成形、ブロー成形、カレンダー法、真空成形、圧縮成形およびガスアシスト成形等の公知の方法により、フィルムまたは成形体などに成形し、製品(防汚性製品)とすることができる。
このような防汚性製品は、本組成物を用いて得られるため、プロピレン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂の有する物性を有しながらも、油分に対し長期にわたる防汚性に優れる製品となる。
前記防汚性製品は、実質的に、本組成物のみからなる製品であってもよいし、本組成物から得られたフィルムや成形体と他の部材とを積層するなどして組み合わせた製品であってもよい。
【0100】
該防汚性製品としては、様々な製品が挙げられ、家庭用品、食品、農業分野、水産分野、医療分野、工業分野、建築分野などの様々な分野で使用できる製品が挙げられ、特に、便器、便座、タンク、洗浄器(洗浄ノズル)、洗浄スイッチなどの本体操作スイッチ、トイレットペーパーホルダー、床、壁などのトイレ部材;床、壁、浴槽、シャワー、蛇口などの浴室部材;洗面台、蛇口、石鹸箱などの洗面所部材;食品を保存、運搬するためなどに用いられる容器;食器類、まな板、ボール、三角コーナーなどのキッチン部材;冷蔵庫、洗濯機、掃除機、扇風機、乾燥機、空調機、電話機、電気ポット、炊飯器、食器洗浄機、食器乾燥機、電子レンジ、ミキサー、VTR、テレビ、時計、ステレオ、テープレコーダー、OA機器などの家電部材;万年筆、シャープペンシル、ボールペンなどの文房具部材;各種医療器具、各種容器、スポーツ用品、日用品、建材、光学機器等が挙げられる。
なお、本発明では、浴室・トイレ・洗面所など水まわりに関する部材のことを総称して、サニタリー部材ともいう。
【実施例】
【0101】
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0102】
[実施例1〜8および比較例1〜12]
表2および表3に示す各成分を表2および表3に示す量で、タンブラー中で20分間混合した後、二軸押出機(東芝機械(株)製、回転数:200rpm、スクリュー径:35mm、L/D:32)を用いて200〜300℃で溶融混練し、押し出した後、所定の長さに切断することによってペレット状の樹脂組成物を得た。
【0103】
なお、実施例3および比較例1で得られたペレットをフーリエ変換赤外分光法(FT−IR)による反射法で分析を行った。分析装置は、(株)島津製作所製、フーリエ変換赤外分光光度計(型番:IRAffinity−1S)を用いた。測定結果をそれぞれ、
図1および
図2に示す。
実施例3で得られた組成物は、1730cm
-1付近に、エステル基に対応するC=O伸縮振動が確認できた。
【0104】
なお、表2に記載の材料は以下の通りである。
・「ABS」:ABS樹脂、テクノポリマー(株)製、ABS130
・「PP」:ポリプロピレン、サンアロマー(株)製、PM970A
・「HIPS」:耐衝撃性ポリスチレン、東洋スチレン(株)製、H610
・「m−PPE」:ポリフェニレンエーテル系樹脂、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、ユピエース AH40
【0105】
・「変性シリコーン1」:ポリエステル変性シリコーン(前記式(I)において、Rがメチル基、複数のR
1およびR
2のうち少なくとも1つがポリエステル基、n、mおよびpは互いに独立して0〜58であり、N=n+m+p+2が15〜75である化合物)、固体状(25℃)、(市販品)
・「変性シリコーン2」:アルキル変性シリコーン(前記式(I)において、Rがメチル基であり、複数のR
1R
2のうち少なくとも1つが炭素数12〜36のアルキル基であり、n、mおよびpは互いに独立して0〜58であり、N=n+m+p+2が15〜75である化合物)、固体状(25℃)、(市販品)
【0106】
・「未変性シリコーン1」:GENIOPLAST Pellet S(旭化成ワッカーシリコーン(株)製、超高分子ポリジメチルシロキサンを高濃度で含有するペレット)
・「未変性シリコーン2」:クリンベル CB−50AB(富士ケミカル(株)製、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂ベースに50%のジメチルポリシロキサンを含有するペレット)
・「未変性シリコーン3」:DOW CORNING TORAY BY27−004(東レ・ダウコーニング(株)製、HIPS(耐衝撃性ポリスチレン)ベースに50%のジメチルポリシロキサンを含有するペレット)
・「未変性シリコーン4」:DOW CORNING TORAY MB50−008(東レ・ダウコーニング(株)製、スチレン−アクリルニトリル共重合体ベースに50%のジメチルポリシロキサンを含有するペレット)
・「未変性シリコーン5」:クリンベル CB−50PP(富士ケミカル(株)製、ポリプロピレンベースに50%のジメチルポリシロキサンを含有するペレット)
【0107】
前記実施例1〜8および比較例1〜12で得られた組成物を用い、成形温度200〜300℃で射出成形して、試験片(寸法:90×50mm、厚み:2mm)を作製した。
【0108】
<オレイン酸接触角>
測定装置としてCA−VP(協和界面化学(株)製)を用い、得られた試験片を温度25±2℃で、液滴法にて、2.2〜2.3μLのオレイン酸(和光純薬工業(株)製、一級試薬)を試験片上に滴下したときの接触角を測定した。結果を表2に示す。
この接触角の値が大きいほど、撥油性の試験片が得られたことを示し、防汚性に優れる試験片が得られたことを示す。
【0109】
<水接触角>
オレイン酸の代わりに、超純水(和光純薬工業(株)製)を用いた以外は、オレイン酸接触角と同様にして接触角を測定した。結果を表2に示す。
【0110】
【表2】
【0111】
<防汚性試験>
ぬれ張力試験用混合液(和光純薬工業(株)製)を、前記実施例3、4、6、8、比較例1、3、7、8、9、10、11または12で得られた組成物を用いた試験片それぞれに、スポイト(アズワン(株)製、ポリスポイト 採血用 1ml)を用いて1滴垂らし、滴下から5秒後に、その液滴を市販のペーパー(大王製紙(株)製、プロワイプ)を用いて拭き取り、5回以内に完全除去できた場合を「○」、10〜30回で完全除去できた場合を「△」、完全除去するために30回以上の拭き取りを要した場合を「×」とした。前記実施例3、6、8、比較例1、3、9、10、11、12の試験片の場合、ぬれ張力試験用混合液(和光純薬工業(株)製、No.36.0)を使用し、前記実施例4、比較例7、8の試験片の場合、ぬれ張力試験用混合液(和光純薬工業(株)製、No.22.6)を使用した。結果を表3に示す。
なお、液滴部に対し、荷重100〜200gでペーパーを通過させる操作を1回の拭き取りとし、液滴を完全に除去できたか否かは、目視により確認した。
【0112】
【表3】
本発明は、防汚性組成物、容器、サニタリー部材、キッチン部材、家電部材および文房具部材に関し、該防汚性組成物は、プロピレン系樹脂、スチレン系樹脂およびポリフェニレンエーテル系樹脂から選択される少なくとも1種の樹脂(A)と、25℃おいて固体である、ポリエステル変性またはアルキル変性シリコーン化合物(B)とを含有する。