【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1)展示会 展示会名: NOODLE WORLD 2012 第7回 ラーメン産業展 第3回 うどん・そば産業展 第3回 パスタ産業展 INTER−FOOD JAPAN 2012 第5回 居酒屋産業展 第4回 飲食店開業支援展 第1回 ホテル・日本料理産業展 第3回 販促・店舗装飾EXPO 第2回 店舗環境改善展 第3回 フランチャイズ・独立開業支援展 全国都道府県特産物フェア 2012 開催日:平成24年8月29日〜31日 2)自社ウエブサイト 掲載年月日:平成24年7月25日 掲載アドレス:http://kobayashiseimen.jp/ http://kobayashiseimen.jp/company/ http://kobayashiseimen.jp/shopping/?ca=7 http://kobayashiseimen.jp/shopping/?pid=1342741053−434674 http://kobayashiseimen.jp/shopping/?pid=1342741900−833058 http://kobayashiseimen.jp/shopping/?pid=1342741154−781868 3)他社ウエブサイト 掲載年月日:平成24年7月19日、8月10日、8月13日、9月10日 掲載アドレス:http://staffbrains.com/index.html http://staffbrains.com/company.html http://staffbrains.com/toumorokosimen.html http://staffbrains.com/kobayashi−sisyokukai.html http://staffbrains.com/kobayashi−kanseisisyokukai.html http://staffbrains.com/kobayashi−toumorokosimen−syouhin.html http://staffbrains.com/kobayashi−noodleworld.html http://staffbrains.com/toumorokoshiko100namamen.pdf 4)刊行物1(麺業新聞) 発行者名:株式会社麺業新聞社 刊行物名 麺業新聞、平成2
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
主原料粉としてグルテンフリー穀粉としてのトウモロコシ粉のみを含有する原料を使用して一般製麺法によりグルテンフリー麺としてのトウモロコシ粉麺を製造する生タイプのグルテンフリー麺の製造方法であって、
主原料粉として、10〜355μmの範囲内の平均粒子径を有するトウモロコシ粉を使用し、
前記主原料粉としてのトウモロコシ粉に、補充的つなぎ成分としてのアルファ化穀粉及び/又はアルファ化澱粉からなる副原料粉、及び、補充的つなぎ成分としての増粘剤及び/又は増粘多糖類を混合し、加水して原料を調製すると共に、前記原料中のトウモロコシ粉成分の澱粉質の未アルファ化状態を維持する原料調製工程と、
前記原料調製工程後、前記原料を混練して混練物を形成すると共に、前記混練物中のトウモロコシ粉成分の澱粉質の未アルファ化状態を維持する混練工程と、
前記混練工程後、前記混練物を圧延して麺帯を形成すると共に、前記麺帯中のトウモロコシ粉成分の澱粉質の未アルファ化状態を維持する圧延工程と、
前記圧延工程後、前記麺帯を所定の麺線形状に切り出して連続麺線を得ると共に、前記連続麺線中のトウモロコシ粉成分の澱粉質の未アルファ化状態を維持する切り出し工程と、
前記切り出し工程後、前記連続麺線を所定長に切断して個々の単位麺線を得ると共に、前記単位麺線中のトウモロコシ粉成分の未アルファ化状態を維持する定量切断工程と、
前記定量切断工程後、前記単位麺線を袋状の耐熱性包装容器にそれぞれ収容して密封包装することで包装済み単位麺線を得ると共に、前記単位麺線中のトウモロコシ粉成分の澱粉質の未アルファ化状態を維持する包装工程と、
前記包装工程後の最終工程として、前記単位麺線の各麺線の少なくとも表面部におけるトウモロコシ粉成分相互の主たるつなぎ効果を得るための主たるつなぎ成分を当該トウモロコシ粉成分中に形成して当該トウモロコシ粉成分相互の結着力を増大するための主たるつなぎ成分形成処理として、前記包装容器内の前記トウモロコシ粉成分の澱粉質が未アルファ化状態にある単位麺線を、前記包装容器内の密閉空間において、当該単位麺線中のトウモロコシ粉成分の澱粉質がアルファ化する所定温度以上の温度で、前記包装容器内の密閉空間における前記単位麺線中の水分のみを介して均一に加熱することにより、前記包装容器内の前記単位麺線中の各麺線の少なくとも表面部におけるトウモロコシ粉成分の澱粉質をアルファ化して前記主たるつなぎ成分へと変性し、当該単位麺線中に前記主たるつなぎ成分を含有して当該主たるつなぎ成分により所定の麺線形状に維持されたアルファ化単位麺線を得ると同時に、当該単位麺線中の細菌類の殺菌を行う主たるつなぎ成分形成工程としての加熱アルファ化工程とを備え、
前記主たるつなぎ成分形成工程としての加熱アルファ化工程で前記主たるつなぎ成分が形成される前の前記麺線においては、主原料粉としての前記トウモロコシ粉を前記平均粒子径とすることで、前記トウモロコシ粉の各々の表面活性による相互付着力によって、前記主たるつなぎ成分が形成される前の前記麺線内のトウモロコシ粉成分間を結着する補助的つなぎ効果を発揮するようにし、かつ、前記原料中の前記補充的つなぎ成分としての前記副原料粉を、前記加熱アルファ化工程による前記主たるつなぎ成分が形成されるまで補助的に前記トウモロコシ粉の各粉体間の結合力を補って外力による形状崩壊を防止するための補助的つなぎ成分として機能させることにより、前記加熱アルファ化工程までの工程における前記連続麺線及び前記単位麺線の麺線形状を維持するようにし、更に、前記主たるつなぎ成分形成工程としての加熱アルファ化工程において、前記主たるつなぎ成分を形成するときに、トウモロコシ粉成分の澱粉質のアルファ化を前記単位麺線に含まれる水分のみを利用して進行させ、これにより、前記加熱アルファ化工程の後の包装済み単位麺線を、長期保存した後においても、その麺線が所定の麺線形状を維持して麺製品としての品質を維持するようにし、
前記主たるつなぎ成分形成工程としての加熱アルファ化工程は、加熱装置の熱源が外部熱源の場合、加熱温度90℃〜95℃で加熱時間35分〜45分の加熱条件により実施することを特徴とする生タイプのグルテンフリー麺の製造方法。
前記原料粉中の主原料粉と副原料粉との配合比率は、主原料粉100重量部に対して副原料粉を3〜10重量部の範囲内とすることを特徴とする請求項1又は2に記載のグルテンフリー麺の製造方法。
脱酸素剤によって前記包装容器内の空気を脱酸素して細菌類が繁殖できない環境とした後、前記加熱アルファ化工程を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のグルテンフリー麺の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態という)を説明する。まず、本発明に係るグルテンフリー麺の製造方法の前提として、本発明者が本発明に想到する過程で得た知見について説明する。
【0036】
[一般製麺法による米粉麺やトウモロコシ麺等のグルテンフリー麺の麺種類の増加]
当初、本発明者は、上記した従来のグルテンフリー麺として唯一提案されている米粉麺の製造方法の課題を検討し、従来の小麦粉麺で使用される一般製麺法を生タイプ又は生状態の米粉麺やその他のグルテンフリー穀粉(例えば、トウモロコシ粉)からなるグルテンフリー麺の製造に応用しできれば、米粉麺やその他のグルテンフリー穀粉(例えば、トウモロコシ粉)においても小麦粉麺と同様の多種類の麺類(特に、ウェーブ麺)を提供できるのではないかと考え、米粉のみを主原料粉とした米粉麺の製麺方法、並びに、その他のグルテンフリー穀粉(例えば、トウモロコシ粉)の実を主原料粉としたグルテンフリー麺の製麺方法について鋭意調査研究を重ねて開発を行った結果、本発明を想到した。なお、本願で使用する「生タイプの麺」とは、(乾麺と異なり)通常の生麺と同様に柔軟性を有するものであるが、通常の生麺のように麺線のアルファ化が全くなされていない麺ではなく、加熱アルファ化工程によって麺線の少なくとも表面部(好ましくは麺線の表面部から中心部までの全体)がアルファ化されている一方で、一定時間(約2分〜4分程度)の茹で処理で食することができる麺のことをいう。なお、このように製造した本発明の米粉麺の茹で処理時間(そうめんのような細麺では約1分、一般的な太さの麺では約2分〜約4分)は、従来の製造方法(押出)による米粉麺の茹で処理時間よりも短時間となる。また、本発明による一般製麺法を使用する米粉麺の製造方法は、他の従来の米粉麺の製造方法に比較して簡便性にも優れている。一方、この開発過程において、本発明者は以下の課題も発見し、この課題を解決するための研究開発も重ねた結果、更なる知見を得て、本発明に当該知見に基づく特徴を追加している。
【0037】
[長期保存性の確保]
即ち、まず、米粉のみを主原料粉とする原料粉を使用して単に従来の一般製麺法によって製麺しようとした場合、上記のとおり、小麦粉のようにつなぎ成分となるグルテンを全く含有しない米粉自体の結合力不足により混練工程で米粉の結合が十分に行われないため、この結合力不足を補うための手段や工程を提供する必要があり、従来は、湯練りや蒸練により米粉の澱粉質をアルファ化して混練することで、この結合力不足を補っている。しかし、例えば、小麦粉麺では、一般に、澱粉質を湯練りや蒸練によりアルファ化した状態の生タイプの麺類とした場合、アルファ化していない場合と比較して、(湯練りや蒸練による水分増加と関連があると考えられるが)細菌が繁殖しやすく、麺が腐敗し易いとされており、特に常温での長期保存性を確保することができないという問題点が指摘されている。この点は、米粉麺にもあてはまると考えられ、本発明者は、米粉麺において常温での長期保存性を確保できれば、更に、商品価値を高めることができるため、本発明に係る米粉麺の製造方法において、米粉麺において常温での長期保存性を確保するための手段や工程についても、鋭意調査研究を重ねて開発を行い、本発明の特徴的構成乃至特徴的工程として(即ち、後に詳述するように、グルテンフリー麺の主材としてのグルテンフリー穀粉の澱粉質のアルファ化のタイミングの選択、グルテンフリー穀粉の平均粒子径の選択、グルテンフリー穀粉のアミロース含有率の選択等における特徴的構成乃至特徴的工程として)グルテンフリー麺の製造方法に追加した。
【0038】
[包装作業の円滑化]
更に、小麦粉麺においては、一般に、澱粉質をアルファ化した状態の生タイプの麺類とした場合、麺線の表面が糊化澱粉の被膜によっておおわれるため、単位麺線を包装材に包装する際に麺線が付着し、包装作業に支障をきたす可能性がある。この点は、米粉麺にもあてはまると考えられ、本発明者は、本発明に係る米粉麺の製造方法において、米粉麺において包装時の麺線の付着を防止するための手段や工程についても、鋭意調査研究を重ねて開発を行い、本発明の特徴的構成乃至特徴的工程として(即ち、後に詳述するように、グルテンフリー麺の主材としてのグルテンフリー穀粉の澱粉質のアルファ化のタイミングの選択、グルテンフリー穀粉の平均粒子径の選択、グルテンフリー穀粉のアミロース含有率の選択等における特徴的構成乃至特徴的工程として)グルテンフリー麺の製造方法に追加した。
【0039】
[麺のこしの確保]
更にまた、小麦粉麺においては、一般に、茹で処理や蒸練処理等、熱水によって澱粉質をアルファ化した状態の生タイプの麺類とする製麺方法の場合、麺線の表面部から中心部に向かって含水率が低下する水分勾配が形成され、麺線の表面では滑らかさが付与されると共に、麺線の中心部に比較的硬めの部分(含水率が比較的低い部分)である芯状部分が残ることで麺にこしが出るとされている。しかし、この場合、麺線中の含水率が高くなりすぎると、麺線中心部の含水率が高くなって麺線のこしが失われるため、茹で処理や蒸練処理における含水率管理のための条件設定及び条件管理が煩雑となる可能性がある。また、茹で処理や蒸練処理における含水率管理のための条件設定及び条件管理を適切に行った場合でも、茹で処理や蒸練処理の後にアルファ化した麺線をある程度の時間放置すると、やはり、麺線表面部の水分が麺線中心部に移行し、麺線中心部が軟化して麺のこしが失われる可能性があり、麺線のアルファ化後の工程における時間管理が煩雑になる可能性もある。この点は、米粉麺にもあてはまると考えられ、本発明者は、米粉麺において麺にこしを残すための手段や工程についても、鋭意調査研究を重ねて開発を行い、本発明の特徴的構成乃至特徴的工程として(即ち、後に詳述するように、グルテンフリー麺の主材としてのグルテンフリー穀粉の澱粉質のアルファ化のタイミングの選択、グルテンフリー穀粉の平均粒子径の選択、グルテンフリー穀粉のアミロース含有率の選択等における特徴的構成乃至特徴的工程として)グルテンフリー麺の製造方法に追加した。
【0040】
[麺製品の物流多様化による有用性の付加]
また、特許文献2を含め、従来の米粉麺の製造方法は、製造段階で(即ち、製造直後には)製造した麺が所定の麺性形状に形成されるように(即ち、麺線が意図せずに破断したり形状が崩れたりすることがないように)することにのみ着目し、そのような観点から製造条件や製造工程を検討している。一方、本発明者は、麺製品は、製造段階や製造直後の状態が重要であることは無論であるが、その後の流通段階や物流段階において、その麺線形状を確実に保持することが、多種多様な物流を可能にする点で非常に重要であるとの着想を得て、かかる観点から本発明について鋭意研究開発を重ね、多くの試行錯誤を重ねた結果、本発明に想到したものである。即ち、流通段階や物流段階において麺製品の麺線形状を確実に保持することができれば、物流手段や消費者のニーズに応じて多種多様な物流方法を採用することができ、取引業者や最終消費者にとっての有用性も非常に高めることができる。これに対し、従来の米粉麺の製造方法では、このような点に全く着目していないため、物流段階で麺製品の麺形状に破断や型崩れ等の不具合が生じる可能性が高く、物流段階で不具合が生じなくても、麺製品を調理する時に、茹で時に麺線が破断したり型崩れしたりする可能性が高い。
【0041】
[本発明の米粉麺と従来の小麦粉麺]
まず、本発明の(米粉麺やトウモロコシ粉麺を典型とする)グルテンフリー麺の製造方法は、主原料粉としての(米粉やトウモロコシ粉を典型とする)グルテンフリー穀粉がグルテンフリーであり(即ち、小麦粉に含まれるグルテンを全く含有せず)、従来の小麦粉麺のようにグルテンによる麺構成成分のつなぎ効果を全く期待することができないという点で、従来の小麦粉麺の製造方法とは全く異なる着眼点及び技術思想に基づき完成された発明である。
【0042】
即ち、(米粉麺やトウモロコシ粉麺を典型とする)グルテンフリー麺と小麦粉麺では、その製造方法に、グルテン含有の有無による大きな(根本的な)違いがあり、(米粉やトウモロコシ粉を典型とする)グルテンフリー穀粉を主原料とする麺(グルテンフリー麺)と小麦粉を主原料とする麺(小麦粉麺)とは、単純に同一分類のもの(穀粉を主原料とする麺)として考えることはできず、従来の米粉麺の製造方法(例えば、特許文献1に開示の製造方法)に、従来の小麦粉麺の製造方法(例えば、特許文献3〜7の製造方法)の各製造工程を適用することは、当業者にとって全く自明のことではなく、それらの従来技術は、本発明のグルテンフリー麺の製造方法についての動機付けを与えるものでは全くない。
【0043】
また、米粉を主原料粉とする米粉麺の製造方法については、上記学術文献4に示すように、本発明の完成より想到以前から着想があるにもかかわらず、その米粉成分の結着手段(結着方法)としては、いずれも、麺線形成前の工程(原料を混練して混練物を形成する混練工程や混練物を圧延して麺帯を形成する圧延工程)における蒸練(或いは蒸し)や湯練り(或いは湯ごね)という麺線形成前における(即ち、麺線切り出し工程前における)加熱工程のみが提案され、本発明のように(即ち、後で詳述するように)、一般製麺法を使用した製造方法において、麺帯を所定の麺線形状に切り出して連続麺線を得る切り出し工程の後における当該連続麺線、連続麺線を所定長に切断して個々の単位麺線を得る定量切断工程の後における当該端に麺線、単位麺線を包装する包装工程の後における当該包装済み単位麺線のいずれかに対して、その各麺線の少なくとも表面部におけるグルテンフリー穀粉成分相互のつなぎ効果を得るためのつなぎ成分を当該グルテンフリー穀粉成分に形成して当該グルテンフリー穀粉成分相互の結着力を増大するためのつなぎ成分形成処理として、前記グルテンフリー穀粉成分の澱粉質が未アルファ化状態にある各麺線を、当該各麺線中のグルテンフリー穀粉成分の澱粉質がアルファ化する所定温度以上の温度で均一に加熱することにより、前記各麺線の少なくとも表面部におけるグルテンフリー穀粉成分の澱粉質をアルファ化して前記つなぎ成分へと変性し、当該各麺線中に前記つなぎ成分を含有して当該つなぎ成分により所定の麺線形状を維持するという発想は全くなかったことからも、(そして、本発明がかかる新規かつ想到困難な発想に基づいて、実際に製品化まで到達している事実からも)、本発明に係る(米粉麺やトウモロコシ粉麺を典型とする)グルテンフリー麺の製造方法は、当業者が従来の米粉麺の製造方法に従来の小麦粉麺の製造方法を適用しても容易に想到できるものではない。
【0044】
[実施の形態1のトウモロコシ粉麺の製造方法]
以下、本発明の実施の形態1に係るグルテンフリー麺としてのトウモロコシ粉麺の製造方法について
図1を参照して説明する。
図1に示すように、本実施の形態に係るトウモロコシ粉麺の製造方法は、原料調製工程STEP1、混練工程STEP2、複合工程(粗麺帯形成工程)STEP3、圧延工程(麺帯形成工程)STEP4、切り出し工程(麺線形成工程)STEP5、定量切断工程(単位麺線形成工程)STEP6、包装工程STEP7、脱酸素工程STEP8及び加熱アルファ化工程(アルファ化・殺菌工程)STEP9の一連の工程群からなる。以下、各工程について詳細に説明する。
【0045】
<原料調製工程>
本実施の形態のトウモロコシ粉麺の製造方法で使用する原料は、所定の原料粉(主原料粉及び副原料粉)に、必要に応じて添加物を添加し、これに所定割合で水(真水)を加えて調製した混合原料からなる。原料粉は、原料調製工程STEP1において、主原料粉及び副原料粉を混合した混合粉から構成されるよう調製され、必要に応じて、これらに添加物を添加した混合物から構成されるよう調製される。具体的には、主原料粉は、所定の種類のトウモロコシの種子(実)を微粉砕して得たトウモロコシ粉のみからなる。或いは、主原料粉は、任意の異なる2種類以上のトウモロコシの種子(実)をそれぞれ微粉砕して得た異なる種類のトウモロコシ粉の混合粉(混合トウモロコシ粉)のみから構成することも可能である。いずれにしても、主原料粉は、上記のトウモロコシ粉のみからなり、トウモロコシ粉以外の成分(小麦粉等)は全く含有していない。なお、原料粉は、主原料粉としてのトウモロコシ粉のみからなる(トウモロコシ粉100%の)原料粉とすることもできるが、この場合、澱粉質が未アルファ化状態でも結着しやすい構造の澱粉質からなるトウモロコシ粉を使用することが好ましい。
【0046】
一方、副原料粉は、主原料粉としてのトウモロコシ粉に混合されて原料粉の一部を構成し、トウモロコシ粉の各粉体間の結合力を補う補助的なつなぎ成分、即ち、麺線形成後の後述する加熱アルファ化工程による本発明固有の長期にわたるつなぎ効果を発揮するつなぎ成分(主要つなぎ成分)ではなく、当該主要つなぎ成分が形成されるまで補助的にトウモロコシ粉間を結合して麺線形成における麺体の切断等の外力による形状崩壊を防止するための補助的なつなぎ成分として機能するものであり、アルファ化コーンスターチ、アルファ化トウモロコシ粉、アルファ化澱粉等の加工澱粉からなる。なお、アルファ化澱粉は、加工澱粉の一種である。副原料粉としては、アルファ化コーンスターチ、アルファ化トウモロコシ粉、アルファ化澱粉やその他の加工澱粉の1種類を単独で使用したり、それらの任意の複数種類を組み合わせて使用することができる。なお、副原料粉としては、トウモロコシ原料が100%のアルファグリッツを副原料粉として使用すれば、(主原料粉と副原料粉について)トウモロコシ成分100%のトウモロコシ粉麺を製造することができる。また、主原料粉のトウモロコシ粉との相性や、トウモロコシ由来澱粉以外の澱粉(アルファ化小麦澱粉等)によるアレルギー等を避ける観点からは、アルファグリッツ及び/又はアルファ化コーンスターチ及び/又はアルファ化トウモロコシ粉を使用することが好ましい。このアルファ化コーンスターチ粉は、トウモロコシを原料とする加工澱粉であるコーンスターチをアルファ化したしたものであり、また、アルファ化トウモロコシ粉はトウモロコシ粉を製粉後に予めアルファ化して調製することができ、これらを主原料粉としてのトウモロコシ粉に混合することで、前記原料粉(混合粉)の全て(100%)をトウモロコシ粉(未アルファ化のトウモロコシ粉及びアルファ化したトウモロコシ粉及び/またはアルファ化コーンスターチ)により構成することができる。即ち、原料粉として上記のようにトウモロコシ粉100%とする場合以外は、基本的に、主原料粉としてのトウモロコシ粉に副原料粉としてアルファ化トウモロコシ粉及び/又はアルファ化コーンスターチを添加することが好ましい。また、添加物は、主原料粉としてのトウモロコシ粉及び副原料粉に添加されて前記混合物の一部を構成し、前記原料粉の物性を改良するものであり、増粘剤・増粘安定剤としての増粘剤や増粘多糖類等から構成することができる。
【0047】
具体的には、原料は、主原料粉A、副原料粉B、添加物Cから構成されるが、以下のような構成例とすることができる。
原料構成例1:主原料粉A(トウモロコシ粉)のみ
原料構成例2:主原料粉A(トウモロコシ粉)+副原料粉B(アルファ化トウモロコシ粉、アルファ化コーンスターチ、アルファ化澱粉又は加工澱粉のいずれか1種類又は任意の複数種類)
原料構成例3:主原料粉A(トウモロコシ粉)+添加物C
原料構成例4:主原料粉A(トウモロコシ粉)+副原料粉B+添加物C
【0048】
また、添加物としては、以下の(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)のうちのいずれか1種類又は任意の複数種類を使用することができる。
添加物(イ):増粘剤としての加工澱粉
添加物(ロ):グアーガム、キサンタンガム等
添加物(ハ):食酢、酒精(エチルアルコール)、pH調整剤、発酵調味液等(いずれか1種類又は任意の複数種類)
添加物(ニ):澱粉老化防止用の糖
【0049】
前記添加物として、例えば、グアーガム及びキサンタンガムの両者を使用した増粘多糖類を添加することもできる。また、前記添加物のうち、(ニ)の澱粉老化防止用の糖としては、トレハロースやマルトース等の二糖類、三糖類程度の澱粉糖を使用することが好ましく、この場合、後述する加熱アルファ化工程でアルファ化したトウモロコシ粉の澱粉質の老化を効果的に防止することができる。なお、前記添加物のうち、食酢及び酒精は、共に殺菌効果を発揮して麺の保存性を高め、食酢は、更に、pH調整剤としての機能も発揮する。また、添加物のうち、pH調整剤及び発酵調味液は、共に、殺菌効果も発揮して麺の保存性を高める。更に、pH調整剤は、麺における酸性又はアルカリ性の度合を調製して麺の変質や変色を防いで品質を安定させたり他の添加物の効果を向上させたりすることができる。また、発酵調味液は、麺のうまみを向上することができる。更に、前記老化防止用の糖は、澱粉質の老化を防止してトウモロコシ粉麺の老化を防止することができる。
【0050】
このように、原料には、添加物としての前記増粘剤や増粘多糖類を添加したり、同じく添加物としての食酢や酒精(エチルアルコール)等を添加することができるが、添加物としては、少なくとも増粘剤や増粘多糖類を添加することが好ましく、こうすると、原料粉の混練時等における粘性を増大してトウモロコシ粉の結着性を改善したり、保湿効果を高めたり、麺製品とした後の食感を改善したりすることができる。また、添加物として増粘剤や増粘多糖類を添加した場合、その増粘剤や増粘多糖類が(後述する加熱アルファ化後の)麺線中のアルファ化したトウモロコシ粉成分の老化(再ベータ化)を防止して麺品質を長期にわたって維持することができる。なお、加工澱粉は、上記副原料として使用する場合と、上記添加物として使用する場合とがあり、添加物として使用した場合の加工澱粉は、増粘剤或いは食感改良剤として機能する。
【0051】
本実施の形態のトウモロコシ粉麺の製造方法で使用する原料は、好ましくは、上記の主原料粉(トウモロコシ粉)、副原料粉及び(必要に応じて)添加物をそれぞれ所定割合(所定配合比率)で配合すると共に、これらに加水して混合することにより調製される。なお、原料粉(主原料粉と副原料粉)の配合比率は、例えば、原料粉中、主原料粉(トウモロコシ粉)が約80〜約99.5%の範囲に対して副原料粉が約0.5%〜約20%の範囲の配合比率(混合割合)とし、主原料粉及び副原料粉をこれらの範囲内から選択した任意の配合比率で配合することで原料粉が100重量%となるようにする。また、副原料粉としてアルファトウモロコシ粉を使用する場合は、トウモロコシ粉100重量部に対してアルファトウモロコシ粉を約3〜約10重量部の範囲内で配合し、好ましくは、トウモロコシ粉100重量部に対してアルファトウモロコシ粉を約5重量部の割合で配合する。なお、上記のように、原料粉を(アルファ化していない)主原料粉としてのトウモロコシ粉のみ(トウモロコシ粉100%)で構成する場合は、副原料粉の配合比率は当然「0%」となる。また、このように調製した原料粉に対する添加物の添加割合は、例えば、原料粉100重量部に対して添加物約1重量部とすることができるが、添加物の種類や添加割合は麺線に付与したい物性に応じて適宜変更することができる。例えば、添加物としての増粘多糖類を約1〜約2重量%の範囲内で(合計100重量%となるよう)上記の原料粉に添加することもできる。上記の配合比率の範囲内であれば、原料を調製して次段の混練工程等に供給した場合に、トウモロコシ粉間の十分な結合力が確保されて(即ち、トウモロコシ粉が確実につながり)、麺線としての所定形状を確実に保持することができる。なお、上記のように、添加物を省略することも可能である。
【0052】
ここで、原料粉へ加える水は、小麦粉麺のような塩水ではなく(小麦粉麺ではグルテン緻密化のために塩水の使用が望ましい)、真水であるが、その原料中の加水量は、一般的な生麺状態のトウモロコシ粉麺の原料中における加水量と同様の加水量範囲(例えば、原料粉100重量部に対して真水約35〜約75重量部の範囲内、好ましくは、約45〜約65重量部の範囲内)、更に好ましくは、約50〜約60重量部の範囲内(或いは、約50〜約63重量部又は約50〜約65重量部の範囲内)とすることができる。また、この原料調製工程STEP1において、原料粉に加える水は常温の水であり、温水や熱水ではなく、原料粉のトウモロコシ粉をアルファ化することは全くない温度域の水である。よって、原料調製工程で原料粉のトウモロコシ粉がアルファ化されることは全くない。即ち、原料調製工程STEP1は、混合原料中のトウモロコシ粉のアルファ化温度域未満(正確には、アルファ化温度域を相当程度下回る常温域)で行われ、原料調製工程STEP1では、全てのトウモロコシ粉成分の未アルファ化状態が維持される。
【0053】
<トウモロコシ粉の粒子径>
また、本実施の形態のトウモロコシ粉麺の製造方法で使用する主原料としてのトウモロコシ粉は、好ましくは、所定粒径(粒子径)の粒子状となるよう所定の微粉砕装置により微粉砕して製粉され、当該所定粒径(平均粒子径)の微粒子状トウモロコシ粉へと調製される。また、このように調製した微粒子状トウモロコシ粉には、上記のとおり、必要に応じて、上記の副原料粉及び添加物が配合されて、これらの混合物からなる原料が調製される。具体的には、主原料粉は、微粉砕することにより、約42〜約1300メッシュ(約355〜約10μm)の平均粒子径である第1の粒径範囲内、好ましくは、約100〜約1300メッシュ(約150〜約10μm)の平均粒子径である第1の粒径範囲内、更に好ましくは、約200〜約900メッシュ(約75〜約15μm)の平均粒子径である第2の粒径範囲内、更に好ましくは、約325〜約900メッシュ(約45〜約15μm)の平均粒子径である第3の粒径範囲内、最も好ましくは、約30μm又は約30μm前後の平均粒子径である第4の粒径範囲内に調製されたものである。ここで、主原料粉の粒径が上記所定範囲内で相対的に大きな値範囲である場合(例えば、約42〜約80メッシュ(約355〜約180μm)又は約100〜約170メッシュ(約150〜約90μm)の範囲内である場合)、当該主原料粉に上記の副原料粉及び添加物を上記の割合の範囲内で配合して原料を調製することが、最終製品としての本発明のトウモロコシ粉麺のつなぎ効果を強固な状態で安定して長期にわたって発揮する点から好ましい。なお、主原料粉としてトウモロコシ粉を使用する場合は、主原料粉として米粉を使用する場合に比較して、その平均粒子径は相対的に大きな粒子径としても、米粉の場合と同程度に強い結着力を発揮することができる。例えば、平均粒子径として、約42〜約1300メッシュ(約355〜約10μm)又は上記の約100〜約1300メッシュ(約150〜約10μm)の平均粒子径の粒径範囲内であれば、米粉を約200〜約900メッシュ(約75〜約15μm)の範囲内の所定の平均粒子径とする場合には、トウモロコシ粉を約170〜約650メッシュ(約90〜約20μm)の範囲内の所定の(相対的に大きな)平均粒子径とすることができ、また、米粉を約325〜約900メッシュ(約45〜約15μm)の平均粒子径とする場合は、トウモロコシ粉を約275〜約650メッシュ(約53〜約20μm)の範囲内の所定の(相対的に大きな)平均粒子径とすることができる。
【0054】
一方、主原料粉の平均粒子径範囲が上記所定範囲内で相対的に小さな値範囲である場合(例えば、約170メッシュを超えるメッシュサイズ(即ち、約90μm未満)の範囲内若しくは約200メッシュを超えるメッシュサイズ(即ち、約75μm未満)の範囲内である場合、好ましくは、約270メッシュを超えるメッシュサイズ(即ち、約53μm未満)の範囲内若しくは約325メッシュを超えるメッシュサイズ(即ち、約45μm以下)の範囲内である場合)、当該主原料粉単独で最終製品としての本発明のトウモロコシ粉麺を製造することもできる。即ち、かかる微細な平均粒子径のトウモロコシ粉からなる主原料粉の粉体同士は、各粉体の相対的に大きな表面積によって、その表面で澱粉粒子の官能基が相対的に多数存在することにより、相対的に強固な分子間力によって相互に結合されるため、上記アルファトウモロコシ粉等や増粘多糖類等の副原料粉や添加物を混合しない場合でも、最終製品としての本発明のトウモロコシ粉麺のつなぎ効果を強固な状態で安定して長期にわたって発揮することができる。ただし、無論、このように微細な平均粒子径のトウモロコシ粉を使用した場合でも、上記アルファトウモロコシ粉等や増粘多糖類等の副原料粉や添加物を混合すれば、最終製品としての本発明のトウモロコシ粉麺のつなぎ効果をより強固な状態でより安定してより長期にわたって発揮することができる。なお、この場合も、上記のとおり、主原料粉としてトウモロコシ粉を使用する場合は、主原料粉として米粉を使用する場合に比較して、その平均粒子径は相対的に大きな粒子径としても、米粉の場合と同程度に強い結着力を発揮することができる。例えば、米粉を約170メッシュ超(約90μm未満)の所定の平均粒子径とする場合には、トウモロコシ粉を約150メッシュ超(約106μm未満)の所定の(相対的に大きな)平均粒子径とすることができ、米粉を約200メッシュ超(約75μm未満)の所定の平均粒子径とする場合には、トウモロコシ粉を約170メッシュ超(約90μm未満)の所定の(相対的に大きな)平均粒子径とすることができ、米粉を約270メッシュ超(約53μm未満)の所定の平均粒子径とする場合には、トウモロコシ粉を約250メッシュ超(約63μm未満)の所定の(相対的に大きな)平均粒子径とすることができ、米粉を約325メッシュ超(約45μm未満)の所定の平均粒子径とする場合には、トウモロコシ粉を約270メッシュ超(約53μm未満)の所定の(相対的に大きな)平均粒子径とすることができる。
【0055】
<トウモロコシ粉の種類>
トウモロコシ粉としては、澱粉質における含有率のうち、アミロースの含有率が相対的に高くアミロペクチンの含有率が相対的に低い高アミローストウモロコシを上記の粒径範囲となるよう微粉砕して得たトウモロコシ粉を使用することが好ましい。例えば、トウモロコシの品種によるが、通常のトウモロコシは、アミロースの含有率が約25%程度であるが、本発明で使用する高アミローストウモロコシとしては、アミロース含有率が、好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上、更に好ましくは50%以上、より更に好ましくは60%以上、より一層好ましくは70%以上、更により一層好ましくは80%以上のものを使用し、そのトウモロコシを上記の粒径範囲となるよう微粉砕して得たトウモロコシ粉を使用することが好ましい。
【0056】
<材料の配合比>
ここで、上記の澱粉質が未アルファ化状態でも結着しやすい構造の澱粉質からなるトウモロコシ粉としては、例えば、上記平均粒子径範囲のトウモロコシ粉を使用することができ、この場合、主原料粉としてのトウモロコシ粉のみからなる(トウモロコシ粉100%の)原料粉とすることもできる。一方、本発明のトウモロコシ粉麺の製造方法では、主原料粉としての微粉砕タイプのトウモロコシ粉が粗くなるほど(即ち、その平均粒子径が大きくなるほど)、トウモロコシ粉の各粉体間の結合力が弱くなるため、より強固な結着力を得るためには、これらの結合力を補うよう副原料粉及び添加物を混合すると共に、それらの配合比率を多くして調整することが好ましい。例えば、トウモロコシ粉が上記第1の粒径範囲内(約355〜約10μmの粒径範囲内、又は、約150〜約10μmの粒径範囲内若しくは当該範囲より相対的に若干大きな上記粒径範囲内)の平均粒子径である場合、副原料粉は、原料粉中、主原料粉(トウモロコシ粉)が約80〜約99.5%の範囲に対して副原料粉が約0.5%〜約20%の範囲の配合比率(混合割合)とし、トウモロコシ粉が、上記第2の粒径範囲内(約75〜約15μmの粒径範囲内、或いは、当該範囲より相対的に若干大きな上記粒径範囲内)の平均粒子径である場合、原料粉中、主原料粉(トウモロコシ粉)が約85〜約99.5%の範囲に対して副原料粉が約0.5%〜約15%の範囲の配合比率(混合割合)とし、トウモロコシ粉が、上記第3の粒径範囲内(約45〜約15μmの粒径範囲内、或いは、当該範囲より相対的に若干大きな上記粒径範囲内)の平均粒子径である場合、原料粉中、主原料粉(トウモロコシ粉)が約90〜約99.5%の範囲に対して副原料粉が約0.5%〜約10%の範囲の配合比率(混合割合)とし、トウモロコシ粉が、上記第4の粒径範囲内(約30μm前後の平均粒子径、或いは、当該値より相対的に若干大きな粒径の平均粒子径)である場合、原料粉中、主原料粉(トウモロコシ粉)が約95〜約99.5%の範囲に対して副原料粉が約0.5%〜約5%の範囲の配合比率(混合割合)とする。
【0057】
<混練工程>
原料調製工程STEP1で調製された混合原料は、混練工程STEP2において、混練装置としての混練機(混捏機、混合機、ミキサー等と呼ばれることもある)に供給され、混練されて所定の混練物(ドウ生地等の混練塊)に形成される。なお、この混練工程STEP2においても、混合原料又は混練物が加温又は加熱されることは全くなく、原料中のトウモロコシ粉がアルファ化されることは全くない。即ち、混練工程STEP2は、混合原料中及び混合物中のトウモロコシ粉のアルファ化温度域未満(正確には、アルファ化温度域を相当程度下回る常温域)で行われ、混練工程STEP2でも、全てのトウモロコシ粉成分の未アルファ化状態が維持される。
【0058】
<複合工程(粗麺帯形成工程)>
混練工程STEP2で形成された混練物は、複合工程STEP3において、複合装置としての複合機に供給され、複数枚の粗麺帯へと圧延された後、当該複数層の粗麺帯が積層されて所定の複合麺帯(麺帯が複数層積層したもの)へと形成される。なお、この複合工程STEP3においても、混合物又は粗麺帯又は複合麺帯が加温又は加熱されることは全くなく、原料中のトウモロコシ粉がアルファ化されることは全くない。即ち、複合工程STEP3は、混合物中、粗麺帯中及び複合麺帯中のトウモロコシ粉のアルファ化温度域未満(正確には、アルファ化温度域を相当程度下回る常温域)で行われ、複合工程STEP3でも、全てのトウモロコシ粉成分の未アルファ化状態が維持される。
【0059】
なお、混練工程STEP2及び複合工程STEP3は、一連の混合装置及び複合装置(例えば、これらを一体化した装置)による混練・複合工程として把握することもできる。また、複合工程STEP3を省略して、或いは、複合工程STEP3の代わりに、一層のみの粗麺帯を形成する粗麺帯形成工程STEP3を設けてもよい。この場合、粗麺帯の形成は、個別の装置を使用することもできるが、圧延装置により粗麺帯を形成することも可能である。即ち、次段の圧延工程STEP4で、混練物を厚みの大きい麺帯(粗麺帯相当物)から厚みの小さい麺帯(麺線厚みと同一厚みとなる最終厚みの麺帯)へと圧延していく圧延工程とすることも可能であり、この場合、(圧延工程とは独立した)粗麺帯形成工程STEP3も省略することができる。いずれにしても、混練工程STEP2から圧延工程STEP4より前までの工程は、混練工程STEP2で形成した混練物を粗麺帯状に成形して次段の圧延工程STEP4に供給する工程として把握することができる。なお、通常は、複合工程により積層麺帯としての粗麺帯を形成して、次段の圧延工程により圧延することが好ましい。
【0060】
<圧延工程>
複合工程(粗麺帯形成工程)STEP3で形成された粗麺帯としての積層麺帯(複合工程STEP3を省略する場合、或いは、複合工程複合工程STEP3の代わりに粗麺帯形成工程複合工程STEP3を設ける場合は、単一層の粗麺帯)は、圧延装置に供給され、圧延(延伸ローラーによる展延)によって所定形状(所定の幅及び最終麺製品と同一の厚みを有する薄肉麺帯状)の麺帯として成形される。なお、この圧延工程STEP4においても、麺帯が加温又は加熱されることは全くなく、原料中のトウモロコシ粉がアルファ化されることは全くない。即ち、圧延工程STEP4は、麺帯中のトウモロコシ粉のアルファ化温度域未満(正確には、アルファ化温度域を相当程度下回る常温域)で行われ、圧延工程STEP4でも、全てのトウモロコシ粉成分の未アルファ化状態が維持される。なお、この圧延工程STEP4では、粗麺帯として複合工程STEP3による積層麺帯を圧延する場合、圧延時に麺帯中に空気が混入するが、麺線としたときの味としては、麺本来の味となり、味品質として優れた品質を提供することができる。
【0061】
<切り出し工程>
圧延工程STEP4で形成された麺帯は、切り出し工程(麺線形成工程)STEP5において、切り出し装置に供給され、所定の麺線形状(最終麺製品と同一の所定の麺線幅を有する麺線形状)に切り出される。なお、この切り出し工程STEP5においても、麺帯及び麺線が加温又は加熱されることは全くなく、原料中のトウモロコシ粉がアルファ化されることは全くない。即ち、切り出し工程STEP5は、麺帯及び麺線中のトウモロコシ粉のアルファ化温度域未満(正確には、アルファ化温度域を相当程度下回る常温域)で行われ、切り出し工程STEP5でも、全てのトウモロコシ粉成分の未アルファ化状態が維持される。また、圧延工程STEP4及び切り出し工程STEP5は、一連の圧延装置及び切り出し装置(例えば、これらを一体化した装置)による単一の工程(例えば、圧延・切り出し工程とも呼ぶべき工程)として把握することもできる。
【0062】
<定量切断工程>
切り出し工程STEP5で形成された麺線は、定量切断工程STEP6において、定量切断装置に供給され、所定の長さ(最終麺製品の各麺線長さと同一の長さ)に切断されて単位麺線とされ、所定の包装形態へと整形される(好ましくは、上下均等に二つ折りした状態にされる)。なお、この定量切断工程STEP6においても、麺線が加温又は加熱されることは全くなく、原料中のトウモロコシ粉がアルファ化されることは全くない。即ち、定量切断工程STEP6は、麺線中のトウモロコシ粉のアルファ化温度域未満(正確には、アルファ化温度域を相当程度下回る常温域)で行われ、定量切断工程STEP6でも、全てのトウモロコシ粉成分の未アルファ化状態が維持される。また、定量切断工程STEP6は、切り出し工程STEP5と一連の装置例えば、これらを一体化した装置)によるこれらと単一の工程として把握することもできる(例えば、切り出し・切断工程として把握したり、単に切り出し工程して把握したりすることもできる)。更に、定量切断工程STEP6は、圧延工程STEP4及び切り出し工程STEP5と一連の装置(例えば、これらを一体化した装置)によるこれらと単一の工程(例えば、圧延・切り出し・切断工程、或いは、圧延・切り出し工程とも呼ぶべき工程)として把握することもできる。
【0063】
<包装工程>
図2に示すように、定量切断工程STEP6で定量切断して所定の包装形態(好ましくは、上下均等な二つ折り状態)とされた単位麺線30は、包装工程STEP7において、当該単位麺線ごとに、個別の包装容器10により個別包装される。ここで、本実施の形態では、包装容器10は、所定の長さ寸法L及び所定の幅寸法Wを有する袋状のプラスチック容器である。包装容器10は、好ましくは、レトルト食品で使用される袋状のレトルト包装容器やガスバリアフィルムからなり、また、内部が視認できるように透明なプラスチック材料から形成された透明包装容器とされる。この袋状のレトルト包装容器は、加熱加圧殺菌に適した素材からなり、通常の袋状のプラスチック容器と比較して、耐熱性に優れると共に、気体遮断性にも優れた(気体透過性が低い)包装容器である。また、包装容器10は、
図2及び
図3に示すように、まち(側面の厚み)のないまちなし包装容器からなる。詳細には、包装容器10は、幅方向両側縁部及び長さ方向一側縁部の全体を熱溶着等により気密に封止(シール)したシール部11とし、長さ方向他側縁を収容物挿入用の開口12としたものである。
【0064】
上記包装容器10を使用した包装工程STEP7では、単位麺線30は、所定の包装形態(好ましくは、
図2に示す上下均等な二つ折り状態)で、袋状のプラスチック製包装容器10の開口12から内部に挿入され、当該包装容器の内部の収容空間14に収容配置された後、当該包装容器10の開口12がシール装置によって封止されてシール部13となり、包装容器10の収容空間14(及びその内部に収容した単位麺線30)が気密に閉塞される。なお、本実施の形態の包装工程STEP7は、包装容器10内部を真空とするものではない(即ち、真空包装ではない)。これにより、包装工程STEP7は真空包装ではないが、包装容器10に単位麺線30を収容したときに、まちなし包装容器10自体が、その(平坦状に戻ろうとする)形状復元力により付勢されて、本来の厚みを維持しようとして平坦状になる方向、即ち、包装容器10内部の空気を抜く方向に変位するため、包装容器10内部の(単位麺線30を収容した状態の)収容空間14の残存空気を非常に少ない量とすることができる。これと同時に、本実施の形態では、
図2に示すように、包装容器10内部に収容配置される単位麺線30を、上下均等な(麺線31の長さ方向に均等な)二つ折りの平坦状の包装形態とすると共に、当該包装形態の単位麺線30が包装容器10の平坦状の収容空間14のほぼ全体に広がるよう、各麺線31を包装容器10の収容空間14の平面方向(特に幅方向)に拡散及び分散して配置し(即ち、麺線31の幅方向に拡散して扁平状態とした状態で収容し)、その後、包装容器10の開口12をシール(封止)してシール部13によって開口12を完全に気密に閉塞する。
【0065】
これにより、包装容器10の収容空間14内では、単位麺線30が、当該収容空間14の平面方向全体に万遍なく薄く広がる。即ち、包装工程STEP7では、単位麺線30は、折り曲げ束状の麺線31を包装容器10の収容空間14の幅方向に均等に拡散乃至分散して、その幅方向の各位置における麺線31の積層体により形成される厚みが、当該幅方向の主要範囲の各部(各位置)においてほぼ均等乃至同等な薄肉状となるよう、かつ、長さ方向には、収容空間14の長さ方向のほぼ全体にわたるよう、包装容器10の収容空間14に収容配置される。即ち、このとき、
図3に示すように、包装容器10の収容空間14に収容した単位麺線30の全体の厚み寸法は、幅方向中央部分の最大厚み寸法Hから、幅方向両端に向かって若干漸減する厚み分布となり、幅方向両端部で最小となるものの、その幅方向の主要範囲(全体の約80〜90%範囲)にわたってほぼ同等の厚み寸法となると共に、前記収容空間14内における前記単位麺線31の薄肉状の包装形態が前記まちなし包装容器10の形状復元力によって維持される。
【0066】
ここで、収容空間14内での単位麺線30の最大厚み寸法H及び厚み分布は、単位麺線30の体積(かさ)と、収容空間14内における単位麺線30の束状の麺線31の(特に幅方向への)分散化による薄肉化の程度とに応じて決定される。この単位麺線30は、麺の種類(うどん、きしめん、ラーメン、スパゲッティ、パスタ等)ごとに所定の重量(例えば、120g、160g等)及び体積を有すると共に、各麺線31は、圧延工程STEP4での圧延量に応じた所定の麺線厚(例えば、約1mm)を有する。したがって、単位麺線30は、収容空間14内では、幅方向の各位置における麺線31の層数(重なり数)が、当該各位置における厚み寸法を各麺線31の麺線厚で除した数となり、最大厚み寸法H部分(幅方向中央部分)では、当該最大厚み寸法Hを各麺線31の麺線厚で除した数となるが、本実施の形態では、収容空間14における単位麺線30の上記分散状態で、前記最大厚み寸法H部分での単位麺線の層数が、所定層数の範囲内、好ましくは、約10〜20層の範囲内、更に好ましくは、約10〜15層の範囲内となるように寸法(特に、収容空間14の幅寸法)を設定した包装容器10が使用される。上記単位麺線30の分散状態での層数を、最大厚み寸法H部分で上記所定層数の範囲内とすると、後述する加熱アルファ化工程で、包装容器10内の単位麺線30の各麺線31を、その外側から内側のものまで均等に効率よく加熱することができ、各麺線31を、外側の麺線31により覆われる内側のものまで、万遍なく効果的にアルファ化及び殺菌することができる。
【0067】
また、包装容器10の長さ寸法Lは、収容空間14の長さ寸法(
図2中の左右方向の寸法)が、二つ折りした単位麺線30の長さ寸法(麺線31の折り曲げ部から麺線31の先端までの距離)よりも若干の寸法だけ大きくなり、収容空間14の長さ方向の基端(開口12と反対側のシール部11の内側縁位置、即ち、
図2の左端)及び/又は先端(開口12側のシール部13の内側縁位置、即ち、
図2の右端)と単位麺線30の折り曲げ部及び/又は先端との間に、若干の隙間が形成されるよう設定されている。また、包装容器10の幅寸法Wは、収容空間14の幅寸法(
図2中の上下方向の寸法)が、二つ折りして麺線31を拡散した単位麺線30の幅寸法よりも若干の寸法だけ大きくなり、収容空間14の幅方向の両端(幅方向両側のシール部11の内側縁位置、即ち、
図2の上下両端)と単位麺線30の幅方向両端との間に、若干の隙間が形成されるよう設定されている。
【0068】
<脱酸素工程>
前記包装工程において単位麺線を所定の包装容器に収容配置する一方で、脱酸素工程STEP8において、当該包装容器10の収容空間14に、単位麺線30の厚さ方向の一側に位置するよう、パッケージ状の脱酸素剤21を挿入して収容する。そして、前記包装工程STEP7で包装容器10の開口12をシールしてシール部13により気密性を確保した後、所定時間(好ましくは、約1〜2時間の範囲内)、単位麺線30を包装済みの包装容器10(即ち、麺入り包装容器)を常温で放置する。これにより、密閉状態にある包装容器10の収容空間14に残存する空気中の酸素が脱酸素剤21によって吸着除去され、酸素による単位麺線30への影響を防止(微生物防止や酸化による変質防止等)することができる。また、本実施の形態では、包装容器10を(酸素透過性等の)気体透過性の低いレトルト包装容器としているため、脱酸素工程STEP8における脱酸素処理を効果的に行うことができる。なお、大気の組成は、窒素が約78%で酸素が約21%(及びその他の気体が約1%)であることから、脱酸素工程STEP7においては、包装容器10の内部空間である収容空間14内の残存空気は、最大限に酸素を除去した状態で約21%減少し、完全に酸素を除去した状態では窒素のみが残存するため、当該窒素が収容空間14内での単位麺線30の酸化防止に多大に貢献する。特に、後述する加熱アルファ化工程STEP9において、包装容器10を介して収容空間14内の単位麺線30を加熱してアルファ化と同時に殺菌を行うときに、収容空間14内の空気が脱酸素状態(窒素のみの状態)にあるため、加熱アルファ化工程STEP9の前に特に好機性菌の生育を抑制した状態でアルファ化と共に殺菌を行うことができ、効率的な殺菌を行うことができると共に、加熱アルファ化工程STEP9の後においても、脱酸素状態にある包装容器10の収容空間14内で、アルファ化した単位麺線30中で、特に、(好機性菌が殺菌後に残存する場合でも)好機性菌の増殖抑制を行うことができる。なお、脱酸素工程は省略することもできる。上記包装工程STEP7及び脱酸素工程STEP8も、麺線を加温又は加熱することは全くなく、麺線中のトウモロコシ粉のアルファ化温度域未満(正確には、アルファ化温度域を相当程度下回る常温域)で行われ、原料中のトウモロコシ粉をアルファ化することは全くないことから、全てのトウモロコシ粉成分の未アルファ化状態が維持される。
【0069】
<加熱アルファ化工程(主たるつなぎ成分形成工程・麺線形状維持工程)>
収容空間14内部を脱酸素状態とした包装容器10中の単位麺線30は、加熱アルファ化工程STEP9において、加熱装置により所定の加熱条件で外部加熱されて、少なくとも各麺線31の表面部(好ましくは、各麺線31の表面部から内部中心部までの全域)が加熱されると同時に、表面から内部中心部までの全体が殺菌される。詳細には、加熱装置の熱源としては、スチーム加熱(蒸気加熱)や熱風加熱のような外部熱源のほか、マイクロ波加熱等(外部から)を使用することができ、包装容器10内部の単位麺線30の各麺線31を均一に加熱するものであれば、任意の熱源を使用することができる。加熱装置は、熱源として例えばスチーム加熱等の外部熱源を使用した場合、前記単位麺線30を封入して脱酸素状態とした包装容器10の外部から、包装容器内部10の単位麺線30に対して熱源からの熱エネルギーを加え、包装容器10の収容空間14内の空気(基本的に窒素)や、加熱後に単位麺線30中の水分が蒸発してできた蒸気等を介した熱伝導や輻射や対流によって、単位麺線30の全体を均一に加熱する。
【0070】
加熱条件は、単位麺線30中の各材料(主原料、副原料等)の配合比、含水率、トウモロコシ粉の種類、包装容器10の耐熱性、殺菌対象とする菌類の種類、希望するアルファ化の程度等に応じて最適条件に設定する。加熱条件のうち、加熱温度は、包装容器中10の単位麺線30の各麺線31の芯温換算で、約55℃〜約100℃の温度範囲とする。具体的には、主原料粉が一般的なトウモロコシ粉の場合、加熱温度は、好ましくは、前記芯温換算で約55℃〜約95℃の温度範囲内とし、更に好ましくは、芯温換算で約60℃〜約93℃の温度範囲内とする。また、主原料粉が加熱によりアルファ化しにくい種類のトウモロコシ粉の場合、加熱温度は、好ましくは、前記芯温換算で約60℃〜約100℃の温度範囲内とし、更に好ましくは、芯温換算で約65℃〜約98℃の温度範囲内とする。即ち、主原料粉が一般的なトウモロコシ粉の場合は、主原料粉がアルファ化しにくいトウモロコシ粉の場合よりも加熱温度を高温域とする。
【0071】
また、加熱時間は、加熱装置の熱源が外部熱源の場合、約10分〜約45分の時間範囲内とする。具体的には、加熱温度が相対的に高いと相対的に短い加熱時間とし、加熱温度が相対的に低いと相対的に長い加熱時間とするが、例えば、主原料粉の種類(一般的なトウモロコシ粉又は加熱によりアルファ化しにくい種類のトウモロコシ粉)に応じて、以下に示すような加熱温度及び加熱時間の組合せを採用することができる。
【0072】
<一般的なトウモロコシ粉>
加熱条件1(第1の低温域) 加熱温度55℃〜65℃ 加熱時間40分〜50分(例えば、加熱温度60℃で加熱時間45分の加熱条件)
加熱条件2(第2の低温域) 加熱温度60℃〜70℃ 加熱時間40分〜50分(例えば、加熱温度65℃で加熱時間45分の加熱条件)
加熱条件3(第3の低温域) 加熱温度65℃〜75℃ 加熱時間40分〜50分(例えば、加熱温度70℃で加熱時間45分の加熱条件)
加熱条件4(第1の中温域) 加熱温度70℃〜80℃ 加熱時間40分〜50分(例えば、加熱温度75℃で加熱時間45分の加熱条件)
加熱条件5(第2の中温域) 加熱温度75℃〜85℃ 加熱時間35分〜45分(例えば、加熱温度80℃で加熱時間40分の加熱条件)
加熱条件6(第3の中温域) 加熱温度80℃〜90℃ 加熱時間35分〜45分(例えば、加熱温度85℃で加熱時間40分の加熱条件)
加熱条件7(第1の高温域) 加熱温度85℃〜95℃ 加熱時間35分〜45分(例えば、加熱温度90℃で加熱時間40分の加熱条件)
加熱条件8(第2の高温域) 加熱温度90℃〜95℃ 加熱時間35分〜45分(例えば、加熱温度93℃で加熱時間30分〜40分の加熱条件、具体的には、加熱温度93℃で加熱時間40分の加熱条件)
加熱条件9(第3の高温域) 加熱温度90℃〜100℃ 加熱時間30分〜40分(例えば、加熱温度95℃で加熱時間35分の加熱条件)
【0073】
<加熱によりアルファ化しにくいトウモロコシ粉>
加熱条件1(第1の低温域) 加熱温度60℃〜70℃ 加熱時間40分〜50分(例えば、加熱温度65℃で加熱時間45分の加熱条件)
加熱条件2(第2の低温域) 加熱温度65℃〜75℃ 加熱時間40分〜50分(例えば、加熱温度70℃で加熱時間45分の加熱条件)
加熱条件3(第3の低温域) 加熱温度70℃〜80℃ 加熱時間40分〜50分(例えば、加熱温度75℃で加熱時間45分の加熱条件)
加熱条件4(第1の中温域) 加熱温度75℃〜85℃ 加熱時間40分〜50分(例えば、加熱温度80℃で加熱時間45分の加熱条件)
加熱条件5(第2の中温域) 加熱温度80℃〜90℃ 加熱時間35分〜45分(例えば、加熱温度85℃で加熱時間40分の加熱条件)
加熱条件6(第1の高温域) 加熱温度85℃〜95℃ 加熱時間35分〜45分(例えば、加熱温度90℃で加熱時間40分の加熱条件)
加熱条件7(第2の高温域) 加熱温度90℃〜95℃ 加熱時間35分〜45分(例えば、加熱温度95℃で加熱時間40分の加熱条件)
加熱条件8(第3の高温域) 加熱温度95℃〜100℃ 加熱時間35分〜45分(例えば、加熱温度98℃で加熱時間30分〜40分の加熱条件、具体的には、加熱温度98℃で加熱時間40分の加熱条件)
【0074】
ここで、例えば、加熱温度60℃で加熱時間45分間の低温域での加熱条件では、麺線31の表面部のみがアルファ化されることになり、また、加熱による麺線31に対する負荷は非常に少なく、熱による麺線31の品質劣化を確実に防止することができ、麺製品としての麺線31の品質(味等)を高く維持することができる。即ち、上記低温域での加熱条件は、相対的に低温域乃至低温値での加熱条件となり、麺線31中のトウモロコシ粉成分を所定の低温域乃至低温値(アルファ化開始温度付近の温度)でアルファ化するため、麺線への熱的影響は小さくすることができる一方、殺菌効果は高温度域での加熱条件と比較して相対的に小さくなり、加熱後に麺線31中に残存する菌数は相対的に高いものとなるため、賞味期限は相対的に短くなる。更に、加熱条件の温度域が低温域から中温域及び高温域へと高くなるにつれ、殺菌効果は高くなり、また、麺線31のアルファ化の程度(麺線31の中心に向かってアルファ化される割合)も高くなる。例えば、高温域の加熱条件では、麺線31の内部中心まで完全にアルファ化され、殺菌効果も非常に高めることができる。実用上は、加熱温度93℃で加熱時間40分間程度の加熱条件が最も好ましく、例えば、加熱温度93℃で加熱時間30分〜40分間の加熱条件とすれば、包装容器10内の単位麺線30の各麺線31の内部中央部まで完全にアルファ化することができると共に、また、これと同時に、各麺線31に(炊飯米のような)透明感を付与することができる。このように、低温域の加熱条件は麺線の品質向上の点からは好ましい一方、高温域の加熱条件は麺線の完全アルファ化及び殺菌効果の点からは好ましいため、麺製造における各種の要求や条件に応じて、加熱条件適宜設定する。
【0075】
なお、加熱アルファ化工程STEP9の加熱は、一般的なレトルト加熱のように加圧加熱(大気圧を超える加圧状態で100℃を超える温度での加熱)ではないため、加熱温度が100℃を超えることはない。なお、加熱装置の熱源がマイクロ波加熱の場合、加熱時間は約40〜約60秒の時間範囲とすることができ、好ましくは、約45秒〜約55秒或いは約50秒程度の時間範囲とすることができる(加熱温度は、麺線の芯温換算で上記と同様の加熱温度を採用することができる)。
【0076】
上記加熱条件による加熱アルファ化工程STEP9では、包装容器10内の単位麺線30は、各麺線31内部の各成分の温度が加熱により昇温し、特に、トウモロコシ粉成分が、加熱温度に応じてそのアルファ化温度以上の温度まで昇温するため、トウモロコシ粉成分がアルファ化すると同時に、麺線31中に細菌類が存在する場合は当該細菌類が加熱殺菌される。
【0077】
このとき、熱は、単位麺線30の束状の麺線31のうち外側のものから(外側の麺線31により覆われている)内側のものへと伝達し、また、各麺線31においては、その表面側から内部中心に向かって伝達する。したがって、包装容器10中の単位麺線30は、外側の麺線31から内側の麺線31に向かって昇温する。また、各麺線31においては、表面側から中心部に向かって昇温するが、厚みが1mm以内であるため、基本的には、無視できる程度の時間差である。
【0078】
また、このとき、単位麺線30は、包装容器10内の包装形態として、束状の麺線31が平坦状に分散して配置されて全体として薄肉平板状となる包装形態となっていると共に、全体の露出面積も大きくなっているため、通常の包装形態と比較して、各部分の麺線31の積層数が大幅に少なくなり(最大でも15層程度となり)、麺線31への熱伝導が向上し、厚さ方向の外側(表層側)の麺線31のみならず内側(内層側)の麺線31も熱源による加熱によって円滑に加熱昇温し、トウモロコシ粉成分のアルファ化と殺菌とが効果的に行われる。
【0079】
例えば、殺菌効果については、トウモロコシ粉の澱粉質のアルファ化温度域のうち低温域である55℃〜70℃で蒸気を使用した湿熱殺菌を行った場合、微生物中、かびの菌糸及び胞子が死滅し(正確には、菌糸は加熱温度60℃、加熱時間5〜10分で死滅すると共に、胞子は加熱温度65〜70℃、加熱時間5〜10分で死滅し)、酵母の栄養細胞及び胞子が死滅し(正確には、栄養細胞は加熱温度55〜65℃、加熱時間2〜3分で死滅すると共に、胞子は加熱温度60℃、加熱時間10〜15分で死滅し)、細菌の栄養細胞が死滅(正確には、加熱温度63℃、加熱時間30分で死滅)する。このことより、かび及び酵母は、比較的穏やかな加熱条件で死滅するため、細菌が主な殺菌対象となるが、細菌の場合でも、一般細菌や大腸菌等の細菌(耐熱菌以外の細菌)は、加熱温度55〜75℃・加熱時間10〜30分、或いは、加熱温度60〜65℃・加熱時間1〜10分で殆どの細菌が死滅する。本発明のトウモロコシ粉麺の製造方法においても、加熱アルファ化工程STEP9における加熱条件の一例として、加熱温度63℃(麺線の中心温度)・加熱時間30分の加熱条件で常圧殺菌することができる。
【0080】
詳細には、腸炎ビブリオは65℃・5分、サルモネラ菌は65℃・3分、病原性大腸菌は60℃・1分、ウエルシュ菌栄養細胞は60℃・10分、カンビロバクターは60℃・1分、ブドウ球菌は65℃・1分、ボツリヌス菌A・B型栄養細胞は65℃・10分、ボツリヌス菌3型栄養細胞は65℃・10分の加熱条件でそれぞれ死滅し、ボツリヌス菌E型芽胞でも80℃・3分の加熱条件で死滅する。即ち、トウモロコシ粉の澱粉質のアルファ化温度域のうち、低温域のうちの好適温度域である60〜65℃の温度域で、殆どの細菌を死滅させることができ、高温域(75〜95℃)のうちの好適温度域である80℃〜90℃では、ボツリヌス菌E型芽胞までも死滅させることができる。このように、一般細菌及び大腸菌は、加熱温度60〜65℃・加熱時間1〜10分で殆どのものが死滅する。
【0081】
一方、麺に最も負担のない(即ち、味覚等の品質を損なうことのない)加熱温度域としては、上記のように、麺線の中心温度(芯温)65℃近辺の温度域(加熱時間45分程度)が好ましい。この場合でも、麺の品質に殆ど影響を与えることなく、(菌類の種類中、温度60℃程度で死滅する細菌類が殆どのため)殆どの細菌類を死滅させて、食品衛生基準(HACCPの食品衛生管理基準等)を満足することができる。
【0082】
ここで、従来の小麦粉麺のロングライフ麺や米粉麺の製造方法では、単位麺線の包装工程の前の工程や切り出し工程の前の工程や圧延工程の前の工程で、一旦、混練物や麺帯や麺線を湯練りや蒸練処理や茹で処理によって加熱しているため、その際の熱により原料が高温となっており、包装前に混練物や麺帯や麺線を冷却する必要があり、特に、一般製麺法により製造する小麦粉麺でも、麺帯形成後に当該麺帯を一定時間熟成させることが望ましく、そのための冷却工程や熟成工程がある程度の時間必要になり、製造時間が長時間化すると共に、その冷却工程や熟成工程中に、混練物や麺帯や麺線内部で細菌類が繁殖する可能性がある。更に、従来のトウモロコシ粉麺の製造方法において、蒸練等によってトウモロコシ粉成分をアルファ化して混練物を形成した場合、その混練物を冷やしすぎると、混練物が硬くなり、次段の押出工程での麺線形成に支障をきたすことから、そのための温度管理も必要となる。なお、押出による麺線成形では、原料を押出機のダイスから押し出すときの圧力による摩擦熱により、押し出される麺線の表面がダイス表面で加熱されてその熱的影響を受けることになるため、厳密な意味では、この熱的影響の管理も必要となる。
【0083】
これに対し、本発明では、冷却工程や熟成工程は不要となるため、製造時間を大幅に短縮化できると共に、混練物及び麺帯から麺線への形成を一連の連続した工程(途中で冷却塔のために作業中断されない一連の工程)として短時間で行うことができ、混練物及び麺帯及び麺線内部における細菌類の繁殖を大幅に抑制することができる。
【0084】
また、従来の茹で処理等した麺は、含水率が高いため、冷却工程等で細菌類が繁殖しやすい条件となっているが、本発明では、上記一連の工程において形成される麺線は、茹で処理等した麺と比較して大幅に含水率が低いため、細菌類が繁殖しにくい条件となっており、かつ、上記のとおり、短時間で一連の工程が終了し、その直後に、包装工程で包装され、外界から遮断されて細菌類の落下・付着等による侵入を確実に防止することができ、更に、脱酸素剤によって包装容器内の空気を脱酸素して細菌(好機性菌)が繁殖できない環境とするため、細菌類の繁殖を画期的に抑制することができ、更に又、この状態で加熱アルファ化工程STEP9による殺菌を行うため、残存する細菌類を確実に殺菌することができる。
【0085】
上記製造方法により製造した包装済み麺製品は、常温保存で1年以上の保存が可能であり、この場合でも、一般細菌数300以下の衛生状態を確保することができる(実証実験における検査により、製造後22カ月後に菌数300以下となる長期保存性も確保できることが確認されている)。
【0086】
また、上記製造方法により製造した包装済み麺製品は、少なくとも表面部のトウモロコシ粉成分がアルファ化して成分相互の結着力を増大するため、包装容器10中において、及び、包装容器10を開封して麺線31を取り出すときや取り出した後に調理用に取り扱うときも麺線31が折れにくくなる。また、製造後の包装済みトウモロコシ粉麺について、麺線31は、少なくとも表面部をアルファ化しているため、包装容器10を開封して食するときに、麺線31を高温の湯中に所定時間(数分程度)浸漬するだけで、内部中心部が未アルファ化状態にある麺線31の場合でも、その未アルファ化部分が高温の湯からの熱伝導により容易にアルファ化し、麺線31全体がアルファ化する。更に、このとき、麺線31の少なくとも表面部がアルファ化しているため、いわゆる湯汚れ(麺線31表面からの成分溶出による湯の白濁等)を防止することができる。このように、上記トウモロコシ粉麺の製造方法によれば、麺線の表面部のみアルファ化した麺製品を製造することも可能であり、この場合、麺としては美味な麺となることに加え、麺線の品質を味覚の点以外からも向上することができる。一方、加熱温度60℃程度の低温域でも、上記のように、問題ない程度に菌数を低減することができるが、高温域の加熱条件とすると、麺線の中心部までトウモロコシ粉成分をアルファ化することができると共に、細菌類の殺菌効果を大きく高めることができる。
【0087】
更に、上記トウモロコシ粉麺の製造方法によれば、通常の包装麺製品のように麺を団子状として包装容器に収容する場合と比較して、単位麺線30を薄肉平板状として包装容器10に収容するため、加熱によるアルファ化及び殺菌を非常に効率よく行うことができ、束状の麺線31のうち内層側の麺線31も確実にアルファ化及び殺菌を同時に行うことができる。詳細には、上記トウモロコシ粉麺の製造方法では、包装容器10内の単位麺線30の包装形態として上記の包装形態を採用すると、包装容器10の収容空間14内における単位麺線30は、その横寸法(収容空間14内の左右寸法)と厚み寸法とで規定される割合(本願書類中では説明の便宜上「扁平率」という。)が、扁平率=(横寸法−厚さ寸法)/横寸法=約70%〜85%となるような包装形態とされる。これにより、上記加熱アルファ化工程STEP9において、包装容器10の収容空間14内の単位麺線30が、その外側の麺線31のみならず内部側の麺線31までも、均等に万遍なく、かつ、効率よく加熱されて各麺線31の内部まで昇温し、上記のトウモロコシ粉成分のアルファ化が円滑に実現されると同時に、殺菌も効果的に実現される。なお、上記のようにしてアルファ化したトウモロコシ粉成分は、単位麺線30の冷却後もアルファ化を維持する。
【0088】
<冷却工程>
上記加熱アルファ化工程STEP9で包装容器10内の単位麺線30をアルファ化した包装済み麺製品は、その後、常温まで冷却され、適宜梱包等される。なお、上記加熱アルファ化工程STEP9では、包装容器10中の単位麺線30内部の水分が包装容器10内部で蒸発して水蒸気となり包装容器10内部が結露することがあるが、このときの水蒸気及び結露は、冷却工程で再度単位麺線30の麺線31の内部に吸収されて単位麺線30内部の含水率を元の状態に復帰させるため、包装容器10内部の結露は消滅する。
【0089】
[実施の形態2]
以下、本発明の実施の形態2に係るグルテンフリー麺としての米粉麺の製造方法について
図4を参照して説明する。
図4に示すように、実施の形態2に係る米粉麺の製造方法は、実施の形態1の原料調製工程STEP1、混練工程STEP2、複合工程(粗麺帯形成工程)STEP3、圧延工程(麺帯形成工程)STEP4、切り出し工程(麺線形成工程)STEP5、定量切断工程(単位麺線形成工程)STEP6、包装工程STEP7、脱酸素工程STEP8と同様の工程である、原料調製工程STEP1、混練工程STEP2、複合工程(粗麺帯形成工程)STEP3、圧延工程(麺帯形成工程)STEP4、切り出し工程(麺線形成工程)STEP5、定量切断工程(単位麺線形成工程)STEP6、包装工程STEP7、及び、脱酸素工程STEP8と、実施の形態1の加熱アルファ化工程STEP9に対応する加熱アルファ化工程(アルファ化・殺菌工程)STEP19との一連の工程群からなる。なお、脱酸素工程STEP8は省略することもできる(実施の形態1の場合も、脱酸素工程STEP8を省略することもできる)。
【0090】
<主原料粉>
詳細には、実施の形態2の原料調製工程STEP1、混練工程STEP2、複合工程(粗麺帯形成工程)STEP3、圧延工程(麺帯形成工程)STEP4、切り出し工程(麺線形成工程)STEP5、定量切断工程(単位麺線形成工程)STEP6、包装工程STEP7、脱酸素工程STEP8は、それぞれ、主原料粉としてトウモロコシ粉の代わりに米粉を使用することを除いて、基本的に、実施の形態1と同様の条件で実施される。なお、米粉としては、通常の白米を製粉した白米粉のほか、玄米を(精白することなく)製粉した(米粉と共に糠粉が混合した)玄米粉を使用することができる。更に、主原料粉は、胚芽米を微粉砕して得た米粉(正確には胚芽米粉)や、発芽玄米を微粉砕して得た米粉(正確には発芽玄米粉)のみから構成してもよい。或いは、主原料粉は、白米粉、玄米粉、胚芽米粉、発芽玄米粉の任意の2種類以上を混合した米粉(正確には混合米粉)のみから構成することも可能である。いずれにしても、主原料粉は、上記の米粉のみからなり、米粉以外の成分(小麦粉等)は全く含有していない。
【0091】
<副原料粉>
また、副原料粉は、主原料粉としての米粉に混合されて原料粉の一部を構成し、米粉の各粉体間の結合力を補うつなぎ成分として機能するものであり、アルファ米粉やアルファ化澱粉等の加工澱粉からなる。なお、アルファ化澱粉は、加工澱粉の一種である。副原料粉としては、アルファ米粉やアルファ化澱粉やその他の加工澱粉の1種類を単独で使用したり、それらの任意の複数種類を組み合わせて使用することができる。なお、副原料粉としては、主原料粉の米粉との相性や、米由来澱粉以外の澱粉(アルファ化小麦澱粉等)によるアレルギー等を避ける観点からは、アルファ米粉を使用することが好ましい。このアルファ米粉は、アルファ米を微粉砕したものであり、主原料粉としての米粉に混合することで、前記原料粉(混合粉)の全て(100%)を米粉(未アルファ化の米粉及びアルファ化した米粉)により構成することができる。即ち、原料粉として上記のように米粉100%とする場合以外は、基本的に、主原料粉としての米粉に副原料粉としてアルファ米粉を添加することが好ましい。
【0092】
<配合比・粒径>
いずれにしても、実施の形態2は、主原料粉A、副原料粉B、添加物Cの構成例として、実施の形態1と同様の構成例とすることができ、添加物も実施の形態1の添加物(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)のうちのいずれか1種類又は任意の複数種類を使用することができる。また、実施の形態2においても、主原料粉、副原料粉、添加剤の配合率や加水率は、実施の形態1と同様とすることができる。更に、米粉の粒子径も、実施の形態1のトウモロコシ粉の粒子径と同様とすることができる。或いは、実施の形態1で述べたように、主原料粉として米粉を使用する場合は、主原料粉としてトウモロコシ粉を使用する場合に比較して、その平均粒子径は相対的に小さな粒子径とすることが好ましい(その具体的な粒子径の関係については実施の形態1の説明を参照)。
【0093】
<米粉の種類>
米粉としては、澱粉質における含有率のうち、アミロースの含有率が相対的に高くアミロペクチンの含有率が相対的に低い高アミロース米(通常のジャポニカ米よりアミロース含有率の好ましくは10%以上、更に好ましくは20%以上高い高アミロース米)を上記の粒径範囲となるよう微粉砕して得た米粉を使用することが好ましい。例えば、米の品種によるが、もち米はアミロース含有率が0%である一方、うるち米は、アミロースの含有率が約17〜23%程度であるが、本発明で使用する高アミロース米としては、少なくともうるち米と同程度のアミロース含有率を有する品種のものを使用することが好ましい。更に、本実施の形態の主原料粉としての米粉としては、アミロース含有率が、好ましくは25%以上、より好ましくは27%以上、更に好ましくは30%以上のものを使用し、その米を上記の粒径範囲となるよう微粉砕して得た米粉を使用することが好ましい。
【0094】
<加熱アルファ化工程の前工程としての切り出し工程>
実施の形態2では、加熱アルファ化工程の前工程として、圧延工程STEP4で形成された麺帯は、実施の形態1と同様、切り出し工程(麺線形成工程)STEP5において、切り出し装置に供給され、所定の麺線形状(最終麺製品と同一の所定の麺線幅を有する麺線形状)に切り出される。
【0095】
<加熱アルファ化工程(主たるつなぎ成分形成工程・麺線形状維持工程)>
一方、実施の形態2に係る米粉麺の製造方法では、加熱アルファ化工程(アルファ化・殺菌工程)STEP19は、切り出し工程(麺線形成工程)STEP5の直後、かつ、定量切断工程STEP6の直前(即ち、切り出し工程STEP5と定量切断工程STEP6との間)に実施される。こうすることで、米粉を主原料粉とする場合において、実施の形態1のようにして、包装工程の後の工程として加熱アルファ化工程を実施し、包装容器の内部の米粉を主原料粉とする(例えば、折り曲げ状態の)単位麺線を加熱する場合と比較して、特に、米粉麺を大量生産する場合に、(包装前でベルトコンベヤ等の搬送装置上にある)麺線を直接加熱することで、麺線表面及び内部の澱粉を効率よく加熱して迅速かつ均一にアルファ化することができ、生産性を大きく向上することができる。即ち、このとき、麺線は、単一層となって(即ち、複数層の麺線が厚さ方向に重ね合わされることなく)搬送装置の搬送面上に載置されて搬送方向に移動しており、所定の外部加熱装置(蒸気加熱を利用した湿式加熱装置、熱風加熱を利用した乾式加熱装置、マイクロ波加熱装置等)により、単一層の麺線を非常に効率よく短時間で加熱して、内部のつなぎ成分となる澱粉質のアルファ化を非常に効率よく迅速に実行することができる。
【0096】
詳細には、切り出し工程STEP5で形成された麺線は、加熱アルファ化工程STEP19において、加熱装置により所定の加熱条件で外部加熱されて、麺線の表面部(好ましくは、麺線の表面部から内部中心部までの全域)が加熱されると同時に表面から内部中心部までの全体が殺菌される。詳細には、加熱装置の熱源としては、実施の形態1の場合と同様、スチーム加熱(蒸気加熱)や熱風加熱のような外部熱源のほか、マイクロ波加熱等(外部から)を使用することができ、麺線を均一に加熱するものであれば、任意の熱源を使用することができる。即ち、この場合の加熱としては、前記連続麺線の内部に含有される水分のみを介して行なう外部からの乾式加熱により、或いは、外部からの湿式加熱によって均一に加熱することにより、前記包装容器内の前記連続麺線の各麺線の少なくとも表面部における米粉成分をアルファ化すると同時に、当該連続麺線の各麺線中の細菌類の殺菌を行う加熱アルファ化工程であればよい。
【0097】
加熱条件は、実施の形態1のトウモロコシ麺の場合と同様の条件(具体的には、トウモロコシ粉を米粉に置き換えた以外は基本的に同一の条件)とすることができ、単位麺線30中の各材料(主原料、副原料等)の配合比、含水率、米粉の種類(白米粉か玄米粉か)、殺菌対象とする菌類の種類、希望するアルファ化の程度等に応じて最適条件に設定する。加熱条件のうち、加熱温度は、麺線の芯温換算で、約55℃〜約100℃の温度範囲とする。具体的には、主原料粉が白米粉の場合、加熱温度は、好ましくは、前記芯温換算で約55℃〜約95℃の温度範囲内とし、更に好ましくは、芯温換算で約60℃〜約93℃の温度範囲内とする。また、主原料粉が玄米粉の場合、加熱温度は、好ましくは、前記芯温換算で約60℃〜約100℃の温度範囲内とし、更に好ましくは、芯温換算で約65℃〜約98℃の温度範囲内とする。即ち、主原料粉が玄米粉の場合は、主原料粉が白米粉の場合よりも加熱温度を高温域とする。より詳細には、白米粉の場合は、実施の形態1の一般的なトウモロコシ粉の場合と同様の条件とし、玄米粉の場合は、実施の形態1の加熱によるアルファ化しにくいトウモロコシ粉と同様の条件とする。
【0098】
また、加熱時間は、加熱装置の熱源が外部熱源の場合、実施の形態1の加熱時間より短くなり、例えば、約1分〜約20分の時間範囲内、好ましくは、約5分〜約10分の時間範囲内とする。具体的には、加熱温度が相対的に高いと相対的に短い加熱時間とし、加熱温度が相対的に低いと相対的に長い加熱時間とするが、例えば、主原料粉の種類(白米粉又は玄米粉)に応じた加熱温度及び加熱時間の組合せを採用することができる。
【0099】
上記加熱条件による加熱アルファ化工程STEP19では、麺線は、(実施の形態1のトウモロコシ麺の場合のように折り畳まれておらず、単一層となっているため)麺線内部の各成分の温度が加熱によってより迅速に昇温し、特に、米粉成分が、加熱温度に応じてそのアルファ化温度以上の温度までより迅速に昇温するため、米粉成分がより迅速にアルファ化すると同時に、麺線中に細菌類が存在する場合は当該細菌類が加熱殺菌される。
【0100】
このとき、麺線は、一層状の平坦状に分散して配置されて全体として非常に薄肉の(一層のみからなる)平板状となっていると共に、麺線の表裏面の全体が露出しているため、実施の形態1のように包装形態とされた(折り畳まれた複数層の)単位麺線の場合と比較して、麺線への熱伝導効率が向上し、熱源による加熱によって麺線をより一層円滑に加熱昇温することができ、米粉成分のアルファ化と殺菌とをより一層効果的に行うことができる。
【0101】
一方、麺に最も負担のない(即ち、味覚等の品質を損なうことのない)加熱温度域としては、上記実施の形態1のように、麺線の中心温度(芯温)65℃近辺の温度域(加熱時間45分程度)が好ましい。この場合でも、麺の品質に殆ど影響を与えることなく、(菌類の種類中、温度60℃程度で死滅する細菌類が殆どのため)殆どの細菌類を死滅させて、食品衛生基準(HACCPの食品衛生管理基準等)を満足することができる。
【0102】
なお、実施の形態2で主原料粉として玄米粉を使用する場合、麺線中の米粉成分をアルファ化し、かつ、麺線中の殺菌を行うためには、白米を粉砕した白米粉の場合よりも高温域での加熱温度で加熱を行う必要がある。特に、主原料粉として玄米粉を使用した場合、糠粉成分が米粉成分の結着に影響を及ぼし、単位麺線の麺線の品質を損なう可能性があるため、白米粉の場合よりも高い温度域での加熱温度を採用することで、麺線における米粉成分のアルファ化による良好な結着を確保し、麺線としての品質を確保することで、麺製品としての不良率を大きく低減することができる。
【0103】
<加熱アルファ化工程後工程としての定量切断工程>
上記加熱アルファ化工程STEP19でアルファ化された麺線は、定量切断工程STEP6において、実施の形態1と同様、定量切断装置に供給され、所定の長さ(最終麺製品の各麺線長さと同一の長さ)に切断されて単位麺線とされ、所定の包装形態へと整形される(好ましくは、上下均等に二つ折り下状態にされる)。
【0104】
<冷却工程>
上記加熱アルファ化工程STEP9で麺線をアルファ化した単位麺線30は、その後、自然冷却等によって常温まで冷却される。
【0105】
<包装工程>
実施の形態2でも、
図2に示すように、定量切断工程STEP6で定量切断して所定の包装形態(好ましくは、上下均等な二つ折り状態)とされた単位麺線30は、包装工程STEP7において、当該単位麺線ごとに、個別の包装容器10により個別包装される。なお、包装容器10は、実施の形態1と同様のものを使用することができるが、実施の形態2では(及び、実施の形態1においても)、包装容器にほる包装態様として、レトルト包装容器やガスバリアフィルムによる真空包装以外にも、通常の(密閉性が相対的に低く、真空包装容器に比べて外部との通気性がある程度確保されている)プラスチック製包装容器による包装態様とすることもできる。
【0106】
なお、加熱アルファ化工程STEP19は、切り出し工程STEP5と定量切断工程STEP6との間ではなく、定量切断工程(単位麺線形成工程)STEP6の直後(即ち、定量切断工程STEP6と包装工程STEP7との間)に行うことも可能である。この場合、定量切断工程後に麺線が複数層に折り畳まれる場合は、加熱アルファ化工程STEP19を切り出し工程STEP5と定量切断工程STEP6との間に行う場合より加熱効率が低下するが、実施の形態1の場合と比較すると、麺線表面及び内部の澱粉をより一層効率良く加熱して迅速かつ均一にアルファ化することができ、生産性をより一層大きく向上することができる。
【0107】
[実施の形態3]
以下、本発明の実施の形態3に係るグルテンフリー麺としての米粉麺の製造方法について
図5を参照して説明する。実施の形態3に係る米粉麺の製造方法は、実施の形態1と同様に、原料調製工程STEP1、混練工程STEP2、複合工程(粗麺帯形成工程)STEP3、圧延工程(麺帯形成工程)STEP4、切り出し工程(麺線形成工程)STEP5、定量切断工程(単位麺線形成工程)STEP6、包装工程STEP7、脱酸素工程STEP8の一連の工程からなる。なお、脱酸素工程STEP8は省略することもできる。一方、実施の形態3に係る米粉麺の製造方法は、加熱アルファ化工程(アルファ化・殺菌工程)STEP9,STEP19を実施しない点で実施の形態1及び実施の形態2のグルテンフリー麺(トウモロコシ麺や米粉麺)の製造方法と異なる。
【0108】
即ち、実施の形態3では、上記包装工程STEP7(及び必要な場合に設ける脱酸素工程STEP8)で単位麺線30を包装容器10により包装した後、そのまま(加熱アルファ化工程STEP9を経ることなく)、包装済みの単位麺線からなる包装済み麺製品(いわゆる、生麺状態の米粉麺)が、所定の冷凍装置によって所定温度の冷凍状態とされて、所定の梱包容器等に適宜梱包等されて出荷される。具体的には、包装済みの単位麺線は、所定の冷凍装置により、約−25℃〜約−18℃の温度範囲内、好ましくは、約−25℃〜約−20℃の温度範囲内に冷凍されたものである。なお、上記包装工程STEP7及び脱酸素工程STEP8は、実施の形態1と同様、麺線を加温又は加熱することは全くなく、麺線中の米粉のアルファ化温度域未満で行われ、原料中の米粉をアルファ化することは全くないことから、全ての米粉成分の未アルファ状態が維持される。即ち、実施の形態1及び2の製造方法により製造した米粉麺は、(主原料粉としての米粉が全くアルファ化していない生麺ではなく)米粉の澱粉質がある程度(即ち、つなぎ効果を発言するために必要な程度まで)アルファ化した生タイプの米粉麺であるが、実施の形態3の製造方法により製造した米粉麺は、主原料粉としての米粉が全くアルファ化していない生麺となる。
【0109】
実施の形態3の生麺としての米粉麺の製造方法によれば、麺線は、加熱アルファ化工程STEP9によって加熱装置により所定の加熱条件で外部加熱されることがないため、加熱アルファ化工程STEP9,STEP19後の常温までの冷却を行う必要がなく、冷却工程が不要となってその分の生産性を向上することができる。また、実施の形態3では、包装工程STEP7及び脱酸素工程STEP8で単位麺線30を包装容器10に包装した後、そのまま冷凍することができ、加熱アルファ化工程STEP9,STEP19及びその後の冷却工程における製造時間を省くことができるため、製造時間を大幅に短縮化できる。更に、実施の形態3の米粉麺は、つなぎ成分となる米粉がアルファ化されてはいないが、包装工程の直後に所定の冷凍温度で冷凍されて固化状態とされ、その麺線形状が保持されるため、移送中や保管時等において包装容器内の麺線形状が崩れることはなく、長期にわたる保存性を確保することができる。また、調理時には、米粉麺を包装容器から取り出して解凍して直後に加熱調理することで、その麺線形状を保持したまま調理を行うことができ、つなぎ成分となる米粉成分がアルファ化されていないにもかかわらず、実施の形態1及び2の米粉麺と同様の麺品質を確保することができる。
【0110】
更に、実施の形態3では、加熱アルファ化工程により主原料粉としての米粉成分の澱粉質をアルファ化してつなぎ成分に編成していなくても、米粉の粒子径が約10〜約355μm(好ましくは、約10〜約150μm)の範囲内であるため、当該平均粒子径の米粉の各々の表面活性による相互付着力によって、前記麺線内の米粉成分間を結着する補助的つなぎ効果を発揮するようにし、これにより、冷凍工程STEP29前における前記連続麺線及び前記単位麺線の麺線形状を維持すると共に、前記冷凍状態の麺線を加温又は加熱して非冷凍状態としたときの当該麺線の麺線形状を維持するようにしている。即ち、実施の形態3では、実施の形態1又は2のように(主たるつなぎ成分を形成するつなぎ成分形成工程、又は、これにより麺線形状を長期にわたって所定の麺性形状に維持及び確保することができる麺線形状維持工程としての)加熱アルファ化工程を設ける代わりに、麺線形状維持工程として、生麺状態の麺線を冷凍状態とする冷凍工程を設け、麺線形状を長期にわたって所定の麺性形状に維持及び確保することができるようにしている。これにより、実施の形態3のグルテンフリー麺の製造方法は、実施の形態1又は2のグルテンフリー麺の製造方法と同様の効果(特に、長期保存後も麺線内の澱粉質が老化することがなく、麺線形状を確実に維持でき、これにより、物流を豊かにすることができるという効果)を確実に発揮することができる。
【0111】
[トウモロコシ粉麺及び米粉麺以外のグルテンフリー麺]
本発明に係るグルテンフリー麺の製造方法は、上記のように主原料粉としてトウモロコシ粉を使用する「トウモロコシ粉麺の製造方法」、及び、米粉を使用する「米粉麺の製造方法」に具体化する以外に、主原料粉としてトウモロコシ粉又は米粉以外のグルテンフリー穀物粉のみを使用する(即ち、主原料粉がトウモロコシ粉又は米粉以外のグルテンフリー穀物粉100%からなる)「グルテンフリー麺の製造方法」に具体化することもできる。この場合、例えば、
図1、
図4、
図5に示すトウモロコシ粉麺や米粉麺の製造方法と同様の工程により、上記トウモロコシ粉麺や米粉麺と同様の原料(副原料粉、増粘剤や増粘多糖類等の添加材)を使用すると共に、各原料の種類及び配合割合もトウモロコシ粉麺や米粉麺の場合と同様として、即ち、トウモロコシ粉麺や米粉麺の場合と同様の製造条件で、トウモロコシ粉又は米粉以外のグルテンフリー穀物粉からなるグルテンフリー麺を製造することができる。具体的には、例えば、主原料粉として、ひえ、あわ、きび等、グルテンフリーの穀物を所定粒径範囲に微粉砕して表面の官能基を活性化した微粉末状の主原料粉(グルテンフリー穀粉)を使用することも可能である。この場合のグルテンフリー穀粉としては、上記主原料粉のトウモロコシ粉や米粉と同様の粒径範囲のものを使用することができる。このグルテンフリー麺の製造方法は、上記したトウモロコシ粉麺や米粉麺の製造方法と同様の作用効果を発揮する。即ち、本発明のグルテンフリー麺の製造方法は、主原料粉として米粉麺以外にトウモロコシ粉を好適に使用することができ、更には、これら以外にも、ひえ、あわ、きび等、グルテンフリーの穀物を所定粒径範囲に微粉砕して表面の官能基を活性化した微粉末状の主原料粉を使用することも可能である。即ち、上記各実施の形態において、当該実施の形態で使用される主原料粉に代えて、当該主原料粉と別の主原料粉を使用した場合も、同様の工程及び同様の製造条件により同様の品質のグルテンフリー麺を製造することができる。なお、異なる主原料粉を使用した場合の個別の説明は省略するが、例えば、実施の形態1では、「トウモロコシ」や「トウモロコシ粉」を他のグルテンフリー穀物粉(例えば、「米粉」等)に置き換えるだけであり、基本的に同様の説明となる。特に、本発明のグルテンフリー麺は、主原料粉として、約10〜約355μmの範囲内(好ましくは、約10〜約150μmの範囲内)の平均粒子径を有するグルテンフリー穀粉を使用して補助的つなぎ効果を発揮することを共通の特徴(従来にない新規な特徴)としており、グルテンフリー麺の主原料粉としては、かかる平均粒子径を有するものである限り、任意のものを使用することができる。
【0112】
[麺の包装形態]
本発明に係る米粉麺を含むグルテンフリー麺の製造方法は、上記麺の包装形態以外にも、多種多様な包装形態を適用することができ、例えば、三方シール包装、ピロー包装(センターシール部とエンドシール部とで封止する包装形態)等の包装を適用することができる。これにより、定量切断工程STEP6で所定の長さ(最終麺製品の各麺線長さと同一の長さ)に切断された単位麺線を、所定の包装形態へと整形することなく、そのままの形態(麺線を切断して単位麺線とした直後の直線形態)で、包装工程STEP7において、当該単位麺線後のごとに、個別の包装容器により個別包装することができる。
【0113】
例えば、
図6に示すように、定量切断工程で形成した(多数本の単位麺線長の麺線131からなる)個々の単位麺線(麺線131の集合体)130を、麺線131の形状を切断直後の状態である直線状に維持したまま、ベルトコンベヤ等の搬送装置の搬送面に載置して所定の搬送方向に搬送する。そして、各単位麺線130を、そのままの直線状態で、所定の包装フィルム110により所定の包装形態で包装する。この場合の包装形態としては、例えば、
図7〜
図8に示すように、長方形状の原料フィルム110Aの一方の面の中央部に単位麺線130を直線状のまま載置し、原料フィルム110Aの幅方向両端縁部の一対のセンターシール用端部111Aを互いに溶着して(シールして)センターシール部111を形成すると共に、原料フィルム110Aの長さ方向両端縁部のエンドシール用端部112A及び113Aをそれぞれ溶着して(シールして)エンドシール部112及び113を形成する。これにより、包装容器110の内部に単位麺線130を所定の配置態様で収容した包装済み麺製品を製造することができる。
【0114】
このように、本発明では、単位麺線を包装容器に包装する場合、
図2に示すように単位麺線30を二つ折りにして(二層状等の複数層状として)収容してもよく、
図7〜
図8に示すように、単位麺線130を(折り畳むことなく)単層状として収容してもよい。即ち、単位麺線の包装形態は、適宜変更することができる。
【0115】
[主原料粉の粒径と副原料粉の配合比率との関係]
上記のとおり、実施の形態1で述べた主原料粉の各種の平均粒径の範囲(粒径範囲)は、主原料粉としてのトウモロコシ粉のみならず、主原料粉としての米粉やその他のグルテンフリー穀粉にも適用することができ、また、(典型的には、トウモロコシ粉麺の場合における)副原料粉としてのコーングリッツ等、(典型的には米粉麺の場合における)副原料粉としてのアルファ米粉等、(トウモロコシ粉麺や米粉麺等の場合に適用可能な)副原料粉としてのアルファ澱粉や加工澱粉等、副原料粉の主原料粉に対する配合割合乃至配合比率の範囲(配合率範囲)は、実施の形態1で述べた各種の配合割合は、主原料粉としてトウモロコシ粉を使用したトウモロコシ粉麺の場合のみならず、主原料粉として米粉を使用した米粉麺や、主原料粉としてその他のグルテンフリー穀粉を使用したその他のグルテンフリー麺の場合にも適用することができる。なお、副原料粉としては、上記のとおり、アルファ米粉やアルファグリッツのように(本来はベータ化状態の)穀粉をアルファ化して得た穀粉(以下、「アルファ穀粉」という。)、(所定の製造方法により製造した)アルファ澱粉、加工澱粉等を使用することができる。更に、主原料粉に対する副原料粉の配合比率(主原料粉と副原料粉との混合粉からなる原料粉の全体重量に対する副原料粉の重量%)は、上記のとおり、約0.5重量%〜約20重量%の範囲とすることができるが、これ以外に、製造条件に応じて、約1重量%〜約20重量%の範囲、又は、約5重量%〜約20重量%の範囲とすることもできる。
【0116】
なお、この場合の製造条件とは、主には、主原料粉の粒径の大小に応じた表面積の違いによる粒子間の結着力又はつなぎ成分を介した粒子間の結着容易性であるが、その他、グルテンフリー穀粉の種類に応じた穀粉粒子本来の分子間力や粒径のばらつき乃至粒径範囲の分散等、主原料粉のアミロース含有率の高低によるつなぎ効果への影響等、副原料粉の種類による補充的つなぎ効果の大小等がある。例えば、主原料粉の粒径については、粒径が小さい場合は、比表面積が相対的に大きくなり、粒子表面の官能基数が相対的に増大したり、相対的に比表面積が大きくなることにより分子間力が相対的に強くなったりするため、この場合、副原料粉の配合比率の範囲(配合率範囲)を相対的に小さい値の範囲とすることができる(逆に、粒径が大きい場合は、比表面積が相対的に小さくなり、粒子表面の官能基数が相対的に減少したり、相対的に比表面積が小さくなることにより分子間力が相対的に弱くなったりするため、この場合、副原料粉の配合率範囲を相対的に大きい値の範囲とすることが好ましい)。また、グルテンフリー穀粉の種類については、その種類に応じて穀粉粒子の分子間力が相対的に大きいものとなる場合、副原料粉の配合率範囲を相対的に小さい値の範囲とすることができる(逆に、その種類に応じて穀粉粒子の分子間力が相対的に小さいものとなる場合、副原料粉の配合率範囲を相対的に大きい値の範囲とすることが好ましい)。また、アミロース含有率については、主原料粉のアミロース含有率が相対的に高いと(即ち、アミロペクチン含有率が相対的に低いと)、主原料粉の粒子間の(主にアミロペクチンの粘着力による)結着力が相対的に小さくなることが考えられるため、この場合、副原料粉の配合率範囲を相対的に大きい値の範囲とすることが好ましい(逆に、主原料粉のアミロース含有率が相対的に低いと(即ち、アミロペクチン含有率が相対的に高いと)、主原料粉の粒子間の(主にアミロペクチンの粘着力による)結着力が相対的に大きくなることが考えられるため、この場合、副原料粉の配合率範囲を相対的に小さい値の範囲とすることができる。ただし、上記のとおり、麺線品質の点からは、アミロペクチン含有率が高い主原料粉を使用すると、麺の老化が早まったり、調理した麺が粘ついたりするため、アミロース含有率の高い主原料粉を使用することが好ましく、したがって、この場合、副原料粉の配合率範囲は相対的に高いものとすることが好ましい)。また、副原料粉の種類については、その種類に応じて補充的つなぎ効果が異なることが考えられる(なお、「補充的つなぎ効果」とは、上記加熱アルファ化工程により形成する主たるつなぎ成分によるつなぎ効果を「主たるつなぎ効果」とした場合の相対的表現であり、主たるつなぎ効果を補充するという意味で使用している)。したがって、主原料粉の種類に応じて補充的つなぎ効果が相対的に小さいものとなる場合、副原料粉の配合率範囲を相対的に大きい値の範囲とすることが好ましい(逆に、主原料粉の種類に応じて補充的つなぎ効果が相対的に大きいものとなる場合、副原料粉の配合率範囲を相対的に小さい値の範囲とすることができる)。
【0117】
ここで、上記製造条件に応じた副原料粉の配合率範囲に関して、まず、本発明のグルテンフリー麺の製造方法においては、上記主原料粉の粒径範囲に対応して、副原料粉の配合割合を実質的に比例的となるよう設定することが好ましい。具体的には、主原料粉の粒径を上記所定粒径範囲(例えば、約10μm〜約355μm)内の最大値(即ち、この場合、約355μm)に設定する場合は、副原料粉の配合比率を上記所定配合率範囲(例えば、主原料粉と副原料粉との混合粉からなる原料粉の全体重量に対して、約0.5重量%〜約20重量%の範囲、又は、約1重量%〜約20重量%の範囲、又は、約5重量%〜約20重量%の範囲)内の最大値乃至最多値(即ち、この場合、約20重量%)に設定し、逆に、主原料粉の粒径を上記所定粒径範囲内の最小値(即ち、この場合、約10μm)に設定する場合は、副原料粉の配合比率を上記配合率範囲内の最少値(即ち、この場合、約0.5重量%又は約1重量%又は5重量%)に設定することが好ましい。このように、主原料粉の粒径範囲に対応して、副原料粉の配合割合を実質的に正比例関係となるよう設定することで、従来では不可能と考えられていた大きな粒径のグルテンフリー穀粉(例えば、平均粒径270μmで粒径のばらつきが大きいために麺線にすることができないと従来考えられ、平板状のパスタ製品にしか適用されていなかった米国産のトウモロコシ粉や、それよりも大きな粒径、例えば、平均粒径訳355μmの米粉やトウモロコシ粉等のグルテンフリー穀粉)についても、副原料粉の配合比率を最大値(約20重量%)とすることで、麺線に形成したときに麺線形状を十分に維持でき、かつ、(実施の形態1等の主たるつなぎ成分形成工程又は麺線形状維持工程としての)加熱アルファ化工程により主たるつなぎ成分を形成することにより、或いは、(実施の形態3の麺線形状維持工程としての)冷凍工程により、物流や保管等を経て長期保存した後においても、麺線が所定の麺線形状を維持することができ、麺製品として十分に通用する品質を維持していることが、本発明者の効果確認試験により実証されている。
【0118】
こうすると、製造過程においては、主原料粉の粒径に応じた主原料粉粒子間の結着力(それ自体では、基本的に、長期にわたる麺線形状の維持を図ることは難しい)に加えて、上記所定配合率範囲の副原料粉の混合により、その副原料粉が主原料粉粒子間の隙間乃至間隙を埋めて、副原料粉自体の粘着力や結着力によって主原料粉粒子間の相互結着力を増大し、少なくとも(例えば、加熱アルファ化工程による主たるつなぎ成分の形成がなくても)製造過程及び製造直後における所定麺線形状の維持を可能にすることができる。また、このようにして(加熱アルファ化工程を経ることなく)生麺を製造した場合でも、かかる生麺状態のグルテンフリー麺は、短期間であれば、上記主原料粉の所定粒径の選択と副原料粉の所定配合率範囲の選択との相乗効果による補充的つなぎ効果によって、所定の麺線形状を維持し、そのまま生麺製品として流通することができる。ただし、上記のとおり、長期にわたって所定の麺線形状を維持し、物流の多様化を図るという点においては、実施の形態1〜3のように、麺線形状維持工程としての加熱アルファ化工程や冷凍工程を設けることが好ましい。
【0119】
[補充的つなぎ成分]
本発明のグルテンフリー麺の製造方法においては、上記のとおり、主原料粉に補充的つなぎ成分として副原料粉を所定配合比率で配合して原料粉を調製し、上記補充的つなぎ効果を得ることが好ましいが、補充的つなぎ効果を得るための補充的つなぎ成分としては、以下に示すように、所定の副原料粉を単独で使用するほか、所定の増粘剤や所定の増粘多糖類(又は増粘剤と増粘多糖類との所定の組合せ)を単独で使用したり、所定の副原料粉と所定の増粘剤や所定の増粘多糖類(又は増粘剤と増粘多糖類との所定の組合せ)とを組み合わせて使用することもできる。なお、補充的つなぎ成分として増粘剤及び/又は増粘多糖類を使用する場合、その配合比率は、副原料粉の場合と同様、上記主原料粉の粒径範囲に対応して、増粘剤及び/又は増粘多糖類の配合割合を実質的に比例的(正比例関係)となるよう設定することが好ましい。具体的には、主原料粉の粒径を上記所定粒径範囲(例えば、約10μm〜約355μm)内の最大値(即ち、この場合、約355μm)に設定する場合は、増粘剤及び/又は増粘多糖類の配合比率を所定配合率範囲内の最大値乃至最多値に設定し、逆に、主原料粉の粒径を上記所定粒径範囲内の最小値に設定する場合は、増粘剤及び/又は増粘多糖類の配合比率を所定配合率範囲内の最少値に設定することが好ましい。
配合例1:主原料粉(米粉、トウモロコシ粉等のグルテンフリー穀粉)+副原料粉(アルファ化穀粉、アルファ澱粉、加工澱粉等)
配合例2:主原料粉(米粉、トウモロコシ粉等のグルテンフリー穀粉)+増粘剤及び/又は増粘多糖類
配合例3:主原料粉(米粉、トウモロコシ粉等のグルテンフリー穀粉)+副原料粉(アルファ化穀粉、アルファ澱粉、加工澱粉等)+増粘剤及び/又は増粘多糖類
ただし、上記配合例1〜3の場合、配合例3の場合が、最も強い補充的つなぎ効果を得ることができ、最も強固な麺線形状を得ることができるため、長期保存(日持ち)の点からは、配合例3とすることが最も好ましい。
【0120】
[副原料粉の配合率及び増粘剤/増粘多糖類の配合率]
上記のとおり、主原料粉に対する補助的つなぎ成分としての副原料粉の配合率(主原料粉及び副原料粉の混合粉からなる原料粉中における重量%)は、約0.5重量%〜約20重量%とすることができる一方、その下限値は、約0.5%のほか、約1重量%、約5重量%とすることもできるが、主原料粉としてのグルテンフリー穀粉の種類に応じて、下限値は、約2重量%、約3重量%、約4重量%とすることもできる(グルテンフリー穀粉自体の結合力が小さい場合は下限値を大きな値とし、結合力が大きい場合は下限値を小さな値とすることができる)。同様に、主原料粉に対する補助的つなぎ成分としての増粘剤及び/又は増粘多糖類の配合率(主原料粉及び増粘剤及び/又は増粘多糖類の混合物からなる原料中における重量%)は、副原料分と同様の配合率とすることができ、例えば、約0.5重量%〜約20重量%の範囲とすることができる一方、その下限値は、約0.5%のほか、約1重量%、約2重量%、約3重量%、約4重量%、約5重量%とすることができ、主原料粉としてのグルテンフリー穀粉の種類に応じて、下限値を設定することができる(グルテンフリー穀粉自体の結合力が小さい場合はこれに対応して下限値を相対的に大きな値とし、結合力が大きい場合はこれに対応して下限値を相対的に小さな値とすることができる)。更に、補助的つなぎ成分として副原料粉に加えて増粘剤若しくは増粘多糖類のいずれか(又は増粘剤及び増粘多糖類の混合物)を使用する場合、それらの合計量が、上記範囲の配合率(例えば、約0.5重量%〜約20重量%)となるようにすれば、単独で副原料粉又は増粘剤若しくは増粘多糖類のいずれか(又は増粘剤及び増粘多糖類の混合物)を使用する場合と同様の補助的つなぎ効果を発揮することができる。或いは、この場合、補助的つなぎ成分の合計量の上限値は、上記約20%を超える値(例えば、約21重量%、約22重量%、約23重量%、約24重量%、約25重量%、約26重量%、約27重量%、約28重量%、約29重量%、約30重量等の値)とすることもできる。
【0121】
[主原料粉の粒径]
また、主原料粉の粒径としては、上記のとおり、下限値を約10μmとし上限値を約355μmとする平均粒子径範囲や、下限値を約10μmとし上限値を約150μmとする平均粒子径等の各種の粒径範囲内の所定値のものを採用することができるが、その上限値(即ち、最も粗い粒径)としては、約355μmや約150μm以外に、約270um、約250μm(約60メッシュ)、約212μm(約65メッシュ)、約180μm(約80メッシュ)等の値を採用することができる(補助的つなぎ成分としての副原料粉や増粘剤及び/又は増粘多糖類の配合率が小さい場合はこれに対応して上限値を相対的に小さな値とし、配合率が大きい場合はこれに対応して下限値を相対的に大きな値とすることができる)。