(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6397179
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】シリンダー錠及びシリンダー錠用の鍵
(51)【国際特許分類】
E05B 27/06 20060101AFI20180913BHJP
E05B 19/08 20060101ALI20180913BHJP
E05B 15/00 20060101ALI20180913BHJP
E05B 47/00 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
E05B27/06
E05B19/08
E05B15/00 A
E05B47/00 A
【請求項の数】2
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2013-235174(P2013-235174)
(22)【出願日】2013年11月13日
(65)【公開番号】特開2014-208958(P2014-208958A)
(43)【公開日】2014年11月6日
【審査請求日】2016年11月8日
(31)【優先権主張番号】特願2013-61287(P2013-61287)
(32)【優先日】2013年3月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390037028
【氏名又は名称】美和ロック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080838
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 光康
(72)【発明者】
【氏名】田中 健一
(72)【発明者】
【氏名】河合 伸幸
【審査官】
桐山 愛世
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭53−045187(JP,U)
【文献】
特開2002−227466(JP,A)
【文献】
特開2012−172456(JP,A)
【文献】
米国特許第03780549(US,A)
【文献】
特開2012−202038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00−85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠本体と鍵本体との結合から成り、鍵本体のブレードを錠本体の内筒の鍵穴に差し込んだ時、前記ブレードに形成されたキーコードと前記内筒の回転軸と直交する軸直角断面上に位置するダンブラーが一致するシリンダー錠に於いて、
前記シリンダー錠は、前記ブレードの外周形状が円形状又は3回転対称以上の多角形状のいずれかに形成され、一方、前記鍵穴の内周面も前記ブレードを受け入れる円形状又は多角形状のいずれかに形成され、
また前記鍵穴の先端挿入口の縁部分には、ブレードを内筒の回転軸と一致するように鍵穴の中心へと誘導する外拡状案内面が形成され、
さらに、前記鍵本体のブレードと摘み部分は互いにキー軸方向に移動不可でかつ相対回転可能に設けられ、
前記鍵本体を前記錠本体の鍵穴に差込んだ時、内筒と鍵本体或いは摘み部分が共働する結合手段を該内筒の前部と鍵本体の摘み部分の先端部に設けたことを特徴とするシリンダー錠。
【請求項2】
錠本体と鍵本体との結合から成り、鍵本体のブレードを錠本体の内筒の鍵穴に差し込んだ時、前記ブレードに形成されたキーコードと前記内筒の回転軸と直交する軸直角断面上に位置するダンブラーが一致するシリンダー錠用の鍵に於いて、
前記シリンダー錠は、前記ブレードの外周形状が円形状又は3回転対称以上の多角形状のいずれかに形成され、一方、前記鍵穴の内周面も前記ブレードを受け入れる円形状又は多角形状のいずれかに形成され、
また前記鍵穴の先端挿入口の縁部分には、ブレードを内筒の回転軸と一致するように鍵穴の中心へと誘導する外拡状案内面が形成され、
さらに、前記鍵本体のブレードと摘み部分は互いにキー軸方向に移動不可でかつ相対回転可能に設けられ、前記鍵本体を前記錠本体の鍵穴に差込んだ時、内筒と鍵本体或いは摘み部分が共働する結合手段を該内筒の前部と鍵本体の摘み部分の先端部に設けたことを特徴とするシリンダー錠用の鍵。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシリンダー錠及びシリンダー錠用の鍵に関し、特に錠本体と鍵本体との結合から成るシリンダー錠及びシリンダー錠用の鍵に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、鍵穴に対する挿入時における合鍵の操作性を考慮し、鍵(キー)側の工夫を施したものである。また特許文献2も、特許文献1と同様である。したがって、鍵(キー)が、摘み部分と、該摘み部分に回動可能に設けられたブレードとから成る事項は、既に公知である。
【0003】
さらに、特許文献3は、バリヤーフリーの観点から、キーを指で押し込むことにより、錠前を容易に解錠することを目的とした錠前用キー挿入補助具が開示され、該キー挿入補助具のパイプ状連結体の先端部には、錠本体の内筒の前面に設けた第1磁性体の極性に対応して吸着する第2磁性体を設ける事項が記載されている。
【0004】
ところで、普通一般に建具用の合鍵は、摘み部分と、該摘み部分の先端部に連設する長板状ブレードから成り、前記長板状ブレードの側面又は/及び平坦面には刻みや窪み(キーコード)が形成されている。周知のように、長板状ブレードを有する合鍵には、錠本体に組み込まれた可動障害子(タンブラー)と整合する位置に前記キーコードを有し、合鍵を反転しても使用することができるタイプ(リバーシブル機能)が存在している。このような背景技術の基で、合鍵挿入時の利便性を図るために、現在、合鍵のリバーシブル機能をより一層高める試みが検討されている。
【0005】
さて、合鍵挿入時の利便性を考慮すると、ブレードの外周面の形状が「3回転対称以上」のものが望ましい。例えば正三角形は3回転対称、正四角形は4回転対称であるが、例えば五角形から六角形、六角形から八角形という具合に角数が増えて行くと、最終的には、ブレードの外形或いは断面形状が真円の状態となる。真円の場合には、ブレードの表も裏もないことから、360度の「どの回転角度」であっても、鍵穴が真円或いは余裕(間隙)のある多角形穴であれば、ブレードを鍵穴に自由に差込むことができる。
【0006】
しかしながら、合鍵挿入時の利便性を可能な限り追及すると、合鍵のブレードが鍵穴内で空回りするという問題点がある。また合鍵挿入時の利便性を考慮する場合に於いて、錠側に工夫を施して挿入時の操作性の向上を図ることが期待されている。特に、バリヤーフリーの観点から、内筒の鍵穴に対する合鍵のブレードの挿入角度が多少大雑把であっても、容易にブレードの先端部を鍵穴に嵌め合せることができる錠前が要望されている。なお、この明細書では、錠前は「錠本体」を意味し、合鍵は「鍵本体」を意味する。そして、「シリンダー錠」は、両者を含む概念である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−162230号公報
【特許文献2】特開2012−172456号公報
【特許文献3】特開2012−202038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の主たる目的は、鍵本体の挿入時の利便性を可能な限り追及することである。特に本発明は、鍵本体とブレードが相対的に回転可能であり、鍵本体のブレードが内筒の鍵穴内で空回りする実施形態の場合であっても、内筒を施・解錠方向へ回転させることができることである。本発明の第2の目的は、鍵本体の摘み部分とブレードとが相対回転可能に設けられている実施形態の場合に内筒を施・解錠方向へ確実に回転させることができることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のシリンダー錠は、錠本体と鍵本体との結合から成り、鍵本体のブレードを錠本体の内筒の鍵穴に差し込んだ時、前記ブレードに形成されたキーコードと前記内筒の回転軸と直交する軸直角断面上に位置するダンブラーが一致するシリンダー錠に於いて、前記シリンダー錠は、前記ブレードの外周形状が円形状又は3回転対称以上の多角形状のいずれかに形成され、一方、前記鍵穴の内周面も前記ブレードを受け入れる円形状又は多角形状のいずれかに形成され、また前記鍵穴の先端挿入口の縁部分には、ブレードを内筒の回転軸と一致するように鍵穴の中心へと誘導する外拡状案内面が形成され、
さらに、前記鍵本体のブレードと摘み部分は
互いにキー軸方向に移動不可でかつ相対回転可能に設けられ、前記鍵本体を前記錠本体の鍵穴に差込んだ時、内筒と鍵本体或いは摘み部分が共働する結合手段を該内筒の前部と鍵本体の摘み部分の先端部に設けたことを特徴とする。
【0010】
また本発明のシリンダー錠用の鍵は、錠本体と鍵本体との結合から成り、鍵本体のブレードを錠本体の内筒の鍵穴に差し込んだ時、前記ブレードに形成されたキーコードと前記内筒の回転軸と直交する軸直角断面上に位置するダンブラーが一致するシリンダー錠用の鍵に於いて、前記シリンダー錠は、前記ブレードの外周形状が円形状又は3回転対称以上の多角形状のいずれかに形成され、一方、前記鍵穴の内周面も前記ブレードを受け入れる円形状又は多角形状のいずれかに形成され、また前記鍵穴の先端挿入口の縁部分には、ブレードを内筒の回転軸と一致するように鍵穴の中心へと誘導する外拡状案内面が形成され、
さらに、前記鍵本体のブレードと摘み部分は
互いにキー軸方向に移動不可でかつ相対回転可能に設けられ、前記鍵本体を前記錠本体の鍵穴に差込んだ時、内筒と鍵本体或いは摘み部分が共働する結合手段を該内筒の前部と鍵本体の摘み部分の先端部に設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
(a)独立請求項記載の発明(請求項1、請求項2)に記載の発明は、合鍵挿入時の利便性(例えばブレードの断面形状は、少なくとも3回転対称以上)を可能な限り追及しながら、合鍵のブレードが内筒の鍵穴内で空回りする場合であっても、内筒を施・解錠方向へ回転させることができる。また内筒と鍵本体が共働する結合手段を有するので、合鍵の挿入時の位置決め及び回転時の操作性が良くなる。
【0012】
(b)また鍵穴の先端挿入口の縁部分の少なくとも左右・上下の内径(幅)は、ブレードの先端部の左右・上下の外径(幅)よりも大きく、また、前記先端挿入口の縁部分よりも奥に相当する先端部にブレードをキーコードとダンブラーとが一致する位置へと受け入れる鍵穴本体が設けられ、この鍵穴本体の受入口の縁部分と先端挿入口の縁部分の間の鍵穴内周壁に、ブレードの先端部を受入口へと誘導する案内面が形成されているので、鍵穴に対する合鍵のブレードの挿入角度が多少大雑把であっても、或いはブレードの挿入角度に拘らず、ブレードの先端部を容易に鍵穴の先端挿入口の縁部分に嵌め合せることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1乃至
図14は本発明の第1実施形態を示す各説明図。
図15至
図23は本発明の第2実施形態を示す各説明図。
図24乃至
図26は本発明の要部の他の実施形態(第3実施形態、第4実施形態、第5実施形態)を示す各説明図。
図27乃至
図41は本発明の第6実施形態を示す各説明図。
図42乃至
図45は本発明の第7実施形態を示す各説明図。
図46乃至
図51は本発明の第8実施形態を示す各説明図。
【0014】
【
図1】錠前(錠本体)Xと合鍵(鍵本体)Yを示す斜視図。
【
図3】錠前Xに合鍵Yを差し込んだ時の概略断面説明図。
【
図4】(a)は内筒と合鍵との結合状態の概略断面説明図。(b)は(a)の状態のまま時計方向へ90度回した概略断面説明図。
【
図9】(a)は鍵穴の先端挿入口の幅とブレードの外径の寸法差を示す正面視からの概略説明図。(b)は鍵穴の先端挿入口の幅と鍵穴本体の受入口の大きさを示す概略説明図。
【
図10】ブレードを鍵穴に挿入ないし挿入した場合に説明図(断面はブレード)。
【
図12】内筒側の係合ピンと4回転対称のブレードの窪みとの整合性を示す説明図。
【
図13】錠前Xの軸方向の概略断面説明図(便宜上、ダンブラーを全て実線で示す)。
【
図14】(a)と(b)は内筒の回転軸に対して直交する軸直角方向の概略断面説明図であるが、それぞれ断面位置が相違する。
【
図15】第2実施形態の錠本体X1と鍵本体Y1を示す斜視図。
【
図17】錠本体X1に鍵本体Y1を差し込んだ時の概略断面説明図。
【
図18】(a)は内筒と合鍵との結合状態の概略断面説明図。(b)は(a)の状態のまま時計方向へ90度回した概略断面説明図。
【
図20】錠前X1の先端部(特徴部分)を示す説明図。
【
図22】(a)は鍵穴の先端挿入口の幅とブレードの外径の寸法差を示す正面視からの概略説明図。(b)は鍵穴の先端挿入口の幅と鍵穴本体の受入口の大きさを示す概略説明図。
【
図23】(a)と(b)は内筒の回転軸に対して直交する軸直角方向の概略断面説明図であるが、それぞれ断面位置が相違する。
【
図24】要部(結合手段)の第3実施形態(第1係合部分と第2係合部分)の斜視からの説明図。
【
図25】要部(結合手段)の第4実施形態(第1磁性体と第2磁性体)の斜視からの説明図。
【
図26】要部(結合手段)の第5実施形態(滑り止め防止部材)の斜視からの説明図。
【
図27】第6実施形態に於いて、ブレード2Bの先端部を錠本体X2の鍵穴13に差込んだ態様における主要部の説明図。
【
図28】ブレード2Bの正面図を基準にした説明図。
【
図31】要部(前軸受板、ブレード2B等)を示す概略説明図。
【
図32】要部(後軸受板、ブレード2B等)を示す概略説明図。
【
図33】要部の斜視図(トリガー部材、内係合体、ブレード2B等)。
【
図34】要部の斜視図(外係合体を含むトリガー部材、ブレード2B等)。
【
図35】要部の斜視図(外係合体を省略したトリガー部材、ブレード2B等)。
【
図36】トリガー部材の作動の説明図(内外の歯車体の位相が一致していた場合)。
【
図38】トリガー部材の作動の説明図(内外の歯車体の位相が一致しない場合)。
【
図40】摘み部分1Bを左右いずれかの方向に回転させることにより、外係合体を含むトリガー部材が回転し、内外の歯車体の位相が一致する旨の説明図。
【
図41】外係合体の内係合歯と内係合体の外係合歯が互いに略噛合し、該噛合態様で摘み部分1Bとトリガー部材10とブレード2Bがそれぞれ共働回転するように一体的に結合した旨の説明図。
【
図42】第7実施形態に於いて、トリガー部材10の外係合体40の内係合面とブレード2Bの内係合体29の外係合面が不一致の場合の説明図。
【
図43】第7実施形態に於いて、内係合体29が回転し、その外係合面29aが外係合体40の内係合面40aに対して一致した場合の説明図。
【
図44】図示しない左右一対の復帰バネのバネ力により、内係合体29が外係合体40に入り込んだ説明図。
【
図47】鍵本体Y2を錠本体X3に差し込む前の概略断面説明図。
【
図48】鍵本体Y2を錠本体X3に差し込んだ時の概略断面説明図。
【
図49】
図49の概略断面説明図(便宜上90度回転して示す)。
【
図50】要部(第1キーコード及びクリック手段にそれぞれ係合する鍵本体Y2)の概略断面説明図。
【
図51】錠本体X3の鍵穴の挿入口に形成した結合手段(受入溝)の説明図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1乃至
図14は、本発明の第1実施形態の各説明図である。
図1はシリンダー錠の錠前X(以下、「錠本体X」という。)と合鍵(以下、ここでは「鍵本体Y」とう。)を示す斜視図である。まず、本発明のシリンダー錠及び該シリンダー錠用の鍵は、錠本体と鍵本体との結合から成り、鍵本体のブレードを錠本体の内筒の鍵穴に差し込んだ時、前記ブレードに形成されたキーコードと前記内筒の回転軸と直交する軸直角断面上に位置するダンブラーが一致するものであり、前記シリンダー錠は、前記ブレードの外周形状が円形状又は3回転対称以上の多角形状のいずれかに形成され、一方、前記鍵穴の内周面も前記ブレードを受け入れる円形状又は多角形状のいずれかに形成され、また前記鍵穴の先端挿入口の縁部分には、ブレードを内筒の回転軸と一致するように鍵穴の中心へと誘導する外拡状案内面が形成されていると共に、前記鍵本体のブレードと摘み部分は相対回転可能に設けられ、前記鍵本体を前記錠本体の鍵穴に差込んだ時、内筒と鍵本体或いは摘み部分が共働する結合手段を該内筒の前部と鍵本体の摘み部分の先端部に設けたことを特徴とする。
【0016】
次に、本発明のシリンダー錠及び該シリンダー錠の用鍵は、錠本体と鍵本体との結合から成り、鍵本体のブレードを錠本体の内筒の鍵穴に差し込んだ時、前記ブレードに形成されたキーコードと前記内筒の回転軸と直交する軸直角断面上に位置するダンブラーが一致するものであり、前記シリンダー錠は、前記ブレードの外周形状が円形状又は3回転対称以上の多角形状のいずれかに形成され、一方、前記鍵穴の内周面も前記ブレードを受け入れる円形状又は多角形状のいずれかに形成され、また前記鍵穴の先端挿入口の縁部分には、ブレードを内筒の回転軸と一致するように鍵穴の中心へと誘導する外拡状案内面が形成されていると共に、前記鍵本体のブレードと摘み部分は相対回転可能に設けられ、前記鍵本体を前記錠本体の鍵穴に差込んだ時、内筒と鍵本体が共働する第1結合手段を該内筒の前部と鍵本体の摘み部分の先端部に設けると共に、前記鍵本体のブレードと摘み部分が共働する第2結合手段を該ブレードの後端部と該摘み部分に設けたことを特徴とする。
【0017】
ここで、まず、鍵本体Yの構成を簡単に説明する。鍵本体Yは、摘み部分1と、該摘み部分1に回転可能に設けられた長柱状のブレード(ここでは「キー軸後端部」も含む)2とから成る。実施形態では、
図5及び
図6で示すように、鍵本体Yは、長筒状の摘み部分1と、この長筒状摘み部分1に鍔部分からのキー軸後端部2bが挿嵌する小刀状のブレード2と、このブレード2のキー軸後端部2bを摘み部分1の後端部の凹所に連結する鋲形態の支承具4とから成る。付言すると、
実施形態では、図5及び図6で示すように摘み部分1とブレード2は
互いにキー軸方向に移動不可でかつ相回転可能に結合しているものの、内筒12と鍵本体或いは摘み部分1が共働する第1結合手段5を該内筒12の前部と鍵本体の摘み部分の先端部に設けたことから、ブレード2を前記内筒の鍵穴13に差し込んだ時、摘み部分1の回転操作力が
直接前記内筒12に伝わる。
【0018】
前記ブレードの鍔部分から先の角柱状先端部の外周面(ブレード−本体部分)には、例えば4回転対称となる位置に窪み3が形成されている。前記窪み3はキーコードの一例であり、説明の便宜上簡略的に説明している。
【0019】
キーコード3は、3回転対称以上であれば各側面に形成された大小の刻みや窪みであっても良いことから、実施形態のキーコード3は、開口が大きくて凹所が深い窪み3aと、開口が小さくて凹所が浅い窪み3bとから成る(
図2、
図5、
図6参照)。
【0020】
また実施形態の合鍵Yのブレード2は、その垂直断面の形状が八角形であり(
図4参照)、垂直断面の横幅K1と縦幅K2が略同一である(
図9参照)。このように本発明の合鍵Yのブレード2の外周形状は円形状又は3回転対称以上の多角形状のいずれかに形成されている。
【0021】
これに対して、鍵穴の内周面も前記ブレードを受け入れる円形状又は多角形状のいずれかに形成されている。そして、例えば鍵穴13の内周面は、前記ブレード2の外周形状に対応するように多角形状に形成されていると共に、多角形状のブレード2の外周面と鍵穴13の内周面との間には適宜に間隙が設定されている。
【0022】
ところで、前述したように、実施形態の合鍵Yの摘み部分1とブレード2は、互いに回転可能に結合している。したがって、ブレード2を鍵穴13に差込んだとしても、ブレード2がそのまま停止状態で摘み部分1だけが空回り状態となる。そこで、摘み部分1からの操作力を内筒に伝達する伝達手段が必要となることから、色々な実施形態の結合手段(第1係合手段と第2結合手段)を設けている。
【0023】
例えば実施形態では、鍵本体Yを錠本体Xの鍵穴13に差込んだ時、内筒12と鍵本体Yが共働する第1結合手段5を該内筒12の前部と該鍵本体Yの摘み部分1の先端部に設けている。
【0024】
しかして、第1実施形態の第1結合手段5は、
図2、
図3、
図4等で示すように、内筒12の前部6に設けられた第1係合部分7と、摘み部分1の先端部8に設けられた第2係合部分9とから成り、前記第1係合部分7は、周方向に所定間隔を有して形成された複数(例えば4個)の係合凹所であり、一方、前記第2係合部分9は、先端部8の周方向に所定間隔を有して形成された複数(例えば4個)の係合突起である。
【0025】
次に、
図2、
図3及び
図4を参照にして、本実施形態の錠本体Xを説明する。実施形態の錠本体Xも、鍵本体Yのブレード2を内筒12の鍵穴13に完全に差し込んだ時、ブレード2に形成されたキーコード3としての窪みや刻みと内筒12の回転軸(例えばテールピース)Oと直交する軸直角断面上に位置するダンブラー20とが一致するシリンダー錠である点で、従来の錠前と基本的な構造は変わらない。
【0026】
しかしながら、本発明の第1実施形態は、鍵穴13に対するブレードの挿入角度が多少大雑把であっても、ブレード2の先端部2aが鍵穴13の先端部の内周壁に形成された外拡状案内面13aに誘導された後、鍵本体Yを鍵穴13の奥まで完全に差し込むことができる。したがって、前記外拡状案内面13aは、鍵穴13の先端挿入口の縁部分aから鍵穴本体13Bの受入口の縁部分bに至るにしたがって、次第に左右・上下の幅が狭くなっている。
【0027】
しかして、
図10で示すように、鍵穴13は、先端部の内周壁に外拡状案内面13aを有する誘導穴13Aと、この誘導穴13Aの後端に直ぐに或いは多少離間して連通する鍵穴本体13Bとから成り、鍵穴13の先端挿入口の縁部分aの少なくとも左右・上下の内径(幅)W1、W2は、鍵本体Yのブレード2の先端部2aの左右・上下の外径(幅)K1、K2よりも大きい。また、前記先端挿入口の縁部分aよりも奥に相当する先端部又は中央部のいずれかに前記ブレード2をキーコード3とダンブラー20とが一致する位置へと受け入れる前記鍵穴本体13Bが設けられている。
【0028】
ここで、
図8と
図9を参照にして説明する。まず、
図8は、鍵穴13の先端部(挿入口の縁部分)aと合鍵Yのブレード2の外径の寸法差を示す正面視からの概略説明図である。内筒12には、その回転軸に沿って、誘導穴13Aと該誘導穴13Aの連通する鍵穴本体13Bとから成る鍵穴13が形成され、本実施形態では、例えば
図9で示すようにブレード2が多少左右方向に回転角度が傾いても(断面で示した部分の上方の長壁面が多少傾斜することを意味する。)、ブレード2の先細り状或いは弾丸状先端部2aの外周面は、鍵穴13の先端挿入口の縁部分aとの間に十分な寸法差(間隙)が設定されていることから、自由にブレード2の先端部2aを誘導穴13Aの先端挿入口の縁部分aに嵌め合せることができる。
【0029】
また、実施形態では、前記鍵穴13の外拡状誘導穴13Aは、鍵穴13の前記先端挿入口の縁部分aから先端部の受入口の縁部分bまで、その内周面13aの内径が鍵本体Yの断面形状に対応して徐々に小さくなっている。
【0030】
実施形態の鍵穴13の左右上下の側面形状は、鍵本体Yの断面形状に対応して非正多角形状に形成され、先端部寄りの部位に向かって次第に均等割合で狭くなっている。
そして、先端部寄りの部位の受入口の縁部分bに至ると、今度は縁部分bから奥部cに至るまで、前記左右及び上下の側面でもって、少なくともブレード2の先端部(断面で示した部分)側を支持することができる同一幅になっている。また実施形態では、鍵本体Yを鍵穴13の奥まで完全に差し込むと、ブレード2は、少なくとも鍵穴13の先端部寄りの部位bから後端部(奥部)cまでの左右及び上下の側面によって揺れないように支持される。
【0031】
次に
図9及び
図10は、鍵穴13の、先端(挿入口)の縁部分aと先端部寄りの部位或いは実施形態によっては中央部寄りの部位の受入口の縁部分bと後端部(奥部)cの左右上下の各内径(幅)W1、W2と鍵本体Yのブレード2の左右上下の幅(大きさ)K1、K2の寸法差を示したものである。実施形態では、鍵穴13の挿入口aの形状は略真円円形(W1とW2は同一)であるが、鍵本体Yのブレード2の外周形状は、垂直断面の横幅K1と縦幅K2が同一の非正八角形である(
図9参照)。
【0032】
図10から明らかなように、錠本体Xの内筒12の鍵穴13の先端挿入口の縁部分aの左右・上下の内径(幅)W1、W2は、鍵本体Yのブレード2の面取りされた先端部2aが余裕をもって遊嵌合する大きさであり、一方、前記鍵穴13の少なくとも鍵穴本体13Bの受入口の縁部分bの内径(幅)は、前記先端挿入口の縁部分aの内径(幅)W1、W2よりも小さいので、鍵穴13に対する挿入角度が多少大雑把であっても、つまり、合鍵Yの摘み部分1をもってブレード2の差し込み角度がいい加減であっても、ブレード2の先端部2aを先端(挿入口)の縁部分a内に余裕をもって嵌め合せることができる。
【0033】
そこで、ブレード2の先端部2aを鍵穴13に差込む場合には、摘み部分を持ってブレード2の先端部2aを鍵穴13の先端挿入口に合わせるようにする。そして、ブレード2の先端部2aを鍵穴13の先端挿入口に嵌め合せたならば、鍵穴13の先端部の案内面13aは、鍵穴本体13Bの受入口の縁部分bに向かって徐々に絞りこまれているので、今仮に摘み部分1をもって押し込むと、ブレード2の先端部2aは案内面13aに摺接状態で制御(補正)されるので、傾倒状態にあるブレード2は水平状態となり、スムースに鍵穴本体13Bの受入口の縁部分bに至る。そこで、さらに摘み部分1を押し込むと、ブレード2に形成されたキーコード3と内筒12の回転軸と直交する軸直角断面上に位置するダンブラー20とが一致する。
【0034】
この時、ブレード2乃至摘み部分1の中心が内筒12の回転軸Oと一致すると共に、本発明の第1結合手段5が圧接状態で係合し、内筒12と鍵本体Yが共働可能となる。摘み部分1を回すと内筒12が回り、内筒12が回ると係合ピン(可動障害子)17と共に多角形のブレード2も一緒に回転する。
【0035】
すなわち、
図3で示すように、第1係合部分7に対して第2係合部分9が係合するので、鍵本体Yの操作力が第1結合手段5を介して内筒12に伝達することが可能となり、実施形態では、内筒12の鍵穴13とブレード2は互いに対応する4回転対称の係合関係にある多角形なので、摘み部分1でもって内筒12を回すと、例えば
図4の(a)の挿入時の状態から
図4の(b)の解錠位置へと時計方向へ90度回すことができる。なお、実施形態の鍵本体Yのブレード2は摘み部分1に対して回転可能に設けられているものの、鍵穴13に挿入すると内筒12と一緒に回転する。
【0036】
ところで、周知事項であるが、念のために、例えば
図3を参照にして、付勢バネ19、ダンブラー20等の構成を説明する。ダンブラー20は、係合ピン17とドライバー18とから成る。前記係合ピン17は、貫通孔16内で摺動可能な係合先端部分を有する軸部17aと、該軸部17aの外方に連設し、かつドライバー18に接触可能な係合鍔17bとからなる。係合ピン17は、付勢バネ19の弾発力によって、通常はドライバー18と共に内方(鍵穴方向)へ付勢されるが、ピン孔15と貫通孔16との段差部に係合鍔17bが当接することにより、内方への移動が規制されている。したがって、ダンブラー20は、内側の係合ピン17と、外側のドライバー18とで構成され、付勢バネ19のバネ力により、前記係合ピン17の半円弧状係合先端部分が常に所定量鍵穴13に突出している。
【0037】
実施形態では、ダンブラー20(ピン孔14、15)は、上方と下方にそれぞれ軸方向に一直線に複数並んで列を成しているが、上下の各ダンブラー20は、回転対称を考えて、例えば錠本体(内筒12と外筒11)Xを半径方向に裁断した軸直角断面上にそれぞれ位置している。そして、上下の各ダンブラー20の円弧状係合先端部分は、鍵本体Yを鍵穴13に挿入した際には、窪み3の略中心を通る。つまり、内筒12の回転軸と直交するダンブラー20用のピン孔14、15の半径方向の軸線と合鍵としての鍵本体Yの窪み3の中心を通る軸線は完全に一致する。
【実施例】
【0038】
実施形態の鍵穴13の内周面の形状は、例えば長い幅面と短い幅面が交互に連続する非正多角形であり、この非正多角形の鍵穴13の内周面に対応してブレード2の軸直角断面の外周形状が非正多角形で、かつ少なくとも3回転対称に形成され、さらに、前記軸直角断面上における同一長さの長壁面又は短壁面のいずれかには、周方向に所定の回転角を有して、少なくとも合計3つ以上の同一条件の窪み3(3a、3b)がそれぞれ形成されており、鍵本体Yの摘み部分1を任意に把持して該鍵本体Yの回転方向における任意の位置の、少なくとも3つ以上の差し込み角度パターンで前記ブレード2を前記鍵穴13の先端挿入口の円形状縁部分aに「自由」に差込むことができる。
【0039】
そして、ブレード2の先端部2aを円形状縁部分aに差し込むと、内側に若干絞り込まれた、少なくとも左右・上下の案内面13aに前記先端部2aが案内され、摘み部分1をさらに押し込むと、ブレード2の先端部2aは案内面13aに制御(補正)されながらスムースに鍵穴本体13Bの受入口の縁部分bに至る。
【0040】
摘み部分1を所要量押し込むと、ブレード2の窪み3は、必ず前記ダンブラー20の複数の係合ピン17の先端部に対して一致し、以て、摘み部分2又は鍵本体Yと共に内筒12を解錠方向へ回動させることができる。なお、非正多角形でも角数が増えると、3回転対称から4回転対称、6回転対称などの如く、回転対称の数が増え、可能な限り真円に近づく。
【0041】
以下、この実施例の欄では、本発明の第2実施形態、第3実施形態等を説明する。なお、説明の便宜上、第1実施形態と同一の部分には、同一或いは同様の符号を付して重複する説明を割愛する。
【0042】
まず
図15至
図23は、本発明の第2実施形態を示す各説明図である。この第2実施形態に於いて、第1実施形態と主に異なる事項は、(a)鍵本体Y1のブレード2Aの垂直断面の形状或いは外周形状が真円或いは略真円である点、(b)ブレード2Aに形成されたキーコード3Aがブレードの長手方向に所定間隔を有して形成された複数の環状溝である点、(c)錠本体X1の内筒12の鍵穴本体13Bの内周面がブレード2Aの外周形状に対応して真円或いは略真円状に形成されている点、(d)したがって、先端部寄りの部位の受入口の縁部分bも真円或いは略真円状である点、(e)その他
図19で示すようにブレード2Aの後端部が有底筒状の摘み部分に固定的に挿嵌されている点である。
【0043】
なお、第2実施形態の鍵本体Y1は、ブレード2Aと摘み部分1は互いに回転可能に設けられているが、両方は回転可能でなくても良い。また、鍵本体Y1の環状溝3Aは、大径部分と小径部分が基端部から先端へと連続模様を形成するように繰替えされているが、環状溝3Aの幅、形状、深さ等は任意に設計変更することができる事項である。第2実施形態の主要部及び要部は、第1実施形態と同様なので、ここでは極力同様の図面を描いて具体的な説明は割愛する。
【0044】
次に、
図24乃至
図26は、第3実施形態、第4実施形態及び第5実施形態を示す。これらの実施形態は、第1結合手段5A、第1結合手段5B、第1結合手段5Cがそれぞれ異なる。
図24の第1結合手段5Aはセレーション(多数の溝)である。すなわち、内筒12の前部6には、その周方向にセレーションとしての第1係合部分7Aが形成され、一方、摘み部分1の先端部8には、その周方向にセレーションとしての第2係合部分9Aが形成されている。
【0045】
図25の第1結合手段5Bは磁性体(第1磁性体7Bと第2磁性体9B)である。すなわち、内筒12の前部6には、その周方向に所定間隔を有して第1磁性体7Bが固設され、一方、摘み部分1の先端部8には、その周方向に第1磁性体の極性に対応して吸着する複数個の第2磁性体9Bが固設されている。なお、この第3実施形態では両方に磁性体を配設しているが、第1結合手段5Bは、内筒12の前部6又は摘み部分1の先端部8のいずれか一方が金属であり、他方が前記金属に吸着する磁性体であっても良い。
【0046】
図26の第1結合手段5Cは滑り止め防止部材7C、9Cである。滑り止め防止部材7C、9Cは、摩擦によって両者が共働して回転することから、その材質(粗面)は適宜に選定されている。
【0047】
次に、
図27乃至
図41は本発明の第6実施形態を示す各説明図である。この第6実施形態が第1実施形態と主に異なる点は、(A)シリンダー錠及び該シリンダー錠用の鍵が、前述した第1結合手段に加えて具体的な第2結合手段を有する点である。この第2結合手段は前記鍵本体のブレードのキー軸後端部及び摘み部分に設けられたトリガー部材を含み、錠本体の内筒の鍵穴に前記ブレードを差し込んだとき、該トリガー部材が前記摘み部分側に後退することにより、該トリガー部材と該摘み部分が一緒に共働回転することができるように結合する点と、(B)前記錠本体の内筒の鍵穴に前記ブレードを差し込んだとき、前記トリガー部材が前記摘み部分側に後退することにより、該トリガー部材側の係合部と該摘み部分側の被係合部が互いに係合し、これによりトリガー部材と摘み部分が一緒に共働することができるように結合する点である。なお、実施形態では、トリガー部材は、第1係合手段5Dを兼用している。
【0048】
したがって、第6実施形態のシリンダー錠及び該シリンダー錠用の鍵は、錠本体と鍵本体との結合から成り、前記鍵本体のブレードを錠本体の内筒の鍵穴に差し込んだ時、第1結合手段を介して前記錠本体と鍵本体とが一体的に結合すると共に、前記ブレードに形成されたキーコードと前記内筒の回転軸と直交する軸直角断面上に位置するダンブラーが一致するものであり、前記シリンダー錠に第2係合手段を設け、この第2係合手段は前記鍵本体のブレードのキー軸後端部及び摘み部分に設けたトリガー部材を含み、前記錠本体の内筒の鍵穴に前記ブレードを差し込んだとき、前記トリガー部材が前記摘み部分側に後退することにより、該トリガー部材側の係合部と前記摘み部分側の被係合部が互いに係合し、これにより該トリガー部材と該摘み部分が一緒に共働回転することを特徴とする。この特徴事項に「前記鍵本体の摘み部分とブレードとが相対回転可能に設けられ、また前記ブレードの外周形状が円形状又は3回転対称以上の多角形状のいずれかに形成され、一方、前記鍵穴の内周面も前記ブレードを受け入れる円形状又は多角形状のいずれかに形成されていること」という構成を加味することができる。以下、第6実施形態を詳細に説明する。
【0049】
(1)第6実施形態の主要部
図27は鍵本体Y2のブレード2Bの先端部側を錠本体X2の鍵穴13に差込んだ態様における主要部の説明図である。この
図27に於いて、X2は錠本体、6は錠本体X2を構成する内筒の前部、7Dは前記前部に形成され、かつ鍵穴13と連通する第1係合部分(例えば+形状の凹所)である。前記第1係合部分7Dは、特に図示しないが、第1実施形態と同様に左右・上下の開口幅がブレード2Bの左右・上下の幅よりも大きい。また、第1係合部分7Dの内壁面はブレード2Bの弾丸状先端部2aを案内する外拡案内面13aとなっている。またブレード2Bの先端部2aは弾丸形状或いは先細り形状となっている(
図28)。
【0050】
一方、鍵本体Y2の摘み部分1Bは、基本的には、上下の板状摘み片(
図27では下方の板状摘み片1aのみを示す)を合体することにより、やや肉厚の盤体となる。
【0051】
この摘み部分1Bに前後の軸受板37、38を介して所定位置で回転するようにキー軸後端部2bが軸支された棒状のブレード2Bと、このブレード2Bのキー軸後端部の適宜部位(前軸受板37と後軸受体38の間)に、その筒状部分30及び外係合体40が外嵌合すると共に、軸方向に移動可能に設けられ、かつ摘み部分1Bと共に回転するように該摘み部分1Bの収納空間に組み込まれたトリガー部材10とが設けられでいる。トリガー部材10は、摘み部分1Bに内装された2個の復帰バネ23により付勢され、その突出外端部10aは常に摘み部分1Bの先端部8から所定量突出する。好ましくは、キー軸後端部に軸方向に移動可能な内係合体29が設けられ、該内係合体29の一側面と摘み部分1Bの収納空間の前記一側面と対向する内面には内係合体用の緩衝バネ24が配設されている。
【0052】
(2)錠本体X2の鍵穴13
錠本体X2の鍵穴13は、水平方向又は垂直方向のいずれであっても良い。また鍵穴13の形状は、例えばブレード部分と称される差込み部分の両側縁部分に刻み状の鍵溝を有するもの、又はブランキーと称される平坦面に幾何学的溝、逆円錐台状窪み等を有するものがそれぞれ挿入可能なものであれば良い。
図28及び
図29で示すように、本実施形態のブレード2Bは、外周面に複数の凹所(窪み)を有する棒状形態をしているので、錠本体X2の鍵穴13は、例えば単純な水平方向や垂直方向の穴ではなく、鍵穴13は円形、楕円形、十字形状等に形成され、かつ鍵穴13の開口縁部分に傾斜状案内面(キー誘導面)13aを有している。
【0053】
(3)ブレード2B
図28はブレード2Bの正面図を基準にした説明図である。また
図29はブレード2Bの左側面図である。ブレード2Bの具体的構成態様は、本発明の特定要件ではないので、詳細な説明は割愛するが、
図28及び
図29で示すように、ブレード2Bは、弾丸状先端部2a及び複数種類のキーコード3Bを有するブレード本体32と、このブレード本体32に連続する大径後端部33側(キー軸後端部2b)に区別され、ここでは前記大径後端部33からフランジ状後端部25までを「キー軸後端部2b」とする。
【0054】
前述したように、前記ブレード本体32の先端部分2aは弾頭状或いは指先状に形成されている。またブレード本体32は、軸方向に沿った縦断面の長さが位置によって変化する外形線(ブレード2Bの軸方向に凸所と凹所が繰返す意味)を有する中実棒状体である。さらに、弾丸状先端部2aは、
図28で示すように、キーコード3Bを有するブレード本体32よりも半径がさらに小さい挿入部分である。加えて前記キーコード3Bは、
図29で示すように、上下の対角線方向の外面部位の深さが略同一の溝である。
【0055】
ところで、
図28で示す小さな楕円形状に見える箇所が前記溝内の外面に形成したキーコードとしての窪み26aであり、実施形態のブレード本体32は、半径方向の窪み26a以外に、前述した軸方向の波状外形線もキーコード3Bとして用いることができる。
【0056】
キー軸後端部2bは、左右上下に突起部分27、28を有し、後端部の+形状の突起部分28は、
図33で示すように内係合体29の内周面に形成した+形状の被係合部分に係合する。したがって、内係合体29は軸方向に移動可能であるものの、キー軸後端部2bの+形状突起部分(係合部分)と+形状の被係合部分は一体的に係合することから、ブレード2Bと共に共働回転可能である。
【0057】
(4)トリガー部材10
例えば
図33及び
図34で示すように、トリガー部材10は、内係合体29と共にキー軸後端部2bに外嵌合しているが、実施形態では、内係合体29よりも前方の前記キー軸後端部に軸方向に移動可能に設けられている。
【0058】
しかして、トリガー部材10は、キー軸後端部2bに外嵌合する筒状部分30と、この筒状部分30の左右部位に基端部が固定された左右一対の水平係合腕31と、これらの水平係合腕31の基端部と交差するように前記筒状部分30の後端部の左右部位に突設された左右一対の連結突片と、これらの連結突片に対向する左右一対の合わせ突片を介して筒状部分30の後端面に一体的に連結され、しかも、その内周面にノコギリ状の内係合歯40aが形成された外係合体40とから構成され、前記水平係合腕31の突出外端部(トリガー先端部)10aは、トリガー部材10が摘み部分1B内装の左右一対の復帰バネ23のバネ力により付勢されていることから、常に摘み部分1B(下方の板状摘み片1a)の先端部8から所定量突出している。なお、前記筒状部分30と外係合体40は一体成形しても良い。
【0059】
(5)作用
次に作用を説明する。
図40は内外の歯車体の位相が一致していた場合におけるトリガー部材10の作動の説明図である。そして、
図37は位相が一致していた場合の概念図である。内外の歯車体29、40の位相が一致している、一致していないに関わらず、摘み部分1Bを持ってブレード2Bを錠本体X2の鍵穴13に差込んで行く。この時、鍵穴13の先端挿入口の縁部分には、ブレード2Bを内筒12Bの回転軸と一致するように鍵穴13の中心へと誘導する外拡状案内面13aが形成されているので、ブレード2Bの中心と鍵穴13は、内筒12Bの回転軸上に略一致する。そして、ブレード2Bを鍵穴13に差込んで行くと、まずトリガー部材10の水平係合腕31の突出外端部10aの先端面が鍵穴13の周囲(一部も含む)に当たる。その状態で摘み部分1Bを相手(錠本体X2)側にさらに押し込むと、内外の歯車体29,40の外係合歯29aと内係合歯40aの位相が一致しているので、トリガー部材10は矢印で示す方向へ復帰バネ23のバネ力に抗して所要量移動し、前記外係合歯29aと内係合歯40aが直ちに噛合状態となり、その結果、ブレード2B側の内係合体29と摘み部分1B側或いは該摘み部分1Bと共働回転し得るように組み込まれたトリガー部材10側の外係合体40が連結状態となる。
【0060】
一方、
図38は内外の歯車体の位相が一致していない場合におけるトリガー部材10の作動の説明図である。そして、
図39は位相が一致していない場合の概念図である。位相が一致していない場合は、当然のことながら、トリガー部材10が復帰バネ23のバネ力に抗して所定量(例えば3mm)移動する。その際、内係合体29は外係合体40の後端面で押されるので、緩衝バネ24はバネ力に抗して収縮する。
【0061】
そこで、摘み部分1Bを左右いずれかの方向へ回転させる。そうすると、実施形態では、内外の係合体29,40の外係合歯29aと内係合歯40aは、いわゆるスプライン、或いはセレーション状に形成されているので、両係合歯29a、40aは容易に一致し、緩衝バネ24で押し戻された内係合体29は外係合体40に嵌入する。つまり、両係合体29,40は可及的速やかに噛合する。その結果、噛合態様で摘み部分1Bとトリガー部材10とブレード2Bがそれぞれ共働回転するように一体的に結合する。
【0062】
ところで、
図27はブレード2Bの先端部を錠本体X2の鍵穴13に差込んだ態様における主要部の説明図であるが、この
図1は挿入時と引抜き時の両方を兼用する説明図である。つまり、ブレード2Bを鍵穴13から引き抜く際、左右一対の復帰バネ23で付勢されたトリガー部材10は初期位置へと移動し、その結果、トリガー部材10の外係合体40は内係合体29から離れる(噛合状態の解消)。
【0063】
図42乃至
図45は本発明の第7実施形態を示す各説明図である。この第7実施形態は前記第6実施形態の第2結合手段を設計変更したものである。第6実施形態の第2結合手段は、摘み部分1Bに設けたトリガー部材10の先端面が鍵穴13の周囲(一部も含む)に当たりながら復帰バネ23のバネ力に抗して後退し、第2結合手段を構成する前記トリガー部材10に設けられた外係合体40の内係合歯40aとブレード2Bのキー軸後端部2bに設けた内係合体29の外係合歯29aが互いに噛合することを条件として摘み部分1Bとトリガー部材10とブレード2Bが共働回転する。これに対して、第7実施形態の第2結合手段は、トリガー部材10Aに設けられた外係合体40Aの多角形状の内係合面40aとブレード2Bのキー軸後端部2bに設けた内係合体29Aの多角形状の外係合面29aが互いに係合することを条件として摘み部分1Bとトリガー部材10Aとブレード2Bが共働回転する。なお、図示しない復帰バネ23、緩衝バネ24等は、第6実施形態と同様に摘み部分1Bに組み込まれている。
【0064】
図46乃至
図51は本発明の第8実施形態を示す各説明図である。まず、
図46及び
図47は、ピンシリンダー錠が錠本体X3と鍵本体Y2から成ることを示す各説明図である。錠本体X3も第1実施形態の錠本体Xと同様に可動障害子20が直線方向(内筒の半径方向)に移動するピンシリンダーである(
図48、
図49参照)。
【0065】
したがって、錠本体X3は、例えば
図47で示すように、外筒11Cと、この外筒に回動可能に設けられ鍵穴13を有する内筒12Cと、外筒11C及び内筒12Cに渡って付勢バネ19の弾発力を付与して挿通されたドライバーピン18とタンブラーピン17とを有し、かつ、外筒11Cと内筒12Cの境目に相当するシェアラインLに前記タンブラーピン17の鍔状外端部を位置させることができるにように該シェアラインLに沿って配設された複数列のピン群を備える。前記タンブラーピン17の係合内端部17bは、
図47で示すように、鍵本体Y2を錠本体X3に差し込む前は鍵穴13に所定量出ている。なお、内筒の後端部に設けられた回転軸(テールピース)、ワッシャー、外筒の外周面に形成した切欠用カバーなどの細部的事項の説明は割愛する。
【0066】
しかして、錠本体X3のタンブラーは、例えば
図49で示すように、少なくとも第1列のピン群L1と、該第1列のピン群に対して180度対向位置に存在する第2列のピン群L2とから成る。また、例えば
図50で示すように、第1列のピン群L1又は第2列のピン群L2に対して、45度位置に第3列のピン群が配設され、この第3列のピン群L3の各タンブラーピン(係合ピン)17は、第1キーコード(C1)の凹所の深さに対応して係合する。また、第1列のピン群L1又は第2列のピン群L2に対して、45度位置に外筒11C及び内筒12Cに渡って弾発手段47の弾発力を付与して圧接面山形形状のクリックピン48及びクリックピン受け49が設けられている。
【0067】
次に、鍵本体Y2は、第6実施形態の鍵本体Y2と同一のものが使用されている。したがって、鍵本体Y2のキーコードは、ブレードの半径方向に形成された大小の凹所状第1キーコード(C1)と、ブレード2Bの軸方向の外周面に形成された波状の高低差を有する第2キーコード(C2)とから成る。なお、鍵本体Y2の具体的構成は、第6実施形態の鍵本体Y2の説明を援用し、重複する説明を割愛する。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、錠前や建具の分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0069】
X、X1、X2、X3…錠本体、Y、Y1、Y2…鍵本体、1、1B…摘み部分、2、2A、2B…ブレード、2a…ブレードの先端部、2b…キー軸後端部、3、3A、3B…キーコード、C1…第1キーコード(半径方向の窪み)、C2…第2キーコード(軸方向の外形線)、4…連結具、5、5A、5B、5C、5D…第1結合手段、6…前部、7、7A、7B、7C、7D…第1係合部分、8…摘み部分の先端部、9、9A、9B、9C…第2係合部分、10…トリガー部材(第2結合手段を構成)、10a…突出先端部、11、11C…外筒、12、12B、12C…内筒、13…鍵穴、13a…外拡状案内面、13A…誘導穴、a…先端挿入口の縁部分、13B…鍵穴本体、b…先端部寄りの部位の受入口の縁部分、c…鍵穴本体の奥部、17…係合ピン、18…ドライバーピン、19…付勢バネ、20…ダンブラー(可動障害子)、23…復帰バネ、24…緩衝バネ、L…シェアライン。