(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記発光タイミング制御部が前記光源の発光を停止しているときに前記光検出部から出力される前記電気信号に基づいて、オフセット値の補正の可否を判断するオフセット処理判断部をさらに備え、
前記オフセット処理部は、前記オフセット処理判断部が前記オフセット値の補正を実施可能と判断した場合に、前記オフセット値を補正することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光走査型観察装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、光検出手段から出力される電気信号の、暗電流によるオフセット値(黒レベル)は、温度等の使用環境によって変動(通常は、ドリフト)することがあり、オフセット値が変動すれば、画質が悪化するおそれがある。しかしながら、特許文献1に記載の技術では、このようなオフセット値の変動に起因する画質の悪化を抑制するための対策が取られていない。
【0005】
したがって、この点に着目してなされた本発明の目的は、画質を向上できる、光走査型観察装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する光走査型観察装置の発明は、
光源からの光を対象物上に走査して該対象物の画像を取得する光走査型観察装置におい
て、
前記光源の発光タイミングを制御する発光タイミング制御部と、
前記光源からの光を導光して揺動可能に支持された先端部から対象物に向けて射出する
ファイバと、
前記ファイバの前記先端部を揺動駆動する駆動部と、
前記対象物から得られる光を検出し、電気信号に変換する光検出部と、
前記発光タイミング制御部が前記光源の発光を停止しているときに前記光検出部から出
力される前記電気信号に基づいて、前記光検出部による所定の画素に係る前記電気信号の出力と前記所定の画素の次の画素に係る前記電気信号の出力との間のタイミングにおいてオフセット値を補正するオフセット処理部と、
前記オフセット処理部により前記オフセット値の補正がされた前記電気信号に基づいて
画像信号を生成
し、前記発光を停止しているときに取得できなかった画素を該画素の周辺に位置する画素に基づいて補間する信号処理部と、
を備える
。
【0007】
前記駆動部は、スパイラル状に前記ファイバの前記先端部を揺動させてもよい。
【0008】
前記駆動部は、リサージュ状に前記ファイバの前記先端部を揺動させ
、
前記発光タイミング制御部は、前記画像信号によって生成される画像の外周側領域内で前記光源の発光を停止し、
前記オフセット処理部は、前記画像信号によって生成される画像の外周側領域内にある前記所定の画素に係る前記電気信号の出力と前記所定の画素の次の画素に係る前記電気信号の出力との間のタイミングにおいてオフセット値を補正してもよい。
【0010】
前記発光タイミング制御部が前記光源の発光を停止しているときに前記光検出部から出
力される前記電気信号に基づいて、オフセット値の補正の可否を判断するオフセット処理
判断部をさらに備え、
前記オフセット処
理部は、前記オフセット処理判断部が前記オフセット値の補正を
実施可能と判断した場合に、前記オフセット値を補正するとよい。
前記オフセット処理判断部は、前記電気信号の値または/かつ波形に基づいて前記オフセット値の補正を実施可能と判断してもよい。
オフセット値の補正の可否を判断するオフセット処理判断部をさらに備え、
前記光源はパルス発光し、
前記オフセット処理判断部は、
前記光源の発光が停止される直前の前記光源の発光期間中において前記光検出器から出力された前記電気信号の波形がパルス形状であるときに前記オフセット値の補正を実施可能と判断
し、
前記オフセット処理部は、前記オフセット処理判断部が前記オフセット値の補正を実施可能と判断した場合に、前記オフセット値を補正してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、画質を向上できる、光走査型観察装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
(第1実施の形態)
図1〜
図9を参照して、本発明の第1実施の形態を説明する。
図1は、第1実施の形態に係る光走査型観察装置の一例である光走査型内視鏡装置の概略構成を示すブロック図である。
図1において、光走査型内視鏡装置10は、スコープ20と、制御装置本体30と、ディスプレイ40とを、備えている。
【0015】
まず、制御装置本体30の構成を説明する。制御装置本体30は、光走査型内視鏡装置10全体を制御する制御部31と、クロック発生部71と、発光タイミング制御部32と、レーザ33R、33G、33Bと、結合器34と、駆動制御部38と、光検出器35(光検出部)と、オフセット処理部70と、ADC(アナログ−デジタル変換器)36と、信号処理部37とを、備えている。
【0016】
制御部31により読み書き可能なメモリ(図示せず)には、光検出器35から出力される電気信号の、暗電流によるオフセット値(黒レベル)の補正(以降、「オフセット補正」ともいう。)を行うタイミングが、予め設定されている。オフセット補正タイミングは、後に詳述するように、走査期間内(すなわち画像の表示期間内)に設けられてもよいし、走査期間外(すなわち画像の表示期間外)に設けられてもよい。
【0017】
発光タイミング制御部32は、制御部31からの制御信号に応じて、赤(R)、緑(G)および青(B)のレーザ光をそれぞれ射出するレーザ33R、33G、33Bの発光タイミングを制御する。発光タイミングは、オフセット補正タイミングを除く走査期間内では、各色の光が順次一定の時間間隔(発光周期T
E)毎に発光されるとともに、オフセット補正タイミングでは、所定時間T
Cにわたって全ての色の発光が停止されるように、設定される。なお、走査期間外では、基本的に、全ての色の発光が停止されることとなる。
【0018】
レーザ33R、33G、33Bは、複数の異なる色(本実施の形態では、R、G及びBの3色)の光を選択的に射出する光源を構成している。ここで、「複数の異なる色の光を選択的に射出する」とは、すなわち、発光タイミング制御部32により選択されたいずれか1色の光を、発光タイミング制御部32により選択されたタイミングで射出することを意味する。レーザ33R、33G、33Bとしては、例えばDPSSレーザ(半導体励起固体レーザ)やレーザダイオードを使用することができる。
なお、本明細書において、「発光周期T
E」とは、光源を構成するレーザ33R、33G、33Bのそれぞれの発光周期を意味するのではなく、光源から順次射出される光の発光周期を意味している。
【0019】
レーザ33R、33G、33Bから射出されるレーザ光は、結合器34により同軸に合成された光路を経て、照明光としてシングルモードファイバである照明用光ファイバ11(ファイバ)に入射される。結合器34は、例えばダイクロイックプリズム等を用いて構成される。
レーザ33R、33G、33Bおよび結合器34は、制御装置本体30と信号線で結ばれた、制御装置本体30とは別の筐体に収納されていても良い。
【0020】
結合器34から照明用光ファイバ11に入射した光は、スコープ20の先端部まで導光され、対象物100に向けて照射される。その際、制御装置本体30の駆動制御部38は、スコープ20の駆動部21を振動駆動することによって、照明用光ファイバ11の先端部を振動駆動する。これにより、照明用光ファイバ11から射出された照明光は、対象物100の観察表面上を、例えばスパイラル状に、2次元走査する。照明光の照射により対象物100から得られる反射光や散乱光などの光は、マルチモードファイバにより構成される検出用光ファイババンドル12の先端で受光して、スコープ20内を通り制御装置本体30まで導光される。
なお、本明細書において、「走査期間」とは、照明用光ファイバ11から射出された照明光が、対象物100の観察表面上を2次元走査する期間を指す。
【0021】
光検出器35は、光源の発光周期T
E毎に、R、G又はBのいずれかの色の光の照射により対象物100から検出用光ファイババンドル12を介して得た光を検出して、当該色に帯域制限されたアナログ信号(電気信号)を出力する。
【0022】
オフセット処理部70は、発光タイミング制御部32が光源の発光を停止しているときに、光検出器35から暗電流により出力される電気信号に基づいて、オフセット値(黒レベル)を補正する。より具体的に、オフセット処理部70は、オフセット補正タイミングになった旨を発光タイミング制御部32から通知されると、オフセット値の補正を行う。オフセット補正タイミングのために発光が停止される期間(以降、「オフセット補正タイミングの期間」ともいう。)T
Cは、オフセット値の補正に要する時間以上となるように予め設定されている。また、オフセット処理部70は、例えば光検出器35からの電気信号をクランプし、当該電気信号の黒レベルを所定電圧に設定することにより、オフセット値の補正を行う。オフセット補正タイミングの後に光検出器35から電気信号が出力されると、オフセット処理部70は、オフセット値の補正がされた電気信号をADC36へと出力する。
【0023】
ADC36は、光検出器35からオフセット処理部70を介して入力される、オフセット値の補正がされたアナログ信号を、デジタル信号(電気信号)に変換し、信号処理部37に出力する。
【0024】
信号処理部37は、発光周期T
E毎にADC36から入力された、オフセット値の補正がされたデジタル信号を、それぞれ発光タイミングと走査位置とに対応付けて、順次メモリ(図示せず)に記憶する。この発光タイミングと走査位置との情報は、制御部31から得る。制御部31では、駆動制御部38により印加した振動電圧の振幅および位相などの情報から、走査経路上の走査位置の情報が算出される。そして、信号処理部37は、走査終了後または走査期間中に、ADC36から入力された各デジタル信号に基づいて、強調処理、γ処理、補間処理等の必要な画像処理を行って画像信号を生成して、対象物100の画像をディスプレイ40に表示する。
【0025】
クロック発生部71は、制御部31と発光タイミング制御部32とに接続されており、制御部31および発光タイミング制御部32に基準のクロック信号を出力する。制御部31は、クロック発生部71からのクロック信号を分周して、駆動制御部38による駆動部21の制御タイミングやADC36によるサンプリングタイミングを生成する。一方、発光タイミング制御部32は、クロック発生部71からのクロック信号を分周して、レーザ33R、33G、33Bの発光タイミングやオフセット処理部70のオフセット値補正タイミングを生成する。このように、同一のクロック発生部71からのクロック信号に基づいて、発光タイミング制御部32、駆動制御部38、及びADC36のそれぞれを動作させることにより、これらの動作を確実に同期させて、タイミングのずれの無い、確実なオフセット値の補正を可能にしている。
【0026】
次に、スコープ20の構成を説明する。
図2は、スコープ20を概略的に示す概観図である。スコープ20は、操作部22および挿入部23を備える。操作部22には、制御装置本体30からの照明用光ファイバ11、検出用光ファイババンドル12、及び配線ケーブル13が、それぞれ接続されている。これら照明用光ファイバ11、検出用光ファイババンドル12および配線ケーブル13は挿入部23内部を通り、挿入部23の先端部24(
図2における破線部内の部分)まで延在している。
【0027】
図3は、
図2のスコープ20の挿入部23の先端部24を拡大して示す断面図である。スコープ20の挿入部23の先端部24は、駆動部21、投影用レンズ25a、25b(光学系)、中心部を通る照明用光ファイバ11および外周部を通る検出用光ファイババンドル12を含んで構成される。
【0028】
駆動部21は、照明用光ファイバ11の先端部11cを振動駆動する。駆動部21は、取付環26によりスコープ20の挿入部23の内部に固定されたアクチュエータ管27、並びに、アクチュエータ管27内に配置されるファイバ保持部材29および圧電素子28a〜28d(
図4(a)および(b)参照)を含んで構成される。照明用光ファイバ11は、ファイバ保持部材29で支持されるとともにファイバ保持部材29で支持された固定端11aから先端部11cまでが、揺動可能に支持された揺動部11bとなっている。一方、検出用光ファイババンドル12は挿入部23の外周部を通るように配置され、先端部24の先端まで延在している。さらに、検出用光ファイババンドル12の各ファイバの先端部には図示しない検出用レンズを備える。
【0029】
さらに、投影用レンズ25a、25bおよび検出用レンズは、スコープ20の挿入部23の先端部24の最先端に配置される。投影用レンズ25a、25bは、照明用光ファイバ11の先端部11cから射出されたレーザ光が、対象物100上に照射されて略集光するように構成されている。また、検出用レンズは、対象物100上に集光されたレーザ光が、対象物100により反射、散乱、屈折等をした光(対象物100と相互作用した光)等を取り込み、検出用レンズの後に配置された検出用光ファイババンドル12に集光、結合させるように配置される。なお、投影用レンズは、二枚構成に限られず、一枚や他の複数枚のレンズにより構成しても良い。
【0030】
図4(a)は、光走査型内視鏡装置10の駆動部21の振動駆動機構および照明用光ファイバ11の揺動部11bを示す図であり、
図4(b)は
図4(a)のA−A線断面図である。照明用光ファイバ11は角柱状の形状を有するファイバ保持部材29の中央を貫通して、ファイバ保持部材29に固定保持される。ファイバ保持部材29の4つの側面は、それぞれ±Y方向および±X方向に向いている。そして、ファイバ保持部材29の±Y方向の両側面にはY方向駆動用の一対の圧電素子28a、28cが固定され、±X方向の両側面にはX方向駆動用の一対の圧電素子28b、28cが固定される。
【0031】
各圧電素子28a〜28dは、制御装置本体30の駆動制御部38からの配線ケーブル13が接続されており、駆動制御部38によって電圧が印加されることによって駆動される。
【0032】
X方向の圧電素子28bと28dとの間には常に正負が反対で大きさの等しい電圧が印加され、同様に、Y方向の圧電素子28aと28cとの間にも常に反対方向で大きさの等しい電圧が印加される。ファイバ保持部材29を挟んで対向配置された圧電素子28b、28dが、互いに一方が伸びるとき他方が縮むことによって、ファイバ保持部材29に撓みを生じさせ、これを繰り返すことによりX方向の振動を生ぜしめる。Y方向の振動についても同様である。
【0033】
駆動制御部38は、X方向駆動用の圧電素子28b、28dとY方向駆動用の圧電素子28a、28cとに、同一の周波数の振動電圧を印加し、あるいは、異なる周波数の振動電圧を印加し、振動駆動させることができる。Y方向駆動用の圧電素子28a、28cとX方向駆動用の圧電素子28b、28dとをそれぞれ振動駆動させると、
図3、
図4に示した照明用光ファイバ11の揺動部11bが振動し、先端部11cが偏向するので、先端部11cから出射されるレーザ光は対象物100の表面を順次(例えばスパイラル状に)走査する。
【0034】
次に、光走査型内視鏡装置10の動作について、発光タイミング制御部32、オフセット処理部70、及び信号処理部37の処理を中心に、
図5を参照して説明する。
図5は、発光タイミングとオフセット値の補正タイミングとの関係の一例を説明するための図であり、図の左側から右側に進むにつれて時間が進む。
図5の例では、オフセット補正タイミングが、走査期間内に設けられており、より具体的には、R、G、Bの発光を1画素とする所定の画素間に、設けられている。レーザ33R、33G、33Bの発光タイミングを
図5(a)〜(c)に、結合器34の出力を
図5(d)に、光検出器35の出力を
図5(e)に、信号処理部37で処理される画素を
図5(f)に、オフセット処理部70によるオフセット値の補正のタイミングを
図5(g)に、それぞれ示す。
【0035】
オフセット補正タイミングを除く走査期間内では、発光タイミング制御部32は、制御部31からの制御信号に応じて、発光周期T
E毎にR、G、Bの順序でレーザ33R、33G、33Bの発光タイミングを制御する。この間、光検出器35から出力される各色に対応する電気信号は、オフセット処理部70およびADC36を介して、信号処理部37に出力される。
【0036】
一方、オフセット補正タイミングになると、発光タイミング制御部32は、所定期間T
Cにわたって全てのレーザ33R、33G、33Bの発光を停止する。この間、光検出器35からは、暗電流による電気信号(オフセット値)のみが出力されることとなる。オフセット処理部70は、光検出器35から出力される電気信号に基づいて、オフセット値を補正する。
【0037】
当該期間T
Cにわたるオフセット補正タイミングが終わると、再び発光タイミング制御部32は、発光周期T
E毎にR、G、Bの順序でレーザ33R、33G、33Bの発光タイミングを制御する。この間、光検出器35から出力される各色に対応する電気信号は、オフセット処理部70によりオフセット値が補正された状態で、ADC36に出力され、その後、信号処理部37に出力される。
【0038】
信号処理部37は、
図5(f)に示すように、光検出器35からオフセット処理部70およびADC36を介して順次に入力されたR、G、Bの電気信号に基づいて画像信号を生成して、ディスプレイ40に出力する。このとき、オフセット補正タイミングの期間T
C中に取得できなかった画素については、周辺画素から公知の方法で補間処理することが好ましく、これにより当該期間T
Cに対応する部分が画像内で黒点状に表れるのを防止でき、ゆえに画像の鮮明度を良好にすることができる。なお、ここでいう「周辺画素」とは、照明用光ファイバ11の先端部11cの走査軌跡に従う周辺画素、又は、ディスプレイ40に出力する画像信号を生成するときに存在する周辺画素を指す。
【0039】
ここで、照明用光ファイバ11の先端部11cの走査軌跡とオフセット補正タイミングとの関係の例を、
図6〜
図9を参照して説明する。図中、実線tは先端部11cの走査軌跡を示しており、点cはオフセット補正タイミングでの先端部11cの走査軌跡t上の位置を示している。
【0040】
図6に示す第1例は、照明用光ファイバ11の先端部11cが、走査期間中、駆動部21によって、例えば内周側から外周側に向けて、スパイラル状に揺動される場合を示している。本例では、オフセット補正タイミングが、走査期間中において、先端部11cが1周回分走査される毎に、設けられている。このため、各オフセット補正タイミングでの先端部11cの位置cが、図の例では上下方向に、一列に並ぶこととなる。よって、オフセット値の補正が行われた各点cの部分を補間する際には、例えば、走査軌跡において点cの列を挟んだ両側(図の例では左右両側)に位置する周辺画素に基づいて補間することができる。走査期間中にオフセット補正タイミングを設けることで、走査期間中に画像の黒レベルを一定に維持して、画質を向上できる。
【0041】
図7に示す第2例では、オフセット補正タイミングが、走査期間中において、先端部11cが3/4周回分走査される毎に設けられている点で、第1例と異なる。このため、各オフセット補正タイミングでの先端部11cの走査軌跡t上の位置cが、第1例と比較して、より互いから離間することとなる。よって、オフセット値の補正が行われた各点cの画素を補間する際には、例えば、走査軌跡において各点cの上下左右に隣接する周辺画素に基づいて補間することができる。このように、第2例によれば、第1例に比べて、より多くの周辺画素に基づいて各点cの部分を補間できるので、第1例の効果に加えて、補間処理の精度を向上でき、ゆえに画像の鮮明度を向上できる。
【0042】
図8に示す第3例では、オフセット補正タイミングが、光源が発光されない走査期間外(画像の表示期間外)において、照明用光ファイバ11の先端部11cが、走査終了後から、例えば外周側から内周側に向けてスパイラル状に、初期位置へと戻されるまでの期間(以降、「戻り期間」という。)内に、設けられている。この戻り期間内にオフセット補正タイミングを設けることにより、次の走査により表示される画像の画質を向上させることができる。さらに、画像内には光源の発光が停止される部分が存在しないので、走査期間中にオフセット補正タイミングを設けた場合に必要となる、オフセット補正タイミングで取得できない画素についての補間処理が不要となる。
【0043】
なお、第1例および第2例の他にも、走査期間内の任意のタイミングに、オフセット補正タイミングを設けてもよい。また、例えば第1例又は第2例と第3例とを組み合わせる等して、走査期間内および走査期間外の両方にオフセット補正タイミングを設けるようにしてもよい。
【0044】
図9に示す第4例は、照明用光ファイバ11の先端部11cが、走査期間中、駆動部21によって、リサージュ状に揺動される場合を示している。このリサージュ状の走査軌跡は、1周回あたりに画像の外周側領域内を1回以上通過する。ここで、「画像の外周側領域内」とは、画像のうち、中央領域を除く、外周側の領域を指す。本例では、照明用光ファイバ11の先端部11cが、画像の外周側領域内(より具体的には、画像の上縁部)を通過する間に、オフセット補正タイミングが設けられている。本例によれば、第1例及び第2例と同様に、走査期間中にオフセット補正タイミングを設けることで、走査期間中に画像の黒レベルを一定に維持して、画質を向上できる。さらに、画像の中央領域内には、光源の発光が停止される部分が存在しないので、オフセット補正タイミングで取得できなかった画素についての補間処理を行わなくても、十分に良好な画質を得ることができる。また、リサージュ状の走査軌跡を使用することで、スパイラル状の走査軌跡を使用する場合に必要となる戻り期間が不要となるため、連続的に走査を継続可能であり、ゆえに、こまめにオフセット値の補正を行うことができるので、オフセット値の変動が激しい場合に特に有利である。
【0045】
なお、本発明では、第1例〜第4例で説明したスパイラル状およびリサージュ状の軌跡以外にも、他の任意の軌跡を用いることができる。
【0046】
第1実施の形態によれば、光検出器35から出力される電気信号のオフセット値が温度等の使用環境によって変動しても、オフセット値を補正することにより、画像の黒レベルを一定に維持して、画質を向上することができる。
【0047】
(第2実施の形態)
図10〜
図11を参照して、本発明の第2実施の形態を説明する。
図10は、第2実施の形態に係る光走査型観察装置の一例である光走査型内視鏡装置の概略構成を示すブロック図である。本実施の形態は、制御装置本体30がオフセット処理判断部72をさらに備える点のみで第1実施の形態と異なるので、その他の構成についての詳述を省略する。
【0048】
第1実施の形態では、光源の発光が停止されるときにオフセット値の補正を行うが、例え光源の発光が停止されていても、スコープ20の挿入部23の先端部24が患者の体外等の暗視野外にある場合には、光検出器35からは暗電流によるオフセット値に加えて外光の検出値も出力されてしまうため、正確にオフセット値の補正を行うことができない。この点に鑑みて、本実施の形態では、スコープ20の挿入部23の先端部24が暗視野外にある場合にはオフセット値の補正を行わないようにし、ゆえに不正確なオフセット値の補正を回避するものである。
【0049】
図10に示すように、オフセット処理判断部72は、光検出器35とオフセット処理部70と発光タイミング制御部32とに接続されている。オフセット処理判断部72は、発光タイミング制御部32が光源の発光を停止しているときに光検出器35から出力される電気信号に基づいて、オフセット値の補正の可否を判断し、その判断結果をオフセット処理部70に通知する。オフセット処理部70は、オフセット処理判断部72がオフセット値の補正を実施可能と判断した場合に、第1実施の形態で説明したようなオフセット値の補正を行う。
【0050】
次に、光走査型内視鏡装置10の動作について、オフセット処理判断部72の処理を中心に、
図11を参照して説明する。
図11は、オフセット処理判断部72の処理を示すフローチャートである。まず、オフセット処理判断部72は、発光タイミング制御部32からの通知に基づいて、発光タイミング制御部32が光源の発光を停止しているか否かを判断する(ステップS1)。ここで、光源の発光を停止している期間とは、走査期間中のオフセット補正タイミングの期間T
Cや、走査期間外の期間である。
【0051】
発光タイミング制御部32が光源の発光を停止していると判断すると(ステップS1、Yes)、オフセット処理判断部72は、光検出器35から出力される電気信号の値が所定の閾値未満であるか否かを判断する(ステップS2)。ここで、この閾値は、スコープ20の挿入部23の先端部24が暗視野外(患者の体外等)にあるときに光検出器35から出力されることが想定される最小の出力値に設定されることが好ましい。ただし、この閾値は、本光走査型内視鏡装置10が使用される環境に応じて変更されてもよい。
【0052】
光検出器35から出力された電気信号の値が閾値未満である場合(ステップS2、Yes)、オフセット処理判断部72は、スコープ20の挿入部23の先端部24が暗視野内にあると判断して(ステップS3)、オフセット値の補正を実施可能と判断し(ステップS4)、判断結果をオフセット処理部70に通知する。オフセット処理部70は、この通知を受けた後、オフセット補正タイミングにおいて、第1実施の形態で説明したようにオフセット値の補正を実施する。
【0053】
一方、ステップS2において、光検出器35から出力された電気信号の値が閾値以上である場合(ステップS2、No)、オフセット処理判断部72は、スコープ20の挿入部23の先端部24が暗視野外にあると判断して(ステップS5)、オフセット値の補正を実施不可と判断し(ステップS6)、判断結果をオフセット処理部70に通知する。オフセット処理部70は、この通知を受けた後は、オフセット補正タイミングになっても、オフセット値の補正を実施しない。この場合、光検出器35から出力される電気信号は、オフセット値の補正がされないままADC36に出力されることとなる。
【0054】
第2実施の形態によれば、第1実施の形態の効果に加えて、スコープ20の挿入部23の先端部24が暗視野外にある場合にはオフセット値の補正を行わないようにし、ゆえに不正確なオフセット値の補正を回避することができる。
【0055】
なお、
図11のステップS1に代えて、オフセット処理判断部72は、発光タイミング制御部32からの通知に基づいて、オフセット補正タイミングの期間T
C内であると判断した場合に、ステップS2に移行するようにしてもよい。
【0056】
図11のステップS2に代えて、又はステップS2に加えて、オフセット処理判断部72は、光源の発光が停止される直前の光源の発光期間中において光検出器35から出力された電気信号の波形が、パルス形状をなしていると判断した場合に、つまり対象物の走査中と判断した場合に、ステップS3に移行するようにしてもよい。ここで、「波形が、パルス形状をなしている」とは、光検出器35からの出力波形が、略平坦状になってはおらず、
図5(e)に示すようにR、G、Bの各色を検出する度にピークが現れていることを指す。この場合、直前の所定期間にわたる光検出器35からの出力信号を、所定時間間隔毎にサンプリングする手段が別途必要となり、オフセット処理判断部72は、当該手段によりサンプリングされた出力信号のデータに基づいて、光検出器35の出力波形がパルス形状をなしているか否かを判断することとなる。
【0057】
第1及び第2実施の形態において、オフセット処理部70の構成は、オフセット値をアナログ信号の状態で補正するものに限られず、デジタル信号に変換された状態で補正するものであってもよい。例えば、オフセット処理部70は、ADC36によりアナログ−デジタル変換されたオフセット値をアナログ変換し、変換されたオフセット値が一定値となるようにフィードバック制御して、オフセット値を補正するものでもよい。あるいは、オフセット処理部70をADC36の出力側に接続して、ADC36によりアナログ−デジタル変換されたオフセット値を、画像の黒レベルに合うように補正してもよい。
【0058】
第1及び第2実施の形態において、駆動制御部38は、制御部31が用いるクロック発生部71とは別のクロック発生部を内部に備えて、この内部のクロック発生部からのクロック信号に基づいて動作するように構成されてもよい。この場合、制御部31と駆動制御部38とが共通のクロック発生部71を用いる場合に比べて、駆動制御部38へのクロック信号の分配に要する消費電力を低減させることができる。
【0059】
また、第1及び第2実施の形態において、光走査型内視鏡装置10の光源の構成は、レーザ33R、33G、33Bを備えたものに限られず、例えばパルス発光させる白色光源を備えたものでもよい。
【0060】
さらに、第1及び第2実施の形態において、照明用光ファイバ11の駆動部21は、圧電素子を用いたものに限られず、例えば、照明用光ファイバ11に固定した永久磁石とこれを駆動する偏向磁場発生用コイル(電磁コイル)とを用いたものでもよい。以下、この駆動部21の変形例について、
図12を参照して説明する。
図12(a)はスコープ20の先端部24の断面図、
図12(b)は
図12(a)の駆動部21を拡大して示す斜視図であり、
図12(c)は、
図12(b)の偏向磁場発生用コイル62a〜62dおよび永久磁石63を含む部分の照明用光ファイバ11の軸に垂直な面による断面図である。
【0061】
照明用光ファイバ11の揺動部11bの一部には、照明用光ファイバ11の軸方向に着磁され貫通孔を有する永久磁石63が、照明用光ファイバ11が貫通孔を通った状態で結合されている。また、揺動部11bを囲むように、一端部を取付環26に固定された角型チューブ61が設けられ、永久磁石63の一方の極と対向する部分の角型チューブ61の各側面には、平型の偏向磁場発生用コイル62a〜62dが設けられている。
【0062】
Y方向の偏向磁場発生用コイル62aと62cのペアおよびX方向の偏向磁場発生用コイル62bと62dのペアは、角型チューブ61のそれぞれ対向する面に配置され、偏向磁場発生用コイル62aの中心と偏向磁場発生用コイル62cの中心を結ぶ線と、偏向磁場発生用コイル62bの中心と偏向磁場発生用コイル62dの中心を結ぶ線とは、静止時の照明用光ファイバ11の配置される角型チューブ61の中心軸線付近で直交する。これらのコイルは、配線ケーブル13を介して制御装置本体30の駆動部38に接続され、駆動制御部38からの駆動電流によって駆動される。
【0063】
本発明の光走査型観察装置は、光走査型内視鏡装置のみならず、光走査型顕微鏡等の他の光走査型観察装置にも適用することができる。