【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両用の空気吹出装置は、従来装置に例示されるように、一般に、複数の独立した部材(例えば、リテーナ、風向調整板、及び、風向調整板の回動角度を調整するための機構等)によって構成される。そこで、これら部材を空気吹出装置が取り付けられる車両(車種)ならびに車両内の位置(運転席周辺、助手席周辺および後部座席周辺など)に対応した形状を有するように設計して順次組み付けることにより、任意の車両および車両内の位置に対応した形状の空気吹出装置を製造することが可能となっている。以下、便宜上、車両および車両内の位置を「車両等」と総称する。
【0006】
しかし、上述した製造過程を経ることから、空気吹出装置を製造するためには、複数の部材を車両等ごとに異なる金型等を用いて準備する必要があるだけでなく、それら部材を多くの工程を経て組み付ける必要がある。そのため、一般に、対応すべき車両等の種類が増えるにつれて準備すべき空気吹出装置の部材の数が増大するだけでなく、それら部材を組み付ける工程の数も増大する。即ち、空気吹出装置の製造は、性能が同一の空気吹出装置を製造する場合であっても、対応すべき車両等の種類が増えるにつれて煩雑となる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、対応すべき車両等の種類が増えた場合であっても簡易に製造することが可能な、車両用の空気吹出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明に係る車両用の空気吹出装置は、空気の吹出口を画成すると共に風向調整板が内蔵された「吹出口ユニット」と、空気の流路を画成すると共に前記吹出口ユニットを相対移動不能に支持する「支持体」と、を備える。
【0009】
具体的には、前記吹出口ユニットは、前記吹出口を開口端とする四角筒状の「枠体」、及び、前記開口端の近傍において前記枠体の軸線に直交する回動軸周りに回動可能に支持された前記「風向調整板」を有する、ように構成されている。
【0010】
更に、前記枠体は、前記風向調整板の回動軸に平行な「一対の内壁面」を有する、ように構成されている。より具体的には、前記「一対の内壁面」は、前記開口端の近傍において、前記開口端に近づくにつれて該枠体の軸線に近づくように傾斜している。
【0011】
加えて、前記支持体は、前記流路を中空部とする筒体であって、前記筒体の内壁面に前記吹出口ユニットを支持するための「支持部」を有し、前記筒体の外壁面に該空気吹出装置を車両内装部に取り付けるための「取付部」を有する、ように構成されている。
【0012】
上記構成によれば、「風向調整板が内蔵された吹出口ユニット」に空気吹出装置としての機能(例えば、吹き出し空気流の流れ方向を調整する機能等)を担わせると共に、「吹出口ユニットを相対移動不能に支持」しつつ「空気吹出装置を車両内装部に取り付けるための取付部を外壁面に」有する「支持体」を対応すべき車両等ごとに異なる形状に形成することができる。換言すると、吹出口ユニットを汎用の形状としつつ、支持体を車両等ごとに固有の形状とすることができる。その結果、空気吹出装置を構成する全ての部材を対応すべき車両等ごとに準備する場合に比べ、準備すべき部材の数を低減することができる。
【0013】
更に、吹出口ユニットに「風向調整板が内蔵され」ている(即ち、複数の部材を予め一体に形成している)ので、吹出口ユニットと支持体とを「支持部」を介して組み付けるだけで空気吹出装置を製造することができる。その結果、空気吹出装置を構成する全ての部材を個別に順次組み付ける場合に比べ、空気吹出装置を製造する工程の数を低減することができる。
【0014】
加えて、吹出口ユニットが「四角筒状の枠体」に風向調整板を設けるように形成されているので、吹出口ユニットの剛性が高まり、吹出口ユニットと支持体とを組み付ける工程自体も容易となる。
【0015】
したがって、本発明に係る空気吹出装置は、対応すべき車両等の種類が増えた場合であっても簡易に製造することが可能な構成を有する。
【0016】
ところで、本発明の空気吹出装置において、枠体は「前記風向調整板の回動軸に平行」であり且つ「前記開口端の近傍において前記開口端に近づくにつれて該枠体の軸線に近づくように傾斜した」一対の内壁面を有している。そのため、枠体の内側を吹出口に向かって流れる空気は、開口端の近傍において、枠体の軸線に向かって集められる。その結果、「開口端の近傍に」設けられた風向調整板に向かって空気が誘導されることになるので、風向調整板によって効率良く吹き出し空気流の流れ方向を調整することができる(例えば、
図3を参照。)。また、同様の理由により、多数の風向調整板を設けなくても(例えば、枠体の軸線上に1枚だけ風向調整板を設けても)吹き出し空気流を調整できるので、空気吹出装置を小型化できると共に、美的外観を高めることもできる。
【0017】
なお、上記「相対移動不能」との表現は、空気吹出装置としての機能を維持可能な程度に吹出口ユニットが支持体に固定されることを表し、寸法誤差および経年劣化等によって生じる緩み及び意図的に設けられる遊び等による相対移動を排除しない。更に、上記「枠体の軸線」とは、枠体(四角筒状)の内側中心を通過して長手方向に伸びる仮想上の直線を表す。
【0018】
以上、本発明に係る車両用の空気吹出装置の構成及び効果について説明した。次いで、以下、本空気吹出装置のいくつかの態様(態様1〜3)について述べる。
【0019】
・態様1
本発明の空気吹出装置において、枠体の「一対の内壁面」の傾きの度合いは、吹き出し空気流の流れ方向を調整する観点において適切な大きさであればよく、具体的な角度は特に制限されない。
【0020】
例えば、前記枠体は、
前記風向調整板が第1位置から第2位置までの範囲内で回動可能な場合において、
前記風向調整板が前記「第1位置」にあるとき、前記風向調整板と、前記一対の内壁面のうちの「一方の内壁面」と、が平行であり、
前記風向調整板が前記「第2位置」にあるとき、前記風向調整板と、前記一対の内壁面のうちの「他方の内壁面」と、が平行である、ように構成され得る。
【0021】
上記構成によれば、風向調整板が第1位置にあるとき(吹き出し空気流の流れ方向が最も大きく傾けられるとき)には、風向調整板だけでなく一方の内壁面によっても、空気流が整流されることになる。同様に、風向調整板が第2位置にあるときには、風向調整板および他方の内壁面の双方により、空気流が整流されることになる。その結果、吹き出し空気流の指向性を更に高めることができる。
【0022】
・態様2
本発明の空気吹出装置において、空気吹出装置を出来る限り簡易に製造する観点から、風向調整板を回動操作するための機構(例えば、各種の歯車等)は吹出口ユニットが備えることが好ましい。
【0023】
そこで、前記吹出口ユニットは、「風向調整板を回動操作するための機構の全て」を内蔵するように構成され得る。
【0024】
・態様3
更に、同様の観点から、空気吹出装置を車両に取り付ける機能は支持体のみが担うことが好ましい。
【0025】
そこで、前記支持体は、該空気吹出装置が取り付けられる車両及び車両内の位置の少なくとも一方に対応して異なる形状を有するように構成され、前記吹出口ユニットは、該空気吹出装置が取り付けられる車両及び車両内の位置のいずれにも依らない所定の形状を有するように構成され得る。
【0026】
上記構成(態様2,3)によれば、吹出口ユニットの汎用性が更に高まるので、対応すべき車両の種類が増えた場合であっても空気吹出装置を更に簡易に製造することができる。