(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.
導電性フィルム
本発明の導電性フィルムは、
(A)光透過性支持層;
(B)有機無機ハイブリッドを含有するハードコート層;及び
(C)光透過性導電層;
を含有する導電性フィルムであって、
前記ハードコート層(B)が、前記光透過性支持層(A)の少なくとも一方の面に、直接又は一以上の他の層を介して配置されており、
少なくとも一方の前記ハードコート層(B)の前記光透過性支持層(A)とは反対側の面に、前記光透過性導電層(C)が、直接又は一以上の他の層を介して配置されており、
前記有機無機ハイブリッドにおける無機材料の有機材料に対する重量比が、1以上であることを特徴とする、導電性フィルムである。
【0013】
本発明において「光透過性」とは、光を透過させる性質を有する(translucent)ことを意味する。「光透過性」には、透明(transparent)が含まれる。「光透過性」とは、例えば、全光線透過率が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは87%以上である性質をいう。本発明において全光線透過率は、ヘーズメーター(日本電色社製、商品名:NDH−2000、またはその同等品)を用いてJIS−K−7105に基づいて測定する。
【0014】
本明細書において、光透過性支持層(A)の一方の面に配置される複数の層のうち二つの層の相対的な位置関係について言及する場合、光透過性支持層(A)を基準にして、光透過性支持層(A)からの距離が大きい一方の層を「上層」又は「上方に位置する」等といい、光透過性支持層(A)からの距離が小さい他方の層を「下層」又は「下方に位置する」等ということがある。
【0015】
図1に、本発明の導電性フィルムの一態様を示す。この態様では、光透過性支持層(A)の片面にハードコート層(B)及び光透過性導電層(C)がこの順で互いに隣接して配置されている。このような導電性フィルムのことを、「片面導電性フィルム」ということがある。
【0016】
図2に、本発明の導電性フィルムの別の態様を示す。この態様では、光透過性支持層(A)の両面にハードコート層(B)及び光透過性導電層(C)がこの順で互いに隣接して配置されている。このような導電性フィルムのことを、「両面導電性フィルム」ということがある。
【0017】
1.1
光透過性支持層(A)
本発明において光透過性支持層とは、導電性フィルムにおいて、光透過性導電層を含む層を支持する役割を果たすものをいう。光透過性支持層(A)としては、特に限定されないが、例えば、タッチパネル用導電性フィルムにおいて、光透過性支持層として通常用いられるものを用いることができる。
【0018】
光透過性支持層(A)の素材は、特に限定されないが、例えば、各種の有機高分子等を挙げることができる。有機高分子としては、特に限定されないが、例えば、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリメタクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂及びポリフェニレンサルファイド系樹脂等が挙げられる。ポリエステル系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリエチレンナフタレート(PEN)等が挙げられる。ポリエーテル系樹脂としては、ポリエーテルスルホン系樹脂等が挙げられる。光透過性支持層(A)の素材は、ポリエステル系樹脂が好ましく、中でも特にPETが好ましい。光透過性支持層(A)は、これらのうちいずれか単独からなるものであってもよいし、複数種からなるものであってもあってもよい。
【0019】
光透過性支持層(A)の厚さは、特に限定されないが、好ましくは2〜300μm、より好ましくは20〜200μmである。光透過性支持層(A)の厚さをこれらの下限値以上とすることによって、導電性フィルムに十分な機械的強度を付与できる。また、導電性フィルムとしては通常、ある程度の厚さ以下であることが要求される。このように導電性フィルムとして通常要求される厚さを達成するためには、光透過性支持層(A)の厚さを上記の上限値以下とすることが好ましい。
【0020】
1.2
ハードコート層(B)
本発明においてハードコート層とは、プラスチック表面の傷つきを防止する役割を果たすものをいう。
【0021】
ハードコート層(B)は、有機無機ハイブリッドを含有する。
【0022】
本発明において有機無機ハイブリッドとは、有機材料及び無機材料、好ましくは、紫外線の照射により有機物と結合する反応性無機材料、を含有し、両者が互いに混合しているものをいう。例えば、有機材料及び無機材料それぞれのドメインサイズが0.1〜500nm程度の混合物をいう。
【0023】
前記有機無機ハイブリッドにおける無機材料の有機材料に対する重量比は、好ましくは1以上であり、より好ましくは3以上である。当該重量比が左記範囲内にある本発明の導電性フィルムにおいては、光透過性導電層をパターン化したとしても、パターン化前に比べてフィルムが波打ったような形状(波状形状)に変化する現象が防止乃至緩和され、ひいてはフィルム表面にこの波状、すなわち光透過性導電層のパターン、が視認されるようになる現象が防止乃至緩和されやすくなる。
【0024】
前記有機無機ハイブリッドにおける無機材料の有機材料に対する重量比は、本発明の効果が奏されればよく特に限定されないが、好ましくは4以下であり、より好ましくは3.5以下である。前記有機無機ハイブリッドにおける無機材料の有機材料に対する重量比の範囲としては、1〜5、1〜4、3〜4及び3〜3.5を挙げることができる。前記有機無機ハイブリッドにおける無機材料の有機材料に対する重量比の範囲としては、1〜5が好ましく、3〜3.5がより好ましい。
【0025】
前記有機無機ハイブリッドにおける無機材料としては、本発明の効果が奏されればよく特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、及びジルコニア等が挙げられる。無機材料としては、シリカが好ましい。
【0026】
前記有機無機ハイブリッドにおける無機材料としては、特に、ナノシリカが好ましい。本発明においてナノシリカとは、ナノサイズのシリカ(二酸化ケイ素(SiO
2))をいう。本発明の効果が奏されればよく特に限定されないが、例えば、平均粒子径が0.001〜1μmのシリカを前記有機無機ハイブリッドにおける無機材料として用いることができる。平均粒子径は動的光散乱式粒径分布測定及びBET比表面積測定を用いて測定する。
【0027】
ナノシリカは、例えば市販のものであってもよい。市販のものとしては、例えば、アドマテックス、日産化学工業、アエロジル社、扶桑化学工業等が販売するものが挙げられる。
【0028】
また、ナノシリカの製造法としては、例えば金属粉末の爆燃現象を利用して真球状酸化物微粒子を製造するVMC(Vaperized Metal Combustion)法を利用できる。VMCとは、詳細には、金属粉末を酸素の気流中に分散させ、着火することで酸化させ、その反応熱で金属及び酸化物を蒸気又は液体にし、冷却することで、微細な酸化物粒子を得るという技術である。
【0029】
前記有機無機ハイブリッドにおける有機材料としては、本発明の効果が奏されればよく特に限定されないが、例えば、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、メラミンアクリレート、ポリフルオロアルキルアクリレート、及びシリコーンアクリレート等が挙げられる。有機材料としては、ウレタンアクリレートが好ましい。
【0030】
ウレタンアクリレートとしては、本発明の効果が奏されればよく特に限定されないが、例えば、多官能ウレタンアクリレートを用いることができる。
【0031】
前記有機無機ハイブリッドにおける有機材料は、特に限定されないが、無機材料が官能基を有している場合、この官能基とイオン結合しうる官能基を有しているものであれば好ましい。
【0032】
前記有機無機ハイブリッドは、特に限定されないが、例えばゾル−ゲル法、ナノ微粒子直接分散法、又は層間挿入法等により製造できる。特に限定されないが、具体的には次のようにして製造できる。
【0033】
例えば、ゾル−ゲル法はシリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、チタニア(TiO2)、ジルコニア(ZrO2)等の無機酸化物を低温で作製できる方法として知られている。例えば、シリカ(二酸化ケイ素(SiO
2))は、ゾル−ゲル法により、アルコキシシランの加水分解とそれに続く縮合反応を経て、O−Si−Oを繰り返し単位とする3次元架橋構造が形成されることにより得られる。ゾル−ゲル法としては、特に限定されないが、公知の手段のうち例えば、特許第4022639号に記載の方法等を利用できる。
【0034】
本発明の有機無機ハイブリッドは、有機材料の存在下で、上記のゾル−ゲル法、ナノ微粒子直接分散法、又は層間挿入法等を行うことにより得ることができる。
また、本発明の有機無機ハイブリッドは、有機材料及び光重合開始剤の存在下で、紫外線の照射により有機物と結合する反応性無機材料を用いて、上記のゾル−ゲル法、ナノ微粒子直接分散法、又は層間挿入法等であって、さらに紫外線照射により硬化する工程を含有する方法を行うことにより得ることができる。
【0035】
ハードコート層(B)は、好ましくは光透過性支持層(A)の少なくとも一方の面に隣接して配置されている。
【0036】
ハードコート層(B)は、一層が配置されていてもよい。あるいは二層以上が互いに隣接して、または他の層を介して互いに離間して配置されていてもよい。
【0037】
ハードコート層(B)の一層あたりの厚さは、特に限定されないが、例えば0.1〜10μm、1〜7μm、及び1.5〜6μm等が挙げられる。左記の数値範囲は後出のものが前出のものよりも好ましい。二層以上が互いに隣接して配置されている場合は互いに隣接している全てのハードコート層(B)の合計厚さが上記範囲内であればよい。
【0038】
ハードコート層(B)の屈折率は、本発明の導電性フィルムがタッチパネル用導電性フィルムとして使用できる限り特に限定されないが、例えば、1.4〜1.8及び1.5〜1.7等が挙げられる。左記数値範囲は、後出のものが前出のものよりも好ましい。
【0039】
ハードコート層(B)は、その上に配置されている層、例えば光透過性導電層(C)又はアンダーコート層(E)、よりも高い屈折率を有していてもよい。このようにすることにより、層間の光学干渉作用により導電性フィルムの透過率が向上するので好ましい。
【0040】
ハードコート層(B)を配置する方法としては、特に限定されないが、例えば、フィルムに塗布して、熱で硬化する方法、紫外線や電子線などの活性エネルギー線で硬化する方法等が挙げられる。生産性の点で、紫外線により硬化する方法が好ましい。
【0041】
ハードコート層(B)の屈折率は、光透過性支持層(A)との干渉で虹模様を生じないという理由から、可能な限り光透過性支持層(A)の屈折率に近いことが望ましい。
【0042】
1.3
光透過性導電層(C)
光透過性導電層(C)は、少なくとも一方のハードコート層(B)の光透過性支持層(A)とは反対側の面に、直接又は一以上の他の層を介して配置されている。
【0043】
光透過性導電層(C)は導電性物質を含有する。導電性物質としては、特に限定されないが、例えば、タッチパネル用導電性フィルムにおいて通常用いられる導電性物質を用いることができる。
【0044】
光透過性導電層(C)に含有される導電性物質としては、特に限定されないが、例えば、金属が挙げられる。金属としては、より詳細には、例えば、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化錫及び酸化チタン等が挙げられる。これらのうちいずれか単独を光透過性導電層(C)に含有される導電性物質として用いてもよいし、これらから選択される複数種を光透過性導電層(C)に含有される導電性物質として用いてもよい。光透過性導電層(C)に含有される導電性物質としては、透明性と導電性を両立する点でスズをドープした酸化インジウムが好ましい。この場合において、スズをドープした酸化インジウムとしては、酸化インジウム(III)(In
2O
3)と酸化スズ(IV)(SnO
2)を用いて得られた無機化合物であるスズドープ酸化インジウム(あるいは酸化インジウムスズ、tin−dopedindium oxide、又はITOとも呼ばれる)が好ましい。この場合における、SnO
2の添加量としては、特に限定されないが、例えば、1〜15重量部、好ましくは2〜10重量部、より好ましくは3〜8重量部等が挙げられる。
【0045】
光透過性導電層(C)の厚さは、特に限定されないが、通常は5〜50nmであり、好ましくは10〜40nm、より好ましくは12〜35nm、さらに好ましくは15〜30nmである。
【0046】
光透過性導電層(C)を形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、イオンプレーティング法、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法、及びパルスレーザーデポジション法等が挙げられる。これらのうち、タッチパネル用途に低抵抗で大面積の均質な膜を安定に生産するという観点において、スパッタリング法が好ましい。
【0047】
光透過性導電層(C)を形成する方法としては、導電性物質を焼成する工程を含有する方法が好ましい。焼成方法としては、特に限定されないが、例えばスパッタリング等を行う際のドラム加熱や、熱風式焼成炉、遠赤外線焼成炉などを例として挙げることができる。焼成温度は、特に限定されないが、通常は30〜250℃であり、好ましくは50〜200℃、より好ましくは80〜180℃、さらに好ましくは100〜160℃である。焼成時間は、好ましくは3分〜180分、より好ましくは5分〜120分、さらに好ましくは10分〜90分である。焼成を行う雰囲気としては、真空下、大気、窒素やアルゴンなどの不活性ガス、酸素、若しくは水素添加窒素等、又はこれらのうち二種以上の組合せが挙げられる。導電性物質を焼成することにより、導電性物質の結晶化が促進される。
【0048】
1.4
ハードコート層(D)
本発明の導電性フィルムは、さらに、ハードコート層(B)とは別のハードコート層(D)を含有していてもよい。
【0049】
ハードコート層(D)は、特に限定されないが、例えば、光透過性支持層(A)のハードコート層(B)とは反対側の面に直接又は一以上の他の層を介して配置されていてもよい。
【0050】
図3に、本発明の片面導電性フィルムの一態様を示す。この態様では、光透過性支持層(A)の一方の面にハードコート層(B)及び光透過性導電層(C)がこの順で互いに隣接して配置されており、他方の面に別のハードコート層(D)が直接配置されている。
【0051】
ハードコート層(D)としては、特に限定されないが、例えば、タッチパネル用導電性フィルムにおいてハードコート層として通常用いられるものを用いることができる。
【0052】
ハードコート層(D)の素材は、特に限定されないが、例えば、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂及びアルキド系樹脂等が挙げられる。
【0053】
ハードコート層(D)の一層あたりの厚さは、特に限定されないが、例えば0.1〜10μm、1〜7μm、及び1.5〜6μm等が挙げられる。二層以上が互いに隣接して配置されている場合は互いに隣接している全てのハードコート層(D)の合計厚さが上記範囲内であればよい。左記の例示列挙においては後出のものが前出のものよりも好ましい。
【0054】
ハードコート層(D)を配置する方法としては、特に限定されないが、例えば、フィルムに塗布して、熱で硬化する方法、紫外線や電子線などの活性エネルギー線で硬化する方法等が挙げられる。生産性の点で、紫外線により硬化する方法が好ましい。
【0055】
1.5
アンダーコート層(E)
本発明の導電性フィルムは、さらに、アンダーコート層(E)を含有し、かつ少なくとも一方の光透過性導電層(C)が少なくともアンダーコート層(E)を介してハードコート層(B)の面に配置されていてもよい。
【0056】
光透過性導電層(C)は、アンダーコート層(E)に隣接して配置されていてもよい。
【0057】
図4に、本発明の片面導電性フィルムの一態様を示す。この態様では、光透過性支持層(A)の一方の面に、ハードコート層(B)、アンダーコート層(D)及び光透過性導電層(C)がこの順で互いに隣接して配置されている。
【0058】
図5に、本発明の両面導電性フィルムの一態様を示す。この態様では、光透過性支持層(A)の両方の面に、ハードコート層(B)、アンダーコート層(D)及び光透過性導電層(C)がこの順で互いに隣接して配置されている。
【0059】
図6に、本発明の片面導電性フィルムの一態様を示す。この態様では、光透過性支持層(A)の一方の面に、ハードコート層(B)、アンダーコート層(E)及び光透過性導電層(C)がこの順で互いに隣接して配置されており、他方の面に、ハードコート層(D)が直接配置されている。
【0060】
アンダーコート層(E)の素材は、特に限定されないが、例えば、誘電性を有するものであってもよい。アンダーコート層(E)の素材としては、特に限定されないが、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、炭化ケイ素、シリコンアルコキシド、アルキルシロキサンの及びその縮合物、ポリシロキサン、シルセスキオキサン、ポリシラザン等が挙げられる。アンダーコート層(E)は、これらのうちいずれか単独からなるものであってもよいし、複数種からなるものであってもあってもよい。アンダーコート層(E)としては、SiOx(x=1.0〜2.0)を含む層が好ましい。アンダーコート層(E)は、SiOx(x=1.0〜2.0)からなる層であってもよい。
【0061】
アンダーコート層(E)は、一層が配置されていてもよい。あるいは二層以上が互いに隣接して、または他の層を介して互いに離間して配置されていてもよい。アンダーコート層(E)が二層以上互いに隣接して配置されているのが好ましい。
【0062】
アンダーコート層(E)の一層あたりの厚さとしては、特に限定されないが、例えば15〜25nm等が挙げられる。二層以上が互いに隣接して配置されている場合は互いに隣接している全ての光透過性下地層(C)の合計厚さが上記範囲内であればよい。
【0063】
アンダーコート層(E)の屈折率は、本発明の導電性フィルムがタッチパネル用導電性フィルムとして使用できる限り特に限定されないが、例えば、1.4〜1.5が好ましい。
【0064】
アンダーコート層(E)を配置する方法は、湿式及び乾式のいずれでもよく、特に限定されないが、湿式としては例えば、ゾル−ゲル法、微粒子分散液、コロイド溶液を塗布する方法等が挙げられる。
【0065】
アンダーコート層(E)を配置する方法として、乾式としては、例えば、スパッタリング法、イオンプレーティング法、真空蒸着法及びパルスレーザーデポジション法により隣接する層上に積層する方法等が挙げられる。
【0066】
1.6
その他の層(F)
本発明の導電性フィルムは、光透過性支持層(A)の少なくとも一方の面に、ハードコート層(B)及び光透過性導電層(C)に加えて、別のハードコート層(D)、アンダーコート層(E)及びそれらと異なる少なくとも1種のその他の層(F)からなる群より選択される少なくとも1種の層がさらに配置されていてもよい。
【0067】
その他の層(F)としては、特に限定されないが、例えば、接着層等が挙げられる。
【0068】
接着層とは、二層の間に当該二層と互いに隣接して配置され、当該二層間を互いに接着するために配置される層である。接着層としては、特に限定されないが、例えば、タッチパネル用導電性フィルムにおいて接着層として通常用いられるものを用いることができる。接着層は、これらのうちいずれか単独からなるものであってもよいし、複数種からなるものであってもあってもよい。
【0069】
1.7
本発明の導電性フィルムの用途
本発明の導電性フィルムは、光透過性導電層(C)をパターン化したとしても、従来の導電性フィルムに比べて、パターン化前に比べてフィルムが波打ったような形状(波状形状)に変化する度合いが抑制されている。なお、この波状形状は、子細にみると、概ね光透過性導電層が存在する領域が山部に相当し、光透過性導電層が存在しない領域が谷部に相当する。通常の導電性フィルムは波状形状に変化することにより、フィルム表面にこの波状、すなわち光透過性導電層のパターン、が視認されるようになる(いわゆる骨見え現象)。これに対して本発明の導電性フィルムはパターン化を経た後に波状形状の形成が抑制されているので、従来のような骨見え現象が防止乃至緩和されている。
【0070】
したがって、本発明の導電性フィルムは、光透過性導電層(C)をパターン化した上で使用する用途に適している。
【0071】
パターン化の方法は、特に限定されないが、例えば次のようにして行う。まず、レジスト(エッチング液から層を保護するための保護膜)を、光透過性導電層上の、残したい領域に塗布する。塗布の手段はレジストの種類にもよるがスクリーン印刷によって行ってもよいし、フォトレジストを用いる場合であれば、次のようにして行う。光透過性導電層上の、残したい領域にスピンコーター又はスリットコーター等を用いてフォトレジストを塗布し、光又は電子線を部分的に照射してフォトレジストの溶解性をその部分においてのみ変化させ、その後に溶解性が相対的に低くなっている部分を除去する(これを現像という)。このようにしてレジストが光透過性導電層上の、残したい領域においてのみ存在している状態とする。引き続いて、エッチング液を光透過性導電層に作用させ、光透過性導電層のうちレジストで保護されていない領域を選択的に溶解し、この溶解物を最終的に除去することにより、パターンを形成する。
【0072】
パターン化により形成されるパターンの形状は、特に限定されないが、通常、縞状又はダイヤモンド状である。縞状にパターン化された導電性フィルムを縞方向が直交するように二枚重ね合わせることにより、格子状のパターンを形成できる。
【0073】
光透過性導電層(C)をパターン化した上で使用する用途としては、特に限定されないが、例えばタッチパネル、太陽電池及び液晶ディスプレイ等が挙げられる。タッチパネルについて詳細は、2で説明する通りである。
【0074】
2.
本発明のタッチパネル
本発明のタッチパネルは、本発明の導電性フィルムを含み、さらに必要に応じてその他の部材を含んでなる。
【0075】
本発明のタッチパネルの具体的な構成例としては、次のような構成が挙げられる。なお、保護層(1)側が操作画面側を、ガラス(3)側が操作画面とは反対側を向くようにして使用される。
(1)保護層
(2)本発明の導電性フィルム
(3)ガラス
【0076】
本発明のタッチパネルは、特に限定されないが、例えば、保護層(1)、本発明の導電性フィルム(2)及び(3)ガラス、並びに必要に応じてその他の部材を通常の方法に従って組み合わせることにより製造することができる。
【0077】
3.
本発明の導電性フィルムの製造方法
本発明の導電性フィルムの製造方法は、光透過性支持層(A)の少なくとも一方の面に、ハードコート層(B)及び光透過性導電層(C)をそれぞれ配置する工程をそれぞれ含む。
【0078】
本発明の導電性フィルムの製造方法は、光透過性支持層(A)の少なくとも一方の面に、ハードコート層(B)及び光透過性導電層(C)に加えて、別のハードコート層(D)、アンダーコート層(E)及びそれらと異なる少なくとも1種のその他の層(F)からなる群より選択される少なくとも1種の層をそれぞれ配置する工程をそれぞれ含んでいてもよい。
【0079】
上記において、それぞれの層を配置する工程は、それぞれの層について説明した通りである。それぞれの層を配置する順番については、特に限定されない。例えば、光透過性支持層(A)の少なくとも一方の面に光透過性支持層(A)側から順次配置させてもよい。あるいは、例えば、最初に光透過性支持層(A)ではない層(例えば、光透過性導電層(C))の一方の面に他の層を配置させてもよい。あるいは、一方で2種以上の層を互いに隣接するように配置させることにより1種の複合層を得てから、又はそれと同時に、他方で同様に2種以上の層を互いに隣接するように配置させることにより1種の複合層を得て、これらの2種の複合層をさらに互いに隣接するように配置させてもよい。
【実施例】
【0080】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0081】
<基材の作製>
透明支持体として厚み100μmPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム(東洋紡績株式会社製、商品名:A4300)の片面に、光重合剤含有アクリル系オリゴマーに、トルエンとメチルイソブチルケトン(MIBK)とを5:5(重量比)の割合にて混合してなる混合溶媒を加えて、固形分濃度40重量%に調整した液状のハードコート用材料をロールコーター塗工し、その塗工膜を100℃で60秒加熱乾燥し、乾燥後の塗工膜に対して300mJ/cm
2の紫外線を照射させ、厚さ約2μmのハードコート層を設けた。
【0082】
[実施例1]
15官能ウレタンアクリレート100重量部に対して、算術平均径1μm未満の球状コロイダルシリカ(以下、ナノシリカという)333重量部、光重合開始剤1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(BASFジャパン製、商品名:イルガキュア184)10重量部、希釈溶剤としてメチルイソブチルケトン(MIBK)を固形分30%になるように添加、混合することによって得たハードコート用材料を、上記片面ハードコート基材のハードコート層とは反対の面に、バーコーター(R.D.SWEBSTER N.Y 社製)4番手で塗布、100℃で60秒間乾燥し、高圧水銀灯で紫外線を約600mJ/cm
2照射して硬化させ、厚み1.2μmのハードコート層を設けた。
ナノシリカの平均粒径は、BET比表面積測定装置(ユアサアイオニクス製、NOVA―1200)を用いて比表面積を測定及び、動的光散乱式粒径分布測定装置LB−500(堀場製作所製)を用いて体積平均粒子径を測定し求めた。
【0083】
<透明導電層の形成>
上記のように得られたハードコート層の表面に、アルゴンガス95%及び酸素ガス5%からなる混合ガスを導入し、0.2〜0.3Pa雰囲気に調整されたチャンバー内において、酸化インジウム97重量%及び酸化スズ3重量%からなるターゲット材を用いて、DCマグネトロンスパッタリング法により、透明導電層を形成した。
【0084】
<ITO膜のエッチングによるパターン化>
次いで、透明導電性フィルムを10cm角に切り出し、150℃で60分間の加熱処理を行って、ITO膜を結晶化した。結晶化した透明導電性フィルムにフォトレジストを塗布し、露光・現像処理を行ってピッチ4mm、線幅0.25mmのストライプ状にパターンニングを施した後、25℃の王水系エッチング液に15分間浸漬して、ITO膜のエッチングを行った。その後、25℃の3%水酸化ナトリウム溶液に1分間浸漬してフォトレジストを除去した。
最後に、引き出し配線形成のための銀ペースト乾燥工程を想定して130℃で40分間の加熱処理を行った。
【0085】
[実施例2]
実施例1のハードコート用材料を高圧水銀灯照射により硬化させないこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2のハードコート層を設け、また、その後の透明導電膜形成、パターンニング、加熱処理を行った。
【0086】
[比較例1]
実施例1のナノシリカを無添加に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例1のハードコート層を設け、また、その後の透明導電膜形成、パターンニング、加熱処理を行った。
【0087】
[比較例2]
実施例1のナノシリカの添加量を267重量部となるように変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例2のハードコート層を設け、また、その後の透明導電膜形成、パターンニング、加熱処理を行った。
【0088】
<評価>
実施例及び比較例で得られた透明導電性フィルムについて下記評価を行った。結果を表1に示す。
【0089】
<段差目視評価>
実施例及び比較例で得られた透明導電性フィルムのパターンニングされたITO側が上側になるように配置して、パターンニング部と非パターンニング部の判別ができるか否かを下記基準で評価した。目視距離は20cm、目視角度はサンプル面から45度とした。
○ :パターンニング部と非パターンニング部の判別が困難。
△ :パターンニング部と非パターンニング部とを判別できる。
× :パターンニング部と非パターンニング部とをはっきりと判別できる。
【0090】
【表1】