特許第6397231号(P6397231)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6397231
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】遮水シートの固定構造と固定方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 1/00 20060101AFI20180913BHJP
   E02D 29/00 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   B09B1/00 FZAB
   E02D29/00
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-124383(P2014-124383)
(22)【出願日】2014年6月17日
(65)【公開番号】特開2016-2521(P2016-2521A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2017年6月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593116272
【氏名又は名称】東ソー・ニッケミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(72)【発明者】
【氏名】海老原 正明
(72)【発明者】
【氏名】坂槙 正義
(72)【発明者】
【氏名】宮永 浩志
(72)【発明者】
【氏名】古賀 研二
【審査官】 上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−087470(JP,A)
【文献】 特開平10−339462(JP,A)
【文献】 特開平11−055825(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/108820(WO,A1)
【文献】 特開2011−104544(JP,A)
【文献】 特開2000−009849(JP,A)
【文献】 特開平02−101249(JP,A)
【文献】 特開2002−213197(JP,A)
【文献】 特開2015−190132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 1/00
E02D 29/00
E04D 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物に、遮水シートを熱溶着して固定するための固定部を複数設けて構成する、遮水シートの固定構造であって、
前記固定部は、
ネジ穴を設けた、固定用アンカーと、
中央に凹設した磁石設置溝と、該磁石設置溝の底部に設けて前記固定用アンカーのネジ穴と連通するボルト穴とを有する、固定盤と、
前記ネジ穴およびボルト穴を介して前記固定用アンカーと前記固定盤とを一体化する、本設ボルトと、
前記磁石設置溝に取り付けて、前記固定盤のコンクリート外への露出面と同一平面を維持するように前記磁石設置溝を閉塞する形状を呈する、位置表示磁石と、
前記固定盤の露出面に配置するアルミ網と、を少なくとも含み、
各固定部に設けた位置表示磁石の表側の磁極が全て同一であることを特徴とする、
遮水シートの固定構造。
【請求項2】
コンクリート構造物に複数設けた固定部に、遮水シートを熱溶着して固定する、遮水シートの固定方法であって、
前記固定部は、
ネジ穴を設けた、固定用アンカーと、
中央に凹設した磁石設置溝と、該磁石設置溝の底部に設けて前記固定用アンカーのネジ穴と連通するボルト穴とを有する、固定盤と、
前記ネジ穴およびボルト穴を介して前記固定用アンカーと前記固定盤とを一体化する、本設ボルトと、
前記磁石設置溝に取り付けて、前記固定盤のコンクリート外への露出面と同一平面を維持するように前記磁石設置溝を閉塞する、位置表示磁石と、
前記固定盤の露出面に配置する、アルミ網と、を少なくとも含み、
前記本設ボルトでもって前記固定用アンカーと前記固定盤とを一体化してから、前記固定部における位置表示磁石の表側の磁極が全て同一となるように前記磁石設置溝に前記位置表示磁石をはめ込み、前記位置表示磁石の表面が前記固定盤のコンクリート外への露出面と同一平面となるよう前記磁石設置溝を閉塞し、
前記固定盤の露出面にアルミ網を配置し、
前記位置表示磁石の露出位置を含めて、コンクリートの外面を遮水シートで被覆し、
前記遮水シートの外面から検知具を接近させて、前記位置表示磁石の位置を検知し、
前記位置表示磁石の検知箇所に、遮水シートの外側から電磁溶着機を接近させて遮水シートを固定盤に溶着させることを特徴とする、
遮水シートの固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遮水シートの固定構造と固定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば最終処分場において、コンクリートの擁壁の内側に遮水シートを張り付ける工法が知られている。
その場合に、コンクリート内に固定用の固定盤を埋め込んでおき、その固定盤の表面をコンクリート面に露出させておく。
そして遮水シートの外側から電磁溶着機によって熱を与えて、遮水シートを固定盤に熱溶着させる方法を採用している。
このような方法では、コンクリート面に露出していた固定盤の表面は、すでに遮水シートによっておおわれてしまっているから、その位置を外部から目視することができない。
そのために遮水シートの外側から手で触って微妙な凹凸から固定盤の位置を推測するような方法を採用している。
あるいは電磁誘導などによって金属を探す装置を使用し、遮水シートの外側から固定盤の中心にあるステンレス製のネジの位置を探す方法も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−32206号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した従来の方法にあっては、次のような問題点がある。
<1> 遮水シートの裏の固定盤を手で触って探す方法は、遮水シートの下地は本来、凹凸があってはならないという前提で仕上げてある。したがってその凹凸はきわめて微妙であって、正しい位置を把握するには相当な熟練を要するものであった。
<2> 電磁誘導などの金属位置探査装置を使用した方法は、コンクリート擁壁の内部の鉄筋にも反応してしまい、正しい位置を検出できない場合も考えられる。
<3> もしこのような現象が発生すれば、固定盤の位置と電磁加熱の位置がずれてしまい、すべての固定盤に遮水シートを熱溶着できず、期待していた固定力が得られない場合も想定される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記のような課題を解決する本発明は、コンクリート構造物に、遮水シートを熱溶着して固定するための固定部を複数設けて構成する、遮水シートの固定構造であって、前記固定部は、ネジ穴を設けた、固定用アンカーと、中央に凹設した磁石設置溝と、該磁石設置溝の底部に設けて前記固定用アンカーのネジ穴と連通するボルト穴とを有する、固定盤と、前記ネジ穴およびボルト穴を介して前記固定用アンカーと前記固定盤とを一体化する、本設ボルトと、前記磁石設置溝に取り付けて、前記固定盤のコンクリート外への露出面と同一平面を維持するように前記磁石設置溝を閉塞する形状を呈する、位置表示磁石と、前記固定盤の露出面に配置する、アルミ網と、を少なくとも含み、各固定部に設けた位置表示磁石の表側の磁極が全て同一であることを特徴とするものである。
また、本発明は、コンクリート構造物に複数設けた固定部に、遮水シートを熱溶着して固定する、遮水シートの固定方法であって、前記固定部は、ネジ穴を設けた、固定用アンカーと、中央に凹設した磁石設置溝と、該磁石設置溝の底部に設けて前記固定用アンカーのネジ穴と連通するボルト穴とを有する、固定盤と、前記ネジ穴およびボルト穴を介して前記固定用アンカーと前記固定盤とを一体化する、本設ボルトと、前記磁石設置溝に取り付けて、前記固定盤のコンクリート外への露出面と同一平面を維持するように前記磁石設置溝を閉塞する、位置表示磁石と、前記固定盤の露出面に配置する、アルミ網と、を少なくとも含み、前記本設ボルトでもって前記固定用アンカーと前記固定盤とを一体化してから、前記固定部における位置表示磁石の表側の磁極が全て同一となるように前記磁石設置溝に前記位置表示磁石をはめ込み、前記位置表示磁石の表面が前記固定盤のコンクリート外への露出面と同一平面となるよう前記磁石設置溝を閉塞し、前記固定盤の露出面にアルミ網を配置し、前記位置表示磁石の露出位置を含めて、コンクリートの外面を遮水シートで被覆し、前記遮水シートの外面から検知具を接近させて、前記位置表示磁石の位置を検知し、前記位置表示磁石の検知箇所に、遮水シートの外側から電磁溶着機を接近させて遮水シートを固定盤に溶着させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の遮水シートの固定装置と方法は以上説明したようになるから次のような効果を得ることができる。
<1> 前記したように、固定盤の位置は遮水シートによって被覆されているから、外部から肉眼によってその位置を特定することはできない。
<2> 本発明の装置、方法であれば、遮水シートの外側から検知のための位置検知具を接近させるだけで固定盤に取り付けた位置表示磁石の位置を簡単に知ることができる。
<3> そのためにすべての固定盤に遮水シートを正確に固定することができ、設計通りの固定力で遮水シートをコンクリート構造物の表面に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の遮水シートの固定装置の実施例の説明図。
図2】固定盤に位置表示磁石を取り付ける状態の説明図。
図3】コンクリート構造物の表面を、遮水シートで被覆した状態の説明図。
図4】固定装置の位置を遮水シートの外から検知する状態の説明図。
図5】外部から遮水シートを固定盤に溶着する工程の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図面を参照にしながら本発明の遮水シートの固定装置と固定方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【実施例】
【0009】
<1>前提条件。
まず本発明の遮水シートの固定装置と装置を採用する条件について説明する。
本発明はたとえば廃棄物処理場のコンクリート構造物aの表面に遮水シートbを取り付ける場合に採用する。
そのために広いコンクリート構造物aの表面の多数の位置に固定盤1の表面を露出させる。
そしてこの固定盤1群に遮水シートbを熱溶着して固定するのであるが、前記したように固定盤1の位置は遮水シートbで被覆してしまうから肉眼で確認することができない。
【0010】
<2>固定盤。(図1
固定盤1は、コンクリート構造物aの表面付近に埋め込んであり、遮水シートbを熱溶着するための部材である。
そのために、固定盤1は少なくともその表面を遮水シートbと熱融着させるために、遮水シートbと同様の材料、あるいは遮水シートbと熱融着可能な材料で構成してあり、その表面をコンクリート構造物aの表面から外部に露出させてある。
固定盤1をコンクリート構造物aの内部に固定するために、コンクリート構造物a内部に固定用アンカー2を埋設し、そのアンカー2に本設ボルト3によって固定盤1を一体化して取り付ける構造を採用する。
固定盤1は円盤として形成することが好ましく、その中心には、前記の本設ボルト3を挿入する穴を、円盤の面とは直交する方向に開設してある。
ボルト3の頭部が固定盤1の平面よりも突設することがないように、頭部を収納する位置は、固定盤1に磁石設置溝11を凹設する。
この磁石設置溝11は短筒状、あるいは外向きに開いた円錐台状に形成し、その溝11を後述する磁石を設置するための凹部として利用する。
【0011】
<3>位置表示磁石。(図2
前記したように固定盤1の、コンクリート外への露出面には溝が凹設してあり、その溝内に位置表示磁石4をはめ込んで固定する。
この位置表示磁石4は一般の永久磁石であり、その外側の面は固定盤1の外側の平面と同一平面を維持する状態ではめ込んで取り付けることが可能である。
遮水シートbをコンクリート構造物aの表面に取り付けるためには、多数の位置に固定盤1を設け、各固定盤1ごとに位置表示磁石4を取り付けるが、この複数個所の位置表示磁石4において、すべて同一の極を外側に向けて取り付けることが好ましい。
たとえばすべての位置表示磁石4はN極を表に向けて設置する、という意味である。
【0012】
<4>アルミ網の設置。(図3
コンクリート構造物aの表面と、固定盤1のコンクリート構造物aからの露出面、およびと位置表示磁石4の表面はほぼ同一面を維持している。
この固定盤1の露出面を被覆する状態で、位置表示磁石4の正面を避けてアルミ網5を位置させる。
この設置は、固定盤1とアルミ網5を溶接すること、あるいは接着剤を使用することで行うことができる。
このアルミ網5を誘導加熱することで、固定盤1と遮水シートbのそれぞれ向き合った面を溶かして融着させるものである。
アルミ網5がなければ、固定盤1と遮水シートbとの熱融着を行うことができず、固定盤1の意味が失われる。
【0013】
<5>遮水シートの固定方法。
次に本発明の遮水シートbの固定方法について説明する。
【0014】
<6>固定盤の設置。
上記した固定用アンカー2をコンクリート構造物aの内部に埋め込んだ状態で固定盤1の表面をコンクリートa面に露出させて設置する。
固定盤1は、コンクリートa面において適当な間隔を介して多数分散して設置することになる。
各固定盤1にはその中央に位置表示磁石4が設置してある。
【0015】
<7>遮水シートの敷設。
コンクリート構造物aの上部から遮水シートbを垂れ下げてコンクリート構造物aの表面を被覆する。
遮水シートbでコンクリート構造物aの表面を被覆してしまうから、固定盤1やそこへ取り付けた位置表示磁石4の位置は外部から肉眼で見つけることはできない。
【0016】
<8>マーキング。(図4
遮水シートbの敷設が終わったら、遮水シートbの外面から位置検知具6を接近させて、固定盤1に取り付けた位置表示磁石4の位置を検知する。
この検知具6は、単なる永久磁石を検知磁石61として利用することができる。
遮水シートbの裏側に位置表示磁石4が位置していれば、検知具6の検知磁石61が反応して強い吸引力、または反発力を受けるからその検知は容易である。
検知具6は、検知磁石61を中心としてその周囲に定規としての円盤62を取り付ける。
この円盤定規62の外形を、固定盤1の露出面の外形とほぼ等しい形状に形成しておく。
すると検知した状態で定規円盤62の外形に沿ってペンなどの筆記具cで線を描けば、その範囲が固定盤1の範囲として、遮水シートbの表面に表示することができる。
ただしこのマーキング作業は不可欠ではなく、検知磁石61の反応を見たらすぐに次の溶着工程に移ることも可能である。
【0017】
<9>溶着工程。(図5
検知具6で検知できた位置表示磁石4の位置に、遮水シートbの外側から電磁溶着機7を接近させる。
そして電磁溶着機7に通電してアルミ網5を誘電加熱することで、固定盤1と遮水シートbのそれぞれ向き合った面を溶かして融着させる。
このような溶着作業は公知の方法である。
こうして遮水シートbを、コンクリート構造物aの表面に露出させた複数の固定盤1と溶着させることで、広い面積のコンクリート構造物aの面でも、確実に遮水シートbで被覆することができる。
その際に位置表示磁石4のすべてが同一の極を外側に向けて取り付けてあると反応が一律であるから検知作業が容易となる。
【符号の説明】
【0018】
1:固定盤
2:固定用アンカー
3:本設ボルト
4:位置表示磁石
5:アルミ網
6:位置検知具
7:電磁溶着機
a:コンクリート構造物
b:遮水シート
図1
図2
図3
図4
図5