(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年では、電子機器の小型化及び軽量化に伴い、プリント配線板の微細化及び高密度化が進んでいる。基板の金属表面にレジストパターンを強固に密着させるため、基板表面を粗化して表面粗度を高くした基板が増えてきた。しかしこのような基板及び上記湿式ラミネーション方法を用いて高解像度、高密度の基板を製造する時、未露光の感光性樹脂層が現像後基板に残る現象が生じ、ファインパターン形成に不具合が生じるケースがある。
【0006】
本発明は、特にレジストパターンの密着性を保つために基板表面粗度を高くした基板に対して、湿式ラミネーション方法を用いて高解像度、高密度のレジストパターンを形成し、これにより高精細の導体パターン及びこれを有する回路基板を形成する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究し実験を重ねた結果、以下の技術的手段により係る課題を解決できることを見出した。すなわち、表面粗度を高くした基板に対し、湿式ラミネーション方法を適用してレジストパターンを形成する際に、銅キレート化剤を含む湿潤剤を用いることが、上記課題の解決に適合しうることを見いだし、この知見に基づいて本発明をなすに至った。すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0008】
[1] 下記(A)〜(C)の工程、
(A)銅を含有する基板に、湿潤剤を介して感光性樹脂層を積層する積層工程、
(B)該積層された感光性樹脂層を露光する露光工程、
(C)該感光性樹脂層の未露光部を現像除去してレジストパターンを形成する現像工程、
を含むレジストパターンの製造方法であって、
該感光性樹脂層は、(a)アルカリ可溶性高分子、(b)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物、及び(c)光重合開始剤を含み、
該基板の該感光性樹脂層形成側の面の平均表面粗度Raは、0.25μm以上0.80μm以下であり、かつ
該湿潤剤は、銅キレート化剤を含む、レジストパターンの製造方法。
[2] 該銅キレート化剤は、1〜3個の窒素原子を有する5員又は6員の含窒素複素環式化合物である、上記[1]に記載のレジストパターンの製造方法。
[3] 該湿潤剤の質量基準での該銅キレート化剤の割合は、0.1質量%以上10質量%以下である、上記[1]又は[2]に記載のレジストパターンの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、表面粗度を高くした基板に対して湿式ラミネーション方法を適用する際に、感光性樹脂が現像後基板に残る現象が抑制され、高解像度、高密度のレジストパターンを形成でき、これにより高精細の導体パターン及びこれを有する回路基板を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための例示の形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施の形態に係るレジストパターンの製造方法は、(A)銅を含む基板に、湿潤剤を介して感光性樹脂層を積層する積層工程、(B)該積層された感光性樹脂層を露光する露光工程、及び(C)該感光性樹脂層の未露光部を現像除去してレジストパターンを形成する現像工程、を含むレジストパターンの製造方法であって、感光性樹脂層は、(a)アルカリ可溶性高分子、(b)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物、及び(c)光重合開始剤を含み、基板の感光性樹脂層形成側の面の平均表面粗度Raは、0.25μm以上0.80μm以下であり、かつ湿潤剤は銅キレート化剤を含む、方法である。
【0011】
感光性樹脂層内の高分子成分は一般的にカルボン酸を有するアクリル樹脂であり、Na
2CO
3水溶液等のアルカリ現像液中のアルカリ金属イオンがカルボン酸に配位することによって現像される。湿式ラミネーション方法で感光性樹脂積層体を基板に積層する時、基板の表面粗度が高くなることに従い、感光性樹脂層と基板の間に残る水分は多くなる。水分が多くなると、銅を含む基板の表面から発生する銅イオンが多くなり、またその水分が感光性樹脂層内に浸透し、感光性樹脂層内の高分子成分の流動性が増大する。そのため、感光性樹脂層内の高分子成分のカルボン酸に銅イオンが配位し、不溶性の銅化合物が生成しやすくなる。生成した不溶性の銅化合物は広い線幅の場合、現像とその後の水洗工程で洗い落とされ、レジストパターン形成に支障がないが、解像度60μm以下のファインパターンになると、洗い落とされることができず、現像できない現象が生じる。湿式ラミネーション方法に用いる湿潤剤が銅キレート化剤を含むようにすることで、基板表面の銅イオンがカルボン酸に配位するより容易にキレート化剤に捕捉され、かつキレート化剤と銅イオンの錯体は容易に水に溶解するため、銅イオンがアクリル樹脂中のカルボン酸に配位することによる不溶化が起こらず、高密度、高精細のレジストパターンが容易に製造できることを見出した。ここで言う解像度とは、配線パターンマスクのデザイン若しくはLDI露光機のデザインデータでレジストライン幅とスペース幅を1:1として露光し、現像した場合に正常に形成できる最小のレジストライン及びスペースの幅を示す。
【0012】
(A)銅を含む基板に、湿潤剤を介して感光性樹脂層を積層する積層工程
この工程では、例えば、銅を含む基板の表面に湿潤剤の薄膜を形成し、その直後に、感光性樹脂層を該湿潤剤を介して基板に積層することによって、基板上に湿潤剤を介して感光性樹脂層を積層する。湿潤剤の詳細は後述する。
【0013】
銅を含む基板としては、圧延銅箔を有する銅張積層板、電解銅箔を有する銅張積層板、上記基板の上に更に銅めっきをつけた基板、銅スパッタような方式でメタライジングした基板等が挙げられる。基板の感光性樹脂層形成側の面の平均表面粗度Raは、好ましくは0.25μm以上0.80μm以下である。平均表面粗度Raは算術平均粗さと同義であり、測定法の詳細は実施例の項で後述する。上記範囲の平均表面粗度Raは、基板とレジストパターンとの密着性を高める点で有利である。平均表面粗度Raは、密着性の観点から、好ましくは0.25μm以上であり、より好ましくは0.3μm以上、更に好ましくは0.35μm以上である。また、感光性樹脂層が基板表面の凹凸を埋め込める観点から、好ましくは0.80μm以下であり、より好ましくは0.70μm以下、更に好ましくは0.60μm以下である。
【0014】
上記の平均表面粗度Raは、例えば、基板表面への粗化液のスプレー、基板を粗化液に浸漬の方法で基板表面を粗化することで実現できる。
【0015】
湿潤剤の薄膜形成方法としては、基板に湿潤剤を噴霧する方法、基板を湿潤剤に浸漬する方法、湿潤剤を含ませたローラーで基板表面に湿潤剤を塗布する方法、湿潤剤を含ませた布で基板表面に湿潤剤を塗布する方法等が挙げられる。また、感光性樹脂層の基板への積層は、通常の加熱圧着ラミネーターを用いて行うことができる。例えば、感光性樹脂層及び支持フィルム、並びに任意に保護層(これは感光性樹脂層の支持フィルム側とは反対側に配置される)を有する感光性樹脂積層体を用いてもよい。この場合には、例えば保護層を剥がしながら感光性樹脂層を基板上にラミネートすることができる。
【0016】
(B)積層された感光性樹脂層を露光する露光工程
この工程では、露光機を用いて感光性樹脂層を活性光により露光する。フォトマスクを通しての露光の場合、露光量は、光源照度及び露光時間により決定され、光量計を用いて測定してもよい。露光工程においては、マスクレス露光方法を用いてもよい。マスクレス露光においてはフォトマスクを使用せず基板上に直接描画装置によって露光する。光源としては通常、波長350nm〜410nmの半導体レーザー又は超高圧水銀灯等が用いられる。描画パターンはコンピューターによって制御され、この場合の露光量は、露光光源の照度及び基板の移動速度によって決定される。
【0017】
(C)感光性樹脂層の未露光部を現像除去する現像工程
この工程では、露光後の感光性樹脂層における未露光部を、現像装置を用いて現像液により除去してレジストパターンを形成する。露光後、感光性樹脂層上に支持フィルムがある場合にはこれを除く。続いてアルカリ水溶液から成る現像液を用いて未露光部を現像除去し、レジストパターンを得る。アルカリ水溶液としては、Na
2CO
3、又はK
2CO
3等の水溶液が好ましい。これらは感光性樹脂層の特性に合わせて選択されるが、0.2質量%〜2質量%の濃度のNa
2CO
3水溶液が一般的である。該アルカリ水溶液中には、表面活性剤、消泡剤、現像を促進させるための少量の有機溶剤等を混入させてもよい。なお、現像工程における現像液の温度は、20℃〜40℃の範囲で一定温度に保つことが好ましい。
【0018】
更に、上記工程で得られた、レジストパターンが形成された基板をエッチングし、レジストを剥離することで、導体パターン、及びこれを有する回路基板を形成できる。
【0019】
<湿潤剤>
湿潤剤としては、感光性樹脂層を溶解させない物質が好ましい。この点で、例えば感光性樹脂層を溶解させる有機溶剤を含む湿潤剤は好ましくない傾向がある。取り扱いの容易さの観点から、湿潤剤は、純水、脱イオン水、電解水から選ばれる1種以上と、銅キレート化剤とを含むことが好ましい。
【0020】
湿潤剤は、銅キレート化剤を含む。好ましい態様において、銅キレート化剤は、1〜3個の窒素原子を有する5員又は6員の含窒素複素環式化合物である。これらの含窒素複素環式化合物は、銅イオンと高効率に結合できること、及びその後のエッチング工程で簡単に除去できる点で有利である。このような含窒素複素環式化合物としては、イミダゾール化合物、トリアゾール化合物、ピリジン化合物、及びピラゾール化合物から成る群から選ばれる1種以上の化合物を例示できる。
【0021】
イミダゾール化合物としては、具体的には、1−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾール、1−プロピルイミダゾール、1−イソプロピルイミダゾール、1−ブチルイミダゾール、1−イソブチルイミダゾール、1−sec−ブチルイミダゾール、1−tert−ブチルイミダゾール、1−ペンチルイミダゾール、1−イソペンチルイミダゾール、1−(2−メチルブチル)イミダゾール、1−(1−メチルブチル)イミダゾール、1−(1−エチルプロピル)イミダゾール、1−tert−ペンチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−エチル−2−メチルイミダゾール、2−エチル−1−メチルイミダゾール、2−メチル−1−プロピルイミダゾール、2−メチル−1−イソプロピルイミダゾール、1−ブチル−2−メチルイミダゾール、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、1−sec−ブチル−2−メチルイミダゾール、1−tert−ブチル−2−メチルイミダゾール、1,4−ジメチルイミダゾール、1,2,4−トリメチルイミダゾール、1,4,5−トリメチルイミダゾール、1−ビニルイミダゾール、1−アリルイミダゾール、1,2,4,5−テトラメチルイミダゾール、1−メチルベンズイミダゾール、イミダゾ[1,5−a]ピリジン等が挙げられる。
【0022】
トリアゾール化合物としては、具体的には、1−メチル−1,2,4−トリアゾール、1−エチル−1,2,4−トリアゾール、1−プロピル−1,2,4−トリアゾール、1−イソプロピル−1,2,4−トリアゾール、1−ブチル−1,2,4−トリアゾール、1−メチル−1,2,3−トリアゾール、1−エチル−1,2,3−トリアゾール、1−プロピル−1,2,3−トリアゾール、1−イソプロピル−1,2,3−トリアゾール、1−ブチル−1,2,3−トリアゾール、1−メチルベンゾトリアゾール、1,2,3−ベンゾトリアゾール、1−クロロ−1,2,3−ベンゾトリアゾール、ビス(N−2−エチルヘキシル)アミノメチレン−1,2,3−ベンゾトリアゾール、ビス(N−2−エチルヘキシル)アミノメチレン−1,2,3−トリルトリアゾール、ビス(N−2−ヒドロキシエチル)アミノメチレン−1,2,3−ベンゾトリアゾール、4−カルボキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾール、5−カルボキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾール、N−(N,N−ジ−2−エチルヘキシル)アミノメチレンカルボキシベンゾトリアゾール、N−(N,N−ジ−2−ヒドロキシエチル)アミノメチレンカルボキシベンゾトリアゾール、N−(N,N−ジ−2−エチルヘキシル)アミノエチレンカルボキシベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0023】
ピリジン化合物の具体例としては、ピリジン、4−メチルピリジン、4−エチルピリジン、4−プロピルピリジン、4−ブチルピリジン、4−ペンチルピリジン、キノリン、イソキノリン、4−メトキシピリジン等が挙げられる。
【0024】
ピラゾール化合物の具体例としては、1−メチルピラゾール、1−エチルピラゾール、1−プロピルピラゾール、1−イソプロピルピラゾール、1−ブチルピラゾール、1−ペンチルピラゾール等が挙げられる。
【0025】
以上の銅キレート化剤のうち、銅イオンと高効率に結合できる観点からより好ましい化合物として、ベンゾトリアゾール類としては、例えば、1,2,3−ベンゾトリアゾール、1−クロロ−1,2,3−ベンゾトリアゾール、ビス(N−2−エチルヘキシル)アミノメチレン−1,2,3−ベンゾトリアゾール、ビス(N−2−エチルヘキシル)アミノメチレン−1,2,3−トリルトリアゾール、ビス(N−2−ヒドロキシエチル)アミノメチレン−1,2,3−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0026】
また、以上の銅キレート化剤のうち、銅イオンと高効率に結合できる観点からより好ましい化合物として、カルボキシベンゾトリアゾール類としては、例えば、4−カルボキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾール、5−カルボキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾール、N−(N,N−ジ−2−エチルヘキシル)アミノメチレンカルボキシベンゾトリアゾール、N−(N,N−ジ−2−ヒドロキシエチル)アミノメチレンカルボキシベンゾトリアゾール、N−(N,N−ジ−2−エチルヘキシル)アミノエチレンカルボキシベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0027】
湿潤剤の質量基準での銅キレート化剤の割合は、銅イオンのキレート効果を良好に得るとともに後工程の現像液、エッチング液への銅キレート化剤の混入が少ない観点から0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。上記割合が0.1質量%以上1質量%以下であることが、後工程の現像液、エッチング液への銅キレート化剤の混入が少ない観点で、より好ましい。
【0028】
湿潤剤、及び特に銅キレート化剤の基板への適用量は、本実施の形態所期の銅キレート化効果が得られる程度であればよいが、例えば、0.01g/cm2以上1.0g/cm2以下であることが好ましい。なお、湿潤剤を含ませたローラーで基板表面に湿潤剤を塗布する方法で、湿潤剤の量の制御が容易に出来る。
【0029】
<感光性樹脂層の成分>
感光性樹脂層は、(a)アルカリ可溶性高分子、(b)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物、及び(c)光重合開始剤を含む。以下、各成分の例を説明する。
【0030】
(a)アルカリ可溶性高分子
感光性樹脂層は、(a)アルカリ可溶性高分子を含む。(a)アルカリ可溶性高分子は、典型的には、カルボキシル基含有単量体を共重合成分として含む、重量平均分子量が5,000〜500,000の熱可塑性共重合体である。熱可塑性共重合体の重量平均分子量は、5,000〜500,000であることが好ましい。熱可塑性共重合体の重量平均分子量は、ドライフィルムレジストの厚みを均一に維持し、現像液に対する耐性を得るという観点から5,000以上が好ましく、一方で、現像性を維持するという観点から500,000以下が好ましい。より好ましくは、熱可塑性共重合体の重量平均分子量は、20,000〜100,000である。本開示で、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィを用い、標準ポリスチレン換算で求められる値である。
【0031】
熱可塑性共重合体は、後述する第一の単量体の1種以上と後述する第二の単量体の1種以上とを含み、より典型的にはこれらから成る共重合成分を共重合させて得られることが好ましい。
【0032】
第一の単量体は、分子中にカルボキシル基を含有する単量体である。第一の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、フマル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸無水物、及びマレイン酸半エステルなどが挙げられる。中でも、特に(メタ)アクリル酸が好ましい。ここで、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを示す。以下同様である。
【0033】
第二の単量体は、非酸性であり、かつ分子中に重合性不飽和基を少なくとも1個有する単量体である。第二の単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル等のビニルアルコールのエステル類;(メタ)アクリロニトリル、スチレン、及び重合可能なスチレン誘導体などが挙げられる。中でも、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、スチレン、及びベンジル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0034】
本実施形態では、感光性樹脂層中の(a)アルカリ可溶性高分子の含有量(但し、感光性樹脂層の固形分総量に対してである。以下、特別に規定される場合以外は、各含有成分において同じ。)は、好ましくは、20質量%〜80質量%の範囲であり、より好ましくは、25質量%〜70質量%の範囲であり、さらに好ましくは、40質量%〜60質量%の範囲である。この含有量は、アルカリ現像性を維持するという観点から20質量%以上であることが好ましく、一方で、露光によって形成されるレジストパターンがレジストとしての性能を十分に発揮するという観点から80質量%以下であることが好ましい。
【0035】
(b)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物
(b)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物は、該エチレン性不飽和二重結合によって付加重合性を有することができる。
【0036】
(b)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の重量平均分子量は、700〜1,200であることが好ましい。なお、複数の(b)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物が感光性樹脂層中に含まれている場合には、(b)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の重量平均分子量とは、[(b)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の各々の重量平均分子量×対応する化合物の全化合物に対する配合率]の合計値をいう。(b)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の重量平均分子量を700〜1,200の範囲に調整することは、テンティング性、解像性を向上させる観点から好ましい。(b)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の重量平均分子量は、900〜1,200であることがより好ましい。
【0037】
(b)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物のより具体的な例として、例えば、4−ノニルフェニルヘプタエチレングリコールジプロピレングリコールアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコールアクリレート、無水フタル酸と2−ヒドロキシプロピルアクリレートとの半エステル化合物とプロピレンオキシドとの反応物(例えば日本触媒化学製、商品名OE−A 200)、4−ノルマルオクチルフェノキシペンタプロピレングリコール(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ジ(p−ヒドロキシフェニル)プロパンジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシペンタエトキシフェニル)プロパン、ペンタエリスリトールに平均4モルのエチレンオキサイドを付加したグリコールのテトラアクリレート、トリメチロールプロパンに平均3モルのエチレンオキサイドを付加したトリアクリレート(新中村化学製A−TMPT−3EO、製品名)、ヘキサメチレンジイソシアネートとノナプロピレングリコールモノメタクリレートとのウレタン化物等のウレタン基を含有する多官能基(メタ)アクリレート、及びイソシアヌル酸エステル化合物の多官能(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは、単独で使用しても、2種類以上併用してもよい。
【0038】
感光性樹脂層中の(b)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の含有量は、5質量%〜60質量%の範囲であることが好ましい。この含有量は、硬化不良、及び現像時間の遅延を抑えるという観点から5質量%以上であることが好ましく、一方で、コールドフロー及び硬化レジストの剥離遅延を抑えるという観点から60質量%以下であることが好ましい。また、この含有量は、15質量%〜60質量%の範囲であることがより好ましく、30〜50質量%の範囲であることがさらに好ましい。
【0039】
(c)光重合開始剤
(c)光重合開始剤としては、感光性樹脂の光重合開始剤として使用できる種々の物質を使用できるが、例えば、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、N−アリール−α−アミノ酸化合物、キノン類、芳香族ケトン類、アセトフェノン類、アシルフォスフィンオキサイド類、ベンゾイン又はベンゾインエーテル類、ジアルキルケタール類、チオキサントン類、ジアルキルアミノ安息香酸エステル類、オキシムエステル類、アクリジン類、ピラゾリン誘導体、N−アリールアミノ酸のエステル化合物、及びハロゲン化合物等が挙げられる。
【0040】
上記で列挙された(c)光重合開始剤は、単独で使用しても2種類以上併用してもよい。また、これらの(c)光重合開始剤の中でも、感光性樹脂層の感度、解像性等の観点から、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、N−アリール−α−アミノ酸化合物、キノン類、アクリジン類、及び/又はピラゾリン誘導体を用いることが好ましく、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、N−アリール−α−アミノ酸化合物及び/又はアクリジン類を用いることがより好ましい。
【0041】
(c)光重合開始剤の感光性樹脂層の全質量に対する割合は、0.01質量%〜20質量%であることが好ましい。この割合を0.01質量%以上にすることは充分な感度を得る観点から好ましく、この割合を0.1質量%以上にすることがより好ましく、0.5質量%以上にすることが更に好ましい。一方で、この割合を20質量%以下にすることは高い解像性を得て、かつ現像液中での凝集性を抑制する観点から好ましく、この割合を10質量%以下にすることがより好ましい。
【0042】
感光性樹脂層は、更に各種添加剤を含んでもよい。添加剤としては、染料、可塑剤等を例示できる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例及び比較例により本実施の形態を具体的に説明する。
【0044】
[実施例1]
<基板の粗化>
35μm圧延銅箔を積層した0.4mm厚の銅張積層板を用い、BTH−2085表面粗化液(板明社製)にて、スプレー圧が0.11MPa、温度が25℃、銅のエッチング量が1.0μmの条件で粗化処理した。基板の平均表面粗度(Ra)は、キーエンス社製「VK−9500」を用いてJIS B−0601−1994準拠モード、対物レンズ150倍、測定ピッチ0.01μmで測定したところ、Ra=0.47μmであった。
【0045】
<積層>
銅張積層板の上記粗化された面に、0.5質量%ベンゾトリアゾール(銅キレート化剤として)と水とを含む湿潤剤をスポンジローラーにより塗布することで、湿潤剤の薄膜を基板上に形成した。次いで、旭化成イーマテリアルズ(株)製「ADV−258」(保護層、感光性樹脂層、及びポリエチレンテレフタレートフィルムの積層体であるドライフィルムフォトレジスト)の保護層を剥がしながら、感光性樹脂層をホットロールラミネーター(旭化成エンジニアリング(株)製、AL−70)により、湿潤剤が塗布された基板上にラミネートした。ホットロール温度は90℃、エアー圧力は0.35MPaとし、ラミネート速度は1.5m/minとした。
【0046】
<露光>
直接描画式露光装置(日立ビア株式会社製、DE−1DH、主波長405nm)を用いて直接描画式露光方法により露光した。露光条件は16mJ/cm2以上24mJ/cm2以下の範囲とした。
【0047】
<現像>
ドライフィルムレジストのポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離した後、アルカリ現像機(フジ機工製、DF用現像機)を用いて30℃の1質量%Na
2CO
3水溶液を所定時間スプレーし、感光性樹脂層の未露光部分を最小現像時間の2倍の時間で溶解除去した。この際、未露光部分の感光性樹脂層が完全に溶解するのに要する最も少ない時間を最小現像時間とした。
【0048】
<評価>
硬化レジストパターンにおいて、200倍光学顕微鏡を用いて、未露光部分の基材表面に残留レジストがなく、硬化レジスト同士の密着もない、正常に形成されている最小パターン幅を評価した。この結果、感光性樹脂が現像後基板に残る現象が見られず、解像度は30μmに達することが分かった。
【0049】
[比較例1]
湿潤剤を純水に変える以外は実施例1と同じ方法でレジストパターン形成を行った。現像後、感光性樹脂が現像後基板に残る現象が見られ、解像度は80μmしか得られなかった。
[比較例2]
銅のエッチング量が0.4μmの条件で粗化処理し、基板の平均表面粗度(Ra)が0.2μmに変える以外は実施例1と同じ方法でレジストパターン形成を行った。現像後、感光性樹脂が現像後基板に残る現象が見られないが、感光性樹脂と基板の密着性が弱く、解像度は80μmしか得られなかった。