特許第6397249号(P6397249)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6397249電力システムにおける動揺角推定のためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6397249
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】電力システムにおける動揺角推定のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20180913BHJP
   H02J 3/24 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   H02J3/00 170
   H02J3/24
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-154365(P2014-154365)
(22)【出願日】2014年7月30日
(65)【公開番号】特開2015-37378(P2015-37378A)
(43)【公開日】2015年2月23日
【審査請求日】2017年7月14日
(31)【優先権主張番号】13/968,684
(32)【優先日】2013年8月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・パン
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・ジェームズ・プレマーラニ
【審査官】 赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−046908(JP,A)
【文献】 特開平11−289669(JP,A)
【文献】 特開昭61−170667(JP,A)
【文献】 特開平10−257674(JP,A)
【文献】 特開平08−265979(JP,A)
【文献】 特開平10−336883(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00−5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電端発電機の内部電圧(E)と受電端発電機の内部電圧(E)の間の動揺角の少なくとも第1の範囲に対して、
(i)前記発電端発電機の電圧振幅(V)を取得するステップと、
(ii)前記発電端発電機の電流振幅(I)を取得するステップと、
(iii)前記発電端発電機と前記受電端発電機の間の全リアクタンス(X)を推定するステップと、
(iv)前記取得したV、前記取得したI、および前記推定したXの関数として、前記Eと前記Eの間の第1の動揺角(θ)を推定するステップと、
(v)前記推定したθに基づいて電力動揺状態を検出するステップと、
(vi)前記取得したIを電流閾値(Imin)と比較するステップと、
(vii)前記取得したIが前記Imin以上であるときに、ステップ(iv)、および(v)を実行するステップと、
を含み、
前記取得したIが前記Imin未満であるときに、前記Eと前記Eの間の動揺角の少なくとも第2の範囲に対して、
前記取得したVおよび前記取得したIに基づいて有効電力値(P)を確定し、
前記発電端発電機から前記受電端発電機に伝送された電力の最大振幅(Pmax)を確定し、
前記確定されたPおよび前記確定されたPmaxの関数として、前記Eと前記Eの間の第2の動揺角(θ)を推定し、および
前記推定したθに基づいて前記電力動揺状態を検出する、
方法。
【請求項2】
前記ステップ(iii)が、前記電力動揺状態時に確定された電流の最大振幅(Imax)、および前記電力動揺状態時に確定された有効電力の最大振幅(Pmax)の関数として前記Xを推定するステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記Vと前記Iの間の負荷角(α)を取得するステップをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップ(iv)が、前記取得したαの関数として前記θを推定するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記取得したVおよび前記取得したIに基づいて有効電力値(P)を確定するステップと、
前記取得したIおよび前記推定したXに基づいて無効電力値(Q)を確定するステップと、
前記確定されたPおよび前記確定されたQの関数として動揺角の変化率
【数1】
を推定するステップと
をさらに含む、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記ステップ(v)が、前記推定した
【数2】
に基づいて前記電力動揺状態を検出するステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
電力動揺検出装置であって、
発電端発電機の内部電圧(E)と受電端発電機の内部電圧(E)の間の動揺角の少なくとも第1の範囲に対して、
前記発電端発電機の電圧振幅(V)を取得するように構成された電圧確定モジュールと、
前記発電端発電機の電流振幅(I)を取得するように構成された電流確定モジュールと、
前記発電端発電機と前記受電端発電機の間の全リアクタンス(X)を推定するように構成されたリアクタンス推定モジュールと、
前記取得したV、前記取得したI、および前記推定したXの関数として、前記Eと前記Eの間の第1の動揺角(θ)を推定するように構成された動揺角推定モジュールと、
前記推定したθに基づいて電力動揺状態を検出するように構成された検出モジュールと、
前記取得したIを電流閾値(Imin)と比較するように構成された比較モジュールであって、前記取得したIが前記Imin未満であるときに、非活動化信号を前記動揺角推定モジュールおよび検出モジュールに、それらの非活動化のために送るように構成された比較モジュールと、
を備え、
前記取得したIが前記Imin未満であるときに、前記Eと前記Eの間の動揺角の少なくとも第2の範囲に対して、
前記取得したVおよび前記取得したIに基づいて有効電力値(P)を確定するように構成された有効電力確定モジュールと、
前記発電端発電機から前記受電端発電機に伝送された電力の最大振幅(Pmax)を確定するように構成された最大電力確定モジュールと
をさらに備え、
前記動揺角推定モジュールは、前記確定されたPおよび前記確定されたPmaxの関数として、前記Eと前記Eの間の第2の動揺角(θ)を推定するように構成され、
前記検出モジュールは、前記推定したθに基づいて前記電力動揺状態を検出するように構成される、
電力動揺検出装置。
【請求項8】
前記リアクタンス推定モジュールが、前記電力動揺状態時に確定された電流の最大振幅(Imax)、および前記電力動揺状態時に確定された有効電力の最大振幅(Pmax)の関数として前記Xを推定するように構成される、請求項7に記載の電力動揺検出装置。
【請求項9】
前記Vと前記Iの間の負荷角(α)を取得するように構成された負荷角確定モジュールをさらに備える、請求項7または8に記載の電力動揺検出装置。
【請求項10】
前記動揺角推定モジュールが、前記取得したαの関数として前記θを推定するように構成される、請求項9に記載の電力動揺検出装置。
【請求項11】
前記取得したVおよび前記取得したIに基づいて有効電力値(P)を確定するように構成された有効電力確定モジュールと、
前記取得したIおよび前記推定したXに基づいて無効電力値(Q)を確定するように構成された無効電力確定モジュールと、
をさらに備え、
前記動揺角推定モジュールは、前記確定されたPおよび前記確定されたQの関数として動揺角の変化率
【数3】
を推定するように構成される、
請求項7から10のいずれかに記載の電力動揺検出装置。
【請求項12】
前記検出モジュールが、前記推定した
【数4】
に基づいて前記電力動揺状態を検出するように構成される、請求項11に記載の電力動揺検出装置。
【請求項13】
受電端発電機と、
前記受電端発電機に電気的に結合されるように構成された発電端発電機と、
電力動揺検出装置であって、
前記発電端発電機の内部電圧(E)と前記受電端発電機の内部電圧(E)の間の動揺角の少なくとも第1の範囲に対して、
前記発電端発電機の電圧振幅(V)を取得するように構成された電圧確定モジュールと、
前記発電端発電機の電流振幅(I)を取得するように構成された電流確定モジュールと、
前記発電端発電機と前記受電端発電機の間の全リアクタンス(X)を推定するように構成されたリアクタンス推定モジュールと、
前記取得したV、前記取得したI、および前記推定したXの関数として、前記Eと前記Eの間の第1の動揺角(θ)を推定するように構成された動揺角推定モジュールと、
前記推定したθに基づいて電力動揺状態を検出するように構成された検出モジュールと、
を備える、電力動揺検出装置と、
を備え、
前記Eと前記Eの間の動揺角の少なくとも第2の範囲に対して、前記電力動揺検出装置は、
前記取得したIを電流閾値(Imin)と比較するように構成された比較モジュールと、
前記取得したIが前記Imin未満であるときに、
前記取得したVおよび前記取得したIに基づいて有効電力値(P)を確定するように構成された有効電力確定モジュールと、
前記発電端発電機から前記受電端発電機に伝送された電力の最大振幅(Pmax)を確定するように構成された最大電力確定モジュールと
をさらに備え、
前記動揺角推定モジュールは、前記確定されたPおよび前記確定されたPmaxの関数として、前記Eと前記Eの間の第2の動揺角(θ)を推定するように構成され、
前記検出モジュールは、前記推定したθに基づいて前記電力動揺状態を検出するように構成される、
電力システム。
【請求項14】
前記動揺角推定モジュールが、前記Vと前記Iの間の負荷角(α)の関数として前記θを推定するように構成される、請求項13に記載の電力システム。
【請求項15】
前記電力動揺検出装置が、
前記取得したVおよび前記取得したIに基づいて有効電力値(P)を確定するように構成された有効電力確定モジュールと、
前記取得したIおよび前記推定したXに基づいて無効電力値(Q)を確定するように構成された無効電力確定モジュールと
をさらに備え、
前記動揺角推定モジュールは、前記確定されたPおよび前記確定されたQの関数として動揺角の変化率
【数5】
を推定するように構成され、前記検出モジュールは、前記推定した
【数6】
に基づいて前記電力動揺状態を検出するように構成される、
請求項13または14に記載の電力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力動揺推定のための方法、装置およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力システムは、システムに対する、発生される有効電力と消費される有効電力との間に平衡が存在するときは、定常状態の条件下で動作する。電力システム擾乱は機械ロータ角度の振動を引き起こす場合があり、これにより結果として、システム発電機の内部電圧が互いに対してスリップするときに電力動揺などの状態が生じ得る。電力システム障害、ライン切替え、発電機切断、または大きな負荷の喪失もしくは突然の印加が、電力システムにおいて電力動揺事象を引き起こし得るシステム擾乱の例である。擾乱および電力システム制御処置の程度に応じてシステムは安定状態に戻る場合があり、または負荷角の大きな分離を受け、最終的に同期を失う場合がある。安定または不安定な大きな電力動揺により、システム内の異なる場所において望ましくない継電動作が生じる場合があり、これはシステム擾乱を悪化させ、結果として重大な電源異常または停電が生じ得る。
【0003】
さらに、不安定な電力動揺の影響として、電力システム内の相互接続された発電機の非同期動作により、回路遮断器の制御されないトリップを起動する場合があり、結果として機器の損傷が生じ、公益事業者に対する安全上の懸念をもたらす。したがって広範囲に及ぶ機器の損傷およびシステムの重要部分の運転停止を避けるために、非同期なシステム領域は速やかにかつ動的に互いから分離することが必要となり得る。これらのリスクを抑制するために、スリップサイクルの半分以内で、システムの残りから発電機を隔離するために、発電機継電器などの、国際標準による最適な発電機保護装置を配置することが必要である。国際標準を満たす必要性は、選択的および信頼性のある継電動作を確実にするための保護技術者に対する課題となる。
【0004】
従来の継電手法では、電力動揺を検出するために、発電機端子において求められたシステムインピーダンスにおける変動が分析される。電力動揺ブロック(PSB)、および同期外れトリップ(OST)を含む、様々なインピーダンスをベースとする保護手法が現在用いられている。しかしながらこれらの保護手法は、選択的および信頼性のある継電動作のための最適な設定に至るためには、広範囲の電力システム安定性の考察が必要になり得る。保護技術者は通常、システム構成または動作ダイナミクス、たとえば導入段階時に、または動的に運用段階時に、伝送および分配レイアウトにおける変化に対応するように適合されない予備的な設定を用いる。広範囲の考察および動的でない事前の設定は結果として、選択的に、確実に、かつ高信頼度で電力動揺を検出し、このような事象時に発電機を隔離することができない保護装置となり得る。
【0005】
他の知られている継電手法は、電力動揺を検出するために動揺中心電圧(SCV)を推定する。このような手法は、リアルタイムの電力システムのダイナミックスが考慮されない近似推定を用いる。いくつかの継電手法ではSCV推定のために、発電端から遠隔の場所にある受電端における1つまたは複数の発電機から、発電端においてデータを取得するために、光ファイバまたは全地球測位システム(GPS)通信などの高速通信ネットワークが用いられる。しかしながらこのような手法は、高速通信ネットワークの実装および保守に関連するコストによる経済的な課題を有する。SCVのためのいくつかの手法は、電力動揺を検出するために、発電機の内部電圧と端子電圧との間のロータ角度を直接測定する。直接の測定値がない場合は、電力動揺状態を判断することは難しい。
【0006】
1つの知られているSCV手法では、2電源等価システムのSCVと動揺角(θ)との間の関係は、以下の式により求めることができる。
【0007】
【数1】
【0008】
ただしEは、発電端発電機の内部電圧である。
【0009】
このような手法では電力動揺は、SCVの変化率を計算することによって検出することができる。SCVの時間導関数は以下の式によって表される。
【0010】
【数2】
【0011】
この式では、sin(θ/2)が1に近い場合は、θは180°前後(たとえば90°と180°の間)となる。したがって上記の式は、θの値が180°前後のときに、電力動揺を検出するために用いることができる。しかしながら0°と90°の間のθの値の場合は、上記の式では結果としてsin(θ/2)がゼロに近くなる。言い換えればこの手法は、θの値のより小さい範囲(たとえば0°から90°の間)の場合は適さない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第8369055号明細書
【発明の概要】
【0013】
一実施形態によれば、発電端発電機の内部電圧(ES)と受電端発電機の内部電圧(ER)との間の動揺角の、少なくとも第1の範囲に対して電力動揺を検出する方法が提供される。本方法は、発電端発電機の電圧振幅(VS)、および発電端発電機の電流振幅(IS)を取得するステップを含む。本方法はさらに、発電端発電機と受電端発電機との間の全リアクタンス(X)を推定するステップと、取得したVS、取得したIS、および推定したXの関数として、ESとERとの間の第1の動揺角(θ)を推定するステップとを含む。本方法はさらに、推定したθに基づいて電力動揺状態を検出するステップを含む。
【0014】
本発明の実施形態の上記その他の特徴および態様は、諸図面を通して同様な文字は同様な部分を表す添付の図面を参照して以下の詳細な説明を読めば、より良く理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態による、メッシュ構成にて相互接続された複数の発電機を有する電力システムを示す図である。
図2】一実施形態による電力動揺検出装置のブロック図である。
図3】本発明の一実施形態による2電源システム、および2電源システムのベクトルフェーザ表示を表す図である。
図4】本発明の一実施形態による、電力システムにおける電力動揺を検出する方法を示す流れ図である。
図5】本発明の他の実施形態による、電力システムにおける電力動揺を検出する方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
別段の規定がない限り、本明細書で用いられる技術的および科学的用語は、本開示が属する技術分野の一当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で用いられる「第1」、「第2」などの用語は順序、量、または重要性を示すものではく、1つの要素を別の要素から区別するために用いられる。また「a」および「an」という用語は数量の限定を示すものではなく、参照される品目が少なくとも1つあることを示すものである。「or」という用語は包含的であり、列挙された品目の1つ、いくつか、またはすべてを意味することが意図される。本明細書における「含む(including)」、「備える(comprising)」、または「有する(having)」、およびそれらの変形などの用語の使用は、以降に列挙される品目およびそれらの等価物、ならびに追加の品目を包含するものである。「モジュール」、「コントローラ」、「処理装置」、「記憶装置」、および「入力/出力(I/O装置)」という用語は、能動的または受動的または両方の、単一の構成要素または複数の構成要素を含むことができ、述べられた機能を実現するように一緒に接続または結合される。
【0017】
さらに説明の目的で、本発明の様々な実施形態の十分な理解を得るために、特定の数、材料、および構成が述べられる。当業者には種々の実施形態からの様々な特徴の交換可能性が認識されよう。同様に述べられる様々な方法のステップおよび特徴、ならびにそれぞれのこのような方法および特徴に対する他の知られている等価物は、一当業者によって、本開示の原理によるさらなる組立体および技法を構成するようにうまく組み合わせることができる。
【0018】
本発明の様々な実施形態は、局所測定値および1つまたは複数のシステムパラメータに基づいて、電力システムにおける電力動揺状態(本明細書では「電力動揺」と呼ばれる)を検出するための装置および方法を提供する。様々な実施形態では装置および方法は、電気システムにおける発電端発電機の電圧振幅(VS)、および発電端発電機の電流振幅(IS)を含む局所測定値を取得することができる。様々な実施形態はさらに、たとえば電気システムにおける発電端発電機と受電端発電機との間の全リアクタンス(X)などの、1つまたは複数のシステムパラメータを推定することができる。いくつかの実施形態では、発電端発電機の内部電圧(ES)と、受電端発電機の内部電圧(ER)との間の第1の動揺角(θ)は、取得した電圧VS、取得した電流振幅IS、および推定した全リアクタンスXの関数として推定することができる。一部の実施形態では次いで電力動揺状態は、推定したθの値に基づいて検出することができる。一実施形態では電力動揺を検出するこの技法は、後に述べられるように、ESとERとの間の動揺角の少なくとも第1の範囲に対して実施することができる。また関連するシステムも提示される。
【0019】
一実施形態では電力動揺検出装置、および関連する電力システムが提示される。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態による、メッシュ構成にて相互接続された複数の発電機104および108を有する、電力システム100(本明細書では「システム100」と呼ばれる)を示す。システム100は、交流(AC)電力網またはマイクログリッドを相互接続するために用いることができる。図1に示されるようにいくつかの実施形態では、システム100は、発電端102と、1つまたは複数の受電端104とを含むことができる。本明細書では「発電端」という用語はシステム100の送電端を指すために用いられ、「受電端」という用語は、非限定的に伝送ケーブルまたは送電線などの伝送リンク106を通じて、発電端102から伝送された電力を受け取る端部を指す。図1に示されるように、発電端102は発電機108(本明細書では「発電端発電機108」と呼ばれる)を含み、各受電端104は、発電端発電機108に電気的に結合されるように構成された発電機110(本明細書では一緒にして「受電端発電機110」と呼ばれる)を含む。当業者には電力動揺は、任意の2つの発電機の間(たとえば発電端発電機108と、受電端発電機110のいずれかとの間)、または発電機の2つの群の間で起こり得ることが明らかであろう。図1は3つの受電端発電機110を示すが、本発明の範囲から逸脱することなく任意の数の受電端発電機を配置することができる。同様に本発明のいくつかの実施形態によれば、図1に示される単一の発電端発電機108の代わりに、システム100には複数の発電端発電機を配置することができる。このような実施形態では、あらゆる発電端発電機は、後に述べられるような保護装置を含むまたは保護装置に結合することができる。
【0021】
電力動揺は、1つの電源の位相角(本明細書では「動揺角」と呼ばれる)が、同じ電気システム回路網内の別の電源に対して時間上で変化し始めるときに観察されるシステム現象である。いくつかの実施形態では、発電端発電機108と、受電端発電機110の1つとが、2つの電源となり得る。「動揺角(θ)」という用語は本明細書では、発電端発電機108の内部電圧(ES)と、受電端発電機110のいずれかの内部電圧(ER)との間の位相角分離を指す。2電源システムが安定性を失い、同期外れ(OOS)状態になったときは、2つの発電機、たとえば発電端発電機108と、受電端発電機110のいずれかとの角度差(θで表される)は、時間の関数として増加し得る。したがっていくつかの実施形態によれば、θは電力システムにおける電力動揺状態についての情報をもたらす。
【0022】
システム100に示される構成要素は例示であり、システム100はまた非限定的に、たとえば発電端発電機108に接続されたタービン、自動電圧調節器(AVR)、昇圧変圧器、ライン側遮断器、および1つまたは複数の電気負荷などの様々な他の構成要素(図1には示さず)を含むことができる。
【0023】
発電端102はさらに発電端発電機108の電圧振幅(VS)を測定するための変圧器114と、発電端発電機108の電流振幅(IS)を測定するための変流器116とを含む。図1には単一の変圧器114および単一の変流器116が示されるが、当業者には、ISおよびVSなどの局所パラメータを検知するために、システム100には任意の数の変流器および変圧器を配置できることが理解されよう。「局所測定値」という用語は本明細書では、受電端発電機110と通信することを必要とせずに、発電端102内で測定できるパラメータを指す。
【0024】
図1に示されるように、システム100はさらに、発電端102において回路遮断器(CB)118を含む。いくつかの実施形態では、回路遮断器118は、発電端発電機108を受電端発電機110に電気的に結合する/受電端発電機110から分断するように構成される。一実施形態では回路遮断器118は、52G発電機回路遮断器である。回路遮断器118は、発電端発電機108の接続状態が発生するように構成することができる。本明細書で用いられる「接続状態」とう用語は、発電端発電機108がシステム100の残りに電気的に接続されているか、またはシステム100の残りから切断されているかを示す、発電端発電機108の状態を指す。一実施形態では、ハイ信号(たとえば2進数1)は回路遮断器118が閉じられ、発電端発電機108がシステム100に接続されていることを示すことができ、ロー信号(たとえば2進数0)は回路遮断器118が開かれ、発電端発電機108がシステム100から電気的に切断されていることを示すことができる。いくつかの実施形態では、接続状態は、他の手段を用いて判断することができる。1つの例示的実施形態では、電流振幅ISの存在または欠如などの電流フィードバックを用いて、発電端発電機108の接続状態が判断される。他の実施形態では電流フィードバックと、回路遮断器位置フィードバックとの組合せを用いて、発電端発電機108の接続状態が判断される。いくつかの実施形態では、回路遮断器118、変圧器114、および変流器116は、リアルタイムで対応するデータ(接続状態、VS、ISなど)を測定する。後に述べられるように、システム100はまた、発電端発電機108と、受電端発電機110のいずれかとの間の全リアクタンス(X)などの、システムパラメータを推定することができる。いくつかの実施形態によれば、推定はリアルタイムで行うことができる。一実施形態では、リアルタイムとは、たとえばミリ秒またはマイクロ秒程度での瞬時の事象の発生を指すことができる。別の実施形態ではリアルタイムとは、瞬時のリアルタイムに対する所定の許容差(たとえば2%)を有する近似的リアルタイムとすることができる。データが近似的リアルタイムで受け取られる1つの例示的実施形態では、データを見る(たとえばI/O端末において)公益事業者または保護技術者は、データの表示時の遅延を知覚することはできない。
【0025】
図1に示されるように、システム100はさらに、発電端102において電力動揺検出装置120(本明細書では「装置120」と呼ばれる)を含む。本明細書で用いられる「電力動揺検出装置」という用語は、電力動揺を検出し、電力動揺状態時に発電端発電機108を保護するように構成された構成要素を指す。この保護により、このような状態が検出されたときに、回路遮断器118をトリガしてトリップさせる、または警報をトリガすることによって達成することができる。回路遮断器118をトリップさせることにより、結果として発電端発電機108をシステム100の残りから隔離または分断することができる。いくつかの実施形態によれば装置120は、非限定的にデジタルの、数値的、静的、または電気機械的保護継電器などの保護継電器とすることができる。
【0026】
さらに図1に示されるように、装置120は、処理装置122とI/O装置124とを含むことができ、処理装置122は、I/O装置124において受け取られた、およびI/O装置124から送出されたデータを分析することができる。処理装置122は、たとえば1つまたは複数の特定用途向けプロセッサ、グラフィックス処理装置、デジタル信号プロセッサ、マイクロコンピュータ、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、またはシステム100の1つまたは複数の構成要素と通信する他の適切な装置を含むことができる。I/O装置124は、公益事業者または保護技術者が、任意のタイプの通信リンクを用いて装置120または1つまたは複数の通信装置と通信することを可能にする、1つまたは複数のヒューマンI/O装置を備えることができる。いくつかの実施形態では、I/O装置124は、変圧器114、変流器116、および回路遮断器118とインターフェースして、それぞれ局所パラメータ(VS、ISなど)、および接続状態を受け取る。一部の実施形態によればVSおよびISは、アナログ入力、たとえば正弦波形または方形波パルスの形とすることができる。一実施形態ではI/O装置124は、ノイズをフィルタし、次いでフィルタされたアナログ入力をデジタルサンプルに変換するように構成される。他の実施形態では電力動揺状態時に、I/O装置124は、警報をトリガするように、またはトリップコマンドを回路遮断器118に送って回路遮断器118をトリップさせるように、または両方を行うように構成される。
【0027】
装置120はさらに、保護装置112と記憶装置126とを含む。いくつかの実施形態では、保護装置112は、記憶装置126内に存在する動揺検出方式などのプログラムコードを実行する。いくつかの実施形態では、保護装置112は、システム100が、発電端発電機108と受電端発電機110のいずれかとの間の電力動揺状態に近付きつつあるかどうかを検出するための、動揺検出方式が設けられた継電器である。いくつかの代替的実施形態では処理装置122は、この動揺検出方式を実行することができる。一部の実施形態では処理装置122は、ハードディスク装置、フロッピディスク装置、コンパクトディスク−リード/ライト(CD−R/W)装置、デジタル多用途ディスク(DVD)装置、フラッシュドライブ、または固体記憶装置などの記憶装置126に、受け取り、処理し、送出したデータを記憶し、または記憶装置126から読み出す。いくつかの実施形態では、処理装置122は、保護装置112と統合することができる。
【0028】
本発明の様々な実施形態は、VS、IS、およびXを含むリアルタイムデータ測定値に基づいて電力動揺状態を検出するように構成された装置120内に、動揺検出方式を配置する。本明細書では「動揺検出方式」という用語は、電力動揺状態を検出し、次いで不安定な電力動揺時には選択的に、確実に、かつ高信頼度で発電端発電機108を保護し、安定な電力動揺時には作動中の発電端発電機108を維持するように規定された論理部を指す。いくつかの実施形態では、動揺検出方式は、システム100内の擾乱が不安定な電力動揺であると判断したときは、装置120は警報、発電機回路遮断器トリップ処置、または両方をトリガすることによって発電端発電機108を保護する。動揺検出方式の様々な実施形態については、後に図2に関連して詳しく述べられる。
【0029】
装置120はさらに時間同期装置134を備えることができ、時間同期装置134は、外部時間同期装置から時間同期信号を受け取って、装置120がそれによって絶対時間と同期することができる、装置120の内部クロックを同期させるように構成することができる。本発明の範囲から逸脱することなく、全地球測位システム(GPS)またはタイミングプロトコルなどの、データを時間同期するための任意の知られている技法を用いることができる。いくつかの実施形態では、装置120の様々な構成要素は、装置120内の通信バス136を通じて互いに通信することができる。
【0030】
図1に示される1つまたは複数の構成要素は、単一の構成要素に統合することができる。たとえば時間同期装置134は、I/O装置124と統合することができる。また装置120の構成要素の機能は、複数の構成要素にわたって分離または分散することができる。たとえば保護装置112の論理部の一部またはすべては、記憶装置126に記憶され、処理装置122において処理することができる。いくつかの実施形態では、I/O装置124の機能は、保護装置112の1つまたは複数のモジュールに統合することができ、この場合はI/O装置124は省くことができる。
【0031】
本明細書で用いられる装置120内の「装置(unit)」という用語は、ソフトウェアを有するまたは有しない、任意のソリューションを用いて、それらに関連して述べられた機能を実現するハードウェアの構成を指す。また本明細書では「モジュール」という用語は、処理装置122が、任意のソリューションを用いて、それらに関連して述べられた処置を実現することを可能にするプログラムコードを指す。それに関わらず、2つ以上の装置、モジュール、またはシステムは、それらのそれぞれのハードウェアまたはソフトウェアの一部またはすべてを共有することができる。さらに本明細書で述べられるプロセスを実行しながら、装置120は、任意のタイプの通信リンクを用いて1つまたは複数の他のコンピューティング構成要素と通信することができる。いくつかの実施形態では、通信リンクは、光ファイバなどの有線リンク、または無線リンクを含むことができるが、それらに限定されない。さらに、システム100は1つまたは複数のタイプの回路網の任意の組合せをさらに含むことができ、または様々なタイプの伝送技法およびプロトコルの任意の組合せを利用することができる。
【0032】
図2は、本発明の一実施形態による電力動揺検出装置200(本明細書では「装置200と呼ばれる」)のブロック図である。装置200は、図2には保護装置112の詳細図が示されることを除いて装置120と同様である。いくつかの実施形態では、装置120の様々な構成要素は、装置200において等しく実装することができる。図2に示されるように、いくつかの実施形態では、保護装置112は、I/O装置124に結合され、発電端発電機108の電圧振幅(VS)を取得するように構成された、電圧確定(VD)モジュール202を含む。保護装置112はさらに、I/O装置124に結合され、発電端発電機108の電流振幅(IS)を取得するように構成された電流確定(CD)モジュール204を含む。一実施形態では、VDモジュール202およびCDモジュール204は、変圧器114および変流器116からそれぞれVSおよびISを受け取るように構成される。別法として別の実施形態では、VDモジュール202およびCDモジュール204は、VSおよびISを直接測定するように、それぞれ変圧器114および変流器116に統合することができる。さらに別の実施形態では、VSおよびISなどのフェーザ値を測定するために、フェーザ測定装置(PMU)を用いることができる。このような一実施形態では変圧器114および変流器116は省くことができ、またはPMUに追加して実装することができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、図2に示されるように保護装置112はさらに、I/O装置124に結合され、発電端発電機108と受電端発電機110のいずれかとの間の全リアクタンス(X)を推定するように構成された、リアクタンス推定(RE)モジュール206を含む。本明細書では様々な実施形態は、インピーダンスは一般に、抵抗の代わりにリアクタンスによって占められるので、Xを、電力動揺を検出するための全リアクタンスと見なす。1つの例示的実施形態では、θが180°前後を動揺する電力動揺が存在する場合は、REモジュール206は、電力動揺時に確定された電流の最大振幅(Imax)と、電力動揺時に確定された有効電力の最大振幅(Pmax)との関数として、Xを推定する。1つのこのような実施形態では、Xは動揺状態の記録された履歴に基づいて推定され、それを用いてImaxおよびPmaxが確定される。ImaxおよびPmaxが分かった後に、以下の式を用いてXが推定される。
【0034】
【数3】
【0035】
本発明の範囲から逸脱することなく、Xを推定するために任意の他の知られている適切な推定技法を用いることができる。たとえばXは、システムトポロジおよびラインパラメータを用いて推定することができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、図2に示されるように保護装置112はさらに、I/O装置124に結合され、VSとISとの間の負荷角(α)を取得するように構成された、負荷角確定(LAD)モジュール208を含む。1つの例示的実施形態では、αはPMUを用いて得られるフェーザ値の一部として取得することができる。
【0037】
いくつかの実施形態では、図2に示されるように保護装置112はさらに、モジュール202、204、206、および208に結合された、動揺角推定(SAE)モジュール210を含む。一実施形態ではSAEモジュール210は、ESとERとの間の第1の動揺角(θ)を、取得したVS、取得したIS、および推定したXの関数として推定するように構成される。別の実施形態ではSAEモジュール210は、θの値を、取得したVS、取得したIS、および推定したXに加えて、取得したαの関数として推定するように構成される。θの値は、以下で表される有効電力(P)および電流(IS)の式から導出することができる。
【0038】
【数4】
【0039】
様々な実施形態によれば、θに対する式を導き出すために、ESはERに等しいと仮定し、「E」として参照する。式2および3にこの仮定を加えることにより、PとISに対する以下の式を導出することができる。
【0040】
【数5】
【0041】
式5の両辺に(IS*X)/2を乗じて、式5の右辺のISを、式5で表されるISの公式に置き換えることによって、以下の式を導出することができる。
【0042】
【数6】
【0043】
いくつかの実施形態では、θは、以下の式で表されるように式4および6を組み合わせることによって導出される。
【0044】
【数7】
【0045】
取得したVSおよびISからPを確定するためには、任意の知られている技法を用いることができる。一例ではPは、各相に対するライン−中性線間電圧(V)、およびライン電流(I)の瞬時値を用いて確定することができ、これはVa*Ia、Vb*Ib、およびVc*Icである(ただしa、b、およびcは、システム100が3相AC電力システムである場合の3つの相に対応する)。Va*Ia、Vb*Ib、およびVc*Icの和は、結果として瞬時の3相有効電力(P)となる。別の例ではPは、フェーザ値、すなわちVS、IS、および、たとえばPMUから求められるαの関数(たとえば、cosα)の関数の積を用いて確定することができる。
【0046】
いくつかの実施形態では、図2に示されるように、保護装置112はさらに、SAEモジュール210に結合された検出モジュール212を含む。このような実施形態における検出モジュール212は、推定したθに基づいて電力動揺を検出するように構成される。本明細書において本発明の範囲から逸脱することなく、θに基づいて電力動揺を検出する任意の知られている技法を用いることができる。1つの例示的実施形態では閾値が規定され、推定したθと比較される。このような一実施形態では、θがこの規定された閾値を超えたときは、システムは同期外れまたは不安定として定義され、その結果として、回路遮断器118がトリップされて発電端発電機108をシステム100の残りから隔離し、または警報がトリガされる。
【0047】
いくつかの他の実施形態では、SAEモジュール210および検出モジュール212は、電力動揺を検出するために追加のパラメータを用いることができる。1つのこのような実施形態では保護装置112は、有効電力確定(有効PD)モジュール214と、無効電力確定(無効PD)モジュール216とを含む。一実施形態では有効PDモジュール214は、取得したVSおよびISに基づいてPを確定するように構成される。別の実施形態では無効PDモジュール216は、取得したISおよび推定したXに基づいて無効電力値(Q)を確定するように構成される。1つの例示的実施形態では、Qは以下の式を用いて確定することができる。
【0048】
【数8】
【0049】
このような実施形態ではSAEモジュール210は、それぞれモジュール214および216を用いて確定されたPおよびQの関数として、動揺角の変化率
【0050】
【数9】
【0051】
などの追加のパラメータを推定するように構成することができる。
【0052】
【数10】
【0053】
に対する式を導出するために、式8および9を、皮相電力(S)に対する式10とともに用いて、式11および12を得ることができる。
【0054】
【数11】
【0055】
さらに式11および12から、Pの変化率
【0056】
【数12】
【0057】
、およびQの変化率
【0058】
【数13】
【0059】
を導出することができ、
【0060】
【数14】
【0061】
ただし、
【0062】
【数15】
【0063】
はSの変化率である。
【0064】
式13および14は、Pの変化率
【0065】
【数17】
【0066】
およびQの変化率
【0067】
【数18】
【0068】
によって
【0069】
【数16】
【0070】
を表すように解くことができる。
【0071】
【数19】
【0072】
【数20】
【0073】
および
【0074】
【数21】
【0075】
は、以下の式を用いて求めることができ、
【0076】
【数22】
【0077】
ただし、
P(t(k))は、時点t(k)で測定された有効電力を表し、
P(t(k−1))は、時点t(k−1)で測定された有効電力を表し、t(k−1)はt(k)の前の時点であり、
Q(t(k))は、時点t(k)で測定された無効電力を表し、
Q(t(k−1))は、時点t(k−1)で測定された無効電力を表す。
【0078】
一部の実施形態では検出モジュール212は、推定したθおよび
【0079】
【数23】
【0080】
に基づいて電力動揺を検出するように構成することができる。本明細書において本発明の範囲から逸脱することなく、θおよび
【0081】
【数24】
【0082】
に基づいて電力動揺を検出する任意の知られている技法を用いることができる。1つの例示的実施形態では電力動揺時に動揺エネルギーはθと
【0083】
【数25】
【0084】
の間を行き来して移動し、したがってθおよび
【0085】
【数26】
【0086】
の平方の重み付けされた和を用いて、電力動揺または同期外れ状態を検出することができる。1つのこのような実施形態では、電力動揺または同期外れ状態は、以下の条件が満たされたときに確定され、
【0087】
【数27】
【0088】
ただし、θmaxおよび
【0089】
【数28】
【0090】
は、それぞれ最大の許容される動揺角、および最大の許容される動揺角の変化率である。
【0091】
一実施形態では、動揺角のすべての値に対して装置200内の様々なモジュールの構成を用いることができる。別法として別の実施形態では、REモジュール206、SAEモジュール210、および検出モジュール212について上述した様々な構成は、ESとERとの間の動揺角の第1の範囲のみに対してもたらすことができる。一実施形態では動揺角の第1の範囲は、θの大きな値を含むことができる。たとえば90°から180°までを、θの大きな値として定義することができる。より具体的には、120°から180°までをθの大きな値として定義することができる。しかしながらθのより小さな値(すなわち動揺角の第2の範囲)に対しては、動揺状態を検出するために異なる手法を用いることができる。動揺角の第2の範囲は、θの小さな値を含むことができる。たとえば0°から90°までをθの小さな値として定義することができる。より具体的には0°から30°までをθの小さな値として定義することができる。θの小さな値に対しては、電流の振幅(IS)も小さくなる。したがってθの小さな値に対しては、ISの振幅を電流閾値(Imin)と比較することによって電力動揺を検出することができる。1つの例示的実施形態では、公益事業者は、Iminをたとえば1.1から1.2puの間で任意に定義することができる。具体的には別の例では、Iminは1.1puと定義することができる。このような実施形態では、1.1pu未満のISの流れを引き起こす動揺角は、θの小さな値として定義することができる。
【0092】
いくつかの実施形態では、図2に示されるように、保護装置112はさらに、CDモジュール204およびSAEモジュール210に結合された、比較モジュール218を含む。比較モジュール218は、CDモジュール204から取得されたISをIminと比較するように構成される。一実施形態では、取得したISがImin以上であるときは、比較モジュール218は、θを推定し、上述のように推定したθに基づいて電力動揺を検出するために、SAEモジュール210および検出モジュール212に通知するように構成される。別法として他の実施形態では、取得したISがImin未満であるときは、比較モジュール218は、これら2つのモジュールを非活動化するために、SAEモジュール210および検出モジュール212に非活動化信号を送るように構成される。SAEモジュール210および検出モジュール212の非活動化により、結果としてθの推定および電力動揺の検出のプロセスの中断が生じる。
【0093】
別法として別の実施形態では、取得したISがImin未満であるときは、比較モジュール218は、異なる手法を用いて異なる動揺角を計算するために、変更信号をSAEモジュール210および検出モジュール212に送ってこれらのモジュールの構成を変更するように構成される。このような一実施形態では保護装置112はさらに、比較モジュール218に結合され、発電端発電機108から受電端発電機110のいずれかに伝送された電力の最大振幅(Pmax)を確定するように構成された、最大電力確定モジュール220を含むことができる。またこのような実施形態では、取得したVSおよびISに基づいてPを確定するために、有効PDモジュール214を用いることができる。一実施形態では、SAEモジュール210において受け取られた変更信号は、SAEモジュール210をトリガして、確定されたPおよびPmaxの関数としてESとERとの間の第2の動揺角(θ1)を推定するようにその構成を変化させる。θ1を求めるために、式4は近似的に(θをθ1で置き換えて)以下のように書き直すことができる。
【0094】
【数29】
【0095】
θ1は、以下の式により式19から求めることができる。
【0096】
【数30】
【0097】
一実施形態ではPmaxは、EおよびXの関数として式19から求められる。
【0098】
一実施形態では取得したISがImin未満であるときは、検出モジュール212において受け取られた変更信号は、検出モジュール212をトリガして、このθ1に基づいて電力動揺を検出するようにその構成を変化させる。
【0099】
別の実施形態では、取得したISがImin未満であるときは、検出モジュール212において受け取られた変更信号は、検出モジュール212をトリガして、θ1およびθ1の変化率
【0100】
【数31】
【0101】
に基づいて電力動揺を検出するようにその構成を変化させる。このような一実施形態ではSAEモジュール210はさらに、
【0102】
【数32】
およびPmaxの関数として
【0103】
【数33】
を推定するように構成することができる。
【0104】
【数34】
は以下の式を用いて求めることができる。
【0105】
【数35】
【0106】
一実施形態では、図2に示されるように、保護装置112は、任意選択で、発電端102における障害状態を判断するための障害検出モジュール222を含む。障害検出モジュール222は、正常状態であるか、障害状態であるかを判断する。1つの例示的実施形態では検出モジュール212は、障害状態から電力動揺状態を識別し、適切な処置を行うためにこの情報を障害検出モジュール222に送る。別の実施形態では障害検出モジュール222は、装置200以外の装置内に実装することができる。このような実施形態では、障害状態を検出するとすぐに、図2に示される様々なモジュールを迂回することができ、障害検出モジュール222は、回路遮断器118をトリップするために、検出モジュール212(またはいくつかの他のモジュール)に障害通知を送るように構成することができる。
【0107】
いくつかの他の実施形態では、電力動揺を検出した後に装置200は、電力動揺が安定であるか不安定であるかを判断する。安定な電力動揺か不安定な電力動揺かを判断するために、任意の知られている技法を用いることができる。1つの例示的実施形態では、θがある持続時間の間に増加し、次いで減少し始めるときは、このような電力動揺は安定な動揺と判断される。しかしながらθが監視される持続時間全体の間で増加し続けるときは、このような電力動揺は不安定な動揺と判断される。
【0108】
図3は一実施形態による、2電源システム300および2電源システム300のベクトルフェーザ表示302、すなわち発電端102および受電端104とを表す。2電源システム300は、図3に示されるように、電力動揺現象を考察するための最も簡単な回路網の構成である。発電端発電機108はθに等しい動揺角を有し、この角度は電力動揺時に変化し得る。受電端発電機110は無限大母線を表し、その角度は時間とともに変化し得ない。この簡単な回路網は、より複雑な回路網において生じる電力動揺をモデル化するために用いることができる。いくつかの実施形態では、2電源システム300が安定性を失い、電力動揺状態に入ったときは、θで表される2つの電源108と110との間の角度差は、時間の関数として増加し得る。
【0109】
一実施形態では、電力動揺を検出する方法が提示される。図4は、本発明の一実施形態による、電力システム(100など)における電力動揺を検出する方法400を示す流れ図である。方法400は、局所測定値および1つまたは複数のシステムパラメータに基づいて、発電端発電機(108など)と受電端発電機(受電端発電機110の1つなど)との間の電力動揺を検出する。いくつかの実施形態では、保護装置(112など)たとえば継電器を含む、電力動揺検出装置(120など)には、発電端発電機と受電端発電機との間の電力動揺を検出するための動揺検出方式をもたらすことができる。ステップ402および404では、発電端発電機の電圧振幅(VS)および電流振幅(IS)を含む局所測定値が取得される。いくつかの実施形態では、電圧確定(VD)モジュール(202など)はVSを取得し、電流確定(CD)モジュール(204など)はISを取得する。一実施形態ではVDおよびCDモジュールは、それぞれ変流器(116など)および変圧器(114など)からVSおよびISを取得する。別法として別の実施形態ではこれらのモジュールは、VSおよびISを直接測定するために、それぞれの変流器および変圧器に統合することができる。さらに別の実施形態では、VSおよびISなどのフェーザ値を測定するために、フェーザ測定装置(PMU)を用いることができる。
【0110】
さらにステップ406では、発電端発電機と受電端発電機との間の全リアクタンス(X)が推定される。一実施形態では、リアクタンス推定(RE)モジュール(206など)は、電力動揺時に確定された電流の最大振幅(Imax)と、電力動揺時に確定された有効電力の最大振幅(Pmax)との関数としてXを推定する。本発明の範囲から逸脱することなく、Xを推定するために、任意の他の知られている推定技法を用いることができる。別の実施形態では、VSとISとの間の負荷角(α)を取得することができる。1つの例示的実施形態では、αはPMUを用いて得られるフェーザ値の一部として取得することができる。
【0111】
ステップ408では、取得したVS、取得したIS、および推定したXの関数として、ESとERとの間の第1の動揺角(θ)が推定される。一実施形態では、取得したVS、取得したIS、および推定したXの関数としてθを推定するために、SAEモジュール(210など)が用いられる。別法として別の実施形態ではθは、取得したVS、取得したIS、および推定したXに加えて、取得したαの関数として推定することができる。θは、以下に示される有効電力(P)と電流(IS)の式から導出することができる。θは、図2の様々な実施形態において述べられたように計算することができる。
【0112】
最後にステップ410では、推定したθの値に基づいて電力動揺が検出される。本明細書において本発明の範囲から逸脱することなく、θに基づいて電力動揺を検出する任意の知られている技法を用いることができる。1つの例示的実施形態では閾値を規定することができ、検出モジュール(212など)を用いて、推定したθをこの閾値と比較することができる。このような一実施形態では、θの値がこの規定された閾値を超えたときは、システムは同期外れまたは不安定と判断され、その結果として、回路遮断器118がトリップされて発電端発電機108をシステム100の残りから隔離し、または警報がトリガされる。
【0113】
いくつかの他の実施形態ではSAEモジュールおよび検出モジュールは、電力動揺を検出するために、PおよびQの関数としての動揺角の変化率
【0114】
【数36】
【0115】
などの追加のパラメータを用いることができる。
【0116】
【数37】
【0117】
は、図2の様々な実施形態において上述されたように推定することができる。一部の実施形態では検出モジュール212は、推定したθおよび
【0118】
【数38】
【0119】
に基づいて電力動揺を検出するように構成することができる。本明細書において本発明の範囲から逸脱することなく、θおよび
【0120】
【数39】
【0121】
に基づいて電力動揺を検出する、任意の知られている技法を用いることができる。1つの例示的実施形態では、電力動揺または同期外れ状態は式18により確定することができる。
【0122】
一実施形態では、動揺角のすべての値に対して、方法400において述べられた様々なモジュールの構成を用いることができる。別法として別の実施形態では、図2に関連して上述したように、REモジュール、SAEモジュール、および検出モジュール212について上述した様々な構成は、ESとERとの間の動揺角の第1の範囲のみにもたらすことができる。しかしながらθのより小さな値(すなわち動揺角の第2の範囲)に対しては、異なる手法を用いて動揺状態を検出することができる。動揺角の第2の範囲は、図2に関連して上述したようにθの小さな値を含むことができる。
【0123】
図5は、本発明の他の実施形態による、電力システム(100など)における電力動揺を検出する方法500を示す流れ図である。ステップ502および504は、それぞれ方法400のステップ402および404と同じである。ステップ506では、ステップ504で取得したISが電流閾値(Imin)と比較される。θの小さな値に対しては電流の振幅(IS)も小さいので、比較モジュール(218など)はISの振幅をIminと比較することによって電力動揺を検出する。
【0124】
取得したISがImin以上であるときは、ステップ508から512が実行される。ステップ508から512は、それぞれ方法400のステップ406から410と同じである。一実施形態では比較モジュールは、ステップ406から410において述べたようにθの値を推定し、推定したθの値に基づいて電力動揺を検出するために、SAEモジュールおよび検出モジュールに通知するように構成される。別法としていくつかの他の実施形態では、SAEモジュールおよび検出モジュールは、PおよびQの関数として
【0125】
【数40】
【0126】
を用いて電力動揺を検出することができる。一部の実施形態では検出モジュールは、推定したθおよび
【0127】
【数41】
【0128】
に基づいて電力動揺を検出するように構成することができる。
【0129】
しかしながら取得したISがImin未満であるときは、いくつかの実施形態によれば、ステップ514から520が実行される。ステップ514では、取得したVSおよびISに基づいて有効電力値(P)が確定される。
【0130】
さらにステップ516では、発電端発電機から受電端発電機に伝送された電力の最大振幅(Pmax)が確定される。
【0131】
また比較モジュールは、異なる手法を用いて異なる動揺角を計算するために、SAEモジュールおよび検出モジュールに変更信号を送って、これらのモジュールの構成を変更するように構成することができる。ステップ518では、SAEモジュールにおいて受け取られた変更信号は、確定されたPおよびPmaxの関数としてESとERとの間の第2の動揺角(θ1)を推定するように、SAEモジュールをトリガしてその構成を変化させることができる。一部の実施形態では、θ1は式20を用いて求めることができる。
【0132】
最後にステップ520では、取得したISがImin未満であるときは、推定したθ1に基づいて電力動揺が検出される。一実施形態では、検出モジュールにおいて受け取られた変更信号は、推定したθ1に基づいて電力動揺を検出するように、検出モジュールをトリガしてその構成を変化させることができる。
【0133】
一代替的実施形態では、取得したISがImin未満であるときは、検出モジュール212において受け取られた変更信号は、θ1およびθ1の変化率
【0134】
【数42】
【0135】
に基づいて電力動揺を検出するように、検出モジュール212をトリガしてその構成を変化させる。このような一実施形態ではSAEモジュール210は、さらに式21を用いて
【0136】
【数43】
【0137】
を推定するように構成される。
【0138】
別法として別の実施形態では、取得したISがImin未満であるときは、比較モジュールは、SAEモジュールおよび検出モジュールに、これら2つのモジュールを非活動化するために非活動化信号を送るように構成される。SAEモジュールおよび検出モジュールの非活動化により、結果としてθの推定および電力動揺の検出のプロセスの中断が生じ得る。
【0139】
本発明の実施形態による装置、システム、および方法は、様々な実施形態における動揺検出方式を用いて、電力動揺検出のための遠隔測定を不要にする(したがって受電端発電機および関連する構成要素などの、遠隔構成要素との必要な通信を不要にする)ことができる。局所測定値および1つまたは複数のシステムパラメータは、電力動揺検出のために様々な実施形態において用いられる。発電機保護または伝送レベルOOS保護のために、様々な実施形態を実施することができる。一部の実施形態は、θの値が小さいときでも電力動揺を正確に検出するための手法を提供する。
【0140】
本発明の様々な実施形態において述べられた装置、システム、および方法は、任意のタイプの保護装置に応用することができ、保護のURファミリに限定されない。本発明の様々な実施形態は、電力網またはマイクログリッドなどの応用分野における使用に限定されず、電力システムにおける任意の他のタイプの応用分野に拡張することができる。
【0141】
当業者には種々の実施形態からの様々な特徴の交換可能性が認識され、述べられた様々な特徴、ならびに各特徴に対する他の知られている等価物は、一当業者により、本開示の原理によるさらなるシステムおよび技法を構成するようにうまく組み合わせ得ることが理解されたい。したがって添付の「特許請求の範囲」は、本発明の真の精神に包含されるものとして、すべてのこのような変更および変形を包括するものであることが理解されたい。
【0142】
本明細書では本発明のいくつかの特徴のみについて示し説明したが、当業者は多くのの変更および変形を思い付くであろう。したがって添付の特許請求の範囲は、本発明の真の精神に包含されるものとして、すべてのこのような変更および変形を包括するものであることが理解されたい。
【符号の説明】
【0143】
100 電力システム
102 発電端
104 受電端
106 伝送リンク
108 発電端発電機
110 受電端発電機
112 保護装置
114 変圧器
116 変流器
118 回路遮断器
120、200 電力動揺検出装置
122 処理装置
124 I/O装置
126 記憶装置
134 時間同期装置
136 通信バス
202 VDモジュール
204 CDモジュール
206 REモジュール
208 LADモジュール
210 SAEモジュール
212 検出モジュール
214 有効PDモジュール
216 無効PDモジュール
218 比較モジュール
220 MPDモジュール
222 障害検出モジュール
300 2電源システム
302 ベクトルフェーザ表示
図1
図2
図3
図4
図5