(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明のドラム式洗濯機の一実施形態である乾燥機能を有さないドラム式洗濯機について、図面を参照して説明する。
【0026】
図1は、ドラム式洗濯機1の構成を示す側面断面図である。
【0027】
ドラム式洗濯機1は、外観を構成する筐体10を備える。筐体10の前面には、洗濯物の投入口11が形成される。投入口11は、開閉自在なドア12により覆われる。
【0028】
筐体10内には、外槽20が、複数のダンパー21により弾性的に支持される。外槽20内には、ドラム22が回転自在に配される。ドラム22は、水平軸を中心に回転する。外槽20の前面の開口部20aおよびドラム22の前面の開口部22aは、投入口11に対向し、投入口11ともにドア12により閉鎖される。ドラム22の内周面には、多数の脱水孔22bが形成される。さらに、ドラム22の内周面には、3つのバッフル23が周方向にほぼ等しい間隔で設けられる。
【0029】
ドラム22の後部には、撹拌体24が回転自在に配される。撹拌体24は、ほぼ円盤形状を有し、ドラム22と同軸に回転する。撹拌体24は、本発明の回転体に相当する。さらに、ドラム22の後部には、ガードリングユニット25が設けられる。ガードリングユニット25は、環状に形成されて撹拌体24を囲むガードリング710を含む。ガードリング710は、撹拌体24とドラム22との間に生じる隙間への洗濯物の噛み込みを阻止する。撹拌体24およびガードリングユニット25の詳細な構成は、追って説明される。
【0030】
外槽20の後方には、ドラム22および撹拌体24を駆動するトルクを発生させる駆動ユニット30が配される。駆動ユニット30は、本発明の駆動部に相当する。駆動ユニット30は、洗い工程およびすすぎ工程時には、ドラム22および撹拌体24を同一方向に異なる回転速度で回転させる。具体的には、駆動ユニット30は、ドラム22を、ドラム22内の洗濯物に加わる遠心力が重力より小さくなる回転速度で回転させ、撹拌体24を、ドラム22の回転速度よりも速い回転速度で回転させる。一方、駆動ユニット30は、脱水工程時には、ドラム22および撹拌体24を、ドラム22内の洗濯物に加わる遠心力が重力よりはるかに大きくなる回転速度で一体的に回転させる。駆動ユニット30の詳細な構成は、追って説明される。
【0031】
外槽20の底部には、排水口部20bが形成される。排水口部20bには、排水バルブ40が設けられる。排水バルブ40は、排水ホース41に接続される。排水バルブ40が開放されると、外槽20内に溜められた水が排水ホース41を通じて機外へ排出される。
【0032】
筐体10内の前方上部には、洗剤ボックス50が配される。洗剤ボックス50には、洗剤が収容される洗剤容器50aが前方から引き出し自在に収容される。洗剤ボックス50は、筐体10内の後方上部に配された給水バルブ51に、給水ホース52によって接続される。また、洗剤ボックス50は、外槽20の上部に、注水管53により接続される。給水バルブ51が開放されると、水道栓から水道水が、給水ホース52、洗剤ボックス50および注水管53を通じて外槽20内に供給される。この際、洗剤容器50aに収容された洗剤が、水に押し流れて外槽20内に供給される。
【0033】
次に、駆動ユニット30の構成について詳細に説明する。
【0034】
図2および
図3は、駆動ユニット30の構成を示す断面図である。
図2は、駆動ユニット30の駆動形態が、二軸駆動形態に切り替えられた状態を示し、
図3は、駆動ユニット30の駆動形態が、一軸駆動形態に切り替えられた状態を示す。
図4は、駆動モータ100のロータ110の構成を示す、ロータ110の正面図である。
図5は、スプライン514が形成された軸受ユニット500の後部の拡大斜視図である。
図6(a)ないし(c)は、クラッチ機構部600のクラッチ体610の構成を示す図であり、それぞれ、クラッチ体610の正面図、右側面図および背面図である。
【0035】
駆動ユニット30は、駆動モータ100と、翼軸200と、ドラム軸300と、遊星歯車機構400と、軸受ユニット500と、クラッチ機構部600とを含む。駆動モータ100は、撹拌体24およびドラム22を駆動するためのトルクを発生する。翼軸200は、駆動モータ100のトルクにより回転し、当該回転を撹拌体24に伝達する。遊星歯車機構400は、翼軸200の回転、即ち駆動モータ100のロータ110の回転を減速してドラム軸300に伝達する。ドラム軸300は、遊星歯車機構400により減速された回転速度で翼軸200と同軸に回転し、当該回転をドラム22に伝達する。軸受ユニット500は、翼軸200およびドラム軸300を回転自在に支持する。クラッチ機構部600は、撹拌体24、即ち翼軸200を、駆動モータ100の回転速度と等しい回転速度で回転させ、ドラム22、即ちドラム軸300を、遊星歯車機構400により減速された回転速度で回転させることが可能な二軸駆動形態と、撹拌体24およびドラム22、即ち、翼軸200、ドラム軸300および遊星歯車機構400を、駆動モータ100と等しい回転速度で一体的に回転させることが可能な一軸駆動形態との間で、駆動ユニット30の駆動形態を切り替える。
【0036】
駆動モータ100は、アウターロータ型のDCブラシレスモータであり、ロータ110とステータ120とを含む。ロータ110は、有底の円筒状に形成され、その内周面には、全周に亘って永久磁石111が配列される。
図4に示すように、ロータ110の中央部には、円形のボス部112が形成される。ボス部112には、翼軸200を固定するためのボス孔113が形成されるとともに、ボス孔113の外周に環状の被係合凹部114が形成される。被係合凹部114の外周部は、全周に亘って凹凸部114aを有する。
【0037】
ステータ120は、外周部に巻線121を有する。後述するモータ駆動部からステータ120の巻線121に駆動電流が供給されると、ロータ110が回転する。
【0038】
ドラム軸300は、中空形状を有し、翼軸200と遊星歯車機構400とを内包する。ドラム軸300は、中央部が外側に膨出し、この膨出した部位が、遊星歯車機構400の収容部となる。
【0039】
遊星歯車機構400は、太陽歯車410と、太陽歯車410を囲む環状の内歯車420と、太陽歯車410と内歯車420との間に介在する複数組の遊星歯車430と、これら遊星歯車430を回転自在に保持する遊星キャリア440とを含む。
【0040】
太陽歯車410が翼軸200に固定され、内歯車420がドラム軸300に固定される。一組の遊星歯車430は、互いに噛み合い、相反する方向に回転する第1歯車と第2歯車とを含む。遊星キャリア440は、後方へ延びるキャリア軸441を含む。キャリア軸441は、ドラム軸300と同軸であり、翼軸200が挿入されるために内部が中空に形成される。
【0041】
翼軸200の後端部は、キャリア軸441から後方に突出し、ロータ110のボス孔113に固定される。
【0042】
軸受ユニット500には、中央部に円筒状の軸受部510が設けられる。軸受部510の内部には、前部および後部に転がり軸受511、512が設けられ、前端部に、メカニカルシール513が設けられる。ドラム軸300は、外周面が転がり軸受511、512により受けられ、軸受部510内において円滑に回転する。また、メカニカルシール513により、軸受部510とドラム軸300との間への水の侵入が防止される。
図5に示すように、軸受部510の後端部には、内面に、全周に亘ってスプライン514が形成される。
【0043】
軸受ユニット500には、軸受部510の周囲に固定フランジ部520が形成される。固定フランジ部520の下端部に取付ボス521が形成される。
【0044】
軸受ユニット500は、固定フランジ部520において、ネジ止等の固定方法により、外槽20の後面に固定される。駆動ユニット30が外槽20に装着された状態において、翼軸200およびドラム軸300が外槽20の内部に臨む。ドラム22がドラム軸300に固定され、撹拌体24が翼軸200に固定される。
【0045】
クラッチ機構部600は、クラッチ体610と、クラッチスプリング620と、クラッチレバー630と、レバー支持部640と、クラッチ駆動装置650と、中継棒660と、取付プレート670とを含む。
【0046】
図6(a)ないし(c)に示すように、クラッチ体610はほぼ円盤形状を有する。クラッチ体610の前端部には、外周面に、環状のスプライン611が形成される。スプライン611は、軸受ユニット500のスプライン514と係合するように形成される。また、クラッチ体610の外周面には、スプライン611の後方に、フランジ部612が形成される。さらに、クラッチ体610には後端部に、環状の係合フランジ部613が形成される。係合フランジ部613は、ロータ110の被係合凹部114と同じ形状を有し、外周部に全周に亘って凹凸部613aを有する。係合フランジ部613が、被係合凹部114に挿入されると、凹凸部613a、114a同士が係合する。
【0047】
クラッチ体610の軸孔614にキャリア軸441が挿入される。軸孔614の内周面に形成されたスプライン614aとキャリア軸441の外周面に形成されたスプライン441aとが係合する。これにより、クラッチ体610が、キャリア軸441に対して、前後方向への移動が許容され、且つ、周方向への回動が規制される状態となる。
【0048】
クラッチ体610には、軸孔614の外側に環状の収容溝615が形成され、この収容溝615に、クラッチスプリング620が収容される。クラッチスプリング620は、一端が軸受部510の後端部に接し、他端が収容溝615の底面に接する。
【0049】
クラッチレバー630の上端部には、クラッチ体610のフランジ部612の後面に接触し、フランジ部612を前方へ押す押圧部631が形成される。クラッチレバー630は、レバー支持部640に設けられた支軸641に回動自在に支持される。クラッチレバー630の下端部には、取付軸632が形成される。
【0050】
クラッチ駆動装置650は、クラッチレバー630の下方に配置される。クラッチ駆動装置650は、トルクモータ651と、トルクモータ651のトルクにより水平軸周りに回転する円盤状のカム652とを含む。カム652の上面には、外周部にカム軸653が設けられる。カム652の回転中心とクラッチレバー630の取付軸632の中心とが前後方向において一致する。
【0051】
中継棒660は、上下方向に延び、クラッチレバー630とカム652とを連結する。中継棒660は、上端部がクラッチレバー630の取付軸632に取り付けられ、下端部がカム652のカム軸653に取り付けられる。中継棒660には、中間位置にスプリング661が一体形成される。スプリング661は、引張スプリングである。
【0052】
レバー支持部640およびクラッチ駆動装置650は、ネジ止等の固定方法により、取付プレート670に固定される。取付プレート670は、軸受ユニット500の取付ボス521にネジにより固定される。
【0053】
駆動ユニット30の駆動形態が、一軸駆動形態から二軸駆動形態に切り替えられる場合、
図2に示すように、トルクモータ651により、カム軸653が最も下方に位置するようにカム652が回転される。カム652が回転するに従い、クラッチレバー630の下端部が、中継棒660によって下方に引かれる。クラッチレバー630が支軸641を中心に前方へ回転し、押圧部631がクラッチ体610を前方へ押す。クラッチスプリング620の弾性力に逆らって、クラッチ体610が前方へ移動し、クラッチ体610のスプライン611と軸受ユニット500のスプライン514とが係合する。
【0054】
クラッチ体610は、カム軸653が中間の所定位置まで移動すると、スプライン611がスプライン514と係合する位置に到達する。このときは、中継棒660のスプリング661が自然長の状態にある。クラッチ体610は、この係合位置より前には移動しないため、カム軸653が所定位置から最も下方の位置に移動すると、
図2の通り、スプリング661が下方に伸びる。こうなると、クラッチレバー630が、スプリング661によって、前方へ回動するように引かれるので、係合位置にあるクラッチ体610には、押圧部631から押圧力が加えられる。これにより、スプライン611をスプライン514にしっかりと係合させることができる。
【0055】
スプライン611とスプライン514とが係合すると、クラッチ体610が、軸受ユニット500に対して周方向への回動が規制され、回動できない状態となるので、遊星歯車機構400のキャリア軸441、即ち遊星キャリア440が、回転できないよう固定された状態となる。このような状態において、ロータ110が回転すると、翼軸200がロータ110の回転速度と等しい回転速度で回転し、翼軸200に連結されている撹拌体24もロータ110の回転速度と等しい回転速度で回転する。翼軸200の回転に伴い、遊星歯車機構400では、太陽歯車410が回転する。上述の通り、遊星キャリア440は固定された状態にあるので、遊星歯車430の第1歯車および第2歯車が、それぞれ、太陽歯車410と同方向および逆方向に回転し、内歯車420が太陽歯車410と同方向に回転する。これにより、内歯車420に固定されたドラム軸300が、翼軸200と同方向に、翼軸200よりも遅い回転速度で回転し、ドラム軸300に固定されたドラム22が、撹拌体24よりも遅い回転速度で撹拌体24と同方向に回転する。言い換えれば、撹拌体24がドラム22よりも速い回転速度でドラム22と同方向に回転する。
【0056】
一方、駆動ユニット30の形態が、二軸駆動形態から一軸駆動形態に切り替えられる場合、
図3に示すように、トルクモータ651により、カム軸653が最も上方に位置するようにカム652が回転される。カム652が回転し、カム軸653が上方へ移動すると、まず、スプリング661が縮んでいく。スプリング661が自然長に戻ると、その後は、カム軸653が移動するに従い、中継棒660が上方へ移動し、クラッチレバー630の下端部が、中継棒660に押されて、上方へ移動する。クラッチレバー630が支軸641を中心に後方へ回転し、押圧部631がクラッチ体610のフランジ部612から離れる。クラッチ体610が、クラッチスプリング620の弾性力によって後方へ移動し、クラッチ体610の係合フランジ部613とロータ110の被係合凹部114とが係合する。
【0057】
係合フランジ部613と被係合凹部114とが係合すると、ロータ110に対するクラッチ体610の周方向への回動が規制され、クラッチ体610は、ロータ110とともに回転可能な状態となる。このような状態において、ロータ110が回転すると、翼軸200およびクラッチ体610がロータ110の回転速度と等しい回転速度で回転する。このとき、遊星歯車機構400では、太陽歯車410と遊星キャリア440とがロータ110と等しい回転速度で回転する。これにより、内歯車420が、太陽歯車410および遊星キャリア440と等しい回転速度で回転し、内歯車420に固定されたドラム軸300がロータ110と等しい回転速度で回転する。即ち、駆動ユニット30では、翼軸200、遊星歯車機構400およびドラム軸300が一体となって回転する。これにより、ドラム22と撹拌体24が一体的に回転する。
【0058】
洗い工程およびすすぎ工程では、駆動ユニット30の駆動形態が、二軸駆動形態に切り替えられる。二軸駆動形態において、駆動モータ100が動作すると、ドラム22が洗濯物に作用する遠心力が重力より小さくなる回転速度で、撹拌体24がドラム22より回転速度より速い回転速度で、左右交互に回転する。ドラム22内の洗濯物が、バッフル23で掻き上げられては落とされることにより、ドラム22の内周面に叩き付けられる。加えて、ドラム22の後部では、回転する撹拌体24に洗濯物が接触し、洗濯物が擦られたり撹拌されたりする。これにより、洗濯物が洗われる、あるいは、すすがれる。
【0059】
このように、洗いおよびすすぎ時には、ドラム22の回転による機械力のみならず撹拌体24による機械力が洗濯物に付与されるので、洗浄性能の向上が期待できる。
【0060】
中間脱水工程および最終脱水工程では、駆動ユニット30の駆動形態が、一軸駆動形態に切り替えられる。一軸駆動形態において、駆動モータ100が動作すると、ドラム22および撹拌体24が、洗濯物に作用する遠心力が重力よりはるかに大きくなる回転速度で、一体的に回転する。遠心力の作用により、洗濯物が、ドラム22の内周面に押しつけられ、脱水される。
【0061】
このように、脱水時には、ドラム22と撹拌体24とが一体的に回転するので、ドラム22に張り付いた洗濯物が撹拌体24により撹拌されるようなことがなく、洗濯物を良好に脱水できる。
【0062】
さて、ドラム22内に多くの乾いた洗濯物が収容される場合、ドラム22の前面のドア12とドラム22の後面の撹拌体24との間で洗濯物が圧縮され、撹拌体24が洗濯物により圧迫される状態となり得る。また、洗濯物や撹拌体24が乾いた状態にあるときは、濡れた状態にあるときに比べ、摩擦係数が大きくなる。よって、このように、乾いた洗濯物により撹拌体24が圧迫された状態で、ドラム22と撹拌体24とが別個に回転すると、撹拌体24に、洗濯物による大きな負荷が掛かり、駆動モータ100がロックする虞がある。
【0063】
そこで、本実施の形態では、撹拌体24と撹拌体24に接触する洗濯物との間に生じる摩擦力を低減するため、撹拌体24の表面に水を掛ける給水機構部が設けられる。
【0064】
<実施例1>
本実施例では、給水機構部がドラム22の後面に設けられる。給水機構部は、ガードリングユニット25に含まれる。
【0065】
以下、撹拌体24と、給水機構部を含むガードリングユニット25の構成について詳細に説明する。
【0066】
図7ないし
図10は、本実施例に係る、撹拌体24およびガードリングユニット25の構成を示す図である。
図7は、撹拌体24およびガードリングユニット25が取り付けられた状態のドラム22の正面断面図である。
図8は、撹拌体24が取り外され、ガードリングユニット25が取り付けられた状態のドラム22の正面断面図である。
図9(a)、(b)および(c)は、それぞれ、
図8のA−A´端面図、B−B´端面図およびC−C´端面図である。
図10および
図11は、それぞれ、ガードリングユニット25の背面図および背面斜視図である。
【0067】
撹拌体24の表面には、中央部から放射状に延びる複数の主羽根24aが形成される。また、撹拌体24の表面には、外周部における2つの主羽根24aの間に補助羽根24bが形成される。主羽根24aは、前後方向に垂直な面内方向において、左回転方向に凸湾曲する形状を有する。補助羽根24bは、主羽根24aよりも小さくて低い。主羽根24aは、本発明の突状部に相当する。
【0068】
ガードリングユニット25は、環状に形成されて撹拌体24を囲むガードリング710と、ガードリング710の一部を兼用するようにしてガードリング710と一体に形成される3つの貯水ケーシング720とを含む。ガードリングユニット25は、同じ形状の3つのリング構成部材25aに分割される。
【0069】
本実施の形態では、撹拌体24が、ドラム22の開口部22aから入れることができるサイズで、極力大きなサイズとされている。このため、ガードリング710の外径は、
図7および
図8に一点鎖線の円で示すドラム22の開口部22aより大きくされる。よって、ガードリングユニット25は、完成した状態で、開口部22aからドラム22内に入れることができない。そこで、ガードリングユニット25は、3つのリング構成部材25aに分けられた状態で開口部22aからドラム22内に入れられ、ドラム22内で組み立てられる。
【0070】
ガードリング710は、内周壁711および外周壁712と、内周壁711と外周壁712を繋ぐ上面壁713とを含み、下面が開口する。貯水ケーシング720を構成するガードリング710の一部では、内周壁711の下部が切り欠かれている。上面壁713は、外側へ下る曲面形状の傾斜面とされており、上面壁713に洗濯物が接触した際に洗濯物が痛みにくい。
【0071】
ドラム22の後面の裏側には、三方に延びるアームを有する略Y字型のドラム取付フランジ26が取り付けられ、このドラム取付フランジ26にドラム軸300が固定される。ドラム取付フランジ26の裏側への突出量を小さくするため、ドラム22の後面は、ドラム取付フランジ26が取り付けられるフランジ取付部22cが表側に膨らむ。このフランジ取付部22cを避けるために、ガードリング710におけるフランジ取付部22cに対応する対応部位710aでは、フランジ取付部22cの膨らみ形状に合わせて、内周壁711および外周壁712が切り欠かれる(
図11参照)。
【0072】
ガードリング710の内側には、鍔部714が、フランジ取付部22cと干渉する部分を除いて、ほぼ全周に亘って形成される。鍔部714は、撹拌体24の外周部の裏面と対向する。また、ガードリング710には、各リング構成部材25aの両端部の位置にネジ孔715が形成される。各ネジ孔715にネジ730が通され、各リング構成部材25aがネジ730でドラム22の後面に取り付けられることにより、ガードリングユニット25が組立った状態でドラム22の後面に固定される。
【0073】
ガードリング710は、下面がドラム22の後面に接触する。これにより、撹拌体24とドラム22の後面との間に生じる隙間が、ガードリング710により埋められるので、洗濯物が撹拌体24とドラム22との間に噛み込むことにより傷んでしまうことを防止できる。
【0074】
貯水ケーシング720は、ドラム22の後面において、撹拌体24の外周部に対向する位置であってフランジ取付部22cから外れた位置に設けられる。貯水ケーシング720は、ガードリング710の一部と、鍔部714よりもさらに内側に張り出す上面板721と、上面板721の前端部から垂下する前面板722と、貯水ケーシング720とガードリング710の間を仕切る横仕切板723と、貯水ケーシング720内を2つの部屋に仕切る中央仕切板724とを含む。
【0075】
貯水ケーシング720は下面が開放されている。ガードリングユニット25がドラム22の後面に装着されると貯水ケーシング720の下面がドラム22の後面で閉塞され、貯水ケーシング720とドラム22の後面とで形成された空間に水を溜めることが可能となる。このように、貯水ケーシング720とドラム22の後面とで貯水部725が構成される。貯水部725は、中央仕切板724により第1貯水部725aと第2貯水部725bとに分けられる。
【0076】
前面板722と第1貯水部725a側の横仕切板723との間に隙間が形成され、この隙間が第1貯水部725aへ外槽20内の水を取り込むための第1取込口726aとなる。また、前面板722と第2貯水部725b側の横仕切板723との間に隙間が形成され、この隙間が第2貯水部725bへ外槽20内の水を取り込むための第2取込口726bとなる。第1取込口726aは、ドラム22が右回転するときの進行方向側に開口し、第2取込口726bは、ドラム22が左回転するときの進行方向側に開口する。これにより、ドラム22が右回転したときに第1貯水部725a内に水が取り込まれやすくなり、ドラム22が左回転したときに第2貯水部725b内に水が取り込まれやすくなる。第1取込口726aおよび第2取込口726bは、本発明の取込口に相当する。
【0077】
上述の通り、貯水ケーシング720は、ドラム22の後面のフランジ取付部22cから外れた領域、即ち、フランジ取付部22cに対して後方に窪んだ領域に設けられる。これにより、貯水部725の高さを高くできるので、貯水部725の内部容積を大きくでき、貯水量を多くできる。
【0078】
上面板721とともに貯水ケーシング720の上面を構成するガードリング710の上面壁713には、中央仕切板724を境にして、第1貯水部725a側と第2貯水部725b側に、第1貯水部725aから水を流出させるための第1流出口727aと、第2貯水部725bから水を流出させるための第2流出口727bとが、それぞれ複数個形成される。第1流出口727aおよび第2流出口727bは、本発明の流出口に相当する。
【0079】
第1貯水部725aおよび第2貯水部725bと、第1取込口726aおよび第2取込口726bと、第1流出口727aおよび第2流出口727bとが、ガードリングユニット25に含まれる給水機構部を構成する。
【0080】
本実施の形態のドラム式洗濯機1では、洗い工程において、二軸駆動形態によりドラム22と撹拌体24とが別々に回転される前に、外槽20内に水が溜められた状態で一軸駆動形態によりドラム22と撹拌体24とがゆっくりと一体的に回転させ、貯水部725から供給される水で撹拌体24の表面を濡す濡らし工程が行われる。濡らし工程では、ドラム22と撹拌体24は、左右交互に回転する。
【0081】
図12は、濡らし工程で洗濯物が濡らされる様子を模式的に示す図である。
図12では、ドラム22が右回転した場合の様子が示されているが、ドラム22が左回転したときの様子も右回転の場合と同様である。
図12には、便宜上、撹拌体24が一点鎖線により透明な状態で描かれている。
【0082】
ドラム22が右回転する場合は、主として、第1貯水部725aが撹拌体24の表面に水を掛ける機能を発揮する。即ち、
図11に示すように、外槽20内に溜められた水に第1貯水部725aが浸かると、第1取込口726aから第1貯水部725a内に水が流入し、第1貯水部725a内に水が蓄えられる。第1貯水部725aが水中から出て上方に持ち上げられると、第1貯水部725a内に蓄えられた水が、第1流出口727aから流出し、撹拌体24の表面に掛けられる。
【0083】
同様に、ドラム22が左回転する場合は、主として、第2貯水部725bが撹拌体24の表面に水を掛ける機能を発揮する。即ち、外槽20内に溜められた水に第2貯水部725bが浸かると、第2取込口726bを通じて第2貯水部725b内に水が蓄えられる。そして、第2貯水部725bに蓄えられた水が、上方位置にて第2流出口727bから流出し、撹拌体24の表面に掛けられる。
【0084】
こうして、撹拌体24、および撹拌体24に接触する洗濯物が濡れ、両者の間に生じる摩擦力が低減される。
【0085】
なお、ドラム22が右回転する場合、第2貯水部725bでは、第2取込口726bがドラム22の回転方向と反対側に向いているため、水が溜まりにくい。また、第2貯水部725bに溜まった水は、第2貯水部725bが上方へ持ち上げられたときに第2取込口726bから流出する。よって、第2貯水部725bは、実質的に、撹拌体24の表面に水を掛ける機能を発揮しない。同様に、ドラム22が左回転する場合、第1貯水部725aは、実質的に、撹拌体24の表面に水を掛ける機能を発揮しない。
【0086】
濡らし工程以外、たとえば、洗い時やすすぎ時にドラム22が回転するときにも給水機構部により撹拌体24の表示面に水が掛けられる。このように、外槽20内に水が溜められた状態でドラム22が回転するときには、撹拌体24と洗濯物との間の摩擦力を低く保つことができる。
【0087】
上記の例では、貯水ケーシング720の下面が開放する構成が採られているが、貯水ケーシング720の下面が、下面板により閉鎖される構成が採られても良い。この場合、貯水ケーシング720のみにより貯水部725が構成される。
【0088】
さらに、上記の例では、ドラム22の後面に配置される貯水部725、即ち給水機構部が、ガードリングユニット25と一体に形成されているが、ガードリングユニット25と別体に形成されても良い。
【0089】
さらに、上記の例では、貯水部725とドラム22の後面のフランジ取付部22cとの間に隙間があるが、フランジ取付部22cに接するまで貯水部725が大きくされても良い。
【0090】
<実施例1の効果>
本実施例によれば、撹拌体24の表面に水を掛け、撹拌体24、および撹拌体24に接触する洗濯物を濡すことにより、双方の両者の間に生じる摩擦力を低減できる。これにより、洗濯物との接触により撹拌体24に掛かる負荷を低減でき、駆動モータ100のロックを防止できる。また、洗濯物が撹拌体24と激しく擦れることによる布痛みを防止できる。
【0091】
また、本実施例によれば、外槽20内に溜めた水を、貯水部725によって汲み上げて撹拌体24の表面に掛けることができ、外槽20内の水を利用して撹拌体24の表面等を濡らすことができる。
【0092】
さらに、本実施例では、貯水部725をドラム22の後面に設けることにより、ドラム22の回転を利用して外槽20内の水を汲み上げることができるので、外槽20内の水を容易に利用できる。
【0093】
さらに、本実施例では、貯水部725が第1貯水部725aと第2貯水部725bとに分けられる。そして、第1貯水部725a内に水を取り込む第1取込口726aが、ドラム22が右回転するときの進行方向側に開口するように設けられ、第2貯水部725b内に水を取り込む第2取込口726bが、ドラム22が左回転するときの進行方向側に開口するように設けられる。このため、ドラム22が右回転したときには、第1貯水部725aに水が流れ込みやすく、第1貯水部725aに十分に水を溜めることができ、ドラム22が左回転したときには、第2貯水部725bに水が流れ込みやすく、第2貯水部725bに十分に水を溜めることができる。これにより、ドラム22の左右回転に伴い第1貯水部725aと第2貯水部725bとにより効率的に水をくみ上げて、撹拌体24を濡らすことができる。
【0094】
<実施例1の変更例1>
図13(a)および(b)は、本変更例に係る、ガードリングユニット25の構成を示す図である。
図13(a)は、ガードリングユニット25を構成するリング構成部材25aの正面図であり、
図13(b)は、リング構成部材25aの背面図である。
【0095】
上記実施例1では、貯水部725が、貯水ケーシング720の中央仕切板724によって、第1貯水部725aと第2貯水部725bとに分けられる。これに対し、本変更例では、中央仕切板724を設けず、貯水部725を2つに分けない。このため、貯水部725内に水を取り込む取込口726は、貯水ケーシング720において、ドラム22が右回転するときに前側になる端部に、右回転するときの進行方向側に開口するように形成され、後側となる端部では、前面板722と横仕切板723とが繋がり、取込口726が形成されない。ガードリング710の上面壁713には、後側の端部に寄るようにして、複数の流出口727が形成される。
【0096】
本変更例の貯水部725は、ドラム22が右回転したときに、撹拌体24の表面に水を掛ける機能を発揮する。
【0097】
図14は、貯水部725に蓄えられた水が流出する様子を模式的に示す図である。
【0098】
本変更例では、濡らし工程において、ドラム22が右回転のみ行う。
図14に示すように、ドラム22の回転に伴って貯水部725が上方に移動すると、外槽20内の水に浸かったときに貯水部725に蓄えられた水が、流出口727から流出する。流出した水は、撹拌体24、および撹拌体24に接触する洗濯物を濡らす。
【0099】
なお、洗濯物が絡まらないようにするため、ドラム22を時折、左回転させるようにしても良い。
【0100】
本変更例の構成によれば、貯水部725による一回当たりの水の汲み上げ量を多くできるので、ドラム22の1回転当たりの撹拌体24に掛かる水量を多くすることができる。
【0101】
なお、取込口726は、貯水ケーシング720において、ドラム22が左回転するときに前側になる端部に、左回転するときの進行方向側に開口するように形成されても良い。この場合、濡らし工程では、ドラム22が左回転のみを行う。
【0102】
<実施例1の変更例2>
図15(a)および(b)は、本変更例に係る、ガードリングユニット25の構成を示す図である。
図15(a)は、ガードリングユニット25を構成するリング構成部材25aの正面図であり、
図15(b)は、リング構成部材25aの背面図である。
【0103】
本変更例では、貯水ケーシング720には、第1貯水部725a内に、各第1流出口727aに沿うように第1誘導リブ728aが形成される。各第1誘導リブ728aは、ガードリング710の外周部からドラム22が右回転するときの進行方向に斜めに延びる。また、貯水ケーシング720には、第2貯水部725b内に、各第2流出口727bに沿うように第2誘導リブ728bが形成される。各第2誘導リブ728bは、ガードリング710の外周部からドラム22が左回転するときの進行方向に斜めに延びる。貯水ケーシング720の最も中央側に位置する第1誘導リブ728aおよび第2誘導リブ728bは、中央仕切板724に替わって、第1貯水部725aと第2貯水部725bとを仕切る。第1誘導リブ728aおよび第2誘導リブ728bは、本発明の誘導リブに相当する。
【0104】
貯水ケーシング720には、前面板722が設けられておらず、貯水ケーシング720の第1貯水部725a側の内周面全体が第1取込口726aとなり、貯水ケーシング720の第2貯水部725b側の内周面全体が第2取込口726bとなる。
【0105】
図16は、第1貯水部725aに蓄えられた水が流出する様子を模式的に示す図である。
図16は、ドラム22が右回転したときの様子を示すものであるが、ドラム22が左回転したときも同様の様子となる。
【0106】
本変更例では、濡らし工程において、ドラム22が左右交互に回転する。
図16に示すように、ドラム22の右回転に伴って第1貯水部725aが上方に移動すると、外槽20内の水に浸かったときに第1貯水部725aに蓄えられた水が、第1流出口727aから流出する。このとき、第1貯水部725a内の水は、第1誘導リブ728aに沿って流れ、第1流出口727aに円滑に導かれる。第1流出口727aから流出した水は、撹拌体24、および撹拌体24に接触する洗濯物を濡らす。
【0107】
同様に、ドラム22の左回転に伴って第2貯水部725bが上方に移動すると、外槽20内の水に浸かったときに第2貯水部725bに蓄えられた水が、第2流出口727bから流出する。このとき、第2貯水部725b内の水は、第2誘導リブ728bに沿って流れ、第2流出口727bに円滑に導かれる。第2流出口727bから流出した水は、撹拌体24、および撹拌体24に接触する洗濯物を濡らす。
【0108】
本変更例の構成によれば、第1貯水部725a内の水を第1誘導リブ728aによって第1流出口727aに円滑に導くことができるので、第1流出口727aから撹拌体24に向けて良好に水を流出させることができる。同様に、第2貯水部725b内の水を第2誘導リブ728bによって第2流出口727bに円滑に導くことができるので、第2流出口727bから撹拌体24に向けて良好に水を流出させることができる。
【0109】
<実施例2>
本実施例では、給水機構部が撹拌体24に設けられる。
【0110】
図17および
図18は、本変更例に係る、撹拌体24の構成を示す図である。
図17は撹拌体24の正面図であり、
図18は撹拌体24の背面斜視図である。
【0111】
撹拌体24は、ポリプロピレン等の樹脂材料により形成される。撹拌体24には、表面に、複数の主羽根801および複数の補助羽根802が形成される。主羽根801および補助羽根802の表面の形状は、それぞれ、実施例1の主羽根24aおよび補助羽根24bと同様である。
【0112】
図18に示すように、撹拌体24の裏面側では、主羽根801の肉厚を均一にするにするため、主羽根801の表面が突出するのに対応して主羽根801の裏面に窪み部803が形成される。
【0113】
窪み部803は、撹拌体24が右回転するときに進行方向の後側となる壁面803aが、当該進行方向に対して凹湾曲する形状を有する。壁面803aには、撹拌体24の表面に通じる複数の通水孔804が形成される。通水孔804は、本発明の流出口に相当する。撹拌体24の裏面には、壁面803aの縁部803bに沿って掬いリブ805が形成される。
【0114】
撹拌体24の裏面には、中心部に、翼軸200が固定される固定ボス806が形成される。さらに、撹拌体24の裏面には、主として撹拌体24の強度を向上させるために、固定ボス806と同心となる環状の第1補強リブ807と、撹拌体24の径方向に放射状に延びる第2補強リブ808とが複数形成される。
【0115】
撹拌体24の裏面に形成された、窪み部803と、通水孔804と、掬いリブ805とが、給水機構部を構成する。
【0116】
図19は、濡らし工程で洗濯物が濡らされる様子を模式的に示す図である。
【0117】
本実施例では、濡らし工程において、ドラム22および撹拌体24が右回転する。
図19に示すように、撹拌体24の回転に伴い、主羽根801、即ち、窪み部803の先端側の一部分が外槽20内の水に浸かる。外槽20内に溜められた水に窪み部803が浸かると、外槽20内の水が、掬いリブ805によって掬われ、窪み部803内に蓄えられる。このとき、掬いリブ805は、凹湾曲形状を有するため、シャベルのように機能し、外槽20内の水が掬いリブ805によって掬われやすく、窪み部803内に水が蓄えられやすい。窪み部803が水中から出て上方に持ち上げられると、窪み部803内に蓄えられた水が、通水孔804から流出し、撹拌体24の表面に掛けられる。
【0118】
こうして、撹拌体24、および撹拌体24に接触する洗濯物が濡れ、両者の間に生じる摩擦力が低減される。
【0119】
なお、洗濯物が絡まらないようにするため、ドラム22および撹拌体24を時折、左回転させるようにしても良い。
【0120】
また、本実施例において、ガードリングユニット25に、実施例1と同じ給水機構部が設けられても良い。
【0121】
<実施例2の効果>
本実施例によれば、実施例1と同様、撹拌体24と撹拌体24に接触する洗濯物との間に生じる摩擦力を低減でき、駆動モータ100のロック、および洗濯物の布痛みを防止できる。
【0122】
また、本実施例によれば、外槽20内に溜めた水を、窪み部803によって汲み上げて撹拌体24の表面に掛けることができ、外槽20内の水を利用して撹拌体24の表面を濡らすことができる。
【0123】
さらに、本実施例によれば、主羽根24aの肉厚を均一にするために撹拌体24の裏面に必然的に形成される窪み部803を貯水部として利用するので、給水機構部を簡易に実現することができる。
【0124】
さらに、本実施例によれば、撹拌体24の回転を利用して外槽20内の水を汲み上げることができるので、外槽20内の水を容易に利用できる。
【0125】
<実施例2の変更例>
図20は、本変更例に係る、撹拌体24の構成を示す、撹拌体24の背面斜視図である。
【0126】
本変更例では、窪み部803に掬いリブ805が備えられていない。替わりに、本変更例では、窪み部803が、貯水カバー809で覆われることにより、撹拌体24の裏面に、窪み部803と貯水カバー809とにより貯水部810が形成される。貯水部810は、上面が開口する。貯水カバー809は、複数の取付ボス811が形成されたフランジ部812を有する。取付ボス811が図示しないネジで止められることにより、貯水カバー809が撹拌体24の裏面に固定される。
【0127】
図21は、濡らし工程で洗濯物が濡らされる様子を模式的に示す図である。
【0128】
図21に示すように、撹拌体24の回転に伴い、貯水部810の先端側の一部分が外槽20内の水に浸かる。外槽20内に溜められた水が当該一部分によって掬われ、貯水部810内に蓄えられる。貯水部810が水中から出て上方に持ち上げられると、貯水部810内に蓄えられた水が、通水孔804から流出し、撹拌体24の表面に掛けられる。
【0129】
こうして、撹拌体24、および撹拌体24に接触する洗濯物が濡れ、両者の間に生じる摩擦力が低減される。
【0130】
本変更例によれば、貯水部810により一回に多くの水を掬って蓄えることができ、一回に多くの水を撹拌体24の表面に掛けることができる。
【0131】
<実施例3>
本実施例では、ドラム22の内周面に給水機構部として機能するバッフル900が設けられる。
【0132】
図22(a)および(b)は、本実施例に係る、バッフル900の構成を示す図である。
図22(a)は、バッフル900の平面図であり、
図22(b)は、
図22(a)のD−D´断面図である。
図23(a)および(b)は、それぞれ、バッフル900に外槽20内の水が貯められる様子、およびバッフル900からの水が流出し撹拌体24が濡らされる様子を示す図である。
【0133】
バッフル900は、下面が開放した、縦長の中空の箱形状を有する。バッフル900は、前面901がやや後方に傾斜し、上面902が、後方に向うに従って高くなるよう傾斜し、後面903がやや前方に傾斜する。また、バッフル900は、左側面904がやや右方に傾斜し、右側面905がやや左方に傾斜する。さらに、バッフル900は、上方から見ると、上面902、左側面904および右側面905が、小さくS字に湾曲する。
【0134】
バッフル900には、上面902と後面903とで形成される角部に、複数の通水孔906が形成される。通水孔906は、本発明の流出口に相当する。
【0135】
ドラム22の内周面には、3つのバッフル900が、ほぼ均等な間隔で配置される。
図23(a)および(b)には、3つのバッフル900のうち、1つのバッフル900のみが図示され、残りのバッフル900については、図示が省略されている。
図23(a)および(b)に示すように、ドラム22の内周面にバッフル900が取り付けられると、バッフル900の下面がドラム22の内周面により閉塞される。通水孔906は、バッフル900において、通水孔906から流れ出た水が撹拌体24の表面に掛かるような位置、好ましくは、ドラム22の前後方向において撹拌体24と重なる位置に設けられる。
【0136】
本実施例では、濡らし工程において、ドラム22が左右交互に回転する。
図22(a)に示すように、ドラム22の回転に伴ってバッフル900が下方の位置に移動すると、バッフル900が外槽20内の水に浸かる。通水孔906が水の取込口として機能し、通水孔906から水が取り込まれ、バッフル900内に蓄えられる。
図22(b)に示すように、バッフル900が水中から出て上方に持ち上げられると、バッフル900内に蓄えられた水が、通水孔906から流出し、撹拌体24の表面に掛けられる。バッフル900は、上方に持ち上げられて逆さまになると、上面902が、後方側が低くなるよう傾斜する。このため、バッフル900内の水は、バッフル900の後部へと流れやすくなり、通水孔906から流出しやすくなる。
【0137】
こうして、通水孔906から流出した水で撹拌体24、および撹拌体24に接触する洗濯物が濡らされ、両者の間に生じる摩擦力が低減される。
【0138】
なお、ドラム22が、後面側が低くなるよう水平軸に対して傾く構成を採る場合には、バッフル900の上面902は傾いていなくても良い。この場合、ドラム22が傾くことにより、バッフル900内の水は、バッフル900の後部へと流れやすくなり、通水孔906から流出しやすくなる。
【0139】
また、本実施例において、ガードリングユニット25に、実施例1と同じ給水機構部が設けられても良い。さらに、撹拌体24に、実施例2と同じ給水機構部が設けられても良い。
【0140】
<実施例3の効果>
本実施例によれば、実施例1と同様、撹拌体24と撹拌体24に接触する洗濯物との間に生じる摩擦力を低減でき、駆動モータ100のロック、および洗濯物の布痛みを防止できる。
【0141】
また、本実施例によれば、外槽20内に溜めた水を、バッフル900によって汲み上げて撹拌体24の表面に掛けることができ、外槽20内の水を利用して撹拌体24の表面を濡らすことができる。
【0142】
さらに、本実施例によれば、洗濯物を撹拌するためバッフル900を貯水部として利用するので、給水機構部を簡易に実現することができる。
【0143】
さらに、本実施例によれば、ドラム22の回転を利用して外槽20内の水を汲み上げることができるので、外槽20内の水を容易に利用できる。
【0144】
<実施例3の変更例>
上記実施例3では、通水孔906が取込口となるが、通水孔906とは別に取込口が設けられても良い。
【0145】
図24(a)および(b)は、本変更例に係る、バッフル900の構成を示す図である。本変更例のバッフル900には、バッフル900の左側面904および右側面905の前部に、それぞれ、取込口907設けられる。かかる位置に取込口907が設けられた場合、取込口907が、ドラム22が回転するときの進行方向に開口するため、取込口907から水が取り込まれやすい。また、バッフル900が上方に持ち上げられたときに、取込口907から水が漏れ出しにくい。さらに、2つの取込口907は、前後方向に少しずれるように設けられており、一方の取込口907から取り込まれた水が、他方の取込口907から抜けにくい。
【0146】
<その他の変更例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態等によって何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施の形態も、上記以外に種々の変更が可能である。
【0147】
たとえば、上記実施の形態の実施例3では、バッフル900が給水機構部として機能する。しかしながら、
図25(a)および(b)に示すように、バッフル900とは別に、ドラム22の内周面の後部に、給水機構部を構成する貯水部950が形成されても良い。貯水部950は、たとえば、中空の箱体からなり、撹拌体24に対向する面に、取込口および流出口となる通水孔951が設けられる。
図25(a)および(b)には、一つ貯水部950が図示されているが、貯水部950は、ほぼ均等な間隔で2つ以上設けられることが望ましい。
【0148】
図25(a)のように、ドラム22の回転に伴って貯水部950が下方の位置に移動すると、貯水部950が外槽20内の水に浸かる。通水孔951から水が取り込まれ、貯水部950内に蓄えられる。
図25(b)のように、貯水部950が水中から出て上方に持ち上げられると、貯水部950内に蓄えられた水が、通水孔951から流出し、撹拌体24の表面に掛けられる。撹拌体24、および撹拌体24に接触する洗濯物が濡らされ、両者の間に生じる摩擦力が低減される。
【0149】
さらに、上記実施の形態において、
図26(a)に示すように、撹拌体24の表面の位置P1がガードリング710の前面の位置P2よりも前方にくるよう、撹拌体24およびガードリングユニット25がドラム22の後面に装着されることが望ましい。
図26(b)の比較例に示すように、ガードリング710の前面の位置P2が撹拌体24の表面の位置P1より前方にくる場合、撹拌体24により撹拌された洗濯物が、ガードリング710の内周面に接触し、その内周面に案内されるようにして、撹拌体24とガードリング710との間に挟まり込みやすい。即ち、撹拌体24とガードリング710との間に洗濯物が噛み込まれやすく、洗濯物が傷む虞がある。この点、撹拌体24の表面の位置P1がガードリング710の前面の位置P2よりも前方にくる構成とされる場合には、洗濯物がガードリング710の内周面に接触するようなことがなく、撹拌体24とガードリング710との間に洗濯物が噛み込まれにくい。
【0150】
さらに、上記実施の形態では、ドラム22が、水平軸を中心に回転する。しかしながら、ドラム式洗濯機1は、ドラム22が、水平方向に対して傾斜した傾斜軸を中心に回転するような構成とされても良い。この場合、たとえば、外槽20およびドラム22の傾斜角度は、10〜20度程度とされ得る。
【0151】
さらに、上記実施の形態のドラム式洗濯機1は、乾燥機能を備えていないが、本発明は、乾燥機能を備えたドラム式洗濯機、即ち、ドラム式洗濯乾燥機に適用することもできる。
【0152】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。