特許第6397264号(P6397264)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6397264
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】撹拌装置および収容容器
(51)【国際特許分類】
   B01F 11/00 20060101AFI20180913BHJP
【FI】
   B01F11/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-167947(P2014-167947)
(22)【出願日】2014年8月20日
(65)【公開番号】特開2016-43291(P2016-43291A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2017年7月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 智宏
(72)【発明者】
【氏名】山本 昌史
【審査官】 菊地 寛
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0323466(US,A1)
【文献】 特表2007−511337(JP,A)
【文献】 特開2013−081930(JP,A)
【文献】 実開昭61−033625(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 11/00
B01F 7/00
B01F 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撹拌対象物を撹拌させるための撹拌軸と、
前記撹拌軸を支持する軸受部と、
前記軸受部の軸受中心を支点として、端部が円を描いて振れるように該撹拌軸を旋回させる駆動装置と、
前記撹拌対象物を収容する収容容器と、を備え、
前記収容容器は、前記収容容器の外周を覆う外周壁部と、
前記収容容器内に前記撹拌軸を収納するための空間を形成するように有底筒状に設けられ、前記外周壁部とともに前記撹拌対象物を収容する密閉空間を形成する内周壁部と、を有し、
前記外周壁部と前記内周壁部とは、フィルム状に成型された可撓性材料により形成されている撹拌装置であって、
架台と、
前記架台に固着された第1止め部材および前記撹拌軸に固着された第2止め部材を有する回り止め部と、をさらに備え、
前記回り止め部は、前記第2止め部材が前記第1止め部材に対して上下方向には揺動可能とする一方で、左右方向への移動が規制されるように構成されている撹拌装置
【請求項2】
前記収容容器は、前記外周壁部と前記内周壁部とが接合されて形成されている請求項1に記載の撹拌装置。
【請求項3】
前記収容容器は、前記外周壁部と前記内周壁部とが同一の材料により一体に形成されている請求項1または2に記載の撹拌装置。
【請求項4】
撹拌対象物を撹拌させるための撹拌軸と、前記撹拌軸を支持する軸受部と、前記軸受部の軸受中心を支点として、端部が円を描いて振れるように該撹拌軸を旋回させる駆動装置と、架台と、前記架台に固着された第1止め部材および前記撹拌軸に固着された第2止め部材を有する回り止め部とを備え、前記回り止め部は、前記第2止め部材が前記第1止め部材に対して上下方向には揺動可能とする一方で、左右方向への移動が規制されるように構成されている撹拌装置で用いる収容容器であって、
外周壁部と、
前記外周壁部よりも内側に位置し、前記収容容器内に前記撹拌軸を収容するための空間を形成するように有底筒状に設けられ、前記外周壁部とともに前記撹拌対象物を収納する密閉空間を形成する内周壁部と、を有し、
前記外周壁部と前記内周壁部とは、フィルム状に成型された可撓性材料により形成されている収容容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は撹拌装置および該撹拌装置で用いる収容容器に関する。特に、撹拌軸を支持する軸受部の軸受中心を支点として、端部が円を描いて振れるように該撹拌軸を旋回させることで撹拌対象物を撹拌させる撹拌装置およびその撹拌装置で用いる収容容器に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬、化学分野の生産プロセスでは、液またはスラリーの混合、溶解、晶析、濃縮、スラリー懸濁、及び気液接触等の撹拌処理が行われる。このような撹拌処理では、撹拌対象となる材料に触れた部材については一回限りの使用とし、洗浄工程を省略する、いわゆるシングルユース技術が用いられるものがある。例えば、一回限りの使用とする部材としては、滅菌状態を維持したままで、材料の混合、調整、保存、移送等を行うために材料を高度な滅菌状態下で収容する収容容器が挙げられる。このような一回限りの使用とする収容容器としては、例えば、可撓性があり、γ放射線で滅菌される生体適合性のプラスチックで形成された袋が挙げられる。
【0003】
また、材料をこの収容容器内で混合等させるためのシステムとして、主として以下の2つの撹拌システムが提案されている。すなわち、1つは、材料を収容した主要容器を皿に入れ揺動運動による波動撹拌により収容容器内の材料を均質となるように撹拌させる撹拌システム(揺動式撹拌システム)である。もう1つは、蠕動ポンプを用いて材料を収容した収容容器を圧搾し、収容容器内の材料を撹拌して混合させるシステム(蠕動ポンプの圧搾作用による撹拌システム)である。
【0004】
しかしながら揺動式撹拌システムは、粉末を溶液内に溶解させるような混合作業に不適であるという問題を有する。一方、蠕動ポンプの圧搾作用による撹拌システムは、材料を循環させるためにチューブに加える圧力によって生細胞を圧潰してしまう場合があるという問題を有する。
【0005】
そこで、材料を撹拌するために振動するパドルを備え、1回限りの使用とする収容容器を利用した撹拌システムが提案されている(例えば、特許文献1)。さらには、このパドルの代わりに、剛性の混合ロッドが挿入された可撓性チューブを備え、混合ロッドが抜き取り可能となった撹拌システムも提案されている(例えば、特許文献2)。すなわち、特許文献2に係る撹拌システム(混合装置)は、材料を収容するための収容容器(可撓性袋)と、収容容器の開口内に装着されたシールと、シールを貫通して収容容器内へ突入する可撓性チューブと、可撓性チューブ内に挿入され、混合操作終了後、可撓性袋から抜き取り可能である剛性の混合ロッドと、混合ロッドの一端に脱着自在に連結されたモータとからなる構成を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5451600号公報
【特許文献2】特許第4369121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1の撹拌システムの場合、クロス・コンタミネーションを防ぐため、1回の使用ごとに収容容器とともにパドルも破棄する必要がある。このため、収容容器のみを破棄する場合と比較してパドルの分だけ1回の使用にかかるコストが増すこととなる。
【0008】
一方、特許文献2の撹拌システムの場合、特許文献1のように1回の使用ごとにパドルを破棄する必要がない。しかしながら、混合ロッドを可撓性チューブ内に該可撓性チューブから離隔された状態で挿入するために、多数の環形状のインサートが必要となりコストがかかるという問題がある。さらには、可撓性チューブにおいて、インサートとインサートとの間部分は中空となるため、この部分が撹拌時に流体からの圧力等により凹む可能性がある。さらにまた、回転(自転)するロッドに応じて可撓性チューブも移動するため、シールと可撓性チューブとが擦れ、撹拌対象の材料内に異物混入する可能性がある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、コストを抑制し、かつ異物混入が生じないように適切に撹拌対象物を撹拌させることができる撹拌装置および収容容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る撹拌装置は、上記した課題を解決するために、撹拌対象物を撹拌させるための撹拌軸と、前記撹拌軸を支持する軸受部と、前記軸受部の軸受中心を支点として、端部が円を描いて振れるように該撹拌軸を旋回させる駆動装置と、前記撹拌対象物を収容する収容容器と、を備え、前記収容容器は、前記収容容器の外周を覆う外周壁部と、前記収容容器内に前記撹拌軸を収納するための空間を形成するように有底筒状に設けられ、前記外周壁部とともに前記撹拌対象物を収容する密閉空間を形成する内周壁部と、を有し、前記外周壁部と前記内周壁部とは、フィルム状に成型された可撓性材料により形成されている。
【0011】
上記構成によると、撹拌装置は、駆動装置により撹拌軸を、軸受中心を支点として旋回させることにより撹拌対象物を撹拌させることができる。
【0012】
また、撹拌軸は収容容器の内周壁部に収納させることができるため、収容容器内の撹拌対象物に直接、接触することなく、かつ撹拌対象物を収容容器の密閉空間内に収容させたまま、該撹拌対象物の撹拌を行うことができる。このため、撹拌対象物に異物混入することを防ぐことができるとともに、撹拌作業後に、撹拌軸を取り替えたり、洗浄したりする必要がなくコストを低減させることができる。
【0013】
さらに、内周壁部がフィルム状に成型された可撓性材料により形成されている。このため、内周壁部は、撹拌作業中は、撹拌軸の旋回運動に追随して動くことができ、収容容器内の撹拌対象物を適切に撹拌させることができる。また、撹拌作業中、撹拌軸は実質的に自転していないため、内周壁部と擦れることがなく、内周壁部を摩耗させ、孔をあけてしまうなどの不具合を生じることを防ぐことができる。
【0014】
したがって、本発明に係る撹拌装置は、コストを抑制し、かつ異物混入が生じないように適切に撹拌対象物を撹拌させることができるという効果を奏する。
【0015】
本発明に係る撹拌装置は、上記した構成において、前記収容容器は、前記外周壁部と前記内周壁部とが接合されて形成されてもよい。
【0016】
本発明に係る撹拌装置は、上記した構成において、前記収容容器は、前記外周壁部と前記内周壁部とが同一の材料により一体に形成されてもよい。
【0017】
本発明に係る収容容器は、上記した課題を解決するために、撹拌対象物を撹拌させるための撹拌軸と、前記撹拌軸を支持する軸受部と、前記軸受部の軸受中心を支点として、端部が円を描いて振れるように該撹拌軸を旋回させる駆動装置と、を備える撹拌装置で用いる収容容器であって、外周壁部と、前記外周壁部よりも内側に位置し、前記収容容器内に前記撹拌軸を収容するための空間を形成するように有底筒状に設けられ、前記外周壁部とともに前記撹拌対象物を収納する密閉空間を形成する内周壁部と、を有し、前記外周壁部と前記内周壁部とは、フィルム状に成型された可撓性材料により形成されている。
【0018】
上記構成によると、収容容器は、内周壁部を有しているため、撹拌軸をこの内周壁部内に収納させることができる。これにより、収容容器内の撹拌対象物に直接、撹拌軸が接触することなく、かつ撹拌対象物を収容容器の密閉空間内に収容させたまま撹拌させることができる。このため、撹拌対象物に異物混入することを防ぐことができるとともに、撹拌作業後に、撹拌軸を取り替えたり、洗浄したりする必要がなくコストを低減させることができる。
【0019】
また、本発明に係る収容容器は、内周壁部がフィルム状に成型された可撓性材料により形成されている。このため、内周壁部は、撹拌作業中は、撹拌軸の旋回運動に追随して動くことができ、収容容器内の撹拌対象物を適切に撹拌させることができる。また、撹拌作業中、撹拌軸は自転していないため、内周壁部と擦れることがなく、内周壁部を摩耗させ、孔をあけてしまうなどの不具合を生じることを防ぐことができる。
【0020】
したがって、本発明に係る収容容器は、コストを抑制し、かつ異物混入が生じないように適切に撹拌対象物を撹拌させることができるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る撹拌装置および収容容器は、以上に説明したように構成され、コストを抑制し、かつ異物混入が生じないように適切に撹拌対象物を撹拌させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施の形態に係る撹拌装置の概略構成の一例を示す側断面図である。
図2図1に示す撹拌装置が備えるまわり止め部の一例を示す図である。
図3】本発明の実施の形態に係る撹拌装置の概略構成の一例を示す側断面図である。
図4a】本発明の実施形態に係る収容槽の別の実施例を示す横断面図である。
図4b】本発明の実施形態に係る収容槽の別の実施例を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係る撹拌装置1の具体的な構成例について、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0024】
(撹拌装置の構成)
図1を参照して撹拌装置1の構成について説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る撹拌装置1の概略構成の一例を示す側断面図である。
【0025】
本実施の形態に係る撹拌装置1は、例えば、医薬、化学分野の生産プロセスにおいて、液またはスラリーの混合、溶解、晶析、濃縮、スラリー懸濁、及び気液接触等の撹拌処理に用いられる装置である。撹拌装置1は、直線状に延びた棒形または櫂形の撹拌軸4を旋回させて撹拌対象物の撹拌を行う。
【0026】
撹拌装置1は、その下方において、撹拌対象物を収容する収容容器2が設けられている。収容容器2は、図1に示すように有底筒型の収容槽3内に配置されている。収容容器2は、密閉された袋により形成されており、内部に撹拌対象物が収容される。図1では、特に図示していないが、収容容器2内に撹拌対象物を供給したり、該収容容器2内から撹拌対象物を外部に排出したりするためのコネクタが設けられていてもよい。コネクタは、例えば、外部から供給される撹拌対象物を流通させるチューブと接合される供給用開口部と、該収容容器2内の撹拌対象物を外部に排出する際に該撹拌対象物を流通させるチューブが接合される排出用開口部とを備えた構成とすることができる。供給用開口部および排出用開口部それぞれにチューブを接合しておく必要がない場合は、供給用開口部および排出用開口部をキャップで覆い、収容容器2の密封状態が維持されるように構成されることが好ましい。
【0027】
また、図1に示すように、収容容器2は、収容槽3内に配置された状態において、以下の構成を有する。すなわち、収容容器2は、外周を覆う外周壁部21と、収容容器2内に撹拌軸4を収納するための空間を形成するように有底筒状に設けられ、外周壁部21と共に撹拌対象物を収容するための密閉空間を形成する内周壁部22とを備える。内周壁部22は、図1に示すように撹拌軸4の形状に沿うような形に形成されている。具体的には、内周壁部22は、円柱形状の撹拌軸4の外形に沿うように有底円筒形状に形成されている。内周壁部22の内周面と撹拌軸4の外周面との間にはスペーサは介在しておらず、内周壁部22の内周面は撹拌軸4の外周面に接触する。また、収容容器2では、外周壁部21および内周壁部22はともに同じ素材(例えば、合成樹脂等)によりフィルム状に形成されており、外周壁部21と内周壁部22とを溶着させて収容容器2を形成する。このため、収容容器2は可撓性を有する密封された袋となっている。なお、収容容器2は、上記したように密封された袋により構成されるため、撹拌対象物を収容容器2内に収容した状態で運搬することが可能であり、また、外部から収容容器2内に異物が混入することがない。収容容器2を収容する収容槽3は、特に図示しないが載置台の上に載置されていてもよい。
【0028】
収容容器2の上方には、撹拌軸4を旋回させるための駆動装置5と、撹拌軸4の旋回運動の支点となる軸受部6とが設けられており、撹拌軸4はこれら駆動装置5および軸受部6に支持されている。より具体的には、駆動装置5と撹拌軸4の一方の端部(上端部)とが接合されることで駆動装置5は撹拌軸4を支持している。また、軸受部6は、撹拌軸4の両端部間における任意の位置で撹拌軸4を支持する。撹拌軸4を支持し、その旋回運動の支点となる軸受部6は、例えば球面軸受を採用することができる。
【0029】
そして、撹拌軸4は、撹拌軸の中心軸線Aが駆動装置の中心軸線Bに対してαだけ傾いた状態で上下方向に延伸するように配置されている。
【0030】
駆動装置5は、電気モータ等のアクチュエータ51とアクチュエータ51と連結されている回転部材52とを備えてなる構成である。回転部材52は、鉛直方向に延伸した出力軸52aと、出力軸52aと撹拌軸4の端部とを連結するリンク部52bとを有する。本実施形態では、駆動装置5の中心軸線Bと回転部材52の回転軸線とが一致するように構成されている。したがって、駆動装置5の中心軸線Bは、回転部材52の回転軸ともいえる。
【0031】
回転部材52の出力軸52aは、一方の端部でアクチュエータ51と連結されており、他方の端部でリンク部52bと連結されている。リンク部52bは、一方の端部が出力軸52aと連結され上下方向に延伸する第1連結部材52b1と、第1連結部材52b1の他方の端部から、第1連結部材52b1の延伸方向に対して略垂直な方向に突出した第2連結部材52b2とから構成されている。なお、図1に示すようにリンク部52bは、第1連結部材52b1が駆動装置5の中心軸線Bに対して傾いた状態で出力軸52aに接合されている。また、第2連結部材52b2の下面側で撹拌軸4の上端部が固定されている。なお、第2連結部材52b2と撹拌軸4との接続部には図示しないベアリングが設けられている。
【0032】
なお、本実施形態の撹拌装置1では、図1に示すように駆動装置5の中心軸線Bの位置は、収容槽3の中心軸線Cの位置と一致せず、ずれた状態となっている。これによって邪魔板(「バッフル」ともいう)を収容容器2内に入れた場合と同様の撹拌効果をえられる。しかしながら、これに限定されるものではなく、駆動装置5の中心軸線Bと、収容槽3の中心軸線Cとが一致する構成であってもよい。
【0033】
上記した構成を有する駆動装置5において、アクチュエータ51が動作すると、回転部材52の出力軸52aが回転駆動され、出力軸52aに連結したリンク部52bの第1連結部材52b1も回転する。第1連結部材52b1が回転すると、その端部で接合された第2連結部材52b2も、この第1連結部材52b1を回転中心として回転(周回)する。すると撹拌軸4の上部(第2連結部材52b2との接続部)が軸受部6の軸受中心Oを頂点として撹拌軸4の軸線Aを母線とする逆円錐の側面をなでるように運動する。これにより、撹拌軸4は、軸受部6の軸受中心を支点として、水平方向に撹拌軸4の端部が収容槽3の中心軸の軸線を中心とした円を描いて振れるように旋回することができる(撹拌軸4の下部が、軸受部6の軸受中心Oを頂点として撹拌軸4の軸線Aを母線とする円錐の側面をなでるように運動する)。
【0034】
このように、駆動装置5からの動力は、回転部材52の出力軸52aからリンク部52bを介して撹拌軸4に伝達されており、第2連結部材52b2に撹拌軸4の端部が接合されることで、出力軸52aの回転運動が、撹拌軸4の旋回運動へと変換される構成である。なお、撹拌軸4は、上記したように軸受部6の軸受中心Oを支点として旋回運動をするが、撹拌軸4自体は自転していない。
【0035】
上記したように撹拌軸4は、軸受部6の軸受中心Oを支点とし旋回運動する際に、撹拌軸4自体は自転しない構成であった。しかしながら、撹拌軸4が旋回運動を行うと、撹拌軸4に接する軸受部6からの抵抗により撹拌軸4が自転してしまう場合がある。そこで、図1に示すように撹拌軸4の自転を防止するため、まわり止め部7が備えられている。
【0036】
まわり止め部7は、上方に位置し架台8に固着された第1止め部材71と、その下方に位置し、撹拌軸4に固着された第2止め部材72とから構成されている。第1止め部材71は、図1の紙面左側から見たとき、図2に示すように略矩形の板において上下方向が長軸となる長孔が形成された、略U字型を逆さにした形状を有する金属性の板である。一方、第2止め部材72は、図1の紙面で正面視したときの形状が略L字型となる形状を有する金属性の板である。すなわち、第2止め部材72は、上下方向に延びた板の上方の端部を略水平方向に折り曲げて側面形状(図1で正面視したときの形状)がL字型となるように形成されている。そして、図2に示すように、まわり止め部7は、第1止め部材71の長孔部分に第2止め部材72の水平方向に折れ曲がった部分72aを指し込むように構成されている。なお、図2は、図1に示す撹拌装置1が備えるまわり止め部7の一例を示す図である。
【0037】
このため、撹拌軸4に固着された第2止め部材72は、第1止め部材71に対して上下方向には揺動可能であるが、左右方向への移動が規制されることとなる。これにより撹拌軸4が自転してしまうことを防止することができる。なお、水平方向に折れ曲がった部分72aは円柱状に形成されている。これにより、図2で示される左右方向の移動を規制しつつ、図2に示す側から見たとき、言い換えると図1において側方から見たときの撹拌軸4の動きが、円柱状の部材(水平方向に折れ曲がった部分72a)を略中心とした振り子状となることを可能とする。
【0038】
以上のように、本実施の形態に係る撹拌装置1は、駆動装置5により撹拌軸4を、軸受中心Oを支点として旋回させることにより撹拌対象物を撹拌させることができる。また、撹拌軸4は収容容器2の内周壁部22に収納させることができるため、収容容器2内の撹拌対象物に直接、接触することなく、かつ撹拌対象物を収容容器2の密閉空間内に収容させたまま、該撹拌対象物の撹拌を行うことができる。このため、撹拌対象物に異物混入することを防ぐことができるとともに、撹拌作業後に、撹拌軸4を取り替えたり、洗浄したりする必要がなくコストを低減させることができる。
【0039】
さらに、内周壁部22がフィルム状に成型された可撓性材料(例えば、合成樹脂)により形成されている。このため、内周壁部22は、撹拌作業中は、撹拌軸4の旋回運動に追随して動くことができ、収容容器2内の撹拌対象物を適切に撹拌させることができる。また、撹拌作業中、撹拌軸4は自転しないため、内周壁部22と擦れることがなく、内周壁部22を摩耗させ、孔をあけてしまうなどの不具合を生じることを防ぐことができる。なお、可塑性材料としては特に限定されないが、合成樹脂(例えば、PET、PE、PP、PVAやこれらを複数利用したもの)の他、ゴム材料(合成ゴムなど)も利用できる。
【0040】
なお、図3に示すように、内周壁部22の、撹拌軸4を挿入させる挿入口部23には、容器止め部9が設けられていてもよい。図3は、本発明の実施の形態に係る撹拌装置1の概略構成の一例を示す側断面図である。容器止め部9は、例えば、ゴムバンド等のような帯状部材により形成することができる。そして、挿入されている撹拌軸4の外周を挿入口部23部分が接して覆うようにこの容器止め部9により止められる。
【0041】
このように、容器止め部9を備える構成の場合、挿入口部23など収容容器2の一部を撹拌軸4に止めることができるため、撹拌作業中に可撓性を有する収容容器2の一部が移動してしまう範囲を小さくすることができる。このため、撹拌作業中に撹拌軸4と収容容器2とが擦れ、収容容器2が破損する可能性を抑制することができる。また、撹拌軸4は、上記したように、自転しないため、容器止め部9によって止められている挿入口部23と撹拌軸4とにおいて互いが擦れることがない。このため、容器止め部9によって挿入口部23と撹拌軸4とを接するように止めても、挿入口部23部分が擦れて破れる等の不具合が生じることがない。
【0042】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【0043】
例えば、収容容器2における密閉空間内に邪魔板を設置するようにしても良い。この場合、収容容器2内にフィルム状に成型された可塑性材料によって邪魔板を収納するための空間を形成し、かつ外周壁部21とともに前記撹拌対象物を収容する密閉空間を形成する内周壁部22を設けるようにしても良い。このフィルム状に成型された可塑性材料としては同一材料で一体成型していても良い。撹拌対象となる内容物によっては邪魔板を設けることで撹拌効果を高めることができる。
【0044】
また、図4aに示すように収容槽3の一部に水平断面視で凹部を設けることによって外部から収容容器2を強制的にへこませて邪魔板の代わりとしても良い。凹部については特に限定は無く、図4bに示すように収容槽3の上部から下部まで全体をへこませても良く、中間部分の一部だけをへこませるようにしても良い。また、複数箇所をへこませるようにしても良い。なお、図4aは、本発明の実施形態に係る収容槽3の別の実施例を示す横断面図である。また、図4bは、本発明の実施形態に係る収容槽3の別の実施例を示す側断面図である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、特に医薬、化学分野の生産プロセスにおいてシングルユース技術を採用する撹拌処理を実施するにあたり、撹拌対象物を効果的に撹拌することができるとともに、1回限りの使用で破棄する必要のある部材を低減させることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 撹拌装置
2 収容容器
3 収容槽
4 撹拌軸
5 駆動装置
6 軸受部
7 まわり止め部
8 架台
9 容器止め部
21 外周壁部
22 内周壁部
51 アクチュエータ
52 回転部材
52a 出力軸
52b リンク部
52b1 第1連結部材
52b2 第2連結部材
71 第1止め部材
72 第2止め部材
72a 水平方向に折れ曲がった部分
A 撹拌軸の中心軸線
B 駆動装置の中心軸線
C 収容槽の中心軸線C
O 軸受中心
図1
図2
図3
図4a
図4b