(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
燃料が流れる第1流路部と、オイルが流れる第2流路部とを含み、前記第1流路部を流れる前記燃料と前記第2流路部を流れる前記オイルとの間で熱交換を行う熱交換部と、
前記第2流路部と連通し、前記熱交換部を通過した前記オイルが流出する流出口を含む出口流路と、
前記流出口近傍に設けられ、流路径を絞ることにより前記熱交換部における前記オイルの圧力を前記燃料の圧力よりも大きくするための縮径部とを備え、
前記縮径部は、流路を遮る壁部と、前記壁部に形成された開口とを含み、
前記熱交換部において変動する燃料圧力の最大値よりも、前記熱交換部において変動するオイル圧力の最小値が大きくなるように、前記開口の内径および流路に沿った長さが設定されている、熱交換器。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
(第1実施形態)
まず、
図1〜
図6を参照して、本実施形態による熱交換器100の構成について説明する。第1実施形態では、プレートフィン型の熱交換器の例について説明する。また、第1実施形態では、航空機に搭載され航空機用燃料と航空機用オイル(潤滑オイル)との熱交換を行う熱交換器の例について説明する。
【0018】
図1に示すように、熱交換器100は、コア1と、ヘッダ部2、3および4とを備えている。コア1は、燃料5が流れる複数の第1流路部1aと、オイル6が流れる複数の第2流路部1bとを含む。コア1は、第1流路部1aを流れる燃料5と第2流路部1bを流れるオイル6との間で熱交換を行う熱交換部である。なお、
図1では、説明の便宜のため、第1流路部1aと第2流路部1bとにそれぞれ異なるハッチングを付して示している。なお、コア1は、本発明の「熱交換部」の一例である。
【0019】
ヘッダ部2は、燃料5をコア1(第1流路部1a)に対して流入および流出させる燃料5の入口および出口流路である。ヘッダ部3は、オイル6をコア1(第2流路部1b)から流出させるオイル6の出口流路である。また、ヘッダ部4は、オイル6をコア1(第2流路部1b)に対して流入させるオイル6の入口流路である。なお、ヘッダ部3は、本発明の「出口流路」の一例である。
【0020】
また、ヘッダ部2は、燃料5をコア1へ導入する入口ポート21と、コア1から燃料5を導出する出口ポート22とを含んでいる。ヘッダ部3は、コア1からオイル6を導出する出口ポート31を含んでいる。ヘッダ部4は、オイル6をコア1へ導入する入口ポート41(
図4参照)を含んでいる。第1実施形態では、ヘッダ部3の出口ポート31に、流路径を絞る縮径部50が設けられている。
【0021】
図2に示すように、熱交換器100は、たとえば航空機90に設置することができる。燃料5は、航空機90の燃料タンク91に貯留され、燃料ポンプ92によって熱交換器100に供給される。燃料5は、熱交換器100においてオイル6と熱交換をした後、エンジン93の燃焼器93aに供給される。オイル6は、航空機90のオイルタンク94に貯留され、オイルポンプ95によってエンジン93の潤滑部分(摺動部分)に供給された後、熱交換器100に導入される。オイル6は、燃料5との熱交換の後、オイルタンク94に戻される。この結果、熱交換器100では、エンジン93を潤滑するとともに熱を吸収したオイル6と燃料5との間で熱交換が行われることにより、燃料5が予熱されるとともに、オイル6が吸収した熱が排出される。
【0022】
図1に戻って、コア1は、複数の第1流路部1aと複数の第2流路部1bとを、チューブプレート10を介して交互に積層することにより構成されている。また、積層方向(Z方向)におけるコア1の両端には、それぞれサイドプレート11が設けられている。コア1は、全体として矩形箱状(直方体形状)に形成されている。チューブプレート10は、積層方向において隣接する第1流路部1aと第2流路部1bとを仕切る隔壁である。各第1流路部1aを流れる燃料5と各第2流路部1bを流れるオイル6とは、チューブプレート10を挟んで隣接する状態で流通し、チューブプレート10は、熱交換の1次伝熱面として機能する。このため、チューブプレート10は、高い熱伝導性を有するとともに厚みの小さい板状部材からなる。なお、以下では、第1流路部1aおよび第2流路部1bの積層方向をZ方向、コア1を中心としてヘッダ部3および4が設けられた方向をX方向、X方向およびZ方向と直交する方向をY方向という。
【0023】
個々の第1流路部1aは、Z方向のチューブプレート10と、チューブプレート10に挟まれた外周のサイドバー12aとによって区画されている。サイドバー12aは、
図3に示すように、第1流路部1aのX方向両側およびY2側端部に設けられており、第1流路部1aはヘッダ部2が配置されたY1側端部が開放されている。また、第1流路部1aのX方向中央には、Y1側端部からY2方向に延びる仕切り部材13aが設けられている。これにより、第1流路部1aは、Y1側端部(端面)に、仕切り部材13aによって区画された入口開口14aおよび出口開口15aを有する。また、第1流路部1aは、仕切り部材13aによって、往路、Uターン部および復路からなるU字状の流通経路を有する。入口開口14aから流入した燃料5は、往路をY2方向に進み、Y2側端部のUターン部でX1方向に曲がる。そして、燃料5は、Uターン部で反転して復路をY1方向に進んで出口開口15aから流出する。なお、
図3では、ヘッダ部3および4の図示を省略している。
【0024】
第1流路部1a内には、入口開口14aから出口開口15aに至る流通経路に沿ってコルゲートフィン(波状フィン)16aが設けられている。なお、コルゲートフィン16aは、入口開口14aから出口開口15aまで第1流路部1aの全体に設けられているが、
図3では図示の都合上、第1流路部1aの数カ所に部分的に示している。コルゲートフィン16aは、たとえば、フィンがピッチ方向に波打つように曲がるヘリンボーン型のフィンであり、第1流路部1aにおける2次伝熱面として機能する。コルゲートフィン16aのフィン間ピッチは、P1である。
【0025】
ヘッダ部2は、コア1のY1方向側の側面を覆うように設けられている。ヘッダ部2の入口ポート21は、各第1流路部1aの入口開口14aと連通するように形成されている。また、ヘッダ部2の出口ポート22は、各第1流路部1aの出口開口15aと連通するように形成されている。入口ポート21と出口ポート22とは、隔壁によって互いに分離されている。
【0026】
個々の第2流路部1bは、
図1に示すように、Z方向のチューブプレート10と、チューブプレート10に挟まれた外周のサイドバー12bとによって区画されている。サイドバー12bは、
図4に示すように、第2流路部1bの外周を取り囲むように設けられているものの、Y方向に延びる一対のサイドバー12bのうち、ヘッダ部3および4が配置されたY1側端部のみが第2流路部1bの内部を外部に開放している。これにより、第2流路部1bは、X2側端面のY1側端部に入口開口14bを有し、X1側端面のY1側端部に出口開口15bを有する。また、第2流路部1bのX方向中央には、Y1側端部からY2方向に延びる仕切り部材13bが設けられている。第2流路部1bは、仕切り部材13bによって、往路、Uターン部および復路からなるU字状の流通経路を有する。入口開口14bから流入したオイル6は、往路をY2方向に進み、Y2側端部のUターン部でX1方向に曲がる。そして、オイル6は、Uターン部で反転して復路をY1方向に進んで出口開口15bから流出する。このように、熱交換器100は、第1流路部1a内の燃料5の流通方向(
図3参照)と、第2流路部1b内のオイル6の流通方向とが同じ方向を向く、いわゆる並行流型の熱交換器である。なお、
図4では、ヘッダ部2の図示を省略している。
【0027】
第2流路部1b内には、入口開口14bから出口開口15bに至る流通経路に沿ってコルゲートフィン16bが設けられている。なお、コルゲートフィン16bは、入口開口14bから出口開口15bまで第1流路部1bの全体に設けられているが、
図4では図示の都合上、第1流路部1bの数カ所に部分的に示している。コルゲートフィン16bは、たとえば、ピッチ方向にオフセットしたコルゲートが交互に配列されるセレート型のフィンであり、第2流路部1bにおける2次伝熱面として機能する。コルゲートフィン16bのフィン間ピッチは、P2である。第2流路部1bのコルゲートフィン16bのピッチP2は、第1流路部1aのコルゲートフィン16aのピッチP1よりも小さい。そのため、第2流路部1bは、第1流路部1aよりも内部の圧力が高くなり易くなるように構成されている。
【0028】
ヘッダ部3は、コア1のX1方向側の側面において、各第2流路部1bの出口開口15bの形成部分を覆うように設けられている。ヘッダ部3は、各第2流路部1bの出口開口15bと連通するように形成されている。
【0029】
より具体的には、ヘッダ部3は、円筒状の出口ポート31と、Z方向に延びて各第2流路部1bの出口開口15bを覆うタンク部32(
図1参照)と、出口ポート31の先端の流出口33とを含む。第1実施形態では、この出口ポート31の内部において、縮径部50がヘッダ部3に一体形成されている。
【0030】
タンク部32は、各第2流路部1bから流出するオイル6を集合させる集合部として機能する。タンク部32の第2流路部1b側の開口は、第2流路部1bの出口開口15bの開口幅に対応する幅W(
図5参照)と、Z方向両端位置の第2流路部1bの出口開口15bを覆う高さH(Z方向寸法、
図1参照)とを有する。タンク部32にて合流したオイル6は、出口ポート31に導かれる。
【0031】
出口ポート31は、タンク部32から突出するようにヘッダ部3に1つ設けられており、タンク部32を介して各第2流路部1bと流出口33とを連通させている。出口ポート31は、
図6に示すように、円筒形状の管路部であり、内径D1を有する。内径D1は、流出口33の内径と略等しい。また、内径D1は、
図5に示すように、タンク部32の開口の幅Wよりも小さく、出口ポート31は、縮径部50を除いてヘッダ部3において流路径が最小となる部位である。縮径部50と流出口33との間には、オイル6をオイルタンク94側(
図2参照)へ送る配管96の接続のためのねじ部31aが形成されている。これにより、コア1を通過したオイル6が流出口33から流出して、オイルタンク94側へ送られる。
【0032】
第1実施形態では、縮径部50は、流路径を絞ることによりコア1におけるオイル6の圧力を燃料5の圧力よりも大きくするために設けられている。縮径部50は、コア1(第2流路部1b)よりもオイル6の流れの下流側で、かつ、流出口33よりも上流側の位置に配置されており、第1実施形態では流出口33の上流側近傍の位置に配置されている。より具体的には、縮径部50は、(縮径部50を除いて)ヘッダ部3において流路径が最小となる出口ポート31内の位置に配置され、出口ポート31の流路径をさらに絞るように設けられている。なお、ヘッダ部3は、縮径部50の出口側端部で内径を流出口33の内径と略一致するD1(出口ポート31の内径)まで段差状に拡大させて流出口33に接続するように形成されている。つまり、出口ポート31の流路径は、縮径部50の前後では流出口33の内径D1になる。
【0033】
第1実施形態では、縮径部50は、流路を遮る壁部51と、壁部51に形成された開口52とを含むオリフィスである。縮径部50は、この開口52によってヘッダ部3の流路径を絞るように構成されている。壁部51は、流路の延びる方向(X方向)と直交する円環状の板状形状(
図6参照)を有し、出口ポート31の内周面から半径方向内側に立ち上がるようにヘッダ部3(出口ポート31)に一体形成されている。開口52は、流出口33の内径D1よりも小さい内径D2を有する。また、開口52は、流路に沿った長さL1を有する。開口52の長さL1は、壁部51の厚みt1に一致する。
【0034】
第1実施形態では、コア1において変動する燃料圧力の最大値よりも、コア1において変動するオイル圧力の最小値が大きくなるように、開口52の内径D2および流路に沿った長さL1が設定されている。すなわち、コア1における燃料圧力やオイル圧力は、エンジン93の負荷(負荷に応じた燃料ポンプ92およびオイルポンプ95の動作)や燃料5およびオイル6の粘性などに応じて変動する。したがって、熱交換器100では、燃料5およびオイル6の圧力の許容変動範囲が仕様として予め設定される。これらの仕様に基づき、第1流路部1aにおける燃料圧力の最小値X1、最大値X2と、第2流路部1bにおけるオイル圧力の最小値Y1、最大値Y2とを設定することができる。開口52の内径D2および長さL1は、第1流路部1aにおける燃料圧力の最大値X2よりも、第2流路部1bにおけるオイル圧力の最小値Y1の方が大きくなる条件下(X2<Y1)で、所望の値となるように設定される。
【0035】
実際の設計上は、上記の許容変動範囲や、熱交換器100の設計仕様に基づく各部の圧力損失等をパラメータとしてシミュレーションを行うことにより、適切な開口52の内径D2および長さL1が算出されるとともに、試作機によって実験を行うことによって燃料圧力およびオイル圧力が所望の範囲に収まることが確認される。
【0036】
この結果、第1実施形態による熱交換器100のコア1では、(第1流路部1aにおける燃料圧力の最大値X2)<(第2流路部1bにおけるオイル圧力の最小値Y1)という関係が成立している。
【0037】
なお、第1実施形態において、開口52の内径D2および長さL1の寸法に関して、シミュレーションおよび実験によって決定するのは、流体(燃料およびオイル)の圧力値が厳密には理論値と一致しないためである。本願発明者は、実験の結果、第2流路部1bにおけるオイル圧力を所望の範囲に収めるために要求される開口52の許容寸法誤差範囲が、一般に熱交換器の設計に要求される許容誤差範囲よりも狭くなり、高い寸法精度を要求される場合があることを発見した。そのため、開口52としては、より寸法精度を出しやすい形状および開口数に形成されることが望ましい。
【0038】
そこで、第1実施形態では、壁部51には単一の開口52が形成されている。すなわち、縮径部50は、単一の開口52のみによって流路を絞るように構成されている。また、単一の開口52は、円形状を有する。開口52は、円筒状の出口ポート31と同心となる(流路断面の中心が一致する)ように設けられている。また、開口52は、壁部51を流路方向に沿って直線状に貫通している。また、開口52は、テーパのない貫通孔により形成されている。つまり、開口52は、長さL1の全長に渡って一定の内径D2を有する。
【0039】
図4に示すように、ヘッダ部4は、コア1のX2方向側の側面において、各第2流路部1bの入口開口14bの形成部分を覆うように設けられている。ヘッダ部4は、各第2流路部1bの入口開口14bと連通するように形成されている。ヘッダ部4は、入口ポート41と、タンク部42と、入口ポート41の先端の流入口43を含む。流入口43は、入口ポート41およびタンク部42を介して、第2流路部1bの入口開口14bと連通している。ヘッダ部4は、縮径部50が設けられていない点を除いて、基本的にヘッダ部3と同様の構成を有する。
【0040】
次に、第1実施形態による熱交換器100の作用について説明する。
【0041】
第1実施形態による熱交換器100では、
図2に模式的に示したように、第1流路部1aと第2流路部1bとの間を仕切るチューブプレート10が何らかの要因により破損するなどして、コア1内で漏れ(第1流路部1aと第2流路部1bとの間の漏れ)が発生する可能性を想定している。
【0042】
この場合、燃料5がオイル6側(第2流路部1b)に流出するケースと、オイル6が燃料5側(第1流路部1a)に流出するケースとを仮定することができる。第1実施形態による熱交換器100では、縮径部50によって、コア1内の第2流路部1bにおけるオイル圧力OPが、常時、第1流路部1aにおける燃料圧力FPよりも大きくなるため、コア1内で漏れが発生した場合に、圧力差によって燃料5がオイル6側(第2流路部1b)に流出することが抑制される。すなわち、仮にコア1内で漏れが発生した場合には、オイル6が燃料5側(第1流路部1a)に流出するケースのみとなる。
【0043】
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0044】
第1実施形態では、上記のように、流出口33の近傍に設けられ、流路径を絞ることによりコア1おけるオイル6の圧力を燃料5の圧力よりも大きくするための縮径部50を設ける。これにより、縮径部50よりも上流側のコア1の第2流路部1bにおけるオイル圧力を、第1流路部1aにおける燃料圧力よりも上昇させることができる。この結果、コア1内の第1流路部1a(燃料流路)と第2流路部1b(オイル流路)との間で漏れが発生した場合でも、相対的に高圧のオイル6が低圧の第1流路部1aに流出することになるため、燃料5がオイル6の流路(第2流路部1b)に流出することを抑制することができる。なお、この場合に第1流路部1aにオイル6が流出しても、オイル6は燃料5の供給先(エンジン93の燃焼器93a)で燃料5とともに燃焼させることができるので、燃料5がオイル6側に流出する場合のような摺動性の悪化が発生せずに済む。その結果、燃料5およびオイル6を利用するエンジン93と熱交換器100とを含むシステム全体の信頼性を向上させることができる。
【0045】
また、第1実施形態では、上記のように、縮径部50に、流路を遮る壁部51と、壁部51に形成された開口52とを設ける。そして、コア1において変動する燃料圧力の最大値X2よりも、コア1において変動するオイル圧力の最小値Y1が大きくなるように、開口52の内径D2および流路に沿った長さL1を設定する。これにより、エンジン93の負荷や、燃料5およびオイル6の物性、燃料ポンプ92およびオイルポンプ95の動作などの各種要因に起因する燃料圧力およびオイル圧力の変動を考慮して、燃料圧力が最も上昇した場合でもオイル圧力を燃料圧力よりも大きくすることができる。この結果、より確実に、燃料5がオイル6の第2流路部1bに流出することを抑制することができる。
【0046】
また、第1実施形態では、上記のように、壁部51をヘッダ部3に一体形成するとともに、単一の開口52を壁部51に形成する。これにより、開口52が形成された壁部51をヘッダ部3と別体で設ける場合と比較して、熱交換器100の構造を簡素化することができる。また、上記の通り開口52を寸法精度よく形成するには、ヘッダ部3に一体形成された壁部51に、加工によって開口52を形成することが好ましい。この際、複数の開口を形成する場合と異なり、単一の開口52を寸法精度よく形成するだけでよいので、容易かつ精度よく、燃料圧力よりも大きい所望のオイル圧力を得ることができる。
【0047】
また、第1実施形態では、上記のように、開口52を円形状に形成する。これにより、開口52を矩形形状などの円形状以外の形状に加工する場合と比較して、より容易に開口52の寸法精度を確保することができる。その結果、より精度よく、燃料圧力よりも大きい所望のオイル圧力を得ることができる。
【0048】
また、第1実施形態では、上記のように、縮径部50は、ヘッダ部3において流路径が最小となる出口ポート31に配置され、出口ポート31の流路径をさらに絞るように設けられている。これにより、縮径部50においてヘッダ部3を絞る絞り量を極力小さくすることができるので、縮径部50を形成することに伴う熱交換器100の重量増加を抑制することができる。この重量増加の抑制は、重量制限の厳しい航空機用熱交換器においては特に有効である。
【0049】
(第2実施形態)
次に、
図7および
図8を参照して、第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、プレートフィン型の熱交換器100の例を示した上記第1実施形態と異なり、シェルアンドチューブ型の熱交換器200の例について説明する。
【0050】
図7に示すように、第2実施形態の熱交換器200は、熱交換部101と、オイル6を熱交換部101に対して流入させる入口流路102と、オイル6を熱交換部101から流出させるオイル6の出口流路103とを備えている。
【0051】
熱交換部101は、燃料5が流れる第1流路部104と、オイル6が流れる第2流路部105(
図8参照)とを含む。また、熱交換部101は、円筒状のシェル110と、シェル110の両端開口をそれぞれ閉塞する一対のエンドプレート111と、一対のエンドプレート111を貫通するようにシェル110内に設けられた複数(多数)のチューブ(管路)112とを含む。なお、以下では、シェル110の中心軸方向をX方向、X方向と直交し入口流路102の延びる方向をZ方向という。
【0052】
第2実施形態では、
図8に示すように、燃料5が流れる第1流路部104は、チューブ112により構成されている。また、オイル6が流れる第2流路部105は、シェル110と、一対のエンドプレート111と、各チューブ112とによって区画されたシェル110の内部領域により構成されている。
【0053】
各チューブ112は、シェル110の中心軸と平行にX方向に延びるように設けられ、シェル110内を通って両端がそれぞれエンドプレート111をX方向に貫通している。各チューブ112は、半径方向に所定の間隔を隔てて配列されている。チューブ112(第1流路部104)には、X1側の入口開口112aから燃料5が流入し、X2側の出口開口112bから燃料5が流出する。なお、
図8では、一部のチューブ112のみを図示している。
【0054】
シェル110のX1側のエンドプレート111近傍における側面には、オイル6の入口開口113が形成されている。シェル110のX2側のエンドプレート111近傍における側面には、オイル6の出口開口114が形成されている。
【0055】
また、シェル110の内部(第2流路部105)には、軸方向と直交する半径方向に拡がるバッフル115および116が、軸方向Xに沿って複数配列されている。バッフル115は、中央部に貫通孔が形成され、外周部がシェル110の内周面に嵌め合わされた円環状のリングバッフルであり、中央部がオイル6の流通路となっている。バッフル116は、シェル110の中心から半径方向外側に拡がるように設けられた円盤状のディスクバッフルである。円盤状のバッフル116は、外周端部がシェル110の内周面から所定の間隔で離間するように設けられており、外周端部とシェル110の内周面との間の隙間がオイル6の流通路となるように構成されている。バッフル115および116は、X方向に沿って交互に並ぶように配列されており、各チューブ112がX方向にバッフル115および116を貫通している。
【0056】
入口流路102は、Z方向に延びる円筒状の管路であり、一端に流入口121が設けられ、他端が第2流路部105の入口開口113と連通している。また、出口流路103は、Z方向に延びる円筒状の管路であり、一端に流出口131が設けられ、他端が第2流路部105の出口開口114と連通している。
【0057】
このような構成により、入口流路102から第2流路部105に流入するオイル6は、バッフル115の中央の貫通孔と、バッフル116の外周部の隙間とを交互に通過しながら、全体としてX2方向に流れる。この間に第1流路部104(チューブ112)を流れる燃料5とオイル6との間で熱交換が行われる。そして、オイル6は、X2側の端部の出口開口114から出口流路103へ流出する。
【0058】
第2実施形態では、出口流路103の流出口131の近傍に、流路径を絞る縮径部150が設けられている。縮径部150は、第2流路部105の出口開口114よりも下流側で、かつ、流出口131よりも上流側の位置に配置されている。出口流路103は、縮径部150の出口側端部で内径を流出口131の内径と略一致するD3(出口流路103の内径)まで段差状に拡大させて流出口131に接続するように形成されている。
【0059】
縮径部150の構成は上記第1実施形態と同様であり、縮径部150は、流路を遮る壁部151と、壁部151に形成された単一の円形状の開口152とを含む。開口152の内径D4および流路に沿った長さL2(壁部151の厚みt2)は、熱交換部101において変動する燃料圧力の最大値よりも、熱交換部101において変動するオイル圧力の最小値が大きくなるように設定されている。
【0060】
実際には、第2実施形態のシェルアンドチューブ型の熱交換器200では、上記第1実施形態のプレートフィン型の熱交換器100とは構造が全く異なることから、開口152の内径D4および長さL2も、上記第1実施形態とは異なる値が採用されることになる。
【0061】
第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0062】
第2実施形態では、上記のように、流出口131の近傍に設けられ、流路径を絞ることにより熱交換部101におけるオイル6の圧力を燃料5の圧力よりも大きくするための縮径部150を設ける。これにより、プレートフィン型の熱交換器100の例を示した上記第1実施形態と同様に、シェルアンドチューブ型の熱交換器200においても、縮径部150よりも上流側の熱交換部101の第2流路部105におけるオイル圧力を、第1流路部104(チューブ112)における燃料圧力よりも上昇させることができる。この結果、万が一、熱交換部101内の第1流路部104(燃料流路)と第2流路部105(オイル流路)との間で漏れが発生した場合でも、燃料5がオイル6の流路(第2流路部105)に流出することを抑制することができる。すなわち、たとえシェル110内でチューブ112に破損が生じて漏れが発生した場合にも、高圧の第2流路部105側のオイル6が低圧の第1流路部104(チューブ112)側に流入することになるので、燃料5がオイル6の流路(第2流路部105)に流出することを抑制することができる。
【0063】
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0064】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0065】
たとえば、上記第1実施形態ではプレートフィン型の熱交換器の例を示し、上記第2実施形態ではシェルアンドチューブ型の熱交換器の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、燃料とオイルとの熱交換を行う熱交換器であれば、どのようなタイプの熱交換器であってもよい。
【0066】
また、上記第1実施形態では、航空機に搭載され航空機用燃料と航空機用オイル(潤滑オイル)との熱交換を行う熱交換器100の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、燃料とオイルとの熱交換を行う熱交換器であれば、どのような用途の熱交換器であってもよい。たとえば、自動車に搭載され、燃料とエンジンオイルとの熱交換を行う熱交換器であってもよい。
【0067】
また、上記第1実施形態では、第1流路部1aおよび第2流路部1bがそれぞれUターン部を含む流路形状を有する例を示したが、本発明はこれに限られない。第1流路部および第2流路部の流路形状は任意であり、Uターン部がなくてもよい。第1流路部および第2流路部は、直線状の流路形状を有していてもよいし、たとえばS字状などの屈曲した流路形状を有していてもよい。
【0068】
また、上記第1実施形態では、燃料5とオイル6とが同じ方向に流れる並行流型の熱交換器の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、燃料とオイルとが互いに反対向きに流れる向流型や、燃料とオイルとが互いに直交する向きに流れる直交流型の熱交換器であってもよい。
【0069】
また、上記第1実施形態では、縮径部50をヘッダ部3の出口ポート31に設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。縮径部は第2流路部よりも下流の流出口近傍に設けられていればよく、たとえば、縮径部をヘッダ部のタンク部に設けてもよい。ただし、この場合、タンク部32の内部を仕切るように壁部を設ける必要があるため、壁部が大型化するとともに重量が増大する。そのため、縮径部は、上記第1実施形態のように、流出口近傍で他の部位よりも流路径の小さくなる位置に設けるのが好ましい。
【0070】
また、上記第1実施形態では、縮径部50をヘッダ部3の出口ポート31に一体形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、開口が形成された壁部をヘッダ部とは別体で形成し、壁部をヘッダ部の内部に取り付けることにより、ヘッダ部に縮径部を設けてもよい。この場合、縮径部をヘッダ部に一体形成する場合よりも部品点数が増大する一方、壁部および開口を単品で形成することが可能であるため、開口の寸法精度が得やすいというメリットがある。
【0071】
また、上記第1および第2実施形態では、縮径部50(150)に単一の開口52(152)を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、開口が複数設けられてもよい。ただし、開口を複数設けた場合、それぞれの開口について寸法精度が要求されるため、開口の寸法精度の観点では単一の開口が好ましい。
【0072】
また、上記第1および第2実施形態では、円形状の開口52(152)を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、開口は円形状以外の他の形状であってもよい。たとえば、開口は矩形などの多角形形状であってもよいし、扇形や曲線状など、どのような形状であってもよい。ただし、後加工で開口を形成する場合、開口の寸法精度の観点では、円形状の開口が好ましい。
【0073】
また、上記第1および第2実施形態では、縮径部50(150)を壁部51(151)と、壁部に形成された開口52(152)とによって構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、縮径部は、流路径を絞ることが可能であればどのような構造であってもよい。たとえば、流路内に柱状の縮径部を設けることによって流路径を絞ってもよい。
【0074】
また、上記第1実施形態では、縮径部50をヘッダ部3に一体形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、縮径部をヘッダ部とは異なる他の部材に形成してもよい。たとえば、
図9に示す変形例のように、縮径部50を接続部材310に形成してもよい。この変形例のヘッダ部303には、縮径部は設けられていない。接続部材310は、筒形状を有し、一端側の第1筒部311と、他端側の第2筒部312とを含む。第1筒部311は、出口ポート31の内径D1と略等しい外径を有し、出口ポート31の内部に流出口33側から挿入されている。そして、第1筒部311の先端部に、壁部51および開口52を含む縮径部50が形成されている。したがって、この変形例では、縮径部50は、出口ポート31の流出口33に接続部材310が取り付けられることによって、流出口33近傍に設けられている。このように構成すれば、縮径部50を出口ポート31とは別体の接続部材310に設けることができるので、接続部材310単体において容易に縮径部50の寸法精度を確保することができる。
【0075】
また、この変形例では、第2筒部312は、第1筒部311よりも大きい内径を有し、内径が配管96の外径に略一致するように形成されている。このように、接続部材310の一端(第1筒部311)を流出口33の寸法に適合させ、接続部材310の他端(第2筒部312)を流出口33に接続する配管96の寸法に適合させるように形成すれば、縮径部50を形成する場合でも流出口33および配管96の寸法を既存の設計から変更する必要をなくすことができる。
【0076】
なお、
図9の変形例では、第1筒部311の外周面にねじ部313が形成され、ねじ部313が出口ポート31のねじ部31aにねじ込まれることによって接続部材310が出口ポート31に取り付けられる例を示している。接続部材310は、ねじによる結合の他、ボルトなどの締結部材によって出口ポート31に取り付けられてもよい。また、
図9では、接続部材310と配管96との接続部分の詳細な図示を省略しているが、接続部材310と配管96との接続も、嵌合面にねじ部を設けることによるねじ込みによる接続、または、ボルトなどの締結部材を用いた締結による接続などの接続方法を採用することができる。接続部材310および配管96は、内嵌めおよび外嵌めのいずれで接続してもよい。