(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記制振装置では、可動マスの揺動周期をチューニングするには、ジャッキ等で可動マス31を下から支えてから、アーム32を可動マスから取り外した後、アーム32の長さを変更し、可動マス31とアーム32とを連結するブラケット33の長さもアーム32の変更長さだけ変更しなくてはならず、チューニング作業が非常に面倒な作業が強いられる。
【0008】
また、
図16に示すように、軸受とピンを廃止してアーム42を板ばねとしてフレーム40と可動マス41に溶接し、アーム42と可動マス41とでラーメン構造を構成すると、アーム42が撓むので微振動に対して可動マス41が揺動でき、高層建築物の微振動に対して充分な制振効果を得られる。揺動周期のチューニングにはアーム42の板ばねのばね剛性を変更で足りるから、アーム42に剛性を調整する添え板を取り付ける等で済み、チューニング作業は
図15の制振装置よりは容易ではある。しかしながら、
図16の制振装置では、アーム42の溶接部分に可動マスの重量が作用するため、溶接部分の耐荷重の関係で吊り下げ可能な可動マスの重量に制限があって揺動周期のチューニング幅に制限があるため、建築物によっては良好な制振効果を得られない場合がある。
【0009】
そこで、本発明は前記不具合を改善するために創案されたものであって、その目的とするところは、大重量の可動マスにも対応して良好な制振効果を得られ、かつ、揺動周期のチューニング作業が容易な制振装置の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記した目的を達成するために、本発明の課題解決手段における制振装置は、フレームから可動マスを揺動可能に吊り下げるアームと、フレーム或いは可動マスに一端が固定され他端がアームに回転可能に連結される板ばね部材を備えているので、可動マスを支えるなどの作業を要せずして可動マスの揺動周期をチューニングできる。また、可動マスの重量を支持するのはアームであり、板ばね部材は可動マスの重量を支持しないので、大重量の可動マスにも対応できる。
【0011】
また、請求項2の制振装置では、可動マスがアームによりフレームに対して直交する二方向へ揺動可能に吊り下げられ、板ばね部材が可動マスの二方向の揺動方向のうち一方の移動方向に対してアームのフレームに対する揺動を抑制するように連結されるので、直交方向で固有周期の異なる高層建築物の振動に対して良好な制振効果が得られる。
【0012】
さらに、請求項3の制振装置では、板ばね部材が一対の板ばねと、各板ばねの両端を連結する一対のブラケットと、各板ばね間に移動可能に介装されて各板ばねを連結する
連結ブロックを備えているので、板ばね部材のばね剛性をアームとフレーム或いは可動マスに取り付けた状態で調整でき、可動マスの揺動周期のチューニング作業を非常に簡単かつ安全に行える。
【0013】
そして、請求項3の制振装置では、アームがフレーム或いは可動マスに固定的に設けた連結軸に回転自在に連結され、板ばね部材の一方のブラケットが連結軸に回転不能に連結され、板ばね部材の他方のブラケットがアームの軸部に回転自在に連結されるようになっている。そのため、板ばね部材のアームとフレーム或いは可動マスへの装着は非常に簡単である。
【0014】
また、請求項4の板ばね部材は、一対の板ばねと、各板ばねの両端を連結する一対のブラケットとを備えているので、このように、板ばね部材が両端にブラケットを備えてユニット化されるので、制振装置以外の機器への設置が容易であり、制振装置に用いる以外の用途へも使用可能となる。
【0015】
さらに、請求項
4の板ばね部材は、各板ばね間に移動可能に介装されて各板ばねを連結し
てばね剛性を調整する
連結ブロックと
をさらに備える。板ばね部材のばね剛性も
連結ブロックにより容易に変更できるから、ばね剛性の調整が必要な機器に対して好適となる。
加えて、請求項4の板ばね部材は、各板ばねが長手方向に等ピッチで並べられて三つの列をなす取付孔を有し、中央の列の取付孔は、他の列の取付孔に対して半ピッチだけ長手方向へずらして配置され、連結ブロックが取付孔のうち、中央の列の一つの取付孔とこの取付孔にもっとも近い位置に配置される他の列の同一高さにある二つの取付孔に符合する位置にボルト挿通孔を有している。このようにすることで、板ばねに対する連結ブロックの取付位置を細かく調整でき、板ばね部材のばね剛性を細かく調整できる。
【0016】
また、請求項
5の板ばね部材では、連結ブロックは、前記各板ばね間に介装されて、ボルトおよびナットによって前記各板ばねに一体化されるので、連結ブロックの板ばねへの取付位置の移動が容易で、可動マスの揺動時に大きな力が作用する板ばねと連結ブロックを強固に一体化できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の制振装置によれば、大重量の可動マスにも対応して良好な制振効果を得られ、かつ、揺動周期のチューニング作業が容易となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図示した実施の形態に基づいて、この発明を説明する。
<第一の実施の形態>
第一の実施の形態における制振装置D1は、
図1および
図2に示すように、基本的には、フレーム1と、可動マスMと、フレーム1に可動マスMを吊り下げるアーム2と、一端がフレーム1に固定的に連結されるとともにアーム2に回転自在に連結される板ばね部材Sとを備えて構成されている。
【0021】
制振装置D1は、図示しない高層建築物の屋上や上層階等に設置されており、アーム2がフレーム1および可動マスMに回転自在に連結されていて、高層建築物が振動するとアーム2がフレーム1に対して揺動し、アーム2によって吊り下げられた可動マスMが同様にアーム2の揺動方向に振動し、慣性力を作用させて高層建築物の振動を抑制するようになっている。
【0022】
フレーム1は、
図1および
図2に示すように、上方から見て四角形の四つの頂点からそれぞれ立設される四つの柱1aと、柱1aの上端と柱1aの上端をそれぞれ連結する四つの梁1bとで構成される門型フレームとされている。
【0023】
このフレーム1の梁1bのうち、対向する一対の下方には、それぞれ二つのアーム2が取り付けられおり、このアーム2の先端に可動マスMが連結されている。したがって、可動マスMは、四つのアーム2によって支持されてフレーム1に吊り下げられている。
【0024】
各アーム2は、
図2から
図4に示すように、ロッド部2aと、ロッド部2aの両端に設けた孔2b,2cと、孔2b,2c内に装着される自動調芯のコロ軸受2d,2eとを備えている。他方、フレーム1の梁1bの四箇所には、
図3に示すように、連結軸3aと、連結軸3aを固定的に保持して当該連結軸3aをフレーム1に連結する軸取付部3b,3cとを備えた金具3が取り付けられている。このように、連結軸3aは、フレーム1に対して固定的に取り付けられている。また、可動マスMの上面の四箇所にも、
図4に示すように、連結軸4aと、連結軸4aを固定的に保持して当該連結軸4aを可動マスMに連結する軸取付部4b,4cとを備えた金具4が取り付けられている。連結軸4aは、可動マスMに対して固定的に取り付けられている。
【0025】
そして、このように構成された四つのアーム2のコロ軸受2d,2e内にそれぞれ対応するフレーム1の四箇所および可動マスMの四箇所に取り付けた金具3,4の連結軸3a,4aを挿通して、アーム2がフレーム1および可動マスMに対して同一方向に回転可能に連結される。これにより、アーム2がフレーム1と可動マスMとに対して連結軸3a,4aを中心として回転が許容されるヒンジ結合されて、フレーム1に対して各アーム2が揺動すると、可動マスMが姿勢を変えずにフレーム1に対しアーム2と同一方向へ揺動できる。アーム2の
図3中上端は、軸取付部3b,3c間に配置されて連結軸3aの外周に装着され、アーム2の
図4中下端は、軸取付部4b,4c間に配置されて連結軸4aの外周に装着されていて、アーム2がフレーム1から、可動マスMがアーム2からそれぞれ脱落しないように配慮されている。なお、連結軸3aの両端は、
図3に示すように、軸取付部3b,3cの内側とは反対の外側へ張り出すように突出しており、連結軸4aの両端も、
図4に示すように、軸取付部4b,4cの内側とは反対の外側へ張り出すように突出している。なお、アーム2の金具3,4への連結に際して、コロ軸受2d,2eを用いているが、これ以外の軸受を用いてもよい。
【0026】
また、アーム2のロッド部2aの途中には、
図3に示すように、揺動方向およびロッド
部2aの軸線に対して直交する方向であってロッド部2aの両側へ突出する軸部2fが設けられている。
【0027】
板ばね部材Sは、
図5に示すように、一対の板ばね5,5と、各板ばね5,5の両端を連結する一対のブラケット6,7とを備えて構成されている。
【0028】
各板ばね5,5は、撓む方向が一致するように並行配置されて、
図1中上端と下端の両端がブラケット6,7に溶接されており、ブラケット6,7
によって互いが連結されている。よって、一方のブラケット6に対して他方のブラケット7を各板ばね5,5の撓みが許容される方向へ変位させると、各板ばね5,5が撓んで板ばね部材Sは前記変位を抑制する弾発力を発揮するようになっている。なお、板ばね5の本数は、ばね剛性の設定によって自由に設定でき、ブラケット6,7と板ばね5の一体化に当たり溶接以外にもボルト締結等のその他の連結手段を用いてもよい。
【0029】
ブラケット6は、
図5に示すように、この場合、断面釣鐘型の形状とされており、平坦な端部に各板ばね5,5が溶接されて板ばね5,5に一体化されており、中央には、取付孔6aが設けられている。さらに、ブラケット7も
図5に示すように、断面釣鐘型の形状とされており、平坦な端部に各板ばね5,5が溶接されて板ばね5,5に一体化されており、中央には、取付孔7aが設けられているが、この取付孔7aには、コロ軸受7bが装着されている。
【0030】
ブラケット6の孔6a内にフレーム1に取り付けた金具の連結軸3aの端部を挿入し、ブラケット6をこの連結軸3aに回転不能に取り付け、ブラケット7の孔7aに保持されるコロ軸受7b内にアーム2のロッド部2aに設けた軸部2fを挿入し、板ばね部材Sをフレーム1とアーム2に連結する。なお、ブラケット6の孔6aと、連結軸3aの孔6aに挿入される部分の断面形状を同形状であって円以外の形状とし、ブラケット6を連結軸3aに対して回り止めして、ブラケット6を連結軸3aに回転不能に取り付けるようにしてもよい。また、たとえば、連結軸3aの両端に螺子部を設けておき、ブラケット6を連結軸3aの螺子部に螺着される二つのナットで両側から締め付けて回転不能に取り付けるようにしてもよい。このように、ブラケット6は、フレーム1に対して不動の連結軸3aに回転不能に取り付けられているので、板ばね部材Sの一端はフレーム1に対して固定される。他方のブラケット7は、アーム2の軸部2fにコロ軸受7bを介して取り付けられているので、アーム2にヒンジ結合されて回転自在に取り付けられている。よって、板ばね部材Sは、上端がフレーム1に剛結合され、下端が可動マスMにヒンジ結合されるので、板ばね部材Sの全体としては、片持ち梁のように振る舞う。すると、アーム2がフレーム1に対して揺動すると、フレーム1に対して回り止めされるブラケット6に対し、ブラケット7がアーム2とともに揺動するため各板ばね5,5が撓み、板ばね部材Sはアーム2の鉛直に吊り下げられた位置からの揺動を抑制する弾発力を発揮するようになる。
【0031】
板ばね部材Sがない状態では、アーム2の長さと可動マスMの重量とで可動マスMの揺動周期が決せされるが、板ばね部材Sを前述のように装着すると、アーム2の揺動が板ばね部材Sによって抑制されるため、板ばね部材Sのばね剛性が大きければ大きくなるほど、可動マスMの揺動周期は短くなる。
【0032】
よって、板ばね部材Sをフレーム1とアーム2へ連結すれば、可動マスMの揺動周期をチューニングできる。このように、揺動周期をチューニングには、板ばね部材Sをフレーム1とアーム2へ連結するのみであるから、可動マスMを支えるなどの作業が不要であり、チューニング作業を容易かつ安全に行える。そして、可動マスMの重量を支持するのはアーム2であり、板ばね部材Sは可動マスMの重量を支持せず、アーム2の揺動による変位に対して、アーム2の揺動を抑制する弾発力を発揮するのみであるから、大重量の可動マスMにも対応でき、揺動周期のチューニング幅が向上し、可動マスMの揺動周期を高層建築物に最適な揺動周期に設定できるので、良好な制振効果が得られる。したがって、本発明の制振装置によれば、大重量の可動マスMにも対応して良好な制振効果を得られ、かつ、揺動周期のチューニング作業が容易となる。
【0033】
なお、この場合、連結軸3aが軸取付部3b,3cの内側とは反対の外側へ突出し、軸部2fがロッド部2aの両側へ突出しており、アーム2の
図3中左右両側に板ばね部材Sを一つずつ装着できるようになっている。つまり、本例では、一つのアーム2に対して、二つ板ばね部材Sを設けているが、一つの板ばね部材Sで足りる場合には、一つのアーム2に対して一つの板ばね部材Sを設けるようにしても良い。また、本例では、全てのアーム2に板ばね部材Sを装着するようになっているが、可動マスMの揺動周期の設定によって、四つのうち一部のアーム2にのみ板ばね部材Sを装着してもよい。
【0034】
また、板ばね部材Sは、ブラケット6を可動マスMに取り付けた金具4の連結軸4aに固定し、ブラケット7をアーム2の軸部2fに回転自在に連結して、取り付けてもよい。このように板ばね部材Sを取り付けても、可動マスMがフレーム1に対して揺動する際に、可動マスMに対してアーム2も揺動するため、固定端であるブラケット6に対して板ばね5,5を撓ませるようにブラケット7が変位する。板ばね部材Sは、可動マスMの揺動によって片持ち梁のように振る舞って可動マスMに対するアーム2の揺動を抑制する弾発力を発揮する。よって、板ばね部材Sを可動マスMとアーム2へ連結しても、可動マスMの揺動周期をチューニングできる。
【0035】
また、板ばね部材Sは、板ばね5,5の両端にブラケット6,7を備えているので、フレーム1に設けた連結軸3aとアーム2に設けた軸部2fへ、或いは、可動マスMに設けた連結軸4aとアーム2に設けた軸部2fへ、非常に簡単な作業で板ばね部材Sをフレーム1とアーム2へ、或いは、可動マスMとアーム2へ装着できる。
【0036】
なお、板ばね部材Sは、ブラケット6を廃止でき、一本または複数本の板ばね5と、板ばねの端部に設けたブラケット7とで構成されてもよく、その場合、板ばね5のブラケット7が設けられていない端部をフレーム1或いは可動マスMへ溶接、ボルト締結などの連結手段によって固定的に連結するようにしてもよい。
【0037】
さらに、ブラケット7の取付孔7aにコロ軸受7bが装着されており、アーム2の軸部2fに回転自在に装着されるので両者の回転に際して摩擦抵抗が少なく
なってアーム2の円滑な揺動を妨げないという利点があるが、コロ軸受7bを設けずに環状のブッシュを設けてもよい。
【0038】
また、アーム2に設ける軸部2fの位置については、長さの異なる複数種の板ばね部材Sがある場合、
アーム2に軸方向に沿って複数の孔を設けておき、この孔に軸部2fを着脱可能としておき、板ばね部材Sの長さに応じて、軸部2fを装着する孔を選択するようにしてもよい。
【0039】
可動マスMの揺動周期を変更するには、ばね剛性の異なる板ばね部材Sへ交換して対応できるが、
図6に示すように、板ばね部材Sにおける各板ばね5,5間に
連結ブロック8を設ければ、板ばね部材Sのばね剛性を調整できる。
【0040】
以下、板ばね部材Sのばね剛性の調整する
連結ブロック8と
連結ブロック8を設置するための板ばね5の具体的構造について説明する。板ばね5,5には、
図7に示すように、長手方向に沿って複数が等間隔に等ピッチで並べられて三つの列A,B,Cをなす取付孔hを備え、中央の列Bにおける取付孔hは、他の列A,Cの取付孔hに対して当該列A,C内の取付孔h間のピッチ(図中で長さp)の半分の長さ(図中で長さp/2)分だけ長手方向へずらして配置されている。
【0041】
そして、この取付孔hを利用して、板ばね5,5間に介装されて板ばね5,5同士を連結する連結ブロック8が取り付けられる。より詳細には、連結ブロック8は、
図8に示すように、直方体であって、板ばね5,5間に挿入した際に、列Aの取付孔hに対向する位置に設けたボルト挿通孔8aと、列Bの取付孔hに対向する位置に設けたボルト挿通孔8bと、列Cに対向する位置に設けたボルト挿通孔8cとを備えている。また、ボルト挿通孔8a,8cは、連結ブロック8に対して連結ブロック8の上下方向中央を水平に通る仮想線Vから取付孔h間のピッチの四分の一の長さを空けて同じ高さに設けられ、ボルト挿通孔8bは、連結ブロック8に対して前記仮想線Vからボルト挿通孔8a,8cとは反対側の下方へ前記ピッチの四分の一の長さ分だけ空けて設けられている。よって、ボルト挿通孔8bは列Bの取付孔hに対応すべく、取付孔h間のピッチの半分の長さだけボルト挿通孔8a,8cよりも下方に設けられている。つまり、連結ブロック8は、取付孔hのうち、中央の列Bの一つの取付孔hとこの取付孔hにもっとも近い位置に配置される他の列A,Cの同一高さにある二つの取付孔hに符合する位置にボルト挿通孔8a,8b,8cを備えている。
【0042】
この連結ブロック8を、
図7および
図9に示すように、板ばね5,5間に挿入して、ボルト挿通孔8a,8cを列A,Cの同じ高さに設けられた任意の選択した取付孔hに対向させると、ボルト挿通孔8a,8cが対向する列A,Bの取付孔hよりも半ピッチ低い位置に設けられた列Bの取付孔hにボルト挿通孔8bが対向する。この状態で、板ばね5,5における取付孔hとこれに対向するボルト挿通孔8a,8b,8cのそれぞれにボルト10を挿入し、ボルト10の先端にナット11を螺着すると、連結ブロック8を挟みこんだ板ばね5,5が両側から締め付けられて、連結ブロック8と板ばね5,5とが連結されて一体化される。
【0043】
また、連結ブロック8を
図7中の破線で示した状態から一点鎖線で示すように(
図9中では実線で示した状態から一点鎖線で示すように)天地逆にして板ばね
5,5間に挿入して、ボルト挿通孔8a,8cを列A,Cの同じ高さに設けられた任意の選択した取付孔hに対向させると、ボルト挿通孔8a,8cが対向する列A,Bの取付孔hよりも半ピッチ高い位置に設けられた列Bの取付孔hにボルト挿通孔8bが対向する。この状態で、板ばね5,5における取付孔hとこれに対向するボルト挿通孔8a,8b,8cのそれぞれにボルト10を挿入し、ボルト10の先端にナット11を螺着すると、連結ブロック8を挟みこんだ板ばね5,5が両側から締め付けられて、連結ブロック8と板ばね5,5とが連結されて一体化される。
【0044】
連結ブロック8をこのように取り付け、連結ブロック8のボルト挿通孔8a,8b,8cを対向させる取付孔hを選択すれば、連結ブロック8を板ばね5,5に対して取付孔h間のピッチの半分のピッチ毎に位置を変えて取り付け可能となる。なお、
図10に示すように、板ばね5,5に取付孔hを二列に長手方向に並べて配置し、連結ブロック8にも二つのボルト挿通孔8a,8bのみを設ける場合、連結ブロック8を板ばね5,5に設置する位置について最小で
図10中実線の位置から破線で示す位置へ変更でき、取付孔h間のピッチ毎にその取付位置を変更できるのでそのようにしてもよい。しかしながら、前記したように、三列A,B,Cに取付孔hを設けて中央の列Bの取付孔hを半ピッチずらして設け、連結ブロック8についても各列A,B,Cの取付孔hに対応する位置にボルト挿通孔8a,8b,8cを設ければ、板ばね5,5に対する連結ブロック8の取付位置を半ピッチ毎に変更できる。
【0045】
そして、連結ブロック8を板ばね5,5に装着すると、板ばね部材S内では、板ばね5,5のブラケット6側端である一端から連結ブロック8が装着される位置までの部位と連結ブロック8とでラーメン構造が構成され、板ばね5,5の連結ブロック8よりもブラケット7側は片持ち梁として振る舞うので、連結ブロック8を板ばね5,5へ取り付ける位置によって板ばね部材Sの全体としての撓み剛性を調節できる。なお、板ばね部材S内でラーメン構造が構成されるが、ブラケット7がアーム2の軸部2fにヒンジ結合されるので、板ばね部材Sとアーム2との関係では、板ばね部材Sの全体としては片持ち梁として機能する。
【0046】
板ばね部材Sの撓み剛性は、連結ブロック8を板ばね5,5の中央に設ける場合、最も高くなるので、このように設定すると可動マスMの揺動周期が最も短くなり、板ばね5,5の中央から上端側へ或いは下端側へ連結ブロック8をずらせばずらすほど、板ばね部材Sの撓み剛性が小さくなり、可動マスMの揺動周期が長くなる。
【0047】
このように、可動マスMの揺動周期の調節は、連結ブロック8の板ばね5,5へ取り付ける取付位置によって行え、板ばね部材Sをアーム2とフレーム1或いは可動マスMに取り付けた状態で連結ブロック8の位置調整作業を行えるから、可動マスMの揺動周期のチューニング作業を非常に簡単かつ安全に行える。
【0048】
なお、連結ブロック8の板ばね5,5への取付位置の変更については、板ばね5,5に設けた取付孔hと連結ブロック8に設けたボルト挿通孔8a,8b,8cを利用しボルト10とナット11とで行うようにしているので、連結ブロック8の板ばね5,5への取付位置の移動が容易で、可動マスMの揺動時に大きな力が作用する板ばね5,5と連結ブロック8を強固に一体化できる点で優れているが、他の方法を採用してもよい。
【0049】
また、本例では、板ばね5,5に三列A,B,Cに取付孔hを設けて中央の列Bの取付孔hを半ピッチずらして設け、連結ブロック8についても各列A,B,Cの取付孔hに対応する位置にボルト挿通孔8a,8b,8cを設けているので、板ばね5,5に対する連結ブロック8の取付位置を細かく調整でき、板ばね部材Sのばね剛性を細かく調整できる。
【0050】
板ばね部材Sは、両端にブラケット6,7を備えてユニット化されており、制振装置D以外の機器への設置が容易であり、制振装置D1に用いる以外の用途へも使用可能である。たとえば、構造物と床との間に床の上下方向の振動を吸収する目的での使用も可能であるし、機器の振動を抑制するばね要素としても使用できる。そして、
連結ブロック8を備えている場合には、板ばね部材Sのばね剛性も容易に変更できるから、ばね剛性の調整が必要な機器に対して好適となる。
<第二の実施の形態>
つづいて、第二の実施の形態における制振装置D2について説明する。第二の実施の形態における制振装置D2は、
図11に示すように、アーム2がフレーム1に対して金具3に代え、さらに、可動マスMに対して金具4に代えて、ユニバーサルジョイント12,15を介して連結されている点で第一の実施の形態の制振装置D1と相違している。第二の実施の形態における制振装置D2の他の部材については、制振装置D1と同じ部材で構成されており、異なる点は前記した部分のみである。よって、説明の重複を避けるため、第二の実施の形態の制振装置D2と第一の実施の形態の制振装置D1と同じ部材については同じ符号を付すのみとして詳しい説明は省略する。
【0051】
ユニバーサルジョイント12は、
図12に示すように、互いに直交する連結軸13a,13a,13bを備えたスパイダ13と、連結軸13a,13aをそれぞれ回転自在に保持してフレーム1に取り付けるフレーム側金具14,14を備えて構成されている。
【0052】
そして、連結軸13bにコロ軸受を介してアーム2を連結するようになっており、アーム2は、連結軸13bを軸として
図13中上下方向となるX方向へ揺動可能となっている。また、スパイダ13が連結軸13aを軸として
図13中左右方向へ揺動できるので、アーム2は、
図13中左右方向となるY方向へも揺動できるようになっている。
【0053】
ユニバーサルジョイント15は、詳細には図示しないが、ユニバーサルジョイント12と同様に、互いに直交する連結軸16a,16a,16bを備えたスパイダ16と、連結軸16aを回転自在に保持して可動マスMに取り付けるフレーム側金具17,17を備えて構成されている。連結軸16bにコロ軸受2eを介してアーム2を連結するようになっており、アーム2は、可動マスMに対してもXYの両方向へ揺動可能となっている。
【0054】
よって、可動マスMは、フレーム1に対して直交するXYの二方向へ揺動可能に吊り下げられている。そして、この例では、
図14に示すように、上方から長方形の高層建築物を見下ろす視点で見たときに、高層建築物の短手方向を可動マスMの
図14中X方向に一致させ、高層建築物の長手方向を可動マスMの
図14Y方向に一致させてある。
【0055】
板ばね部材Sは、アーム2の
図11中の左右方向、つまり、Y方向への揺動に対して、これを抑制する弾発力を発揮するように取り付けられている。具体的には、軸部2fの取付向きと連結軸13bの向きをそれぞれ一致させてあり、ブラケット6を連結軸13bに回転不能に取り付け、ブラケット7をアーム2の軸部2fに回転自在に連結して、板ばね部材Sをアーム2とフレーム1との間に介装してある。
【0056】
このように板ばね部材Sを取り付けると、フレーム1に対してアーム2が
図13中左右方向へ揺動すると板ばね部材Sにおける板ばね5,5が撓んで弾発力を発揮する。これに対して、アーム2が
図13中上下方向へ揺動しても板ばね部材Sにおける板ばね5,5が撓まないために、板ばね部材Sは、アーム2の揺動を妨げる弾発力を発揮しない。つまり、板ばね部材Sは、可動マスMのY方向への揺動のみに対して弾発力を発揮する。
【0057】
このように板ばね部材Sは、Y方向の可動マスMの揺動に対して弾発力を発揮するので、可動マスMのY方向の揺動周期をX方向の揺動周期に比較して短くできる。他方、高層建築物は、
図14に示すように、上方から見て長方形である場合、
図14中上下方向である短手方向の剛性と
図14中左右方向である長手方向の剛性を比較すると、短手方向の剛性の方が長手方向の剛性よりも低い。したがって、このような長方形の高層建築物は、短手方向の固有周期は、長手方向の固有周期よりも短くなる。
【0058】
制振装置D2の可動マスMの
図14中上下方向の揺動周期は、板ばね部材Sによる弾発力の影響を受けないので、可動マスMの
図14中左右方向の揺動周期よりも長い。つまり、この制振装置D2は、可動マスMの揺動周期が長くなるX方向を高層建築物の固有周期が長くなる方向へ一致させてあり、板ばね部材Sの弾発力の発揮により可動マスMの揺動周期が短くなるY方向を高層建築物の固有周期が短くなる方向へ一致させてある。そして、可動マスMのX方向への揺動周期を高層建築物の短手方向の固有周期に一致するように設定しておき、可動マスMのY方向への揺動周期を高層建築物の長手方向の固有周期に一致するように板ばね部材Sでチューニングすれば、一つの制振装置D2で高層建築物のXYの両方向の振動に対して良好な制振効果が得られる。
【0059】
前述のとおり、板ばね部材Sは、可動マスMの揺動周期を短くするように機能するから、板ばね部材Sの弾発力で可動マスMの揺動を抑制する方向を高層建築物の長手方向に一致させるようにすればよい。
【0060】
なお、板ばね部材Sは、可動マスMとアーム2とを連結するユニバーサルジョイント15の連結軸16aにブラケット6を回転不能に連結し、アーム2の軸部2fにブラケット7を回転自在に連結して、取り付けるようにしてもよい。
【0061】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。