【実施例】
【0014】
実施例に係る伝動装置の∨ベルト調整装置につき、
図1から
図8を参照して説明する。
図1に示されるように伝動装置10は、駆動機11及び従動機12が架台13に固定されて主に構成されている。駆動機11は、調整基材14を介して架台13に固定されており、従動機12は、固定具15により架台13に対して移動不能に固定されている。
【0015】
調整基材14は架台13に対してボルト・ナット30,30,…により移動不能に固定されており、上面部14aにはレール状の溝部16,16が2本平行に設けられている。駆動機11は、下部に設けられた固定片25,25,…に取付けられるボルト・ナット17,17,…により調整基材14と固定されるようになっている。詳しくは固定片25と溝部16周辺の上面部14aとがボルト・ナット17により上下に挟みこまれて固定されている(
図6参照)。そして、これらボルト・ナット17,17,…の締結が緩められることで、架台13に対する駆動機11の位置を左右に微調整することが可能とされている。尚、前後、左右の方向は
図1における矢印の方向にそれぞれ対応する。
【0016】
従動機12の回転軸には従動機側プーリ20が固定され、駆動機11の回転軸には駆動機側プーリ21が固定されており、駆動機11のプーリ21と従動機12のプーリ20との間に∨ベルト19が掛け渡されて駆動機11の動力が従動機12へと伝動されるようになっている。
【0017】
図2に示されるように∨ベルト調整装置1は、駆動機11と従動機12との間に張架され、これら駆動機11と従動機12とが相対的に離間する方向の力を与えることができる複数の伸縮装置2,2を有しており、これら伸縮装置2,2の長手方向一方端が、
図2,
図3に示すように、伸縮装置2,2の伸縮方向に対して直角方向に延在するレール状のガイド部材3に摺動可能に嵌合されてユニット化されている。
【0018】
図3から
図5に示されるように伸縮装置2,2は、一方端側に開口4aを有する筒部材4に遊嵌する棒部材5と、棒部材5の外周に形成されたネジ部5aと螺合するハンドル部材6とを備えている。筒部材4の外周面4bにおける長手方向他方端側には、筒部材4の軸方向と平行に駆動機11側に延出するように棒体7が固定されている。
【0019】
棒部材5の長手方向一方端には角を落とした矩形状の板体8(
図4(c)参照)が固定されている。この板体8は、
図3に示されるように前記レール状のガイド部材3に設けられたレール溝3aに摺動可能に嵌合しており、伸縮装置2,2同士の間隔を調整可能となっている(間隔調整手段)。そのため、各伸縮装置2,2がガイド部材3のレール溝3aにそれぞれガイドされて、伸縮方向に対して直角方向に摺動可能となっていることから、各伸縮装置2,2を平行に伸縮させることができる。
【0020】
また、上記したように棒部材5は、矩形状の板体8がガイド部材3のレール溝3aの上下面3b,3bに当接することで棒部材5の軸周りの回転が防止されるようになっている。尚、
図4(c)に示す板体8は矩形の4隅の角を落としたような多角形状であるが、棒部材5の軸周りの回転が防止されるような形状であればこれに限らず、例えば少なくとも1辺がレール溝3aの上下幅より大である多角形状であってもよいし、角を有していない丸みを帯びた形状であってもよい。
【0021】
図4に示されるように、ハンドル部材6は、棒部材5の板体8と筒部材4との間に配置されており、ハンドル部材6のナット部6aの軸方向端部6cが筒部材4の開口側端部4cに当接可能となっている。また、ナット部6aには対角線上に把手6d,6dがそれぞれ固定され、ハンドル部材6の回転操作が行い易くなっている。
【0022】
また、
図5に示されるように、棒部材5の外周に形成されたネジ部5aは、棒部材5の長手方向に渡り形成されているため、ハンドル部材6は、ネジ部5aの形成された範囲内で棒部材5の長手方向に自由にその位置を選択可能となっている。そして、このハンドル部材6の位置選択が伸縮装置2の伸縮度合を調整する調整手段となっている。尚、ネジ部5aは棒部材5の外周における長手方向において、伸縮装置2が少なくとも∨ベルト19の張力調整に必要な伸縮を行える分だけ形成されていればよく、例えば、長手方向の一部分に形成されてもよい。
【0023】
また、筒部材4内には付勢手段であるバネ部材9が配置されている。この、バネ部材9は引きバネであり、筒部材4の内側における長手方向端面4dと棒部材5の長手方向一方端面5bとに両端部がそれぞれ固定されて、筒部材4と棒部材5とを相対的に近接移動させる力を発揮可能となっている。この筒部材4と棒部材5とを相対的に近接移動させる力により、ハンドル部材6のナット部6aの軸方向端部6cが筒部材4の開口側端部4cに常時当接するようになっている。
【0024】
続いて
図2,
図6及び
図7を用いて、上記した∨ベルト調整装置1により駆動機11と従動機12との離間距離を調整することで、それぞれ設けられたプーリ20とプーリ21とに架けられた∨ベルト19の張力を調整する場合を説明する。張力の調整は、駆動機11と調整基材14とを固定していたボルト・ナット17,17,…を緩め、ボルト・ナット17,17,…が2本の溝部16,16の内側面16a,16aにガイドされた状態で溝部16,16に沿って摺動可能とした状態で行われる。
【0025】
ガイド部材3は、
図2に示されるように従動機12の固定具15に当接するように配置される。伸縮装置2,2は棒部材5の板体8がガイド部材3のレール溝3aにそれぞれ嵌合された状態で駆動機11と従動機12との間に配置される。更に、
図6に示されるように伸縮装置2,2は、伸縮装置2を構成する筒部材4の棒体7が調整基材14の溝部16に遊篏されるようにして配置される。
【0026】
そして、
図2に示されるように、ガイド部材3及び伸縮装置2,2が駆動機11と従動機12との間に配置された状態でハンドル部材6,6の把手6d,6d,…またはナット部6a,6aを筒部材4,4側に移動するように回転させる。このハンドル部材6,6の回転操作により、ハンドル部材6,6により筒部材4,4が押され、筒部材4,4がガイド部材3と離間する方向に移動させる。
【0027】
上記したハンドル部材6,6の操作により筒部材4,4がガイド部材3から離間する方向に移動すると、筒部材4,4の移動分、伸縮装置2,2が伸長される。
図7は、伸縮装置2,2が伸長されたことで、筒部材4,4に固定された棒体7,7が溝部16,16内に嵌入された状態を示す図である。このように棒体7,7の外周面7aが溝部16,16の内側面16a,16a及び底面16b,16bに当接することで、伸縮装置2,2の前後への移動が規制されることになり、伸長操作時において伸縮装置2,2を直線方向に伸長させることができる。
【0028】
図7に示されるように、溝部16内に案内された棒体7は、その先端7bが固定片25の端部25aに当接するようになっている。続いて、棒体7の先端7bが固定片25の端部25aに当接した状態で更にハンドル部材6が筒部材4側に移動するように回転操作されると、伸縮装置2の伸長により棒体7の先端7bが固定片25の端部25aを押すことになり、駆動機11が従動機12から離間する方向に移動される。伸縮装置2の伸長による押力が棒体7の先端7bに集中して駆動機11に伝達されるため、効率よく∨ベルト19の張力調整を行うことができる。
【0029】
尚、この駆動機11の移動によりプーリ20,21間に架け渡された∨ベルト19の張力が大きくなる。張力が増した∨ベルト19は、その形状復帰力が高くなっているため、駆動機11はプーリ20側が∨ベルト19に引っ張られるようにして傾く場合がある。そこで、図示しない定規などを当てながら2つの伸縮装置2,2の長さをそれぞれ微調整することで、駆動機11の傾きを調整し駆動機11のプーリ20と従動機12のプーリ21との角度を合わせながら(所謂芯出し作業)∨ベルト19の張力を調整することができる。このように張力調整作業と芯出し作業とを一度に完了できるため、作業効率が高い。
【0030】
また、ハンドル部材6はナット部6aを有することから、張力の大きい調整完了間際等には、レンチ等により回転操作可能である。更に、伸縮装置2の伸長操作時に、筒部材4の回転等に起因して棒体7が溝部16から離脱するような力が働く際には、筒部材4の開口側端部4cを構成するナット構成部4eをレンチ等により挟むことで回転を強力に止めることができ、伸長操作を行い易い。
【0031】
また、∨ベルト19の張力調整の完了後、ボルト・ナット17,17,…を締め込み、駆動機11(固定片25)を調整基材14に対して移動不能に固定する。この固定が終わった後、ハンドル部6を逆回転操作して、筒部材4を板体8に近づける方向に移動させ、駆動機11と従動機12との間より撤去可能な長さになるまで伸縮装置2,2を縮め、ガイド部材3ごと、すなわちユニット化された∨ベルト調整装置1を撤去する。
【0032】
尚、伸縮装置2,2がある程度縮んだ時点で伸縮装置2,2をスライドさせ、ガイド部材3のレール溝3aとの嵌合を解除するようにし、ガイド部材3を残して伸縮装置2,2を先に撤去してもよい。また、筒部材4と棒部材5とは、引きバネであるバネ部材9により常時相互に近接させるような力が作用しており、ハンドル部6を逆回転操作するのみで、筒部材4が板体8側に移動するため、縮める作業効率が高くなっている。
【0033】
図8に示されるように、伸縮装置2は、棒体7が筒部材4の外周面4bに筒部材4の軸方向と平行に固定されているため、棒部材5がガイド部材3に取付けられた状態で筒部材4を回転させることで、棒体7の高さ位置を上下に調整可能である。
【0034】
図8(a)は、調整基材14における溝部16及び駆動機11の固定片25が低く、これらに合わせて棒体7を一番低い位置に調整した状態を示す図であり、
図8(b)は、
図8(a)に比べて調整基材14における溝部16及び駆動機11の固定片25が高く、これらに合わせて棒体7を比較的高い位置に調整した状態を示す図である。このように、棒体7の高さは、筒部材4における下端と上端との間において無段階で調整可能である。
【0035】
尚、
図8(b)は、筒部材4の回転により棒体7が筒部材4の外周面4bにおける横に位置しているが、このとき棒部材5の板体8をガイド部材3のレール溝3a内で摺動させ、伸縮装置2自体が前後方向に移動しているため、棒体7の前後位置は
図8(a)と同じ位置、すなわち溝部16内に確実に配置可能となっている。
【0036】
尚、実施例においては、伝動装置10は駆動機11が調整基材14により移動可能に固定され、従動機12が移動不能に固定される構成であったため、駆動機11を移動させて∨ベルト19の張力を調整する態様で説明しているが、これ限らず、伝動装置の構成によっては、例えば従動機側に棒体7を押し当て、従動機を移動させることも想定されるばかりか、駆動機と従動機のどちらも移動可能である場合には、これらを相対的に離間させてもよい。
【0037】
また、駆動機11を移動させる態様は上述した態様に限らず、例えば、固定片25に押し当てられるのは棒体7の先端7bに限らず、筒部材4の先端面であってもよく、この場合、棒体7は省略する。更に、押力が掛かる場所は固定片25に限らず、駆動機11の本体側面や、固定片25に取付けられたボルト・ナット17に棒体7の先端7bや筒部材4の先端面を押し当てて移動させる態様であってもよい。
【0038】
また、∨ベルト調整装置1の設置の順番は前記実施例に限らず、例えば、まずガイド部材3のみを従動機12側に配置し、その後、縮めた状態の伸縮装置2,2を板体8がレール溝3aに嵌合するようにして配置してもよい。更に、ガイド部材3を従動機12側に配置する前に伸縮装置2,2の棒体7,7を溝部16,16に配置してもよい。
【0039】
また、∨ベルト調整装置1を構成する伸縮装置2の数は2本に限らず、2つ以上の複数本有する構成であってもよい。
【0040】
また、∨ベルト調整装置1は、ガイド部材3に上記したレール溝3aを備え、伸縮部材2,2が前後に移動可能とした間隔調整手段を有した構成に限られず、例えば、一本の杆部材に複数の伸縮部材が移動不能に固定されて構成されていてもよい。
【0041】
また、∨ベルト調整装置1における伸縮手段は上記したような伸縮装置によるものに限られず、複数の伸縮手段が幅方向に所定間隔離間した状態でガイド部材とユニット化された構成であれば、例えば一般的なジャッキ等の構造を採用してもよい。
【0042】
また、∨ベルト調整装置1による駆動機11の移動は、必ずしも押力に限られず、例えば駆動機11を従動機12から離間する方向に引くように働く力によって行われてもよい。
【0043】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。