(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記濃縮装置は、前記蒸発面が回転するものであり、該蒸発面の回転中心側に向けて前記被処理液が供給され、供給された前記被処理液が、該蒸発面の回転による遠心力によって外側に向かって液膜状に流れるものであることを特徴とする請求項1記載の濃縮システム。
【背景技術】
【0002】
酵素、抗生物質抽出液、蛋白水溶液、発酵液、各種調味料、各種エキス、油脂、ビタミン類、合成化学製品、排液等の各種液体を濃縮する濃縮システムが知られている。以下、濃縮システムにおいて濃縮される液体を被処理液と称することがある。
【0003】
濃縮システムは、被処理液の溶媒成分を蒸発させる濃縮装置や、被処理液から蒸発した溶媒を冷却するコンデンサ等を備えたものが一般的である。濃縮装置は、ボイラ等から供給された蒸気によって加熱される蒸発面を有しており、この加熱された蒸発面に被処理液を接触させることで溶媒成分を蒸発させる。溶媒成分が蒸発することによって濃縮された被処理液は、濃縮装置からタンク等に回収される。以下、蒸発面を加熱する蒸気と区別して、被処理液から蒸発した溶媒を溶媒蒸気と称することがある。
【0004】
ところで、濃縮装置には、例えば液膜上昇式、流下式、遠心式等の各種形態のものが採用されている。液膜上昇式の濃縮装置は、加熱缶と蒸発缶を有するものである。加熱缶は、例えば、シェルアンドチューブ式熱交換器(多管円筒式熱交換器)からなり、上下方向に延在した伝熱管がケーシング内に多数設けられている。これら伝熱管は、被処理液が流入するものである。液膜上昇式の濃縮装置では、ケーシング内に蒸気を供給することによって伝熱管を加熱し、伝熱管に流入した被処理液から溶媒成分を蒸発させる。すなわち、液膜上昇式の濃縮装置は、蒸気によって加熱される伝熱管の内周面に被処理液を接触させることにより被処理液から溶媒成分を蒸発させるものであり、伝熱管の内周面が蒸発面になる。なお、溶媒蒸気と濃縮された被処理液は蒸発缶内に吹き込まれ、蒸発缶内において溶媒蒸気と被処理液が分離される。
【0005】
流下式の濃縮装置は、例えばケーシング内に、水平方向に対し所定角度傾斜した状態で配置された蒸発板を有するものであり、蒸発板の下面側に蒸気を供給することによって蒸発板を加熱する。この加熱された蒸発板の上面に被処理液を流下させることによって被処理液から溶媒成分を蒸発させる。すなわち、流下式の濃縮装置は、蒸気によって加熱される蒸発板の上面に被処理液を接触させることにより被処理液から溶媒成分を蒸発させるものであり、蒸発板の上面が蒸発面になる。
【0006】
また、遠心式の濃縮装置は、例えばケーシング内に、水平方向に延在する回転軸を中心にして高速回転する蒸発板を有するものであり、この蒸発板は、例えばすり鉢状に形成されている。遠心式の濃縮装置では、蒸発板を回転させながら蒸発板の外周面側のジャケット部に蒸気を供給することによって蒸発板を加熱し、蒸発板の内側面における、回転中心側に向けて被処理液を供給する。供給された被処理液は、加熱された蒸発板の内側面を、蒸発板の高速の回転により発生する遠心力によって外側に向かって液膜状態を維持して流れるため、蒸発板の内側面を流れる間に溶媒成分が効果的に蒸発する。すなわち、遠心式の濃縮装置は、蒸気によって加熱されながら高速回転する蒸発板の内側面に被処理液を接触させることにより被処理液から溶媒成分を蒸発させるものであり、蒸発板の内側面が蒸発面になる。
【0007】
これらの濃縮装置を備えた濃縮システムでは、コンデンサにおいて溶媒蒸気が冷却水で冷却される。溶媒蒸気と熱交換することによって温度上昇した冷却水は、一般的にクーリングタワーで冷却され、溶媒蒸気から冷却水に移動した熱が大気に放出される。なお、温度上昇した冷却水を冷凍機によって冷却する場合があるが、この場合にはエネルギーを消費して冷却することになる。また、ボイラ等から供給された蒸気が凝縮することで得られるドレンは、熱を回収せずにそのまま排水される場合がある。これらのように、従来の濃縮システムでは、捨てている熱量が多く、熱効率の観点で改善の余地がある。
【0008】
そこで、溶媒蒸気およびドレンの熱を利用することにより、熱効率の改善を図ろうとする濃縮システムが提案されている(例えば、特許文献1等参照)。特許文献1に記載された濃縮システムは、遠心式の濃縮装置、コンデンサ、ヒートポンプおよび水タンクを備えている。ヒートポンプは、コンデンサに接続した吸熱用熱交換器と、水タンクに接続した放熱用熱交換器を有している。また、濃縮装置は、コンデンサと水タンクそれぞれに接続している。濃縮装置で被処理液から蒸発した溶媒はコンデンサに送られ、吸熱用熱交換器からコンデンサに供給された冷却水によって冷却される。これによって、溶媒蒸気は凝縮し、溶媒蒸気の顕熱と凝縮する際の潜熱が冷却水に移動して冷却水は温度上昇する。温度上昇した冷却水は、吸熱用熱交換器に供給され、溶媒蒸気から移動した熱が吸熱用熱交換器に回収される。濃縮装置内で凝縮することで得られるドレンは、一旦水タンクに貯留された後、水タンクから放熱用熱交換器に供給される。放熱用熱交換機では、吸熱用熱交換器で回収した熱を利用してドレンが温度上昇する。この温度上昇したドレンを水タンク内に噴霧することで蒸気が生成される。この蒸気が濃縮装置の蒸発板に供給され、蒸発面が加熱される。このようにして、特許文献1に記載された濃縮システムでは、溶媒蒸気およびドレンの熱を利用することにより、熱効率の向上を図ろうとしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載された濃縮システムでは、ドレンを水タンク内に噴霧することで蒸気を生成する際に液滴(ミスト)が生じ、この液滴が蒸気と一緒に濃縮装置に入り込んでしまう場合がある。濃縮装置に入り込んだ液滴が蒸発板に付着すると蒸発面への伝熱効率が低下してしまう。また、特許文献1に記載された濃縮システムでは、濃縮装置から回収され、水タンクに一旦貯留されたドレンを、放熱用熱交換器の熱媒体として利用している。ドレンには、濃縮装置から、あるいは水タンクにおいて、ダストに代表される様々な汚れの成分(以下、ダスト等と略す)が混入する可能性があり、そのドレンを熱媒体として利用していることから放熱用熱交換器が汚れてしまう場合がある。
【0011】
本発明は上記事情に鑑み、熱効率の向上を図りつつ、蒸発面への伝熱効率の低下と放熱用熱交換器の汚れを防ぐ工夫がなされた濃縮システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を解決する本発明の濃縮システムは、蒸気によって加熱される蒸発面を有し該蒸発面に被処理液を接触させることにより溶媒成分を蒸発させ該被処理液を濃縮する濃縮装置と、
前記被処理液から蒸発した溶媒を冷却するコンデンサと、
前記蒸気が前記濃縮装置内で凝縮することで得られるドレンが供給され、供給されたドレンを加熱して該蒸気を生成する蒸発器と、
吸熱用熱交換器および放熱用熱交換器を有するヒートポンプと、
前記コンデンサにおいて前記溶媒と熱交換することによって温度上昇した第1熱媒体の流路であって、前記コンデンサと前記吸熱用熱交換器を結んだ第1循環流路と、
前記放熱用熱交換器において温度上昇した第2熱媒体の流路であって、該放熱用熱交換器と前記蒸発器を結んだ第2循環流路とを備え、
前記蒸発器は、供給されたドレンから前記蒸気を生成する生成空間内に、前記第2熱媒体が通過する通過経路が別途設けられ、該通過経路を通過する第2熱媒体によって該生成空間内のドレンを加熱するものであることを特徴とする。
【0013】
ここで、前記蒸発器は、前記生成空間の他、ドレンを貯留する貯留空間を有するものであり、前記通過経路は、前記生成空間内および前記貯留空間内に別途設けられたものであってもよい。ここにいう別途とは、生成空間および貯留空間とは仕切られて設けられた別の系(独立した系)であることを意味する。また、前記濃縮装置は、液膜上昇式のものであってもよく、前記蒸発面は、該濃縮装置の伝熱管における内周面であってもよい。さらに、前記濃縮装置は、流下式のものであってもよく、前記蒸発面は、前記被処理液を流下させる蒸発板の上面であってもよい。前記蒸発器は、シェルアンドチューブ式熱交換器であってもよい。
【0014】
本発明の濃縮システムによれば、前記コンデンサでは、前記溶媒と前記第1熱媒体との間で熱交換がなされ、前記溶媒の顕熱と該溶媒が凝縮する際の潜熱が移動して該第1熱媒体は温度上昇する。温度上昇した前記第1熱媒体は、前記第1循環流路を流れて前記吸熱用熱交換器に供給され、前記溶媒から移動した熱が該吸熱用熱交換器に回収される。前記放熱用熱交換器では、前記溶媒から回収した熱によって前記第2熱媒体が温度上昇する。温度上昇した前記第2熱媒体は前記第2循環流路を流れて前記蒸発器に供給される。前記蒸発器では、前記第2熱媒体によって前記ドレンを加熱することで前記蒸気を生成する。このように、前記溶媒の熱および前記ドレンの熱を利用して前記蒸気を生成することで、熱効率の向上を図ることができる。また、前記通過経路を通過する前記第2熱媒体によって前記蒸発器内のドレンを加熱し前記蒸気を生成するため、特許文献1に記載された濃縮システムのように液滴が生じにくくなり、液滴が付着することで前記蒸発面への伝熱効率が低下することが大幅に抑制される。さらに、前記第2熱媒体の流路の一部である前記通過経路は、前記生成空間内に別途設けられたものであるため、前記第2熱媒体の流路は、前記通過経路と前記第2循環流路とからなる閉じた流路になり、該第2熱媒体にダスト等が混入しにくく前記放熱用熱交換器が汚れることを防ぐことができる。
【0015】
また、本発明の濃縮システムにおいて、前記濃縮装置は、前記蒸発面が回転するものであり、該蒸発面の回転中心側に向けて前記被処理液が供給され、供給された前記被処理液が、該蒸発面の回転による遠心力によって外側に向かって液膜状に流れるものであってもよい。
【0016】
こうすることで、前記被処理液が液膜状に流れる間に、該被処理液から前記溶媒成分を蒸発させることができ、特に、熱変性を受けやすい被処理液を濃縮する場合に好適である。なお、特許文献1に記載された濃縮システムのように、蒸気を生成する際に液滴が生じてしまう構成では、この液滴が、前記蒸発面を構成する部材に付着し、該蒸発面が回転する際の回転のバランスを崩してしまう場合がある。前述したように、本発明の濃縮システムは、前記蒸気を生成する際に液滴が生じることがないため、前記蒸発面が回転する構成であっても不都合は生じない。
【0017】
さらに、本発明の濃縮システムにおいて、前記生成空間から、前記蒸気を前記蒸発面に供給するまでの空間を減圧する減圧手段を備えてもよい。
【0018】
前記減圧手段によって、前記生成空間から、前記蒸気を前記蒸発面に供給するまでの空間を減圧することで、該生成空間においてドレンの沸点が下がり、低温で蒸気を発生させやすくなる。
【0019】
また、本発明の濃縮システムにおいて、前記蒸発器で生成された蒸気を、前記蒸発面に供給される前に圧縮する圧縮機を備えてもよい。
【0020】
前記圧縮機によって前記蒸気を圧縮することで該蒸気を温度上昇させ、より高温の蒸気によって前記蒸発面を加熱することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、熱効率の向上を図りつつ、蒸発面への伝熱効率の低下と放熱用熱交換器の汚れを防ぐ工夫がなされた濃縮システムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。本発明の一実施形態である濃縮システムは、酵素、抗生物質抽出液、蛋白水溶液、発酵液、各種調味料、各種エキス、油脂、ビタミン類、合成化学製品、排液等の各種液体を被処理液として、この被処理液を濃縮するものである。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に相当する濃縮システムの一例を示す系統図である。
【0025】
図1に示すように、濃縮システム10は、濃縮装置2、蒸発器3、コンデンサ4、ヒートポンプ5、被処理液タンクT1、濃縮液タンクT2および蒸留液タンクT3を備えている。濃縮システム10では、被処理液タンクT1から熱交換器8を介して濃縮装置2に被処理液が供給され、供給された被処理液は、蒸発器3から供給された蒸気によって加熱されることで、溶媒成分が蒸発する。溶媒成分が蒸発して濃縮された被処理液は、濃縮液タンクT2に回収される。以下、溶媒成分が蒸発して濃縮された被処理液を濃縮液と称することがある。被処理液から蒸発した溶媒(溶媒蒸気)は、コンデンサ4において、ヒートポンプ5から供給される冷却水によって冷却されて凝縮する。凝縮した溶媒は、蒸留液として蒸留液タンクT3に回収される。濃縮装置2内で凝縮することで得られるドレンは、蒸発器3において、ヒートポンプ5から供給される加熱水によって加熱される。これによって蒸気が生成され、生成された蒸気が濃縮装置2に供給される。
【0026】
次に、
図2(a)も参照しつつ、濃縮装置2について詳細に説明する。
【0027】
図2(a)は、
図1に示す濃縮装置を拡大して示す図である。なお、
図2(a)では、濃縮装置2の内部構造を示している。また、
図2(a)における、濃縮装置2の左側を正面側と称し、濃縮装置2の右側を背面側と称し、正面側と背面側を結ぶ方向を前後方向と称することがある。
【0028】
図2(a)に示すように、濃縮装置2は、ケーシング21、回転体22、被処理液供給管23、濃縮液回収管24およびドレン回収管25を有している。ケーシング21は、中空円柱状のものであり、その背面側部分に排気部211が設けられている。排気部211は、溶媒蒸気をケーシング21から排出する部分である。なお、ケーシング21は、接続部212において前後方向に分割することができ、また、内部を目視確認するための点検窓213が正面側部分に設けられている。
【0029】
回転体22は、蒸発板221、ジャケット部222、堰部223、軸部材224および飛散防止部材225を有するものであり、ケーシング21内に収容されている。軸部材224は、前後方向に延在し、その背面側部分に接続したモータMによって回転駆動するものである。蒸発板221は、例えば薄鋼板をしぼり加工で成型されることによって、正面側に向けて拡がったすり鉢状のものであり、その中心部分に軸部材224が貫通した状態で軸部材224に固定されている。これにより、モータMを駆動して軸部材224が回転駆動すると蒸発板221も回転する。ジャケット部222は、蒸発板221の背面側にジャケット状に設けられたものであり、蒸発板221とジャケット部222の間にジャケット空間S1が形成されている。ジャケット部222には、蒸気供給口2221とドレン排出口2222が設けられている。蒸気供給口2221には蒸発器3(
図1参照)が接続され、蒸発器3で生成された蒸気が蒸気供給口2221からジャケット空間S1に供給される。堰部223は、蒸発板221の正面側の端部から蒸発板221の回転中心側に向いた姿勢に設けられ、堰部223と蒸発板221との間に周状の接続部2213が形成されている。
【0030】
被処理液供給管23は、先端に吐出口23aを有し、被処理液タンクT1(
図1参照)から供給された被処理液を吐出口23aから吐出するものである。吐出口23aは、軸部材224における、蒸発板221との接続部分に向けて配置されている。後述するように、軸部材224および蒸発板221を回転させた状態で被処理液供給管23から被処理液を吐出させると、吐出された被処理液は、蒸発板221の回転による遠心力によって、蒸発板221の正面側の面を外側に向かって液膜状に流れる。すなわち、蒸発板221の正面側の面は、本発明における蒸発面の一例に相当し、以下、蒸発面221aと称する。また、蒸発面221aはすり鉢状に形成された蒸発板221の内側面に相当する。なお、吐出口23aの近傍には、吐出口23aから吐出した被処理液の飛散を防止する飛散防止部材225が設けられている。
【0031】
濃縮液回収管24は、先端に吸込口24aを有し、濃縮液を吸込口24aから吸込むものである。吸込口24aは、蒸発板221と堰部223との接続部2213における概ね接線方向に向けて開口している。ドレン回収管25は、先端にドレン吸込口25aを有し、ジャケット空間S1に供給された蒸気が凝縮することで得られたドレンをドレン吸込口25aから吸込むものである。ドレン吸込口25aは、ジャケット空間S1における正面側の端部領域に配置されている。また、ドレン回収管25は、ドレン排出口2222に接続し、ドレン吸込口25aから吸込んだドレンは、ドレン排出口2222から排出される。
【0032】
濃縮装置2では、モータMを駆動して軸部材224および蒸発板221を回転させ、蒸気供給口2221からジャケット空間S1に蒸気を供給する。この蒸気によって蒸発板221を加熱した状態で被処理液供給管23から蒸発板221の回転中心側に向けて被処理液を吐出する。吐出された被処理液は、蒸発面221aを外側に向かって液膜状に流れ、堰部223によって堰止められる。被処理液が蒸発面221aを流れる、例えば1秒程度の間に、被処理液から溶媒成分が蒸発し、被処理液から蒸発した溶媒蒸気は、排気部211から排気される。堰部223に堰止められた濃縮液は、接続部212に開口した濃縮液回収管24に吸い込まれる。一方、ジャケット空間S1に供給された蒸気は、蒸発板221を加熱することで凝縮しドレンが生じる。このドレンは、ドレン回収管25に吸い込まれ、ドレン排出口2222から排出される。なお、ジャケット空間S1に供給された蒸気の一部は凝縮することなくドレン回収管25に吸込まれ、ドレン排出口2222からドレンとともに排出される。
【0033】
次に、濃縮装置2に接続した装置や機器について説明する。
図1に示すように、被処理液供給管23には、ポンプPと熱交換器8を介して被処理液タンクT1が接続している。被処理液タンクT1には、濃縮装置2で濃縮される被処理液が貯留されている。熱交換器8には、コンデンサ4および蒸留液タンクT3も接続している。熱交換器8には、被処理液タンクT1から被処理液が供給されるとともに、後述するようにコンデンサ4で生じた蒸留液が供給される。熱交換器8では、被処理液と蒸留液との間で熱交換がなされ、被処理液が温度上昇し、蒸留液が温度低下する。温度上昇した被処理液は被処理液供給管23に供給され、温度低下した蒸留液は蒸留液タンクT3に回収される。このように、本実施形態の濃縮システム10では、蒸留液の熱を利用して被処理液の温度を上昇させ、濃縮装置2における、溶媒成分の蒸発を促進する態様を採用している。
【0034】
濃縮液回収管24には、ポンプPを介して濃縮液タンクT2が接続している。濃縮液は、ポンプPの作用によって濃縮液回収管24に吸い込まれ、濃縮液タンクT2に回収される。
【0035】
コンデンサ4は、溶媒蒸気受入口41、蒸留液排出口42、冷却水供給口43、冷却水排出口44および排気口45を有している。濃縮装置2の排気部211は、コンデンサ4の溶媒蒸気受入口41に接続し、排気部211から排出された溶媒蒸気が溶媒蒸気受入口41からコンデンサ4に受け入れられる。コンデンサ4に受け入れられた溶媒蒸気は、冷却水供給口43から供給された冷却水によって冷却される。冷却された溶媒蒸気は凝縮し、蒸留液となって蒸留液排出口42から排出される。蒸留液排出口42から排出された蒸留液は、ポンプPによって熱交換器8に供給され、前述したように、熱交換器8において被処理液と熱交換した後、蒸留液タンクT3に回収される。また、排気口45には真空ポンプVP1が接続され、この真空ポンプVP1を駆動することで、溶媒蒸気を濃縮装置2からコンデンサ4まで吸引するとともに、濃縮装置2のケーシング21内の空気を排出してケーシング21内を真空状態にする。これにより、被処理液における溶媒成分の沸点が下がり、蒸発面221aを流れる被処理液から溶媒が蒸発しやすくなる。
【0036】
ヒートポンプ5は、吸熱用熱交換器51、放熱用熱交換器52、コンプレッサ53、膨張弁54を備えている。本実施形態のヒートポンプ5では、冷媒として二酸化炭素を用いており、この冷媒が、吸熱用熱交換器51からコンプレッサ53を通って放熱用熱交換器52に流れ、放熱用熱交換器52から膨張弁54を通って吸熱用熱交換器51に流れる。
【0037】
コンデンサ4と吸熱用熱交換器51は、ポンプPを有する第1循環流路61によって結ばれており、この第1循環流路61は、冷却水がコンデンサ4と吸熱用熱交換器51とを循環する流路になる。また、第1循環流路61には、コンデンサ4から吸熱用熱交換器51に供給する冷却水を一時的に貯留するクッションタンク72が配置されている。クッションタンク72には、電気ヒータ、ボイラからの加熱蒸気配管、あるいは熱を発生する機器から廃熱を回収した廃水を通過させる廃熱回収配管等が設けられている。後述するように、濃縮システム10の駆動開始時等に、この電気ヒータ等によってクッションタンク72内に貯留された冷却水を所定温度に加熱する。なお、クッションタンク72に代えて、第1循環流路61の配管に電気ヒータをリボン状に直接巻き付けて、第1循環流路61を流れる冷却水を加熱する態様としてもよい。また、熱を発生する機器から廃熱を回収した廃水をタンクに貯留し、この廃水と冷却水とを熱交換器によって熱交換させる態様としてもよい。
【0038】
前述したように、コンデンサ4において溶媒蒸気から熱を回収することで、例えば20℃程度に温度上昇した冷却水は、冷却水排出口44から排出されてクッションタンク72を介して吸熱用熱交換器51に供給される。吸熱用熱交換器51では、溶媒蒸気から回収した熱が冷却水から吸熱され、冷媒に回収される。吸熱用熱交換器51において吸熱されることによって、例えば15℃程度に温度低下した冷却水は、冷却水供給口43からコンデンサ4に供給され、溶媒蒸気の冷却に用いられる。すなわち、冷却水は、本発明における第1熱媒体の一例に相当する。一方、吸熱用熱交換器51において、冷却水から熱を回収した冷媒は、コンプレッサ53によって圧縮されることで高圧高温のガスになり、放熱用熱交換器52に流れる。
【0039】
次いで、蒸発器3、および蒸発器3と放熱用熱交換器52を結ぶ第2循環流路62について説明する。蒸発器3は、ドレン受入口31、蒸気排出口32、加熱水供給口33および加熱水排出口34を有している。第2循環流路62は、放熱用熱交換器52から蒸発器3の加熱水供給口33に接続し、加熱水排出口34からポンプPを介して放熱用熱交換器52に接続している。第2循環流路62は、加熱水が放熱用熱交換器52と蒸発器3とを循環する流路になる。この加熱水は、本発明における第2熱媒体の一例に相当する。放熱用熱交換器52に供給された、例えば80℃程度の加熱水は、冷媒から熱を回収することで、例えば90℃程度に温度上昇し、温度上昇した加熱水が、加熱水供給口33から蒸発器3に受け入れられる。
【0040】
図2(b)は、
図1に示す蒸発器の内部構造を模式的に示す図である。
【0041】
図2(b)に示すように、蒸発器3の内部には、加熱部材35が配置されている。加熱部材35は、上下一対の管板352と、上下方向に延在した複数の伝熱管351を有するものである。複数の伝熱管351それぞれは、上端部分が、上側の管板352に設けられた孔352aに挿通され、下端部分が、下側の管板352に設けられた孔352aに挿通された状態で、横方向に所定の間隔をあけて配置されている。複数の伝熱管351の管内部S2にはドレン受入口31から受入れられたドレンが流入し、胴側S3(伝熱管351の外面側)には、伝熱管351の下部側にある加熱水供給口33から加熱水が供給され、伝熱管351の上部側にある加熱水排出口34から排出される。胴側S3は、
図2(b)にドットにより示した様に、加熱水によりほぼ満たされた状態になる。ドレン受入口31から蒸発器3に受け入れられた例えば80℃程度のドレンは、各伝熱管351の下端から管内部S2に流入する。伝熱管351の管内部S2に流入したドレンは、胴側S3を流れる加熱水によって加熱され蒸発する。これによって、蒸発器3に受け入れられたドレンは、主に伝熱管351の管内部S2で蒸気となる。本実施形態では、この蒸気が生成される、伝熱管351の管内部S2と胴側S3を併せた領域(蒸発器3内における、上下一対の管板352において仕切られた領域)が、本発明における生成空間の一例に相当し、以下、生成空間S4と称することがある。なお、ドレンの沸点が80℃〜90℃程度になるように、蒸発器3内は、真空ポンプVP2によって減圧されている。真空ポンプVP2による減圧についての詳しい説明は後述する。また、胴側S3は、生成空間S4内に別途設けられた、加熱水が通過する経路であり、本発明における通過経路の一例に相当する。このように、蒸発器3では、胴側S3を流れる加熱水によってドレンが加熱されることで蒸気が生成される。このため、特許文献1に記載の濃縮システムのように、ドレンを水タンク内に噴霧することで蒸気を生成するような態様と異なり、液滴を生じさせずに蒸気を生成することができる。また、放熱用熱交換器52に供給される加熱水は、第2循環流路62および胴側S3からなる閉じた経路を循環する。このため、加熱水にダスト等の汚れが混入しにくく、ドレンを放熱用熱交換器52に直接供給する態様と比べ、放熱用熱交換器52が汚れることを防ぐことができる。一方で、ドレンが接する蒸発器3は、伝熱管351という清掃が容易な構成をとることが可能となり、システムとしてのメンテナンス性に優れる。
【0042】
この蒸発器3は、
図1に示すように、第3循環流路63によって濃縮装置2と結ばれている。第3循環流路63は、蒸発器3の蒸気排出口32と、濃縮装置2の蒸気供給口2221を接続し、濃縮装置2のドレン排出口2222と、蒸発器3のドレン受入口31を、セパレータ71、電磁弁SVおよびポンプPを介して接続している。また、セパレータ71には、排気流路を介して真空ポンプVP2が接続している。真空ポンプVP2を駆動すると、蒸発器3の生成空間S4で生成された蒸気が蒸気排出口32から排出され、排出された蒸気が蒸気供給口2221からジャケット空間S1内に供給される。また、蒸発器3の生成空間S4からジャケット空間S1の領域が減圧される。これにより、生成空間S4内においてドレンの沸点が下がることにより蒸気が生成されやすくなる。さらに、前述したように、蒸発器3では液滴が生じにくいため、蒸発板221に液滴が付着することで蒸発面221aへの伝熱効率が低下するという不都合や、蒸発板221に液滴が付着して蒸発板221が高速回転する際の回転のバランスを崩してしまうといった不都合も生じにくい。
【0043】
ジャケット空間S1で蒸気が凝縮することによって得られたドレンと、ジャケット空間S1で凝縮しなかった蒸気は、ドレン排出口2222から一緒に排出された後、セパレータ71においてドレンと、第3循環流路63の外部から漏れ込む空気が分離される。セパレータ71で分離された空気は、真空ポンプVP2によって排気される。一方、ドレンは、ポンプPによって、ドレン受入口31から蒸発器3内に受け入れられ、前述したように、溶媒蒸気の熱を回収した加熱水によって加熱されることで蒸気が生成される。このように、溶媒蒸気の熱とドレンの熱を利用して蒸気を生成することで、熱効率の向上を図ることができる。
【0044】
次いで、濃縮システム10の作動状態の一例について説明する。まず、コンデンサ4に接続された真空ポンプVP1を駆動し、濃縮装置2のケーシング21内の空気を排出してケーシング21内を真空状態にする。次いで、モータMおよび第1循環流路61のポンプPを駆動し、冷却水を第1循環流路61に循環させるとともに、クッションタンク72に配置されたヒータ等を駆動させることでクッションタンク72内に貯留された冷却水を加熱する。これにより、濃縮システム10の起動時においては、クッションタンク72内の加熱された冷却水が、吸熱用熱交換器51に供給されるためシステムが定常状態に至るまでの時間の短縮が可能となる。次に、第2循環流路62のポンプPを駆動し、加熱水を第2循環流路62に循環させるとともに、ヒートポンプ5を駆動させる。これにより、吸熱用熱交換器51から回収された熱が放熱用熱交換器52において加熱水に回収されることで、蒸発器3内のドレンが加熱され、例えば90℃程度まで温度上昇する。また、セパレータ71に接続した真空ポンプVP2を駆動させ、蒸発器3の生成空間S4からジャケット空間S1の領域を減圧する。これにより、生成空間S4内においてドレンの沸点が下がり、蒸発器3の生成空間S4でドレンの蒸発が盛んに始まる。生成空間S4で生成された蒸気は、蒸気排出口32から排出され、排出された蒸気が蒸気供給口2221からジャケット空間S1内に供給される。
【0045】
蒸気がジャケット空間S1内に供給され始めた後、被処理液タンクT1に接続されたポンプP、および濃縮液タンクT2に接続されたポンプPを駆動する。これらにより、蒸発板221が蒸気によって加熱された状態で回転し、被処理液供給管23から蒸発板221の回転中心側に向けて被処理液が吐出する。吐出した被処理液は、蒸発面221aを外側に向かって液膜状に流れる間に溶媒成分が蒸発し、蒸発した溶媒蒸気は、排気部211から排気される。堰部223に堰止められた濃縮液は、接続部2213に開口した濃縮液回収管24に吸い込まれ、濃縮液タンクT2に回収される。
【0046】
次に、
図1および
図2(a)に示す濃縮システム10における濃縮装置の変形例について説明する。
【0047】
図3(a)は、濃縮装置の第1変形例を模式的に示す図である。第1変形例では、
図1および
図2(a)に示す遠心式の濃縮装置2に代えて、液膜上昇式の濃縮装置2’を採用している。
【0048】
図3(a)に示すように、濃縮装置2’は、加熱缶26、蒸発缶27、吹込管281および導管282を有するものである。加熱缶26は、中空円柱状のケーシング261と、ケーシング261に設けられた、蒸気供給口2611およびドレン排出口2612と、ケーシング261内に収容された複数の第2伝熱管262を有している。複数の第2伝熱管262それぞれは、上下方向に延在した状態で配置されている。蒸発缶27は、下部側部分が逆円錐状に形成された中空円柱状のものであり、下端部分に流出口271が設けられ、上端側部分に排気部272が設けられている。吹込管281は、加熱缶26の上端側部分と蒸発缶27とを接続するものであり、第2伝熱管262から、吹込管281を介して蒸発缶27内が連通した状態になっている。また、吹込管281は、蒸発缶27の接線方向に向けて蒸発缶27に接続されている。導管282は、蒸発缶27の流出口271と加熱缶26の下端側部分とを接続するものであり、蒸発缶27内から、導管282を介して第2伝熱管262が連通した状態になっている。また、導管282には、濃縮液排出口2821が設けられている。蒸発缶27には、被処理液供給管273が接続されている。この被処理液供給管273の上流側部分は、不図示の電磁弁を介して被処理液タンクT1(
図1参照)に接続されている。
【0049】
第1変形例の濃縮装置2’では、被処理液を、被処理液供給管273から蒸発缶27内に供給すると、供給された被処理液は、流出口271から導管282を通って第2伝熱管262に流れ込む。加熱缶26内には、蒸発器3(
図1参照)で生成された蒸気が蒸気供給口2611から供給されており、この蒸気によって第2伝熱管262が加熱され、第2伝熱管262の管内面262aに接触している被処理液から溶媒成分が蒸発する。すなわち、第2伝熱管262の管内面262aが、本発明における蒸発面の一例に相当する。溶媒成分が蒸発して濃縮された濃縮液は、第2伝熱管262内を上昇する溶媒蒸気によって引き上げられ、濃縮液と溶媒蒸気は、吹込管281を流れて蒸発缶27内に吹き込まれる。蒸発缶27内に吹き込まれた、濃縮液と溶媒蒸気は、蒸発缶27内で旋回し、これによって濃縮液と溶媒蒸気が分離される。分離された溶媒蒸気は、排気部272から排出され、コンデンサ4(
図1参照)に受け入れられる。分離された濃縮液は、被処理液供給管273から供給された被処理液と混ざり合い、導管282を流れて加熱缶26に供給される。このような操作を繰り返し、濃縮液が所望の濃度になった時点で不図示の電磁弁を開放することで、濃縮液排出口2821から濃縮液を排出し、濃縮液タンクT2(
図1参照)に回収する。一方、加熱缶26内に供給された蒸気は、第2伝熱管262を加熱することで凝縮しドレンが生じるとともに、蒸気の一部は凝縮することなく蒸気の状態が維持される。これらドレンと蒸気は、ドレン排出口2612から排出される。
【0050】
図3(b)は、濃縮装置の第2変形例を模式的に示す図である。第2変形例では、流下式の濃縮装置2’’を採用している。
【0051】
図3(b)に示すように、濃縮装置2’’は、ケーシング29と、このケーシング29内に設けられた、加熱器291、蒸発板292、濃縮液貯留槽293および被処理液ノズル294を有している。ケーシング29には、蒸気供給口295、ドレン排出口296、濃縮液排出口297および排気部298が設けられている。
【0052】
加熱器291は、内部に蒸気を流すことができる平面視矩形状の部材であり、この加熱器291の上面に蒸発板292が重ねた状態で設けられている。また、加熱器291および蒸発板292は、蒸発板292の上面292aが、
図3(b)では、右から左に向かうに従い下方に傾斜する姿勢で配置されている。以下、加熱器291および蒸発板292における、上方に位置する端部側を上流側と称し、下方に位置する端部側を下流側と称することがある。蒸発板292における上流側の端部の上方には、被処理液ノズル294が配置されている。また、蒸発板292における下流側の端部付近には、濃縮液貯留槽293が配置されている。濃縮液貯留槽293は、濃縮液排出口297に接続されている。加熱器291における上流側の端部には、蒸気供給口295が接続され、加熱器291における下流側の端部には、ドレン排出口296が接続されている。
【0053】
第2変形例の濃縮装置2’’では、蒸気供給口295から取り入れた蒸気を加熱器291に供給することで蒸発板292を加熱し、加熱された蒸発板292の上面292aに被処理液ノズル294から被処理液を供給する。供給された被処理液は、加熱された蒸発板292の上面292aに接触しながら流下することで、溶媒成分が蒸発する。すなわち、蒸発板292の上面292aは、本発明における蒸発面の一例に相当する。溶媒成分が蒸発して濃縮された濃縮液は、濃縮液貯留槽293に収容された後、濃縮液排出口297から排出され、濃縮液タンクT2(
図1参照)に回収される。なお、濃縮液貯留槽293に収容された濃縮液を、再び蒸発板292の上面292aに噴霧する循環構造を設けてもよい。被処理液から蒸発した溶媒蒸気は、排気部298から排出され、コンデンサ4(
図1参照)に受け入れられる。一方、加熱器291内に供給された蒸気は、蒸発板292を加熱することで凝縮しドレンが生じるとともに、蒸気の一部は凝縮することなく蒸気の状態が維持される。これらドレンと蒸気は、ドレン排出口296から排出される。
【0054】
次に、本発明の濃縮システムの第2実施形態について説明する。第2実施形態の説明では、
図1および
図2に示す、濃縮システムの第1実施形態との相違点を中心に説明し、これまで説明した構成要素の名称と同じ名称の構成要素には、これまで用いた符号を付して説明し、重複する説明は省略することがある。
【0055】
図4は、本発明の濃縮システムにおける第2実施形態を示す系統図である。
【0056】
図4に示すように、第2実施形態の濃縮システム11は、第3循環流路63における、蒸発器3と濃縮装置2との間に、圧縮機9が設けられている。本実施形態では、圧縮機9にルーツ式の圧縮機を採用している。この圧縮機9により蒸発器3内が減圧され、例えばドレンの沸点が80℃程度になるように圧力が調整される。蒸発器3の蒸気排出口32から圧縮機9に供給された、例えば80℃程度の蒸気は、圧縮機9において圧縮されることにより例えば100℃程度に温度上昇し、この温度上昇した蒸気が蒸気供給口2221からジャケット空間S1に供給される。これにより、蒸発面221aがより高い温度に加熱され、蒸発面221aを流れる被処理液からより効率的に溶媒成分を蒸発させることができる。
【0057】
また、本実施形態では、第3循環流路63における、圧縮機9と濃縮装置2との間に補助蒸気供給管631が接続されている。この補助蒸気供給管631は、第1実施形態の濃縮システム10におけるクッションタンク72に代えて設けられたものであるが、クッションタンク72と併設してもかまわない。本実施形態では、濃縮システム11の駆動開始時に、工場内の他の装置等で生じた余剰蒸気等を補助蒸気供給管631から第3循環流路63に供給するものであり、特に濃縮システム11の起動時において積極的に第3循環流路63に供給されることによりシステムが定常状態に至るまでの時間の短縮が可能となる。なお、第3循環流路63には、補助蒸気供給管631から第3循環流路63に供給された補助蒸気が圧縮機9側に逆流することを防ぐために逆止弁が設けられている。また、セパレータ71には、レベルコントロールLCによって駆動制御されるポンプPが接続されている。本実施形態では、補助蒸気供給管631から供給される蒸気量の分、第3循環流路63を循環する液量(水量)が増加してしまう。このため、セパレータ71に貯留されたドレンが所定量以上になったことをレベルコントロールLCが検知すると、ポンプPを駆動させドレンを排水するものである。さらに、セパレータ71に接続された真空ポンプVP2は、圧縮機9からセパレータ71にかけての経路が大気圧より高い圧力に維持されるなら省略することも可能であり、また、前述のレベルコントロールLCとこれに連動するポンプPの代わりに、セパレータ71のドレンを排出する構成として単なる排水用のバルブを開閉したり、あるいはセパレータ71にオーバーフロー口を設ける構成でもよい。ジャケット空間S1で蒸気が凝縮することで得られたドレンと、凝縮することなく状態が維持された蒸気は、ドレン排出口2222から排出され、セパレータ71によってドレンと外部から漏れ込む空気が分離される。分離された空気は、真空ポンプVP2から排気され、分離されたドレンは、ポンプPによって蒸発器3に供給される。また、本実施形態では、コンデンサ4の蒸留液排出口42に蒸留液排出ポンプP1が接続されており、蒸留液排出口42から排出された蒸留液は、蒸留液排出ポンプP1によって蒸留液タンクT3に回収される。
【0058】
以上説明した濃縮システム10,11によれば、熱効率の向上を図りつつ、蒸発面への伝熱効率の低下と放熱用熱交換器の汚れを防ぐことができる。
【0059】
本発明は前述の実施の形態に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことができる。例えば、前述の実施形態では、第1循環流路61および第2循環流路62を流れる熱媒体として液体を用いているが、いずれか一方の熱媒体に気体を用いてもよいし、あるいは、第1循環流路61と第2循環流路62の両方に流れる熱媒体に気体、例えば空気を用いてもよい。この場合、第1循環流路61や第2循環流路62にはファンまたはブロワを用いて気体の吸引吐出を行う。また、第1循環流路61のクッションタンク72と当該タンクに貯留する冷却水の代わりに、例えば、電気ヒータを内蔵した容器体を第1循環流路61に設け、当該容器体内で空気を加熱してからファンまたはブロワを用いて吸熱用熱交換器51に供給する態様を採用してもよい。あるいは、濃縮システム10以外から常時高温の空気が得られるならば、当該高温空気を適宜除塵等してから吸熱用熱交換器51に供給し、吸熱用熱交換器51で冷却し、その後コンデンサ4に供給してコンデンサ4から排出された後は、循環させずに大気に放出する態様としてもよい。
【0060】
なお、以上説明した各実施形態や各変形例の記載それぞれにのみ含まれている構成要件であっても、その構成要件を、他の実施形態や他の変形例に適用してもよい。