(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
つぎに、本発明の一実施形態のプリント配線板が図面を参照しながら説明される。本発明の一実施形態のプリント配線板10(以下、プリント配線板は単に配線板とも称される)は、
図1に示されるように、第1面F1および第1面F1と反対側の第2面F2を有する配線導体層21と、配線導体層21の第2面F2の一部上に形成される導体ポスト25と、第1表面SF1および第1表面SF1と反対側の第2表面SF2を有し、配線導体層21を第1面F1が第1表面SF1側に露出するように埋め込むと共に、導体ポスト25の側面を被覆する樹脂絶縁層30とを備えている。なお、
図1は、配線導体層21の第2面F2に直交する面での配線板10の断面(以下、配線導体層21の第2面F2と直交する断面は縦断面とも称される)を示している。本実施形態では、導体ポスト25の側面25cは、導体ポスト25の配線導体層21側の端部において、配線導体層21に近付くほど導体ポスト25の直径が大きくなるため導体ポスト25の外方に向かうように曲がる曲面とされている。ここで、導体ポスト25の配線導体層21側の端部とは、導体ポスト25の配線導体層21側の先端だけではなく先端から10μm程度までの極至近の部分を含む意味である。すなわち、
図2Aに示されるように、導体ポスト25の側面25cは、導体ポスト25の配線導体層21側の端部25dにおいて、配線導体層21の第2面F2に平行な面での導体ポスト25の断面の直径が配線導体層21側ほど大きくなるように導体ポスト25の外側方向に曲がる曲線部25eを含んでいる点に特徴がある。これにより、
図2Aに示される縦断面上、配線導体層21の第2面F2の導体ポスト21が形成されていない部分から、導体ポスト25の側面25cの直線部分(曲線部25eよりも樹脂絶縁層30の第2表面SF2側の部分)までが、曲線部25eを介して滑らかに繋がっている。すなわち、本実施形態によれば、配線導体層21と導体ポスト25とが、結合部やその近傍に鋭角や略直角のコーナー部や表面の凹凸などが生じることなく結合され得る。
【0011】
配線板に他の配線板と接続するための導体ポストが設けられる場合、
図12に示されるように、配線板510の樹脂絶縁層530上に設けられる配線層521に結合させて柱状の導体ポスト525を形成することが行われている。そして導体ポスト525の配線層521と反対側の端面525aは、配線板510と共に多層配線板を構成する他の配線板(図示せず)や、この配線板510が接続されるマザーボード(図示せず)の接続パッドなどに、たとえば接合材を用いて接続される。配線板10が、マザーボードなどと接続された状態で周囲温度の変化に晒されると、配線板10とマザーボードなどとの熱膨張率が異なっている場合、導体ポスト525と配線層521との結合体の内部には、配線層521側とその反対側との膨張/収縮量の違いから応力が生じ得る。さらに、主に導電性材料からなる導体ポスト525と絶縁性材料からなる樹脂絶縁層530との間も、通常、熱膨張率が異なるため、この違いによる応力も導体ポスト525と配線層521との結合体の内部に生じ得る。また、熱的応力ではなく、たとえば、マザーボードなどが固定された状態で配線板510に何らかの外力が作用した場合にも同様に応力が生じ得る。物体内に生じる応力は、物体の断面形状の急変部分などに集中する性質があり、そのような場合、本来の材料の強度が得られずに、この集中箇所にクラックなどが生じることがある。従って、
図12に示されるように、導体ポスト525と配線層521との結合部分に略直角のコーナー部529があると、この部分に応力が集中してしまい、その結果、結合部の剥離や、結合部の近傍部分の導体ポストのクラックが生じ易くなり、配線板521と他の配線板との接続強度や接続信頼性が低下することがある。
【0012】
本実施形態では、このような応力集中が発生しないように、すなわち、配線層と導体ポストとの結合部分周辺の断面形状に急変部分が生じることが無いように、導体ポスト25の側面25cが、
図2Aに示されるように、導体ポスト25の配線導体層21側の端部25dにおいて、配線導体層21に近付くほど導体ポスト25の外方に向かうように曲がる曲面とされている。これにより、導体ポスト25と配線導体層21との結合部分周辺に、断面形状において急変部分となるような鋭角または略直角のコーナー部や表面上の凹凸が生じることが防がれ得る。この結果、導体ポスト25と配線導体層21との結合体内に生じる応力が、コーナー部などの特定の箇所に集中することが少なくなり、配線導体層21と導体ポスト25との間の剥離や導体ポスト内のクラックの発生が抑制され得る。その結果、配線板10と他の配線板との接続信頼性が向上することがある。
【0013】
本実施形態では、
図2Aに示されるように、導体ポストの配線導体層21側の端面25fは、導体ポスト25の側面25cが端部25dにおいて曲面とされることにより、配線導体層21の反対側である樹脂絶縁層30の第2表面SF2側の端面25aよりも、幅が広く、従って、面積も大きくされている。このように配線導体層21側の端面25fが大きくされることにより、前述のように、応力集中が抑制されることに加えて、配線導体層21と導体ポスト25との結合部の面積も広くなり、導体ポスト25と配線導体層21との結合の強度および信頼性が向上することがある。しかしながら、配線導体層21側の端面25fが必ずしも樹脂絶縁層30の第2表面SF2側の端面25aよりも大きくなくてもよく、たとえば、樹脂絶縁層30の第2表面SF2側においても配線導体層21側と同様に側面25cが曲面とされている場合などは、端面25fが端面25aよりも小さくされていることもあり得るが、側面25cが端部25dにおいて曲面とされていれば、前述の応力集中抑制効果が得られることがある。
【0014】
また、本実施形態では、
図2Bに示されるように、導体ポスト25の側面25cが端部25dにおいて曲面とされることにより、配線導体層21の第2面F2のうちの導体ポスト25に接していない部分(第2面F2のうち、その上に導体ポスト25が形成されている部分の周囲の部分)と、縦断面上、曲線部25eの配線導体層21との結合部における接線Bとがなす角Cが90〜180°の鈍角とされている。換言すると、配線導体層21と導体ポスト25とが、結合部に鋭角や略直角のコーナー部などが生じることなく結合されている。結合部がこのような形状とされることが、より効果的に応力集中が抑制される点で好ましい。しかしながら、配線導体層21の第2面F2と導体ポスト25の側面25cとは、結合部において必ずしも鈍角をなしていなくてもよい。そのような場合でも、曲線部25eが存在することにより応力が分散され、コーナー部への応力集中が抑制され得るからである。
【0015】
本実施形態では、
図2Bに示される縦断面上、導体ポスト25の側面25cの曲線部25eは、略真円の円弧状の曲線とされている。すなわち、
図2Bに示される例では、曲線部25eの曲率半径は曲線部25e全体に亘って略一定である。しかしながら、曲線部25eの形状は、このような形状に限定されず、縦断面上、導体ポスト25の側面25cの直線部分から導体ポスト25の外周方向に向かってカーブすることにより側面25cと配線導体層21の第2面F2とを滑らかに結ぶ曲線であればよい。たとえば、楕円の円弧の一部のような形状であってもよく、異なる曲率半径の曲線が組み合わされた、任意の形状および長さの曲線部であってよい。曲線部25eは、大きな曲率半径の部分を含んでいる方が、より緩やかな曲線となり、応力集中抑制効果の面で優れるが、それと共に導体ポスト25の配線導体層21側の断面が拡大していくため、配線板10の小型化と両立し得る程度の大きさの曲率半径の曲線であることが好ましい。たとえば、導体ポスト25と配線導体層21との結合面の面積がA1であり、導体ポスト25の側面25cの直線部分における配線導体層21の第2面F2に平行な断面の面積、すなわち、導体ポスト25の配線導体層21側の端部25d以外の部分における配線導体層21との結合面に平行な断面の面積がA2であるとき、曲線部25eによる導体ポスト25の断面の拡大率A1/A2としては、1よりも大きく1.2よりも小さい数値が例示される。また、導体ポスト25の側面25cが配線導体層21側の端部25dにおいて曲面とされることにより導体ポスト25が太くなる位置、すなわち
図2Bに示される縦断面上、導体ポスト25の幅が大きくなる位置から配線導体層21の第2面F2までの距離D3としては、1〜10μmが例示される。
【0016】
図1に示されるように、導体ポスト25は、配線導体層21の第2面F2上に、柱状体または切り株状の台状体の形状に形成されている。配線導体層21側の端部25dにおいて側面25cが配線導体層21に近付くほど導体ポスト25の外方に向かうように曲がる曲面とされている本実施形態の導体ポスト25は、縦断面上、柱状体の本体部の側面から柱状体の一端側に向かって表面が弧を描きながら山裾状に延びるフィレット部が本体部の一端側の端部の外周側面全周にわたって本体部と一体的に形成されたものともいえる。本実施形態では、導体ポスト25は、配線導体層21に形成される第1パターン21aの第2面F2上から、樹脂絶縁層30の第2表面SF2側に向かって延びており、その端面25aが樹脂絶縁層30の第2表面SF2側に露出している。導体ポスト25は、たとえば、配線導体層21に形成される第2パターン21bに接続される図示しない半導体素子の所定の電極と前述の他の配線板などとを電気的に接続する。従って、図示しない半導体素子の電極数に相当する数の導体ポスト25が、樹脂絶縁層30の外周に沿ってまたはその全面に設けられてもよい。
【0017】
導体ポスト25は、前述のように、第1パターン21aの第2面F2側から樹脂絶縁層30の第2表面SF2側に向かって延びており、その延長方向と直交する断面(以下、導体ポスト25の延長方向と直交する断面は横断面とも称される)の形状が略円形となる円柱状の形状に形成される。しかしながら、導体ポスト25の横断面の形状はこれに限定されず、楕円形、正方形、矩形、または、菱形などでもよい。導体ポスト25が、後述のように、電気めっき法により形成される場合は、めっき時のレジストフィルムの開口の形状を所望の形状にすることにより、任意の横断面形状の導体ポスト25が形成され得る。
【0018】
また、図示されていないが、導体ポスト25の側面25cには表面粗さを粗くする粗化処理が施されていてもよい。導体ポスト25の側面が粗化されることにより、所謂アンカー効果が得られ、導体ポスト25と樹脂絶縁層30との密着性が向上する。粗化処理の方法は特に限定されず、たとえば、ソフトエッチング処理や、黒化(酸化)−還元処理などが例示される。また、配線導体層21の側面および導体ポスト25が形成されている部分以外の第2面F2にも導体ポスト25の側面と同様の粗化処理が施されていてもよい。この場合、配線導体層21と樹脂絶縁層30との密着性が向上され得る。
【0019】
配線導体層21は、第1面F1が樹脂絶縁層30の第1表面SF1側に露出するように、樹脂絶縁層30の第1表面SF1側に全体が埋め込まれている。すなわち、配線導体層21と樹脂絶縁層30とは、配線導体層21の第2面F2だけではなく、配線導体層21の側面、具体的には、配線導体層21に形成されている第1パターン21aや第2パターン21bの側面においても接している。このため、第1パターン21aや第2パターン21bがファインピッチで形成され、配線導体層21の第2面F2の面積が小さくなっても、配線導体層21と樹脂絶縁層30との密着性が維持され得る。また、配線導体層21が樹脂絶縁層30内に埋め込まれていることによって、配線板10が薄くされ得る。
【0020】
配線導体層21には、前述のように、第1パターン21aおよび第2パターン21bが形成されている。本実施形態では、第1パターン21aは、樹脂絶縁層30の第2表面SF2側で配線板10と接続される他のプリント配線板(図示せず)などと電気的に接続される導体パターンである。ここで、他のプリント配線板とは、配線板10が用いられる電子機器などのマザーボードであってよく、または、配線板10と共に多層配線板を構成する、絶縁層と導体層からなる他の配線板であってもよい。また、第2パターン21bは、たとえば半導体素子(図示せず)などが接続される接続パッド21c(
図5B参照)であってよい。また、配線導体層21には、第1および第2パターン21a、21b以外の導体パターンが形成されていてもよい。たとえば、後述のように、接続パッド21cに接続される半導体素子の電極のうち配線板10の外部と電気的に接続されるものは、接続パッド21cと第1パターン21aとを接続するように配線導体層21に形成される配線パターン21d(
図5B参照)を介して、第1パターン21aおよび導体ポスト25と電気的に接続される。
【0021】
配線導体層21および導体ポスト25の形成方法は特に限定されないが、好ましくは、金属膜を安価で容易に形成することができる電気めっき法により形成される。また、電気めっき法以外の方法で、たとえば、インクジェット工法等により配線導体層21が形成されてもよい。また、導体ポスト25は、たとえば、予め、全体として円柱や四角柱の形状の導体ピンとして別個に導電性材料から形成され、第1パターン21aに結合されてもよい。なお、導体ポスト25の端部25dを、
図2Aに示されるように、曲線部25eのような曲線状にすることは、後述されるように、たとえば、曲線部の無い柱状体の導体ポストを形成した後に側面25cの一部をエッチングすることにより行われてよい。すなわち、導体ポスト25の配線導体層21との結合部分を、エッチングの条件を調整することにより意図的に残すようにして、側面25cの他の部分の表面を除去すればよい。また、このようなエッチングは、前述の導体ポスト25の側面25cの粗化処理が行われる場合は、この粗化処理を兼ねて行われてもよく、または、粗化処理とは別の工程として行われてもよい。また、電気めっき法により導体ポストが形成される場合は、感光性めっきレジストの露光および現像条件を調整することにより導体ポストとなるめっき層が形成されるめっきレジストの開口の底部が裾広がりになるようにレジストマスクを形成することによって、側面25cが、縦断面状、端部25dにおいて曲線状となるようにされてもよい。
【0022】
樹脂絶縁層30は、配線導体層21の側面および導体ポスト25が形成されていない部分の第2面F2、ならびに、導体ポスト25の側面25cを被覆している。樹脂絶縁層30の第1表面SF1には配線導体層21の第1面F1が露出し、反対側の第2表面SF2には導体ポスト25の端面25aが露出している。樹脂絶縁層30の厚さは、特に限定されないが、配線板10への薄型化の要求に対応しつつ、取扱いが容易な一定の剛性を併せもつ点で、100〜200μm程度にされるのが好ましい。
【0023】
樹脂絶縁層30の材料は、ガラス繊維などの芯材を含まない樹脂組成物であってよく、芯材のない樹脂組成物だけでもよい。樹脂組成物としては、好ましくはエポキシ樹脂が用いられる。また、シリカなどの無機フィラーが30〜80重量%含有されているエポキシ樹脂が用いられてもよい。また、樹脂絶縁層30の材料は、配線板10の製造時にシート状またはフィルム状で供給されるのに適した樹脂組成物であってよく、或いは、樹脂絶縁層30がモールド成形により形成される場合に適したモールド成形用の樹脂材料であってよい。モールド成形用の樹脂材料が選択される場合、樹脂絶縁層30の材料は、熱膨張率が6〜25ppm/℃、かつ、弾性率が5〜30GPaであることが、成形時に金型内で良好な流動性が得られると共に、成形後に配線導体層21との界面や、樹脂絶縁層30の第1表面SF1側に実装される図示しない半導体素子などとの接合部に過大な応力が生じない点で好ましい。しかしながら、熱膨張率や弾性率が前述の範囲外である材料が樹脂絶縁層30に用いられてもよい。
【0024】
図1に示されるように、本実施形態では、配線導体層21の第1面F1は、樹脂絶縁層30の第1表面SF1より第2表面SF2側に位置しており、第1表面SF1よりも凹んでいる。このように配線導体層21が形成されていると、電極が狭ピッチで配置された図示しない半導体素子が、接合材などにより第2パターン21bなどに接続される場合でも、第2パターン21b間の樹脂絶縁層30の部分が壁となり、隣接する第2パターン21b間で接合材などが接触して電気的にショート状態となることが防止され得る。しかしながら、
図1に示される例に限定されず、配線導体層21の第1面F1が樹脂絶縁層30の第1表面SF1と面一であってもよい。
【0025】
また、本実施形態では、導体ポスト25の樹脂絶縁層30の第2表面SF2側の端面25aは、樹脂絶縁層30の第2表面SF2より第1表面SF1側に位置しており、第2表面SF2よりも凹んでいる。このように、導体ポスト25の端面25aが樹脂絶縁層30の第2表面SF2よりも凹んでいると、導体ポスト25が図示しない他のプリント配線板などに接続される場合に、導体ポスト25の端面25a上にハンダなどの接合材層27(
図4参照)が、導体ポスト25の側面などに濡れ広がることなく形成され得る。また、接合材が溶融しているときは、導体ポスト25間の樹脂絶縁層30の部分が壁となり、隣接する導体ポスト25間で接合材が接触して電気的にショート状態となることが防止され得る。しかしながら、導体ポスト25の端面25aは樹脂絶縁層30の第2表面SF2と面一であってもよく、第2表面SF2から突出していてもよい。
【0026】
本実施形態では、樹脂絶縁層30の第2表面SF2から導体ポスト25の端面25aまでの距離が、樹脂絶縁層30の第1表面SF1から配線導体層21の第1面F1までの距離よりも大きくされており、すなわち、導体ポスト25の端面25aの樹脂絶縁層30の第2表面SF2からの凹みの方が、配線導体層21の第1面F1の樹脂絶縁層30の第1表面SF1からの凹みよりも大きくされている。たとえば、図示しない半導体素子との接続がワイヤボンディングなどにより行われるような場合は、配線導体層21の第1面F1上にボンディングに適した材料によるボンディング層(図示せず)がめっき法などにより形成され得る。このボンディング層の形成時に導体ポスト25の端面25aがマスクされていないと、端面25a上にも配線導体層21の第1面F1と略同じ厚さのめっき膜が形成される。本実施形態では、導体ポスト25の端面25a上の凹みの方が配線導体層21の第1面F1上の凹みよりも大きくされているので、樹脂絶縁層30の第1表面SF1からの凹みが埋まるほど厚いボンディング層が配線導体層21の第1面F1上に形成される場合でも、端面25aの第2表面SF2からの凹みがめっき膜で埋まることは無く、たとえば、接合材層27(
図4参照)を形成するための空間25b(
図3参照)が端面25a上に確保され得る。従って、端面25aのマスキングなどを要することなく、めっき法などにより前述のボンディング層が形成され得る。なお、半導体素子が、ワイヤボンディングなどにより配線導体層21と接続される場合は、ハンダのような流動性の接合材が用いられないので、配線導体層21の第1面F1の樹脂絶縁層30の第1表面SF1からの凹みが埋められても大きな問題とならない。
【0027】
なお、配線導体層21の第1面F1は、後述される配線板10の製造方法においてベース金属箔81(
図8I参照)がエッチングにより除去されるときに、ベース金属箔81が全て溶解したあともエッチングが適切な時間継続されることにより、樹脂絶縁層30の第1表面SF1よりも凹み得る。また、ベース金属箔81のエッチング工程において、導体ポスト25の樹脂絶縁層30の第2表面SF2側に露出する面がマスキングされずにエッチング液に晒されることにより、導体ポスト25の第2表面SF2側の先端部分がベース金属箔81と共にエッチングされ、端面25aが樹脂絶縁層30の第2表面SF2よりも凹み得ると共に、配線導体層21の第1面F1の第1表面SF1からの凹みよりも端面25aの第2表面SF2からの凹みの方が大きくなり得る。
【0028】
配線導体層21および導体ポスト25を構成する材料は特に限定されないが、電気めっきによる形成が容易で、導電性に優れる銅が主に用いられる。しかしながら、配線導体層21および導体ポスト25は、銅以外の材料で、たとえば、銅合金、または、導電性材料と樹脂組成物とが混合されてペースト状にされた導電性ペーストなどにより構成されてもよい。
【0029】
配線導体層21および導体ポスト25の各部の寸法の好ましい例が、
図2Aを参照しながら説明される。樹脂絶縁層30の第1表面SF1から配線導体層21の第1面F1までの距離D1は、0.1〜5μmが例示される。距離D1がこのような長さにされることは、金属箔81(
図8I参照)が除去された後に継続するエッチングの時間があまり長くならず、かつ、隣接する第2パターン21b間などで接合材などが接触することが防止され得る点で好ましい。樹脂絶縁層30の第2表面SF2から導体ポスト25の端面25aまでの距離D2は、3〜10μmが例示される。距離D2がこのような長さにされることは、導体ポスト25の先端部分のエッチングのためにあまり長い時間がかからず、かつ、端面25a上にハンダなどの接合材層27(
図4参照)が十分な厚さで形成され得る点で好ましい。配線導体層21の厚さt1は、一定の導電性を確保しつつ、電気めっき法において比較的短い時間で配線導体層21の形成が可能な点で、10〜25μm程度にされるのが好ましい。導体ポスト25の高さH1は、配線導体層21と、樹脂絶縁層30の第2表面SF2側のマザーボードなどとを接続できる高さであれば、特に限定されないが、50〜150μmが例示される。導体ポスト25がこのような高さに形成されると、数多く用いられている100〜200μm程度の厚さの樹脂絶縁層に適用され得る点で好ましい。しかしながら、樹脂絶縁層30の第1表面SF1から配線導体層21の第1面F1までの距離D1、樹脂絶縁層30の第2表面SF2から導体ポスト25の端面25aまでの距離D2、配線導体層21の厚さt1、および導体ポスト25の高さH1は、それぞれ、前述された範囲を上回る、または下回る距離、厚さ、または高さにされてもよい。
【0030】
図3に示されるように、配線導体層21の第1面F1、および、導体ポスト25の配線導体層21と反対側の端面25aには、表面保護膜28が形成されていてもよい。ここで、「表面保護膜」は、酸化などの腐食に対して配線導体層21や導体ポスト25を保護する膜という意味に加えて、たとえばハンダなどの接合材やボンディングワイヤなどとの良好な接合性を得るために第1面F1や端面25a上に形成される膜という意味も含んでいる。表面保護膜28としては、Ni/Au、Ni/Pd/Au、またはSnなどの、複数層または単層からなるめっき金属膜や、有機保護膜(OSP)などが例示される。また、表面保護膜28は、配線導体層21の第1面F1と導体ポスト25の端面25aとの両方に形成されてもよく、または、いずれか一方だけに形成されてもよい。また、配線導体層21の第1面F1と導体ポスト25の端面25aとで、異なる材料の表面保護膜、たとえば、第1面F1上に、Ni/Au、Ni/Pd/Auなどの金属膜が形成され、端面25a上にOSPが形成されてもよい。
【0031】
また、樹脂絶縁層30の第2表面SF2よりも凹んでいる導体ポスト25の端面25a上の空間25b(
図3参照)に、
図4に示されるように、接合材層27が形成されていてもよい。接合材層27の材料は、導体ポスト25と、配線板10が実装される図示しないマザーボードなどとを接合できるものであれば特に限定されないが、好ましくはハンダが用いられる。接合材層27は、ハンダが用いられる場合、ペースト状のハンダを塗布したり、めっき法を用いたりして形成され得る。しかしながら、接合材層27の形成方法は、特に限定されず、他のあらゆる方法、たとえば、ハンダボールを搭載してリフローする方法が用いられてもよい。
【0032】
図4に示される例では、接合材層27は、樹脂絶縁層30の第2表面SF2よりも突出するように形成されている。接合材層27は、
図4に示される例と異なり、樹脂絶縁層30の第2表面SF2から突出しないように形成されてもよく、または、
図4に示される例よりも多く第2表面SF2から突出するように形成されてもよい。導体ポスト25の端面25aが第2表面SF2よりも突出していると、前述のように、端面25a上にハンダなどからなる接合材層27を形成しようとすると、接合材が溶融状態のときに導体ポスト25の側面に濡れ広がり易く、隣接する導体ポスト25の接合材と接触し易い。さらに、ハンダボール(図示せず)などが端面25a上に配されて接合材層が形成される場合、端面25a上でハンダボールが安定し難い。しかしながら、本実施形態では、導体ポスト25の端面25aが樹脂絶縁層30の第2表面SF2よりも凹んでいるため、接合材が導体ポスト25の側面に濡れ広がることは無く、ハンダボールなどが端面25a上に配される場合でも、ハンダボールの一部が凹み内に収まることにより端面25a上で安定し易い。さらに、樹脂絶縁層30の材料にハンダなどの接合材に対する濡れ性の低いものを用いれば、
図4に示されるように接合材層27が樹脂絶縁層30の第2表面SF2よりも突出して形成される場合であっても、溶融状態の接合材が第2表面SF2に沿って隣接する導体ポスト25の方に広がることも無い。従って、隣接する導体ポスト25同士が電気的にショート状態となるリスクが低くされながら、導体ポスト25の端面25aに多くの接合材が供給され得る。
【0033】
図5Aには、本実施形態の配線板10の導体ポスト25の樹脂絶縁層30の第2面SF2における配置例が示されている。導体ポスト25は、
図1に示される例では、第2パターン21bが配置されている領域の両側に1つずつ形成されているが、導体ポスト25が形成される数および形成される位置は
図1に示されるものに限定されない。たとえば、
図5Aに示されるように、複数の導体ポスト25が一方向に並べて形成されてなる導体ポスト列26が、配線板10の各辺に沿って2列並置して形成されていてもよい。導体ポスト列26は3列以上並置されてもよく、
図5Aに示されるように、各辺に沿って形成されている導体ポスト列と一定の間隔を空けて、さらに中心部に格子状に導体ポスト25が配置されてもよい。また、たとえば、樹脂絶縁層30の第2表面SF2の全面に亘って格子状に形成されてもよい。
【0034】
図5Aに示されるプリント配線板10の樹脂絶縁層30の第1面SF1側の配線導体層21には、たとえば、
図5Bに示されるように、第1および第2パターン21a、21b、および、第1パターン21aと第2パターン21bとを接続する配線パターン21dが形成され得る。すなわち、第1パターン21aそれぞれの
図5Bに示されている面(第1面F1)の反対側の面(第2面F2)上には、
図5Aに示される導体ポスト25が形成されている。第2パターン21bは、
図5Bに示される例では、図示されていない半導体素子が接続される接続パッド21cであり、たとえば、ICチップなどの電極とハンダバンプやボンディングワイヤなどにより電気的に接続される。
図5Bは、矩形状の外形の4辺それぞれに電極が配置されている半導体素子と接続される接続パッド21cの例であり、接続パッド21cが一定のピッチで配列されてなる4つの接続パッド列が、全体として矩形をなすように配置されている。また、接続パッド21c(第2パターン21b)と、その周囲に形成されている第1パターン21aとは、配線パターン21dにより接続されている。これにより、図示されない半導体素子の電極が、導体ポスト25を介して、図示されないマザーボードなどの他の配線板と電気的に接続され得る。なお、
図5Bに示されている配線導体層21の各パターンは一例に過ぎず、配線板10内に形成される電気回路に応じて、任意の導体パターンが形成されてよい。
【0035】
また、
図6に示されるように、導体ポスト25は、並置される2つの導体ポスト列26の列方向の位置が互いにずれるような配置で形成されていてもよい。
図6に示される例では、互いに同じピッチで導体ポスト25が並べられ、隣接して形成されている2つの導体ポスト列26が、導体ポスト25の配置ピッチの半分の長さだけ列方向に位置をずらして形成されており、導体ポスト25が千鳥状に配置されている。このように導体ポスト25が千鳥状に配置されることにより、隣接する導体ポスト列26の間の導体ポスト25同士の間隔が広くなり、導体ポスト25同士が電気的にショート状態となるおそれが少なくなる。従って、導体ポスト列26がさらに狭ピッチで並置され得る。なお、
図6に示される配置の場合も、導体ポスト列26が樹脂絶縁層30の第2表面SF2の全面に亘って形成されてよい。
【0036】
以上の説明では、1つの配線板10が示される図面が参照されたが、本実施形態の配線板10は、
図7に示されるように、複数個の配線板10が縦横に配列される多数個取り基板15として製造され、最終的に分割されて個々の配線板10とされるか、または、多数個取り基板15のまま、電子機器製造業者などのユーザーに届けられてもよい。多数個取り基板15の形態で製造されると、後述の配線板10の製造工程の説明で示されるエッチング処理やめっき膜の形成を複数個同時に行えるため、効率的に配線板10が製造され得る。また、ユーザーの工程においても電子機器などが効率的に製造され得る。
図7に示される例では、多数個取り基板15には、配線導体層21の一部であり多数個取り基板15の外周に沿って形成されているダミー部21fの内周側に、
図7上、縦方向に7個、横方向に10個の配線板10が配列された配線板群15aが横方向に2つ並べて形成されている。2つの配線板群15aの間のダミー部21fには、残銅率の調整のためにダミー部21fの一部が4箇所に亘って長円形の形状に除去されて、下層の樹脂絶縁層30が露出している。多数個取り基板15内の配線板10の縦方向の配列数および横方向の配列数は
図7に示される例に限定されず、多数個取り基板15に用いられる樹脂絶縁層30などの材料が効率よく利用され得るように個々の配線板10のサイズに応じて適宜選択されてよい。
【0037】
つぎに、本実施形態の配線板10の製造方法の一例が、
図8A〜8Jを参照して説明される。
【0038】
本実施形態の配線板10の製造方法では、まず、
図8Aに示されるように、出発材料として、支持板80、キャリア銅箔80aおよびベース金属箔81が用意され、支持板80の両面にキャリア銅箔80aが積層され、加圧および加熱されて接合される。支持板80には、好ましくは、ガラスクロスなどの芯材にエポキシなどの絶縁性樹脂を含浸させた材料などからなる半硬化状態のプリプレグ材などが用いられるが、これに限定されず、他の材料が用いられてもよい。ベース金属箔81の材料は、表面上に、後述の配線導体層21(
図8B参照)が形成され得るものであって、好ましくは、配線導体層21および後述の導体ポスト25(
図8D参照)の材料が溶解するエッチング液で同様に溶解し得る材料が用いられる。好ましくは、ベース金属箔には、1〜3μmの厚さの銅箔が用いられる。しかしながら、これに限定されず、ニッケルなどの金属箔が用いられてもよい。また、キャリア銅箔80aは、たとえば、15〜30μm、好ましくは18μmの厚さの銅箔が用いられる。しかしながら、キャリア銅箔80aの厚さは、これに限定されず、他の厚さにされてもよい。
【0039】
キャリア銅箔80aとベース金属箔81との接合方法は特に限定されないが、たとえば、両者の貼り付け面の略全面において、剥離し易い熱可塑性の接着剤(図示せず)により接着されてもよく、或いは、後述の配線導体層21(
図8B参照)の導体パターンが設けられない外周付近の余白部において、接着剤または超音波接続により接合されてもよい。また、キャリア銅箔80aとベース金属箔81とは、キャリア銅箔80aが支持板80に接合される前に接合されてもよいが、これに限定されず、たとえば、支持板80に両面銅張積層板が用いられ、表面の銅箔をキャリア銅箔80aとして、その上に単体のベース金属箔81が前述の方法などを用いて接合されてもよい。
【0040】
なお、
図8A〜8Hには、支持板80の両側の面にベース金属箔81が接合され、それぞれの面において、配線導体層21、導体ポスト25および樹脂絶縁層30が形成される製造方法の例が示されている。このような方法で製造されれば、配線導体層21や導体ポスト25などが支持板80の両面に2つ同時に形成され得る点で好ましい。しかしながら、支持板80の一方の面だけ配線導体層21などが形成されてもよく、また、両側で互いに異なる回路パターンの配線導体層などが形成されても良い。以下の説明は、両面に同じ回路パターンが形成される例を参照して説明されるため、一方の面だけについて説明され、他面側に関しての説明、および、各図面における他面側の符号は省略される。
【0041】
つぎに、
図8Bに示されるように、ベース金属箔81上に配線導体層21が形成される。配線導体層21の形成方法は特に限定されないが、たとえば、電気めっき法が用いられる。具体的には、まず、ベース金属箔81上にレジスト材(図示せず)が全面に塗布または積層され、パターニングされることにより配線導体層21が形成される部分以外の所定の領域にめっきレジスト膜(図示せず)が形成される。続いて、めっきレジスト膜が形成されていないベース金属箔81上に、ベース金属箔81をシード層として、たとえば、電気めっきによるめっき層が形成される。その後、めっきレジスト膜が除去される。その結果、
図8Bに示されるように、第1パターン21aおよび第2パターン21bが形成されている配線導体層21が所定の回路パターンでベース金属箔81上に形成される。配線導体層21は、好ましくは後述の導体ポストと同じ材料で形成され、好ましくは銅で形成される。また、配線導体層21は、好ましくは10〜30μmの厚さに形成されるが、これに限定されず、より薄く、またはより厚く形成されてもよい。
【0042】
つぎに、配線導体層21の第1パターン21a上に導体ポスト25が形成される。具体的には、まず、
図8Cに示されるように、配線導体層21のベース金属箔81と接している側の面(第1面F1)と反対側の面(第2面F2)上、および配線導体層21に覆われずに露出しているベース金属箔81上にめっきレジスト膜85が形成され、第1パターン21a上の導体ポスト25(
図8D参照)が形成される部分に開口85aが設けられる。めっきレジスト膜85は少なくとも50〜150μm程度の厚さに形成される。続いて、第1パターン21a上の開口85a内に、ベース金属箔81をシード層として、たとえば、電気めっきによるめっき層250が形成される。その後、めっきレジスト膜85が除去される。その結果、
図8Dに示されるように、第1パターン21aの第2面F2上に電気めっきによるめっき層からなる導体ポスト25が形成される。導体ポスト25は、好ましくは配線導体層21と同じ材料で形成され、好ましくは銅で形成される。また、導体ポスト25は、好ましくは50〜150μmの厚さに形成され得るが、これに限定されない。
【0043】
導体ポスト25が形成された後、導体ポスト25の側面25cがエッチングされ、表層部が僅かに除去されることにより、導体ポスト25の端部25dの側面が、
図8Eに示される縦断面上、曲線部25eのような曲線状の面にされる。すなわち、導体ポスト25の端部25dは、配線導体層21と導体ポスト25とによるコーナー部分となっているため、配線導体層21に近付くほど次第にピュアなエッチング液に晒され難くなり、このため端部25dには表面がなだらかな曲面状のエッチング残りが生じ易いが、このような端部25dがより確実に形成されるようにエッチング液の温度や噴射条件、および/または、エッチング時間などが調整され、導体ポスト25の端部25d以外の側面25cの表層部が所定の厚さで僅かにエッチング除去されることにより、端部25dの側面が縦断面上
図8Eに示されるように曲線状の面にされ得る。
【0044】
導体ポスト25の端部25dの側面が曲線状にされた後、または、端部25dの側面が曲線状の面にされるのと共に、好ましくは、後述の樹脂絶縁層30との密着性を高めるために、導体ポスト25の側面25c、および導体ポスト25の配線導体層21と反対側の端面25a、ならびに、配線導体層21の側面および導体ポスト25が形成されていない部分の第2面F2に粗化処理が行われる。導体ポスト25の端部25dの側面を曲線状にする工程と別に粗化処理が行われる場合、粗化処理の方法としては、たとえば、ソフトエッチング処理や、黒化(酸化)−還元処理などが例示される。しかしながら、粗化処理の方法はこれらに限定されない。粗化される各面は、好ましくは、算術平均粗さで0.1〜1μmの表面粗さに処理される。また、粗化処理が行われる場合は、めっきレジスト膜85の除去と粗化処理との間に、粗化を安定させるために電気めっき銅の結晶を成長させるアニール処理が行われてもよい。
【0045】
つぎに、配線導体層21および導体ポスト25を被覆する樹脂絶縁層30(
図8G参照)が形成される。具体的には、まず、
図8Fに示されるように、導体ポスト25上に、シート状またはフィルム状の絶縁材33が積層され、支持板80側に向かって加圧されると共に加熱される。加熱により絶縁材33が軟化し、第1パターン21aと第2パターン21bとの間、第2パターン21b同士の間、および導体ポスト25同士の間に流れ込み、半硬化の状態で固化する。その後、さらに加熱されることにより絶縁材33が完全に硬化し、
図8Gに示されるように、第1パターン21aの側面および導体ポスト25が形成されていない部分の第2面F2、第2パターン21bの側面および第2面F2、ならびに導体ポスト25の側面および端面25a全てを覆う樹脂絶縁層30が形成される。このように、シート状またはフィルム状の絶縁材を積層して樹脂絶縁層30を形成する方法は、一般的な配線板の製造設備により樹脂絶縁層30が形成され得る点で好ましい。樹脂絶縁層30が形成された後、好ましくは、バフ研磨が行われ、樹脂絶縁層30の形成時に生じたバリが除去される。
【0046】
つぎに、
図8Hに示されるように、樹脂絶縁層30のベース金属箔81側と反対側の面(第2表面SF2)が、導体ポスト25の先端が第2表面SF2に露出するまで、バフ研磨、または、化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)などにより研磨される。
【0047】
つぎに、支持板80およびキャリア銅箔80aと、ベース金属箔81とが分離される。具体的には、まず、たとえば、
図8Hに示される配線板の工程途上品10aが加熱され、キャリア銅箔80aとベース金属箔81とを接合している図示しない熱可塑性接着剤が軟化している状態で、支持板80およびキャリア銅箔80aに、ベース金属箔81との界面に沿う方向の力が加えられ、キャリア銅箔80aとベース金属箔81とが引き離される。或いは、前述のように、両者が外周付近の余白部において接着剤または超音波接続により接合されている場合は、接合箇所よりも内周側で、キャリア銅箔80a、ベース金属箔81、および支持板80が樹脂絶縁層30などと共に切断され、接着剤などによる接合箇所が切除されることによりキャリア銅箔80aとベース金属箔81とが分離されてもよい。その結果、配線板の工程途上品10aは、2つの個別の工程途上品となる。この状態が
図8Iに示されている。なお、
図8Iには、
図8Hにおいて支持板80の下面側に示されている配線板の工程途上品10aだけが示されている。
【0048】
続いて、ベース金属箔81が、たとえばエッチングなどにより除去される。このエッチング液には、好ましくは、ベース金属箔81、配線導体層21および導体ポスト25それぞれの構成材料がいずれも溶解され得るものが用いられる。このため、ベース金属箔81のエッチングの際に、導体ポスト25の樹脂絶縁層30の第2表面SF2に露出する面がエッチング液に晒されることにより、ベース金属箔81と共に導体ポスト25の先端部分がエッチングされる。そして、ベース金属箔81が全て除去された後もエッチングプロセスが継続されることにより、ベース金属箔81の除去により樹脂絶縁層30の第1表面SF1に露出する配線導体層21の第1面F1側がエッチングされ、ベース金属箔81がエッチングされているときと同様に、導体ポスト25の先端部分もエッチングされる。この結果、
図8Jに示されるように、配線導体層21の第1面F1が樹脂絶縁層30の第1表面SF1よりも凹み、導体ポスト25の端面25aが樹脂絶縁層30の第2表面SF2よりも凹み、かつ、導体ポスト25の端面25aの樹脂絶縁層30の第2表面SF2からの凹みの方が、配線導体層21の第1面F1の樹脂絶縁層30の第1表面SF1からの凹みよりも大きく凹んでいる。しかしながら、ベース金属箔81と、配線導体層21および導体ポスト25とが、別の材料で構成されている場合に、ベース金属箔81だけが溶解されるエッチング液が用いられてもよく、また、配線導体層21の第1面F1が樹脂絶縁層30の第1表面SF1と、および、導体ポスト25の端面25aが樹脂絶縁層30の第2表面SF2と、それぞれ面一であってもよく、導体ポスト25の端面25aが樹脂絶縁層30の第2表面SF2から突出していてもよい。
【0049】
ベース金属箔81の除去後に、好ましくは、表面保護膜28(
図3参照)が、配線導体層21の第1面F1および導体ポスト25の端面25aに形成される。表面保護膜28の形成は、Ni/Au、Ni/Pd/Au、またはSnなどの複数または単一の金属膜をめっき法により形成することにより行われてよい。また、液状の保護材料内への浸漬や保護材料の吹付けなどによりOSPが形成されてもよい。表面保護膜は、配線導体層21の第1面F1と導体ポスト25の端面25aとの両方に形成されてよく、いずれか一方だけに形成されてもよい。また、配線導体層21の第1面F1と導体ポスト25の端面25aとで、異なる材料の表面保護膜が形成されてもよい。
【0050】
また、表面保護膜の形成に加えて、または表面保護膜が形成されずに、導体ポスト25の端面25a上に、導体ポスト25と外部のマザーボードなどとを接合する接合材からなる接合材層27(
図4参照)が形成されてもよい。接合材層27の材料には好ましくはハンダが用いられ、ペースト状のハンダの塗布やハンダボールを配置して一旦溶融後硬化させたり、めっき法を用いたりして形成され得る。しかしながら、接合材層の材料や形成方法は、特に限定されず、他の材料および方法が用いられ得る。
【0051】
以上の工程を経ることにより、
図1に示される本実施形態の配線板10が完成する。完成した配線板10には、第2パターン21b上に図示しない半導体素子が接続されてよい。また、導体ポスト25の端面25aが、配線板10が用いられる電子機器などのマザーボードなどに接続されてよく、或いは、図示しない他のプリント配線板に接続されて多層プリント配線板の一部とされてもよい。
【0052】
図8A〜8Jを参照してなされた配線板10の製造方法の説明では、導体ポスト25の側面25cがエッチングされることにより、導体ポスト25の端部25dの側面が
図8Eに示されるように曲面とされる例について説明された。しかしながら、本実施形態の導体ポスト25は、
図8Cを参照して説明された電気めっき層250を形成する時点で端部25dの側面が曲面状となるように形成されてもよい。すなわち、
図9に示されるように、めっきレジスト膜85の第1パターン21aの導体ポスト25が形成される部分に、底部が裾広がりの形状となるように底部の壁面が曲面とされる開口85bが形成され、開口85b内に電気めっき層250が形成されることにより導体ポスト25が形成されてよい。なお、開口85bを
図9に示されるような底部が裾広がりの形状に形成することは、たとえば、露光されることにより現像時の溶解性が低下するネガ型の感光性材料がめっきレジスト膜85の材料として用いられ、開口85bを設ける部分以外の部分が露光されるときに、感光性材料の深部、すなわち、第1パターン21aの直近の部分まで十分には露光されない程度に感光性材料が露光され、感光性材料の現像時に、その十分に露光されていない部分が、開口85bの形成部分であって全く露光されずに現像により除去される部分と共に除去されることにより行われ得る。この場合、感光性材料の深部側ほど、すなわち、第1パターン21aに近い側ほど露光され難くなるため、
図9に示されるように、底部が裾広がりの形状の開口85bが形成され得る。
【0053】
また、
図8A〜8Jを参照してなされた前述の説明では、シート状またはフィルム状の絶縁材33が積層され、加熱および加圧されることにより樹脂絶縁層30が形成される本実施形態の配線板10の製造方法の一例が説明された。しかしながら本実施形態の配線板10の樹脂絶縁層30はモールド成形により形成されてもよく、そのような本実施形態の配線板10の製造方法の他の例(以下、この例は単に本製法とも称される)が、
図10A〜10Dを参照して以下に説明される。なお、樹脂絶縁層30がモールド成形により形成される場合、成形時に、成形金型の下型に支持板80が支持されて上型が被せられるので、支持板80の両方の面に樹脂絶縁層30を形成するのが困難な場合がある。従って、以下の説明では、支持板80の一方の側だけに配線板10が形成される例について説明され、
図10A〜10Dにおいても、図面上、支持板80の上側だけに配線導体層21などが形成される例が示されている。しかしながら、下型と一部が接するだけで支持板80が支持され得るなど、支持板80の両側で、同時にまたは一方の側ずつ順番に樹脂絶縁層30が形成され得る場合は、支持板80の両面に配線導体層21などが形成され、樹脂絶縁層30がモールド成形により支持板80の両面に形成されてもよい。なお、本製法では、樹脂絶縁層30の形成以外の工程は、
図8A〜8Jを参照して説明された製造方法と同様であるので、
図8A〜8C、8E、8Iおよび8Jに相当する図面、ならびに、これらの工程の説明は適宜省略される。
【0054】
本製法では、
図8A〜8Cを参照して説明された工程と同様の工程を経て、
図10Aに示されるように、支持板80の一方の側に形成されている配線導体層21の第1パターン21a上に導体ポスト25が形成される。導体ポスト25が形成された後、
図8Eを参照して説明された方法と同様の方法で、導体ポスト25の端部25dの側面が、
図8Eに示される縦断面上、曲線部25eのような曲線状の面にされる。その後、または、端部25dの側面が曲線状の面にされるのと共に、好ましくは、後述の樹脂絶縁層30(
図10C参照)との密着性を高めるために、導体ポスト25の側面25cおよび端面25a、ならびに、配線導体層21の側面および導体ポスト25が形成されていない部分の第2面F2に粗化処理が行われる。粗化処理の方法は、特に限定されないが、たとえば、ソフトエッチング処理や、黒化(酸化)−還元処理などが例示される。粗化される各面は、好ましくは、算術平均粗さで0.1〜1μmの表面粗さに処理される。また、導体ポスト25の形成後、粗化処理の前に、粗化を安定させるために電気めっき銅の結晶を成長させるアニール処理が行われてもよい。また、導体ポスト25は、
図9を参照して説明された方法と同様の方法で、端部25dの側面が曲面状となるように形成されてもよい。
【0055】
つぎに、樹脂絶縁層30(
図10C参照)が形成される。具体的には、まず、
図10Bに示されるように、支持板80上に、キャビティ89を有する金型88がセットされる。第1および第2パターン21a、21bおよび導体ポスト25は、開口が支持板80により閉鎖されるキャビティ89内に収容される。続いて、モールド成形用樹脂34がキャビティ89内に射出され、キャビティ89内がモールド成形用樹脂34で充填され、モールド成形用樹脂34が半硬化状態で固化する。その後、金型88が支持板80から分離され、さらに加熱されることにより、モールド成形用樹脂34が完全に硬化し、
図10Cに示されるように、第1パターン21aの側面および導体ポスト25が形成されていない部分の第2面F2、第2パターン21bの側面および第2面F2、ならびに導体ポスト25の側面および端面25a全てを覆う樹脂絶縁層30が形成される。樹脂絶縁層30が形成された後、好ましくは、バフ研磨が行われ、樹脂絶縁層30の形成時に生じたバリが除去される。
【0056】
つぎに、樹脂絶縁層30のベース金属箔81側と反対側の面(第2表面SF2)が、導体ポスト25の先端が第2表面SF2に露出するまで、バフ研磨またはCMPなどにより研磨される。この研磨後の状態が
図10Dに示されている。
【0057】
その後、
図8Iおよび
図8Jを参照して説明された工程と同様の工程を経て、
図1に示される配線板10が完成する。本製法のようにモールド成形により樹脂絶縁層30を形成する方法は、モールド成形用樹脂で外装されている一般的な電子部品のパッケージ材料と同様の材料が用いられ得るので、配線板10において、配線板10に実装される電子部品との接合箇所などに熱膨張率の違いなどによる応力が生じ難い点で好ましい。
【0058】
本実施形態の配線板10の製造方法は、
図8A〜8Jおよび
図10A〜10Dを参照して説明された方法に限定されず、その条件や順序などは任意に変更され得る。また、特定の工程が省略されてもよく、別の工程が追加されてもよい。
【0059】
つぎに、本発明の一実施形態の半導体パッケージが図面を参照しながら説明される。
図11Aに示されるように、本実施形態の半導体パッケージ100は、一方の表面SF3に第1半導体素子115が実装されているプリント配線板110と、プリント配線板110の一方の表面SF3上に搭載される基板130とを有している。プリント配線板110には、好ましくは、
図1に一例が示されるプリント配線板が用いられ、
図11Aには、その一例が示されている。従って、
図11Aに示されるプリント配線板110の多くの構成要素は、
図1に示されるプリント配線板10と同様であり、そのような構成要素は同一の符号が付され、詳細な説明は省略される。しかしながら、プリント配線板110は、
図1に示されるプリント配線板10に限定されず、前述のプリント配線板10の説明中に示されている各構成要素についての各種の変更、変形が取り入れられてもよい。
【0060】
図11Aに示されるように、プリント配線板110は、
図1に示されるプリント配線板10と同様に、樹脂絶縁層30の第1表面SF1に第1面F1が露出するように樹脂絶縁層30内に埋め込まれている配線導体層21を有しており、配線導体層21には、第1パターン21aおよび第2パターン21bが形成されている。第1パターン21aの第1面F1と反対側の第2面F2上に導体ポスト25が形成されており、樹脂絶縁層30は、導体ポスト25の側面を被覆している。そして、導体ポスト25の側面25cは、導体ポスト25の配線導体層21側の端部25dにおいて、配線導体層21に近付くほど導体ポスト25の外方に向かうように曲がる曲面とされている。
【0061】
図11Aに示される例では、第1パターン21aは、第2パターン21bが形成されている領域の図面上左右の外側それぞれに2つずつ形成されており、各第1パターン21aの第2面F2上に導体ポスト25が形成されている。本実施形態の半導体パッケージ100においても、導体ポスト25は、一方向に並べられた導体ポスト列としてプリント配線板110の外周に沿って1列または複数列配置されてもよく、前述のように樹脂絶縁層30の第2表面SF2全面に亘って配置されていてもよい。
【0062】
基板130は、プリント配線板110側の面にバンプ124を備えており、バンプ124が、配線導体層21に形成されている第1パターン21aに接続されている。
図1に示される例では、プリント配線板110の外周側に形成されている第1パターン21aにバンプ124が接続されている。
【0063】
また、第1半導体素子115は、バンプ124の高さに応じてプリント配線板110と基板130との間に確保される空間内に配置されている。また、第1半導体素子115は電極116を有しており、電極116が、配線導体層21に形成されている第2パターン21bに接合材122により接続されている。
【0064】
本実施形態の半導体パッケージ100は、
図1に一実施形態が示される前述のプリント配線板10と同様の構成のプリント配線板110を有しているので、前述のように、たとえば、プリント配線板110と基板130との熱膨張率が違っている場合であっても、導体ポスト25に生じる応力の特定箇所への集中が少なくなり、プリント配線板110と基板130との接続信頼性が向上することがある。
【0065】
基板130の構造や材料は特に限定されず、樹脂材料からなる層間樹脂絶縁層と銅箔などからなる導体層とで構成されるプリント配線板や、アルミナまたは窒化アルミなどの無機材料からなる絶縁性基材の表面に導体膜が形成された配線板や、たとえば、国際公開第2011/122246号の
図8〜
図13に開示された製法で製造されたマザーボード基板であってよく、任意の基板が用いられ得る。また、第1半導体素子115も、特に限定されず、マイコン、メモリ、ASICなど、任意の半導体素子が用いられ得る。
【0066】
接合材122およびバンプ124の材料も特に限定されず、任意の導電性材料が用いられ、好ましくは、ハンダ、金、銅などの金属が用いられる。また、接合材122を用いずに、第1半導体素子115の電極116と第2パターン21bとが、加熱、加圧、および/または加振されることにより両者の間に金属間接合部が形成されて接続されてもよい。
【0067】
図11Bには、
図11Aに示される半導体パッケージ100のプリント配線板110と基板130との間にモールド樹脂126が充填されている例が示されている。このように、モールド樹脂126が充填されると、第1半導体素子115が機械的なストレスから保護されると共に、周囲の温度変化によるプリント配線板110の挙動が制限され、第1半導体素子115との接合部に生じる応力が軽減されて接続信頼性が向上するという利点がある。なお、モールド樹脂126の材料は特に制限されないが、たとえば、第1半導体素子115、および/または樹脂絶縁層30の熱膨張率と近い熱膨張率を有し、絶縁性の良好な材料が用いられる。好ましくは、モールド樹脂126には、適度にシリカなどのフィラーが含有された熱硬化性のエポキシ樹脂が用いられる。モールド樹脂126の充填方法は特に限定されず、たとえば、金型(図示せず)内でトランスファーモールドされて充填されてもよく、液状の樹脂が注入された後に加熱されて硬化されてもよい。
【0068】
図11Cには、
図11Bに示される半導体パッケージ100の基板130上に第2半導体素子135が実装されている例が示されている。第2半導体素子135の一面に設けられている電極(図示せず)は、
図11Cに示されるように、ボンディングワイヤ137により基板130に接続されるか、電極が設けられている面が下に向くように第2半導体素子135を反転させて、フリップチップ実装方式により接続されてよい。このように、第2半導体素子135が実装されているパッケージオンパッケージ構造の半導体パッケージとすることで、平面視におけるサイズが小さく、かつ、高機能の半導体装置が提供され得る。