特許第6397326号(P6397326)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6397326
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】ステアリングホイールの芯金構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/06 20060101AFI20180913BHJP
   B62D 1/08 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   B62D1/06
   B62D1/08
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-259330(P2014-259330)
(22)【出願日】2014年12月22日
(65)【公開番号】特開2016-117441(P2016-117441A)
(43)【公開日】2016年6月30日
【審査請求日】2017年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】318002149
【氏名又は名称】Joyson Safety Systems Japan株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104503
【弁理士】
【氏名又は名称】益田 博文
(72)【発明者】
【氏名】内山 敦勧
(72)【発明者】
【氏名】神山 成一
(72)【発明者】
【氏名】坂口 正悟
(72)【発明者】
【氏名】富田 新
【審査官】 鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第4011644(US,A)
【文献】 米国特許第4010658(US,A)
【文献】 特開2014−218198(JP,A)
【文献】 特開2013−159280(JP,A)
【文献】 実開平1−145664(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/06
B62D 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環状のホイールリム部と、
前記ホイールリム部の径方向中心部に配置されたボス部と、
前記ホイールリム部と前記ボス部とを径方向に接続するスポーク部と、
を互いに結合した鉄製のステアリングホイールの芯金構造であって、
前記ホイールリム部は、
前記車両の前方側に設けられるとともに少なくとも両端の第1結合部を略コの字断面とした略半円環形状の第1分割リム、及び、前記車両の後方側に設けられるとともに少なくとも両端の第2結合部を略Iの字断面とした略半円環形状の第2分割リム、の周方向両端部同士を互いに重ね合わせた結合体から構成され、
かつ、径方向外周側から内周側に向かって、前記第1分割リム、前記スポーク部、前記第2分割リムを所定の順序で重ね合わせた状態で、前記第1分割リム、前記スポーク部、及び前記第2分割リムを径方向に貫通する結合部材によって互いに結合されている
ことを特徴とするステアリングホイールの芯金構造。
【請求項2】
請求項1記載のステアリングホイールの芯金構造において、
前記スポーク部は、前記第1結合部と前記第2結合部とに挟まれて前記結合部材が貫通する略コの字断面の第3結合部を備える
ことを特徴とするステアリングホイールの芯金構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のステアリングホイールの芯金構造において、
前記第1結合部は、径方向外周側に位置して径方向内周側に向かって開放し、
前記スポーク部は、前記第1結合部と前記第2結合部とに挟まれて前記結合部材が径方向に貫通するよう径方向内周側に向かって開放する略コの字断面を有する第3結合部を備え、
前記第2結合部は、前記第3結合部の径方向内周側に重ね合わせている
ことを特徴とするステアリングホイールの芯金構造。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか1の請求項記載のステアリングホイールの芯金構造において、
前記第1結合部は、前記第2結合部が結合する先端部よりも周方向奥側に、前記第2結合部の高さよりも低く絞り込んだ回止部を有する
ことを特徴とするステアリングホイールの芯金構造。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3の何れか1の請求項記載のステアリングホイールの芯金構造において、
前記ボス部は、
ステアリングコラムシャフトの先端が位置するボス穴と、
前記ボス穴と隣接するように形成して前記ステアリングコラムシャフトと前記ボス部とを連結するボス本体の上端面に形成した位置決め部と互いに係合するよう雌雄を異ならせた被位置決め部と、
を備えることを特徴とするステアリングホイールの芯金構造。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れか1の請求項記載のステアリングホイールの芯金構造において、
前記第1分割リム、前記スポーク部、前記第2分割リムを結合する前記結合部材にリベットを用い、前記第1分割リム、前記スポーク部、前記第2分割リムを分解不能に締結した
ことを特徴とするステアリングホイールの芯金構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転席に設置されたステアリングホイールを構成するステアリングホイールの芯金構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両運転席に設置されたステアリングホイールにあって、円環状のホイールリム部と、このホイールリム部の径方向中心部に配置されたボス部と、ホイールリム部とボス部とを径方向に接続するスポーク部と、を互いに結合した鉄製のステアリングホイールの芯金構造を採用したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この際、ホイールリム部を、車両の前方側と後方側とに位置する半円以上の長さを備えた一対の分割リムの両端同士を重ね合わせた結合体から構成するとともに、その断面形状を略L字形状としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−159280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したステアリングホイールの芯金構造にあっては、分割リムの結合部が車両の前方側と後方側の両方において、径方向の内周側及び車両の上側の2方向に開放している。このため、車両の前方側と後方側との結合作業において、例えば、車両の後方側のばね作用によって両端が跳ね上がらないように位置決めと押えの両方を適正に行わないと結合作業ができないなど、作業効率が低下する要因となっていた。
【0006】
本発明の目的は、ホイールリム部の強度を損なうことなく、分割リム部の結合作業時における作業効率を向上することができるステアリングホイールの芯金構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、円環状のホイールリム部と、前記ホイールリム部の径方向中心部に配置されたボス部と、前記ホイールリム部と前記ボス部とを径方向に接続するスポーク部と、を互いに結合した鉄製のステアリングホイールの芯金構造であって、前記ホイールリム部は、前記車両の前方側に設けられるとともに少なくとも両端の第1結合部を略コの字断面とした略半円環形状の第1分割リム、及び、前記車両の後方側に設けられるとともに少なくとも両端の第2結合部を略Iの字断面とした略半円環形状の第2分割リム、の周方向両端部同士を互いに重ね合わせた結合体から構成され、かつ、径方向外周側から内周側に向かって、前記第1分割リム、前記スポーク部、前記第2分割リムを所定の順序で重ね合わせた状態で、それら第1分割リム、スポーク部、及び第2分割リムを径方向に貫通する結合部材によって互いに結合されていることを特徴とする。
【0008】
第1発明のステアリングホイールの芯金は、ホイールリム部とスポーク部とボス部とを別々に構成するとともに、ホイールリム部を周方向に沿う分割リムに分割し、これらの結合体によって構成している。これにより、適用される車両のサイズや形式等、種々のニーズに応じ、それら分割リムのうち、それほど大きな強度を必要としない側の分割リムは小さめの強度となるように構成し、比較的大きな強度を必要とする側の分割リムは大きめの強度となるように構成することができる。この結果、ホイールリム部の全周にわたって同一強度とした場合のように、本来それほど大きな強度を必要としない部分まで無駄に大きな強度が確保されることを回避することができる。したがって、重量の低減及び製造コストの低減を図ることができる。
【0009】
また、ホイールリム部のうち、車両の前方側に設けた略半円環形状の第1分割リムは、その両端の第1結合部を略コの字断面としており、車両の後方側に設けた略半円環形状の第2分割リムは、その両端の第2結合部を略Iの字断面としている。
【0010】
この際、第1分割リムは、第1結合部の略コの字断面の開放方向を、例えば、径方向の内周側若しくは外側に向けて開放させる。一方、第2分割リムは、その組成による付勢方向を、第1結合部の開放方向とは逆方向に付勢、すなわち、第1結合部が径方向内側に開放していれば、径方向の外向き付勢とし、第1結合部が径方向外側に開放していれば、径方向の内向き付勢とする。この付勢により、略Iの字断面の第2結合部が略コの字断面の第1結合部に弾性的なばね作用によって自然と嵌め合って周方向両端部同士を互いに重ね合わせた結合体が抜け止め効果を有するようになるとともに、位置決めと押えの両方を適正に確保することができ、作業効率を向上することができる。
【0011】
そして、径方向外周側から内周側に向かって、第1分割リム、スポーク部、第2分割リムを所定の順序で重ね合わせた状態で、それら第1分割リム、スポーク部、及び第2分割リムを径方向に貫通する結合部材によって互いに結合することで軽量化を確保しつつ容易に強度を確保することができる。
【0012】
この際、上述したように、第1結合部の略コの字断面の開放方向が一方向であり、特に、径方向の内周側若しくは外周側に向けて開放させることにより、第1分割リム、スポーク部、及び第2分割リムを径方向に貫通する結合部材によって互いに結合する際に、これらの重ね合わせ状態が解除されることもない。
【0013】
第2発明は、上記第1発明において、前記スポーク部は、前記第1結合部と前記第2結合部とに挟まれて前記結合部材が貫通する略コの字断面の第3結合部を備えることを特徴とする。
【0014】
第2発明のステアリングホイールの芯金構造によれば、スポーク部は、略コの字断面の第3結合部を備えており、第1結合部と第2結合部とに挟まれた状態で結合部材が径方向に貫通している。したがって、第1結合部の断面形状である略コの字の開放方向と、第3の断面形状である略コの字の開放方向とを一致させるとともに、第1結合部の断面形状よりも第3の断面形状を小さく、第3結合部の断面形状よりも第2結合部の断面形状を小さくすれば、第1分割リム、スポーク部、第2分割リムを径方向に重ね合わせたときの厚さを薄くすることができ、第1結合部内に収納することも可能となる。
【0015】
これにより、第1分割リム、スポーク部、第2分割リムを径方向に重ね合わせて結合部材で結合する際に、第1結合部から第2結合部及び第3結合部をさらに脱落し難くすることができ、作業性をより一層向上することができる。
【0016】
第3発明は、上記第1又は第2発明において、前記第1結合部は、径方向外周側に位置して径方向内周側に向かって開放し、前記スポーク部は、前記第1結合部と前記第2結合部とに挟まれて前記結合部材が径方向に貫通するよう径方向内周側に向かって開放する略コの字断面を有する第3結合部を備え、前記第2結合部は、前記第3結合部の径方向内周側に重ね合わせていることを特徴とする。
【0017】
第3発明のステアリングホイールの芯金構造によれば、第1結合部を径方向外周側に位置させるとともに略コの字断面の開放方向を径方向内周側に向かって開放させる。また、スポーク部は、径方向内周側に向かって開放する略コの字断面を有する第3結合部を備える。さらに、第2結合部は、第3結合部の径方向内周側に重ね合わせている。したがって、第3結合部が第1結合部と第2結合部とに挟まれた状態で結合部材が径方向に貫通する。
【0018】
これにより、第1結合部の断面形状である略コの字の開放方向と、第3の断面形状である略コの字の開放方向とが一致していることから、第1結合部の断面形状よりも第3の断面形状を小さく、第3結合部の断面形状よりも第2結合部の断面形状を小さくすることにより、第1分割リム、スポーク部、第2分割リムを径方向に重ね合わせたときの厚さを薄くすることができ、第1結合部内に収納することも可能となる。
【0019】
また、第1分割リム、スポーク部、第2分割リムを径方向に重ね合わせて結合部材で結合する際に、第1結合部から第2結合部及び第3結合部をさらに脱落し難くすることができ、作業性をより一層向上することができる。なお、結合部材としては、ボルト・ナット、小ねじ、タッピンねじ、リベット、各種ピン等の締結部材を用いることが好ましく、軽量化及び分解不能の観点からリベットを用いたリベット締結とするのがより一層好ましい。
【0020】
第4発明は、上記第1乃至第3発明において、前記第1結合部は、前記第2結合部が結合する先端部よりも周方向奥側に、前記第2結合部の高さよりも低く絞り込んだ回止部を有することを特徴とする。
【0021】
本願第4発明においては、第1結合部の先端部よりも周方向奥側に第2結合部の高さよりも低く絞り込んだ回止部を有することにより、第1分割リムに対する第2分割リムの回り止めとすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ホイールリム部の強度を損なうことなく、分割リム部の結合作業時における作業効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係るステアリングホイールの芯金構造を示す主要構成の分解斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係るステアリングホイールの芯金構造を示し、主要構成を組み付けた状態の正面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るステアリングホイールの芯金構造を示し、主要構成を組み付けた状態の斜視図である。
図4】本発明の一実施形態に係るステアリングホイールの芯金構造を示し、スポーク部とボス部とを組み付けた状態の要部の正面図である。
図5】本発明の一実施形態に係るステアリングホイールの芯金構造を示し、スポーク部とボス部とを組み付けた状態の要部の断面図である。
図6】本発明の一実施形態に係るステアリングホイールの芯金構造を示し、スポーク部と分割リム部との関係を示す要部の斜視図である。
図7】本発明の一実施形態に係るステアリングホイールの芯金構造を示し、スポーク部と分割リム部との関係を示す要部の断面図である。
図8】本発明の一実施形態の実施例2に係るステアリングホイールの芯金構造を示し、スポーク部と分割リム部との関係を示す要部の断面図である。
図9】本発明の一実施形態の実施例3に係るステアリングホイールの芯金構造を示し、スポーク部と分割リム部との関係を示す要部の断面図である。
図10】本発明の一実施形態の実施例4に係るステアリングホイールの芯金構造を示し、スポーク部と分割リム部との関係を示す要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の一実施形態に係るステアリングホイールの芯金構造について、図面を参照して説明する。
【0025】
図1図3において、ステアリングホイールの芯金10は、円環状のホイールリム部20と、ホイールリム部20の径方向中心部に配置されたハブコア部40と、ハブコア部40とホイールリム部20とを径方向に接続するスポーク部30と、ハブコア部40の表面側に配置されるエアバッグ装置(図示せず)を昇降可能にスナップイン方式で支持するバネ材60と、を備えている。
【0026】
ホイールリム部20は、半円以上の長さを備えた一対(2個)の分割リム22,26の周方向両端部同士を重ね合わせた結合体から構成されている。
【0027】
車両の前方側に設けられる分割リム22は、例えば、ステアリングホイールが直径370mmの場合、肉厚1.0mm〜2.6mm、幅20mm〜40mm、長さ500mm〜700mmの鉄製の板材を半円以上の円弧状に屈曲するとともに、少なくとも両端の前側結合部24を径方向内周側に開放する略コの字断面としている。
【0028】
前側結合部24は、その端部に、中央部分を正面視真円又は真円に近い楕円若しくは円弧としたときに、その中央部分とは異なる円弧又は略多角線状の異形部24aを中央部分から連続するように一体に形成している。また、前側結合部24は、異形部24aよりも周方向奥側に両先端の高さよりも低く絞り込んだ回止部24bを一体に形成している。さらに、前側結合部24は、異形部24aの周方向2か所にリベット締結用の穴部24cを形成している。
【0029】
車両の後方側に設けられる分割リム26は、肉厚1.0mm〜4.0mm、幅5mm〜15mm、長さ500mm〜700mmの鉄製の板材を半円以上の円弧状に屈曲するとともに、少なくとも両端の後側結合部28を略Iの字断面とした略半円環形状としている。この際、分割リム26の幅は分割リム22の肉厚に対応して決定される。また、ホイールリム部20を分割リム22,26で構成している。また、パイプ状の一体品に比べて分割された分だけコンパクト化が図れ、運搬時等にかさばらないという利点も有する。さらに、分割リム26は、その中央部分に矩形の係止穴26aを形成している。なお、車両前方側の分割リム22の最大肉厚2.6mmに対して車両後方側の分割リム26の最大肉厚4.0mmと厚肉としていれば、断面形状を略コの字状とした分割リム22の製品強度を断面形状を略Iの字状とした分割リム26の製品強度よりも高く維持することができる。
【0030】
後側結合部28は、その端部に、中央部分を正面視真円又は真円に近い楕円若しくは円弧としたときに、その中央部分とは異なる円弧又は略多角線状の異形部28aを一体に形成している。また、後側結合部28は、異形部28aの周方向2か所にリベット係合穴28bを形成している。
【0031】
なお、回止部24bは、後側結合部28が結合する先端部としての異形部24aよりも周方向奥側にあって、後側結合部28の高さよりも低く絞り込んでいる。
【0032】
なお、分割リム26は、その組成により、径が広がるように縮径した状態で分割リム22に結合される。
【0033】
ところで、ステアリングホイールのリム部は、ある程度の重量(例えば、250g〜400g)を備えているほうが、回転操作時に慣性モーメントが働いて操作がし易くなることが知られている。ここで、アルミニウムやマグネシウムを材料としたパイプ状の芯金の場合、その重量を確保しようとすると大型化(大径化)せざるを得なくなる。これに対し、断面コの字状の分割リム22及び断面Iの字状の分割リム26とするとともに、スポーク部30、ハブコア部40を別体で形成することにより、全体重量の調整は大型化することなく容易に行うことが可能となる。
【0034】
スポーク部30は、本実施の形態では、車体直進の使用状態を基準として、車体左右方向に延びる一対のサイドスポーク32と、ホイールリム部20の中心から車体後方に延びるロアスポーク36と、を含んでいる。
【0035】
サイドスポーク32は、ハブコア部40と一体に形成されており、その両端に分割リム22,26を支持するように径方向内周側に開放する略コの字断面の支持結合部34を形成している。なお、サイドスポーク32は、ハブコア部40とは独立して2枚の鉄製プレートを用いても良い。
【0036】
支持結合部34は、本実施の形態では、その端部の形状を、異形部24aの径方向の内側に密着状態で収まる程度に異形部24aの周方向の形状と一致させるとともに、サイドスポーク32の両端を折り返すように屈曲させることで径方向内周側に開放する略コの字断面に形成している(図7参照)。これにより、支持結合部34は、異形部24aの内側で嵌め合うとともに後側結合部28が収納可能となっている。さらに、支持結合部34は、2か所にリベット貫通穴34aを形成している。
【0037】
なお、分割リム22は特許請求の範囲における第1分割リムを構成し、分割リム26は特許請求の範囲における第2分割リムを構成し、前側結合部24(異形部24a)は、特許請求の範囲における第1結合部を構成し、後側結合部28(異形部28a)は、特許請求の範囲における第2結合部を構成し、支持結合部34は、特許請求の範囲における第3結合部を構成している。
【0038】
ロアスポーク36には、1枚の鉄製プレートを折曲加工したものが用いられている。また、ロアスポーク36は、サイドスポーク32と直行する方向において、一端にハブコア部40にリベット12で固定するための係合穴36aを形成し、他端に係止穴26aに係止される係止爪36bを形成している。
【0039】
ハブコア部40は、鉄製の板材を打ち抜き等によって形成しており、図4及び図5に示すように、ボスプレート部42と、ボスプレート部42の中心(ホイールリム部20の中心)に形成したボス穴44と、ボス穴44と同軸にボスプレート部42に固定した円柱状のボス本体46と、バネ材60の両端付近を支持するバネ支持部48と、を備える。また、ボスプレート部42には、バネ支持部48に隣接してエアバッグ装置(図示せず)に形成したランス状の突起を支持するランス挿通穴42bを形成している。
【0040】
ボス本体46は、ボス穴44に挿入されるステアリングコラムシャフト80の先端にナット82で支持されるように、ある程度の軸長を有する円筒状とされている。また、ボス本体46の上端面には、ハブコア部40にボス穴44と隣接するように形成された一対のダボ耳部44aと係合することにより芯金10の位置決め及び回り止め用のダボ46aを形成している。なお、このボス本体46は一体でもよい。また、本実施の形態において、ハブコア部40とボス本体46とは、各請求項のボス部を構成している。
【0041】
なお、ダボ耳部44aは、ボス穴44と隣接するようにボスプレート部42に形成しており、ステアリングコラムシャフト80とボス本体46とをボス部としてボスプレート部42に連結する際に、ボス本体46の上端面に形成した位置決め部としてのダボ46aと互いに係合するよう雌雄を異ならせた被位置決め部を構成している。したがって、被位置決め部としてのダボ耳部44aと位置決め部としてのダボ46aとは、互いに係合可能であれば、その位置や雌雄は限定されるものではない。
【0042】
上記の構成において、本実施形態のステアリングホイールの芯金10は、ホイールリム部20とスポーク部30とハブコア部40とを別々に構成するとともに、ホイールリム部20を周方向に沿う分割リム22と分割リム26とに分割し、これらの結合体によって構成している。
【0043】
これにより、適用される車両のサイズや形式等、種々のニーズに応じ、分割リム22及び分割リム26のうち、それほど大きな強度を必要としない側の分割リム26は小さめの強度となるように構成し、比較的大きな強度を必要とする側の分割リム22は大きめの強度となるように構成することができる。この結果、ホイールリム部20の全周にわたって同一強度とした場合のように、本来それほど大きな強度を必要としない部分まで無駄に大きな強度が確保されることを回避することができる。したがって、重量の低減及び製造コストの低減を図ることができる。
【0044】
また、本実施形態のステアリングホイールの芯金10は、ホイールリム部20のうち、車両の前方側に設けた略半円環形状の分割リム22は、その両端の前側結合部24を略コの字断面としており、車両の後方側に設けた略半円環形状の分割リム26は、その両端の後側結合部28を略Iの字断面としている。
【0045】
この際、分割リム22は、前側結合部24の略コの字断面の開放方向を、例えば、径方向の内周側(若しくは外周側)に向けて開放させる。一方、分割リム26は、その組成による付勢方向を、前側結合部24の開放方向とは逆方向に付勢、すなわち、前側結合部24が径方向内側に開放していれば、径方向の外向き付勢とし、前側結合部24が径方向外側に開放していれば、径方向の内向き付勢とする。この付勢により、略Iの字断面の後側結合部28が略コの字断面の前側結合部24に弾性的なばね作用によって自然と嵌め合って周方向両端部同士を互いに重ね合わせた結合体が抜け止め効果を有するようになるとともに、位置決めと押えの両方を適正に確保することができ、作業効率を向上することができる。
【0046】
図6及び図7は、本実施形態のステアリングホイールの芯金10に係る実施例1の要部を示し、径方向外周側から内周側に向かって、前側結合部24、支持結合部34、後側結合部28を所定の順序で重ね合わせた状態で、前側結合部24、支持結合部34、後側結合部28を径方向に貫通する結合部材としてのリベット14によって互いに締結することで軽量化を確保しつつ容易に強度を確保することができる。
【0047】
この際、本実施の形態では、前側結合部24の略コの字断面の開放方向を径方向の内周側に向けて開放させることにより、前側結合部24、支持結合部34、後側結合部28を径方向に貫通するリベット14によって互いに締結する際に、これらの重ね合わせ状態が解除されることもない。
【0048】
また、径方向外周側に位置する前側結合部24の開放方向と、前側結合部24と後側結合部28とに挟まれてリベット14が径方向に貫通する支持結合部34の開放方向と、を径方向の内周側に向かって開放させて重ね合わせている。
【0049】
これにより、前側結合部24の断面形状である略コの字の開放方向と、支持結合部34の断面形状である略コの字の開放方向とが一致していることから、前側結合部24の断面形状よりも支持結合部34の断面形状を小さく、支持結合部34の断面形状よりも後側結合部28の断面形状を小さくすることにより、分割リム22、スポーク部30、分割リム26を径方向に重ね合わせたときの厚さを薄くすることができ、前側結合部24内に収納することも可能となる。
【0050】
また、前側結合部24、支持結合部34、後側結合部28を径方向に重ね合わせてリベット14にて締結する際に、前側結合部24から後側結合部28及び支持結合部34をさらに脱落し難くすることができ、作業性をより一層向上することができる。
【0051】
さらに、後側結合部28が結合する先端部よりも周方向奥側の前側結合部24に、後側結合部28の高さよりも低く絞り込んだ回止部24bを形成したことにより、分割リム22に対する分割リム26の回り止めとすることができる。
【0052】
図8は、本実施形態のステアリングホイールの芯金10に係る実施例2の要部を示し、支持結合部34の断面形状を実施例1のようにコの字状ではなくL字状としたものである。
【0053】
すなわち、支持結合部34は、前側結合部24の内部に支持結合部34を収納してリベット14が貫通することができれば、支持結合部34はコの字状の断面である必要はない。
【0054】
このような構成においても、上記実施例1と同様の作用効果を達成することが可能となる。
【0055】
図9は、本実施形態のステアリングホイールの芯金10に係る実施例3の要部を示し、前側結合部24の略コの字断面の開放方向を径方向の内周側に向けて開放させるとともに、前側結合部24、後側結合部28、支持結合部34をこの順で径方向に貫通するリベット14によって互いに締結する際に、例えば、分割リム22の径方向内向きのばね作用又はサイドスポーク32の径方向の長さの設定により、互いに接近する方向の作用が働き、これらの重ね合わせ状態が解除され難くしたものである。
【0056】
このような構成においても、上記実施例1と同様の作用効果を達成することが可能となる。
【0057】
図10は、本実施形態のステアリングホイールの芯金10に係る実施例4の要部を示し、前側結合部24の略コの字断面の開放方向を径方向の外周側に向けて開放させるとともに、後側結合部28、支持結合部34、前側結合部24をこの順で径方向に貫通するリベット14によって互いに締結する際に、例えば、分割リム26の径方向内向きのばね作用及び分割リム26の径方向外向きのばね作用により、互いに接近する方向の作用が働き、これらの重ね合わせ状態が解除され難くしたものである。
【0058】
このような構成においても、上記実施例1と同様の作用効果を達成することが可能となる。
【0059】
ところで、上述した各実施例の分割リム22又は分割リム26の径方向の内周側(内向き)又は外周側(外向き)の弾性(ばね作用)は、前側結合部24、支持結合部34、後側結合部28を径方向に重ね合わせてリベット14にて締結する際の構成(形状)そのものの、特に剛性の高い前側結合部24を略コの字断面としたことに伴う相乗効果であって、必須の構成要件ではない。
【0060】
また、異形部24a,26a等の形状を採用すれば、分割リム22に対する分割リム26の回り止め効果をより一層確保することができるが、回止部24bを形成していれば異形部24a,26aを中央部と同じ円弧で形成してもよい。また、逆に、異形部24a,26aを形成していれば、回止部24bを廃止してもよい。
【0061】
さらに、上記実施の形態では、軽量化及び分解不能の観点から結合部材としてリベット14を用い、分割リム22とスポーク部30と分割リム26とを分解不能に締結した場合を例示したが、結合部材としてボルト・ナット、小ねじ、タッピンねじ、各種ピン等の締結部材を用いた締結構造とすることが可能である。
【符号の説明】
【0062】
10 芯金
14 リベット(結合部材)
20 ホイールリム部
22 分割リム(第1分割リム)
24 前側結合部(第1結合部)
24a 異形部(先端部)
24b 回止部
24c 穴部
26 分割リム(第2分割リム)
28 後側結合部(第2結合部)
28a 異形部
28b リベット係合穴
30 スポーク部
32 サイドスポーク
34 支持結合部(第3結合部)
34a リベット貫通穴
36 ロアスポーク
40 ハブコア部(ボス部)
44 ボス穴
44a ダボ耳部(被位置決め部)
46 ボス本体
46a ダボ(位置決め部)
60 バネ材
80 ステアリングコラムシャフト
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9
図10