(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ローラが前記当接位置から前記離間位置への移行を開始してからその移行が完了するまでの期間において、前記第2の付勢力が前記ローラへ付与される合計の時間よりも前記ローラへの前記第2の付勢力の付与が停止される合計の時間のほうが長い
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のローラユニット。
前記クラッチは、前記ローラが前記当接位置から前記離間位置に移行する際、前記接続状態から前記駆動源と前記駆動力付与部材とを切り離した状態となったのち、再度前記接続状態となる
請求項7記載のローラユニット。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明は本発明の一具体例であって、本発明は以下の態様に限定されるものではない。また、本発明は、各図に示す各構成要素の配置や寸法、寸法比などについても、それらに限定されるものではない。説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態
当接位置から離間位置へ状態移行する際、ローラに対し間欠的に動力が伝達されるローラユニットとしての給紙部を備えた画像形成装置。
2.第1の実施の形態の変形例
2−1. 当接位置から離間位置へ状態移行する際、複数回に亘ってローラに対し動力が伝達される例。
2−2. 当接位置から離間位置へ状態移行する際、ローラに対し連続的に動力が伝達される例。
3.第2の実施の形態
ローラユニットとしての定着装置を備えた画像形成装置。
4.実験例
5.その他の変形例
【0012】
<1.第1の実施の形態>
[概略構成]
(全体構成)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置1の全体構成例を表す模式図である。画像形成装置1は、例えば用紙などの記録媒体(印刷媒体、転写材ともいう。)PS1,PS2に対して画像(例えばモノクロ画像)を形成する、電子写真方式のプリンタである。画像形成装置1は、筐体2の内部に、例えば、記録媒体PS1を下流へ供給する給紙部10と、記録媒体PS2を下流へ供給する給紙部20と、記録媒体PS1,PS2に対して画像を転写する画像形成部3と、記録媒体PS1,PS2に転写された画像を定着させる定着部40とを備える。定着部40の下流には、画像が定着された記録媒体PS1,PS2を外部へ排出する排出ローラ対51,52などを含む排出部50が設けられている。なお、本明細書では、記録媒体PS1,PS2が進行する方向を搬送方向といい、この搬送方向と直交する方向(
図1,2A,2Bの紙面に垂直な方向)を横方向Y1という。また、本明細書では、搬送方向において、任意の位置から見て供給部10に近い位置を上流といい、給紙部10から遠い位置を下流という。さらに、給紙部20は本発明の「ローラユニット」の一具体例に対応し、画像形成部30は本発明の「画像形成部」の一具体例に対応し、横方向Y1は本発明の「第1の方向」の一具体例に対応している。
【0013】
(給紙部10,20の構成)
給紙部10は、給紙トレイ11と、給紙ローラ12と、ピックアップローラ13と、中間搬送ローラ14Aおよびピンチローラ14Bからなる搬送ローラ対14と、レジストローラ15Aおよびプレッシャローラ15Bからなる搬送ローラ対15と、給入センサ16と、書き出しセンサ17とを有している。
【0014】
給紙トレイ11は、記録媒体PS1を積層した状態で収納する部材であり、画像形成装置1の下部に着脱自在に装着されている。
【0015】
給紙ローラ12およびピックアップローラ13は、給紙トレイ11に積層されている複数の記録媒体PS1のうち、最上位に位置する記録媒体PS1を1枚ずつ分離して順次取り出し、搬送ローラ対14へ向けて繰り出す第1の給紙機構である。
【0016】
給紙部20は、給紙トレイ21、給紙ローラ22およびピックアップローラ23を有している。
【0017】
給紙トレイ21は、記録媒体PS2を積層した状態で収納する部材であり、画像形成装置1の側方部に設けられている。
【0018】
給紙ローラ22およびピックアップローラ23は、給紙トレイ21に積層されている複数の記録媒体PS2のうち、最上位に位置する記録媒体PS2を1枚ずつ分離して順次取り出し、搬送ローラ対15へ向けて繰り出す第2の給紙機構である。なお、ピックアップローラ23は、本発明の「ローラ」の一具体例に対応するものである。また、記録媒体PS2は、本発明の「対向部材」の一具体例に対応するものである。給紙部20の詳細については後に詳述する。
【0019】
中間搬送ローラ14Aおよびピンチローラ14Bは、給紙ローラ12および給紙サブローラ13から繰り出された記録媒体PS1を対になって挟持して下流へ搬送する部材である。また、レジストローラ15Aおよびプレッシャローラ15Bは、搬送ローラ対14または給紙部20から搬送された記録媒体PS1または記録媒体PS2を対になって挟持し、記録媒体PS1または記録媒体PS2の斜行を修正しつつ下流へ搬送する部材である。
【0020】
給入センサ16は、レジストローラ15Aおよびプレッシャローラ15Bの上流に設けられ、記録媒体PS1または記録媒体PS2の位置を検知するものである。レジストローラ15Aおよびプレッシャローラ15Bの下流に設けられた書き出しセンサ17は、記録媒体PS1または記録媒体PS2へ画像を形成するタイミングを画像形成部30に対し指示する際、記録媒体PS1または記録媒体PS2の位置を検知するものである。
【0021】
(画像形成部30の構成)
画像形成部30は、例えば黒色のトナー(現像剤)を用いて、記録媒体PS1,PS2上に黒色の画像(トナー像)を形成するものである。なお、トナーおよびトナー像の色は黒色に限定されるものではなく、任意の各色を用いることができる。また、複数色のトナー(現像剤)を用いて、記録媒体PS1,PS2上に各色の画像(トナー像)を形成するようにしてもよい。
【0022】
このようなトナーは、例えば、所定の着色剤、離型剤、帯電制御剤および処理剤等を含んで構成されており、これらの各成分が適宜混合され、あるいは表面処理されることによって製造されるようになっている。これらのうち、着色剤、離型剤および帯電制御材はそれぞれ、内部添加剤として機能する。外部添加剤としては、例えばシリカや酸化チタン等が用いられ、結着樹脂としては例えばポリエステル樹脂等が用いられる。また、着色剤としては、染料や顔料等を単独、もしくは、複数種併用して使用することができる。
【0023】
図1に示したように、画像形成部30は、トナーカートリッジ(現像剤収容容器)31と、イメージドラム(感光ドラムまたは像担持体ともいう。)32と、露光ヘッド33と、転写ローラ34とを有する。
【0024】
トナーカートリッジ31は、所定の色のトナーが収容されている容器である。すなわち、この画像形成部30の例では、トナーカートリッジ31内にはブラックトナーが収容されている。
【0025】
イメージドラム32は、静電潜像を表面(表層部分)に担持する部材であり、感光体(例えば有機系感光体)を用いて構成されている。具体的には、イメージドラム32は、導電性支持体と、その外周(表面)を覆う光導電層とを有している。導電性支持体は、例えば、アルミニウムからなる金属パイプにより構成されている。光導電層は、例えば、電荷発生層および電荷輸送層を順に積層した構造を有している。なお、このようなイメージドラム32は、所定の周速度で回転するようになっており、トナーカートリッジ31から例えばブラックトナーが供給される。したがって、イメージドラム32には、静電潜像にブラックトナーが付着した黒色の画像(トナー像)が形成されるようになっている。
【0026】
露光ヘッド33は、イメージドラム32の表面に照射光を照射してイメージドラム32の表面を露光することにより、イメージドラム32の表面(表層部分)に静電潜像を形成する装置である。露光ヘッド33は、例えば、照射光を発する複数の光源と、この照射光をイメージドラム32の表面に結像させるレンズアレイとを含んで構成されている。なお、これらの各光源としては、例えば、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)やレーザ素子等が挙げられる。
【0027】
転写ローラ34は、イメージドラム32と対向配置されており、例えば、発泡性の半導電性弾性ゴム材により構成されている。転写ローラ34は、イメージドラム32との間に記録媒体PS1,PS2を挟持し、イメージドラム32で形成された例えば黒色の画像(トナー像)を、記録媒体PS1,PS2上に静電的に転写するための部材である。
【0028】
(定着部40の構成)
定着部40は、転写ローラ34から搬送された記録媒体PS1,PS2上のトナー像に対して熱および圧力を付与し、それを定着させるための部材である。定着部40は、記録媒体PS1,PS2を挟持するように対向配置されたヒートローラ41および加圧ローラ42を含んで構成されている。
【0029】
ヒートローラ41は、その内部にハロゲンランプ等の加熱ヒータ(図示せず)を含んで構成されており、記録媒体PS1,PS2上のトナー像に対して熱を付与するための部材である。
【0030】
加圧ローラ42は、ヒートローラ41との間に圧接部が形成されるように配置されており、記録媒体PS1,PS2上のトナー像に対して圧力を付与するための部材である。
【0031】
[要部構成]
(給紙部20の詳細な構成)
次に、
図2A,2Bおよび
図3などを参照して、給紙部20の詳細な構成について説明する。
図2A,2Bは、画像形成装置1の筐体2の側壁部に取り付けられた給紙部20を拡大して表す側面図である。
図2Aは、ピックアップローラ23が、給紙トレイ21に収納された複数の記録媒体PS2のうち、最上位に位置する記録媒体PS2と当接した給紙状態を表している。
図2Aに示したピックアップローラ23の位置を給紙位置という。一方、
図2Bは、ピックアップローラ23が、給紙トレイ21に収容された記録媒体PS2から離間した待機状態を表している。
図2Bに示したピックアップローラ23の位置を待機位置という。給紙位置は本発明の「当接位置」の一具体例に対応し、待機位置は本発明の「離間位置」の一具体例に対応している。また、
図3は、画像形成装置1の給紙部20の近傍を表す分解斜視図である。
【0032】
給紙部20は、給紙トレイ21、給紙ローラ22およびピックアップローラ23のほか、ブラケット24、シートプレート25、ストッパ26、ばね27、給紙シャフト28およびトルクリミッタ29を有している。
【0033】
ピックアップローラ23は、略円筒状または略円柱状をなすと共に横方向Y1に
延びるシャフト23Aと、そのシャフト23Aの周囲を回転方向において連続して覆う弾性層23Bとを有する。シャフト23Aの一端には、給紙ローラ22のギヤ22G(後出)と間接的に係合するギヤ23Gが設けられている。弾性層23Bは例えば合成ゴムなどの弾性材料からなり、その外周面が記録媒体PS2と当接することとなる。ピックアップローラ23は、ブラケット24によって、シャフト23Aを中心として矢印Y23の方向へ回転可能に両端支持されている。ピックアップローラ23は、モータ28M(後出)の駆動力がギヤ22Gなどを介してギヤ23Gに伝達されることにより、シャフト23Aを中心として回転する。ピックアップローラ23の回転により記録媒体PS2を一枚ずつピックアップし、ピックアップした記録媒体PS2を給紙ローラ22へ受け渡すようになっている。
【0034】
給紙ローラ22は、ピックアップローラ23の回転によりピックアップされた一枚の記録媒体PS2を、矢印Y22の方向へ回転することにより下流へ繰り出す部材である。給紙ローラ22は、略円筒状または略円柱状のシャフト22Aと、そのシャフト22Aの周囲を回転方向において連続して覆う弾性層22Bとを有する。シャフト22Aは例えば樹脂からなり、弾性層22Bは例えば合成ゴムなどの弾性材料からなる。
【0035】
図3に示したように、給紙ローラ22の一端には、ギヤ22Gを介して給紙シャフト28が固定されている。給紙シャフト28は、横方向Y1へ延在する、例えば金属製の筒状もしくは柱状部材である。給紙シャフト28の他端には、駆動源としてのモータ28Mが例えばクラッチ28Cを介して間接的に接続されている。このため、給紙ローラ22は、モータ28Mからクラッチ28Cを介して伝達される駆動力により、給紙シャフト28およびギヤ22Gと共に矢印Y22の方向へ回転するようになっている。クラッチ28Cをオフすることにより、モータ28Mからの駆動力は給紙シャフト28およびギヤ22Gへ伝達されず、給紙シャフト28およびギヤ22Gの回転は停止する。給紙シャフト28は、本発明の「駆動力付与部材」に対応する一具体例である。モータ28Mおよびクラッチ28Cは、制御部60からの指令に基づいて動作するようになっている。
【0036】
ブラケット24は、ピックアップローラ23を、待機位置と給紙位置との間を昇降させるアームとして機能する部材である。ブラケット24の一端には、ピックアップローラ23がシャフト23Aを回転中心として回転可能に支持されている。ブラケット24の他端には、シャフト22Aが回転可能に支持されている。ブラケット24は、モータ28Mからの駆動力によるシャフト22Aの回転と連動して、シャフト22Aを中心として回動する部材である。ブラケット24はトルクリミッタ29(
図3)を介してシャフト22Aと連結されている。トルクリミッタ29は、過負荷がかかると接続を切ることによりトルク伝達を遮断する装置である。トルクリミッタ29としては、例えば摩擦や抵抗を利用する機械式のものや、磁力を用いるマグネット式のものが用いられる。トルクリミッタ29の存在により、ピックアップローラ23が記録媒体PS2と当接したのち、さらにシャフト22Aが矢印Y22の方向へ回転したとしても、記録媒体PS2に対してピックアップローラ23が押し付けられる力はトルクリミッタ29による設定値を超えることなく一定に維持される。したがって、記録媒体PS2や、それを支持するシートプレート25および給紙トレイ21などに対して過剰な負荷を加えるのを回避できる。また、給紙ローラ22の回転動作は、ブラケット24の回動動作による影響を受けないようになっている。すなわち、給紙ローラ22は、ブラケット24の回動動作の開始および停止にかかわらず、回転可能に構成されている。なお、ブラケット24は、本発明の「保持部材」の一具体例に対応している。
【0037】
シートプレート25は、給紙トレイ21の上部に設けられ、記録媒体PS2を下方から支持する部材である。
【0038】
ストッパ26は、ピックアップローラ23が保持されたブラケット24を待機位置において保持する部材であり、ばね27を介してブラケット24と接続されている。ばね27は、ブラケット24を、筐体2に固定されたストッパ26と当接するように、すなわちピックアップローラ23と記録媒体PS2とを互いに遠ざけるように、矢印Y2の方向(第2の方向)に付勢力P27を付与する付勢部材として機能する。
図2Bに示したように、待機状態においては、ばね27の付勢力P27によってブラケット24とストッパ26とが近接または密接するようになっている。なお、付勢力P27は、本発明の「第1の付勢力」の一具体例に対応している。
【0039】
給紙シャフト28は、矢印Y2の方向と反対の矢印Y3の方向(第3の方向)にピックアップローラ23を付勢する付勢力P28(
図2A)と、シャフト23Aを回転中心としてピックアップローラ23を矢印Y23の方向へ回転させる回転力P28Rとをピックアップローラ23に付与する部材として機能する。上記の付勢力P28は、ピックアップローラ23を記録媒体PS2に押し付ける力である。なお、矢印Y2の方向および矢印Y3の方向は、いずれも第1の方向Y1と直交している。付勢力P28は、本発明の「第2の付勢力」の一具体例に対応している。
【0040】
この給紙シャフト28による付勢力P28は、ピックアップローラ23が待機位置(離間位置)から給紙位置(当接位置)に移行する際、ピックアップローラ23が給紙位置に保持されて給紙実行動作を行う際、およびピックアップローラ23が給紙位置から待機位置に移行する際のいずれにおいてもピックアップローラ23に付与される。給紙シャフト28は、例えばピックアップローラ23が待機位置から給紙位置への移行を開始したのち、またはピックアップローラ23が記録媒体PS2と当接したのち、ピックアップローラ23を回転させるようになっている。この給紙シャフト28による付勢力P28は、ピックアップローラ23が待機位置から給紙位置に移行する際および給紙実行動作を行う際には、ピックアップローラ23に対し例えば連続的に付与される。その際の付勢力P28の強さは付勢力P27の強さよりも大きいことが望ましい。一方、ピックアップローラ23が給紙位置から待機位置に移行する際には、付勢力P28はピックアップローラ23に対し間欠的に付与される。その際の付勢力P28の強さは、付勢力P27の強さよりも大きくてもよいし、付勢力P27の強さと同等以下であってもよい。なお、付勢力P28の強さは、例えば制御部60がモータ28Mの出力を調整することにより変更することができる。
【0041】
また、ピックアップローラ23が給紙位置から待機位置への移行を開始してからその移行が完了するまでの期間において、給紙シャフト28による付勢力P28がピックアップローラ23へ付与される合計の時間よりも、ピックアップローラ23への給紙シャフト28による付勢力P28の付与が停止される合計の時間のほうが長くてもよい。
【0042】
また、ピックアップローラ23が給紙位置と待機位置との間を移行する際、ピックアップローラ23の移行速度は制御部60により制御されるようになっている。制御部40は、画像形成装置1の全体動作を制御するものである。
【0043】
[作用・効果]
(基本動作)
この画像形成装置1では、以下のようにして、記録媒体PS1,PS2に対してトナー像が転写される。
【0044】
具体的には、起動状態の画像形成装置1に対して外部機器から印刷画像データが入力されると、コマンド/画像処理部(図示せず)が印刷命令を制御部60に送信する。制御部60は、その印刷命令に応じて印刷画像データの印刷動作を開始させる。
【0045】
印刷動作が開始されると、給紙トレイ21に収納されている記録媒体PS2が、ピックアップローラ23によって最上位から1枚ずつピックアップされ、下流へ繰り出される。ピックアップ23から繰り出された記録媒体PS2は、搬送ローラ対15へ向かう。記録媒体PS2は、搬送ローラ対15を経由して画像形成部30へ搬送される。画像形成部30では、以下のようにして、トナー像が記録媒体PS2上に転写される。
【0046】
画像形成部30では、以下の電子写真プロセスによって、黒色のトナー像が形成される。まず、帯電ローラ(図示せず)に対し所定の印加電圧を供給し、イメージドラム32の表面(表層部分)を一様に帯電させる。次いで、イメージドラム32の表面に向けて露光ヘッド33から照射光が照射されて露光されることで、印刷パターンに応じた静電潜像がイメージドラム32上に形成される。さらに、イメージドラム32上の静電潜像に対して、図示しない現像ローラからトナーが付着される。イメージドラム32上のトナー(トナー像)は、転写ローラ34との間の電界によって、記録媒体PS2上に転写される。
【0047】
そののち、記録媒体PS2上のトナー(トナー像)は、定着部40において熱および圧力が付与されることで定着させられる。そして、排出ローラ対51,52などによって、トナーが定着された記録媒体PS2が画像形成装置1の外部へ排出される。
【0048】
(給紙動作)
次に、
図1〜
図3に加えて
図4を参照し、供給部20における記録媒体PS2の給紙動作について詳細に説明する。なお、以下の動作は制御部60からの指令に基づいて実施される。
図4において、グラフ4Aはモータ28Mのオン・オフ動作を表すタイムチャートであり、グラフ4Bはクラッチ28Cのオン・オフ動作を表すタイムチャートであり、グラフ4Cはピックアップローラ23の、待機位置と給紙位置との間における位置の変化を表すタイムチャートである。
【0049】
時刻T0において制御部60からの指令がモータ28Mに送信され、時刻T1にモータ28Mが起動する(
図4のグラフ4A参照)。なお、この段階では、ピックアップローラ23は
図2Bに示した待機位置にある(
図4のグラフ4C参照)。次いで、時刻T2においてクラッチ28Cを起動し、接続状態とする(
図4のグラフ4B参照)ことにより、給紙シャフト28にモータ28Mの駆動力が伝達され、給紙シャフト28が回転する。これにより、供給ローラ22およびピックアップローラ23は、それぞれ、矢印Y22の方向および矢印Y23の方向に回転を始める。同時に、ブラケット24がシャフト22Aを中心として回動動作を開始し、ピックアップローラ23が待機位置から
図2Aに示した給紙位置へ移行する(
図4のグラフ4C参照)。この結果、時刻T3において、回転するピックアップローラ23がシートプレート25に支持された最上位の記録媒体PS2の表面と当接し、その記録媒体PS2を給紙ローラ22へ送り始める。記録媒体PS2は、回転する給紙ローラ22によって搬送ローラ対15へ向けて送り出される。時刻T3から時刻T4に至る動作を便宜上、給紙実行動作という。
【0050】
時刻T4において給紙実行動作が終了すると、クラッチ28Cが一旦切り離され(
図4のグラフ4B参照)、給紙シャフト28に対するモータ28Mからの駆動力の伝達が遮断される。この結果、給紙シャフト28の回転が停止し、同時に供給ローラ22およびピックアップローラ23の回転もそれぞれ停止する。さらに、給紙シャフト28による矢印Y3の方向の付勢力P28がブラケット24に対し付与されなくなり、ばね27の矢印Y2の方向の付勢力P27によってブラケット24がストッパ26へ向かうように回動を開始する(
図2B)。すなわち、ピックアップローラ23が給紙位置から待機位置への移行を開始する(
図4のグラフ4C参照)。そこで、ピックアップローラ23が待機位置への移行を完了する前、すなわちブラケット24がストッパ26へ到達する前の時刻T5に、再度、クラッチ28Cを起動し接続状態とする(
図4のグラフ4B参照)。これにより、モータ28Mからの駆動力が給紙シャフト28へ再度伝達されることとなり、給紙シャフト28による付勢力P28がブラケット24に対し再度付与される。その結果、ピックアップローラ23が給紙位置から待機位置へ向かう移行速度が低下し、ピックアップローラ23の位置の変化の傾きが緩やかになる。その後、時刻T6において再度クラッチ28Cを切り離す(
図4のグラフ4B参照)ことで、時刻T7にピックアップローラ23が待機位置へ到達する(
図4のグラフ4C参照)。ピックアップローラ23が待機位置へ到達したのち、時刻T8においてモータ28Mを停止する。
【0051】
このように本実施の形態では、給紙部20による一連の給紙動作において、例えば制御部60の制御により、待機位置から給紙位置へ移行する際および給紙位置から待機位置へ移行する際の双方においてピックアップローラ23に対し給紙シャフト28による矢印Y3の方向の付勢力P28が付与される。このため、ピックアップローラ23の移行速度を自由に制御することができる。よって、ピックアップローラ23を支持するブラケット24の回動動作に伴う騒音を低減することができる。例えば給紙動作の終了の際、待機位置に戻ったブラケット24がストッパ26に当接する衝突音を和らげることができる。これは、ブラケット24がばね27による付勢力P27のみによって回動した場合によりも、給紙シャフト28による逆方向の付勢力P28を働かせることによりブラケット24の回動速度を低下させ、緩やかにブラケット24をストッパ26に当接させることができるからである。
【0052】
特に、本実施の形態では、ピックアップローラ23が給紙位置から待機位置へ移行する際、付勢力P28がピックアップローラ23に間欠的に付与されるようにした。このため、その移行期間の全体に亘って給紙シャフト28を回転させた場合よりも、消費電力を低減できる。また、給紙動作の終了の際、ピックアップローラ23を記録媒体PS2から離間させたのち、ブラケット24へ付勢力P28を付与するようにしたので、ピックアップローラ23の給紙位置から待機位置への移行動作に伴って記録媒体PS2が給紙トレイ21から移動することはない。
【0053】
<2.変形例>
(第1の変形例)
続いて、
図5を参照して、上記実施の形態における第1の変形例(変形例1)について説明する。以下の動作は制御部60からの指令に基づいて実施される。
図5において、グラフ5Aはモータ28Mのオン・オフ動作を表すタイムチャートであり、グラフ5Bはクラッチ28Cのオン・オフ動作を表すタイムチャートであり、グラフ5Cはピックアップローラ23の、待機位置と給紙位置との間における位置の変化を表すタイムチャートである。
【0054】
上記第1の実施の形態では、ピックアップローラ23が給紙位置から待機位置へ移行する際、付勢力P28がピックアップローラ23に対し1回のみ付与されるようにした。これに対し本変形例は、複数回に亘って間欠的に付勢力P28をピックアップローラ23に付与するものである。具体的には、時刻T4において給紙実行動作が終了してクラッチ28Cが一旦切り離されたのち、ピックアップローラ23が待機位置への移行を完了する時刻T9までの間に、時刻T5から時刻T6まで、および時刻T7から時刻T8までの2度に亘って間欠的にクラッチ28Cを起動する(
図4のグラフ4B参照)。これにより、ピックアップローラ23が給紙位置から待機位置へ向かう移行速度が2度に亘って低下し、ピックアップローラ23の位置の変化の傾きが緩やかになる。
【0055】
このように本変形例では、ピックアップローラ23が給紙位置から待機位置へ向けてより緩やかに移行することができる。その結果、待機位置に戻ったブラケット24がストッパ26に当接する衝突音をよりいっそう和らげることができる。
【0056】
(第2の変形例)
続いて、
図6を参照して、上記実施の形態における第2の変形例(変形例2)について説明する。上記第1の実施の形態では、ピックアップローラ23が給紙位置から待機位置へ移行する際、付勢力P28をピックアップローラ23に対し間欠的に付与するようにした。これに対し本変形例は、ピックアップローラ23が給紙位置から待機位置へ移行する際、付勢力P27よりも弱い付勢力P28を連続的に付与するものである。
【0057】
具体的には、
図6のグラフ6Aに示したように、モータ28Mが起動する時刻T1から給紙実行動作が終了する時刻T4に至るまでは、モータ28Mがより大きな出力PW2(>PW1)を出力することで、ピックアップローラ23に対し、付勢力P27よりも強い付勢力P28を連続的に付与する。モータ28Mの起動後、時刻T2においてクラッチ28Cを起動し、接続状態とする(
図6のグラフ6B参照)ことにより、給紙シャフト28にモータ28Mの駆動力が伝達され、ピックアップローラ23の移行が開始される。時刻T3において給紙実行動作が開始されたのち時刻T4において給紙実行動作が終了するのと同時に、モータ28Mが出力PW2よりも小さな出力PW1を出力することで、ピックアップローラ23に対し付勢力P27よりも弱い付勢力P28を連続的に付与する。これにより、ピックアップローラ23が給紙位置から待機位置へ一定速度で緩やかに移行し、時刻T5においてピックアップローラ23が待機位置へ到達する(
図6のグラフ6C参照)。なお、時刻T2から時刻T5に至るまで、クラッチ28Cは連続して接続状態を維持する(
図6のグラフ6B参照)。そののち、時刻T6においてクラッチ28およびCモータ28Mを停止する。
【0058】
本変形例においても、ピックアップローラ23が給紙位置から待機位置へ向けて緩やかに移行することができる。その結果、待機位置に戻ったブラケット24がストッパ26に当接する衝突音をより和らげることができる。なお、ピックアップローラ23が給紙位置から待機位置へ一定速度で移行するようにしたが、速度を適宜変更するようにしてもよい。
【0059】
<3.第2の実施の形態>
次に、
図7などを参照して、本発明の第2の実施の形態に係る画像形成装置を説明する。
図7は、この画像形成装置のうちの、定着部40Aの構成を表す概略図である。定着部40Aは、本発明の「ローラユニット」の一具体例に対応する。ここでは、第1の実施の形態の定着部40と実質的に同じ構成要素については同じ符号を付し、適宜説明を省略する。
【0060】
定着部40Aは、ヒートローラ41および加圧ローラ42のほか、ブラケット43、シャフト44、ばね45、ストッパ46、クラッチ44C、モータ44Mおよび制御部60Aを備える。この定着部40Aでは、記録媒体PS1,PS2上のトナー像を定着させる定着動作を行う際には、定着位置においてその記録媒体PS1,PS2をヒートローラ41および加圧ローラ42が挟持する。一方、定着動作の終了後は、ヒートローラ41は上方の筐体46と当接した待機位置に移行するようになっている。
【0061】
ブラケット43は、ヒートローラ41を、待機位置と定着位置との間を昇降させるアームとして機能する部材である。ブラケット43の一端には、ヒートローラ41がシャフト41Aを回転中心として回転可能に支持されている。ブラケット43の他端には、シャフト44が回転可能に支持されている。ブラケット43は、モータ44Mからの駆動力によるシャフト44の回転と連動して、シャフト44を中心として回動する部材である。なお、ブラケット43は、本発明の「保持部材」の一具体例に対応している。また、ヒートローラ41は本発明の「ローラ」の一具体例に対応するものであり、加圧ローラ42は本発明の「対向部材」の一具体例に対応するものである。
【0062】
ばね45は、ストッパ46とブラケット43とを繋ぐと共に、それらを互いに近づけるように付勢する付勢部材である。
【0063】
ストッパ46は、ヒートローラ41が保持されたブラケット43を待機位置において保持する部材であり、ばね45を介してブラケット43と接続されている。ばね45は、ブラケット43を、筐体2に固定されたストッパ46と当接するように、すなわちヒートローラ41と加圧ローラ42とを互いに遠ざけるように、矢印Y41の方向(第2の方向)に付勢力P45を付与する付勢部材として機能する。待機状態においては、ばね45の付勢力P45によってブラケット43とストッパ46とが近接または密接するようになっている。なお、付勢力P45は、本発明の「第1の付勢力」の一具体例に対応している。
【0064】
シャフト44は、矢印Y41の方向と反対の矢印Y43の方向(第3の方向)にヒートローラ41を付勢する付勢力P44と、シャフト44を回転中心としてヒートローラ41を矢印R41の方向へ回転させる回転力とをヒートローラ41に付与する部材として機能する。上記の付勢力P44は、ヒートローラ41を加圧ローラ42(あるいは挟持された)記録媒体PS1,PS2に押し付ける力である。付勢力P44は、シャフト44の回転に伴ってブラケット43が矢印Y44の方向へ回動することにより発生する。なお、矢印Y41の方向および矢印Y43の方向は、いずれも第1の方向Y1と直交している。付勢力P44は、本発明の「第2の付勢力」の一具体例に対応している。また、シャフト44は、本発明の「駆動力付与部材」に対応する一具体例である。
【0065】
このシャフト44による付勢力P44は、ヒートローラ41が待機位置(離間位置)から定着位置(当接位置)に移行する際、ヒートローラ41が定着位置に保持されて定着動作を行う際、およびヒートローラ41が定着位置から待機位置に移行する際のいずれにおいてもヒートローラ41に付与される。このシャフト44による付勢力P44は、ヒートローラ41が待機位置から定着位置に移行する際および定着動作を行う際には、ヒートローラ41に対し例えば連続的に付与される。その際の付勢力P44の強さは付勢力P45の強さよりも大きいことが望ましい。一方、ヒートローラ41が定着位置から待機位置に移行する際には、付勢力P44はヒートローラ41に対し間欠的に付与される。その際の付勢力P44の強さは、付勢力P45の強さよりも大きくてもよいし、付勢力P45の強さと同等以下であってもよい。なお、付勢力P44の強さは、例えば制御部60Aがモータ44Mの出力を調整することにより変更することができる。
【0066】
また、ヒートローラ41が定着位置から待機位置への移行を開始してからその移行が完了するまでの期間において、シャフト44による付勢力P44がヒートローラ41へ付与される合計の時間よりも、ヒートローラ41へのシャフト44による付勢力P44の付与が停止される合計の時間のほうが長くてもよい。
【0067】
また、ヒートローラ41が定着位置と待機位置との間を移行する際、ヒートローラ41の移行速度は制御部60Aにより制御されるようになっている。
【0068】
このように本実施の形態では、定着部40Aによる一連の定着動作において、例えば制御部60Aの制御により、待機位置から定着位置へ移行する際および定着位置から待機位置へ移行する際の双方においてヒートローラ41に対しシャフト44による矢印Y44の方向の付勢力P44が付与される。このため、ヒートローラ41の移行速度を自由に制御することができる。よって、ヒートローラ41を支持するブラケット43の回動動作に伴う騒音を低減することができる。例えば定着動作の終了の際、待機位置に戻ったブラケット43がストッパ46に当接する衝突音を和らげることができる。これは、ブラケット43がばね45による付勢力P45のみによって回動した場合によりも、シャフト44による逆方向の付勢力P44を働かせることによりブラケット43の回動速度を低下させ、緩やかにブラケット43をストッパ46に当接させることができるからである。
【0069】
<4.実験例>
次に、
図8A,8Bを参照して、上記第1の実施の形態で説明した画像形成装置1を作製し、その動作の検証を行った。
図8A,8Bにおいて、グラフC23は、給紙位置から待機位置へ至るピックアップローラ23の位置の変化を表すタイムチャートであり、グラフC28Cは、クラッチ28Cのオン・オフ動作を表すタイムチャートである。
【0070】
(実験例1)
まず、ピックアップローラ23が給紙位置から待機位置へ移行する際、付勢力P28をピックアップローラ23に対し1回のみ付与するようにした。その結果を
図8Aに示す。本実験例では、時刻T1においてクラッチ28Cを一旦切り離すことで給紙実行動作を終了させたのち、時刻T2において再度クラッチ28Cを起動し接続状態とした。そののち、時刻T3において再度クラッチ28Cを切り離し、ピックアップローラ23を待機位置に到達させた。
【0071】
(実験例2)
次に、ピックアップローラ23が給紙位置から待機位置へ移行する際、付勢力P28をピックアップローラ23に対し2回付与するようにした。その結果を
図8Bに示す。本実験例では、時刻T1においてクラッチ28Cを一旦切り離すことで給紙実行動作を終了させたのち、時刻T2において再度クラッチ28Cを起動し接続状態とした。そののち、時刻T3でのクラッチ28Cの切り離し、時刻T4でのクラッチ28Cの接続、時刻T5でのクラッチ28Cの切り離しを順次行い、そのままピックアップローラ23を待機位置に到達させた。
【0072】
図8Aおよび
図8Bに示した結果から明らかなように、ピックアップローラ23が給紙位置から待機位置へ移行する際、付勢力P27と反対向きの付勢力P28をピックアップローラ23に対し付与することにより、ピックアップローラ23の位置の変化が緩やかになった。すなわち、ピックアップローラ23の移行速度を遅くすることができた。特に、実験例2では2回に亘って間欠的に付勢力P28をピックアップローラ23に対し付与するようにしたので、よりいっそうピックアップローラ23の位置の変化が緩やかになった。これらの結果から、本発明によれば、給紙動作の終了の際、待機位置に戻ったブラケット24がストッパ26に当接する衝突が緩和されることが確認できた。
【0073】
<5.その他の変形例>
以上、実施の形態および変形例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態等ではモノクロ画像を形成する画像形成装置について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば4色のトナー像を転写してカラー画像を形成する画像形成装置であってもよい。また、上記実施の形態では、1次転写方式の画像形成装置1について説明したが、本発明は2次転写方式にも適用されうる。
【0074】
また、上記実施の形態等で説明した
図4を参照した給紙動作の手順は一例であって、本発明はこれに限定されるものではなく、他の手順で行ってもよい。
【0075】
また、上記実施の形態等で説明した一連の処理は、ハードウェア(回路)で行われるようにしてもよいし、ソフトウェア(プログラム)で行われるようにしてもよい。ソフトウェアで行われるようにした場合、そのソフトウェアは、各機能をコンピュータにより実行させるためのプログラム群で構成される。各プログラムは、例えば、上記コンピュータに予め組み込まれて用いられてもよいし、ネットワークや記録媒体から上記コンピュータにインストールして用いられてもよい。
【0076】
上記実施の形態等では、本発明のローラユニットを給紙部または定着部に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の部位にも適用されうるものである。
【0077】
さらに、上記実施の形態等では、本発明における「画像形成装置」の一具体例として、印刷機能を有する画像形成装置について説明したが、これには限られない。すなわち、そのような印刷機能に加え、例えば、スキャン機能やファックス機能を有する複合機として機能する画像形成装置においても、本発明を適用することが可能である。