(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、上記従来のように投函箱の前面の投函口から投函物が投函され、投函箱の背面の取出口から投函物を取り出す前入れ後ろ出し式ではなく、前面の投函口から投函された投函物を投函箱の前面側から取り出す前入れ前出し式のポストが求められる場合がある。
【0008】
そして、投函口が貫通形成された投函箱の前面を開閉可能な取出口開閉蓋扉にして前入れ前出し式で縦型のポストを実現することが考えられるが、このように構成した場合には、ポストの前面に投函口や錠前などが一緒に配設され、見栄えが悪くなってしまう。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑み、見栄えを損なうことがなく、且つ優れた取扱性を備えた前入れ前出し式で縦型のポストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0011】
本発明のポストは、前面に開口部を有し、縦長に形成された矩形箱状の投函箱と、投函口開閉蓋扉と、投函口が貫通形成された取出口開閉蓋扉とを備えてなり、前記投函口開閉蓋扉は、前記投函箱に上下方向に延びる軸線周りに回動可能に支持されて前記開口部を開閉するように設けられ、前記取出口開閉蓋扉は、閉じた状態で前記投函口開閉蓋扉と所定の間隔をあけて前記投函口開閉扉よりも前記投函箱の後端側に配設され、且つ、前記投函箱に上下方向に延びる軸線周りに回動可能に支持されて前記投函口開閉蓋扉よりも前記投函箱の後端側に形成された取出口を開閉するように設けられていることを特徴とする。
【0012】
この発明においては、投函口開閉蓋扉を開くことによって、取出口開閉蓋扉が露出し、この取出口開閉蓋扉に設けられた投函口から投函箱の内部に投函物を容易に投函することができる。また、投函口開閉蓋扉を開き、取出口開閉蓋扉を開くことによって、投函箱の内部に収容された投函物を容易に取り出すことができる。
【0013】
そして、投函箱の前面の開口部を開閉する投函口開閉蓋扉と取出口開閉蓋扉の2つの蓋扉を備えるようにし、投函口を備えた取出口開閉蓋扉を、閉じた状態で投函口開閉蓋扉と所定の間隔をあけて投函口開閉扉よりも投函箱の後端側に配設するようにしたことで、すなわち、取出口開閉蓋扉をセットバック配置したことで、前入れ前出し式でポストを構成した場合であっても、見栄えをよくすることができる。
【0014】
また、本発明のポストにおいては、前記投函口開閉蓋扉が、前記投函箱の前端を形成する一側端部側に回動可能に支持され、前記取出口開閉蓋扉が、前記投函口開閉蓋扉よりも前記投函箱の後端側の一側端部側に回動可能に支持されていることが望ましい。
【0015】
この発明においては、投函箱の前面の開口部を開閉する投函口開閉蓋扉と取出口開閉蓋扉の2つの蓋扉を備え、投函口を備えた取出口開閉蓋扉が投函口開閉蓋扉と所定の間隔をあけて投函口開閉扉よりも投函箱の後端側に配設されているため(取出口開閉蓋扉がセットバック配置されているため)、これら投函口開閉蓋扉と取出口開閉蓋扉の両蓋扉を、ともに投函箱の同じ一側端部側に回動可能に支持させ、同方向に回動(開閉動)するように設けることができる。
【0016】
そして、このように投函口開閉蓋扉と取出口開閉蓋扉の両蓋扉が同方向に回動して開閉するように構成すると、投函物を投函したり、投函物を取り出す際に、片方の手で投函口開閉蓋扉と取出口開閉蓋扉の両蓋扉を容易に開閉操作することができ、取扱性(操作性)を大幅によくすることができる。
【0017】
さらに、本発明のポストにおいては、前記投函口開閉蓋扉よりも前記投函箱の後端側の上部側に、上端から下方に所定の長さをもって上部側の開口を塞ぐように固定板部が前記投函箱に一体に設けられており、前記固定板部によって該固定板部よりも下方に前記取出口が形成され、且つ、前記固定板部に前記取出口開閉蓋扉を施錠するための錠前が取り付けられていることがより望ましい。
【0018】
この発明においては、取出口開閉蓋扉が投函口開閉蓋扉と所定の間隔をあけて投函口開閉扉よりも投函箱の後端側に配設されているため(取出口開閉蓋扉がセットバック配置されているため)、この投函口開閉蓋扉と取出口開閉蓋扉の間の空所内にカムロック式ダイヤル錠などの錠前を納めて配置することができる。
【0019】
そして、投函箱の固定板部に錠前を取り付けることにより、錠前が投函箱の固定板部に固定され、取出口開閉蓋扉の開閉に従動することがない。このため、例えば、投函口開閉蓋扉と取出口開閉蓋扉の両蓋扉が同方向に回動して開閉するように構成した場合であっても、取出口開閉蓋扉の開閉時に錠前が投函口開閉蓋扉に干渉することがない。これにより、取扱性(操作性)をさらに向上させることができる。
【0020】
また、本発明のポストにおいて、前記取出口開閉蓋扉には、前記投函口を形成する周縁の両側縁部にそれぞれ上下方向に延びる軸線周りに回動可能に接続し、前記投函口の各側縁部側から幅方向中央に向けて突出し、前記取出口開閉蓋扉を閉じた状態で前記投函箱の内側に回動して両開きする一対のフラップが設けられていることがさらに望ましい。
【0021】
この発明においては、取出口開閉蓋扉に形成された投函口に、片開きではなく、投函箱の内側に両開き(観音開き)するように一対のフラップが設けられていることにより、一対のフラップによって投函箱に収容された投函物が外部に落ちることを防止できるとともに、一対のフラップの各フラップの幅を片開きのフラップの幅よりも小さくすることができる。このため、フラップが投函箱の内側に折れ曲がるように回動した際に投函箱の内部でのフラップの稼働領域を小さく抑えることが可能になる。
【0022】
これにより、取出口開閉蓋扉を投函口開閉蓋扉と所定の間隔をあけて投函口開閉扉よりも投函箱の後端側に配設した場合であっても(取出口開閉蓋扉をセットバック配置した場合であっても)、フラップの可動領域を小さく抑えることができることによって投函箱の収容空間の容量を大きく確保することが可能になる。よって、本発明のようにポストを構成した場合であっても、大型の投函物を投函箱に入れた際にこの大型の投函物がフラップに干渉して好適に収容できなくなることを回避できる。
【0023】
さらに、本発明のポストにおいては、前記投函口の上部側に前記フラップがない所定の高さ寸法の開口部分を残すように、前記一対のフラップが設けられていることが望ましい。
【0024】
この発明においては、投函口の一対のフラップよりも上方にフラップがない開口部分を形成することによって、このフラップがない投函口の開口部分から、例えば、幅120mm程度以下のはがきや長形3号、洋形長3号、洋形3号、長形4号の定型郵便物などの汎用の投函物を直接投函箱内に投入することが可能になる。これにより、取扱性をより向上させることができる。
【0025】
また、本発明のポストにおいては、前記フラップがない所定の高さ寸法の開口部分の下端側がV字状を呈するように、前記一対のフラップがそれぞれ、上端側に切欠き部を備えて形成されていることがより望ましい。
【0026】
この発明においては、各フラップの上端部に切欠き部を備えることにより、一対のフラップを閉じた状態で、フラップがない所定の高さ寸法の開口部分の下端側をV字状に形成することができる。これにより、フラップがない投函口の開口部分から投函物を投函箱内に投入する際に、例えば幅120mm程度以下の汎用の投函物を斜めにしてもフラップに引っかかりにくくなり、好適に投函することが可能になる。よって、取扱性をさらに向上させることができる。
【0027】
さらに、本発明のポストにおいては、前記投函箱内に設けられ、前記投函口から投函された投函物を受けるトレイを備えており、前記トレイは、底板と底板の周縁から上方に突出する側板からなり前記投函物を受けるトレイ本体部と、前記トレイ本体部の前端側、且つ前記投函箱内に収容した状態で前記投函箱の他側端側に設けられ、前記トレイ本体部から上方に突設された指掛け部とを備えて形成されていることが望ましい。
【0028】
この発明においては、取出口開閉蓋扉を開き、トレイ本体部の指掛け部に指をかけて手前にトレイを引き込んだり、指掛け部を摘んで手前にトレイを引くむなどして、投函物をトレイとともに容易に取り出すことができる。
【0029】
このとき、指掛け部が投函口開閉蓋扉や取出口開閉蓋扉の回動軸と逆の投函箱の他側端部側に設けられていると、この指掛け部に指をかけたり、指掛け部を手前に引き込みやすく、さらに容易に投函物を取り出すことが可能になる。
【0030】
さらに、本発明のポストにおいて、前記トレイ本体部には、前端側に前記底板から下方に突出する係合凸部が設けられ、前記投函箱には、前記トレイを内部の所定位置に収容した状態で、前記トレイ本体部の係合凸部が係合する係合凹部が凹設され、前記係合凸部を前記係合凹部に係合させた状態で前記指掛け部に指をかけ手前に引き込むことにより前記係合凸部中心に前記トレイが回動するように構成されていることがより望ましい。
【0031】
この発明においては、係合凸部が係合凹部に引っ掛かって係合しているため、トレイの指掛け部に指をかけて手前にトレイを引っ張るように引き込むと、係合凸部中心にトレイを傾動(回動)させることができる。このようにトレイを傾動させることができるため、トレイ本体部上の投函物を容易に取り出すことが可能になる。また、軽く小さな投函物が投函箱の内部で引っ掛かって取り出せなくなることを回避することも可能になる。
【発明の効果】
【0032】
本発明のポストにおいては、見栄えをよくしつつ、優れた取扱性を備えた前入れ前出し式で縦型のポストを実現することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、
図1から
図5を参照し、本発明の一実施形態に係るポストについて説明する。
【0035】
本実施形態のポストAは、
図1に示すように、例えば、住宅などの敷地と外部の出入り口などに設置される門袖壁などの壁構造体1に取り付けて一体に設けられている。
【0036】
壁構造体1は、乾式工法で構築されるものであり、下端側を地中に埋設した基礎に支持させ、幅方向に所定の間隔をあけて立設された複数の支柱2と、支柱2の下端側同士を繋ぐように架設された下枠(下桟、巾木)と、支柱2の上端側同士を繋ぐように架設された上枠(上桟)と、上枠と下枠の間に所定の間隔をあけて設けられ、支柱2の中間部同士を繋ぐように架設された中枠(中桟)と、支柱2、上枠、中枠、下枠の前面と後面にそれぞれ固着して支持され、前後の壁面を形成する一対の壁パネルと、各壁パネルの表面に一体に積層して配設される外装材3とを備えて構成されている。
【0037】
そして、この壁構造体1には、ポストAが側面に形成されたポスト設置用開口4に挿入し、壁構造体1に内蔵して設置されている。
【0038】
また、本実施形態のポストAは、郵便物などの投函物を前から入れて前から出す形式のポストであり、例えば想定しうる最大サイズの投函物を収容できるように高さ寸法及び奥行寸法を設定した縦型のポストとされている。
【0039】
具体的に、本実施形態のポストAは、
図1から
図4に示すように、投函物を収容する投函箱5と、投函口開閉蓋扉6と、取出口開閉蓋扉7と、投函箱5内に設けられ、投函口8から投函された投函物を受けるトレイ9とを備えて構成されている。
【0040】
投函箱5は、例えば金属製であり、高さ寸法H及び奥行寸法Lを幅寸法Wよりも大きくして矩形箱状の縦長で形成されるとともに、縦長の前面を開口して形成されている。また、本実施形態の投函箱5においては、前面側の上部側に、上端から下方に所定の長さ(高さ)をもって上部側の開口を塞ぐように固定板部10が設けられ、この投函箱5の固定板部10にカムロック式ダイヤル錠などの錠前11が取り付けられている。また、本実施形態では、この錠前11が投函箱5の幅W方向中央よりもやや他側端部5b側(投函口開閉蓋扉6や取出口開閉蓋扉7を回動可能に支持する一側端部5a側と反対側の側端部5b側)に配設されている。
【0041】
さらに、本実施形態の投函箱5においては、固定板部10にカムロック式ダイヤル錠などの錠前11を設けるようにしているため、この錠前11の突出寸法に応じ、投函箱5の前面を形成する前端5cよりも奥行L方向後方側に固定板部10が配設されている。すなわち、本実施形態の投函箱5では、固定板部10の下方に取出口12が形成され、投函箱5の前面を形成する前端5cと固定板部10及び取出口12との奥行L方向の間に錠前11の突出寸法に応じた奥行寸法の空所13が形成されている。
【0042】
投函口開閉蓋扉6は、蝶番(回動部材)15を介して投函箱5の前面を形成する前端5cの一側端部5a側にヒンジ接続し、蝶番15の上下方向に延びる軸線周りに回動可能に設けられて投函箱5の前端5cによって形成された開口部を開閉する。投函口開閉蓋扉6は、壁構造体1の厚さに合わせて幅寸法を投函箱5よりも大きくし、高さ寸法を投函箱5と略同等にし、投函箱5の前端5cに形成された開口部全体を開閉できるように形成されている。
【0043】
取出口開閉蓋扉7は、蝶番(回動部材)16を介し、投函口開閉蓋扉6の蝶番15と同じ投函箱5の前面の一側端部5a側にヒンジ接続して、蝶番16の上下方向に延びる軸線周りに回動可能に設けられている。また、取出口開閉蓋扉7は、投函口開閉蓋扉6よりも奥行L方向後方側に設けられ、固定板部10の下方に形成された取出口12を開閉するように設置されている。
【0044】
さらに、この取出口開閉蓋扉7には、扉先側の前面側に一端を繋げ、前方に突出するとともに折れ曲がって略L字状に形成された取っ手17が設けられている。これにより、この取っ手17に指をかけて引っ張り、あるいは押すことによって取出口開閉蓋扉7の開閉が容易に行える。
【0045】
この取っ手17は、指を挿入してかける凹み部分が15mm程度の幅寸法d1を備え、これにより、容易に且つ好適に指をかけて取出口開閉蓋扉7を開閉できるように形成されている。また、取っ手17は、取出口開閉蓋扉7を閉じた状態で、投函箱5の前端5cと固定板部10及び取出口12との奥行L方向の間の空所13に納まるように形成されている。
なお、取っ手17は取出口開閉蓋扉7の他の部分と異なる色で形成(着色)するようにしてもよい。この場合には、例えば暗くても取っ手17の部位を容易に識別できる。
また、本実施形態では、この取っ手17を取出口開閉蓋扉7の上端から下端まで延設するようにしているが、取出口開閉蓋扉7の上端から下端までの間で部分的に取っ手17を設けるようにしてもよい。
【0046】
さらに、本実施形態の取出口開閉蓋扉7は、幅方向中央に上端側から下端側に延設して縦長で矩形状の投函口8が開口形成されている。そして、この投函口8を形成する周縁の両側縁部にそれぞれ上下方向に延びる軸線周りに回動可能に接続し、投函口8の各側縁部側から幅方向中央に向けて突出する一対のフラップ20が並設されている。すなわち、本実施形態では、取出口開閉蓋扉7を閉じた状態で投函箱5の内側に折り曲がるように回動して観音開き(投函箱5の内側に両開き)する一対のフラップ20が設けられている。
【0047】
また、これら一対のフラップ20は、投函口8の上端から例えば130mm程度下方の位置から下端までの部分に設置されている。これにより、本実施形態では、投函口8の一対のフラップ20よりも上方にフラップ20がない開口部分21が形成されている。このフラップ20がない投函口8の開口部分21は、幅120mm程度以下のはがきや長形3号、洋形長3号、洋形3号、長形4号の定型郵便物などの汎用の投函物を直接に投函箱5内に投入する開口部とされている。
【0048】
また、本実施形態では、各フラップ20がその上端部に投函口8の側縁部側から幅方向中央に向かうに従い漸次下方に傾斜する切欠き部22を備えて形成されている。これにより、一対のフラップ20を閉じた状態で一対のフラップ20の上端部側、ひいてはフラップ20がない投函口8の開口部分21の下端にV字状の切欠き部22が形成され、幅120mm程度以下の汎用の投函物を斜めにして投函する場合であってもフラップ20に引っかかりにくく、好適に投函できるように構成されている。
【0049】
さらに、本実施形態の一対のフラップ20は、ポリカーボネートなどを用い、半透明(あるいは透明)に形成されている。これにより、投函口8を塞ぐように配された状態であっても投函箱5の内部をフラップ20越しに見ることができるようになっている。
【0050】
さらに、本実施形態のポストAは、投函口8から投函された投函物を受けるトレイ9が投函箱5の内部に挿入して設けられている。このトレイ9は、幅が投函箱5よりも僅かに小さな寸法で形成されて取出口12よりも後方の投函箱5の底部上に配設されている。
【0051】
また、本実施形態のトレイ9は、底板23aと底板23aの周縁から上方に突出する側板23bからなる略矩形板状のトレイ本体部23と、トレイ本体部23の前端側、且つトレイ9を投函箱5内に収容した状態で投函箱5の他側端部5b側の角部に設けられ、トレイ本体部23の角部のL字状の側板23bに繋がって上方に突設されたL字状の指掛け部24とを備えて形成されている。
【0052】
さらに、トレイ本体部23には、前端側に底板23aから下方に突出する係合凸部25が設けられている。また、トレイ9を投函箱5内に収容した状態で投函箱5の一側端部5a側に配されるトレイ本体部23の一側端部側には、前端から後端側に延びる平面視矩形状の切欠き部26が設けられている。
【0053】
まず、トレイ9を投函箱5内の所定位置に収容した状態で、トレイ本体部23の係合凸部25が投函箱5の底板の前端側に凹設された溝状の係合凹部27に係合している。そして、
図5に示すように、トレイ9の指掛け部24に指をかけて手前にトレイ9を引っ張るように引き込むと、係合凸部25が係合凹部27に引っ掛かっていることでトレイ9が係合凸部25中心に後端側を上方に持ち上げるように回動する。これにより、トレイ本体部23が上方に傾動し、トレイ本体部23上の投函物を容易に取り出せる。すなわち、従来のように軽く小さな投函物が投函箱5の内部で引っ掛かって取り出せなくなることがない。
【0054】
また、トレイ9の指掛け部24を摘み、トレイ本体部23の係合凸部25を投函箱5の係合凹部27から外すように持ち上げ、手前にトレイ9を引くと、トレイ9が取出口12から前方外側にスライド移動する。
【0055】
また、このとき、本実施形態では、トレイ本体部23の切欠き部26の奥行L方向の長さ分だけスライドさせると、トレイ本体部23の切欠き部26を形成する部分の前端に投函箱5の一側端部5a側が当接する。これにより、それ以上トレイ9が前方にスライドすることが規制される。
【0056】
したがって、上記のように構成した本実施形態のポストAにおいては、まず、投函口開閉蓋扉6を開くことによって、取出口開閉蓋扉7が露出し、この取出口開閉蓋扉7に設けられた投函口8から投函箱5の内部に投函物を容易に投函することができる。また、投函口開閉蓋扉6を開き、取出口開閉蓋扉7を開くことによって、投函箱5の内部に収容された投函物を容易に取り出すことができる。
【0057】
そして、投函箱5の前面の開口部を開閉する投函口開閉蓋扉6と取出口開閉蓋扉7の2つの蓋扉を備えるようにし、投函口8を備えた取出口開閉蓋扉7を、閉じた状態で投函口開閉蓋扉6と所定の間隔をあけて投函口開閉扉6よりも投函箱5の後端側に配設するようにしたことで、すなわち、取出口開閉蓋扉7をセットバック配置したことで、前入れ前出し式でポストAを構成した場合であっても、見栄えをよくすることができる。
【0058】
また、本実施形態のポストAにおいては、取出口開閉蓋扉7がセットバック配置されているため、投函口開閉蓋扉6と取出口開閉蓋扉7の両蓋扉を、蝶番(回動部材)15、16をともに投函箱5の一側端部5a側に設け、投函箱5の同じ一側端部5a側に回動可能に支持させることができる。すなわち、投函口開閉蓋扉6と取出口開閉蓋扉7をともに同方向に開閉するように設置することができる。
【0059】
そして、このように投函口開閉蓋扉6と取出口開閉蓋扉7の両蓋扉が同方向に回動して開閉するように構成すると、投函口開閉蓋扉6と取出口開閉蓋扉7が逆方向に回動して開閉するように構成した場合と比較し、例えば片手に荷物を持っているような場合であっても荷物を持ち替えることなく、他方の手で容易に投函口開閉蓋扉6と取出口開閉蓋扉7を開閉操作することができ、大幅に取扱性(操作性)をよくすることができる。
【0060】
さらに、取出口開閉蓋扉7がセットバック配置されているため、投函口開閉蓋扉6と取出口開閉蓋扉7の間の空所13内にカムロック式ダイヤル錠などの錠前11を納めて配置することができる。
【0061】
また、投函箱5の固定板部10に錠前11を取り付けることにより、錠前11が投函箱5の固定板部10に固定され、取出口開閉蓋扉7の開閉に従動することがない。このため、投函口開閉蓋扉6と取出口開閉蓋扉7の両蓋扉が同方向に回動して開閉するように構成した場合であっても、取出口開閉蓋扉7の開閉時に錠前11が投函口開閉蓋扉6に干渉することがない。これにより、取扱性をさらに向上させることができる。
【0062】
また、投函口開閉蓋扉6と取出口開閉蓋扉7の間の空所13に納まるようにして取出口開閉蓋扉7に取っ手17を設けることができる。これにより、この取っ手17に指を引っ掛けて容易に取出口開閉蓋扉7の開閉を行うことが可能になる。
【0063】
このとき、15mm程度の幅寸法d1で取っ手17の指を挿入してかける凹み部分を形成することによって、容易に且つ好適に指をかけて取出口開閉蓋扉7を開閉できる。さらに、取っ手17が取出口開閉蓋扉7の他の部分と異なる色で形成されていることで、例えば暗くてもその部位を容易に識別でき、取出口開閉蓋扉7の開閉を好適に行うことが可能になる。
【0064】
また、本実施形態のポストAにおいては、取出口開閉蓋扉7に形成された投函口8に、片開きではなく、観音開き(投函箱5の内側に両開き)する一対のフラップ20が設けられている。これにより、一対のフラップ20によって投函箱5に収容された投函物が外部に落ちることを防止できる。さらに、一対のフラップ20の各フラップ20の幅を片開きのフラップの幅よりも小さくすることができるため、フラップ20が投函箱5の内側に折れ曲がるように回動した際に投函箱5の内部でのフラップ20の稼働領域を小さく抑えることが可能になる。
【0065】
これにより、取出口開閉蓋扉7をセットバック配置した場合であっても、フラップ20の可動領域を小さく抑えることができることによって投函箱5の収容空間の容量を大きく確保することが可能になる。よって、本実施形態のようにポストAを構成した場合であっても、大型の投函物を投函箱5に入れた際にこの大型の投函物がフラップ20に干渉して好適に収容できなくなることを回避できる。
【0066】
さらに、片開きのフラップに比べ、観音開きする一対のフラップ20を備えた場合には、手を挿入してフラップ20を開き、投函箱5の内部に収容された投函物を引き抜くことが難しくなる。このため、投函箱5内の投函物の盗難を抑止することも可能になりえる。
【0067】
また、一対のフラップ20が半透明(透明)に形成されていることによって、フラップ20を閉じた状態であっても投函箱5の内部の投函物の有無をフラップ20越しに知ることができる。
【0068】
また、一対のフラップ20が、投函口8の上端から例えば130mm程度下方の位置から下端までの部分に設置されていることにより、投函口8の一対のフラップ20よりも上方にフラップ20がない開口部分21を形成することができる。これにより、フラップ20がない投函口8の開口部分21から、幅120mm程度以下のはがきや長形3号、洋形長3号、洋形3号、長形4号の定型郵便物などの汎用の投函物を直接投函箱5内に投入することが可能になる。
【0069】
また、各フラップ20の上端部に投函口8の側縁部側から幅方向中央に向かうに従い漸次下方に傾斜する切欠き部22を備えたことにより、一対のフラップ20を閉じた状態で一対のフラップ20の上端部側、ひいてはフラップ20がない投函口8の開口部分21の下端をV字状に形成することができる。これにより、幅120mm程度以下の汎用の投函物を斜めにしてもフラップ20に引っかかりにくくなり、好適に投函することが可能なる。
【0070】
また、本実施形態では、トレイ9がトレイ本体部23と指掛け部24とを備えて形成され、トレイ本体部23の前端側に底板23aから下方に突出し、トレイ9を投函箱5内の所定位置に収容した状態で、投函箱5の底板の前端側に凹設された溝状の係合凹部27に係合する係合凸部25が設けられている。
【0071】
これにより、トレイ9の指掛け部24に指をかけて手前にトレイ9を引っ張るように引き込むと、係合凸部25が係合凹部27に引っ掛かって係合しているため、係合凸部25中心にトレイ9を傾動(回動)させることができる。よって、トレイ本体部23上の投函物を容易に取り出すことができ、従来のように軽く小さな投函物が投函箱5の内部で引っ掛かって取り出せなくなることを解消することが可能になる。
【0072】
また、このとき、指掛け部24が、投函口開閉蓋扉6と取出口開閉蓋扉7の回動軸(蝶番15、16)がある投函箱5の一側端部5a側ではなく、投函箱5の他側端部5b側の角部に設けられていることにより、この指掛け部24に指をかけたり、指掛け部24を手前に引き込みやすく、容易にトレイ9を傾動させて投函物を取り出すことが可能になる。
【0073】
また、トレイ9の指掛け部24を摘み、トレイ本体部23の係合凸部25を投函箱5の係合凹部27から外すように持ち上げ、手前にトレイ9を引くと、トレイ9が取出口12から前方にスライド移動する。これにより、従来と同様にトレイ9をスライドさせて投函物を取り出すこともできる。
【0074】
また、このとき、トレイ本体部23の切欠き部26の奥行方向の長さ分だけスライドさせると、トレイ本体部23の切欠き部26の前端に投函箱5の一側端部5a側が当接する。これにより、それ以上トレイ9が前方にスライドすることが規制され、トレイ9が前方に引き出され過ぎて落下するようなことがない。
【0075】
よって、本実施形態のポストAによれば、見栄えをよくしつつ、優れた取扱性を備えた前入れ前出し式で縦型のポストを実現することが可能になる。
【0076】
以上、本発明に係るポストの一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。