(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のハンマドリルにおいて、ストップピンに当接する棒状部材の後端部は、前方側(ハンマビット側)のギアハウジングと後方側(グリップ側)のモータハウジングを区画するインナハウジングのうち、運動変換機構としての揺動部材より後方の領域に取り付けられている。この棒状部材の前端部は、揺動部材より前方まで延在している。この棒状部材によって、ストップピンに作用する外力を受けることができるものの、棒状部材が揺動部材の後方から前方まで延在するように構成されているため、棒状部材が配置された領域においては、他の構成部材の配置に関して制限されることになる。この点に関し、他の構成部材の配置に関する自由度を高める観点から、棒状部材としての荷重受け部の構成については更なる改善の余地がある。本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、電動工具において、被加工材に押圧されて移動可能な工具保持部に作用する荷重を受ける荷重受け部の構成に関する改良技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、本発明によって解決される。本発明に係る電動工具の好ましい形態によれば、被加工材に対し所定の加工作業を行う電動工具が構成される。この電動工具は、主として、工具保持部、モータ、中間軸、駆動機構、クラッチ機構、付勢部材、第1保持部材、第2保持部材および操作部材を備える。工具保持部は、先端工具を保持するとともに、先端工具が被加工材に押圧されて先端工具とともに被加工材から離間する方向に後退動作される。中間軸は、モータに駆動され駆動機構を駆動する。そして、駆動機構が工具保持部を駆動する。典型的には、駆動機構は、中間軸の回転を直線運動に変換する運動変換機構を主体として構成される。
【0006】
クラッチ機構は、第1クラッチ部材と第2クラッチ部材を備えている。このクラッチ機構は、中間軸と駆動機構の間に設けられている。第1クラッチ部材と第2クラッチ部材は、付勢部材によって互いに離間するように付勢されている。したがって、クラッチ機構は、常時には、第1クラッチ部材と第2クラッチ部材が非係合状態である。これにより、クラッチ機構は、中間軸から駆動機構へ中間軸の回転伝達を遮断する回転伝達遮断状態に設定される。付勢部材は、典型的には、コイルバネ等の弾性要素が用いられる。一方、工具保持部の後退動作によって第1クラッチ部材と第2クラッチ部材のうちの一方のクラッチ部材が付勢部材の付勢力に抗して移動されて、第1クラッチ部材と第2クラッチ部材が互いに係合する。これにより、クラッチ機構は、中間軸から駆動機構へ中間軸の回転を伝達する回転伝達状態に設定される。したがって、クラッチ機構は、回転伝達遮断状態と回転伝達状態の間で状態変化可能である。なお、一方のクラッチ部材(例えば、第1クラッチ部材)は、工具保持部に直接連結されていてもよく、介在部材を介して間接的に接続されていてもよい。この場合、他方のクラッチ部材(例えば、第2クラッチ部材)は、駆動機構と一体に形成されていてもよく、駆動機構に対して別の部材を介して連結されていてもよい。
【0007】
第1保持部材は、中間軸を保持するように構成されている。したがって、第1保持部材は、中間軸保持部材とも称する。なお、第1保持部材は、中間軸の一端側を保持しており、他の部材が中間軸の他端側を保持してもよい。また、第2保持部材は、工具保持部を保持するように構成されている。したがって、第2保持部材は、工具保持部保持部材とも称する。この第2保持部材は、工具保持部を移動可能に保持する。工具保持部は、電動工具の先端領域に取り付けられる先端工具を保持するため、第2保持部材は、第1保持部材よりも先端工具に近接して設けられる。すなわち、第2保持部材は、第1保持部材よりも先端工具に近接して設けられる。典型的には、第2保持部材は、駆動機構を構成する少なくとも一部の要素よりも先端工具に近接して設けられ、第1保持部材に連結されている。すなわち、第1保持部材と第2保持部材は、別部材として形成されて一体状に連結される。操作部材は、作業者に操作されて、工具保持部の後退動作を許容する許容位置と、工具保持部の後退動作を規制する規制位置との間で移動可能に構成されている。操作部材は、工具保持部に直接係合して工具保持部の後退動作を規制してもよく、工具保持部に接続された他の部材に係合して工具保持部の後退動作を規制してもよい。さらに、第2保持部材は、操作部材が規制位置に位置された状態において、先端工具が被加工材に押圧されたときの工具保持部の後退動作に起因する荷重を、操作部材を介して受ける荷重受け部を有する。すなわち、荷重受け部は、操作部材に当接して操作部材に作用する力を受ける。なお、工具保持部の後退動作に起因する荷重は、押圧力とも称する。
【0008】
本発明によれば、被加工材に対する工具保持部の押圧によって生じる荷重を受ける荷重受け部が、第2保持部材に設けられている。そのため、第2保持部材は、工具保持部を移動可能に保持する機能とともに、工具保持部の移動によって生じる荷重を受ける機能を有する。すなわち、第2保持部材が複数の機能を有するため、電動工具の部品点数が削減される。また、第2保持部材は、第1保持部材よりも先端工具に近接して配置されるため、第1保持部材と第2保持部材の間に、荷重受け部として機能する構成要素を配置する必要がない。すなわち、荷重受け部を合理的に配置することができる。さらに、第1保持部材と第2保持部材の空間が有効に利用される。
【0009】
本発明に係る電動工具の更なる形態によれば、駆動機構は、中間軸によって当該中間軸の軸方向に搖動される搖動部材を有する。第2保持部材は、搖動部材よりも先端工具に近接して配置される。
【0010】
本発明に係る電動工具の更なる形態によれば、操作部材と荷重受け部は、線接触または面接触するように構成されている。典型的には、荷重受け部は、工具保持部の移動方向に垂直な平面で構成される。この場合、操作部材は、平板状あるいは円筒状に形成される。好適には、荷重受け部は、第2保持部材に形成された凹部によって構成される。この形態によれば、操作部材と荷重受け部が線接触または面接触するため、操作部材に作用した荷重が荷重受け部によって安定的に受けられる。
【0011】
本発明に係る電動工具の更なる形態によれば、モータの出力軸と前記中間軸は、交差状に配置されている。さらに、モータの出力軸の回転を中間軸に伝達するベベルギアが設けられている。そして、第1保持部材は、ベベルギアを収容するギア収容空間を形成するように構成されている。すなわち、第1保持部材は、ギア収容空間を形成する壁部を備える。これにより、ベベルギアは、第1保持部材の壁部に覆われるように配置される。したがって、ギア収容空間に、ベベルギアの駆動に必要な潤滑剤が保持される。
【0012】
本発明に係る電動工具の更なる形態によれば、ベベルギアが中間軸に予め取り付けられたギアアセンブリ体として構成されている。そして、ギアアセンブリ体が第1保持部材に取り付けられるように構成されている。典型的には、中間軸の軸方向から見たときに、ベベルギアは第2保持部材と重なる領域を有する。第1保持部材と第2保持部材が連結された状態では、第1保持部材のギア収容空間にベベルギアを配置することが困難である。そのため、本形態においては、中間軸とベベルギアが予め一体となったギアアセンブリ体を第1保持部材に取り付けた後に、第2保持部材を第1保持部材に取り付けることで、ギア収容空間にベベルギアを合理的に配置することができる。
【0013】
本発明に係る電動工具の更なる形態によれば、駆動機構は、中間軸によって当該中間軸の軸方向に揺動される揺動部材で構成されている。そして、ギア収容空間には、ベベルギアとともに揺動部材が収容されている。典型的には、揺動部材は、ベベルギアとともに中間軸に予め取り付けられた駆動機構アセンブリ体として構成されている。したがって、駆動機構アセンブリ体を第1保持部材に取り付けた後に、第2保持部材を第1保持部材に取り付けることで、ギア収容空間にベベルギアと揺動部材が配置される。
【0014】
本発明に係る電動工具の更なる形態によれば、第1クラッチ部材と第2クラッチ部材のうちの一方のクラッチ部材は、工具保持部に接続されており、他方のクラッチ部材は、駆動機構に接続されている。そして、付勢部材は、一方のクラッチ部材とともに工具保持部を付勢する。さらに、第2保持部材は、付勢部材を受ける付勢部材受け部を有する。付勢部材受け部は、例えば、付勢部材としてのコイルバネを保持可能な凸部や凹部によって構成される。
【0015】
本発明に係る電動工具の更なる形態によれば、中間軸は、ベアリングを介して第1保持部材に保持される。そして、ベアリングを第1保持部材に固定するためのベアリングリテーナが第1保持部材に取り付けられている。ベアリングリテーナは、典型的には、加工された金属プレート(板金部材とも称する)で構成され、第1保持部材に対してねじ等の固定手段で固定される。したがって、ベアリングリテーナによってベアリングが確実に保持される。すなわち、ベアリングが第1保持部材から脱落することが阻止される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電動工具において、被加工材に押圧されて移動可能な工具保持部に作用する荷重を受ける荷重受け部が合理的に構成される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の代表的な実施形態について、
図1〜
図7を参照して説明する。本実施形態では、電動工具の一例として電動式のハンマドリル100を用いて説明する。
図1に示すように、ハンマドリル100は、ハンマドリル100の外郭を形成する工具本体としての本体部101を主体として構成される。本体部101は、本体ハウジング103およびギアハウジング105を主体として構成されている。なお、本実施形態においては、説明の便宜上、ハンマビット119の長軸方向に関して、ギアハウジング105側(
図1の左側)をハンマドリル100の前側、ハンドグリップ104側(
図1の右側)をハンマドリル100の後側と称す。また、ハンドグリップ104の延在方向に関して、ハンマビット119の長軸線(駆動軸線とも称する)側(
図1の上側)をハンマドリル100の上側、バッテリ190側(
図1の下側)をハンマドリル100の下側と称する。
【0019】
図1に示すように、ギアハウジング105は、本体部101の先端領域(
図1左側)に配置されている。ギアハウジング105は、駆動機構を構成する運動変換機構120、打撃要素140、回転伝達機構150およびツールホルダ153を収容する。ツールホルダ153には、ハンマビット119が取り外し可能に装着される。ハンマビット119は、ツールホルダ153に対して軸方向には相対移動可能に、周方向には一体に回転するように保持される。このツールホルダ153は、略円筒状に形成されている。このツールホルダ153が、本発明における「工具保持部」に対応する実施構成例である。
【0020】
図1に示すように、ギアハウジング105は、インナハウジング107を固定状に保持している。インナハウジング107の後方領域は、本体ハウジング103に収容されている。
図3および
図4に示すように、インナハウジング107は、後方側の中間軸保持部108と前方側のツールホルダ保持部109が固定状に連結されて構成されている。また、
図1に示すように、インナハウジング107(中間軸保持部108)の下方には、駆動モータ110を収容するモータハウジング110aが固定状に連結されている。このインナハウジング107と本体ハウジング103の間には、付勢バネ106が配置されている。これにより、ギアハウジング105、インナハウジング107およびモータハウジング110aは、付勢バネ106の付勢力が作用した状態で、本体ハウジング103に対して相対移動可能である。この付勢バネ106の弾性変形により、ギアハウジング105に発生した振動が、ギアハウジング105から本体ハウジング103に伝達されることが抑制される。
【0021】
図1に示すように、ギアハウジング105の後方には、本体ハウジング103が連接されている。本体ハウジング103は、インナハウジング107の後方領域およびモータハウジング110aを収容する。駆動モータ110は、出力軸111がハンマビット119の長軸線と交差するように配置されている。本実施形態では、出力軸111がハンマビット119の長軸線に対して傾斜するように駆動モータ110が配置されている。なお、出力軸111がハンマビット119の長軸線に対して直交するように駆動モータ110が配置されていてもよい。この駆動モータ110が、本発明における「モータ」に対応する実施構成例である。
【0022】
また、本体ハウジング103には、作業者が握るハンドグリップ104が形成されている。ハンドグリップ104は、ハンマビット119の長軸方向に関して、ギアハウジング105とは反対側の後方領域に設けられている。このハンドグリップ104は、ハンマビット119の長軸方向に交差する上下方向に延在するように形成されている。ハンドグリップ104には、作業者に操作されるトリガ104aが設けられている。このトリガ104aは、ハンドグリップ104のうち、ハンマビット119の長軸線上に設けられている。また、ハンドグリップ104のうち、ハンマビット119の長軸線から離れた下端部には、バッテリ190が取り外し可能に装着されるバッテリ装着部が設けられている。
【0023】
図1に示すように、モータハウジング110aには、駆動モータ110が収容されている。駆動モータ110の出力軸111には、第1ベベルギア112が取り付けられている。出力軸111がインナハウジング107の中間軸保持部108に形成された出力軸貫通開口部108B(
図4参照)を通して配置され、これにより第1ベベルギア112が中間軸保持部108の内部に配置される。なお、中間軸保持部は、第1ベベルギア112を回転可能に支持するベアリングを保持している。
【0024】
出力軸111の回転運動は、運動変換機構120によって直線運動に変換された後、打撃要素140に伝達される。運動変換機構120に駆動される打撃要素140は、ハンマビット119を打撃し、ハンマビット119にハンマビット119の長軸方向の衝撃力(打撃力)を発生させる。また、駆動モータ110の出力軸111の回転は、回転伝達機構150によって減速されてツールホルダ153に伝達される。これにより、ツールホルダ153に保持されたハンマビット119がハンマビット119の長軸線周りに回転駆動される。なお、駆動モータ110は、ハンドグリップ104に配置されたトリガ104aの引き操作によって通電されて駆動される。この運動変換機構120、打撃要素140および回転伝達機構150が、本発明における「駆動機構」に対応する実施構成例である。
【0025】
図1に示すように、運動変換機構120は、第2ベベルギア121、中間軸123、揺動部材125、およびシリンダ130を主体として構成されている。第2ベベルギア121は中間軸123に連結されている。第2ベベルギア121は、第1ベベルギア112と係合して回転することで、中間軸123を回転させる。中間軸123は、ベアリング123aを介して中間軸保持部108に保持される。ベアリング123aの前方には、ベアリングリテーナ108aが配置されている。このベアリングリテーナ108aは、中間軸保持部108に取り付けられている。これにより、ベアリング123aが中間軸保持部108に固定される。また、中間軸123は、前方のベアリング123bを介してギアハウジング105に保持される。この中間軸保持部108で囲まれた空間には、第1ベベルギア112および第2ベベルギア121のための潤滑剤が配されている。以上の通り、中間軸保持部108は、(1)第2ベベルギア121が取り付けられた中間軸108を保持する機能、(2)第1ベベルギア112を保持する機能、および(3)第1ベベルギア112と第2ベベルギア121のための潤滑剤を保持する機能を有する。この中間軸保持部108が、本発明における「第1保持部材」に対応する実施構成例である。また、中間軸123が、本発明における「中間軸」に対応する実施構成例である。また、第2ベベルギア121が、本発明における「ベベルギア」に対応する実施構成例である。
【0026】
中間軸123には、スプライン溝124が形成されている。さらに、中間軸123には、当該中間軸123と同軸状に円柱状の伝達カム165が設けられている。この伝達カム165は、中間軸123の軸方向(ハンマドリル100の前後方向)に摺動可能である。また、伝達カム165は、スプライン溝124に係合して、中間軸123と一体に回転可能である。
【0027】
さらに、中間軸123の外周部には、当該中間軸123と同軸状に揺動部材125の回転体127が配置されている。この回転体127(揺動部材125)は、伝達カム165の後方に配置されている。揺動部材125は、回転体127、スチールボール128および揺動軸129を主体として構成されている。伝達カム165の後端部には、駆動カム部が設けられている。また、回転体127の前端部には駆動カム部と係合可能な被動カム部が設けられている。したがって、伝達カム165と回転体127が係合することで、中間軸123の回転が回転体127に伝達されて、回転体127が中間軸123の軸周りに回転駆動される。揺動軸129は、回転体124の回転によって、スチールボール128を介してハンマドリル100の前後方向に揺動される。この伝達カム165の駆動カム部と回転体127の被動カム部が、本発明における「クラッチ機構」に対応する実施構成例である。
【0028】
揺動部材125の先端部(上端部)には、前方が開放され、後方が閉鎖されたシリンダ130が連結されている。シリンダ130は、ツールホルダ153の内部を摺動可能に配置されている。すなわち、シリンダ130は揺動部材125の前後方向の移動に伴ってハンマドリル100の前後方向に往復移動する。これにより、駆動モータ110の回転運動がハンマビット119の長軸方向への直線運動に変換される。なお、ツールホルダ153は、ベアリング155を介してインナハウジング107のツールホルダ保持部109に保持される。このツールホルダ153は、インナハウジング107(ツールホルダ保持部109)に対して、ツールホルダ153の軸方向(ハンマドリル100の前後方向)周りに回動可能であり、ツールホルダ153の軸方向に移動可能である。したがって、揺動部材125は、インナハウジング107内に配置され、ツールホルダ153が貫通するツールホルダ貫通開口部109A(
図4参照)を通じてシリンダ130がツールホルダ153内に配置される。この揺動部材125が、本発明における「揺動部材」に対応する実施構成例である。また、ツールホルダ保持部109が、本発明における「第2保持部材」に対応する実施構成例である。
【0029】
図1に示すように、打撃要素140は、ストライカ141およびインパクトボルト143を主体として構成されている。ストライカ141は、シリンダ130内に摺動可能に配置されている。インパクトポルト143は、ツールホルダ153内に摺動可能に配置されるとともに、ストライカ141の運動エネルギをハンマビット119に伝達する中間子として構成されている。ストライカ141後方のシリンダ130内部には、空気室130aが形成されている。すなわち、ストライカ141は、シリンダ130の移動に基づく空気室130aの圧力変動によって駆動されて、インパクトボルト143に衝突する。これにより、インパクトボルト143がハンマビット119に衝突し、ハンマビット119の長軸方向の打撃力を発生される。
【0030】
図1に示すように、回転伝達機構150は、中間軸123に形成されたスプライン溝124およびスプライン溝124と係合する被動ギア151を主体として構成されている。被動ギア151は、ツールホルダ153と同軸状にツールホルダ153に連結されている。したがって、被動ギア151がスプライン溝124に係合して、中間軸123によって被動ギア151とツールホルダ153が一体に回転駆動される。これにより、ハンマビット119が長軸周りに回転駆動される。
【0031】
回転伝達機構150は、中間軸123と常時係合する被動ギア151によって駆動される。したがって、トリガ104aが操作されて駆動モータ110が回転すると、ハンマビット119が回転駆動されて、ドリル作業が可能となる。一方、運動変換機構120は、
図2に示すように、伝達カム165が後方に移動されて、伝達カム165が回転体127と係合することで駆動される。したがって、運動変換機構120が駆動されると、打撃要素140によってハンマビット119が打撃され、ハンマ作業が可能となる。なお、伝達カム165は、ハンマビット119が被加工材に押圧されたときに生じるツールホルダ153の後方への移動によって後方に移動される。
【0032】
以上の通り、伝達カム165が前方位置(
図1に示される位置)に位置する場合には、駆動モードとして、ドリル作業が行われるドリルモードに設定される。一方、伝達カム165が後方位置(
図2に示される位置)に位置する場合には、駆動モードとして、ハンマドリル作業が行われるハンマドリルモードに設定される。このドリルモードとハンマドリルモードの切り替えは、駆動モード切替機構160によって行われる。
【0033】
駆動モード切替機構160によって、駆動モードがドリルモードに切り替えられた場合には、ツールホルダ153の後方への移動が規制される。これにより、伝達カム165と回転体127の係合を不能とし、運動変換機構120の駆動を規制する。したがって、ハンマビット119は、回転伝達機構150によってハンマビット119の長軸周りに回転駆動され、ドリル作業が行われる。
【0034】
一方、駆動モード切替機構160によって、駆動モードがハンマドリルモードに切り替えられた場合には、ツールホルダ153の後方への移動が許容される。ハンマビット119を被加工材に対して押圧することで、ツールホルダ153が後方へ移動される。これにより、伝達カム165が後方に移動され、伝達カム165と回転体127が係合する。その結果、運動変換機構120が駆動されて、打撃要素140によってハンマビット119の長軸方向の打撃力を発生される。したがって、ハンマビット119は、運動変換機構120、打撃要素140および回転伝達機構150によって駆動され、ハンマドリル作業が行われる。
【0035】
具体的には、
図1および
図3〜
図7に示すように、駆動モード切替機構160は、スライドプレート161、コイルバネ163、伝達カム165、チェンジレバー167およびストッパピン169を主体として構成されている。
【0036】
スライドプレート161は、ツールホルダ153の外周部において、ツールホルダ153に対してツールホルダ153の軸方向(ハンマビット119の長軸方向)に移動可能に配置されている。また、ツールホルダ153は、スライドプレート161に対して回転可能である。スライドプレート161とインナハウジング107(ツールホルダ保持部109)の間には、2つのコイルバネ163が設けられている。このコイルバネ163は、スライドプレート161を前方に向かって付勢する。これにより、スライドプレート161がツールホルダ153に取り付けられたストッパリングに当接して、コイルバネ163がツールホルダ153を付勢する。これにより、ツールホルダ153は前方位置に位置される。このコイルバネ163の一端は、ツールホルダ保持部109に形成された凹状のコイルバネ受け部109b(
図4参照)に配置されている。このコイルバネ163およびコイルバネ受け部109bがそれぞれ、本発明における「付勢部材」および「付勢部材受け部」に対応する実施構成例である。
【0037】
図6および
図7に示すように、スライドプレート161は、さらに伝達カム165の係合溝166に係合している。すなわち、スライドプレート161の2つの爪部が係合溝166に係合する。これにより、伝達カム165は、スライドプレート161に対して回転可能である。伝達カム165は、スライドプレート161を介してコイルバネ163によって前方に向かって付勢される。これにより、
図1に示すように、伝達カム165は、前方位置(動力遮断位置とも称する)に配置される。すなわち、前方位置において、伝達カム165は、回転体127と非係合状態である。
【0038】
また、
図6および
図7に示すように、スライドプレート161は、後方に延在するピン当接部162を備える。このピン当接部162は、チェンジレバー167に操作されるストッパピン169と係合可能である。
【0039】
図3〜
図5に示すように、チェンジレバー167は、ギアハウジング105の側面に設けられている。このチェンジレバー167は、ハンマドリル100の左右方向に延在する所定の回動軸を中心に回動するようにギアハウジング105に支持されている。すなわち、チェンジレバー167は、
図4に示す位置と
図5に示す位置の間で、作業者によって手動で回動可能である。
【0040】
ストッパピン169は、チェンジレバー167の回動軸と平行に延在する長尺状部材である。このストッパピン169は、チェンジレバー167の回動軸からオフセットした位置に設けられている。このストッパピン169は、偏心ピンとも称する。ストッパピン169は、チェンジレバー167の回動に伴って、
図4に示す位置(
図3の実線で示される位置)と
図5に示す位置(
図3の破線で示される位置)の間で切り替えられる。このストッパピン169が、本発明における「操作部材」に対応する実施構成例である。
【0041】
図3および
図6に示すように、ストッパピン169が後方位置(
図3の実線で示される位置)に位置する場合には、ストッパピン169は、スライドプレート161と係合不能である。すなわち、ストッパピン169は、スライドプレート161の後方への移動を許容する。したがって、ハンマビット119が被加工材に押圧されると、ツールホルダ153が後方に移動される。これにより、伝達カム165が後方位置(動力伝達位置とも称する)に配置され、伝達カム165と回転体127が係合して運動変換機構120が駆動される。すなわち、
図6に示されるチェンジレバー167の位置は、ハンマドリルモードとして設定されている。このストッパピン169の位置は、ツールホルダ移動許容位置とも称する。
【0042】
一方、
図3および
図7に示すように、ストッパピン169が前方位置(
図3の破線で示される位置)に位置する場合には、ストッパピン169は、スライドプレート161と係合可能である。すなわち、ストッパピン169は、スライドプレート161の後方への移動を規制する。したがって、ハンマビット119が被加工材に押圧されても、ストッパピン169によってスライドプレート161の後方への移動が規制されるため、ツールホルダ153の後方への移動が規制される。これにより、前方位置(動力遮断位置)に位置する伝達カム165の位置が維持され、運動変換機構120に回転が伝達されない。すなわち、
図7に示されるチェンジレバー167の位置は、ドリルモードとして設定されている。このストッパピン169の位置は、ツールホルダ移動規制位置とも称する。
【0043】
図5および
図7に示すように、ドリルモードが選択されて、ストッパピン169がツールホルダ移動規制位置に位置する場合には、ストッパピン169は、インナハウジング107のツールホルダ保持部109に形成された凹部109aに配置される。これにより、ストッパピン169は、凹部109aに当接する。凹部109aは、円筒状のストッパピン169が当接する平面領域を有する。したがって、ストッパピン169と凹部109a(ツールホルダ保持部109)は、線接触する。この凹部109aが、本発明における「荷重受け部」に対応する実施構成例である。なお、ストッパピン169は、円筒状部材として構成されているが、板状部材として構成されており、ストッパピン169と凹部109aが面接触するように構成されていてもよい。
【0044】
ストッパピン169がスライドプレート161に当接して、スライドプレート161およびツールホルダ153の後方への移動を規制するときに、ハンマビット119を被加工材に押圧してツールホルダ153を後方に移動させる力は、ストッパピン169を介してギアハウジング105に固定状に保持されたインナハウジング107のツールホルダ保持部109によって受けられる。これにより、ストッパピン169が、ツールホルダ153の後方への移動を確実に抑制する。また、凹部109aの側壁は、ハンマドリルモードからドリルモードが選択されて移動されたストッパピン169の更なる回動(移動)を防止する機能を有する。以上の通り、ツールホルダ保持部109は、(1)ツールホルダ153を支持する機能、(2)ストッパピン169に作用する力を受けてストッパピン169を保持する機能、および(3)コイルバネ163を保持する機能を有する。
【0045】
本実施形態においては、インナハウジング107は、中間軸保持部108とツールホルダ保持部109の2部材が連結されて構成される。
図1に示すように、インナハウジング107によって形成される内部空間には、主として、第1ベベルギア112、第2ベベルギア121および揺動部材125が配置されている。
【0046】
中間軸123に取り付けられている第2ベベルギア121は、ハンマビット119の長軸方向から見たときに、ツールホルダ保持部109と重なるような大きさを有する。換言すると、第2ベベルギア121とツールホルダ保持部109は、ハンマドリル100の上下方向に関して重なる領域を有する。また、揺動部材125とツールホルダ保持部109の関係も、第2ベベルギア121とツールホルダ保持部109の関係と同様である。
【0047】
例えば、中間軸保持部108とツールホルダ保持部109が予め一体となったインナハウジング107においては、インナハウジング107の内部に第2ベベルギア121を配置することが困難である。
そのため、本実施形態においては、中間軸保持部108の内部に第2ベベルギア121と揺動部材125を配置した状態で、ツールホルダ保持部109が中間軸保持部108に連結されることで、インナハウジング107が構成される。すなわち、第2ベベルギア121および揺動部材125が中間軸123と連結されたアセンブリ体(駆動機構アセンブリ体またはベベルギアアセンブリ体とも称する)が中間軸保持部108に組み付けられ、その後、ツールホルダ保持部109が中間軸保持部108に連結されて中間軸123等が組み付けられたインナハウジング107(インナハウジングアセンブリ体とも称する)が形成される。
【0048】
以上の通り、ハンマビット119の長軸方向から見たときに、中間軸保持部108と第2ベベルギア121がオーバーラップする構成においては、第2ベベルギア121が邪魔になるため、従来技術のように、ストッパピン169を受けるピン部材を揺動部材より後方に配置された部材に設けることができない。本実施形態においては、ストッパピン169をインナハウジング107の前方側の部材であるツールホルダ保持部109で受けるため、ツールホルダ保持部109の後方の空間を有効に利用することができる。したがって、比較的大型のベベルギアを用いることが可能となる。
【0049】
また、本実施形態によれば、ストッパピン169と凹部109aが線接触するため、ストッパピン169に作用する荷重が凹部109a(ツールホルダ保持部109)に効率的に伝達される。したがって、ドリルモードにおいて、ストッパピン169によってツールホルダ153の後方への移動が安定的に規制される。
【0050】
以上のハンマドリルは、ドリルモードとハンマドリルモードを有していたが、さらにハンマビット119が打撃動作のみを行うハンマモードを有していてもよい。
【0051】
上記発明の趣旨に鑑み、本発明に係る電動工具は、下記の態様が構成可能である。
(態様1)
駆動機構は、先端工具を回転駆動する回転伝達機構と、先端工具を打撃駆動する打撃機構で構成されており、
駆動モードとして、回転伝達機構が駆動されて先端工具が回転駆動されるドリルモードと回転駆動機構および打撃機構が駆動されて先端工具が回転駆動および直線駆動されるハンマドリルモードを備え、
ドリルモードが選択された場合に、操作部材が規制位置に配置され、
ハンマドリルモードが選択された場合に、操作部材が許容位置に配置される。
(態様2)
荷重受け部は、第2保持部材に形成された凹部によって構成されている。
(態様3)
荷重受け部としての凹部は、工具保持部の移動方向に垂直な第1面と、第1面に交差する第2面を有し、
操作部材が許容位置から規制位置に移動される際に、第2面に当接して操作部材の移動が規制されて規制位置に配置される。
(態様4)
第1保持部材と第2保持部材は、本体ハウジングに対して弾発状に相対移動可能保持されている。
(態様5)
第1保持部材と第2保持部材は、モータと一体に本体ハウジングに対して相対移動可能である。
(態様6)
本体ハウジングは、作業者に把持されるグリップを備える。
(態様7)
荷重受け部は、揺動部材より先端工具に近接して設けられる。
【0052】
(本実施形態の各構成要素と本発明の各構成要素の対応関係)
本実施形態の各構成要素と本発明の各構成要素の対応関係を以下の通り示す。なお、本実施形態は、本発明を実施するための形態の一例を示すものであり、本発明は、本実施形態の構成に限定されるものではない。
ハンマドリル100が、本発明の「電動工具」に対応する構成の一例である。
駆動モータ110が、本発明の「モータ」に対応する構成の一例である。
運動変換機構120が、本発明の「駆動機構」に対応する構成の一例である。
打撃要素140が、本発明の「駆動機構」に対応する構成の一例である。
回転伝達機構150が、本発明の「駆動機構」に対応する構成の一例である。
揺動部材125が、本発明の「揺動部材」に対応する構成の一例である。
第2ベベルギア121が、本発明の「ベベルギア」に対応する構成の一例である。
中間軸123が、本発明の「中間軸」に対応する構成の一例である。
中間軸保持部108が、本発明の「第1保持部材」に対応する構成の一例である。
ツールホルダ保持部109が、本発明の「第2保持部材」に対応する構成の一例である。
凹部109aが、本発明の「荷重受け部」に対応する構成の一例である。
コイルバネ受け部109bが、本発明の「付勢部材受け部」に対応する構成の一例である。
コイルバネ163が、本発明の「付勢部材」に対応する構成の一例である。