【実施例1】
【0026】
図3(a)は、実施例1に係る弾性波デバイスの平面図、
図3(b)は、
図3(a)のA−A間の断面図である。なお、
図3(a)は、基板28などを透視して図示している。
図3(a)及び
図3(b)のように、実施例1の弾性波デバイス100は、支持基板10上に圧電基板12が接合されている。支持基板10と圧電基板12とは異なる材料からなる基板である。支持基板10は、例えばサファイア基板である。圧電基板12は、例えば42°YカットX伝搬LT基板である。また、支持基板10の厚さは、例えば50μmから150μmであり、圧電基板12の厚さは、例えば40μm以下である。
【0027】
圧電基板12の上面に、IDT(Interdigital Transducer)14及び反射器16が形成されている。IDT14は、圧電基板12内または表面に弾性波を励振する。反射器16は、弾性波を反射する。IDT14及び反射器16は、例えば共振器などの弾性波素子18を形成する。IDT14及び反射器16は、例えばアルミニウム膜、銅膜、又は銅が添加されたアルミニウム膜などの金属膜である。
【0028】
支持基板10上に、配線20と枠体22とが形成されている。配線20は、弾性波素子18同士、及び/又は、弾性波素子18と突起電極24とを電気的に接続する。突起電極24は、配線20上に形成され、基板28を貫通するビア配線30に電気的に接続されている。枠体22は、複数の弾性波素子18を囲んで形成されている。配線20は、例えば下からチタン膜及び金膜などが積層された金属膜である。枠体22は、例えば下からチタン膜、金膜、半田、及び銅膜などが積層された金属膜である。突起電極24は、例えば下から半田及び銅膜などが積層された金属膜である。
【0029】
圧電基板12は、弾性波素子18が形成された領域には残存しているが、その他の領域では除去されている。したがって、配線20及び枠体22が形成された領域では、圧電基板12は支持基板10が露出するように除去されている。すなわち、配線20と支持基板10との間、及び、枠体22と支持基板10との間には、圧電基板12は形成されていない。圧電基板12は、製造誤差又は製造マージンを考慮すると、弾性波素子18が形成された領域より数μmから10μm程度広い場合が好ましい。
【0030】
枠体22上に、弾性波素子18が露出する空洞26が圧電基板12上に形成されるように、基板28が設けられている。これにより、弾性波素子18は気密封止されている。また、弾性波素子18が空洞26に露出しているため、弾性波素子18のIDT14の振動が妨げられることが抑制される。基板28は、例えば支持基板10と同じ材料からなる基板であり、サファイア基板である。支持基板10の上面と基板28の下面との間隔は、例えば10μm〜50μmである。また、基板28の厚さは、例えば50μm〜100μmである。基板28を貫通するビア配線30上には、外部との接続に用いられる端子32が形成されている。ビア配線30は、例えば金膜又は銅膜などの金属膜である。端子32は、例えば下から銅膜、ニッケル膜、金膜などが積層された金属膜である。
【0031】
ここで、支持基板10と圧電基板12と基板28との間の線膨張係数の関係について説明する。上述したように、支持基板10と基板28は、例えばサファイア基板であり、圧電基板12は、例えば42°YカットX伝搬LT基板である。42°YカットX伝搬LT基板は、面方向において線膨張係数の値が大きく異なり、弾性波の伝搬方向(すなわち、X軸方向)の線膨張係数は16.1ppm/℃で、弾性波の伝搬方向に垂直方向の線膨張係数は9.5ppm/℃である。一方、サファイア基板の線膨張係数は面方向において概ね7ppm/℃程度である。このことから、支持基板10と圧電基板12と基板28との間の線膨張係数は、圧電基板12の面方向において、同じ方向における支持基板10と圧電基板12との線膨張係数の差よりも、当該同じ方向における支持基板10と基板28との線膨張係数の差が小さい関係となっている。例えば、弾性波の伝搬方向における支持基板10と圧電基板12との線膨張係数の差(16.1−7=9.1ppm/℃)よりも、弾性波の伝搬方向における支持基板10と基板28との線膨張係数の差(7−7=0ppm/℃)が小さくなっている。
【0032】
図3(a)のように、圧電基板12上に形成された複数の弾性波素子18は、直列共振器S1からS3及び並列共振器P1、P2を構成する。1又は複数の直列共振器S1からS3は、入力端子INと出力端子OUTとの間に、配線20を介して直列に接続されている。1又は複数の並列共振器P1及びP2は、入力端子INと出力端子OUTとの間に、配線20を介して並列に接続されている。並列共振器P1及びP2は、配線20を介してグランド端子GNDに電気的に接続されている。
【0033】
図4(a)から
図5(c)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図である。
図4(a)から
図4(c)は、支持基板10側の製造方法を示す断面図であり、
図5(a)及び
図5(b)は、基板28側の製造方法を示す断面図であり、
図5(c)は、支持基板10と基板28との接合工程を示す断面図である。
図4(a)から
図4(c)の製造工程と
図5(a)及び
図5(b)の製造工程とは、別々に(例えば並行して)行われる。
【0034】
まず、支持基板10側の製造方法を説明する。
図4(a)のように、支持基板10の上面に圧電基板12を接合する。支持基板10と圧電基板12との接合は、例えば表面を活性化し常温接合する方法で行う。その後、圧電基板12上に金属膜からなるIDT14及び反射器16を形成して弾性波素子18を形成する。金属膜の形成は、スパッタリング法又は蒸着法を用いることができ、パターン形成はエッチング法又はリフトオフ法を用いることができる。
【0035】
図4(b)のように、圧電基板12上にマスク層50を形成する。マスク層50は、例えばフォトレジストである。弾性波素子18上のマスク層50は残存し、他の領域はマスク層50の開口となっている。マスク層50をマスクに圧電基板12を除去する。圧電基板12の除去は、エッチング法又はブラスト法を用いることができる。これにより、弾性波素子18が形成された領域以外の領域の圧電基板12が除去され、支持基板10が露出する。
【0036】
図4(c)のように、マスク層50を除去する。その後、支持基板10上にマスク層52を形成する。マスク層52は、例えばフォトレジストである。配線20及び枠体22が形成されるべき領域はマスク層52の開口となっていて、他の領域のマスク層52は残存している。マスク層52をマスクとして、支持基板10上に金属膜からなる配線20と枠体22の下層22aとを形成する。金属膜の形成はスパッタリング法、蒸着法、又はめっき法を用いることができる。金属膜を形成した後、マスク層52は除去する。
【0037】
次に、基板28側の製造方法を説明する。
図5(a)のように、基板28を貫通するビア配線30と、ビア配線30に接続された端子32と、を形成する。ビア配線30は、基板28を貫通する孔を形成した後、当該孔に金属膜を埋め込むことで形成できる。端子32は、スパッタリング法又は蒸着法で金属膜を形成した後、エッチング法又はリフトオフ法でパターン形成をすることで形成できる。
【0038】
図5(b)のように、基板28の端子32とは反対側の面上にマスク層54を形成する。マスク層54は、例えばフォトレジストである。枠体22及び突起電極24が形成されるべき領域はマスク層54の開口となっていて、他の領域のマスク層54は残存している。マスク層54をマスクとして、基板28上に金属膜からなる枠体22の上層22bと突起電極24とを形成する。金属膜の形成はスパッタリング法、蒸着法、又はめっき法を用いることができる。金属膜を形成した後、マスク層54は除去する。
【0039】
図4(a)から
図5(b)の製造工程を行った後、
図5(c)のように、基板28に形成した枠体22の上層22bを、支持基板10上に形成した枠体22の下層22aに接合させる。これにより、弾性波素子18上に空洞26が形成されると共に、弾性波素子18が気密封止される。また、突起電極24が配線20に接合される。以上により、実施例1に係る弾性波デバイスが製造できる。
【0040】
実施例1によれば、支持基板10、圧電基板12、及び基板28の線膨張係数は、圧電基板12の面方向において、同じ方向における支持基板10と圧電基板12との線膨張係数の差よりも、当該同じ方向における支持基板10と基板28との線膨張係数の差が小さい関係となっている。そして、
図3(a)及び
図3(b)のように、支持基板10上に接合された圧電基板12は、弾性波素子18が形成された領域においては残存し、枠体22が形成された領域においては除去されている。これにより、枠体22は、線膨張係数の差が比較的小さい支持基板10と基板28とに接合されるため、応力を緩和することができる。また、基板28は圧電基板12とは異なる材料からなるため、基板28の強度を確保することができる。したがって、良好な信頼性を得ることができる。
【0041】
なお、実施例1において、圧電基板12は42°YカットX伝搬LT基板である場合を例に示したが、これに限らず、その他のカット角や伝搬方向を有するLT基板又はLN基板の場合や、LT基板、LN基板以外の圧電基板の場合でもよい。例えば、圧電基板12は、36°〜46°YカットX伝搬LT基板でもよい。
【0042】
表1は、圧電基板12の一例と、それぞれの面方向において、弾性波の伝搬方向における線膨張係数及び弾性波の伝搬方向に垂直な方向における線膨張係数と、を示している。
【表1】
表1によれば、圧電基板12が回転YカットX伝搬LT基板又は回転YカットX伝搬LN基板である場合、弾性波の伝搬方向(すなわち、X軸方向)における線膨張係数が大きな値となっている。したがって、圧電基板12が回転YカットX伝搬LT基板又は回転YカットX伝搬LN基板である場合には、弾性波の伝搬方向(X軸方向)における支持基板10と圧電基板12との線膨張係数の差よりも、当該伝搬方向における支持基板10と基板28との線膨張係数との差が小さければよい。つまり、圧電基板12の線膨張係数が最も大きい方向における支持基板10と圧電基板12との線膨張係数の差よりも、当該方向における支持基板10と基板28との線膨張係数の差が小さければよい。言い換えると、支持基板10と圧電基板12との線膨張係数の差が最も大きくなる方向における、支持基板10と圧電基板12との線膨張係数の差よりも、当該方向における支持基板10と基板28との線膨張係数の差が小さければよい。
【0043】
また、表1によれば、回転YカットX伝搬LT基板又は回転YカットX伝搬LN基板は、弾性波の伝搬方向に垂直な方向における線膨張係数は比較的小さな値となっている。したがって、圧電基板12が回転YカットX伝搬LT基板又は回転YカットX伝搬LN基板である場合には、弾性波の伝搬方向に垂直な方向における支持基板10と圧電基板12との線膨張係数の差よりも、当該垂直な方向における支持基板10と基板28との線膨張係数の差が小さいことが好ましい。これにより、支持基板10の線膨張係数と基板28の線膨張係数とを近づけることができる。
【0044】
また、表1によれば、Xカット回転Y伝搬LT基板では、弾性波の伝搬方向に垂直な方向における線膨張係数が大きな値となり、弾性波の伝搬方向における線膨張係数は比較的小さな値となっている。したがって、圧電基板12がXカット回転Y伝搬LT基板である場合には、弾性波の伝搬方向に垂直な方向における支持基板10と圧電基板12との線膨張係数の差よりも、当該垂直な方向における支持基板10と基板28との線膨張係数の差が小さければよい。弾性波の伝搬方向における支持基板10と圧電基板12との線膨張係数の差よりも、当該伝搬方向における支持基板10と基板28との線膨張係数の差が小さいことが好ましい。
【0045】
また、表1によれば、YカットZ伝搬LN基板では、弾性波の伝搬方向における線膨張係数は大きな値となり、弾性波の伝搬方向に垂直な方向における線膨張係数は比較的小さな値となっている。したがって、圧電基板12がYカットZ伝搬LN基板である場合には、弾性波の伝搬方向における支持基板10と圧電基板12との線膨張係数の差よりも、当該伝搬方向における支持基板10と基板28との線膨張係数の差が小さければよい。弾性波の伝搬方向に垂直な方向における支持基板10と圧電基板12との線膨張係数の差よりも、当該垂直な方向における支持基板10と基板28との線膨張係数の差が小さいことが好ましい。
【0046】
また、実施例1によれば、
図3(a)及び
図3(b)のように、圧電基板12は、突起電極24が形成された領域においても除去されている。これにより、突起電極24は、線膨張係数の差が比較的小さい支持基板10と基板28とに接合されるため、応力を緩和することができる。
【0047】
また、実施例1によれば、支持基板10と基板28とは同じ材料からなるため、応力をより緩和することができる。なお、実施例1では、支持基板10と基板28とが共にサファイア基板である場合を例に示したが、共にSi基板(線膨張係数:3.4ppm/℃)など、他の基板の場合でもよい。
【0048】
また、実施例1によれば、枠体22は、例えば弾性波の伝搬方向における支持基板10と圧電基板12との線膨張係数の差よりも、当該伝搬方向における支持基板10の線膨張係数との差が小さい材料(例えばチタン(線膨張係数:8.6ppm/℃)など)を含んでいる。これにより、枠体22の線膨張係数を支持基板10の線膨張係数に近づけることができ、応力が大きくなることを抑制できる。なお、応力緩和の点から、枠体22に含まれる上記材料は、支持基板10及び基板28の少なくとも一方に接して形成される場合が好ましい。また、例えば支持基板10がSi基板である場合には、枠体22は上記材料としてタングステン(線膨張係数:4ppm/℃)やモリブデン(線膨張係数:5ppm/℃)を含むことが好ましい。また、枠体22は、上記材料としてFeNi系合金(線膨張係数:0.5〜15ppm/℃)などを含んでいてもよい。
【0049】
また、実施例1によれば、枠体22は金属膜であるので、枠体22が樹脂膜である場合に比べて、弾性波素子18の気密性を向上させることができる。また、圧電基板12が、圧電基板12よりも線膨張係数の小さい支持基板10上に接合されているため、弾性波素子18の温度特性を向上させることができる。
【0050】
なお、実施例1においては、配線20は、圧電基板12の端において、段差を越えて形成されることになる。このため、配線20の断線を抑制する点から、圧電基板12の端は傾斜状に形成されていてもよい。また、圧電基板12の端を傾斜状に形成しない場合には、配線20の厚さを調整することで、断線を抑制してもよい。
【0051】
なお、実施例1では、弾性表面波デバイスを例に説明したが、弾性境界波デバイス又はラブ波デバイスでもよい。
【0052】
図6(a)及び
図6(b)は、実施例1の変形例1に係る弾性波デバイスの平面図、
図6(c)は、実施例1の変形例1に係る弾性波デバイスの断面図である。
図6(a)から
図6(c)のように、実施例1の変形例1の弾性波デバイス110は、基板28の下面に、圧電薄膜共振子からなる複数の弾性波素子34と配線36とが形成されている。複数の弾性波素子34は、直列共振器S11からS13及び並列共振器P11、P12を構成する。1又は複数の直列共振器S11からS13は、入力端子INと出力端子OUTとの間に、配線36を介して直列に接続されている。1又は複数の並列共振器P11及びP12は、入力端子INと出力端子OUTとの間に、配線36を介して並列に接続されている。並列共振器P11及びP12は、配線36を介してグランド端子GNDに接続されている。その他の構成は、実施例1と同じであり説明を省略する。
【0053】
実施例1の変形例1のように、基板28下に、空洞26に露出して弾性波素子34が形成されていてもよい。これにより、複数のフィルタを有する小型な弾性波デバイスを得ることができる。例えば、複数の弾性波素子18によって構成されるフィルタ及び複数の弾性波素子34によって構成されるフィルタのいずれか一方を送信フィルタ、他方を受信フィルタとして、分波器となるようにしてもよい。
【0054】
図7(a)から
図7(c)は、実施例1の変形例2から変形例4に係る弾性波デバイスの断面図である。
図7(a)のように、実施例1の変形例2の弾性波デバイス120は、支持基板10を貫通し、支持基板10上の配線20に電気的に接続されたビア配線38が形成されている。ビア配線38下には、外部との接続に用いられる端子40が形成されている。その他の構成は、実施例1の変形例1と同じであり説明を省略する。実施例1の変形例2のように、支持基板10側にもビア配線38と端子40とを形成し、支持基板10の下側と基板28の上側との両方から外部と接続できるようにしてもよい。
【0055】
図7(b)のように、実施例1の変形例3の弾性波デバイス130は、弾性波素子34の代わりに、基板28の下面に圧電基板12が接合され、圧電基板12の下面に弾性波素子18が形成されている。その他の構成は、実施例1の変形例2と同じであり説明を省略する。実施例1の変形例3のように、基板28下に形成される弾性波素子は、圧電薄膜共振子に限られず、弾性表面波素子の場合でもよい。
【0056】
図7(c)のように、実施例1の変形例4の弾性波デバイス140では、基板28aは、中央部分に凹みが形成されている。その他の構成は、実施例1の変形例2と同じであり説明を省略する。実施例1の変形例4のように、基板28aは、中央部分に凹みを有する形状をしている場合でもよい。
【0057】
なお、実施例1の変形例1から変形例4では、基板28下に弾性波素子が形成される場合を例に示したが、弾性波素子の代わりに又は弾性波素子に加えて、IPD(Integrated Passive Device:集積化受動部品)やチップ部品などが形成されてもよい。