特許第6397377号(P6397377)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6397377
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】超高圧封止装置及び往復駆動ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/18 20060101AFI20180913BHJP
   F04B 39/00 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   F16J15/18 B
   F04B39/00 104D
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-145894(P2015-145894)
(22)【出願日】2015年7月23日
(65)【公開番号】特開2017-26055(P2017-26055A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2017年8月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000132161
【氏名又は名称】株式会社スギノマシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊東 光一
【審査官】 山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−051193(JP,A)
【文献】 特開平04−203678(JP,A)
【文献】 特開平05−133477(JP,A)
【文献】 特開2008−164162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/18
F04B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側部材と内側部材との間に形成された環状隙間に配設され、当該環状隙間を封止して高圧室と低圧室とを仕切る超高圧封止装置であって、
前記内側部材に当接する内周部と、低圧室側端面部に繋がり前記外側部材に当接する大径外周部と、この大径外周部よりも縮径され高圧室側端面部に繋がる小径外周部と、外周部が前記大径外周部と前記小径外周部に繋がるように形成された中央外周部と、を有するボトムリングと、
このボトムリングの前記小径外周部に外嵌され当該小径外周部に当接する内周部と、軸方向の移動が規制されるように前記ボトムリングの前記中央外周部に係止される係止部と、前記外側部材に当接する外周部と、を有するバックアップリングと、
このバックアップリングの高圧室側端面部に当接する低圧室側端面部と、前記内側部材に当接する内周部と、前記低圧室側端面部に繋がり前記外側部材に当接する大径外周部と、この大径外周部よりも縮径され高圧室側端面部に繋がる小径外周部と、外周部が前記大径外周部と前記小径外周部に繋がるように形成された中央外周部と、を有するパッキンリングと、
このパッキンリングの前記小径外周部に外嵌され当該小径外周部に当接する内周部と、軸方向の移動が規制されるように前記パッキンリングの前記中央外周部に係止される係止部と、前記外側部材に当接する外周部と、を有する弾性リングと、を備え
前記ボトムリングと前記バックアップリングは、銅合金であり、
前記ボトムリングは、前記バックアップリングよりも引張強さ及び硬度が高いこと、
を特徴とする超高圧封止装置。
【請求項2】
前記ボトムリングの前記中央外周部は、当該ボトムリングの前記大径外周部から前記小径外周部に繋がるテーパ形状をなし、
前記バックアップリングの前記係止部は、前記ボトムリングのテーパ形状に適合するテーパ形状をなしていること、
を特徴とする請求項1に記載の超高圧封止装置。
【請求項3】
前記パッキンリングの前記低圧室側端面部は、前記バックアップリングの前記高圧室側端面部及び前記ボトムリングの前記高圧室側端面部に当接していること、
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の超高圧封止装置。
【請求項4】
前記バックアップリングの前記高圧室側端面部及び前記ボトムリングの前記高圧室側端面部は、軸方向に対して垂直な同じ面上に形成され、
前記パッキンリングの前記低圧室側端面部も、軸方向に対して垂直であること、
を特徴とする請求項3に記載の超高圧封止装置。
【請求項5】
前記ボトムリングの前記内周部は、前記低圧室側端面部に繋がり前記内側部材に当接する前記内周部よりも拡径された拡径内周部を備えていること、
を特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の超高圧封止装置。
【請求項6】
前記ボトムリングの前記高圧室側端面部は、前記環状隙間の20〜50%の大きさであること、
を特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の超高圧封止装置。
【請求項7】
前記ボトムリングのテーパ形状は、軸方向に対して30〜80度の角度であること、
を特徴とする請求項2に記載の超高圧封止装置。
【請求項8】
前記ボトムリングは、前記内側部材に当接する前記内周部の軸方向の長さが2mm以上8mm以下であること、
を特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の超高圧封止装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の超高圧封止装置を備え、圧力が500MPa以上の往復駆動ポンプであって、
前記外側部材は、シリンダ部材であり、
前記内側部材は、プランジャ部材であること、
を特徴とする往復駆動ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超高圧封止装置及び往復駆動ポンプに係り、特に、ボトムリングの小径外周部に外嵌されたバックアップリングを備えた超高圧封止装置及び往復駆動ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧力が400MPaとなるような高圧ポンプにおいて、低圧部から高圧部に向かって、ボトムリング、バックアップリング、パッキン、及び、弾性リングを軸方向に順次並べて構成したシール装置が知られている(例えば、特許文献1,2,3参照)。
【0003】
高圧ポンプに使用されるシール装置は、内側部材(プランジャ)との摺動特性を確保するため、ボトムリングには強度の高いステンレス部材が採用されている。また、外側部材(シリンダ)とのシール性を確保するため、バックアップリングや、弾性リングを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−203764号公報(特許請求の範囲、第1図)
【特許文献2】特開平11−51193号公報(特許請求の範囲、図1
【特許文献3】特開2003−65439号公報(特許請求の範囲、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のシール装置では、圧力が500MPa以上になると外側部材の内径が過度に拡大してバックアップリングのシール性能が低下し易くなると共に、圧力によってシール部材が変形した状態で摺動するため、偏摩耗が発生し易く、シールの寿命が短いという問題があった。
【0006】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、超高圧における封止性能を向上させると共に、耐久性を向上させることができる超高圧封止装置及び往復駆動ポンプを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明に係る超高圧封止装置は、外側部材と内側部材との間に形成された環状隙間に配設され、当該環状隙間を封止して高圧室と低圧室とを仕切る超高圧封止装置であって、前記内側部材に当接する内周部と、低圧室側端面部に繋がり前記外側部材に当接する大径外周部と、この大径外周部よりも縮径され高圧室側端面部に繋がる小径外周部と、外周部が前記大径外周部と前記小径外周部に繋がるように形成された中央外周部と、を有するボトムリングと、このボトムリングの前記小径外周部に外嵌され当該小径外周部に当接する内周部と、軸方向の移動が規制されるように前記ボトムリングの前記中央外周部に係止される係止部と、前記外側部材に当接する外周部と、を有するバックアップリングと、このバックアップリングの高圧室側端面部に当接する低圧室側端面部と、前記内側部材に当接する内周部と、前記低圧室側端面部に繋がり前記外側部材に当接する大径外周部と、この大径外周部よりも縮径され高圧室側端面部に繋がる小径外周部と、外周部が前記大径外周部と前記小径外周部に繋がるように形成された中央外周部と、を有するパッキンリングと、このパッキンリングの前記小径外周部に外嵌され当該小径外周部に当接する内周部と、軸方向の移動が規制されるように前記パッキンリングの前記中央外周部に係止される係止部と、前記外側部材に当接する外周部と、を有する弾性リングと、を備え、前記ボトムリングと前記バックアップリングは、銅合金であり、前記ボトムリングは、前記バックアップリングよりも引張強さ及び硬度が高いこと、を特徴とする。
ここで、「超高圧」とは、特に限定されるものではないが、一般に、圧力が300MPa以上をいう。なお、超高圧の領域は、例えば、圧力が300〜700MPaであり、特に、500〜700MPaである。
【0008】
本発明は、高圧室側に配置されたパッキンリングの先端部に弾性リングを備えたことで、初期シールを迅速に行って、パッキンリングを介してバックアップリング及びボトムリングに高圧室の圧力を伝達する。
【0009】
また、ボトムリングの小径外周部にバックアップリングを外嵌したことで、ボトムリングとバックアップリングの同軸度を確保することができるため、パッキンリングの外周部を適切に外側部材に当接させることができる。
【0010】
さらに、ボトムリングの小径外周部にバックアップリングを外嵌したことで、パッキンリングから伝達される超高圧の軸方向力をバックアップリングとボトムリングの両方でそれぞれ役割を分担して負担することができる。
つまり、バックアップリングは、拡径されて外周面が外側部材に当接するため、外側部材とのシール性を向上させることができる。ボトムリングの内周部は、内側部材に当接することで、超高圧状態における内側部材に対するシール性を確保しながら摺動特性、封止性能、耐久性、及び、シール寿命を大幅に向上させることができる。このため、例えば、500MPa以上の超高圧の流体であっても、好適に封止することができる。
また、かかる構成によれば、ボトムリングを銅合金とすることで、内側部材に対する耐カジリ性や、耐磨耗性等の摺動特性をステンレス鋼材よりも向上させることができる。また、ボトムリングは、バックアップリングよりも引張強さ及び硬度が高いことで、内側部材に対する耐摩耗性や耐カジリ性等の摺動特性を向上させることができる。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の超高圧封止装置であって、前記ボトムリングの前記中央外周部は、当該ボトムリングの前記大径外周部から前記小径外周部に繋がるテーパ形状をなし、前記バックアップリングの前記係止部は、前記ボトムリングのテーパ形状に適合するテーパ形状をなしていること、を特徴とする。
【0012】
かかる構成によれば、ボトムリングのテーパ形状は、低圧室側が拡径され、高圧室側が縮径されていることで、バックアップリングに作用する高圧の軸方向力によってバックアップリングの外周部が外側部材の内周部に密着するように押圧されるため、外側部材とのシール性をより向上させることができる。
【0013】
つまり、バックアップリングは、高圧室側がボトムリングの小径外周部に外嵌され、低圧室側がボトムリングのテーパ形状に適合するテーパ形状をなしているため、バックアップリングの高圧室側は、ボトムリングと内側部材とのシール性を向上させる機能を有し、バックアップリングの低圧室側は、テーパ形状によって外側部材とのシール性をより向上させる機能を有する(バックアップリングの二重機能)。
このため、本発明は、バックアップリングの二重機能によって、内側部材及び外側部材に対するシール性をより確実に向上させることができる。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の超高圧封止装置であって、
前記パッキンリングの前記低圧室側端面部は、前記バックアップリングの前記高圧室側端面部及び前記ボトムリングの前記高圧室側端面部に当接していること、を特徴とする。
【0015】
かかる構成によれば、パッキンリングの低圧室側端面部は、バックアップリングの高圧室側端面部及びボトムリングの高圧室側端面部に当接していることで、パッキンリングから伝達される超高圧の軸方向力をバックアップリングとボトムリングの両方に同時に伝達することができる。このため、バックアップリングによる外側部材に対するシール性とボトムリングによる内側部材に対するシール性とを早期に発生させてシール性を向上させることができる。
【0016】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の超高圧封止装置であって、前記バックアップリングの前記高圧室側端面部及び前記ボトムリングの前記高圧室側端面部は、軸方向に対して垂直な同じ面上に形成され、前記パッキンリングの前記低圧室側端面部も、軸方向に対して垂直であること、を特徴とする。
【0017】
かかる構成によれば、ボトムリングの高圧室側端面部は、軸方向に対して垂直に形成されていることで、ボトムリングの内周部に対して偏荷重が作用しないため、内側部材との摺動面を適正に保持して摺動特性の劣化を抑制することができる。
【0018】
請求項5に係る発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の超高圧封止装置であって、前記ボトムリングの前記内周部は、前記低圧室側端面部に繋がり前記内側部材に当接する前記内周部よりも拡径された拡径内周部を備えていること、を特徴とする。
【0019】
かかる構成によれば、ボトムリングの内周部は、拡径された拡径内周部を備えていることで、拡径内周部は内側部材に当接しない逃げ(隙間)を構成することができる。このため、パッキンリングの磨耗粉等の異物を低圧室側に排出して内側部材との摩擦抵抗の増大や、カジリ等の摺動特性の劣化を抑制すると共に、内側部材の芯ずれや、振れや、流体の漏れを防止して安定した動作を維持することができる。
【0022】
請求項に係る発明は、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の超高圧封止装置であって、前記ボトムリングの前記高圧室側端面部は、前記環状隙間の20〜50%の大きさであること、を特徴とする。
【0023】
かかる構成によれば、ボトムリングの高圧室側端面部は、環状隙間の20〜50%の大きさであることで、パッキンリングを介してバックアップリングに作用する高圧の軸方向力をボトムリングに作用する軸方向力よりも十分に確保することができる。このため、バックアップリングにおける外側部材とのシール性をより優先的に確保することができる。
【0024】
請求項に係る発明は、請求項2に記載の超高圧封止装置であって、前記ボトムリングのテーパ形状は、軸方向に対して30〜80度の角度であること、を特徴とする。
【0025】
かかる構成によれば、ボトムリングのテーパ形状は、軸方向に対して30〜80度の角度であることで、バックアップリングを外側部材に押圧する押圧力を好適に付与して、外側部材に対するシール性を向上させることができる。テーパ角度を80度とすることで、少なくとも所定の押圧力を確保すると共に、30度とすることで、外側部材に対するシール性と内側部材に対するシール性を両立させることができる。
【0026】
請求項に係る発明は、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の超高圧封止装置であって、前記ボトムリングは、前記内側部材に当接する前記内周部の軸方向の長さが2mm以上8mm以下であること、を特徴とする。
【0027】
かかる構成によれば、ボトムリングの内周部の軸受機能を確保するため内側部材に当接する軸方向の長さを少なくとも2mm確保すると共に、拡径内周部の軸方向の長さを確保して摩耗粉等の異物の排出性を考慮ながら摺動抵抗を低減するために8mm以下であることが望ましい。
【0028】
請求項に係る往復駆動ポンプの発明は、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の超高圧封止装置を備え、圧力が500MPa以上の往復駆動ポンプであって、前記外側部材は、シリンダ部材であり、前記内側部材は、プランジャ部材であること、を特徴とする。
【0029】
かかる構成によれば、超高圧封止装置は、外側部材をシリンダ部材、内側部材をプランジャ部材とすることによって、圧力が500MPa以上に対応する往復駆動ポンプを構成することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る超高圧封止装置は、超高圧における封止性能を向上させると共に、耐久性を向上させることができる。そのため、この超高圧封止装置は、特に、圧力の高い超高圧領域(500〜700MPa)において使用される往復駆動ポンプに好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施形態に係る超高圧封止装置及び往復駆動ポンプを示す要部概略断面図である。
図2図1の要部拡大図である。
図3】超高圧が負荷されたときの状態を示す超高圧封止装置及び往復駆動ポンプの要部拡大図である。
図4】本発明の実施形態に係る超高圧封止装置の第1変形例を示す要部概略拡大断面図である。
図5】本発明の実施形態に係る超高圧封止装置の第2変形例を示す要部概略拡大断面図である。
図6】本発明の実施形態に係る超高圧封止装置の第3変形例を示す要部概略拡大断面図である。
図7】本発明の実施形態に係る超高圧封止装置の第4変形例を示す要部概略拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図1図3を参照しながら本発明の実施形態に係る超高圧封止装置及び往復駆動ポンプの一例を説明する。
【0033】
≪超高圧封止装置≫
図1に示すように、超高圧封止装置1は、バルブ、スイベルジョイント等の流体継手や、往復駆動ポンプ、高圧プランジャポンプ等のポンプや、流体を加圧する高圧発生装置等の非常に高圧な流体をシールして漏れを防止するのに好適な装置であり、500MPa以上の圧力の流体封止が可能である。超高圧封止装置1は、外側部材2と内側部材3との間に形成された環状隙間C1を封止するように配設され、この環状隙間C1を封止して高圧室RHと低圧室RLとを仕切るように設けられている。以下、超高圧封止装置1の一例として、外側部材2は圧力容器を構成するシリンダ部材20、内側部材3はシリンダ部材20内を進退移動するプランジャ部材30として構成される往復駆動ポンプ10(プランジャポンプ)に使用される場合を例に挙げて説明する。
【0034】
超高圧封止装置1は、環状隙間C1内において、プランジャ部材30の低圧室RL寄りの外周部に外嵌されたボトムリング4と、ボトムリング4の小径外周部4f及び中央外周部4gに外嵌されたバックアップリング5と、プランジャ部材30の外周面の高圧室RH寄りのボトムリング4に隣接した位置に外嵌されたパッキンリング6と、パッキンリング6の小径外周部6f及び中央外周部6gに外嵌された弾性リング7と、プランジャ部材30の高圧室RH側の外周部に遊嵌されたスペーサリング8と、を備えて構成されている。
【0035】
<外側部材>
図1に示すように、外側部材2は、シリンダ部材20等の圧力容器である。外側部材2は、内側部材3が進退自在に挿入されるシリンダ室2aを形成した円筒状の部材であり、不図示のハウジングに内設されている。
【0036】
<内側部材>
内側部材3は、油圧等によって往復動作するプランジャ部材30(ピストン)である。内側部材3は、例えば、低圧室RL側に設けた弁ばね(図示省略)で後退することによって、流体を高圧室RH内に吸入して、高圧室RH側に前進するため、高圧室RH内の高圧流体を押圧して排出するポンプの機能を果たす。
【0037】
<環状隙間>
環状隙間C1は、プランジャ部材30とシリンダ部材20の間に形成された縦断面視して円筒形状の空間であり、パッキンリング6及び弾性リング7等のパッキン部材(シール部材)が配置される設置空間である。環状隙間C1内は、低圧室RL側から高圧室RH低圧側へ向って順に、ボトムリング4、バックアップリング5、パッキンリング6、弾性リング7、スペーサリング8が挿入されて、高圧室RH側と低圧室RL側とを仕切るように封止されて、高圧流体が外部に漏れないように構成されている。
【0038】
<ボトムリング>
図2に示すように、ボトムリング4は、バックアップリング5、パッキンリング6、及び弾性リング7よりも剛性を有する略円筒状の部材である。ボトムリング4は、プランジャ部材30(内側部材3)に当接する内周部4aと、低圧室側端面部4bに繋がりシリンダ部材20(外側部材2)に当接する大径外周部4eと、この大径外周部4eよりも縮径され高圧室側端面部4cに繋がる小径外周部4fと、外周部4dが大径外周部4eと小径外周部4fに繋がるように形成された中央外周部4gと、内周部4aよりも内径の大きい拡径内周部4hと、を有して構成されている。
【0039】
ボトムリング4は、シリンダ部材20のシリンダ室2aの低圧室RL側の開口部に内嵌されて配置されている。ボトムリング4とバックアップリング5とは、カジリを防止するために、銅合金によって形成されている。特に、ボトムリング4は、バックアップリング5よりも引張強さ及び硬度が高く、例えば、引張強さが1000N/mm以上、硬度がHRC35以上で、耐カジリ性の高い高強度銅合金等の銅合金によって形成されている。ボトムリング4は、プランジャ部材30に当接する内周部4aの軸方向の長さL1が2mm以上8mm以下に形成されている。また、ボトムリング4は、外周面に小径外周部4f及び中央外周部4gを形成し、内周面に拡径内周部4hを形成したことによって、外周面が、低圧室RL側の大径外周部4eのみシリンダ室2aの内壁に当接し、内周面が高圧室RH側の内周部4aのみプランジャ部材30の外周面に当接するように形成されている。
【0040】
内周部4aは、ボトムリング4において、最も軸心線側に形成されて、プランジャ部材30の外周面3aが当接するプランジャ部材30の軸受部位である。この内周部4aは、低圧室側端面部4bに繋がりプランジャ部材30に当接する内周部4aよりも拡径された拡径内周部4hを備えている。ボトムリング4の内周部4aの内径と、パッキンリング6の内周部6aの内径は、同一である。
【0041】
低圧室側端面部4bは、略円筒状のボトムリング4の低圧室RL側に形成された側面視して平な環状の端面である。低圧室側端面部4bの内周面内には、後記する拡径内周部4hが形成されている。
【0042】
図2に示すように、高圧室側端面部4cは、ボトムリング4の高圧室RH側に形成された縦断面視して垂直に形成され、側面視して環状の端面である。この高圧室側端面部4cは、パッキンリング6の低圧室側端面部6bの軸心寄りの部位に当接した状態に配置されている。高圧室側端面部4cは、環状隙間C1の20〜50%の大きさに形成されている。
【0043】
外周部4dは、ボトムリング4の円筒状の外周面であって、後記する大径外周部4eと小径外周部4fと中央外周部4gとによって段差状に形成されている。
大径外周部4eは、外周部4dにおいて、最も外径が大きく形成された大径の外周面であり、低圧室RL寄りの部位に円筒状に形成されている。この大径外周部4eには、シリンダ部材20のシリンダ室2aの内壁が当接した状態に配置されている。ボトムリング4の大径外周部4eの外径と、バックアップリング5の外周部5cの外径と、パッキンリング6の大径外周部6eの外径と、弾性リング7の外周部7cの外径と、スペーサリング8の外周部8bの外径は、略同一である。
【0044】
小径外周部4fは、外周部4dにおいて、最も小径の周面であり、高圧室RH寄りの部位に円筒状に形成されている。小径外周部4fには、バックアップリング5の内周部5aの内壁が当接した状態に配置されている。互いに当接する小径外周部4fと内周部5aは、シリンダ室2aの内壁面及びプランジャ部材30の外周面に平行に配置されている。
【0045】
ボトムリング4とバックアップリング5とは、テーパ形状でない嵌め合い部位である小径外周部4f及び内周部5aを形成したことによって、同軸度を確保している。そのボトムリング4とバックアップリング5とのテーパ形状でない垂直な高圧室側端面部4c及び高圧室側端面部5eは、パッキンリング6の低圧室側端面部6bに当接していることによって、直角度及び同軸が確保されて、プランジャ部材30の同芯が振れないように軸支すると共に、流体漏れ及びパッキンの寿命を向上させる働きを果す。
【0046】
図2に示すように、中央外周部4gは、ボトムリング4の大径外周部4eから小径外周部4fに繋がるテーパ形状をなしている側面部位(外周部位)である。このボトムリング4のテーパ形状は、シリンダ部材20側のシール性を高めるために、大径外周部4eの高圧室側端部から高圧室RH側の軸方向の小径外周部4fに向かって30〜80度、さらに望ましくは45〜60度のテーパ角度θ1で縮径して形成されている。中央外周部4gには、軸心側の部位にバックアップリング5の係止部5bが当接した状態に配置され、外周寄りの部位に隙間C2が形成されている。
【0047】
その隙間C2は、ボトムリング4の中央外周部4gと、バックアップリング5の隙間形成端面5dと、シリンダ部材20のシリンダ室2aの内壁との間に形成された縦断面視して三角形の封止された環状空間である。隙間C2は、縦断面視して傾斜状に形成された中央外周部4gの外周寄りの部位に形成されていることによって、バックアップリング5の楔効果を高める役目を果している。
【0048】
拡径内周部4hは、ボトムリング4の内周部4aの略中央部から低圧室側端面部4bに亘って円筒状の空間を形成するように切欠形成された内周部位である。拡径内周部4hは、内周部4aの内径よりも僅かに大きい内径で形成されている。拡径内周部4hは、ボトムリング4の低圧室RL側に形成されて、プランジャ部材30の摺動によって、低圧室RL側に食み出したパッキンリング6の食み出し部位を排出するために設けられた逃げ(円筒状の空間)である。拡径内周部4hは、パッキンリング6の噛み込みによるプランジャ部材30の芯ずれ、カジリの発生を防止するための部位である。拡径内周部4hの軸方向の長さは、大径外周部4eの軸方向の長さと略同じ長さに形成されている。
【0049】
<バックアップリング>
図2に示すように、バックアップリング5は、縦断面視して五角形(五辺を有する多角形)の楔形状のリング状部材であり、ボトムリング4の小径外周部4f及び中央外周部4gに外嵌されている。換言すると、ボトムリング4の高圧室RH側は、縦断面視して、プランジャ部材30側のボトムリング4の小径部位と、シリンダ部材20(外側部材2)側のバックアップリング5と、に二分割した状態に配置されている。バックアップリング5は、ボトムリング4の小径外周部4fに外嵌されてこの小径外周部4fに当接する内周部5aと、軸方向の移動が規制されるようにボトムリング4の中央外周部4gに係止される係止部5bと、シリンダ部材20に当接する外周部5cと、隙間C2に面した位置に形成された隙間形成端面5dと、パッキンリング6に当接する高圧室側端面部5eと、を有して構成されている。
【0050】
内周部5aは、リング形状のバックアップリング5の軸心側(プランジャ部材30側)の内側表面であり、ボトムリング4の高圧室RH側に形成された小径外周部4fに外嵌されている。
係止部5bは、ボトムリング4のテーパ形状に適合するテーパ形状をなし、内周部5aの低圧室側端部から外周部方向に拡径して形成されている。係止部5bは、ボトムリング4の中央外周部4gの軸心寄りの部位に外嵌して配置され、バックアップリング5の内周部5aの一部を形成している。
【0051】
外周部5cは、リング形状のバックアップリング5の外周側(シリンダ部材20のシリンダ室2a側)の外側表面であり、シリンダ室2aの内壁の当接した状態に配置されている。
隙間形成端面5dは、バックアップリング5の低圧室側端部の外周部側部位であり、外周部5cの低圧室側端部から係止部5bの外周側端部に亘って縮径して形成されている。このため、隙間形成端面5dは、外周部5cの一部を構成している。
【0052】
高圧室側端面部5eは、バックアップリング5の高圧室側端面であり、パッキンリング6の低圧室側端面部6bの外周部側部位に当接して配置されている。バックアップリング5の高圧室側端面部5e及びボトムリング4の高圧室側端面部4cは、パッキンリング6が偏ったり、傾いたりするのを防止するために、軸方向(プランジャ部材30の外周面)に対して垂直な同じ面上に形成されて、縦断面視して一直線上に配置されている。
【0053】
<パッキンリング>
図2に示すように、パッキンリング6は、環状隙間C1において、ボトムリング4及びバックアップリング5と、スペーサリング8との間に介在された略円筒状の部材である。パッキンリング6は、バックアップリング5の高圧室側端面部5eに当接する低圧室側端面部6bと、プランジャ部材30に当接する内周部6aと、低圧室側端面部6bに繋がりシリンダ部材20に当接する大径外周部6eと、この大径外周部6eよりも縮径され高圧室側端面部6cに繋がる小径外周部6fと、外周部6dが大径外周部6eと小径外周部6fに繋がるように形成された中央外周部6gと、を有して構成されている。パッキンリング6は、例えば、高分子ポリエチレン等の合成樹脂によって形成されている。
【0054】
内周部6aは、パッキンリング6において、最も軸心線側に形成されて、プランジャ部材30の外周面3aが当接して配置されたシール部位である。
低圧室側端面部6bは、バックアップリング5の高圧室側端面部5e及びボトムリング4の高圧室側端面部4cに当接して配置された部位である。この低圧室側端面部6bは、軸方向(プランジャ部材30の摺動方向)に対して垂直に形成されていることによって、パッキンリング6の垂直面の形状、及び、パッキンリング6の同芯位置を保つ機能を果す。
【0055】
高圧室側端面部6cは、パッキンリング6の高圧室RH側に形成された縦断面視して垂直な端面であり、側面視して環状に形成されている。高圧室側端面部6cは、スペーサリング8に低圧室RL方向の荷重aが負荷されていないときに、スペーサリング8の低圧室側端面部8cが離間した状態に配置されている。図3に示すように、高圧室側端面部6cは、スペーサリング8に低圧室RL方向の荷重aが負荷されているときに、スペーサリング8の低圧室側端面部8cに押圧されて、パッキンリング6が圧縮するようになっている。
【0056】
図2に示すように、外周部6dは、パッキンリング6の円筒状の外周面であって、大径外周部6eと小径外周部6fと中央外周部6gとによって段差状に形成されている。
【0057】
大径外周部6eは、外周部6dにおいて、最も外径が大きく形成された外周面であり、低圧室RL寄りの部位にプランジャ部材30の外周面に沿って平行な円筒状に形成されている。この大径外周部6eには、シリンダ部材20のシリンダ室2aの内壁が当接した状態に配置されている。大径外周部6eは、バックアップリング5と弾性リング7との間に介在されて、バックアップリング5と弾性リング7とが互いに当接しないように離間させて配置されている。
【0058】
小径外周部6fは、外周部6dにおいて、大径外周部6eよりも小径の周面であり、高圧室RH寄りの部位に円筒状に形成されている。この小径外周部6fには、環状の弾性リング7の内周部7aの内壁が当接した状態に配置されて、シリンダ部材20とは非当接状態に配置されている。
【0059】
中央外周部6gは、パッキンリング6の大径外周部6eから小径外周部6fに繋がるテーパ形状をなしている側面部位である。中央外周部6gには、軸心側の部位にパッキンリング6の係止部7bが当接した状態に配置され、外周寄りの部位に隙間C3が形成されている。
【0060】
その隙間C3は、パッキンリング6の中央外周部6gと、弾性リング7の低圧室側端面部7dと、シリンダ室2aの内壁との間に形成された縦断面視して直角三角形の封止された空間である。隙間C3は、縦断面視して傾斜状に形成された中央外周部6gの外周寄りの部位に形成されていることによって、弾性リング7の楔効果を高め役目を果している。
【0061】
<弾性リング>
図2に示すように、弾性リング7は、縦断面視して五角形(五辺を有する多角形)の環状部材である。弾性リング7は、パッキンリング6の小径外周部6fに外嵌されてこの小径外周部6fに当接する内周部7aと、軸方向の移動が規制されるようにパッキンリング6の中央外周部6gに係止される係止部7bと、シリンダ部材20に当接する外周部7cと、隙間C3に面した位置に形成された低圧室側端面部7dと、スペーサリング8に当接する高圧室側端面部7eと、を有して構成されている。
【0062】
弾性リング7は、パッキンリング6の小径外周部6f及び中央外周部6gに外嵌されて、スペーサリング8に押圧された状態に配置されているので、シリンダ部材20とテーパ形状の中央外周部6gとの間に圧縮されて密着されるように配置されている。このため、弾性リング7は、パッキンリング6をプランジャ部材30側方向(矢印b方向)に押圧する。その結果、弾性リング7は、弾性リング7の内周部7a及び係止部7bがパッキンリング6の小径外周部6f及び中央外周部6gに密着すると共に、外周部7cがシリンダ室2aの内壁面に密着し、パッキンリング6の内周部6aがプランジャ部材30の外周面に密着させて、各部材間の初期圧が得られるようになっている。弾性リング7は、例えば、ウレタンゴム等の弾性を有する合成ゴムによって形成されている。
【0063】
内周部7aは、リング形状の弾性リング7の軸心側の内側表面であり、パッキンリング6の小径外周部6fに外嵌されている。
係止部7bは、パッキンリング6のテーパ形状に適合するテーパ形状をなし、内周部7aの低圧室側端部から外周部方向に拡径して形成されている。係止部7bは、パッキンリング6の中央外周部6gの軸心寄りの部位に外嵌して配置されて、弾性リング7の内周部7aの一部を形成している。
【0064】
外周部7cは、リング形状の弾性リング7の外周側の外側表面であり、シリンダ室2aの内壁の当接した状態に配置されている。
低圧室側端面部7dは、弾性リング7の低圧室側端部の外周部側部位であり、外周部7cの低圧室側端部から係止部7bの外周側端部に亘って垂直に形成されている。
【0065】
高圧室側端面部7eは、弾性リング7の高圧室RH側の端面であり、スペーサリング8に低圧室RL方向の荷重aが負荷されていないときに、スペーサリング8の低圧室側端面部8cの外周端が当接した状態に配置されている。つまり、弾性リング7の高圧室側端面部7eは、軸方向に対して外周部7c側の端部から内周部7a側の端部に亘って高圧室RH側から低圧室RL側に縮径するようにテーパ状に形成されている。
図3に示すように、高圧室側端面部7eは、スペーサリング8に低圧室RL方向の荷重aが負荷されているときに、スペーサリング8の低圧室側端面部8cの端面全体が押圧されて、弾性リング7が圧縮するようになっている。
【0066】
<スペーサリング>
図1に示すように、スペーサリング8は、高圧室RH内において、弾性リング7の高圧室側端面部7eの外周端に当接した状態に、シリンダ室2aの内壁に内嵌された金属製の円筒状部材である。図2に示すように、スペーサリング8は、プランジャ部材30が進退自在に挿入配置された内周部8aと、シリンダ室2aの内壁面に内嵌された外周部8bと、パッキンリング6の高圧室側端面部6c及び弾性リング7の高圧室側端面部7eに対向配置された低圧室側端面部8cと、を有して構成されている。
【0067】
≪作用≫
次に、図1〜3を参照しながら本発明の実施形態に係る超高圧封止装置1及び往復駆動ポンプ10の作用を説明する。
【0068】
図2に示すように、往復駆動ポンプ10は、プランジャ部材30が長期に亘って、高圧室RH側方向及び低圧室RL側方向に往復動作すると、プランジャ部材30がパッキンリング6の内周部6aに摺接するので、パッキンリング6の磨耗粉等の異物が発生する。その異物は、ボトムリング4の内周部4aに拡径された拡径内周部4hが形成されていることによって、拡径内周部4h内に逃げ込んで、拡径内周部4h内から低圧室RL側に排出される。このため、拡径内周部4hは、プランジャ部材30とパッキンリング6との摩擦抵抗の増大や、カジリ等による摺動特性の劣化を抑制すると共に、プランジャ部材30の芯ずれや、振れや、流体の漏れを防止して安定した動作を維持することができる。
【0069】
また、往復駆動ポンプ10は、パッキンリング6の高圧室RH側に、スペーサリング8に当接した弾性リング7が圧縮されるように配置されていることで、パッキンリング6を介してバックアップリング5及びボトムリング4に高圧室RH方向の圧力が伝達されて、それらの部材間が隙間なく密着されるため、各シール部材間に適宜な初期圧を得ることができる。
【0070】
また、図3に示すように、往復駆動ポンプ10は、スペーサリング8に高圧室RH側から低圧室RL方向(矢印a方向)の負荷がかかると、弾性リング7及びパッキンリング6を低圧室RL方向に押し込んで、圧縮させる。弾性リング7は、全体的に低圧室RL方向に圧縮されて移動し、係止部7bが中央外周部6gのテーパ面に沿って移動し、外周部7cがシリンダ室2aの内壁面に押し当てられて密着してシールする。また、係止部7bは、パッキンリング6の中央外周部6gを軸心方向(矢印b方向)に押し込んで、内周部6aをプランジャ部材30に密着させてシールする。そのパッキンリング6は、バックアップリング5及びボトムリング4の高圧室側端面部5e,4cを押圧する。
【0071】
パッキンリング6の低圧室側端面部6bは、バックアップリング5の高圧室側端面部5e及びボトムリング4の高圧室側端面部4cに当接していることで、パッキンリング6から伝達される超高圧の軸方向(矢印d方向)の押圧力をバックアップリング5とボトムリング4の両方に同時に伝達することができる。このため、バックアップリング5によるシリンダ室2aの内壁面に対するシール性と、ボトムリング4によるプランジャ部材30に対するシール性とを早期に発生させてシール性を向上させることができる。
【0072】
バックアップリング5は、ボトムリング4の小径外周部4fに外嵌されていることによって、パッキンリング6から伝達される超高圧の軸方向(矢印d方向)の押圧力をバックアップリング5とボトムリング4の両方でそれぞれ役割を分担して負担することができる。また、ボトムリング4の小径外周部4fは、バックアップリング5が外嵌されていることによって、ボトムリング4とバックアップリング5の同軸度を確保することができるため、パッキンリング6の外周部6dを適切にシリンダ室2aの内壁面に密着させることができる。
【0073】
バックアップリング5は、外周方向(矢印f方向)に拡径された外周部5cがシリンダ室2aの内壁面に押圧されて密着されるため、シリンダ室2aの内壁面とのシール性を向上させることができる。また、楔形状のバックアップリング5の係止部5bは、その軸心側にあるボトムリング4の内周部4aを、軸心方向(矢印e方向)に押し込んでプランジャ部材30の外周面に密着させてシールする。
【0074】
このため、ボトムリング4の内周部4aは、超高圧状態におけるプランジャ部材30に対するシール性を確保しながら摺動特性、封止性能、耐久性、及びシール寿命を大幅に向上させることができるため、500MPa以上の超高圧の流体であっても封止することができる。
【0075】
図3に示すように、ボトムリング4の高圧室側端面部4cは、軸方向に対して垂直に形成されていることで、内周部4aに対して偏荷重が作用しないため、プランジャ部材30との摺動面を適正に保持して摺動特性の劣化を抑制することができる。
【0076】
また、ボトムリング4を超硬銅合金とすることで、プランジャ部材30に対する耐カジリ性や、耐磨耗性等の摺動特性をステンレス鋼材よりも向上させることができる。また、ボトムリング4は、バックアップリング5よりも引張強さ及び硬度が高いことで、プランジャ部材30に対する耐摩耗性や、耐カジリ性等の摺動特性を向上させることができる。
【0077】
ボトムリング4の高圧室側端面部4cは、環状隙間C1の20〜50%の大きさであることで、パッキンリング6を介してバックアップリング5に作用する高圧側の軸方向の押圧力を、ボトムリング4に作用する軸方向の押圧力よりも十分に確保することができる。このため、バックアップリング5におけるシリンダ室2aの内壁面とのシール性を確保することができる。
【0078】
ボトムリング4のテーパ形状は、低圧室RL側が拡径され、高圧室RH側が縮径されていることで、バックアップリング5に作用する高圧側の軸方向の押圧力によってバックアップリング5の外周部5cがシリンダ室2aの内壁面に密着するように押圧されるため、シリンダ室2aの内壁面のシール性を向上させることができる。
つまり、バックアップリング5は、高圧室RH側がボトムリング4の小径外周部4fに外嵌され、低圧室RL側がボトムリング4のテーパ形状に適合するテーパ形状をなしている。このため、バックアップリング5の高圧室RH側は、ボトムリング4とプランジャ部材30とのシール性を向上させる機能を果し、バックアップリング5の低圧室RL側は、テーパ形状によってシリンダ室2aの内壁面とのシール性を向上させる機能を果す。
バックアップリング5は、そのような二重機能によって、プランジャ部材30及びシリンダ室2aの内壁面に対するシール性をより確実に向上させることができる。
【0079】
図2に示すように、ボトムリング4のテーパ形状は、軸方向に対して30〜80度のテーパ角度θ1であることで、バックアップリング5をシリンダ室2aの内壁面に押圧する押圧力を好適に付与して、シリンダ室2aの内壁面に対するシール性を向上させることができる。テーパ角度θ1を80度とすることで、少なくとも所定の押圧力を確保することができると共に、シリンダ室2aの内壁面に対するシール性とプランジャ部材30に対するシール性を確保することができる。
【0080】
ボトムリング4の内周部4aの軸受機能を確保するためプランジャ部材30に当接する軸方向の長さL1を2〜8mm確保することで、拡径内周部4hの軸方向の長さL2を確保して摩耗粉等の異物の排出性を考慮ながら摺動抵抗を低減することができる。
【0081】
以上のように本発明の実施形態に係る超高圧封止装置1は、環状隙間C1に、弾性リング7、パッキンリング6、バックアップリング5、及び、ボトムリング4を設けたことによって、超高圧における封止性能、及び、耐久性を向上させることができる。そのため、超高圧封止装置1は、特に、圧力の高い超高圧領域(500〜700MPa)において使用される往復駆動ポンプ10に好適に使用することができる。
【0082】
[第1変形例]
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の改造及び変更が可能であり、本発明はこれら改造及び変更された発明にも及ぶことは勿論である。次に、図4を参照して第1変形例を説明する。なお、すでに説明した構成は同じ符号を付してその説明を省略する。
図4は、本発明の実施形態に係る超高圧封止装置の第1変形例を示す要部概略拡大断面図である。本発明の超高圧封止装置1は、前記実施形態に記載したものがベストな形態であり、図4に示す超高圧封止装置1の第1変形例は、前記実施形態よりも適応可能な最大圧力が落ちるが、適応可能である。
【0083】
図4に示すように、パッキンリング6Aとバックアップリング5Aとは、互いに当接する面である低圧室側テーパ端面部6Ab2、及び高圧室側端面部5Aeをテーパ状に形成してもよい。また、パッキンリング6Aとボトムリング4Aは、その間に隙間C4を形成して、パッキンリング6Aの低圧室側端面部6Ab1と、ボトムリング4Aの高圧室側端面部4Acとを離間させた状態に配置してもよい。
【0084】
この場合、パッキンリング6Aは、低圧室RL側の端面を、プランジャ部材30の外周面に対して垂直な低圧室側端面部6Ab1と、低圧室側端面部6Ab1の外周端からシリンダ室2aの内壁面に向けて高圧室RH側に拡径してテーパ状に形成された低圧室側テーパ端面部6Ab2と、で形成する。
バックアップリング5Aは、低圧室側テーパ端面部6Ab2に対応した内周部5aの高圧室RH側の端部からシリンダ室2aの内壁面に向けて高圧室RH側に拡径してテーパ状に形成された高圧室側端面部5Aeで形成されている。このため、外周部5Acは、高圧室側端面部5Aeがテーパ状に形成された分だけ、シリンダ室2aの内壁面に当接する面積が増加する。
【0085】
このように、パッキンリング6Aの低圧室側テーパ端面部6Ab2と、バックアップリング5Aの高圧室側端面部5Aeは、互いにテーパ状に形成されていることによって、低圧室側テーパ端面部6Ab2が、高圧室側端面部5Aeを低圧室RL側方向(矢印d方向)に押圧すると、バックアップリング5Aが外周方向(矢印f方向)に押圧され易くなる。このため、外周部5Acは、さらにシリンダ室2aの内壁面に密着するようになるので、シリンダ室2aのシール性を向上させることができる。
【0086】
また、ボトムリング4Aは、高圧室側端面部4Acを、パッキンリング6Aの低圧室側端面部6Ab1から低圧室RL側にずらして形成し、低圧室側端面部6Ab1と高圧室側端面部4Acとの間に隙間C4を形成して非接触状態に配置する。
このように構成しても、ボトムリング4Aは、パッキンリング6Aの低圧室側テーパ端面部6Ab2が、高圧室側端面部5Aeを低圧室RL側方向(矢印d方向)に押圧すると、バックアップリング5Aのテーパ状の係止部5bが、中央外周部4gを軸心方向(矢印e方向)に押圧する。このため、内周部4aは、プランジャ部材30の外周面に密着するので、プランジャ部材30のシール性を維持することができる。
【0087】
[第2変形例]
図5は、本発明の実施形態に係る超高圧封止装置の第2変形例を示す要部概略拡大断面図である。
【0088】
図5に示すように、パッキンリング6Bとボトムリング4Bとは、互いに当接する低圧室側端面部6Bb、及び、高圧室側端面部4Bcをテーパ状に形成してもよい。また、バックアップリング5Bは、隙間形成端面5Bdをシリンダ室2aの内壁面に対して垂直に形成してもよい。
【0089】
この場合、パッキンリング6Bは、低圧室RL側の端面全体を、プランジャ部材30の外周面からシリンダ室2aの内壁面に向けて高圧室RH側に拡径してテーパ状に形成された低圧室側端面部6Bbにする。
低圧室側端面部6Bbに当接するバックアップリング5Bの高圧室側端面部5Ae、及び、ボトムリング4Bの高圧室側端面部4Bcは、低圧室側端面部6Bbに対応させて、内周部4Baの高圧室RH側の端部からシリンダ室2aの内壁面に向けて高圧室RH側の端面全体が面一に拡径してテーパ状に形成する。
このため、パッキンリング6Bの内周部6Baと、ボトムリング4Bの内周部4Baは、低圧室側端面部6Bbと高圧室側端面部4Bcがそれぞれテーパ状に形成された分だけ、シリンダ室2aの内壁面に当接する内周部6Baの面積が増大すると共に、内周部6Baの面積が減少する。
【0090】
このように、パッキンリング6Bの低圧室側端面部6Bbと、バックアップリング5Bの高圧室側端面部5Aeと、ボトムリング4Bの高圧室側端面部4Bcは、互いにテーパ状に形成したことによって、低圧室側端面部6Bbが高圧室側端面部5Ae及び高圧室側端面部4Bcを低圧室RL側方向(矢印d方向)に押圧すると、バックアップリング5Bが外周方向(矢印f方向)に押圧され易くなる。このため、外周部5Bcは、さらにシリンダ室2aの内壁面に密着するようになるので、シリンダ室2aのシール性を向上させることができる。
【0091】
また、バックアップリング5Bは、隙間形成端面5Bdをシリンダ室2aの内壁面に対して垂直に形成されたことによって、外周部5Bcが、隙間形成端面5Bdが垂直に形成された分だけ、シリンダ室2aの内壁面に当接する面積が増大し、隙間CB2の縦断面積が減少する。
このため、バックアップリング5Bは、外周部5Bcがシリンダ室2aの内壁面に当接する面積が増大したのに伴って、互いに密着する部位の面積が増大されるので、シリンダ室2aのシール性を向上させることができる。
【0092】
[第3変形例]
図6は、本発明の実施形態に係る超高圧封止装置の第3変形例を示す要部概略拡大断面図である。
図6に示すように、バックアップリング5Cは、低圧室側端面部5Cfの端面全体を、内周部5aの低圧室RL側端部からシリンダ室2aの内壁面に対して垂直に形成してもよい。
このように、バックアップリング5Cは、低圧室側端面部5Cfの端面全体をシリンダ室2aの内壁面に対して垂直に形成することによって、シリンダ室2aの内壁面に当接する部位の面積を拡大させて、シリンダ室2aとのシール性能を向上させることができる。
【0093】
また、ボトムリング4Cは、高圧室側端面部4cを、パッキンリング6Aの低圧室側端面部6Ab1に当接する高圧室側内周端面部4Cc1と、バックアップリング5Cの低圧室側端面部5Cfに当接する高圧室側中央端面部4Cc2と、縦断面視して四角形に形成された隙間CC2に対向して配置された高圧室側外周端面部4Cc3と、で形成してもよい。
【0094】
この場合、パッキンリング6Aは、前記した第1変形例と同様に、低圧室RL側の端面に、垂直な低圧室側端面部6Ab1と、テーパ状に形成された低圧室側テーパ端面部6Ab2と、で形成する。バックアップリング5Cの高圧室側端面部5Aeも、第1変形例と同様に、テーパ状に形成して、外周部5Ccがシリンダ室2aの内壁面に当接する面積を増大させる。
【0095】
このように構成すれば、パッキンリング6Aの低圧室側テーパ端面部6Ab2が高圧室側端面部5Aeを低圧室RL側方向(矢印d方向)に押圧したときに、バックアップリング5Cは、外周方向(矢印f方向)に押圧され易くなるため、シリンダ室2aの内壁面に密着するので、シリンダ室2aのシール性を向上させることができる。
【0096】
[第4変形例]
図7は、本発明の実施形態に係る超高圧封止装置の第4変形例を示す要部概略拡大断面図である。
図7に示すように、ボトムリング4Dは、高圧室側端面部を、パッキンリング6Aの低圧室側端面部6Ab1に当接する高圧室側内周端面部4Dc1と、バックアップリング5Cの低圧室側端面部5Cfに当接する高圧室側中央端面部4Dc2と、で形成してもよい。
この場合、ボトムリング4Dとバックアップリング5Cとの間には、前記した第3変形例であった隙間CC2(図6参照)を削除する。
【0097】
このように構成すれば、ボトムリング4Dの外周部4Ddは、隙間CC2(図6参照)が無い分だけ、シリンダ室2aの内壁面に当接する面積が増大されるため、ボトムリング4Dとシリンダ室2aとのシール性を向上させることができる。また、パッキンリング6Aの低圧室側テーパ端面部6Ab2は、前記した第3変形例と同様に、高圧室側端面部5Aeを低圧室RL側方向(矢印d方向)に押圧したときに、バックアップリング5Cが、外周方向(矢印f方向)に押圧されて、シリンダ室2aの内壁面に密着するので、シリンダ室2aのシール性を向上させることができる。
【0098】
[その他の変形例]
例えば、前記実施形態及び第1〜第4変形例では、超高圧において使用する超高圧封止装置1について説明したが、これに限定されるものではなく、超高圧(500MPa以上)よりも低圧な高圧の種々の部位にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0099】
1 超高圧封止装置
2 外側部材
3 内側部材
4 ボトムリング
4a,5a,6a,7a 内周部
4b,6b 低圧室側端面部
4c,5e,6c 高圧室側端面部
4d,5c,6d,7c 外周部
4e,6e 大径外周部
4f,6f 小径外周部
4g,6g 中央外周部
4h 拡径内周部
5 バックアップリング
5b,7b 係止部
6 パッキンリング
7 弾性リング
10 往復駆動ポンプ
20 シリンダ部材
30 プランジャ部材
C1 環状隙間
L1 ボトムリングの内側部材に当接する内周部の軸方向の長さ
RH 高圧室
RL 低圧室
S1 ボトムリングリングの高圧室側端面部の面積
S2 バックアップリングの高圧室側端面部の面積
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7